(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869714
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】船舶を係留する係留ユニット
(51)【国際特許分類】
B63B 21/00 20060101AFI20210426BHJP
E02B 3/20 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B63B21/00 A
E02B3/20 301
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-247371(P2016-247371)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-122006(P2017-122006A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2019年12月20日
(31)【優先権主張番号】2016062
(32)【優先日】2016年1月7日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】514281337
【氏名又は名称】ヨーロピアン インテリジェンス ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】EUROPEAN INTELLIGENCE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アル ズハイリー,ネズハット
(72)【発明者】
【氏名】マンパエイ,ジェラルドゥス アントーニウス ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブルレイデル,ヨハン マルロン
【審査官】
加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−129979(JP,A)
【文献】
特表2008−534349(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0194685(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/110666(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/50
B66D 1/52
E02B 3/20
B63B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を係留する係留ユニットであって、
ベースと、該ベースに取り付けられるアームと、船舶の係留線を接続するために前記アームによって支持されるフックとを含み、前記アームは、引込位置と延出位置との間で移動可能であり、当該係留ユニットは、前記アームを前記延出位置から前記引込位置に動かす作動デバイスを含み、
前記アームは、前記ベースの第1の部分に取り付けられ、前記ベースの前記第1の部分は、水平面に対して直交する垂直軸の周りでの前記ベースの前記第1の部分の回転を可能にするよう、回転的に固定される前記ベースの第2の部分に回転可能に取り付けられ、
前記アームは、中間ロッドで前記ベースに取り付けられ、前記中間ロッドの1つの末端は、前記ベースに繋がり、前記中間ロッドの他の末端は、前記フックから遠いヒンジで前記アームに繋がり、前記ヒンジは、前記フックと前記作動デバイスが前記アームに繋がる位置との間で前記アームに位置付けられ、
前記作動デバイスは、潜在的なエネルギをエネルギ蓄積デバイス又はアキュムレータ、好ましくは、空圧シリンダに放出するように構成されるデバイスとして選択されることを特徴とする、
係留ユニット。
【請求項2】
当該係留ユニットは、前記ベースから離れる方向に前記フックに対して適用される力が所定の第1の閾値を超えるときに、前記アームが前記引込位置から前記延出位置に動くのを可能にする、制御システムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の係留ユニット。
【請求項3】
当該係留ユニットは、前記ベースから離れる方向に前記フックに対して適用される力が所定の第2の閾値よりも下に落ちるときに、前記アームが前記引込位置に向かって動くようにする、制御システムを含むことを特徴とする、請求項1乃至2のうちのいずれか1項に記載の係留ユニット。
【請求項4】
当該係留ユニットは、前記アームを前記引込位置に向かって動くときに前記アームを支持するバネとして作用する、アーム平衡要素を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の係留ユニット。
【請求項5】
前記作動デバイスは、液圧シリンダ、機械式バネ、電気モータによって電力供給される回転可能なネジ、空圧シリンダ、機械式エネルギ消散器、及びそれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される、1つであることを特徴とする、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の係留ユニット。
【請求項6】
前記アームが前記引込位置から前記延出位置に動くときに前記作動デバイスから受けるエネルギの少なくとも一部を吸収するよう、前記作動デバイスと前記アキュムレータとの間に、エネルギ消散要素が設けられることを特徴とする、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の係留ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースと、ベースに取り付けられるアームと、船舶の係留線を接続するためにアームによって支持されるフックとを含む、船舶を係留する係留ユニットであって、アームは、引込位置と延出位置との間で移動可能であり、係留ユニットは、アームを延出位置から引込位置に動かす作動デバイスを含む、係留ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような係留ユニットは、特許文献1から知られている。この既知の係留ユニットは、係留フックに接続されるアクチュエータと、係留ベースとを有する。アクチュエータは、係留ベースに向かう係留フックの並進移動をもたらす。係留ユニットは、船舶運動検出システムや、係留ユニット制御システムも含む。係留ユニットは、係留線張力計を含んでよい。船舶運動検出システムは、船舶運動を示す入力を係留ユニット制御システムに提供する。次に、係留ユニット制御システムは、係留ユニットの適切な部分に出力信号を提供して、係留線張力を調節する。
【0003】
特許文献2は、浮揚チャージを水の中に配置し且つ浮揚チャージを水から取り出すデバイスを開示している。
【0004】
特許文献3は、直立位置から側方に延びる位置に蝶番付けされることができるロボットアームで構成され、側方に延びる位置において、船舶を係留するためにロボットアームを適用することができる、係留システムを開示している。
【0005】
特許文献4は、埠頭から側方に延びるアームを含み、アームは、アームに対して作用する引張力を軽減するために制動システムにリンクされる、海上船舶係留デバイスを開示している。
【0006】
特許文献5は、船舶のための液圧係留ケーブル保持デバイスを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術の係留ユニットの異なる課題に取り組むことを目標としている。
【0008】
本発明の第1の目的は、ヒーブ(heave)、スウェイ(sway)、サージ(surge)、ヨー(yaw)、ピッチ(pitch)及びロール(roll)のような、異なる船舶の動き及びそのような動きによって引き起こされる力に適合するようにより良好に備え付けられる、係留ユニットを提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、船舶の動きに対する改良された制動(damping)をもたらすように備え付けられる、係留ユニットを提供することである。
【0010】
本発明の第3の目的は、その拡張位置に向かうアームの偏位(excursion)の増大に伴って増大するような可変な剛性挙動を示す、係留ユニットを提供することである。
【0011】
本発明の第4の目的は、単純で確実な係留ユニットを提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、付属の請求項の1つ又はそれよりも多くに従った係留ユニットが提案される。
【0013】
特許文献6は、請求項1の前文に従った構成を備える係留ユニットを教示しており、アームは、ベースの第1の部分に取り付けられ、ベースの第1の部分は、水平面に対して直交する垂直軸の周りでのベースの第1の部分の回転を可能にするよう、回転的に固定されるベースの第2の部分に回転可能に取り付けられ
、アームは、中間ロッドでベースに取り付けられ、中間ロッドの1つの末端は、ベースに繋がり、中間ロッドの他の末端は、フックから遠いヒンジでアームに繋がり、ヒンジは、フックと作動デバイスがアームに繋がる位置との間で前記アームに位置付けられる。
【0014】
本発明によれば、係留ユニットの作動デバイスは、潜在的なエネルギをエネルギ蓄積デバイス又はアキュムレータ、好ましくは、空圧シリンダに放出するように構成されるデバイスとして選択される。引込位置から延出位置に向かうアームの移動後にエネルギ貯蔵デバイス又はアキュムレータ内に貯蔵されるエネルギは、後の場合に、係留ユニットに対して作用する力が所定の第2の閾値より下に落ちるときに、アームを延出位置から引込位置に向かって戻すために用いられ得る。このエネルギの貯蔵及び再使用は、係留ユニットが実質的に外部源から如何なるエネルギも供給されずに機能することを可能にする。
【0015】
よって、係留ユニットのアーム
は、係留線内の張力を増大させずに係留される船舶の前後の動きにより良好に追従
することができる。係留ユニットの全自由度の故に、係留ユニットは常に係留線(荷重)と一致する。従って、フックの動きは、係留線内の張力及び係留線に対して作用する異なる指向性の力に依存し且つそれらによって起こされる。
【0016】
更に、本発明の係留ユニットのフットプリント
は、本発明の構造が水平運動を垂直運動に変換するという構成の故に制限されることをもたらす。従って、本発明の係留ユニットが必要とする空間は限定的である。何故ならば、引込位置と延出位置との間のアームの水平運動は、アームの動きに依存する係留ユニットの可変な高さにおいて具現されるような垂直運動と対応するからである。他の利点は、フックが作動デバイスと係留アームとの間の比率変化を拡張し、それがフック荷重に提供されるより高い抵抗をもたらすという事実の故に、この特定の幾何学的構成が係留ユニットの剛性の変化をサポートすることである。換言すれば、引込位置から延出位置とのアームの移動は、係留ユニットのフックで測定されるときのアームの剛性を増大させる。これは、アームのより大きな偏位(excursions)で、係留される船舶が増大させられた抵抗に晒されることを意味する。本発明の係留ユニットは、6秒以上の時間期間を有する係留力に対して作用するように適切に具えられる。
【0017】
係留ユニットは、ベースから離れる方向にフックに対して適用される力が所定の第1の閾値を超えるときに、アームが引込位置から延出位置に動くのを可能にする、制御システムを含むのが好ましい。
【0018】
制御システムは、係留荷重、係留ユニット内の液圧及び空圧、係留ユニットのアームに関する温度及びパラメータを測定するための、センサを含んでよい。
【0019】
第1の閾値は、係留ロープ又は線に対する並びに係留ユニット自体に対する過剰な力に起因する損傷を避けるために、所定の最小値と所定の最大値との間にあるのが好ましい。
【0020】
他方、係留ユニットに対して作用する力が十分に弱い又は十分に弱くなるならば、アームを延出位置から引込位置に戻し得る。従って、係留ユニットは、アームを延出位置から引込位置に動かす作動デバイスを含む。これを達成するために、ベースから離れる方向にフックに対して適用される力が所定の第2の閾値より下に落ちるときに、作動デバイスによって電力供給されるアームが引込位置に向かって動くよう、制御システムが構成されるのが好ましい。正に、係留ユニットに対して作用する係留される船舶の動きによって生成される力が所定の第2の閾値より下に落ちるとき、これは係留線が緩みがちであること並びに船舶を緊密に固定するためにアームが引込位置に向かって戻る余地を有することの表示である。その場合には、係留ユニットが、アームが引込位置に向かって戻るときにアームを支持するバネとして作用する、アーム平衡要素を含むのが好ましい。
【0021】
適切には、作動デバイスは、液圧シリンダ、機械式バネ、電気モータによって電力供給される回転可能なネジ、空圧シリンダ、機械式エネルギ消散器、及びそれらのいずれかの組み合わせを含む群から選択される、1つである。
【0022】
本発明の係留ユニットの重要な構成は、−係留される船舶の動きに晒される−アームが引込位置から延出位置に動くときに、作動デバイスから受けるエネルギの少なくとも一部を吸収するよう、作動デバイスとアキュムレータとの間に、エネルギ消散要素が設けられることである。アームは係留される船舶の動きに起因する頻繁な動きを受けるので、作動デバイスの出力で利用可能なエネルギの量は、アキュムレータが限定的な容積(dimensions)を有するならば、アキュムレータ内に貯蔵されるには高すぎる。従って、エネルギの余剰が消散されることが必要とされる。
【0023】
本発明は、以下に、付属の請求項を限定しない本発明に従った係留ユニットの例示的な実施態様の図面を参照して更に解明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】アームが延出位置にある本発明に従った係留ユニットの側面図を示している。
【
図2】アームが引込位置にある本発明に従った係留ユニットの側面図を示している。
【
図3】アームが延出位置にある本発明に従った係留ユニットの三次元図を示している。
【
図4】アームが引込位置にある本発明に従った係留ユニットの三次元図を示している。
【
図5】本発明に従った制御システムの動作方法を表すフロー図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面において同じ参照番号が適用されるときにはいつでも、これらの番号は同じ部品を指す。
【0026】
図1乃至4は、第1の部分2’と第2の部分2”とを含むベース2と、ベース2に取り付けられるアーム3と、船舶の係留線(図示せず)を接続するためにアーム3によって支持されるフック4とを含む、船舶を係留する係留ユニット1を示している。
【0027】
アーム3は、ベース2の第1の部分2’に取り付けられ、ベース2の第1の部分2’は、回転可能に固定されるベース2の第2の部分2”に回転可能に取り付けられ、それは水平面に対して直交する垂直軸の周りでのベース2の第1の部分2’の回転を可能にし、係留ユニットが係留される船舶の動きに依存する係留線の可変な向きと整列させられるのを可能にする。
【0028】
アームは、更に、引込位置(
図2及び4)と延出位置(
図1及び3)との間で移動可能である。フック4は、従来技術から知られるような急速離脱フック(quick release hook)として具現されるのが好ましく、それは
図1及び2では連続線(=閉塞)及び破線(=開放)によって表される2つの位置において示され、
図3及び4では閉塞位置のみにおいて示されている。アーム3とフック4との間のフック平衡要素13が適用されて、フックを特定の所望の位置において維持する。
【0029】
係留ユニット1は、作動デバイス、例えば、アーム3が
図2及び4に示される引込位置から
図1及び3に示される延出位置に動くときにエネルギを蓄積する液圧シリンダ5を含む。液圧シリンダ5からのエネルギは、アキュムレータのようなエネルギ貯蔵デバイス内に貯蔵され、アーム3を
図1及び3に示される延出位置から
図2及び4に示される引込位置に戻すために液圧シリンダ5にエネルギを与えるために後に用いられ得る。それは更に引込位置に戻るときにアーム3を支持するバネとして作用するアーム平衡要素12を更に示している。
【0030】
作動デバイス5とアキュムレータ10との間には、エネルギ消散要素11が設けられており、アーム3が、係留される船舶の力に晒されて、引込位置から延出位置に向かって動くときに、作動デバイス5から受けるエネルギの少なくとも部分を吸収する。
【0031】
作動デバイスが液圧シリンダでなく、機械式バネ、電気モータによって電力供給される回転可能なネジ、空圧シリンダ、機械式エネルギ消散器、又はそれらのいずれかの組み合わせであることが可能である。
【0032】
丁度記載したような係留ユニット1の意図される動作に順応するために、係留ユニット1は、所定の第1の閾値を超えるある力(
図2中に矢印として示されているF)がベース2から離れる方向にフック4に対して適用されるときに、アーム3が引込位置から延出位置に向かって動くのを可能にする、制御システム6を含む(制御システム6の動作は、
図5中に概略的に示されている)。加えて、制御システムは、ベース2から離れる方向においてフック4に対して作用する力Fが所定の第2の閾値よりも下に落ちるときに、アーム3が引込位置に向かって戻るよう、作動デバイスに電力供給するように構成される。
【0033】
図1乃至4に戻ると、アーム3が中間ロッド7でベース2に取り付けられることが示されており、ロッド7の1つの末端は、フック4から遠いヒンジ7でアーム3に繋がり、作動デバイス5は、第2の位置9でアーム4に繋がり、その第2の位置9は、ヒンジ8よりも更にフック4から離れている。ヒンジ8の位置は、アーム3が引込位置と延出位置との間で動くときに、フック4が所定の曲線軌跡に従うのが可能にされるように、選択される。具体的には、この位置は、係留ユニット1のアーム3の所望の剛性特性を配備し、前記剛性は、アームが引込位置から延出位置に動くときに増大する。
【0034】
本発明の係留ユニットの例示的な実施態様を参照して本発明を上で議論したが、本発明はこの特定の実施態様に限定されず、この特定の実施態様は本発明から逸脱することなく多くの方法において異なり得る。従って、議論した例示的な実施態様は、それらに厳密に従って付属の請求項を解釈するために用いられてならない。逆に、実施態様は、請求項をこの例示的な実施態様に限定することを意図せずに、付属の請求項の表現法を説明することを意図するに過ぎない。従って、本発明の保護範囲は、付属の請求項のみに従って計酌されるべきであり、請求項の表現法の可能な曖昧さは、この例示的な実施態様を用いて解決されなければならない。
【符号の説明】
【0035】
1 係留ユニット (Mooring unit)
2 ベース (Base)
2’ 第1の部分 (first part)
2” 第2の部分 (second part)
3 アーム (Arm)
4 フック (Hook)
5 作動デバイス (Actuating device)
6 制御システム (Control System)
7 ロッド (rod)
8 ヒンジ (Hinge)
9 作動デバイス5をアーム3に接続する位置
(Position connecting the actuating device 5 to the arm 3)
10 アキュムレータ (accumulator)
11 エネルギ消散要素 (Energy dissipation element)
12 アーム平衡要素 (Arm balancing element)
13 フック平衡要素 (Hook balancing element)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】国際公開第2013/115958号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2319570号明細書
【特許文献3】国際公開第91/14651号
【特許文献4】米国特許第5,408,946号明細書
【特許文献5】国際公開第2010/110666号
【特許文献6】特開平11−129979号公報