【実施例1】
【0016】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A間の断面図、
図1(c)は、
図1(a)のB−B間の断面図である。
図1(a)から
図1(c)のように、実施例1の弾性波デバイス100は、例えばパッケージ基板である基板10と、デバイスチップ20と、を含む。デバイスチップ20は、バンプ50によって基板10の平坦上面にフリップチップ実装されている。基板10とデバイスチップ20との間には、デバイスチップ20に設けられた弾性波共振器24とバンプ50とが露出する空隙52が形成されている。弾性波共振器24は弾性波を励振する機能部であり、弾性波共振器24が空隙52に露出することで弾性波の励振を確保できる。
【0017】
基板10は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)基板などのセラミック基板であるが、その他の絶縁基板であってもよい。基板10の上面にパッド12が設けられている。バンプ50はパッド12に接合している。パッド12は、基板10の内部に設けられた内部配線14を介して、基板10の下面に設けられたフットパッド16に電気的に接続されている。
【0018】
デバイスチップ20は、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)基板又はニオブ酸リチウム(LiNbO
3)基板などの圧電基板を含む基板22と、基板22の主面上に設けられた弾性波共振器24と、を含む。基板22は、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、又はシリコン基板などの支持基板の上面に圧電基板が接合された接合基板でもよい。基板22の主面上には、さらにパッド26が設けられている。バンプ50はパッド26に接合している。
【0019】
パッド12、内部配線14、フットパッド16、及びパッド26は、例えば金(Au)で形成されているが、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などのその他の金属で形成されていてもよい。バンプ50は、例えば金(Au)バンプ又は銅(Cu)バンプであり、例えばスタッドバンプ又はめっきバンプである。
【0020】
基板10の上面であって、デバイスチップ20の外側に金属パターン18が設けられている。金属パターン18はデバイスチップ20を囲んで設けられている。金属パターン18は、例えば金(Au)によって形成されている。デバイスチップ20の基板10とは反対側の面(以下、デバイスチップ20の上面と称す)を覆ってリッド40が設けられている。リッド40は、例えばコバールなどの半田よりも融点の高い金属で形成された金属板である。
【0021】
リッド40は、デバイスチップ20の上面に対して凹んだ凹部46と凹部46よりもデバイスチップ20側に突き出た凸部48とを有し、凹部46と凸部48とが繰り返された波板形状をしている。すなわち、凹部46と凸部48は、X方向で互いに繰り返し設けられ、X方向に交差するY方向に延在している。なお、X方向及びY方向は任意の方向であり、凹部46と凸部48の繰り返しは、周期的な場合に限られず、非周期的であってもよい。リッド40は、凸部48でデバイスチップ20の上面に接し、凹部46ではデバイスチップ20の上面に接していない。凹部46とデバイスチップ20の上面との間は空隙30が形成されている。リッド40の厚さは例えば10μm程度である。リッド40の波形状の振幅Aは例えば25μm程度である。波形状の周期は適宜設定することができるが、例えば弾性波デバイス100をピックアップする実装ツールの径の4分の1程度であることが好ましい。
【0022】
基板10とリッド40との間でデバイスチップ20を囲んで半田42が設けられている。半田42は、金属パターン18の上面とリッド40の下面とに接合している。リッド40は、デバイスチップ20の上面より外側においても凹部46と凸部48とを有する。半田42はリッド40の凹部46と凸部48とに接合している。弾性波共振器24は、半田42によって空隙52内に封止されている。リッド40及び半田42の表面を覆って保護膜44が設けられている。保護膜44は、例えば金属膜であり、例えばニッケル(Ni)のメッキ膜である。
【0023】
図2(a)は、弾性波共振器24の平面図である。
図2(a)のように、弾性波共振器24は、例えば弾性表面波共振器である。弾性波共振器24は、基板22上に、IDT(Interdigital Transducer)60とその両側に位置する反射器62とを備える。IDT60は、1対の櫛形電極64を備える。櫛形電極64は、複数の電極指66と、複数の電極指66が接続されたバスバー68と、を備える。1対の櫛形電極64は、電極指66がほぼ互い違いに配列するように対向している。IDT60は、基板22に弾性表面波を励振する。IDT60及び反射器62は、アルミニウム(Al)などの金属で形成されている。IDT60及び反射器62上に絶縁体からなる保護膜又は温度補償膜を設けてもよい。すなわち、機能部は、IDT60とその上に設けられた保護膜又は温度補償膜とを有していてもよい。
【0024】
なお、実施例1では、弾性波共振器24が弾性表面波共振器である場合を例に説明するが、弾性波共振器24は圧電薄膜共振器であってもよい。
図2(b)は、圧電薄膜共振器の断面図である。
図2(b)のように、基板22上に圧電膜72が設けられている。基板22は、例えばサファイア基板、スピネル基板、又はアルミナ基板などの絶縁基板、若しくはシリコン基板などの半導体基板である。圧電膜72を挟んで下部電極70と上部電極74が設けられている。下部電極70と基板22との間に空隙76が形成されている。下部電極70及び上部電極74は、圧電膜72内に厚み縦振動モードの弾性波を励振する。下部電極70及び上部電極74は、例えばルテニウムなどの金属膜である。圧電膜72は、例えば窒化アルミニウム膜である。
【0025】
図3(a)から
図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。
図3(a)から
図4(c)で説明する製造方法は多面取りプロセスによる製造方法である。
図3(a)のように、予め準備しておいた、パッド12、内部配線14、フットパッド16、及び金属パターン18が形成された基板10の平坦上面に、複数のデバイスチップ20をバンプ50によってフリップチップ実装する。基板10の上面とデバイスチップ20との間には空隙52が形成される。
【0026】
図3(b)のように、複数のデバイスチップ20上に、波板形状のリッド40と半田42とを含む積層体を、半田42がデバイスチップ20側になるように配置する。
【0027】
ここで、波板形状のリッド40の製造方法について説明する。
図5(a)から
図5(f)は、リッドの製造方法を示す断面図である。
図5(a)のように、まず、ロール状に巻かれたリッド40を準備する。
【0028】
図5(b)のように、リッド40に対して圧延処理及び熱処理を施した後、リッド40を金型78に挿入して金型78で押圧する。金型78には、リッド40を波板形状にするための凹凸80が形成されている。金型78でリッド40を押圧することで、
図5(c)のように、波板形状のリッド40が得られる。
【0029】
図5(d)のように、リッド40を金型78に更に挿入する。金型78は、凹凸80の後段側に段差が形成されている。
図5(e)のように、金型78でリッド40を押圧することで、
図5(f)のように、波板形状のリッド40が所望の大きさに切断される。また、切断と同時に、ロール状に巻かれたリッド40の先端部分は波板形状となる。
【0030】
なお、波板形状のリッド40は、このような機械的加工で作製する場合に限られず、例えばエッチング処理などの化学的加工によって作製する場合など、その他の方法によって作製してもよい。
【0031】
図3(c)のように、積層体を加熱して半田42が溶融した状態とし、この状態でリッド40をデバイスチップ20側に押圧する。これにより、複数のデバイスチップ20の間隙に半田42が充填される。半田42は、基板10の上面に形成された金属パターン18上を濡れ広がった後に固化して、金属パターン18とリッド40とに接合する。リッド40は、凸部48でデバイスチップ20の上面に接する。リッド40の凹部46はデバイスチップ20の上面に接してなく、凹部46とデバイスチップ20の上面との間には空隙30が形成される。複数のデバイスチップ20は、リッド40と半田42とによって、空隙52を保ったまま封止される。
【0032】
図4(a)のように、基板10の下面に設けられたフットパッド16を保護するために、基板10の下面にレジスト膜82を形成する。レジスト膜82の下面に、後述するダイシングのためのダイシングテープ84を貼り付ける。
【0033】
図4(b)のように、複数のデバイスチップ20間で、リッド40、半田42、基板10、及びレジスト膜82を、ダイシングブレード86を用いたダイシングによって切断し、複数のデバイスチップ20を個片化する。複数のデバイスチップ20を確実に個片化するために、ダイシングテープ84の一部まで切断することが好ましい。
【0034】
図4(c)のように、ダイシングテープ84を除去した後、個片化された複数のデバイス88それぞれをバレル(不図示)に入れた後、バレルをめっき槽90に投入してバレルめっきを施す。これにより、リッド40及び半田42を覆う保護膜44が形成される。その後、レジスト膜82を除去することで、実施例1の弾性波デバイス100が形成される。
【0035】
図6は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図6のように、比較例の弾性波デバイス500では、リッド40は平坦形状をしている。このため、デバイスチップ20の上面全面にリッド40が接して設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0036】
図7(a)及び
図7(b)は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を説明するための図である。
図7(a)のように、比較例の弾性波デバイスを回路基板などに搭載するために、テフロン(登録商標)などの樹脂製の実装ツール92で弾性波デバイスをピックアップすることが行われる。弾性波デバイスのピックアップは実装ツール92がリッド40側に真空吸着することで行われるが、この際に、実装ツール92がリッド40に対して傾いて当たる場合がある。この場合、リッド40の全面がデバイスチップ20に直接接しているためにデバイスチップ20の一部に大きな応力が加わり、デバイスチップ20にクラック94が発生する場合がある。クラック94は、基板10とデバイスチップ20との間が空隙52となっていることで発生し易くなる。
【0037】
図7(b)のように、実装ツール92がリッド40に対して垂直に当たる場合、デバイスチップ20に加わる応力は分散される。しかしながら、弾性波デバイスの小型化のために、デバイスチップ20やリッド40を薄くすることが進められており、この場合、デバイスチップ20に加わる応力が分散されたとしてもデバイスチップ20にクラック94が発生する場合がある。実装ツール92のリッド40側の真空吸着面の大きさは例えば100μmφ〜1mmφである。例えば、長さ1.5mm、幅1.1mm、高さ0.36mmの大きさのデバイスチップ20に1mmφの大きさで20N(約2kg/cm
2)の荷重をリッド40に加えると、デバイスチップ20にクラックが発生した。
【0038】
比較例の弾性波デバイス500とは異なり、実施例1の弾性波デバイス100では、
図1(b)のように、リッド40は、デバイスチップ20の上面に対して凹んだ凹部46と凹部46よりもデバイスチップ20側に突き出た凸部48とを有する。そして、リッド40は、凸部48でデバイスチップ20の上面に接していて、凹部46ではデバイスチップ20の上面に接していない。この構造による効果を、
図8(a)及び
図8(b)を用いて説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの効果を説明するための図である。
図8(a)のように、リッド40が凸部48でデバイスチップ20の上面に接し且つ凹部46ではデバイスチップ20の上面に接していないと、実装ツール92がリッド40側に真空吸着する場合、リッド40は変形する。リッド40が変形することで、実装ツール92による応力がリッド40で吸収される。その結果、デバイスチップ20に加わる応力が低減される。なお、リッド40の変形は、加わる応力やその他の条件によって、バネのように変形する弾性変形の場合もあれば、塑性変形の場合もある。
図8(b)のように、リッド40の変形が塑性変形であった場合でも、リッド40が凸部48でデバイスチップ20の上面に接し、凹部46ではデバイスチップ20の上面に接しないことが維持されるため、実装ツール92で真空吸着を再度行った場合でもデバイスチップ20に加わる応力を低減できる。
【0039】
実施例1によれば、
図1(b)のように、リッド40は、デバイスチップ20の上面に対して凹んでいてデバイスチップ20の上面に接していない凹部46と、凹部46よりもデバイスチップ20側に突き出てデバイスチップ20の上面に接した凸部48と、を有する。これにより、
図8(a)及び
図8(b)で説明したように、実装ツール92による応力がリッド40で吸収されるため、デバイスチップ20に加わる応力を低減させることができる。よって、デバイスチップ20にクラックが発生することを抑制できる。また、デバイスチップ20のクラックの発生を抑制できるため、デバイスチップ20を薄くすることができ、弾性波デバイス100を低背化することが可能となる。
【0040】
また、実施例1によれば、リッド40の凹部46とデバイスチップ20の上面との間は空隙30が形成されている。このように、リッド40の凹部46とデバイスチップ20の上面との間が空隙30になっていることで、実装ツール92による応力をリッド40で効果的に吸収することができる。なお、リッド40の凹部46とデバイスチップ20の上面との間に他の部材が埋め込まれている場合でもよい。この場合、埋め込まれる部材は、リッド40によって応力を吸収する点から、半田42などのようにリッド40及びデバイスチップ20よりも柔らかい部材である場合が好ましい。
【0041】
また、実施例1によれば、リッド40はデバイスチップ20の上面より外側においても凹部46と凸部48とを有し、半田42は凹部46と凸部48とに接して設けられている。これにより、リッド40と半田42との接合面積が大きくなるために接合力を大きくできる。
【0042】
また、実施例1によれば、リッド40は金属板である。リッド40は絶縁板の場合でもよいが、実装ツール92による応力を吸収するバネのような機能を発揮する点から、リッド40は金属板である場合が好ましい。
【0043】
実施例1では、
図1(b)のように、リッド40は、正弦波の波形状をしている場合を例に示したが、その他の波形状の場合でもよい。
図9(a)から
図9(c)は、リッドの他の例を示す断面図である。リッド40は、
図9(a)のように、三角波の波形状をしていてもよいし、
図9(b)のように、矩形波の波形状をしていてもよいし、
図9(c)のように、鋸波の波形状をしていてもよい。なお、実装ツール92による応力を効果的に吸収する点から、リッド40は正弦波又は三角波の波形状をしている場合が好ましい。