(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
<1.1 塗布装置1の全体構成>
図1は、実施形態の塗布装置1の構成の一例を概略的に示す斜視図である。なお、
図1および以降の各図には、方向を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また以下では、適宜に「+X軸側」および「−X軸側」という表現を導入する。「+X軸側」はX方向における一方側を意味し、「−X軸側」はX方向における他方側を意味する。他の軸についても同様である。なお「+Z軸側」はZ方向において上側を意味する。
【0030】
本実施形態の塗布装置1は、スリットノズル30を用いて基板Gの表面に塗布液を塗布するスリットコータと呼ばれる塗布装置である。塗布液は、例えば、フォトレジスト液である。また、塗布液は、例えば、カラーフィルター用顔料、ポリイミド前駆体、シリコン剤、ナノメタルインクまたは導電性材料を含むペースト状やスラリー状の種々の塗布液であってもよい。また、塗布対象となる基板Gについても、矩形ガラス基板、半導体基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルター用基板、太陽電池用基板、有機EL(Electro Luminescence)用基板などの種々の基板に適用可能である。以下の説明では、「基板Gの表面」とは基板Gの両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0031】
図2は塗布装置1の構成の一例を概略的に示す側面図であり、
図3は塗布装置1の構成の一例を概略的に示す上面図である。また、
図2および
図3では、ノズル支持体35などの一部の構成を省略している。
【0032】
図1〜
図3に示すように、塗布装置1は、塗布対象の被処理体である基板Gを水平姿勢で吸着保持可能な保持面21を有するステージ2と、ステージ2に保持される基板Gにスリットノズル30を用いて塗布処理を施す塗布処理部3と、塗布処理に先立ってスリットノズル30に対して洗浄処理を施すノズルクリーニング装置4と、塗布処理に先立ってスリットノズル30に対してプリディスペンス処理を施すプリディスペンス装置5と、これら各部を制御する制御部6と、を備える。
【0033】
制御部6は塗布装置1の後述の各構成を制御する。制御部6は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部6が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部6が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部6が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0034】
以下、塗布装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
<1.2 ステージ2>
ステージ2は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(+Z側の面)のうち−Y側には、略水平な平坦面に加工されて基板Gを保持する保持面21を備える(
図2)。保持面21には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板Gが保持面21に吸着されることで、塗布処理の際に基板Gが所定の位置に略水平状態に保持される。基板Gは矩形状の例えばガラス基板である。
【0036】
また、ステージ2において保持面21の占有する領域より+Y側には、ノズル調整エリアAR1が設けられており、ノズル調整エリアAR1のうち、+Y側にノズルクリーニング装置4が配され、−Y側にプリディスペンス装置5が配される。
【0037】
本実施形態の塗布装置1では、スリットノズル30がノズル調整エリアAR1の上方に移動されている期間、すなわち、ステージ2において保持面21の占有する領域の上方にスリットノズル30がない期間に、ステージ2上で塗布処理後の先行基板Gの搬出と塗布処理前の後続基板Gの搬入とが行なわれる。
【0038】
<1.3 塗布処理部3>
塗布処理部3は主として、X方向に延びる長尺状の開口部である吐出口31を有するスリットノズル30と、ステージ2の上方をX方向に横断しスリットノズル30を支持するブリッジ構造のノズル支持体35と、Y方向に延びる一対のガイドレール36に沿ってノズル支持体35およびこれに支持されるスリットノズル30を水平移動させるノズル移動手段37と、から構成される。
【0039】
図4は、スリットノズル30をX方向から見た側面図である。
図4に示すように、スリットノズル30は、ノズル支持体35によって固定支持される本体部301と、本体部301の下面より下方に突出するリップ部303(下端部)と、図外の供給機構から供給される塗布液をスリット状の吐出口31まで送液する内部流路302と、を有し、
図1のX方向に伸びる長尺のノズルである。
【0040】
また、リップ部303は、上記突出の先端に設けられた平坦面であり吐出口31が形成される下端面304と、上記突出の+Y側に形成される斜面である傾斜面305aと、その突出の−Y側に形成される斜面である傾斜面305bとを有する。以下の説明では、傾斜面305aと傾斜面305bとを区別しないときは、単に傾斜面305と呼ぶ。
【0041】
図外の供給機構より供給される塗布液は、内部流路302を通じてスリットノズル30の長手方向(X方向)に均等に拡幅されて送液され、リップ部303の下端面304に設けられた吐出口31より下方に向けて吐出される。このとき、スリットノズル30の吐出口31の周囲部分(例えばリップ部303の傾斜面305)には塗布液が付着することがある。当該周囲部分に付着した塗布液は乾燥して固化して残渣となることもある。この残渣の原因となり得る当該周囲部分に付着した塗布液は不要なものであり、除去が望まれる。本実施形態の塗布装置1ではこの付着した塗布液の除去処理を行うが、この詳細については後述する。
【0042】
スリットノズル30は、その吐出口31が略水平にX方向に沿って直線状に延びるように、ノズル支持体35によって固定支持される。ノズル支持体35は、スリットノズル30を固定する固定部材35aと、固定部材35aを支持するとともに昇降させる2つのノズル昇降機構(ノズル昇降手段)35bとから構成される。固定部材35aは、X方向を長手方向とするカーボンファイバ補強樹脂等の断面矩形の棒状部材で構成される。
【0043】
2つのノズル昇降機構35bは固定部材35aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータ及びボールネジ等を備えている。これらのノズル昇降機構35bにより、固定部材35a及びそれに固定されたスリットノズル30が鉛直方向(Z方向)に昇降され、スリットノズル30の吐出口31と基板Gとの間隔、すなわち、基板Gに対する吐出口31の相対的な高さが調整される。なお、固定部材35aの鉛直方向の位置は、例えば、ノズル昇降機構35bの側面に設けられた図示省略のスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル30の側面などに設けられた図示省略の検出センサとを備えて構成される図示省略のリニアエンコーダにより検出される。
【0044】
これらの固定部材35a及び2つのノズル昇降機構35bにより形成されるノズル支持体35は、
図1に示すように、ステージ2のX方向の両端部を掛け渡し、保持面21を跨ぐ架橋構造を有している。ノズル移動手段37は、この架橋構造体としてのノズル支持体35とそれに固定保持されたスリットノズル30とを、ステージ2上に保持される基板Gに対してY方向に沿って相対移動させる相対的移動手段として機能する。
【0045】
図1に示すようにノズル移動手段37は、±X側のそれぞれにおいて、スリットノズル30の移動をY方向に案内するガイドレール36と、駆動源であるリニアモータ38と、スリットノズル30の吐出口31の位置を検出するためのリニアエンコーダ39とを備えている。
【0046】
2つのガイドレール36はそれぞれ、ステージ2のX方向の両端部にY方向に沿ってノズル洗浄位置Y0(後述)から塗布終了位置Y4(後述)までの区間を含むように延設されている。このため、ノズル移動手段37によって2つのノズル昇降機構35bの下端部が上記2つのガイドレール36に沿って案内されることで、スリットノズル30は当該区間をY方向に沿って移動できる。
【0047】
2つのリニアモータ38はそれぞれ、固定子38aと移動子38bとを有するACコアレスリニアモータとして構成される。固定子38aは、ステージ2のX方向の両側面にY方向に沿って設けられている。一方、移動子38bは、ノズル昇降機構35bの外側に対して固設されている。リニアモータ38は、これら固定子38aと移動子38bとの間に生じる磁力によってノズル移動手段37の駆動源として機能する。
【0048】
また、2つのリニアエンコーダ39はそれぞれ、スケール部39aと検出部39bとを有している。スケール部39aはステージ2に固設されたリニアモータ38の固定子38aの下部にY方向に沿って設けられている。一方、検出部39bは、ノズル昇降機構35bに固設されたリニアモータ38の移動子38bのさらに外側に固設され、スケール部39aに対向配置される。リニアエンコーダ39は、スケール部39aと検出部39bとの相対的な位置関係に基づいて、Y方向におけるスリットノズル30の吐出口31の位置を検出する。検出された吐出口31の位置情報は制御部6へと出力される。制御部6はこの位置情報に基づいてリニアモータ38を制御する。つまり制御部6はノズル昇降機構35bの移動制御を実行する。
【0049】
以上のような構成によって、スリットノズル30は、基板Gが保持される保持面21の上部空間を、略水平なY方向に、保持面21に対して相対的に移動可能とされる。
【0050】
基板Gの各辺から所定の幅の領域(本実施形態では、矩形のリング状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。そして、基板Gのうち、この非塗布領域を除いた矩形領域が、塗布液を塗布すべき塗布領域RTとなっている(
図3)。
【0051】
塗布処理を行う際には、ステージ2の保持面21上に処理対象の基板Gが保持された状態で、その上方をスリットノズル30が塗布液を吐出しながら走査する。より具体的には、スリットノズル30がノズル移動手段37によって基板Gの上方を+Y側から−Y側に向けて移動し、当該移動区間のうち基板Gの塗布領域RTのY方向範囲に対応する塗布開始位置Y3(塗布領域RTの+Y側端部)〜塗布終了位置Y4(塗布領域RTの−Y側端部)の区間で吐出口31より塗布液が吐出される。その結果、基板Gの表面の塗布領域RT上に所定膜厚の塗布液の層が形成される(塗布処理)。
【0052】
また、塗布装置1と外部搬送機構との基板Gの受渡し期間(基板Gの搬入・搬出期間)などステージ2上で塗布処理が行われない期間には、スリットノズル30は、基板Gの保持面21から+Y側に外れたノズル調整エリアAR1に待避される(
図1に示す状態)。
【0053】
<1.4 プリディスペンス装置5>
プリディスペンス装置5は、塗布処理の直前にプリディスペンス処理を実行するための装置である。プリディスペンス装置5は、ノズル調整エリアAR1のうち−Y側に配される装置であって、その内部に溶剤54を貯留する貯留槽51と、その一部を溶剤54に浸漬しておりスリットノズル30からの塗布液の吐出対象となるプリディスペンスローラ52と、ドクターブレード53とを備える(
図2)。
【0054】
プリディスペンスローラ52は、図示省略の回転機構によって回転駆動されることにより、X方向に沿った軸心52a周りで矢印R1の向きに回転可能な円筒状のローラである。
【0055】
プリディスペンスローラ52の下部には、プリディスペンスローラ52に塗布された塗布液を溶解可能なシンナーなどの溶剤54が貯留された貯留槽51を備えている。また、シリコン製などのドクターブレード53が、プリディスペンスローラ52の外周面にその一端が接触するように設けられている。
【0056】
プリディスペンス処理では、ノズル移動手段37によってスリットノズル30がプリディスペンスローラ52の上方位置(プリディスペンス位置Y2)に移動された状態で、回転しているプリディスペンスローラ52に向けてスリットノズル30が塗布液を吐出することによりプリディスペンスローラ52に塗布液が塗布される。この結果、吐出口31(特に、リップ部303の下端面304)に当該塗布液の液溜りが形成される。こうしてX方向に延びた直線状の吐出口31の全長にわたって液溜りが均一に形成されると、その後の塗布処理を高精度に遂行することが可能となる。より具体的には、吐出口31の全長にわたって液溜りが均一に形成されることにより、塗布開始端において、スリットノズル30の幅方向(X方向)における塗布液の膜厚を均一にすることができる。
【0057】
プリディスペンス処理が行われれば、吐出口31の周囲に付着した汚れた塗布液などが、吐出口31から新たに吐出される塗布液に結合してプリディスペンスローラ52の外周面に吐出され、吐出口31の周囲部分から除去される。
【0058】
塗布液が吐出されたプリディスペンスローラ52の外周面には、基板Gへの塗布処理において基板G上に塗布される塗布液の膜厚とほとんど同じ膜厚の塗布液の層が形成される。プリディスペンスローラ52の外周面に吐出された塗布液は、プリディスペンスローラ52の軸心52a周りの自転によって、貯留槽51に貯留された溶剤54に浸漬されて溶かされた状態となった後、ドクターブレード53によってプリディスペンスローラ52の外周面からかき取られる。プリディスペンスローラ52の外周面のうち塗布液が掻き取られた部分は、プリディスペンスローラ52の自転によって吐出口31の下方に移動し、再度、吐出口31から塗布液が吐出される。
【0059】
<1.5 ノズルクリーニング装置4>
ノズルクリーニング装置4は、プリディスペンス処理の前にスリットノズル30をクリーニングして、スリットノズル30に付着した付着物を除去するための装置である。ノズルクリーニング装置4の除去対象となる付着物としては、スリットノズル30に付着しうる種々の物質が挙げられる。例えばこの付着物は塗布液自体、および、塗布液の溶質が乾燥・固化したものを含む。固化した溶質の一例としては、例えば塗布液がカラーフィルター用のフォトレジストである場合には、塗布液に含まれる顔料が挙げられる。
【0060】
ノズルクリーニング装置4は洗浄ユニット4A〜4Cを備えている。以下では、まず洗浄ユニット4A〜4Cについて概説し、その後、洗浄ユニット4A,4Cについて詳述する。洗浄ユニット4Aはスクレーパ(当接部材)41を備えている。
図5は、洗浄ユニット4Aとスリットノズル30との一例を概略的に示す斜視図である。スクレーパ41はスリットノズル30の外面(具体的にはリップ部303の傾斜面305)に当接しながら、当該外面に沿ってX方向に沿って+X軸側から−X軸側へと移動する(掻き取り動作)。これにより、スクレーパ41は傾斜面305に付着した付着物を掻き取って除去する。
【0061】
なお後に詳述するように、この掻き取り動作において、スクレーパ41とスリットノズル30との間には液体が存在する。例えばスクレーパ41の移動前に所定量の塗布液がスリットノズル30に供給される。具体的には、塗布液がその吐出口31から下方に僅かに出る程度に塗布液が供給される。この状態でスクレーパ41が移動して掻き取り動作を行う。よってスクレーパ41とスリットノズル30との間には塗布液が存在し、スクレーパ41はこの塗布液も掻き取る。しかるに、この掻き取り動作において、塗布液の一部はスクレーパ41の上側端からはみ出し得る。この場合、スクレーパ41の掻き取り動作によってもなおスリットノズル30には塗布液が残留することになる。ここでは、スクレーパ41によって除去される除去対象(塗布液および塗布液が乾燥固化した残渣)を単に付着物と呼び、スクレーパ41の掻き取り動作によっても除去できずにスリットノズル30に残留する塗布液を残留付着物とも呼ぶ。
【0062】
洗浄ユニット4Bは密閉空間を形成しており、この密閉空間には、スクレーパ41が収容される。この洗浄ユニット4Bは、スリットノズル30のリップ部303に付着する付着物を拭き取って除去したスクレーパ41に対して、上記密閉空間内で洗浄液を供給することでスクレーパ41に付着する上記付着物を洗い流すユニットである。洗浄ユニット4Bは洗浄ユニット4Aに対して−X軸側に配されている(
図3)。この洗浄ユニット4Bとしては、例えば特開2014−176812号公報に記載されたものを用いることができる。
【0063】
洗浄ユニット4Cは洗浄ユニット4Aによっては除去しきれなかった残留付着物をスリットノズル30から除去するための装置である。洗浄ユニット4Cは洗浄ユニット4Aに対して+Y軸側に配されており、洗浄液貯留槽46を備えている。洗浄液貯留槽46は+Z軸側(上方)に開口しており、リンス液(洗浄液)を貯留する。このリンス液はスリットノズル30に付着した残留付着物についての溶剤である。より具体的には塗布液を溶解可能なシンナーなどの溶剤である。
【0064】
スリットノズル30がノズル洗浄位置Y0(洗浄液貯留槽46とZ方向において対向する位置)において下降することで、リップ部303がこのリンス液へと浸かる。この状態でスリットノズル30が上下に往復移動することにより、リップ部303に残留した残留付着物を除去することができる。
【0065】
<1.5.1 洗浄ユニット4A>
洗浄ユニット4Aはスクレーパ41と支持部416とを備えている。
図6は、スクレーパ41の構成の一例を概略的に示す斜視図である。スクレーパ41は例えば900〜4000[MPa(メガパスカル)]の弾性率を有する弾性体で形成されている。そして、スクレーパ41の中央部が支持部416に支持される被支持部412となっている。スクレーパ41は、被支持部412から延設された延設部413を有し、この延設部413の先端に、略V字型の溝であるV字溝414が形成されている。V字溝414は、スリットノズル30のリップ部303に対応した形状を有しており、傾斜面305aに応じた傾斜を持った傾斜面415aと、傾斜面305bに応じた傾斜を持った傾斜面415bとを有する。なお、以下において、傾斜面415a、415bを区別しないときには単に傾斜面415と称する。
【0066】
このように構成されたスクレーパ41は
図5に示すように2本の締結金具、例えばボルト417によって支持部416に着脱自在に固定される。支持部416は、Z方向に昇降可能な板状の昇降部4161と、昇降部4161の上面にZ方向へ立設された柱部4162とを有する。そして、柱部4162がスクレーパ41に締結される。より具体的には、スクレーパ41の被支持部412は、柱部4162の上端部に係合可能な形状に仕上げられている。そして、スクレーパ41は、V字溝414をスリットノズル30側に向けつつ、X方向に延設されるスリットノズル30に対して所定の傾斜角度θ(例えば、50度)で傾いた状態で、柱部4162の上端部に締結される。
【0067】
支持部416は、昇降部4161の下方にベース部4163を有する。そして、昇降部4161はベース部4163によって昇降可能に支持されている。つまり、支持部416では、ベース部4163の上面からZ方向に立設されたガイドレール4164と、ベース部4163と昇降部4161との間に設けられた付勢部材4165(例えば、圧縮バネ)とが設けられている。そして、ガイドレール4164が昇降部4161の移動をZ方向に案内しつつ、付勢部材4165がベース部4163に対して昇降部4161を上方へ付勢する。そのため、昇降部4161に固定されたスクレーパ41は、付勢部材4165の付勢力により上方へ付勢される。
【0068】
また、支持部416のベース部4163は、駆動ユニット42に取り付けられている。この駆動ユニット42は、X方向においてスリットノズル30の両外側に配置された一対のローラ421、421と、ローラ421、421に掛け渡された無端ベルト422とを有し、無端ベルト422の上面に支持部416のベース部4163が取り付けられている。このように構成された駆動ユニット42は、ローラ421、421を回転させて無端ベルト422の上面をX方向へ駆動して、支持部416とともにスクレーパ41をX方向へ移動させる。
【0069】
このような洗浄ユニット4Aにおいて、制御部6はノズル移動手段37を制御してスリットノズル30をノズル洗浄位置Y1で停止させる。ノズル洗浄位置Y1はスリットノズル30がスクレーパ41とZ方向において対向する位置である。この状態で、スリットノズル30は吐出口31から所定量の塗布液を吐出する。これにより、吐出口31の全域が塗布液で満たされる。この塗布液は吐出口31から下方に僅かに出る程度に吐出される。次に制御部6はノズル昇降機構35bを制御してスリットノズル30をスクレーパ41へ近接させる。これにより、リップ部303の傾斜面305がスクレーパ41の傾斜面415に当接する。
図7は、スリットノズル30とスクレーパ41との位置関係の一例を概略的に示す側面図である。スクレーパ41がリップ部303と当接した状態においては、スクレーパ41の上側端はリップ部303の傾斜面305上に規定された仮想的な基準ラインL1の上に位置している。この基準ラインL1はX方向に沿って延びるラインである。
【0070】
制御部6はこの状態で駆動ユニット42を制御して、スクレーパ41をX方向に沿ってスリットノズル30の端から端まで移動させる。これにより、スクレーパ41はリップ部303の傾斜面305のうち基準ラインL1より下方の下部領域305Aに当接しながら移動し、下部領域305Aに付着した付着物を掻き取って除去する(掻き取り動作)。ここでは、スクレーパ41の移動前に塗布液が吐出口31から吐出されているので、スクレーパ41はこの塗布液も掻き取る。
【0071】
しかしながら、この掻き取り動作の際に、塗布液の一部はスクレーパ41の上側端からはみ出し、基準ラインL1の上に残留してしまう。この残留した塗布液も乾燥・固化し得る。この基準ラインL1の上の塗布液が残留付着物である。この残留付着物はスクレーパ41の移動方向(X方向)に沿って直線的に延びる。
【0072】
1回の掻き取り動作によって残留する残留付着物の量は少なくても、複数回の掻き取り動作によって残留付着物の量が増大する。その結果として、この残留付着物の一部や残留付着物が乾燥固化した残渣が塗布処理において基板Gの上に落下することがある。このような落下は塗布不良の原因となる。これに対して、作業員が残留付着物を拭き取ることが考えられるものの、そのような作業は作業員にとって手間になる上、残留付着物を拭き取る布などが別途、必要となる。
【0073】
<1.5.2 洗浄ユニット4C>
洗浄ユニット4Cはこの基準ラインL1の上の残留付着物を除去するためのユニットである。洗浄ユニット4Cの洗浄液貯留槽46には、残留付着物を溶解するリンス液(洗浄液)が貯留されている。リンス液は塗布液を溶解可能なシンナーなどの溶剤である。以下では、洗浄液貯留槽46に貯留されたリンス液を貯留リンス液Laとも呼ぶ。
【0074】
洗浄液貯留槽46の上部は開口しており、その開口幅(Y方向に沿う幅)はスリットノズル30の少なくともリップ部303の幅(Y方向に沿う幅)よりも広く、その開口の長さ(X方向に沿う長さ)は少なくともリップ部303の長さ(X方向に沿う長さ)よりも長い。よって、洗浄液貯留槽46の開口を介してスリットノズル30のリップ部303を貯留リンス液Laに浸漬させることができる。
【0075】
スリットノズル30が洗浄液貯留槽46の上方に位置する状態で、ノズル昇降機構35bは以下で説明する上限位置と下限位置との間でスリットノズル30を往復移動させる。ここでは往復移動の下限位置として後述の下ポジションP11を採用し、上限位置として後述の上ポジションP21を採用する。
【0076】
下ポジションP11は、スリットノズル30の下部領域305Aよりも上方の上部領域305Bが貯留リンス液Laに接液するポジションである。
図8は、下ポジションP11でのスリットノズル30および洗浄液貯留槽46の一例を概略的に示す図である。スリットノズル30が下ポジションP11に位置する状態において、基準ラインL1は貯留リンス液Laの液面H1の位置よりも下方にある。つまり基準ラインL1が貯留リンス液Laに接液する。よって、残留付着物100も貯留リンス液Laに接液する。
【0077】
なおスリットノズル30の往復移動により貯留リンス液Laの液面H1は波打つものの、本実施の形態でいう液面H1の位置とは、貯留リンス液Laが全体として静止しているときの水平な液面H1の位置をいう。よって以下では、この位置を液面水平位置とも呼ぶ。
【0078】
上ポジションP21は下ポジションP11よりも上方にあるポジションである。
図9は、上ポジションP21でのスリットノズル30および洗浄液貯留槽46の一例を概略的に示す図である。
図9の例においては、上ポジションP21は、上部領域305Bが貯留リンス液Laの液面水平位置よりも上方にあって露出するポジションである。つまり、このとき基準ラインL1(残留付着物100)も液面水平位置よりも上方にある。
【0079】
ノズル昇降機構35bは下ポジションP11と上ポジションP21との間でスリットノズル30を往復移動させて、残留付着物100を繰り返し貯留リンス液Laに出入りさせる。これにより、貯留リンス液Laは残留付着物100に作用しやすく、残留付着物100をスリットノズル30から除去しやすい。例えばスリットノズル30の外面(傾斜面305)に作用するリンス液(洗浄液)の置換が促進される。つまり、スリットノズル30の外面に作用するリンス液(洗浄液)が置換され洗浄能力の高い新鮮(清浄)なリンス液(洗浄液)となる。この結果、残留物付着物100の除去効率がより向上する。
【0080】
<1.5.3.1 第1動作例>
次にノズルクリーニング装置4のより詳細な動作例について説明する。
図10は、ノズルクリーニング装置4の動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、スリットノズル30はノズル洗浄位置Y1で停止しているものとする。まずステップS1にて、準備動作が行われる。ここでは、スリットノズル30は吐出口31から所定量の塗布液を吐出する。これにより、吐出口31の全域が塗布液で満たされる。この塗布液は吐出口31から下方に僅かに出る程度に吐出される。次に制御部6はノズル昇降機構35bを制御してスリットノズル30のリップ部303をスクレーパ41に当接させる。次にステップS2にて、制御部6は掻き取り処理を実行する。この掻き取り処理では、制御部6は駆動ユニット42を制御してスクレーパ41をX方向に沿ってスリットノズル30の端から端まで移動させる。これにより、スクレーパ41はリップ部303の下部領域305Aに当接しながら移動して、下部領域305Aに付着した付着物および吐出口31から吐出された塗布液を掻き取る。その後、制御部6はノズル昇降機構35bを制御してスリットノズル30を上昇させてスクレーパ41から遠ざける。
【0081】
このステップS2の掻き取り処理によって、下部領域305Aの付着物は除去されるものの、上述のように基準ラインL1上には残留付着物100が残る。本実施の形態では、このステップS2の掻き取り処理では除去できない残留付着物100を除去すべく、後述のステップS3〜S8を実行する。残留付着物100は塗布液自体である。
【0082】
ところで、このステップS2の掻き取り処理は、通常、基板Gへの塗布処理前に実行される。スリットノズル30の下部領域305Aに付着物が付着したまま塗布処理を行うと、その塗布処理において不具合(膜厚の不均一など)が生じ得るからである。よって、掻き取り処理は塗布処理の実行ごとに、あるいは、塗布処理の複数回の実行の度に実行される。つまり、掻き取り処理は複数回実行され得る。
【0083】
1回の掻き取り処理において基準ラインL1上に残留する残留付着物100の量が少ない場合には、ステップS1,S2の一組を所定回数だけ実行した後に、ステップS3〜S8を実行してもよい。つまり所定回数の掻き取り処理によって残留付着物100の量が多くなったときに、ステップS3〜S8を実行してこの残留付着物100を除去すればよい。所定回数は例えば実験またはシミュレーションなどによって予め設定でき、例えば数百回程度に設定される。
【0084】
ステップS3においては、制御部6はノズル移動手段37を制御してスリットノズル30をノズル洗浄位置Y0へ移動させる。これにより、スリットノズル30は洗浄液貯留槽46の上方に位置する。
【0085】
次にステップS4にて、制御部6はノズル昇降機構35bを制御して、スリットノズル30を下ポジションP11まで下降させる。これにより、残留付着物100が貯留リンス液Laに接液する。
【0086】
ここで、スリットノズル30のZ方向の位置を示す指標として、スリットノズル30が貯留リンス液Laに浸漬する深さ(以下、接液深さと呼ぶ)を導入する。この接液深さは、スリットノズル30の下端面304と貯留リンス液Laの液面H1との間の距離である。下ポジションP11における接液深さDp1は基準ラインL1上の残留付着物100が貯留リンス液Laに接液する程度に予め設定されている。ここでは、下ポジションP11の接液深さDp1は例えば4[mm]程度に設定される。
【0087】
次にステップS5にて、制御部6はノズル昇降機構3bを制御して、下ポジションP11と上ポジションP21との間でスリットノズル30を第1回数だけ往復移動させる。第1回数は例えば予め設定されている。
【0088】
図9の例では、上ポジションP21においてスリットノズル30の吐出口31(つまり下端面304)は貯留リンス液Laに接液している。言い換えれば、上ポジションP21において、スリットノズル30の下端面304は液面水平位置よりも下方にある。この上ポジションP21の接液深さDp2は予め設定されており、例えば1[mm]である。上ポジションP21の接液深さDp2は、好ましくは、基準ラインL1と下端面304との間の鉛直方向の長さW1の2分の1以下、4分の以下、または、8分の1以下であるとよい。
【0089】
このステップS5における往復移動により、残留付着物100は貯留リンス液Laに繰り返し出入する。これにより、残留付着物100に作用するリンス液が新鮮なリンス液に置換されるので、残留付着物100のリンス液への溶解が促される。また、このような往復移動により、残留付着物100の一部を溶解させつつも、残りをスリットノズル30の傾斜面305に沿って下方へと移動させることができる。残留付着物100を下方へ移動させることの技術的意義は本フローの説明の後に詳述し、以下では、まず残留付着物100が下方へ移動する理由について説明する。
【0090】
図11は、上昇中のスリットノズル30の一例を概略的に示す図である。
図11の例においては、スリットノズル30の移動方向がブロック矢印で示されている。このスリットノズル30の上昇に伴って、貯留リンス液Laはその表面張力または粘性等によってスリットノズル30の両傾斜面305に沿って一時的にせり上がる。
図11の例においては、貯留リンス液Laはそのせり上がり部分の上部において残留付着物100に接液している。その後、せり上がり部分の貯留リンス液Laは重力によって下方へと流動する。なお、
図11において残留付着物100を便宜上、円形で図示しているが、実際は他の形状の場合もある。
【0091】
さて、残留付着物100はリンス液によって溶解される。よって、残留付着物100はリンス液が存在する方向へ流動し、リンス液が存在しない方向へは流動しにくい。したがって
図11の例では、残留付着物100は貯留リンス液Laのせり上がり部分に沿って、下方へと移動しやすい、と考えられる。また、せり上がり部分の貯留リンス液Laが下方へ流動する際に、そのリンス液が残留付着物100を下方に押し下げるので、この観点でも残留付着物100は下方へと移動しやすい。また、残留付着物100に作用する浮力は残留付着物100が貯留リンス液Laの内部に浸かる場合に比べて小さくなるので、より重力が作用しやすく、この観点でも残留付着物100は下方へと移動しやすくなる、と考えられる。
【0092】
以上のように、ステップS5におけるスリットノズル30の往復移動によって、残留付着物100は傾斜面305に沿って下方へと移動する。
【0093】
この往復移動によってどの程度、残留付着物100が下方へ移動するかは、実験またはシミュレーションによって予め知ることができる。この残留付着物100は傾斜面305に沿って移動するものの、簡単のために、ここではその移動量を鉛直方向に換算して考慮する。例えば、ステップS5におけるスリットノズル30の往復移動によって残留付着物100が下方へ1[mm](鉛直方向の移動量)だけ移動するものとする。
【0094】
残留付着物100が傾斜面305を下方へと移動することにより、移動後の残留付着物100と基準ラインL1との間の領域では、実質的に残留付着物100が除去される。よって、以後、この領域を貯留リンス液Laに接液させる必要はない。つまり、以後の往復移動(後述のステップS6〜S8の往復移動)においてスリットノズル30を下ポジションP11まで下降させる必要は無い。
【0095】
そこで以降の往復移動においては、スリットノズル30の下限位置を高くするとよい。
図12は、残留付着物100の位置の時間変化の一例、ならびに、往復移動におけるスリットノズル30の上限位置および下限位置の時間変化の一例を概略的に示す図である。
図12では、往復移動の上限位置および下限位置はそれぞれ実線および一点鎖線で示されている。また
図12においては、その往復移動に対応する各ステップも付記している。
図12に示すように、残留付着物100の位置はスリットノズル30の往復移動により、時間の経過とともに下方へと移動する。
【0096】
ステップS5の次のステップS6では、制御部6はノズル昇降機構35bを制御して、中間ポジションP12と上ポジションP21との間でスリットノズル30を第2回数だけ往復移動させる。第2回数は例えば予め設定されている。ステップS6では、往復移動の下限位置として下ポジションP11よりも上方にある中間ポジションP12を採用するのである(
図12)。具体的には、この中間ポジションP12は下ポジションP11と上ポジションP21との間のポジションである。
【0097】
図13は、中間ポジションP12でのスリットノズル30および洗浄液貯留槽46の一例を概略的に示す図である。この中間ポジションP12は、下方に移動した残留付着物100を接液させることができるポジション(
図13)となっている。中間ポジションP12の接液深さDp3は例えば3[mm](<下ポジションP11の接液深さDp1=4[mm])程度に設定される。
【0098】
ステップS6の往復移動における上限位置としては、ステップS5と同じく上ポジションP21を採用している。
図14は、上ポジションP21でのスリットノズル30および洗浄液貯留槽46の一例を示す図である。
図14に示すように、ステップS6の往復移動においてスリットノズル30が上ポジションP21に位置するときにも、ステップS5と同様に、残留付着物100は液面水平位置よりも上方にある。
【0099】
よってステップS6においても、残留付着物100は液面水平位置よりも下方にある状態(中間ポジションP12:
図13)と、残留付着物100が液面水平位置よりも上方にある状態(上ポジションP21:
図14)とを交互に繰り返す。したがって、ステップS5の説明と同様に、残留付着物100には新鮮なリンス液を作用させることができ、また残留付着物100は傾斜面305に沿って下方へと移動しやすい。
【0100】
このステップS6の往復移動によって残留付着物100は更に例えば1[mm]下に移動するとする。よって、以後の往復移動(後述のステップS7,S8)において、スリットノズル30を中間ポジションP12まで下降させる必要はない。
【0101】
そこで次のステップS7にて、制御部6はノズル昇降機構35bを制御して、中間ポジションP13と上ポジションP21との間でスリットノズル30を第3回数だけ往復移動させる。第3回数は例えば予め設定される。中間ポジションP13は中間ポジションP12と上ポジションP21との間のポジション(
図12)であって、移動後の残留付着物100を貯留リンス液Laに接液できるポジションである。中間ポジションP13の接液深さは例えば2[mm](<中間ポジションP12の接液深さDp3=3[mm])程度に設定される。
【0102】
このステップS7における往復移動によって、ステップS5,S6と同様に残留付着物100が下方へ移動する。例えば残留付着物100は傾斜面305の下端まで移動する。よって、以後の往復移動(後述のステップS8)においてスリットノズル30を中間ポジションP13まで下降させる必要は無い。
【0103】
そこで次のステップS8にて、制御部6はノズル昇降機構35bを制御して、中間ポジションP14と上ポジションP22との間でスリットノズル30を第4回数だけ往復移動させる。第4回数は例えば予め設定される。中間ポジションP14は中間ポジションP13よりも上方にあるポジション(
図12)であって、残留付着物100を接液させることが可能なポジションである。中間ポジションP14の接液深さは例えば1[mm]程度である。この場合、中間ポジションP14と上ポジションP21とは同じ位置である。つまり、ステップS5〜S7における上限位置(上ポジションP21)をステップS8における下限位置に採用している。
【0104】
一方、ステップS8における上限位置である上ポジションP22は、スリットノズル30の吐出口31(下端面304)が貯留リンス液Laの液面水平位置よりも上方にあるポジションである。
図15は、上ポジションP22でのスリットノズル30および洗浄液貯留槽46の一例を概略的に示す図である。この上ポジションP22において、残留付着物100は貯留リンス液Laの液面水平位置よりも上方にある。スリットノズル30の下端面304と貯留リンス液Laの液面H1との距離は例えば1[mm]程度に設定される。
【0105】
このステップS8の往復移動においても、ステップS5〜S7と同様に、残留付着物100は液面水平位置よりも下方にある状態(中間ポジションP14)と上方にある状態(上ポジションP22)とを交互に繰り返す。これにより、残留付着物100には新鮮なリンス液を採用させることができ、また残留付着物100は貯留リンス液Laへ移動しやすい。よって、残留付着物100がスリットノズル30から除去されやすい。
【0106】
次にステップS9にて、制御部6はスクレーパ41を用いた掻き取り処理を行う。具体的には、制御部6はスリットノズル30をノズル洗浄位置Y1へ移動させた後に、スリットノズル30を下降させて、スリットノズル30のリップ部303をスクレーパ41に当接させる。この状態で制御部6はスクレーパ41をX方向に沿って移動させることにより、掻き取り処理を行う。これにより、スリットノズル30のリップ部303の下部領域305Aに残留したリンス液を除去することができる。なお一度の掻き取り処理でリンス液を除去できない場合には、複数回の掻き取り処理を行ってもよい。また掻き取り処理に替えて、あるいは、掻き取り処理に加えて、他の除去処理を行ってもよい。例えばスリットノズル30へと熱を加えてリンス液を蒸発させてもよい。
【0107】
以上のように、洗浄ユニット4Cによれば、ステップS2のスクレーパ41を用いた掻き取り処理によっては除去しきれない残留付着物100を、スリットノズル30から適切に除去することができる。このように洗浄ユニット4Cによって残留付着物を除去できるので、作業員がスリットノズル30を拭く手間をなくすることができる。またこの作業で用いる布等の拭き取り部材を不要にできる。
【0108】
しかも各ステップS5〜S8において、残留付着物100が貯留リンス液Laに繰り返し出入りする。これにより、スリットノズル30の外面に作用するリンス液が洗浄能力の高い新鮮なリンス液に置換され、その結果、残留物付着物100がリンス液に溶解されやすい。またこの出入りによって、未だリンス液に溶解していない残留付着物100を傾斜面305に沿って下方へと移動させることができる。
【0109】
また残留付着物100を下方に移動させれば、以後の往復移動の下限位置として、より高い位置を採用することができる。つまり以後の往復移動においてスリットノズル30の接液深さを浅くできる。これによれば、スリットノズル30のうち貯留リンス液Laに接液する面積を低減できる。よって、残留付着物100の除去後にスリットノズル30に付着するリンス液の量を低減することができる。よってステップS9によるリンス液の除去が簡単になる。
【0110】
また上述の例では、ステップS5〜S7の往復移動の上限位置である上ポジションP21において、スリットノズル30の吐出口31(つまり下端面304)が貯留リンス液Laに接液している。よってこれらの往復移動では、スリットノズル30は常に貯留リンス液Laに接液している。したがって、スリットノズル30の下端面304と貯留リンス液Laの液面H1との衝突を回避できる。よって、当該衝突に起因した貯留リンス液Laの飛散を回避することができる。
【0111】
その一方で、ステップS8の往復移動の上限位置である上ポジションP22では、スリットノズル30の下端面304は液面水平位置よりも上方にある。これは、スリットノズル30の傾斜面305の下端にある残留付着物100を、液面水平位置よりも上方に位置させるためである。これにより、残留付着物100をより下方に移動させやすい。つまり残留付着物100を貯留リンス液Laへと移動させやすく、スリットノズル30から除去しやすい。
【0112】
またステップS8では、往復移動の上限位置と下限位置との間の移動量をステップS5に比べて小さくできるので、スリットノズル30と貯留リンス液Laの液面H1との衝突による貯留リンス液Laの飛散は少ない。
【0113】
また
図10の動作では、ステップS5〜S8の4パターンの往復移動を採用しているものの、そのパターンは任意に設定できる。例えばステップS5の往復移動のみを行って、残留付着物100を除去してもよい。あるいは、より多くのパターンの往復移動を採用してもよい。例えば各往復移動の回数を少なくしつつ、各往復移動の下限位置をより細かく高くしていってもよい。
【0114】
なおノズル昇降機構35bがスリットノズル30を貯留リンス液Laに対して昇降させることで、残留付着物100を除去することに鑑みると、ノズル昇降機構35bは洗浄ユニット4Cに具備される、とも説明できる。
【0115】
<1.5.3.2 第2動作例>
上述の例では、スリットノズル30に付着した残留付着物100を、スリットノズル30の往復移動のみによって除去している(ステップS5〜S8)。しかるに、残留付着物100が初期位置(基準ラインL1)からスリットノズル30の傾斜面305に沿って下方へ移動すれば、その移動後の残留付着物100はスクレーパ41で除去可能な下部領域305Aに位置する。よって、スクレーパ41によってこの残留付着物100を除去してもよい。
【0116】
図16は、ノズルクリーニング装置4の上記動作の一例を示すフローチャートである。
図16の例においては、
図10のフローチャートにおいてステップS6〜S8が実行されない。ステップS5の往復移動の後にステップS9が実行される。これによれば、ステップS5における往復移動によって下部領域305Aに位置した残留付着物100を、ステップS9における掻き取り処理によって除去できるのである。
【0117】
この残留付着物100の量が多い場合には、ステップS9における掻き取り処理によって再び基準ラインL1に残留付着物100の一部が残留し得るものの、その量は
図16の動作前よりも少ない。よって残留付着物100の量を低減するという効果を得ることができる。
【0118】
残留付着物100を更に低減する場合には、ステップS5の往復移動の回数を多く設定してもよい。あるいは、ステップS6,S7を更に実行してもよい。ただし、ステップS8は実行しない。これによれば、スリットノズル30の往復移動によって残留付着物100が溶解される量を増大することができる。したがって、ステップS9の実行時点での残留付着物100の量を低減でき、ステップS9の掻き取り処理によって基準ラインL1に残る残留付着物の量を低減できる。
【0119】
<1.5.3.3 上ポジションP21>
上述の例では、ステップS5〜S7における往復移動の上限位置として上ポジションP21を採用していた。しかるに、上ポジションP21をステップS5〜S7ごとに異ならせても構わない。換言すれば、上ポジションは高さの異なる複数のポジションを含んでいてもよい。以下、具体的な一例について説明する。
【0120】
初期的には、残留付着物100は基準ラインL1の上に位置している。よって、残留付着物100を貯留リンス液Laの液面水平位置よりも上方に位置させるのに、必ずしも上ポジションP21までスリットノズル30を上昇させる必要は無い。そこで、ステップS5における往復移動の上限位置として、上ポジションP21よりも下方にある上ポジションP21_1を採用してもよい。
図17は、残留付着物100の位置の時間変化の一例、ならびに、往復移動におけるスリットノズル30の上限位置および下限位置の時間変化の一例を概略的に示す図である。
【0121】
つまり、ステップS5において、ノズル昇降機構35bは下ポジションP11と上ポジションP21_1との間においてスリットノズル30を往復移動させる。上ポジションP21_1の接液深さは例えば2[mm]程度である。
【0122】
この往復移動においても、残留付着物100は貯留リンス液Laに繰り返し出入りする。よって残留付着物100はスリットノズル30の傾斜面305に沿って下方へ移動する。
【0123】
さて、残留付着物100の移動量が大きくなれば、スリットノズル30が上ポジションP21_1に位置する状況で、残留付着物100が液面水平位置よりも下方に位置することになる。これを回避すべく、以後の往復移動の上限位置としてより上方の位置を採用するとよい。例えばステップS6における往復移動の上限位置として、上ポジションP21_1よりも上方にある上ポジションP21_2を採用する。ステップS6においてスリットノズル30が上ポジションP21_2に位置する状況では、残留付着物100は液面水平位置よりも上方にある。上ポジションP21_2の接液深さは例えば1.5[mm]程度である。
【0124】
このステップS6の往復移動においても、残留付着物100はスリットノズル30の傾斜面305に沿って下方へ移動する。よって、以後のステップS7の往復移動では、この残留付着物100の移動に応じて、上ポジションP21_2よりも上方の上ポジションP21_3を採用する。ステップS7においてスリットノズル30が上ポジションP21_3に位置する状況では、残留付着物100は液面水平位置よりも上方にある。上ポジションP21_3の接液深さは例えば1[mm]程度である。
【0125】
これによっても残留付着物100を適切に除去することができる。
【0126】
<1.5.4 超音波振動子>
図18は、ノズルクリーニング装置4の構成の他の一例を概略的に示す側面図である。
図18の例においては、洗浄ユニット4Cは洗浄液貯留槽46および超音波振動子(超音波振動手段)48を備えている。超音波振動子48は圧電素子(例えばピエゾ素子)を有しており、この圧電素子が振動する。この超音波振動子48は貯留リンス液Laを超音波振動させる。超音波振動子48は洗浄液貯留槽46の外部に配されて、洗浄液貯留槽46を介して貯留リンス液Laへと振動を伝えてもよいし、あるいは、洗浄液貯留槽46の内部に配されて直接に貯留リンス液Laを振動させてもよい。超音波振動子48は制御部6によって制御される。
【0127】
図19は、ノズルクリーニング装置4の動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートでは、
図10のフローチャートに対してステップS10,S11が更に設けられている。ステップS10はステップS3,S4の間で実行される。このステップS10では、制御部6は超音波振動子48に振動を開始させる。これにより、貯留リンス液Laが振動し始める。よって、以後のステップS5〜S8におけるスリットノズル30の往復移動において、貯留リンス液Laは振動し続ける。これにより、振動状態の貯留リンス液Laがスリットノズル30の残留付着物100に作用する。よって、残留付着物100の溶解を促進することができる。つまり残留付着物100の除去が促進される。
【0128】
ステップS11はステップS8,S9の間で実行される。このステップS11では、制御部6は超音波振動子48に振動を終了させる。これにより、貯留リンス液Laの振動が終了する。
【0129】
なお超音波振動子48の振動は必ずしもステップS5〜S8の全期間において行われる必要は無く、その期間の一部にて行われればよい。その一部の期間で残留付着物100の除去を促進でき、効果を得ることができるからである。
【0130】
<1.5.5 洗浄液吐出部>
図20は、洗浄ユニット4Aの構成の他の一例を概略的に示す図である。
図20の例においては、洗浄ユニット4Aは、スリットノズル30の外面(具体的には傾斜面305)に向けて洗浄液を吐出する洗浄液吐出部43を更に備えている。
【0131】
この洗浄液吐出部43は、主として、スプレッダ431によって形成される。スプレッダ431はスクレーパ41と同じ支持部416によって支持されており、スクレーパ41とX方向において隣り合って配置される。スプレッダ431はスクレーパ41よりも−X側に位置している。これらのスクレーパ41およびスプレッダ431は掻き取り処理において+X軸側から−X軸側へと移動するので、スプレッダ431はこの移動方向においてスクレーパ41よりも下流側に位置することになる。またスプレッダ431はスクレーパ41より硬い硬質体で形成されている。
【0132】
図21は、スプレッダ431の構成の一例を概略的に示す図である。スプレッダ431はリンス液を供給する液供給孔430の有無を除いてスクレーパ41と共通する外形を有する。よってここでは液供給孔430の説明のみを行う。液供給孔430は、スプレッダ431の各傾斜面415a,415bに形成されている。この液供給孔430にはリンス液供給管が取り付けられる。リンス液供給管を介して供給されたリンス液は液供給孔430から吐出される。このリンス液の供給元は洗浄液貯留槽46であってもよい。ただし洗浄液貯留槽46の貯留リンス液Laには、スリットノズル30からの残留付着物100が含まれるので、より清浄なリンス液を用いる場合には、洗浄液貯留槽46とは別の貯留槽を設けてもよい。そして、この別の貯留槽に貯留されたリンス液を、リンス液供給管を介して液供給孔430へと供給してもよい。
【0133】
スプレッダ431は
図20に示すようにスクレーパ41と同様に締結金具、例えばボルトによって支持部416に着脱自在に固定される。具体的には、支持部416は、スクレーパ41が固定される柱部4162とX方向において隣り合う柱部4262を有している。柱部4262は柱部4162よりも−X側において、昇降部4161の上面に立設される。スプレッダ431はスクレーパ41と同様の姿勢で、柱部4262の上側端に固定されている。柱部4162の上側端は柱部4262の上側端よりも高くに位置しており、スクレーパ41はスプレッダ431よりも高い位置に支持される。
【0134】
以上のように、スプレッダ431はスクレーパ41とともに昇降部4161に固定されているので、掻き取り処理において、スプレッダ431はスクレーパ41と一体的にX方向に沿って移動する。ただし、スプレッダ431はスリットノズル30には当接せずに、間隔を維持しつつ移動する。この掻き取り処理において、スプレッダ431の液供給孔430からリンス液がスリットノズル30の外面(主として傾斜面305)に吐出されながら、スプレッダ431およびスクレーパ41がX方向へと移動する。これにより、スプレッダ431から供給されたリンス液がスリットノズル30(主として傾斜面305)を洗浄しつつ、その上流側のスクレーパ41がそのリンス液を含めて付着物を除去する。
【0135】
これによれば、スクレーパ41による掻き取り処理のみならず、洗浄液吐出部43によるリンス液の吐出によっても、スリットノズル30を洗浄することができる。よってスリットノズル30に対する洗浄効果を高めることができる。
【0136】
このノズルクリーニング装置4の動作も
図10および
図16と同様である。ただし、ステップS1の準備動作において、スリットノズル30のリップ部303をスクレーパ41へ当接させた後に、洗浄ユニット4Aはスプレッダ431によるリンス液の吐出を開始する。よってステップS2の掻き取り処理においてもリンス液がスリットノズル30へと吐出される。スクレーパ41はこのリンス液を含めて付着物を除去する。洗浄ユニット4Aはスクレーパ41およびスプレッダ431の移動の終了と共に、スクレーパ41によるリンス液の吐出を終了させる。この掻き取り処理においても、基準ラインL1には残留付着物100が残留する。この場合、残留付着物100は塗布液(または塗布液が乾燥固化した残渣)とリンス液との混合物となる。このような残留付着物100もステップS3〜S8によって除去できる。なお掻き取り処理においてリンス液が供給されるので、ステップS1の準備動作において、スリットノズル30へ塗布液を供給しなくても構わない。
【0137】
なお上述の例では、各ステップにおけるスリットノズル30の往復移動の回数は予め定められていた。しかるに、この回数は作業員によって入力されてもよい。例えば塗布装置1には、作業員へ情報を伝えたり、作業員からの指示を受け付けるユーザインタフェースが設けられる。制御部6は各往復移動の回数として複数の候補を記憶しており、その候補を、ユーザインタフェースを介して作業員に通知する。作業員はその候補のうちから一つを選択する指示をユーザインタフェースへと入力する。制御部6は当該ユーザインタフェースからその情報を受け取り、当該情報通りに各往復移動の回数を設定する。あるいは、作業員はユーザインタフェースを用いて任意の回数を入力し、制御部6が往復移動の回数を、入力された回数に設定してもよい。
【0138】
また上述の例では、スリットノズル30は塗布液を吐出している塗布装置が例示されている。しかしながら、これに限らず、本実施の形態は、ノズルが他の処理液を基板Gへと吐出して、当該処理液が基板Gに作用する他の装置であってもよい。