(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、実質的に同一の機能及び要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明を行う。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係や各層の厚みの比率などは現実のものと異なることがある。
【0011】
(第1実施形態)
[構成]
全体構成
図1、
図2を用いて第1実施形態に係る起歪体の全体構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る起歪体の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1の起歪体の平面構成を示す平面図である。
【0012】
図1および
図2に示すように、第1実施形態に係る起歪体16は、中央部161、中央部161の周囲を囲む外周部162、中央部161と外周部162とを接続する4つの接続部163を備える。起歪体16は、例えばステンレス等の所定の金属等により構成される。
【0013】
中央部161は、外周部162の角部を結んだ2本の対角線L1の交点である中心Oを含む。また、中央部161には、後述するブリッジ回路を構成するための複数の参照抵抗が設けられる。中央部161の角部には、外部部材である第1支持部材に固定するための4つのネジ穴18aが設けられる。各ネジ穴18aは、省スペース化のために、対角線L1の方向に沿って中心側から外側へ中空部OP1において突出するように設けられる。
【0014】
外周部162の角部には、外部部材である第1支持部材と異なる第2支持部材に固定するための4つのネジ穴17aが設けられる。各ネジ穴17aは、省スペース化のために、対角線L1の方向に沿って外側から中心側へ中空部OP1において突出するように設けられる。
【0015】
接続部163は、対角線L1の方向とは異なる方向に沿って中心Oから放射状に4つ設けられている。接続部163には、ここでは図示しないが、XYZ方向の外力およびトルクを検出するための複数の歪センサが設けられる。接続部163の幅は、中心Oから外側へ離れるに従って小さくなるように構成される。
【0016】
また、Z方向に沿った起歪体16の高さHzは、中央部161、外周部162、および接続部163において共通であるため、実質的に同一である。起歪体16の高さHzは、X方向またはY方向に沿った外周部162の幅W162よりも大きくなるように構成される(Hz>W162)。
【0017】
さらに、外周部162および接続部163の弾性は、中央部161の弾性よりも大きくなるように構成される。より好ましくは、外周部162および接続部163は弾性機能を有し、中央部161は弾性機能を有さないように構成されることである。ここで、弾性機能とは、入力される外力およびトルクによって積極的に弾性変形が生じる機能をいう。
【0018】
より具体的には、中央部161の弾性変形の歪量は、定格荷重時に3×10
−6以下であることが望ましく、さらに望ましくは1×10
−6以下であることである。接続部(梁部)163の弾性変形は、定格荷重時に材料弾性限界内であって、歪量で2×10
−5以上であることが望ましく、さらに望ましくは2×10
−4以上であることである。外周部162の弾性変形は、定格荷重時に材料弾性限界内であって、最大撓み部分の撓み量が20μm以上であることが望ましく、さらに望ましくは50μm以上であることである。
【0019】
詳細構成
図3を用いて第1実施形態に係る起歪体16の詳細な平面構成について説明する。
図3は、起歪体16の歪センサ等が設けられた主表面側から見た中央部161および接続部163を詳細に示す平面図である。
【0020】
図3に示すように、接続部163の主表面上には、16個の歪センサ(歪ゲージ)Sa1、Sb1、Sa2、Sb2、Sa3、Sb3、Sa4、Sb4、Sa5、Sb5、Sa6、Sb6、Sa7、Sb7、Sa8、Sb8が設けられる。歪センサSa1〜Sb8は、後述するように金属薄膜抵抗体であって、例えばクロム(Cr)および窒素(N)を含む抵抗体(Cr−N抵抗体)である。そのため、後述するようにパターンニングのみで所望な位置に複数の歪センサSa1〜Sb8を配置できる。また、Cr−N抵抗体は、温度係数が小さいため、温度補償を容易とすることができる。歪センサSa1〜Sb8の長手方向は、対角線L1に沿う方向となるように構成される。
【0021】
中央部161の主表面上には、16個の参照抵抗Ra1、Rb1、Ra2、Rb2、Ra3、Rb3、Ra4、Rb4、Ra5、Rb5、Ra6、Rb6、Ra7、Rb7、Ra8、Rb8が設けられる。参照抵抗Ra1〜Rb8の形状は、実質的に歪センサSa1〜Sb8と同一であり、その長手方向は対角線L1に沿う方向となるように構成される。さらに、中央部161の主表面上には、中央部161の対角線L1の方向の一方に沿って電極171が設けられる。
【0022】
歪センサSa1〜Sb8と参照抵抗Ra1〜Rb8とは、後述する8つのブリッジ回路を構成するように、主表面上に設けられた電極171および配線172に電気的に接続される。配線172の線幅は、歪センサSa1〜Sb8と参照抵抗Ra1〜Rb8とを接続する部分においては小さくなるように構成される一方、その他の部分においては配線抵抗を低減するために接続部分に比べて大きくなるように構成される。
【0023】
しかも、歪センサSa1〜Sb8、参照抵抗Ra1〜Rb8、電極171、および配線172は、後述する薄膜技術を利用した製造方法を用いて、同一の主表面上に一体的に形成される。そのため、歪センサSa1〜Sb8、参照抵抗Ra1〜Rb8、電極171、および配線172は、起歪体16の対角線L1において鏡像対称となるようにレイアウト構成される。
【0024】
図4を用いて起歪体16の詳細な断面構成について説明する。
図4は、
図3の歪センサSa1を含む接続部163の断面図である。
【0025】
図4に示すように、接続部163の主表面上に絶縁膜170が設けられる。絶縁膜170上に感歪膜としてのCr−N抵抗体である歪センサSa1が設けられる。歪センサSa1上に銅(Cu)にて形成された電極リード膜である配線172が設けられる。歪センサSa1上および配線172上を覆うようにオバーガラス(OG)膜175が設けられる。また、配線172と歪センサSa1との界面および配線172とOG膜175との界面には、密着性を高めるためにクロム(Cr)を含む接着膜172aが設けられる。
【0026】
尚、この断面では図示していないが、中央部161における配線172の端部には、電極171が設けられる。電極171は、接着膜172a上に順次設けられた銅(Cu)と金(Au)との積層構造により構成される。
【0027】
ブリッジ回路
図5を用いて第1実施形態に係る起歪体16のブリッジ回路について説明する。
図5は、第1実施形態に係る起歪体16のブリッジ回路を説明するための図表である。
【0028】
図5に示すように、起歪体16は、8つのブリッジ回路Ba1、Ba2、Ba3、Ba4、Ba5、Ba6、Ba7、Ba8を含む。
【0029】
ブリッジ回路Ba1は、歪センサSa1、Sa2と参照抵抗Ra1、Ra2とを備える。電源端子Eと接地Gとの間に、順次、歪センサSa1および参照抵抗Ra1、並びに参照抵抗Ra2および歪センサSa2が直列接続される。直列接続された歪センサSa1および参照抵抗Ra1と、直列接続された参照抵抗Ra2および歪センサSa2とは、電源端子Eと接地Gとの間で並列接続される。一方の端子V−は、歪センサSa1と参照抵抗Ra1との結線に接続される。他方の端子V+は、参照抵抗Ra2と歪センサSa2との結線に接続される。その他のブリッジ回路Ba2〜Ba4についても、上記ブリッジ回路Ba1と同様である。
【0030】
ブリッジ回路Bb1は、歪センサSb1、Sb2と参照抵抗Rb1、Rb2とを備える。電源端子Eと接地Gとの間に、順次、歪センサSb1および参照抵抗Rb1、並びに歪センサSb2および参照抵抗Rb2が直列接続される。直列接続された歪センサSb1および参照抵抗Rb1と、直列接続された歪センサSb2および参照抵抗Rb2とは、電源端子Eと接地Gとの間で並列接続される。一方の端子V−は、歪センサSb1と参照抵抗Rb1との結線に接続される。他方の端子V+は、歪センサSb2と参照抵抗Rb2との結線に接続される。その他のブリッジ回路Bb2〜Bb4についても、上記ブリッジ回路Bb1と同様である。
【0031】
上記構成において、外部から力およびトルクが加わると、中央部161の位置が外周部162の位置に比較して相対的に変化するため、接続部163が力およびトルクに応じて変形する。この接続部163の変形に応じ、接続部163に設けられた各歪センサRa1〜Ra8に応力が加わり、各ブリッジ回路Ba1〜Bb4の各端子V−、V+の電圧のバランスが崩れ、力およびトルクに応じた所定の検出信号が検出される。
【0032】
[製造方法]
図6を用いて第1実施形態に係る起歪体16の製造方法について説明する。
図6は、第1実施形態に係る起歪体16の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0033】
図6に示すように、まず起歪体16の寸法検査等の所定の検査を行った後、起歪体16に対して所定の前処理を行う。前処理としては、例えば検査後の起歪体16の主表面上を、超音波や所定の薬剤等を用いた洗浄処理等が含まれる(B1)。
【0034】
続いて、前処理後の起歪体16の主表面上に、例えば熱酸化法等を用いて絶縁膜170を成膜する(B2)。
【0035】
続いて、例えば所定のアニーリング処理等による熱処理を起歪体16に行い、成膜した絶縁膜170の絶縁性等の特性が所定値以上となるように特性出しを行う(B3)。
【0036】
続いて、絶縁膜170上に、例えば所定のターゲットを用いたスパッタ法等を用いて、クロム(Cr)および窒素(N)を含んだCr−N薄膜を形成する。さらに、形成したCr−N薄膜上にフォトレジストを塗布し、塗布したフォトレジストにパターニングを行う。具体的には、中央部161の参照抵抗Ra1〜Rb8が配置される位置に参照抵抗Ra1〜Rb8と同一の平面形状のパターンをフォトレジストに転写し、接続部163の歪センサSa1〜Sb8が配置される位置に歪センサSa1〜Sb8と同一の平面形状のパターンをフォトレジストに転写し、パターンが転写された部分以外のフォトレジストを除去する。さらに、残存するパターンが転写されたフォトレジストをマスクとして、所定のエッチング処理を絶縁膜170の表面上まで行うことで、中央部161および接続部163の所定の位置に所望の形状の参照抵抗Ra1〜Rb8および歪センサSa1〜Sb8を形成する(B4)。
【0037】
続いて、中央部161および接続部163に、例えば上記ステップB4と同様の製造工程等を用いて、密着性を高めるためのクロム(Cr)薄膜による接着膜172aを形成し、当該接着膜172a上に、銅(Cu)を含む所定の電極リード膜を成膜して歪センサSa1〜Sb8および参照抵抗Ra1〜Rb8を電気的に接続するための配線172を形成する。さらに、形成した配線172上に、同様の製造工程によりクロム薄膜による接着膜172aを形成する(B5)。
【0038】
続いて、一方の対角線L1の方向に沿って、中央部161における配線172の端部の接着膜172a上に、例えば上記ステップB4と同様の製造工程等を用いて、銅(Cu)と金(Au)からなる積層構造を順次形成して所定の電極膜を成膜し、電極171を形成する(B6)。
【0039】
続いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて、電極171上を除く起歪体16の主表面上に、OG膜175を形成する(B7)。
【0040】
続いて、起歪体16の主表面上に形成した歪センサSa1〜Sb8等に対して所定の歪特性検査およびストレス検査等を施し、形成した歪センサSa1〜Sb8等に要求される特性を確認する(B8)。
【0041】
以上の製造方法により、第1実施形態に係る起歪体16を製造する。
【0042】
[作用効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る起歪体16は、実質的に歪が生じない中央部161の主要面上に設けられ、複数の歪センサSa1〜Sb8と共にブリッジ回路Ba1〜Bb4を構成する複数の参照抵抗Ra1〜Rb8を備える(
図3)。そのため、参照抵抗Ra1〜Rb8は、歪センサSa1〜Sb8と同一の起歪体16の主表面上に一体的に設けられる。その結果、歪センサSa1〜Sb8と参照抵抗Ra1〜Rb8との間に生じる温度誤差および外部ノイズの影響を低減でき、検出精度を向上することができる。
【0043】
しかも、歪センサSa1〜Sb8、参照抵抗Ra1〜Rb8、電極171、および配線172は、起歪体16の対角線L1において鏡像対称の関係となるように、そのレイアウトが構成される(
図3)。そのため、中央部161および接続部163の主表面上の限られたスペースに歪センサSa1〜Sb8等を配置するのに最適な構成となっている。
【0044】
さらに、ブリッジ回路Ba1〜Bb4を構成するために必要な歪センサSa1〜Sb8、参照抵抗Ra1〜Rb8、電極171、および配線172は、薄膜技術を利用した製造方法により、起歪体16の主要面上のみに設けられる(
図4、
図6)。そのため、高感度なセンサSa1〜Sb8を高密度かつ高精度に起歪体16の接続部163に設けることができる。従って、検出精度を補うために多数(例えば90個程度)の歪センサを配置する必要がなく、起歪体の表面上だけでなく例えば起歪体の側面上に接着剤等を用いて歪センサを貼り付ける必要もない。例えば本実施形態のような製造方法を用いない場合、歪センサの位置は、所望の位置より数百μm程度の誤差を生じ得るため、特定軸以外の力およびトルクが検出される多軸干渉の影響が増大する。また、例えば参照抵抗を起歪体の外部に設ける場合には温度誤差や外部ノイズが増大するため、温度誤差や外部ノイズを校正する必要もある。しかし、本実施形態では、このような不都合が生じることはない。
【0045】
また、Z方向に沿った起歪体16の高さHzは、中央部161、外周部162、および接続部163において実質的に同一である。起歪体16の高さHzは、X方向またはY方向に沿った外周部162の幅W162よりも大きくなるように構成される(Hz>W162)。さらに、外周部162および接続部163の弾性は、中央部163の弾性よりも大きくなるように構成される。外周部162および接続部163は弾性機能を有し、中央部163の弾性機能を有さないように構成されることがより望ましい。上記構成により、XYZ軸の各出力ゲインおよび各剛性をより適正に調整することが可能となる点で有利である。
【0046】
(第2実施形態(起歪体のその他の形状の一例))
図7を用いて第2実施形態に係る起歪体16Aを説明する。
図7は、第2実施形態に係る起歪体16Aの平面構造を示す平面図である。第2実施形態は、起歪体のその他の形状の一例に関する。
【0047】
図7に示すように、起歪体16Aは、対角線L2の方向における中央部161および外周部の各角部がほぼ直角形状である点で、第1実施形態に係る起歪体16と相違する。歪センサSa1〜Sb8は、同様に結合部163に設けられる。尚、参照抵抗等のその他の構成は、ここでの図示を省略している。
【0048】
その他の構造は、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。また、動作に関しても、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
[作用効果]
第2実施形態に係る起歪体16Aの構造および動作によれば、少なくとも第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、必要に応じて、第2実施形態に係る起歪体16Aを適用することが可能である。
【0050】
(第3実施形態(3ビーム方式の起歪体の一例))
図8および
図9を用いて第3実施形態に係る起歪体16Bを説明する。
図8は、第3実施形態に係る起歪体16Bの全体構成を示す斜視図である。
図9は、
図8の起歪体16Bの平面構造を示す平面図である。第3実施形態は、3ビーム方式の起歪体の一例に関する。
【0051】
図8および
図9に示すように、起歪体16Bは、第1実施形態に係る起歪体16と比較して、ビーム部である接続部163が3つの3ビーム方式として構成されている。そのため、接続部163には、12個の歪センサSa1〜Sb6が設けられる点で、上記第1実施形態と相違する。従って、ここでの図示は省略しているが、歪センサSa1〜Sb6に対応する中央部161に設けられる参照抵抗も12個である。
【0052】
外周部161の平面形状は、3本の対角線L3の方向に設けられる3つの角部を頂点とする三角形状である。また、外周部161の角部は、対角線L3を半径とする円に接し、ネジ穴17aの円形状と同心の円形状となるように構成される。
【0053】
その他の構造および動作は、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0054】
[作用効果]
第3実施形態に係る起歪体16Bの構造および動作によれば、少なくとも第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0055】
さらに、第3実施形態に係る起歪体16Bは、ビーム部である接続部163が3つである3ビーム方式として構成されるため、接続部163には12個の歪センサSa1〜Sb6が設けられ、中央部161には12個の参照抵抗が設けられる(
図8、
図9)。
【0056】
このように、第3実施形態に係る起歪体16Bは、4つの接続部163が設けられる4ビーム方式の起歪体16、16Aと比較して、1セットの歪センサおよび参照抵抗、並びにこれに伴う配線や電極を低減することができる。そのため、起歪体16Bの大きさを縮小化できる点で有利である。さらに、冗長な1セットの歪センサおよび参照抵抗が不要となるため、最小数のブリッジ回路構成にて6軸方向の力およびトルクを検出でき、製造コストも低減できる点で有利である。
【0057】
(第4実施形態(力覚センサに適用した一例))
図10乃至
図12を用いて第4実施形態を説明する。第4実施形態は、第1実施形態に係る起歪体16を力覚センサに適用した一例に関する。第4実施形態に係る力覚センサは、例えばロボットアーム等に用いられ、XYZ方向の力およびトルクを検出するための6軸力覚センサである。
【0058】
[構成]
図10は、第1実施形態に係る起歪体16を備えた力覚センサ10の外観を示す斜視図である。
図11は、
図10の力覚センサ10を示す分解斜視図である。
【0059】
図10および
図11に示すように、力覚センサ10は、円筒状の本体11と、本体11に対して動作可能な円筒状の可動体12とを備える。本体11は、本体11の底部に形成された複数のネジ穴19aを貫通する複数の取付ネジ19により、図示せぬロボットアームの本体に固定される。可動体12は、その上面に図示せぬロボットアームのハンド部分を取り付けるためのハンド取付プレートとして機能する。
【0060】
本体(ベース)11は、力覚センサ10の本体となるベース部材であり、可動体12は、弾性変形が可能な起歪体16を介在して本体11に対して、6軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及び各軸周り方向)に動作可能に取着されている。
【0061】
すなわち、
図11に示すように、起歪体16の中央部161は、複数のネジ穴18aをそれぞれ貫通するハンドプレート固定ネジ18により可動体(第1支持部材)12に固定される。起歪体16の外周部162は、複数のネジ穴17aをそれぞれ貫通する起歪体固定ネジ17により、本体11(第2支持部材)に固定される。
【0062】
起歪体16の主表面および裏面は、X軸、Y軸により形成される面と平行に配置され、起歪体16の中心Oを垂直に通る線は、Z軸と一致されている。上記構成において、可動体12に外力が加えられると、可動体12が動作し、起歪体16の接続部163が変形する。上記のように、起歪体16の接続部163には歪センサSa1〜Sb8が設けられているため、歪センサSa1〜Sb8により起歪体16の変形が電気信号として検出される。
【0063】
可動体12の周面には、例えば4つの円形の開口部13が等間隔に設けられている。すなわち、各開口部13は、X軸方向とY軸方向に配置されている。開口部13の数は、4つに限定されず、3つ以上であればよい。各開口部13の内部にはストッパ14が配置され、各ストッパ14は、ストッパ取付ボルト15により、本体11に固定されている。
【0064】
ストッパ14は、可動体12の動作範囲を規制するものであり、ストッパ14の最外周部には、開口部13の内面が当接可能な第1側面14aを備えている。すなわち、第1側面14aは、可動体12の動作に伴って起歪体16が変形した際、可動体12の開口部13の内面が第1側面14aに当接し、起歪体16の接続部163の過剰な変形を防止する保護機構として機能する。
【0065】
本体11の内部には、起歪体16に対向して基板20が設けられる。基板20は、複数のねじ穴21aを有し、各ネジ穴21aを貫通する固定ネジ21により、本体11に固定される。基板20には、起歪体16に設けられた歪センサが電気的に接続される。この詳細については後述する。
【0066】
本体11の底部には、開口部11aを閉塞するカバー22が装着される。すなわち、カバー22は、複数のねじ穴23aを有し、これらネジ穴23aを貫通する固定ネジ23により、本体11に固定される。
【0067】
本体11の側面には、検出信号を外部に伝達するための配線25が引き出されている。配線25は、基板20と電気的に接続されている。
【0068】
力覚センサに実装される状態の起歪体
図12を用いて力覚センサ10に実装される状態の起歪体16について詳細に説明する。
図12は、力覚センサ10に実装される状態の起歪体16を示す断面図である。
【0069】
図12に示すように、起歪体16の主表面上に、絶縁膜170が設けられ、絶縁膜170上に電極171が設けられる。さらに、力覚センサ10に実装するために、電極171上に異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)181が設けられる。異方性導電フィルム181上に、電極171と基板20とを電気的に接続するためのリード配線182が設けられる。リード配線182は、ここでは、絶縁性の柔軟なフィルムと当該フィルムに配線された所定の電気回路とを備えており、可動体12の動きに合わせて自在に曲がることが可能な構成なFPC(Flexible printed circuits)である。また、起歪体16の主表面上を覆うように、保護シール183が設けられる。
【0070】
[検出動作]
上記構成の力覚センサ10の検出動作について簡単に説明する。ここでは、Z軸方向において可動体12のほぼ中央部分に加えられた外力(荷重)を検出する場合を一例に挙げる。
【0071】
Z軸方向において可動体12のほぼ中央部分に外力が加えられると、外力によって可動体12がZ軸方向に沿って下方に移動する。本体11は固定されており外力によっても移動しないため、可動体12は、開口部13の上側の内面がストッパ14の上側の第1側面14aに当接するまで、下方に移動する。
【0072】
そのため、可動体12の下面が起歪体16の上面を加圧し、加圧された起歪体16の接続部163は変形を起こす。ストッパ14により、起歪体16の変形は所定の範囲に限定されているため、過剰な外力による破壊から起歪体16が保護される。起歪体16の変形は、上述した歪センサSa1〜Sb8により検出され、ブリッジ回路Ba1〜Bb4により電気信号に変換される。検出された電気信号は、電極171からリード配線182および基板20を介して配線25により外部に伝達され、外力を検出することができる。
【0073】
その後、可動体12への外力の印加が解除されると、起歪体16の接続部163は、弾性変形により、元の形状に復帰する。
【0074】
尚、ここでは、Z軸方向における外力検出動作を一例に挙げたが、X軸方向およびY軸方向におけるその他の外力検出動作も同様である。また、X、Y、Z軸方向における各トルク検出動作についても、上記外力検出動作と実質的に同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
[作用効果]
第4実施形態に係る起歪体16を備えた力覚センサ10の構造および動作によれば、少なくとも第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0076】
さらに、必要に応じて、本実施形態の起歪体16を力覚センサ10に適用することが可能である。
【0077】
また、力覚センサ10は、可動体12の動作範囲を規制するものであり、その最外周部に開口部13の内面と当接可能な第1側面14aを有するストッパ14を備える。このように、ストッパ14は、非常にシンプルな形状であり、かつ6軸方向の全てに対して保護機能を有している。その結果、高感度かつ製造コストの低減化に有利な力覚センサ10を提供することが可能となる。
【0078】
(変形例)
以上、第1乃至第4実施形態を一例に挙げて説明したが、本発明の実施形態は、上記第1乃至第3実施形態に係る起歪体16、16A、16Bに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変形が可能であることは勿論である。
【0079】
さらに、起歪体16、16A、16Bが適用可能な対象は、第4実施形態において説明した力覚センサ10に限定されず、各種のセンサに適用可能であることは勿論である。
【0080】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。