(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869704
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】電磁波吸収ユニット、筐体、および乗り物
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20210426BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20210426BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
H05K9/00 M
B60P3/00 Z
E04B1/92
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-228654(P2016-228654)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-85473(P2018-85473A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503062345
【氏名又は名称】東京計器アビエーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森島 篤之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亙
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【審査官】
鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−317136(JP,A)
【文献】
特開2004−200342(JP,A)
【文献】
特開2011−142504(JP,A)
【文献】
特開2006−287018(JP,A)
【文献】
特開2005−099837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B60P 3/00
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波を吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記隙間に配置される傾斜面を有し、前記電磁波吸収体の表面側から入射する電磁波を前記電磁波吸収体に向けて反射する隙間反射部と、
を備え、
前記隙間反射部は、
断面視では、前記電磁波反射体側から前記電磁波吸収体側にいくに従って幅が狭くなる凸部を成し、
平面視では、ランダムな間隔で配置される電磁波吸収ユニット。
【請求項2】
前記隙間反射部は、円柱、三角柱、又は、四角柱である請求項1に記載の電磁波吸収ユニット。
【請求項3】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記電磁波吸収体の表面から前記隙間に向けて延び、電磁波が前記隙間に入射するのを抑制する入射抑制部と、
を備え、
前記電磁波吸収体と前記入射抑制部は、
一体であり、
断面視で前記電磁波吸収体の表面と前記入射抑制部を下底とし前記電磁波吸収体の裏面を上底とする台形を成す電磁波吸収ユニット。
【請求項4】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波を吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記隙間に配置される傾斜面を有し、前記電磁波吸収体の表面側から入射する電磁波を前記電磁波吸収体に向けて反射する隙間反射部と、
前記電磁波吸収体の表面、又は、前記電磁波吸収体及び前記隙間の表面に配置され、赤外線を吸収可能な赤外線吸収体を備える電磁波吸収ユニット。
【請求項5】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記電磁波吸収体の表面から前記隙間に向けて延び、電磁波が前記隙間に入射するのを抑制する入射抑制部と、
前記電磁波吸収体の表面、又は、前記電磁波吸収体及び前記隙間の表面に配置され、赤外線を吸収可能な赤外線吸収体を備える電磁波吸収ユニット。
【請求項6】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波を吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記隙間に配置される傾斜面を有し、前記電磁波吸収体の表面側から入射する電磁波を前記電磁波吸収体に向けて反射する隙間反射部と、
前記電磁波吸収体を包み、耐候性を有する耐候性シートと、
を備え、
前記耐候性シートは、前記電磁波反射体を包む電磁波吸収ユニット。
【請求項7】
所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波吸収可能な複数の電磁波吸収体と、
前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、
前記電磁波吸収体の表面から前記隙間に向けて延び、電磁波が前記隙間に入射するのを抑制する入射抑制部と、
前記電磁波吸収体を包み、耐候性を有する耐候性シートと、
を備え、
前記耐候性シートは、前記電磁波反射体を包む電磁波吸収ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電磁波吸収ユニットにより構成され、筐体本体部と、前記筐体本体部を開閉可能な蓋部と、を備える筐体。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電磁波吸収ユニットが貼付された乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収ユニット、電磁波吸収ユニットを用いた筐体、および電磁波吸収ユニットが貼付された乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに所定間隔を空けられて配置される複数の電磁波吸収体と、その複数の電磁波吸収体を挟む一対の可撓性シートと、を備える電磁波吸収部材(電磁波吸収ユニット)が開示される。
【0003】
また、その特許文献1の電磁波吸収部材には、電磁波吸収体が介在する部分は電磁波吸収体の厚み分厚く構成され、電磁波吸収体が介在しない部分は電磁波吸収体が無い分薄く構成されて縫製されているものがある。そして、厚みが厚い部分と薄い部分とがあることにより、電磁波吸収部材が曲げて使い易いという利点がある。
【0004】
一方、このような電磁波吸収部材には、対象物に貼付することでレーダーに探知されないようにする用途がある。この用途に用いられる場合に、レーダーが電磁波吸収部材に電磁波を発信すると、その電磁波が電磁波吸収部材に吸収される。そのために、この電磁波吸収部材が貼付された対象物が、レーダーによって探知されないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−87968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電磁波吸収部材が曲げられて用いられるときに、電磁波吸収体同士の間の隙間に電磁波吸収体がないと、電磁波が吸収されずに反射されてしまい、レーダーで探知されてしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、電磁波吸収体が曲げられるときにも、電磁波を効率良く吸収することができる電磁波吸収ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様としては、所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波を吸収可能な複数の電磁波吸収体と、前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、前記隙間に配置される傾斜面を有し、前記電磁波吸収体の表面側から入射する電磁波を前記電磁波吸収体に向けて反射する隙間反射部と、を備える電磁波吸収ユニットが提供される。
【0009】
前記隙間反射部は、断面視では、前記電磁波反射体側から前記電磁波吸収体側にいくに従って幅が狭くなる凸部を成し、平面視では、ランダムな間隔で配置されても良い。
【0010】
前記隙間反射部は、円柱、三角柱、又は、四角柱であっても良い。
【0011】
電磁波吸収ユニットは、所定間隔の隙間を空けて配置され、電磁波吸収可能な複数の電磁波吸収体と、前記複数の電磁波吸収体の各々の裏面に配置され、前記電磁波吸収体を通過する電磁波を反射可能な電磁波反射体と、前記電磁波吸収体の表面から前記隙間に向けて延び、電磁波が前記隙間に入射するのを抑制する入射抑制部と、を備えても良い。
【0012】
前記電磁波吸収体と前記入射抑制部は、一体であり、断面視で前記電磁波吸収体の表面と前記入射抑制部を下底とし前記電磁波吸収体の裏面を上底とする台形を成しても良い。
【0013】
前記電磁波吸収体の表面、又は、前記電磁波吸収体及び前記隙間の表面に配置され、赤外線を吸収可能な赤外線吸収体を備えても良い。
【0014】
前記電磁波吸収体を包み、耐候性を有する耐候性シートを備えても良い。
【0015】
前記耐候性シートは、前記電磁波反射体をも包んでも良い。
【0016】
前記電磁波吸収ユニットにより構成され、筐体本体部と、前記筐体本体部を開閉可能な蓋部と、を備える筐体が提供されても良い。
【0017】
前記電磁波吸収ユニットが貼付された乗り物が提供されても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電磁波吸収体が曲げられるときにも、電磁波が効率良く吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る電磁波吸収ユニット、貨物の斜視図である。
【
図2】ロール状に変形された電磁波吸収ユニットと貨物を上方から見た断面図である。
【
図3】(A)は、電磁波吸収ユニットを上方から見た断面図である。(B)は、(A)の電磁波吸収ユニットを湾曲させた状態を示す断面図である。
【
図4】電磁波吸収ユニットに照射される赤外線と電磁波の経路を示す断面図である。
【
図5】(A)は、第2実施形態に係る電磁波吸収ユニットを上方から見た断面図である。(B)は、(A)の電磁波吸収ユニットを湾曲させた状態を示す断面図である。
【
図6】電磁波吸収ユニットに照射される赤外線と電磁波の経路を示す断面図である。
【
図7】(A)は、第3実施形態に係る電磁波吸収ユニットを上方から見た断面図である。(B)は、(A)の電磁波吸収ユニットを湾曲させた状態を示す断面図である。
【
図8】電磁波吸収ユニットに照射される赤外線と電磁波の経路を示す断面図である。
【
図10】第5実施形態に係る図であり、(A)は電磁波吸収ユニットを適用したトラックの側面図であり、(B)は電磁波吸収ユニットを適用した建物の側面図である。
【
図11】(A)は、変形例1に係る電磁波吸収ユニットの平面図である。(B)は、変形例2に係る電磁波吸収ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0021】
本明細書において、ある部材又は領域が、他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電磁波吸収ユニット300、貨物900の斜視図である。
図2は、ロール状に変形された電磁波吸収ユニット300と貨物900を上方から見た断面図である。
図1に示されるように、レーダー950や赤外線スコープ960が配置される位置と貨物900が配置される位置との間に、電磁波吸収ユニット300が配置されている。電磁波吸収ユニット300は、表面側に赤外線吸収体50が配置され、裏面側に耐候性シート31、32によって包まれた電磁波吸収体20(
図2参照)が配置されている。
【0023】
ここで、レーダー950が電磁波EW(electromagnetic wave)を発信している場合を想定する。この場合に、電磁波EWは、電磁波吸収ユニット300よりも外側から貨物900の方へと発信されている。電磁波EWは、赤外線吸収体50を通過して電磁波吸収体20に吸収されていく。したがって、電磁波EWがレーダーに反射されなくなり、レーダーは貨物900を探知できない。電磁波EWは、
図1中の矢印X1方向に反射されない。
【0024】
また、赤外線スコープ960により電磁波吸収ユニット300よりも外側から貨物900の方を覗く場合を想定する。この場合に、貨物900が熱を有するとその熱から赤外線IR(infrared ray)が発せられる。ところが、その赤外線IRは赤外線吸収体50に吸収される。したがって、赤外線IRが赤外線スコープ960に届かなくなり、赤外線スコープ960では貨物900が探知されない。赤外線IRは、
図1中の矢印X2方向に通過しない。
【0025】
図2に示されるように、電磁波吸収ユニット300は、平面視で略円弧状に裏面側R2に湾曲させられて衝立のように使用されている。電磁波吸収ユニット300は、複数の積層30を有する。この積層30の各々は赤外線吸収体50と電磁波吸収体20とで積層されて形成されている。こういった複数の積層30同士の間に隙間部70があって耐候性シート31の部分が曲がることにより、電磁波吸収ユニット300が貨物900の形状に沿って曲げやすく構成されている。
【0026】
図3(A)は、電磁波吸収ユニット300を上方から見た断面図である。
図3(B)は、
図3(A)の電磁波吸収ユニット300を湾曲させた状態を示す断面図である。
図3(A)に示されるように、電磁波吸収ユニット300は、裏面側R2から表面側R1に向かって順に、耐候性シート31、電磁波反射体10、電磁波吸収体20、耐候性シート32、赤外線吸収体50が、配置される。
【0027】
(電磁波吸収体)
電磁波吸収体20は、電磁波を吸収可能な部材である。電磁波吸収体20として、可撓性を有するものが用いられる。この電磁波吸収体20は、電磁波反射体10の表面側R1に配置されることになる。この電磁波吸収体20としては、例えば、レーダー周波数帯において電磁波を吸収し、電磁波の反射を抑制する。電磁波吸収体20としては、例えば、2GHz以上で10〜20dB以上の電磁波吸収性能を保持するものを用いる。
【0028】
また、電磁波吸収体20は、フラット型のもの(三菱電線工業株式会社製のFPシリーズ)を使用し、短冊状に配置する。なお、このFPシリーズの電磁波吸収体20は、電磁波入射面側を粗に裏面側を密にした配置で、マイクロ波からミリ波までの広い周波数帯域にわたり優れた電磁波吸収性を有する。
【0029】
電磁波吸収体20の材質としては、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレンボード、発泡ポリエチレン、不燃段ボール、クロロプレンゴム、FRP、PVDC、PVC、セラミックモールド、ケイカル板、ポリエステル布、ポリエチレン板等が、単独または複合して用いられても良い。
【0030】
本実施形態では、電磁波吸収体20の厚みは10〜15mmのものを使用した。また、電磁波吸収体20の厚みは電磁波反射体10の厚みよりも厚い。ただし、これらの電磁波吸収体20や電磁波反射体10の厚みは、用途に合わせて適宜変更しても良い。
【0031】
(電磁波反射体)
電磁波反射体10は、電磁波を反射可能な部材である。電磁波反射体10として、可撓性を有するものが用いられる。この電磁波反射体10は、フラット型の電磁波吸収体20の裏側に配置され、入反射した電磁波を効率良く吸収させるために用いられる。電磁波反射体10としては、例えば、導電布、アルミシート、シールド布等の電磁波反射材が用いられても良い。このような電磁波反射体10が設けられるのは、電磁波EWが電磁波吸収体20の表面から裏面に進む距離分で電磁波吸収体20が電磁波EWを吸収するだけでなく、電磁波EWが電磁波吸収体20の裏面から表面に進む距離分までも電磁波吸収体20が電磁波EWを吸収することができるようにするためである。これにより、電磁波吸収体20の厚みを薄くすることが可能になる。
【0032】
(耐候性シート)
耐候性シート31、32(可撓性部材)は、耐候性を有するシート材であり、電磁波吸収体20と電磁波反射体10との積層を被覆する。耐候性シート31、32は、可撓性を有する。耐候性シート31、32には、例えば、ターポリン、ナイロンが用いられても良く、また、その他の素材が用いられても良い。電磁波吸収体20と耐候性シート31、32とにより電磁波吸収ユニット(ユニット)化されていて、可撓性が持たされている。
【0033】
耐候性シート31は電磁波反射体10の裏面側R2を被覆する。耐候性シート32は、電磁波吸収体20の表面側R1と、電磁波吸収体20と電磁波反射体10の端面(4つの側面)と、を被覆する。
【0034】
従って、耐候性シート31、32は、電磁波吸収体20と電磁波反射体10との積層を全方向の面から覆うように構成されている。なお、そのような耐候性シート31、32のいずれかの面が省略される形状であっても良い。
【0035】
耐候性シート31、32は、屋外での使用を考慮して、電磁波吸収体20と電磁波反射体10を覆って外部の風雨に対して電磁波吸収体20と電磁波反射体10を保護する。
【0036】
また、積層30が全体として湾曲し難い材質であったとしても、隙間部70同士の間の耐候性シート31と電磁波反射体10の部分を屈曲または湾曲させることで、電磁波吸収ユニット300をロール状に変形しても良い。すなわち、積層30と隙間反射部12との間で曲がるように構成しても良い。また、積層30が全体として湾曲し易い材質にしつつ、隙間部70同士の間の耐候性シート31と電磁波反射体10の部分を屈曲または湾曲させることで、電磁波吸収ユニット300をロール状に変形しても良い。
【0037】
このように、隙間部70同士の間の耐候性シート31と電磁波反射体10の部分が可撓性を有すれば、電磁波吸収ユニット300の全体が全て可撓性を有しなくても、貨物900を容易に囲うことができる。ただし、隙間部70がある位置では赤外線IRや電磁波EWが吸収されず、貨物900が発見され易くなる。そのために、隙間部70の幅は、積層30の幅よりも小さい。
【0038】
(赤外線吸収体)
赤外線吸収体50は、赤外線を吸収する部材であり、可撓性を有する。赤外線吸収体50は、電磁波吸収体20の表面側R1の耐候性シート32の表面に配置される。赤外線スコープ960は、貨物900が熱源を有していた場合にはその熱源から発せられる赤外線IRを撮像素子で受光して、赤外線の強度に応じた信号を得る。しかし、赤外線吸収体50で囲まれた貨物900は、赤外線IRが赤外線吸収体50に吸収されて外部に放出されないので、赤外線スコープ960を覗いても発見し難くなる。なお、赤外線吸収体50は、偽装網と合わせることにより、認識され難くする効果がある。
【0039】
(積層と隙間部)
電磁波吸収体20、電磁波反射体10、耐候性シート31、32、赤外線吸収体50は、重ね合されて積層30を構成している。この積層30が、複数設けられる。隣り合う積層30同士の間には隙間部70が設けられる。本実施形態では、耐候性シート31と電磁波反射体10が複数の積層30を繋いでいる。
【0040】
(隙間反射部)
耐候性シート31の隙間部70の部分には、電磁波吸収ユニット300の裏面側R2から表面側R1に向かって突出する隙間反射部12が設けられている。隙間反射部12は、断面視で電磁波反射体10から電磁波吸収体20にいくに従って幅が狭くなる凸部を成す。
【0041】
隙間反射部12の凸部は傾斜面12kを有する。傾斜面の傾斜角度は、反射した電磁波が電磁波吸収体20に向かう角度であれば良い(
図4参照)。隙間反射部12は、電磁波吸収体20の表面側から入射する電磁波を電磁波吸収体20に向けて反射する。
【0042】
図4は、電磁波吸収ユニット300に照射される赤外線IRと電磁波EWの経路を示す断面図である。この
図4を参照しつつ、赤外線IRや電磁波EWが電磁波吸収ユニット300に照射されたときの赤外線IRと電磁波EWの作用に関して説明する。
【0043】
図4では、電磁波吸収ユニット300に向かう赤外線IRと電磁波EWの経路が示されている。以下、赤外線IRや電磁波EWが電磁波吸収ユニット300に照射されたときの赤外線IRと電磁波EWの作用に関して説明する。
【0044】
貨物900から赤外線IRが発せられると、赤外線IRは赤外線吸収体50に吸収される。そのために、赤外線スコープ960を覗いても、電磁波吸収ユニット300に遮られて、貨物900を探知することができない。
【0045】
レーダー950から積層30に向かって電磁波EWが発信されると、電磁波EWが赤外線吸収体50、耐候性シート31を通過して、電磁波吸収体20に吸収される。また、電磁波EWは、電磁波吸収体20に吸収されずに電磁波反射体10に到達した場合には、電磁波反射体10にて反射されてから電磁波吸収体20に吸収される。そのため、電磁波吸収ユニット300が電磁波を吸収してしまうので、電磁波が反射されず、レーダー950が貨物900を感知することができない。
【0046】
また、レーダー950から隙間部70に向かって電磁波EWが発信されると、電磁波EWは、隙間部70を経由して隙間反射部12に到達して、隙間反射部12で反射されて電磁波吸収体20に吸収される。また、電磁波吸収体20に吸収されなかった電磁波EWは、電磁波反射体10にて反射されて電磁波吸収体20に吸収される。
【0047】
(第2実施形態)
図5(A)は、第2実施形態に係る電磁波吸収ユニット400を上方から見た断面図である。
図5(B)は、
図5(A)の電磁波吸収ユニット400を湾曲させた状態の断面図である。第2実施形態の電磁波吸収ユニット400が、第1実施形態の電磁波吸収ユニット300と異なる点は、第2実施形態の電磁波吸収ユニット400では、隙間反射部12に変えて、凹凸を有する隙間反射部11が設けられている点である。
【0048】
電磁波吸収ユニット400は、電磁波反射体10における隙間部70に対向する部位は、隙間反射部11を有する。この隙間反射部11は、複数の凸部11aと凹部11bとを有する。この意味で、第2実施形態の電磁波吸収ユニット400は、第1実施形態の電磁波吸収ユニット300に比べて、複数の凸部を有するとも言える。
【0049】
図6は、電磁波吸収ユニット400に照射される赤外線IRと電磁波EWの経路を示す断面図である。赤外線IRは赤外線吸収体50に吸収される。電磁波EWは、隙間部70以外の積層30の部分に対しては第1実施形態で前述したのと同様に作用する。
【0050】
しかし、電磁波EWは、隙間部70がある部分に対しては以下のように作用する。すなわち、電磁波EWは、隙間部70を経由して隙間反射部11に到達して、隙間反射部11に反射されて電磁波吸収体20に吸収される。また、電磁波吸収体20に吸収されなかった電磁波EWは、電磁波反射体10にて反射されて電磁波吸収体20に吸収される。
【0051】
(第3実施形態)
図7(A)は、第3実施形態に係る電磁波吸収ユニット500の断面図である。電磁波吸収ユニット500の電磁波吸収体20は、電磁波吸収体20の表面から隙間部70に向けて延びる入射抑制部20Aを有する。入射抑制部20Aは、電磁波吸収体20と同一の材質で形成され、電磁波EWを吸収することで、電磁波EWが隙間部70に入射するのを抑制する。電磁波吸収体20と入射抑制部20Aとは、ここでは一体であるが、別体であっても良い。
【0052】
ここでは、入射抑制部20Aを含む電磁波吸収体20は、断面視で、電磁波吸収体20と入射抑制部20Aの表面側R1の面を下底とし、電磁波吸収体20の裏面側R2の面を上底とする台形を、上底を耐候性シート31に設けた構成となっている。
【0053】
図7(B)は、変形された電磁波吸収ユニット500の断面図である。電磁波吸収ユニット500が裏面側R2に曲げられると、隙間部70が開く。しかし、入射抑制部20Aがあるために、隙間部70の開き具合は小さく抑制される。
【0054】
図8は、電磁波吸収ユニット500に照射される赤外線IRと電磁波EWの経路を示す断面図である。赤外線吸収体50は、入射抑制部20Aがあるため、隙間部70がある実施形態1、2の構成よりも広いので、赤外線IRが吸収され、赤外線IRが外部に放射される量が低減される。また、電磁波吸収体20は、入射抑制部20Aがあるため、前述の実施形態の構成よりも表面側R1が広いので、電磁波が吸収される。
【0055】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る筐体600の斜視図である。
図10に示されるように、筐体600(可撓性筐体)は、電磁波吸収ユニットが筐体形状を成すマットである。例えば、筐体600は、筐体部600aと蓋部600bとを有する。筐体部600aの4つの側面と底面は、積層30と隙間部70が外観に現れている。蓋部600bの表面も、積層30と隙間部70が外観に現れている。蓋部600bが筐体部600aに対して開閉自在に構成される。こうした筐体600の筐体部600a中に貨物コンテナを入れ、蓋部600bを閉じる。
【0056】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態の構成を示す側面図である。
図10に示されるように、トラック951の外観部951A(
図10(A)参照)や建物952の外観部952A(
図10(B)参照)に前述してきた電磁波吸収ユニットを貼付される等して適用(
図10中の斜線部分に適用)しても良い。また、ガラスやタイヤに関しては、赤外線吸収物質や電磁波吸収物質が含有されたガラスやタイヤを用いると良い。
【0057】
(変形例)
図11(A)は、変形例1に係る電磁波吸収ユニット980の平面図である。
図11(B)は、変形例2に係る電磁波吸収ユニット990の平面図である。隙間反射部12は、
図11(A)のように円柱であっても良く、
図11(B)のように四角柱であっても良い。隙間反射部12は、その他三角柱を成しても良い。また、このような隙間反射部12は、平面視ではランダムな間隔で配置される。隙間反射部12がランダムでなくて所定間隔毎に配置される構成も考えられるが、所定間隔毎であると反射が整然と規則的過ぎて、却ってレーダー950で探知される原因となる。したがって、隙間反射部12の並び間隔はランダムの方が良い。なお、隙間反射部12が平面視で隙間部70に沿って形成される構成も考えられるが、これも前述した所定間隔毎と同様に形状が規則的過ぎる欠点がある。
【0058】
前述してきた第1実施形態〜第5実施形態、変形例1、変形例2のいずれかの構成によれば、電磁波吸収体が曲げられるときにも、電磁波が効率良く吸収される。
【符号の説明】
【0059】
10:電磁波反射体、11:隙間反射部、12:隙間反射部、20:電磁波吸収体、30:積層、31:耐候性シート、50:赤外線吸収体、70:隙間部、200:電磁波吸収ユニット、300:電磁波吸収ユニット、400:電磁波吸収ユニット、600:筐体、600A:筐体部、600B:蓋部、900:貨物、EW:電磁波、IR:赤外線、M:周方向、R1:表面側、R2:裏面側