特許第6869851号(P6869851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869851
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】シロアリ捕集用容器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20210426BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20210426BHJP
   A01N 47/34 20060101ALI20210426BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A01M1/20 B
   A01P7/04
   A01N47/34 C
   A01N25/00 102
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-162203(P2017-162203)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-37178(P2019-37178A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 龍太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真也
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−128424(JP,A)
【文献】 特開2014−103933(JP,A)
【文献】 特開2007−53946(JP,A)
【文献】 特開2009−50245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0265944(US,A1)
【文献】 特開2017−023034(JP,A)
【文献】 特開2005−343962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0083556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
A01N 25/00
A01N 47/34
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により容器の少なくとも一部が構成されていることを特徴とする、シロアリ捕集用容器。
【請求項2】
内部にシロアリ毒餌剤を収納することを特徴とする、請求項1に記載のシロアリ捕集用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリ捕集用容器に関する。より詳しくは、本発明は、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により容器の少なくとも一部が構成されていることを特徴とする、シロアリ捕集用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリは、住宅、文化財建造物等といった家屋などの建造物の木質資材を加害する構造害虫のうち最も破壊的な害虫といわれている。シロアリは近辺の木材や他のセルロース含有物を食いつくすが、通常は、これら被損部が木質資材の内部や土壌中に隠れているので、被損が深刻になるまで検知できないことが多い。
実用化されているシロアリ駆除法としては、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物等の殺虫活性成分を含有する製剤を、シロアリにより被害を受けた箇所やシロアリが家屋に侵入する箇所等に散布する方法がある(例えば、特許文献1等)。しかしながら、この方法ではシロアリの巣ごと壊滅させることは難しい。一方、シロアリの巣ごと壊滅させるシロアリ駆除法として、殺虫活性成分を混入した毒餌剤(ベイト剤)をシロアリに摂食させて、シロアリ駆除を行うベイト工法が採用されている(例えば、特許文献2等)。このベイト工法は、限定的に薬剤を使用するので環境を汚染しないという長所がある反面、シロアリの巣を壊滅するのに数ヶ月という長期間を要するという欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特表2006−515374号公報
【特許文献2】特開2002−212011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シロアリ毒餌剤は、その設置場所の設定によりシロアリ駆除効果が大きく変化することが知られており、シロアリが定着する場所を求めて設置場所を何度も変更することがある。一方、土中に埋設して使用するシロアリ毒餌剤は(土中埋設型)は、シロアリの定着を視認することは容易ではない。また、地上に載置して使用するシロアリ毒餌剤(地上載置型)でも、市販されている毒餌剤の多くは光を通さない容器となっているため、内部を容易に視認できない。シロアリの定着を確認するためには、土中埋設型は毒餌剤を掘り出し、土中埋設型または地上載置型それぞれの容器を開封して、内部を確認することが行われている。しかしながら、シロアリは、目が退化しているため光を嫌い、音、振動、臭い等にとても敏感な生物であるため、定着していたシロアリがこの確認行動により逃散してしまうことから、安易に内部を視認することができず、シロアリ定着の有無を調査できないという事情があった。これらの状況から、シロアリが定着していることを確認する簡便な方法が求められていた。
そこで本発明は、シロアリが定着していることを容易に視認できるシロアリ捕集用容器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、シロアリ捕集用容器の少なくとも一部を、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成することで、容器を開封(開蓋)することなく、シロアリの定着を維持しつつシロアリ捕集用容器内部を視認できることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により容器の少なくとも一部が構成されていることを特徴とする、シロアリ捕集用容器。
2.内部にシロアリ毒餌剤を収納することを特徴とする、1.に記載のシロアリ捕集用容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシロアリ捕集用容器は、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により容器の少なくとも一部が構成されているため、その部分から容器内部を容易に視認することができ、容器を開封(開蓋)する必要も無く、非常に実用的である。本発明のシロアリ捕集用容器は、この全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂からなる一部より内部に光が入り、容器内部は完全遮光された状態ではなくなるが、当該部分の全光線透過率が3.6%以上28.6%以下の範囲内であれば、シロアリの定着は維持されるという優れた効果を発揮するものである。
さらに、本発明のシロアリ捕集用容器は、シロアリの定着を簡便に確認できるので、シロアリ駆除に適した場所への設置が容易となり、容器内部にシロアリ毒餌剤を収納すれば優れたシロアリ駆除効果が得られるという特徴を有するものである。また、シロアリ捕集用容器で、シロアリを捕集した後に、速効性の殺虫薬剤等で簡易に駆除することもできるという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のシロアリ捕集用容器について詳細に説明する。
本発明のシロアリ捕集用容器は、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により、当該容器の少なくとも一部が構成されているものである。
本発明における全光線透過率とは、JIS K7361およびJIS K7136で規定されている試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合である。これは市販の濁度計(例えば日本電色工業株式会社製 ヘーズメーター:NDH5000、スガ試験機株式会社製 ヘーズメーター:HZ−V3等)で容易に測定可能である。
全光線透過率が上記範囲にある樹脂を使用して、本発明のシロアリ捕集用容器の少なくとも一部を構成することにより、その一部より容器内部を容易に視認することができ、容器を開封(開蓋)することなくシロアリが定着しているかを容易に確認することができるので、非常に実用的である。この全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂からなる一部よりシロアリ捕集用容器内に光が入り、完全遮光状態ではなくなる。しかしながら、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下の範囲内であれば、容器内に光が入ったとしてもシロアリの定着が維持されることは、後述する実験により確認されている。
すなわち、本発明のシロアリ捕集用容器において、その一部を構成する樹脂を、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下の範囲のものとすることは、内部視認性の確保とシロアリの定着の2つを実現する臨界的な範囲を意味する。
本発明における樹脂の全光線透過率の下限値は、3.6%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましく、9%以上であることがさらに好ましい。また上限値は28.6%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0009】
本発明のシロアリ捕集用容器において、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成されている部分は、容器天面部にあることが内部視認のために好ましく、シロアリの定着を確認しやすい。また、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成されている部分の大きさは、容器天面部の面積に合わせて適宜調整できる。天面すべてを全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成してもよく、一部分を構成してもよい。また、天面が好ましいが、側面を全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成しても良い。
【0010】
本発明のシロアリ捕集用容器を構成する全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、MMA樹脂(メタアクリル酸メチル樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、植物性樹脂、PET共重合体(ポリエチレンテレフタレート共重合体)などを挙げることができ、これら1種または2種以上を混合して使用してもよい。また必要に応じて、可塑剤、各種安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、抗酸化剤などの添加剤を加えることができる。全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂の形状は特に限定されないが、シロアリ捕集用容器を構成できる板状またはフィルム状が好適である。
また、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂で構成される以外の部分を構成する材料については、地中または地表での劣化に強く防湿性に優れた材料であれば特に制限されず、樹脂、ガラス、金属等の材料を使用することができる。全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂で構成される一部との接合性の観点から、本発明のシロアリ捕集用容器は全体が樹脂により構成されていることが好ましく、全体が同じ樹脂により構成されていることが製造コストの点からより好ましい。また、シロアリを定着させるためには、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂で構成される以外の部分を土中埋設型として土の中に埋め、光が当たらないようにするか、地上載置型とする場合には、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂で構成される以外の部分を構成する材料について、全光線透過率が28.6%以下である材料により構成することが好ましい。
【0011】
本発明のシロアリ捕集用容器の具体的な形状としては、シロアリが喫食する食餌、シロアリが経口的に摂取することにより致死する食毒剤、さらにはシロアリを誘引する誘引剤等を内部に収納できる空間を有するものであれば、特に限定されない。例えば、立方体型、直方体型、球型、多角柱型、円柱型、棒型、円錐型、多角錐型、卵型、ペットボトル型などの形状を例示できる。容器の寸法は特に限定されるものではなく、一辺若しくは直径が1cm〜15cm、天面(底面)が0.5cm〜225cmの矩形・長方形・円形・楕円形などで、高さが0.5cm〜25cm程度のものが適当である。
本発明のシロアリ捕集用容器は、シロアリが侵入可能な開口部を有しているが、この開口部から、シロアリ以外の害虫が容器内に侵入することは好ましくない。そのため、この開口部の大きさは、最長対角線または最長径を5mm以下とすることが好ましい。
【0012】
本発明のシロアリ捕集用容器は、どのような形態であっても良く、シロアリを捕集後に、殺虫薬剤を捕集用容器内に施用してシロアリを駆除してもよいが、容器内部にシロアリ毒餌剤を収納する態様が好ましい。
このシロアリ毒餌剤は、シロアリが喫食する食餌、シロアリが経口的に摂取することにより致死する食毒剤、さらにはシロアリを誘引する誘引剤等からな
るものである。
【0013】
シロアリが喫食する食餌は、シロアリが好み喫食するものであれば特に限定されない。具体例としては、例えばセルロース誘導体やセルロース含有資材が挙げられる。セルロース誘導体は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース ナトリウム塩等のセルロースエーテルまたはそのアルカリ金属塩等が、セルロース含有資材は、材木片および大鋸屑等のいわゆる木質資材や各種のセルロース製品が例示できる。木質資材の樹種としては、例えばアカマツ、クロマツ、ツガ等の針葉樹およびカバ、ペカン等の広葉樹が挙げられる。セルロース製品としては、例えば、セルロース粉末、結晶状セルロース、繊維状セルロース等のほか、セルロース紙、澱粉含有紙、無機繊維紙等のセルロース含有紙が挙げられる。
【0014】
シロアリが経口的に摂取することにより致死する食毒剤は、公知の殺シロアリ活性化合物、昆虫成長調節剤、シロアリ防除剤等であれば特に限定されない。具体例としては、例えば天然ピレトリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、プラレトリン、テラレスリン、フタルスリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、サイパーメスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エンペントリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系化合物;プロポクスル、カルバリル等のカーバメート系化合物;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物;アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物;イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系化合物等の殺シロアリ活性化合物;ジフルベンズロン、ペンフルロン、ビストリフルロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、クロルフルアズロン、ノバルロン、ノビフルムロン等のベンゾイルフェニルウレア系化合物;メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物;プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物等の昆虫成長調節剤;フィトンチッド、ハッカ油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の殺虫精油類等の各種シロアリ防除剤が挙げられ、必要に応じてサイネピリン、ピペロニルブトキサイド等の共力剤等を併用してもよい。本発明のシロアリ捕集用容器において使用する食毒剤としては、遅効性の昆虫成長調節剤が好ましく、特にベンゾイルフェニルウレア系化合物が好適である。
【0015】
シロアリを誘引する誘引剤は、シロアリが誘引される物質であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、動植物エキス;カゼイン等の蛋白質類;澱粉、小麦粉、米粉、糠、トウモロコシ粉等の植物粉末;砂糖、蜂蜜、廃糖蜜、異性化糖、ショ糖、液糖、マルトース、サトウキビ果汁等の糖類;プロリン等のアミノ酸類;トウモロコシ油、ヒマシ油、オリーブ油、大豆油、ナタネ油、ピーナッツ油等の植物油;(3S,4R,6E,10Z)−3,4,7,11−テトラメチル−トリデカ−6,10−ジエナール、(z)−9−ヘキサデセナール、2,5−ジメチルピラジン、8−メチル−2,5−ジメチルピラジン、Z,E−またはE,E−α−フラネセン等の道しるべフェロモン等が挙げられる。
【0016】
本発明のシロアリ捕集用容器に捕集するシロアリとは、例えば、ムカシシロアリ科、オオシロアリ科、レイビシロアリ科、シュウカクシロアリ科、ミゾガシラシロアリ科、ノコギリシロアリ科、シロアリ科に属する等翅目昆虫をいう。具体的には、ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリ、タイワンシロアリ、コウシュンシロアリ、サツマシロアリ、ナカジマシロアリ、カタンシロアリ、コダマシロアリ、クシモトシロアリ、オオシロアリ、コウシュウイエシロアリ、アマミシロアリ、キアシシロアリ、カンモンシロアリ、タカサゴシロアリ、ニトベシロアリ、ムシャシロアリ等のほか、イースタンサブテラニアンターマイト、ウエスタンサブテラニアンターマイト、ダークサザンサブラテニアンターマイト、アリッドランドサブテラニアンターマイト、デザートサブテラニアンターマイト、およびネバダダンプウッドターマイト等を挙げることができる。
【0017】
本発明のシロアリ捕集用容器は、シロアリの生息域に設置して使用する。具体的には例えば、シロアリの被損部、シロアリの通り道、家屋の床下、家屋周辺の土壌等の、シロアリが生息している場所またはシロアリの侵入が予想される場所に、本発明のシロアリ捕集用容器を土中に埋設するか地表に載置して使用する。中でも、本発明のシロアリ捕集用容器は、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により構成される部分が地表から出るように、それ以外の部分を地中に埋設して使用することが、シロアリの定着を維持しつつ、その定着を容易に確認できる点で好適である。
【実施例】
【0018】
以下、処方例および試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0019】
<シロアリ定着確認試験>
(1)試験検体
試験検体として、全光線透過率が下記に示すアクリル樹脂プレートを使用した。
試験検体1:全光線透過率 0%
試験検体2:全光線透過率 3.1%
試験検体3:全光線透過率 3.6%
試験検体4:全光線透過率 6.2%
試験検体5:全光線透過率 9.1%
試験検体6:全光線透過率18.4%
試験検体7:全光線透過率28.6%
試験検体8:全光線透過率58.8%
試験検体9:全光線透過率76.7%
【0020】
(2)シロアリ定着確認試験方法
側面と底面をアルミホイルで遮光した直径90mm、深さ17mmのガラス製シャーレーの左半分中央と右半分中央に、紙餌(10mm×10mm)をそれぞれ設置し、シロアリがシャーレー外に出ないように、天面の左半分を全光線透過率90%のアクリル樹脂プレートで覆い、天面の右半分を試験検体1〜9のアクリル樹脂プレートの何れかで覆った。このシャーレーの右半分を「試験区」とする。
室温25℃、湿度60%RHの試験室内にて、上記試験環境(ガラス製シャーレー)中に、シロアリ(ヤマトシロアリ、職蟻)100頭を放ち、卓上ライト(180ルクス)の光を照射した条件下、1時間後の「試験区」のシロアリ定着頭数をカウントし、その割合をシロアリ定着率(%)とした。表1記載の定着率は、3回行った試験それぞれのシロアリ定着率(%)の平均値を使用した。シロアリの定着は、この平均値に基づき下記評価基準に従い4段階で評価した。
[評価基準]
「◎」:シロアリ定着率平均値が80%以上100%以下
「〇」:シロアリ定着率平均値が60%以上80%未満
「△」:シロアリ定着率平均値が50%以上60%未満
「×」:シロアリ定着率平均値が50%未満
また「試験区」内部の視認性を確認し、下記評価基準に従い3段階で評価した。
[評価基準]
「◎」:シロアリを極めて良く視認できる
「〇」:シロアリを視認できる
「×」:シロアリを視認できない
シロアリ定着確認試験結果について表1にまとめ示した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1の結果より、シロアリの定着は、全光線透過率28.6%以下において向上することが、内部視認性は、全光線透過率3.6%以上において良好となることが確認された。すなわち、シロアリの定着と内部視認性の2つを実現するためには、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂によりシロアリ捕集用容器の少なくとも一部が構成されていることが重要であることが、明らかとなった。
このシロアリの定着と内部視認性の2つを実現するための全光線透過率の数値範囲は、臨界的なものであり、本発明者により、新たに見出された知見であって、これにより得られる本発明の効果は格別顕著なものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のシロアリ捕集用容器は、全光線透過率が3.6%以上28.6%以下である樹脂により少なくとも容器の一部が構成されているため、シロアリの定着を維持しながら、シロアリ捕集用容器内部を容易に視認できるという特徴を有するものである。
このシロアリ捕集用容器の内部にシロアリ毒餌剤を収納すれば、優れたシロアリ駆除効果が得られるほか、この捕集用容器でシロアリを捕集した後に、速効性の殺虫薬剤等を使用すれば、簡易にシロアリを駆除できるという特徴を有する。