(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
近位端及び遠位端と、内部を貫通する少なくとも1個のルーメンと、を有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端にあるバスケット形状の電極アセンブリと、を備えるカテーテルであって、前記バスケット形状の電極アセンブリが、複数のスパインを備え、前記複数のスパインが、これらの近位端及び遠位端において接続されており、各スパインが、複数の電極と、コア上に巻きつけられ、シースで被覆された対応する複数のワイヤを有する配線と、を備え、各電極が前記シースを通して前記複数のワイヤのうちの1本に取り付けられ、前記バスケット形状の電極アセンブリは、前記スパインが、径方向外側に弓状に張り出している膨張状態の配置と、前記スパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配列されている収縮状態の配置と、を有し、
各スパインが、凹状遠位領域と、凸状中間領域と、凹状近位領域と、を有し、前記遠位領域の凹状構成が、前記中間領域によって示される曲率半径内に概ね位置され、
各スパインの前記遠位端を固定するキャップを更に備え、対向するスパインが、前記キャップ内の複数の孔を通る連続材料片によって形成され、前記複数の孔は螺旋状にオフセットされる、カテーテル。
近位端及び遠位端を有する膨張部を更に備え、前記膨張部が前記ルーメン内に摺動自在に配置され、前記カテーテル本体の前記長手方向軸と揃っており、前記複数のスパインがそれらの遠位端において前記膨張部に取り付けられており、前記バスケット形状の電極アセンブリは、前記膨張部が前記カテーテル本体に対して前記長手方向軸に沿って近位に移動したときに前記膨張状態の配置を有し、前記膨張部が前記カテーテル本体に対して前記長手方向軸に沿って遠位に移動したときに前記収縮状態の配置を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バスケットアセンブリは、1回の拍動など可能な限り少ない拍動で、左心房又は右心房など電極アセンブリを展開している領域の電気的機能を可能な限り検出できることが望ましい。電極アセンブリにより多くの電極を組み入れることにより、それに応じてより大きい、より完全な対象領域を得ることができる。更に、電極の数を増やすと、領域内の所望の全区域に到達するために電極アセンブリを再配置する必要性を低減し得る、又は排除し得る。しかしながら、電極の数を増やすと、望ましくないことにカテーテルの全径が増加し得る。これは、検出される信号を伝達する個別のリード線が各電極に必要なためである。したがって、経皮的に前進し、患者の心室内で展開するように十分に最小化された全径を維持しつつ、増加した電極密度を有する、バスケット形状の電極アセンブリに対するニーズが存在する。本開示の技法は、このニーズ及び以下の資料に記載する他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、近位端及び遠位端と、内部を貫通する少なくとも1個のルーメンと、を有する細長いカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端にあるバスケット形状の電極アセンブリと、を備えるカテーテルに関するものであり、バスケット形状の電極アセンブリは、複数のスパインを備え、複数のスパインは、これらの近位端及び遠位端において接続されており、各スパインは、複数の電極と、コア上に巻きつけられ、シースで被覆された対応する複数のワイヤを有する配線と、を備え、各電極がシースを通して前記複数のワイヤのうちの1本に取り付けられ、バスケット形状の電極アセンブリは、スパインが径方向外側に弓状に張り出している膨張状態の配置と、スパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配列されている収縮状態の配置と、を有する。
【0007】
一態様では、バスケット形状の電極アセンブリは、少なくとも8個、10個、又は12個のスパインを有してよい。
【0008】
一態様では、各スパインは、少なくとも10個又は少なくとも16個の電極を有してよい。
【0009】
例えば、バスケット形状の電極アセンブリは、少なくとも12個のスパインを有してよく、各スパインは、少なくとも16個の電極を有してよく、カテーテル本体は、約10フレンチ未満の直径を有する。
【0010】
一態様では、各スパインは、凹状遠位領域と、凸状中間領域と、凹状近位領域と、を有してよい。
【0011】
一態様では、カテーテルは、各スパインの遠位端を固定するキャップを有してよく、対向するスパインは、キャップ内の孔を通る連続材料片によって形成されている。
【0012】
一態様では、カテーテルはまた、近位端と、遠位端と、を有する膨張部を含んでよく、この膨張部は、ルーメン内に摺動自在に配置され、カテーテル本体の長手方向軸と揃っており、複数のスパインは、その遠位端において膨張部に取り付けられており、バスケット形状の電極アセンブリは、膨張部がカテーテル本体に対して長手方向軸に沿って近位に移動したときに膨張状態の配置を有し、膨張部がカテーテル本体に対して長手方向軸に沿って遠位に移動したときに収縮状態の配置を有する。
【0013】
一態様では、各スパインは、配線のコア内に配置された可撓性ワイヤを有してよい。更に、可撓性ワイヤは形状記憶合金であってよい。
【0014】
一態様では、カテーテルのルーメンは、バスケット形状の電極アセンブリに潅注流体を送達するように構成されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に記載されているようなものに類似するか又は等価である多くの選択肢が、本開示の実践又は実施形態において用いられることができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。
【0017】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0018】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態は、これらの具体的な詳細なしでも実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に示される例示的実施形態の新しさを明確にするために、周知の構造及び装置がブロック図形式で示される。
【0019】
単に便宜的及び明確さの目的で、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側などの方向を示す用語が、添付の図に関して使用されることがある。これら及び類似の方向を示す用語は、本開示の範囲をいかなる意味でも制限すると見なされるべきではない。
【0020】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0021】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0022】
心室内での特定の種類の電気的活動は周期的ではない。例としては、動脈粗動又は動脈細動、及び梗塞から生じた心室壁の瘢痕に起因する心室性頻拍が挙げられる。かかる電気的活動は、1心拍ごとに不規則である。この種類の電気的活動を解析する、つまり「マップ」するには、1心拍内など可能な限り迅速に「全体像」を把握することが望ましい。換言すると、マップ、つまり全体像のすべてのポイントは、10分の1秒以内に同時に取得されてよい。本開示の技法によると、高電極密度を有するバスケット形状の電極アセンブリを使用して、この電気的活動を正確にマップしてよい。
【0023】
図1に示すように、カテーテル10は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の近位端に設けられた制御ハンドル14と、を備え、それぞれが複数の電極20を担持する、複数のスパイン18を有するバスケット形状の電極アセンブリ16がカテーテル本体12の遠位端に取り付けられている。カテーテル本体12は、単一の軸方向ルーメン、つまり中央ルーメン(図示せず)を有する、細長い管状構造を備えるが、所望により、任意追加的に複数のルーメンを有することもできる。電気信号の正確なマッピングを可能にするには、例えば、1回という少ない拍動で右房又は左房の電気的機能の大部分又はその実質的にすべてを検出するには、比較的高密度の電極アレイを提供することが望ましいことがある。したがって、用いるスパイン18の数は、8、10、12、又は任意の好適な数であってよい。スパイン18は、径方向に均一に又は不均一に分布してよい。更に、各スパイン18は、スパインあたり少なくとも10個及び最大約16個の電極など複数の電極20を含んでよい。同様に、電極は、スパインに沿って均一に分布してよい、又は近位に、中央に、若しくは遠位に偏って、測定した電気信号を解析しやすくしてよい。
【0024】
カテーテル本体12は、可撓性(すなわち、屈曲可能)であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造を有していてもよく、任意の好適な材料で作製することができる。1つの構造は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)から作られる外壁を有する。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、そのため、制御ハンドル14が回転されると、カテーテル本体の遠位端部がそれに対応する方式で回転するようになっている。カテーテル本体12の外径は重要ではないが、概ね可能な限り小さくあるべきであり、所望の用途に応じて約10フレンチ以下であってよい。一態様では、カテーテル本体12の全径は、関連する電気リード線を収容するために、バスケット形状の電極アセンブリ16に組み入れられた電極20の数に関係してよい。例えば、各スパインが16個の電極を担持する12個のスパイン(合計192個の電極)からなる設計、各スパインが16個の電極を担持する10個のスパイン(合計160個の電極)からなる設計、及び各スパインが16個の電極を担持する8個のスパイン(合計128個の電極)からなる設計は、最大10.0フレンチのカテーテル本体を使用してよい。同様に、外壁の厚さも重要ではないが、中央ルーメンがプーラーワイヤ、リードワイヤ、センサケーブル、及び任意の他のワイヤ、ケーブル、又はチューブを収容できるように、十分に薄いものであってよい。所望により、外壁の内部表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性が改善される。本発明と関連して用いるために好適なカテーテル本体構成の例が、米国特許第6,064,905号に記載及び図示されているが、同特許は、その全開示内容が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0025】
バスケット形状の電極アセンブリ16はまた、膨張部22を含んでよく、この膨張部は、カテーテル本体12と概ね同軸であり、中央ルーメンを通ってカテーテル本体12の近位端から延在し、スパイン18の遠位端に直接的に又は間接的に取り付けられる。膨張部22は、カテーテル本体12に対して近位に又は遠位にスパイン18の遠位端を移動させて、それぞれ電極アセンブリを膨張させ、収縮させることができるように、カテーテル本体に対して長手方向運動を与える。スパイン18の近位端は、カテーテル本体12に固定されているため、近位方向への膨張部22の相対運動は、スパイン18の遠位端と近位端との間の距離を短縮し、次いで外側に弓状に張り出させてスパインを膨張状態の配置にする。膨張部22は、この機能を実現するように十分に硬質である材料を備える。あるいは、又は加えて、スパイン18は、以下に記載するように、膨張部22を省略し得る、又は膨張部22を使用して、膨張状態の配置と収縮状態の配置との移行を支援し得るように、形状記憶材料など膨張状態の配置を容易にとらせる材料を含んでよい。一実施形態では、膨張部22は、以下に記載するように、ニッケルチタン合金など好適な形状記憶材料から形成されたワイヤ又はハイポチューブを備えてよい。上記の内容から分かるように、長手方向軸に沿った膨張部22の相対運動量が異なると、スパイン18が心房組織により大きい圧力をかけて、組織とスパイン上の電極がより良好に接触できるなど、弓状に張り出す程度に影響してよい。したがって、ユーザーは、膨張部の長手方向の延伸又は後退を調整することにより、電極アセンブリの形状を変更できる。
【0026】
あるいは、又は加えて、スパイン18は、以下に記載するように、膨張部22を省略し得る、又は膨張部22を使用して、膨張状態の配置と収縮状態の配置との移行を支援し得るように、膨張状態の配置を容易にとらせる材料を含んでよい。
【0027】
図2に示すように、バスケット形状の電極アセンブリ16が膨張状態の構成をとるとき、スパイン18は外側に弓状に張り出して、左房など展開している心室の壁と接触するか、より近位に接近する。それに応じて、遠位方向での膨張部22の相対運動は、スパイン18の遠位端と近位端との間の距離を拡大し、カテーテル本体12と一直線にある、概ね線状の構成をとって、患者への挿入及び患者からの引き抜きに使用する外径を最小化する。
【0028】
一態様では、電気生理学医は、当該分野において一般に知られているように、ガイド用シース、ガイドワイヤ、及び拡張器を患者の体内に導入してもよい。例としては、本発明のカテーテルと関連して用いるために好適なガイド用シースは、10フレンチのDiRex(商標)ガイド用シース(BARD(Murray Hill,NJ)から市販されている)が挙げられる。ガイドワイヤを挿入し、拡張器を除去し、ガイド用シースを通してカテーテルを導入すると、膨張部のガイドワイヤルーメンによって、カテーテルがガイドワイヤを通り越すことができる。
図2に図示する1つの例示的方法では、カテーテルは、下大静脈(IVC)を通って右心房(RA)に最初に導入され、左房(LA)に到達するために、隔膜(S)を通過する。
【0029】
上記の内容から分かるように、カテーテル全体が、患者の脈管系を通って所望の位置に到達できるように、ガイド用シースは、収縮位置にあるバスケット形状の電極アセンブリ16のスパイン18を被覆する。膨張部22は、カテーテル本体の遠位に位置して、アセンブリがガイド用シースを通過する間に、アセンブリのスパインが平坦になることができるようにしてよい。カテーテルの遠位端が所望の位置、例えば左心房に到達すると、ガイド用シースは引き抜かれて、バスケット形状の電極アセンブリ16が露出する。スパイン18が遠位接合部と近位接合部との間で外側に曲がるように、膨張部22が近位に引っ張られるか、又は他の操作がなされる。バスケット形状の電極アセンブリ16が径方向に膨張した状態で、リング電極20が心房の組織と接触する。当業者には理解されることであるが、バスケット形状の電極アセンブリ16は、マッピングされている心臓の領域の構成に応じて、様々な形状で完全にあるいは部分的に膨張し得る、直線状であり得る、又は偏向し得る。
【0030】
バスケット形状の電極アセンブリ16が膨張しているとき、電気生理学医は、患者を診断し、治療を施す際に電気生理学医を誘導できる電極20を使用して、局所起動時間をマップしてよい、及び/又はアブレーションを施してよい。カテーテルは、カテーテル本体上に装着された1個若しくは2個以上の基準リング電極を含んでよい、及び/又は1個若しくは2個以上の基準電極が患者の体の外側に置かれてもよい。バスケット形状の電極アセンブリ上に複数の電極を有する、本発明のカテーテルを使用することにより、電気生理学医は、心房など心臓の洞領域の、真の解剖学的構造を得ることができ、従来のカテーテルよりも少ないポイントを測定することで、この領域をより迅速にマップすることができる。
【0031】
本明細書において用いる場合、電極アセンブリ16を説明するのに用いる「バスケット形状」という用語は、図に描かれた構成に限定されず、その近位端と遠位端において直接的又は間接的に接続された複数の膨張可能なアーム、つまりスパインを含む、球形又は卵形のデザインなど他の設計も含み得る。一態様では、患者の解剖学的構造に応じて異なる寸法のバスケット形状の電極アセンブリを用いて、右房又は左房など調査される患者の領域にぴったり適合させてよい。
【0032】
バスケット形状の電極アセンブリ16の一実施形態の詳細図を
図3に示す。これは、16個の電極20をそれぞれ担持する、合計12個のスパイン18を特徴とする。上記のように、他の実施形態では、異なる数のスパイン18及び/又は電極20を用いてよく、これらは、所望に応じて、それぞれ均一又は不均一に分布してよい。スパイン18及び膨張部22の遠位端は、遠位キャップ24に固定されてよい。それに応じて、スパイン18の近位端は、カテーテル本体12の遠位端に固定されてよく、膨張部22は、近位端が制御ハンドル14まで延在するように、カテーテル本体12のルーメン26を通ってよい。いくつかの実施形態では、ルーメン26を使用して、ヘパリン加生理食塩水など好適な潅注流体をバスケット形状の電極アセンブリ16に供給してもよい。制御ハンドル14に金具(図示なし)を装着して、好適な供給源又はポンプからの潅注流体をルーメン26に誘導してよい。
【0033】
各スパイン18は、1個又は2個以上のリング電極20が装着される非導電性被覆30付き可撓性ワイヤ28を備えてよい。一実施形態では、可撓性ワイヤ28は形状記憶材料から形成されて、膨張状態の配置と収縮状態の配置との移行を促進してよく、非伝導性被覆30は、ポリウレタン又はポリイミドチューブなど生体適合性プラスチックチューブをそれぞれ含んでよい。例えば、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金を使用してよい。ニチノール製ワイヤは、体温で可撓性かつ弾性であり、大部分の金属のように、ニチノール製ワイヤは、最小限の力を受けたら変形し、力の不在でそれらの形状に戻る。ニチノールは、形状記憶合金(SMA)と呼ばれる材料クラスに属し、可撓性及び弾性以外にも形状記憶及び超弾性など興味深い機械的特性を有する。このため、ニチノールは、その温相に依存する「記憶形状」を有することができる。オーステナイト相はニチノールのより強い、より高い温相であり、単純な立法晶構造を有する。超弾性挙動は、この相(50℃〜60℃の温度の広がりにわたる)で生じる。それに応じて、マルテンサイト相は比較的弱く、より低い温相であり、双晶構造を有する。ニチノール材料がマルテンサイト相内にあるとき、比較的容易に変形し、変形した状態で留まる。しかしながら、そのオーステナイト遷移温度を超えて加熱すると、ニチノール材料は変形前の形状に戻り、「形状記憶」効果をもたらす。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を開始する温度は、「As」温度と呼ばれる。加熱にあたり、ニチノールがオーステナイトへの変換を完了した温度は、「Af」温度と呼ばれる。したがって、バスケット形状の電極アセンブリ16は、容易に収縮してガイド用シースに送り込まれ、次いで所望の患者領域に送達されて、ガイド用シースが除去されると、その膨張した形状記憶構成に容易に戻ることができる三次元形状を有してよい。
【0034】
あるいは、いくつかの実施形態では、十分な剛性の非導電性材料を非導電性被覆30に使用して、バスケット形状の電極アセンブリ16が径方向に膨張可能になる場合は、スパインがその表面の少なくとも一部の上にリング電極20を装着する非導電性の外側表面を有する限り、スプライン18を内部可撓性ワイヤ28なしで設計することができる。
【0035】
膨張した形状記憶構成にある単一のスパイン18を
図4に示す。この実施形態では、スパイン18は、電極20が位置している心室の壁と接触させるか、より近位に接近させるように構成されている凸状形状を有する、中間領域32を有する。上記のように、可撓性ワイヤ28は非伝導性被覆30を有し、電極20はその上に位置する。遠位領域34は凹状構成を呈してよく、中間領域
32によって示される曲率半径内に概ね位置する。この構成により、遠位領域34は、カテーテル本体12の長手方向軸と揃っている可撓性ワイヤ28から中間領域32を接合する頂部へと平滑に移行できる。長手方向軸と揃っていることにより、収縮時の直径を最小化することができる。また、凹状形状により、1個又は2個以上の電極20を頂部付近に位置付けて、遠位キャップ24に隣接する極領域をセンサ範囲にすることができる。近位領域36は凹状構成を有してよく、中間領域32によって示される曲率半径の外側に概ね位置する。同様に、この構成により、ここでも中間領域32から長手方向軸と揃っている可撓性ワイヤへと平滑に移行できる。
【0036】
別の例示的実施形態を
図5に示す。この設計では、一続きの可撓性ワイヤ28によって対向するスパイン18が形成されており、このワイヤは、概ね円筒形の遠位キャップ24内の貫通孔として構成されている孔を通って延在する。孔38は、図示するように螺旋状に、又は可撓性ワイヤ28の輪が互いに干渉することなく、その各輪を収容するのに好適な任意の他の方法でオフセットしていてよい。上記の内容から分かるように、各スパインの位置は、単一片のワイヤから形成されるために、その対向するスパインに対して固定されてよい。
【0037】
更なる態様では、各スパイン18は、
図6A〜Cに示すように、スパインによって担持される電極20のためのビルトイン、つまり埋め込みリードワイヤ42を備える配線40を含んでよい。この配線は、コア44と、各ワイヤが導電部48として形成され、機能できるようにする絶縁層46でそれぞれ被覆されている、複数の概ね類似のワイヤ42と、を有する。コア44は、可撓性ワイヤ28及び/又は追加のリードワイヤ、ケーブル、チューブ、若しくは他の構成要素の形態の支持構造など他の構成要素が通過できるルーメン50をもたらす。
【0038】
下記の説明において、配線40に関連する概ね類似の構成要素は、一般に構成要素識別番号により参照され、必要に応じて、文字A、B、...を数字に添えることにより、互いが区別される。すなわち、ワイヤ42Cは、絶縁層46Cで被覆された導電部48Cとして形成されている。配線の実施形態は、実質的には、配線中の任意の複数のワイヤ42を用いて実施され得るが、明瞭さ及び簡便さのため、以下の説明では、配線40はN本のワイヤ42A、42B、42C、...42Nを備えると仮定する。なおNは、バスケット形状の電極アセンブリ16のそれぞれの対応するスパイン18上のリング電極の数に少なくとも等しい数である。図示の都合上、ワイヤ42の絶縁層46は、導電部48と略等しい寸法を有するように描かれている。実際には、絶縁層は通常、ワイヤの直径の約10分の1にあたる寸法である。
【0039】
ワイヤ42は内部コア44の上に形成され、この内部コアは通常、円筒状チューブとして形成される。コアの材料としては、通常、ポリエーテルブロックアミド又はPEBAX(登録商標)など熱可塑性エラストマーが選択される。ワイヤ42は、チューブの周りにワイヤを巻き付けることにより、コア44の外側表面52上に形成される。表面52上にワイヤ42を巻きつける際に、ワイヤが互いに、「密に充填された」構成接触するように配置される。したがって、コア44が円筒形の場合、その外側表面上にある各ワイヤ42は、多条ねじ構成で形成された、螺旋状コイルの形態である。例えば、本明細書においてN本のワイヤ42が想定される場合、ワイヤ42は、コア44の周りに、N条ねじ構成で配置される。
【0040】
編組み状のものとは対照的に、本明細書におけるワイヤ42のすべてのらせん状コイルは、同じ巻き方(巻き方向)を有している。また、円筒を囲む編組み状のものは交互配置され、らせん状にはなっていない。編組み上のものにおけるワイヤは、非らせん状であるため、同じ巻き方を有する編組みワイヤでさえもねじ形状を有しておらず、また多条ねじ構成を有しないことは言うまでもない。更に、配線の諸実施形態におけるワイヤの配置において、交互配置がされていないため、その結果生成する配線全体の直径は、編組みを用いた配線の直径よりも小さく、その小さい直径は、配線がカテーテルに用いられる際には特に有益である。
【0041】
ワイヤ42が上記のような多条ねじ構成で形成されると、ワイヤは、上記の非伝導性被覆30の形態など保護シースで被覆される。保護シースの材料には、通常、例えば、透明であるように添加剤を加えない55D PEBAXなど熱可塑性エラストマーが選択される。上の点に関して、異なるワイヤを識別し区別する助けとして、ワイヤ42の少なくとも1本の絶縁層46に、残りのワイヤとは異なる色を付けてよい。
【0042】
ワイヤ42をコア44の周りに巻きつけ、次にワイヤを非伝導性被覆30で被覆する工程は、本質的に、配線40の、コア及びシースからなるケーブル40の壁内にワイヤを埋め込むことになる。ワイヤを壁内に埋め込むとは、この配線がカテーテルを形成するために使用される場合に、ワイヤが機械的損傷を受けないことを意味する。カテーテルの組み立て中にワイヤが固定されないままである場合には、48AWGワイヤのような細いワイヤには、機械的損傷が生じやすい。
【0043】
カテーテルとして用いられる際に、略円筒状の容量、又は壁内に、(48AWGワイヤのような)より細いワイヤを埋め込むことにより与えられる、コア44により囲まれた内腔50は、内腔50の少なくとも一部分を、他の構成要素のために用いることを可能にする。図に示されている複数のワイヤ42は、代表的なものにすぎず、好適な配線は、アセンブリのそれぞれの配線又はスパインに装着された複数の環状電極と少なくとも等しいか、又はそれより多くの複数のワイヤを提供するということが理解される。本発明で用いるのに好適な配線は、2013年4月11日出願の米国特許出願第13/860,921号、表題「HIGH DENSITY ELECTRODE STRUCTURE」及び2013年10月25日出願の同14/063,477号、表題「CONNECTION OF ELECTRODES TO WIRES COILED ON A CORE」に記載されており、これらの開示内容の全体が上記に組み込まれている。(リードワイヤ42が埋め込まれた)各配線40は、制御ハンドル14まで延在して、ワイヤ42と好適に電気接続してよく、したがって、電極20によって測定された信号を検出可能にする。
【0044】
上記のように、各スパイン18及び配線40のペアは、複数のリング電極20を担持しており、当該分野で、モノポーラー又はバイポーラ−として知られるように構成され得る。配線40は、
図6Aにおいて平面図で、
図6Cにおいて側面図で概略的に示す。これらの図では、非伝導性被覆30の一部が切り取られて配線40のワイヤ42を露出させており、リング電極20の配線40への取り付け部を図示している。
図6Aは、電極20の取り付け前の配線40を図示しており、
図6Cは、リング電極の取り付け後の配線を図示している。リング電極20は、シース54上を滑動できるようにする好適な寸法を有してよい。
【0045】
各電極20の取り付け位置は、例示の実施例のワイヤ42Eなど1本又は2本以上のワイヤ42の上に位置してよい。ワイヤ42E上の非伝導性被覆30の区間及び対応する絶縁層46Eの区間が除去されて、導電部48Eへの通路54が提供される。開示された一実施形態では、導電性セメント56が通路に送り込まれてよく、次いでリング電極20を摺動させてセメントと接触してよく、最後に電極が圧着固定されてよい。あるいは、非伝導性被覆30から特定のワイヤを引き出し、リング電極20をそのワイヤに抵抗溶接又は半田付けすることにより、リング電極20を特定のワイヤ42に取り付けてもよい。
【0046】
図7は、バスケット形状の電極アセンブリ16の使用法を図示しやすくするための、本発明の実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。遠位端にバスケット形状の電極アセンブリ16(この図では図示なし)を備えるカテーテル10は、検出した信号を記録し、解析するコンソール62に対応する電極20からのワイヤ42(いずれもこの図では図示なし)を接続するためのコネクタ60を近位端に有してよい。電気生理学医64は、患者66の心臓68から電極電位信号を取得するために患者66にカテーテル10を挿入してよい。この専門家は、挿入を実施するために、カテーテルに取り付けられた制御ハンドル14を使用する。コンソール62は、受信信号を解析する処理装置70を含んでよく、コンソールに取り付けられたディスプレイ72に、解析結果を表示してよい。この結果は典型的に、信号から誘導されたマップ、数値表示、及び/又はグラフの形式である。
【0047】
更なる態様では、処理装置70はまた、
図1に概略的に示すように、バスケット形状の電極アセンブリ16に隣接するカテーテル10の遠位端付近に設置された、1個又は2個以上の位置センサ74から信号を受信してよい。このセンサは、1個の磁場応答コイル又は複数個のかかるコイルをそれぞれ備えてよい。複数のコイルを使用することにより、六次元位置及び向き座標を決定できる。したがって、センサは、外部コイルからの磁場に応答して電気位置信号を生成し、それによってプロセッサ70が、心臓腔内におけるカテーテル10の遠位端の位置(例えば、場所及び向き)を測定できる。次いで、電気生理学医は、ディスプレイ72で患者の心臓画像上のバスケット形状の電極アセンブリ16の位置を確認してよい。例として、この位置検出法は、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)製のCARTO(商標)システムを使用して実行してよく、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号、及び同第2004/0068178 A1号に開示されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。上記の内容から分かるように、他の位置検出法を用いてもよい。所望により、少なくとも2個の位置センサがバスケット形状の電極アセンブリ16の近位及び遠位に位置してよい。近位センサに対する遠位センサの座標を測定してよく、バスケット形状の電極アセンブリ16のスパイン18の曲率に関する他の既知の情報と共に使用して、電極20のそれぞれの位置を検出する。
【0048】
上記の説明文は、本発明の現時点において開示されている実施形態に基づいて示したものである。本発明が関係する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を著しく逸脱することなく、説明した構造の改変及び変更を実施できることを理解するであろう。当業者に理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺ではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載されかつ例示される厳密な構造のみに関連したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 近位端及び遠位端と、内部を貫通する少なくとも1個のルーメンと、を有する細長いカテーテル本体と、前記カテーテル本体の前記遠位端にあるバスケット形状の電極アセンブリと、を備えるカテーテルであって、前記バスケット形状の電極アセンブリが、複数のスパインを備え、前記複数のスパインが、これらの近位端及び遠位端において接続されており、各スパインが、複数の電極と、コア上に巻きつけられ、シースで被覆された対応する複数のワイヤを有する配線と、を備え、各電極が前記シースを通して前記複数のワイヤのうちの1本に取り付けられ、前記バスケット形状の電極アセンブリは、前記スパインが、径方向外側に弓状に張り出している膨張状態の配置と、前記スパインが前記カテーテル本体の長手方向軸に概ね沿って配列されている収縮状態の配置と、を有する、カテーテル。
(2) 前記バスケット形状の電極アセンブリが少なくとも8個のスパインを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記バスケット形状の電極アセンブリが少なくとも10個のスパインを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記バスケット形状の電極アセンブリが少なくとも12個のスパインを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 各スパインが少なくとも10個の電極を備える、実施態様1に記載のカテーテル。
【0050】
(6) 各スパインが少なくとも16個の電極を備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記バスケット形状の電極アセンブリが少なくとも12個のスパインを備え、各スパインが少なくとも16個の電極を備え、前記カテーテル本体が約10フレンチ未満の直径を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) 各スパインが、凹状遠位領域と、凸状中間領域と、凹状近位領域と、を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 各スパインの前記遠位端を固定するキャップを更に備え、対向するスパインが、前記キャップ内の孔を通る連続材料片によって形成されている、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 近位端及び遠位端を有する膨張部を更に備え、前記膨張部が前記ルーメン内に摺動自在に配置され、前記カテーテル本体の前記長手方向軸と揃っており、前記複数のスパインがそれらの遠位端において前記膨張部に取り付けられており、前記バスケット形状の電極アセンブリは、前記膨張部が前記カテーテル本体に対して前記長手方向軸に沿って近位に移動したときに前記膨張状態の配置を有し、前記膨張部が前記カテーテル本体に対して前記長手方向軸に沿って遠位に移動したときに前記収縮状態の配置を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
【0051】
(11) 各スパインが、前記配線の前記コア内に配置された可撓性ワイヤを更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(12) 前記可撓性ワイヤが形状記憶合金である、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記ルーメンが、前記バスケット形状の電極アセンブリに潅注流体を送達するように構成されている、実施態様1に記載のカテーテル。