(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンクリートガラを粉砕して粒度が60mm以下のコンクリートガラを生成し、この生成したコンクリートガラのうち粒度が50mm〜60mmのコンクリートガラを少なくとも含むコンクリートガラと、セメントと混和材料と水とを混練した後、締固めて製造することを特徴とする多孔質コンクリートの製造方法。
コンクリートガラを粉砕して粒度が60mm以下のコンクリートガラを生成し、この生成したコンクリートガラのうち粒度が40mm〜60mmのコンクリートガラと、細骨材として5mm以下のコンクリートガラと、セメントと混和材料と水とを混練した後、締固めて製造することを特徴とする多孔質コンクリートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜
図5を用いて、
多孔質コンクリートの製造方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、コンクリート構造物の解体等によって生じたコンクリートガラ(コンクリート破片)を用いた
多孔質コンクリートを製造する。
【0015】
この多孔質コンクリートの製造においては、まず、粒度60mm以下のコンクリートガラを生成する(ステップS1)。具体的には、コンクリートガラを粉砕し、ふるい目開きが60mmのふるいを1回通す。そして、このふるいの通過物には、粒度50mm〜60mm以下のガラが含まれるようにする。
【0016】
次に、ふるいを通過したコンクリートガラと、モルタルとを混練する(ステップS2)。ここで、モルタルは、セメント、水、混和材料(混和材や混和剤)等を混合したものをいう。本実施形態では、モルタルのセメントとして、「JIS R 5210」に規定される早強ポルトランドセメントに、水(水道水)を用いる。また、このモルタルは、水セメント比(w/c)を(低水セメント比の)0.275、モルタルに対する細骨材の量(Vs/Vm)を0.5、モルタルに対するコンクリートガラの割合(Vm/VG)を0.75とする。
【0017】
更に、混和材料(混和剤)として、高性能AE減水剤であるBASFジャパン株式会社製の「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」をセメントの重量(c)×0.7%で用いる。この場合、「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」の代わりに、ポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤と、セルロース系増粘剤とを用いることもできる。この場合、具体的には、高性能AE減水剤として、「マスターグレニウム(商標名)SP8HV
S(BASFジャパン株式会社製)」をセメントの重量(c)×0.8%で用いる。更に、増粘剤として、信越化学工業株式会社製の「SFCA2000(商品名)」をW(水の重量)×0.05%で用いる。
そして、コンクリートガラとモルタルとを、混練機を用いて混練することにより、フレッシュコンクリートを得る。
【0018】
次に、フレッシュコンクリートを締固める(ステップS3)。具体的には、フレッシュコンクリートにおいて、型枠振動機を用いて、振動による締固めを行なう。型枠振動機としては高周波振動モータ等を用いる。
【0019】
上記の方法で製造した多孔質コンクリートの特性を、他の条件を用いて製造した多孔質コンクリートと比較しながら説明する。
コンクリートガラを粉砕して多孔質コンクリートを混練する場合、粒度が60mmよりも大きい場合には、混ざり難く、コンクリートガラが不均質なフレッシュコンクリートが生成される。そこで、粒度が60mm以下のコンクリートガラを用いる。
【0020】
一般的な多孔質コンクリートに用いられる骨材は、空隙を確保する観点から単一粒度の方がよいと言われている。一方、コンクリートガラは、コンクリート構造物の解体等によって得られるため、微細な粒度から人頭大まで広範な粒度分布を有している。更に、再利用の観点から、より多くのコンクリートガラを利用したいというニーズもある。
【0021】
図2には、使用する粒度が60mm以下のコンクリートガラの粒度範囲、モルタルの細骨材の種類を変更した場合の特性を示している。
試験ケース「α1」及び「α2」においては、粒度が0mmより大きく60mm未満(粒度:0〜60mm)のコンクリートガラを用いている。このコンクリートガラは、ふるい目開きが60mmのふるいを通した通過物である。
【0022】
試験ケース「β」においては、粒度が20mmより大きく60mm未満のコンクリートガラを用いている。この場合、粉砕したコンクリートガラを、ふるい目開きが60mmのふるいを通し、この通過物を、ふるい目開きが20mmのふるいを通す。そして、このふるいを通過しなかった残留物(粒度:20mm〜60mmのコンクリートガラ)を用いる。
【0023】
試験ケース「γ」においては、粒度が40mmより大きく60mm未満のコンクリートガラを用いている。この場合、粉砕したコンクリートガラを、ふるい目開きが60mmのふるいを通し、この通過物を、ふるい目開きが40mmのふるいを通す。そして、このふるいを通過しなかった残留物(粒度:40mm〜60mmのコンクリートガラ)を用いる。
【0024】
更に、試験ケース「α1」、「β」、「γ」においては、モルタルに添加する細骨材として、5mm以下のコンクリートガラを添加した。試験ケース「α2」においては、モルタルに細骨材を添加しなかった。
【0025】
また、試験ケース「α1」、「α2」、「β」、「γ」のいずれにおいても、モルタルのセメントとして、早強ポルトランドセメントを用いる。更に、水(水道水)、混和材料としてポーラスコンクリート用混和材を用いている。粒度影響を評価するために、ポーラスコンクリート用混和材として実績のある「太平洋マテリアル製のポアミックス(商品名)」を用いた。また、このモルタルは、水セメント比(w/c)を0.275、モルタルに対する細骨材の量(Vs/Vm)を0.5、モルタルに対するコンクリートガラの割合(Vm/VG)を0.75とした。
【0026】
試験ケース「α1」、「α2」、「β」、「γ」のいずれにおいても、外観観察は良好であった。また、これら試験ケースのいずれにおいても、空隙状況やモルタルの偏在はほぼ同じであり、大きな違いは見られなかった。
【0027】
更に、これらいずれの試験ケースにおいても、曲げ強度は、3〜4(N/mm
2)とほぼ同じ値が得られ、透水係数は、3×10
-4〜2×10
-3(m/s)であった。通常のコンクリートの透水係数は10
-12(m/s)程度であるため、どの試験ケースにおいても、通水性を確保することができた。
【0028】
図3には、振動による締固めの有無、モルタルに対する細骨材の量(Vs/Vm)及び混和材料を変更して製造した多孔質コンクリートの特性の測定結果を示している。
【0029】
図3(a)では、曲げ強度と試験ケースとの関係についてのグラフ31、
図3(b)では、透水係数と試験ケースとの関係についてのグラフ32を示す。各グラフ31,32では、試験ケース「I」、「II」の条件で3回ずつ行なった結果を示している。
【0030】
試験ケース「I」、「II」のいずれにおいても、粒度0〜60mmのコンクリートガラを用いた。また、このモルタルは、水セメント比(w/c)を0.275、モルタルに対するコンクリートガラの割合(Vm/VG)を0.75とした。
【0031】
試験ケース「I」は、締固めを行なった場合、試験ケース「II」は、締固めを行なわなかった場合を示している。
また、試験ケース「I」は、細骨材を添加せず、ポアミックス(商品名)を用いた。試験ケース「II」は、Vs/Vm=0.5の細骨材を添加し、ポアミックス(商品名)を用いた。
【0032】
図3(a)に示すように、曲げ強度においては、締固めが影響し、締固めた場合の曲げ強度は、締固めがない場合の曲げ強度の6倍程度であった。また、曲げ強度においては、細骨材の有無、混和材料の種類による影響は小さかった。
図3(b)に示すように、透水性においては、締固めの有無と細骨材の添加の有無が、透水性に及ぼす影響は小さかった。
【0033】
図4(a)は、各ケース番号における混和材料の種類及び量を示した表である。
図4(a)において、PMは「ポアミックス(商品名)」、15Lは「マスターポリヒード15L」を意味している。更に、8SVは、高性能AE減水剤の「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」、8HVは、高性能AE減水剤の「マスターグレニウム(商標名)SP8HV
S」、SFCAはセルロース系増粘剤である「SFCA2000(商品名)」を意味している。
【0034】
図4(a)における「c」は、コンクリートに用いるセメント量である。
また、いずれのケース番号においても、水セメント比(w/c)を27.5%、水は550(g)、セメントは2000(g)とした。
【0035】
図4(b)は、
図4(a)の各試験ケースにおけるモルタルフローに関するフロー試験の試験結果(フロー値)を示す表である。
ケース番号「2」の「ポアミックス(商品名)」を用いた場合のコンクリートの性状が良好であった。これに近いフロー値の混和材料は、ケース番号「5」、「9」及び「12」であった。
【0036】
(モルタル試験における検討)
混和材料として「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」を用いた場合には、c×0.7%とc×1.5%のフロー値、「マスターグレニウム(商標名)SP8HV
S」を用いた場合には、c×0.8%のフロー値が、「ポアミックス(商品名)」のフロー値に近かった。また、混和材料として「マスターグレニウム(商標名)SP8HV
S」を用いた場合において、c×0.8%のフロー値は、c×1.0%及びc×0.6%の場合よりも「ポアミックス(商品名)」を用いた場合のフロー値に近かった。更に、増粘剤は、w×0.05%以下の場合が、「ポアミックス(商品名)」を用いた場合のフロー値に近かった。
【0037】
従って、高性能AE減水剤をc×0.8%で用い、増粘剤は、w×0.05%以下で用いる場合には、良好な多孔質コンクリートを得ることができる。
なお、「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」を用いた場合には、c×0.7%とc×1.5%のフロー値が「ポアミックス(商品名)」のフロー値に近い。この場合、c×0.7%を用いた方が、低コストとなる。
【0038】
(多孔質コンクリート試験における確認)
図5(a)は、3つの試験ケース(ケース21,22,23)における多孔質コンクリートの材料や量を示している。
ケース21は、混和材料として「ポアミックス(商品名)」をc×0.1%で用いた。
ケース22は、混和材料として「マスターグレニウム(商標名)SP8SV」をc×0.7%で用いた。
ケース23は、混和材料として「マスターグレニウム(商標名)SP8HV
S」をc×0.8%と、「SFCA2000(商品名)」を0.05%で用いた。
【0039】
図5(b)は、各試験ケース(ケース21,22,23)の試験結果(均質充填性、曲げ強度、透水係数、及びコスト比較)を示している。
ケース22及びケース23の多孔質コンクリートの均質充填性は、ケース21と同等であった。
ケース22及びケース23の多孔質コンクリートの曲げ強度は、ケース21よりも大きい値であった。
ケース22及びケース23の多孔質コンクリートの透水係数は、ケース21と同等であった。
ケース22及びケース23の多孔質コンクリートのコストは、ケース21より低かった。特に、ケース22のコストは、これら試験ケースで最小となり、ケース21に比べて、46%程度低減できる。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、コンクリートガラを粉砕して、粒度を60mm以下にする(ステップS1)。そして、ふるいを通過した全粒度のコンクリートガラ(粒度:0〜60mm)を、セメント及び混和材料等と混練し(ステップS2)、混練後に締固めを行なう(ステップS3)。これにより、比較的大きいコンクリートガラを、セメント及び混和剤と混練して製造するので、多量のコンクリートガラを用いて、透水性、曲げ強度を確保した多孔質コンクリートを製造することができる。更に、単一粒度と異なり、全粒度を用いることにより、コンクリートガラを効率的に再利用することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、混和材料として、c×0.7%の高性能AE減水剤を用い、コンクリートガラは、低水セメント比で練り混ぜる。これにより、材料を分離することなく、コンクリートを混練することができる。
【0042】
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態においては、モルタルフロー試験により、適切なモルタル特性となる混和材料を特定した。コンクリートガラを用いた多孔質コンクリートのモルタル特性が適切か否かの判定は、この方法に限定されず、次のような振動締固めによって落下したモルタルの質量から判定してもよい。まず、5mmふるいの上に直径200mmの管に、混練したフレッシュコンクリートを入れる。そして、バットの上にモルタル通過量測定装置(仕様:振動数3000vpm振幅1mm)を載せ、振動テーブルで20秒間締固めを行なう。締固めた後に、バッドに落ちたモルタルの質量を測定する。このモルタルの質量が少なければ垂れ量が少ないと判定する。
【0043】
・上記実施形態のコンクリートの製造方法においては、粒度が0〜60mmのコンクリートガラを用いた。コンクリートガラは、50mm〜60mmの粒度を含み、60mm以下の粒度のコンクリートガラであればよく、50mm〜60mmの単一粒度、40mm〜60mmの単一粒度等を用いてもよい。
【0044】
・上記実施形態においては、混和材料として、高性能AE減水剤を用いた。混和材料は、高性能AE減水剤に加えて増粘剤を用いてもよい。具体的には、高性能AE減水剤をc×0.8%、増粘剤をW×0.05%で用いることにより、同等の性能が得られる。この場合、高性能AE減水剤は、増粘剤の性能を阻害しない性質を有するもの(例えば、ポリカルボン酸エーテル系の高性能AE減水剤等)を選定する。また、増粘剤の量は、これに限定されず、W×0.05%以下が好ましい。