特許第6869870号(P6869870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869870コンクリートプレキャスト床版及び接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869870
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】コンクリートプレキャスト床版及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   E01D19/12
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-207373(P2017-207373)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-78115(P2019-78115A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】古市 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】岩井 稔
(72)【発明者】
【氏名】山中 宏之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】横関 康祐
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】大窪 一正
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−328704(JP,A)
【文献】 特開2012−077471(JP,A)
【文献】 特開2009−041227(JP,A)
【文献】 特開2009−209600(JP,A)
【文献】 特開2016−204925(JP,A)
【文献】 特開2015−086594(JP,A)
【文献】 特開2015−001045(JP,A)
【文献】 特開平08−311816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向、前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、前記橋軸方向と前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びるコンクリートプレキャスト床版であって、
前記橋軸直角方向及び前記高さ方向に延びる端面から前記橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、
前記端面から前記継手用鉄筋に沿って突出し、前記橋軸方向及び前記高さ方向に延びる複数の隔壁と、
を備えるコンクリートプレキャスト床版。
【請求項2】
前記端面の前記高さ方向の下側から前記橋軸方向に突出する底版を備える、
請求項1に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項3】
前記橋軸直角方向及び前記高さ方向に延びる前記隔壁の突出端面は、他の相手側コンクリートプレキャスト床版の端面に当接し、
前記突出端面には、前記相手側コンクリートプレキャスト床版に対する高さを合わせる高さ合わせ部が設けられる、
請求項1又は2に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項4】
前記複数の隔壁の上面には、前記コンクリートプレキャスト床版の上面、及び他の相手側コンクリートプレキャスト床版の上面と連続するように設けられる覆工板が配置される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項5】
前記覆工板には充填材が注入される注入孔が形成されており、前記注入孔から前記複数の隔壁の間に前記充填材が注入される、
請求項4に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項6】
前記橋軸直角方向及び前記高さ方向に延びる前記隔壁の突出端面、並びに、前記コンクリートプレキャスト床版に接合される他の相手側コンクリートプレキャスト床版の端面、には、前記橋軸方向に延びる貫通孔が形成されており、
前記貫通孔には、前記コンクリートプレキャスト床版と前記相手側コンクリートプレキャスト床版とに緊張力を付与する緊張材が挿通される、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項7】
前記貫通孔に連続して前記突出端面から突出すると共に、前記相手側コンクリートプレキャスト床版の前記貫通孔に挿入されるガイド管を備える、
請求項6に記載のコンクリートプレキャスト床版。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のコンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版とを接合する接合方法であって、
複数の前記隔壁のそれぞれの突出端面に接着剤を塗布する工程と、
前記突出端面に前記相手側コンクリートプレキャスト床版の端面を突き合わせる工程と、
前記貫通孔に緊張材を挿通して前記コンクリートプレキャスト床版及び前記相手側コンクリートプレキャスト床版に緊張力を付与する工程と、
を備える接合方法。
【請求項9】
前記突き合わせる工程の後に、複数の前記隔壁の間に充填材を注入する工程を備え、
前記緊張力を付与する工程では、注入された前記充填材が硬化した後に前記緊張材を締め付けることによって緊張力を付与する、
請求項8に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートプレキャスト床版、及びコンクリートプレキャスト床版同士を接合させる接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートプレキャスト床版、及び、その接合方法としては種々のものが知られている。特許文献1には、コンクリートプレキャスト床版の継手構造が記載されている。この継手構造は、互いに対向するように配置される一対の床版同士を連結させる構造であり、一対の床版の間には継手空間が形成されている。各床版からは、継手空間に向かって無端状鉄筋がU字状に突出している。また、一方の床版の下部からは継手空間に向かって突出部が突出しており、突出部の先端は他方の床版に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−328704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した継手構造は、一方の床版の下部から突出する突出部を他方の床版に突き合わせ、複数の主鉄筋を継手空間に配置した後に、主鉄筋と無端状鉄筋のU字状部分とに複数の結合部材を装着し、その後、突出部の先端が他方の床版に接触した状態で突出部の上方に位置する継手空間にモルタルが充填されることによって構築される。一方の床版の下部から突出する突出部は、板状に形成されているため、突き合わせたときに割れたり欠けたりする懸念がある。従って、コンクリートプレキャスト床版の接合部分の強度において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、接合部分の強度を高めることができるコンクリートプレキャスト床版、及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリートプレキャスト床版は、橋軸方向、橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、橋軸方向と橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向、に延びるコンクリートプレキャスト床版であって、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる端面から橋軸方向に突出する複数の継手用鉄筋と、端面から継手用鉄筋に沿って突出し、橋軸方向及び高さ方向に延びる複数の隔壁と、を備える。
【0007】
前述したコンクリートプレキャスト床版では、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる端面から複数の継手用鉄筋が突出すると共に、当該端面から複数の隔壁が突出している。複数の隔壁のそれぞれは、当該端面から突出すると共に、橋軸方向及び高さ方向に延在している。よって、当該端面を他の相手側コンクリートプレキャスト床版に向けて接合を行うときに、複数の隔壁を相手側コンクリートプレキャスト床版に当接させることができる。従って、当該端面と相手側コンクリートプレキャスト床版の間に複数の隔壁が介在した状態でコンクリートプレキャスト床版同士の接合が行われるので、接合部分の強度を高めることができる。
【0008】
また、前述したコンクリートプレキャスト床版は、端面の高さ方向の下側から橋軸方向に突出する底版を備えてもよい。この場合、底版の先端を相手側コンクリートプレキャスト床版に接触させることにより、コンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版の間に、下端が封止された継手空間を形成することができる。よって、継手空間に充填材を注入するときに型枠を不要とすることができるので、施工性を高めることができる。
【0009】
また、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる隔壁の突出端面は、他の相手側コンクリートプレキャスト床版の端面に当接し、突出端面には、相手側コンクリートプレキャスト床版に対する高さを合わせる高さ合わせ部が設けられてもよい。この場合、隔壁の突出端面に高さ合わせ部が設けられることにより、隔壁の突出端面を相手側コンクリートプレキャスト床版の端面に当接させたときに、相手側コンクリートプレキャスト床版に対するコンクリートプレキャスト床版の高さを合わせることができる。従って、従来面倒であったコンクリートプレキャスト床版の高さ合わせを自動的に行うことができ、高さ合わせをスムーズに行うことができるため、施工性をより高めることができる。
【0010】
また、複数の隔壁の上面には、コンクリートプレキャスト床版の上面、及び他の相手側コンクリートプレキャスト床版の上面と連続するように設けられる覆工板が配置されてもよい。この場合、複数の隔壁の上面に覆工板が配置され、覆工板はコンクリートプレキャスト床版の上面と相手側コンクリートプレキャスト床版の上面とに連続するように設けられる。従って、覆工板の配置により、複数の隔壁に支持された覆工板で継手空間を塞ぐと共に、コンクリートプレキャスト床版の上面、相手側コンクリートプレキャスト床版の上面、及び覆工板の上面を揃えることができる。よって、コンクリートプレキャスト床版の上面、相手側コンクリートプレキャスト床版の上面、及び覆工板の上面に車両等を通すことができるので、各コンクリートプレキャスト床版の接合作業を効率よく行うことができる。
【0011】
また、覆工板には充填材が注入される注入孔が形成されており、注入孔から複数の隔壁の間に充填材が注入されてもよい。この場合、注入孔から継手空間に充填材を注入することができるので、各コンクリートプレキャスト床版の接合作業をより効率よく行うことができる。
【0012】
また、橋軸直角方向及び高さ方向に延びる隔壁の突出端面、並びに、コンクリートプレキャスト床版に接合される他の相手側コンクリートプレキャスト床版の端面、には、橋軸方向に延びる貫通孔が形成されており、貫通孔には、コンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版とに緊張力を付与する緊張材が挿通されてもよい。この場合、コンクリートプレキャスト床版及び相手側コンクリートプレキャスト床版の間で橋軸方向に延びる貫通孔に緊張材を挿通し当該緊張材を締め付けることにより、コンクリートプレキャスト床版及び相手側コンクリートプレキャスト床版に緊張力を付与することができる。従って、緊張力の付与により、コンクリートプレキャスト床版の突出端面と相手側コンクリートプレキャスト床版の端面との接着力を高めることができ、当該端面と突出端面とを補強することができるので、接合部分の強度を一層高めることができる。
【0013】
また、前述したコンクリートプレキャスト床版は、貫通孔に連続して突出端面から突出すると共に、相手側コンクリートプレキャスト床版の貫通孔に挿入されるガイド管を備えてもよい。この場合、コンクリートプレキャスト床版のガイド管を相手側コンクリートプレキャスト床版の貫通孔に挿入することにより、コンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版の接合を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る接合方法は、前述したコンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版とを接合する接合方法であって、複数の隔壁のそれぞれの突出端面に接着剤を塗布する工程と、突出端面に相手側コンクリートプレキャスト床版の端面を突き合わせる工程と、貫通孔に緊張材を挿通してコンクリートプレキャスト床版及び相手側コンクリートプレキャスト床版に緊張力を付与する工程と、を備える。
【0015】
この接合方法では、複数の隔壁の突出端面に接着剤を塗布し、突出端面を相手側コンクリートプレキャスト床版の端面に突き合わせることにより、相手側コンクリートプレキャスト床版との接合を容易に行うことができる。また、コンクリートプレキャスト床版及び相手側コンクリートプレキャスト床版の貫通孔に緊張材を挿通して緊張材を締め付けることにより、コンクリートプレキャスト床版及び相手側コンクリートプレキャスト床版に緊張力を付与することができる。従って、緊張力の付与により、コンクリートプレキャスト床版の突出端面と相手側コンクリートプレキャスト床版の端面との接着力を高めることができ、当該端面と突出端面とを補強することができるので、接合部分の強度を一層高めることができる。
【0016】
また、突き合わせる工程の後に、複数の隔壁の間に充填材を注入する工程を備え、緊張力を付与する工程では、注入された充填材が硬化した後に緊張材を締め付けることによって緊張力を付与してもよい。この場合、継手空間に充填された充填材が硬化した後に緊張材を締め付けることにより、コンクリートプレキャスト床版の突出端面と相手側コンクリートプレキャスト床版の端面とを補強することができると共に、コンクリートプレキャスト床版と相手側コンクリートプレキャスト床版との界面全体を圧縮状態にすることができる。従って、接合部分の強度を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接合部分の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る継手部構造を示す平面図である。
図2図1の継手部構造を水平方向に延びる平面で切断したときの横断面図である。
図3図1の継手部構造を鉛直方向に延びる平面で切断したときの縦断面図である。
図4】(a)は、コンクリートプレキャスト床版の隔壁の突出端面を示す正面図である。(b)は、コンクリートプレキャスト床版の隔壁の突出端面の変形例を示す正面図である。
図5】(a)は、図4の突出端面の高さ合わせ部を示す縦断面図である。(b)は、高さ合わせ部の変形例を示す縦断面図である。(c)は、高さ合わせ部の別の変形例を示す縦断面図である。
図6】(a)は、図4の突出端面の貫通孔及びガイド管を示す縦断面図である。(b)は、(a)の貫通孔及びガイド管に挿通される緊張材を示す図である。
図7】第2実施形態に係る継手部構造を鉛直方向に延びる平面で切断したときの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係るコンクリートプレキャスト床版及び接合方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1のコンクリートプレキャスト床版10(コンクリートプレキャスト床版)、第1のコンクリートプレキャスト床版10とは異なる他の第2のコンクリートプレキャスト床版20(相手側コンクリートプレキャスト床版)、及び覆工板30を備えた継手部構造1を示す平面図である。継手部構造1は、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20とを覆工板30を介して連結する連結構造である。
【0021】
例えば、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20は、道路橋を成すプレキャスト床版である。道路橋において、複数のコンクリートプレキャスト床版は、橋軸方向D1に沿って配置されており、複数のコンクリートプレキャスト床版の一部のプレキャスト床版を第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20としている。
【0022】
第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20は工場で予め製造され、予め製造された第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30が現場に搬送される。第1のコンクリートプレキャスト床版10、覆工板30及び第2のコンクリートプレキャスト床版20が連結する方向と橋軸方向D1とは互いに一致する。
【0023】
図1図2及び図3に示されるように、覆工板30は、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20の間に形成される継手空間Sを上から覆う部材であり、継手空間Sに充填材40を充填させるための注入孔31を有する。覆工板30は、超高強度繊維補強コンクリート(UFC;Ultra high strength Fiber reinforced Concrete)によって構成されていてもよく、この場合、継手部構造1の強度を更に高めることが可能である。但し、覆工板30の材料は適宜変更可能である。図2は継手空間Sを水平方向に延びる平面で切断したときの横断面図であり、図3は継手空間Sを鉛直方向に延びる平面で切断したときの縦断面図である。注入孔31は、例えば、格子状となるように複数配置されている。
【0024】
第1のコンクリートプレキャスト床版10は、直方体状を成すプレキャストブロック11と、橋軸方向D1に延びる複数の継手用鉄筋12とを備える。第2のコンクリートプレキャスト床版20は、プレキャストブロック11及び継手用鉄筋12と同様のプレキャストブロック21及び継手用鉄筋22を備える。
【0025】
プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、例えば、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる路面部位を構成する。すなわち、プレキャストブロック11の上面11a、及びプレキャストブロック21の上面21aは、共に路面を構成する。プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、高さ方向D3に厚みを有する。高さ方向D3は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2の双方に直交する方向であり、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2も互いに直交する。プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21の高さ方向D3の厚さは、例えば、20cm以上且つ30cm以下である。継手空間Sの橋軸方向D1の長さも20cm以上且つ30cm以下である。但し、これらの値は適宜変更可能である。
【0026】
プレキャストブロック11及びプレキャストブロック21は、例えば、道路橋を成す部位であるため、車両等の荷重を受ける。プレキャストブロック11の橋軸方向D1の一端に位置する端面11bと、プレキャストブロック21の橋軸方向D1の一端に位置する端面21bとが連結することによって継手部構造1が構築される。端面11bは、端面21bに橋軸方向D1に対向する面である。端面11b及び端面21bは、例えば、共に平坦面であり、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延在している。
【0027】
端面11bからは、橋軸直角方向D2の端部に位置する端部壁14と、複数の隔壁15と、底版17が突出している。端部壁14及び隔壁15は、端面11bから橋軸方向D1に突出しており、橋軸方向D1及び高さ方向D3に延びる板状を成している。隔壁15の橋軸直角方向D2の厚さは、例えば、8cm以上且つ15cm以下である。橋軸直角方向D2において、複数の隔壁15は、両端に一対に設けられた端部壁14の間に配置されている。端面11bからの端部壁14の突出長さと、端面11bからの各隔壁15の突出長さとは互いに同一である。
【0028】
例えば、複数の隔壁15は、橋軸直角方向D2に沿って一定間隔ごとに設けられており、複数の隔壁15の間隔は、一例として、50cm以上且つ200cm以下である。第1のコンクリートプレキャスト床版10に設けられる隔壁15の数は、例えば、5以上且つ20以下である。なお、これらの値は適宜変更可能である。隔壁15は、その橋軸方向D1の先端に突出端面16を有する。突出端面16は、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延在する。プレキャストブロック11は、隔壁15の突出端面16がプレキャストブロック21の端面21bに接触した状態でプレキャストブロック21に接合される。突出端面16の詳細については後述する。
【0029】
底版17は、端面11bの下側から橋軸方向D1に突出しており、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる板状を成している。底版17は、継手空間Sを下側から覆うように、橋軸直角方向D2の全体にわたって設けられている。底版17の橋軸方向D1への突出長さは、端部壁14の突出長さ、及び隔壁15の突出長さと同一である。
【0030】
継手用鉄筋12は、プレキャストブロック11に埋め込まれると共に端面11bから棒状に突出している。継手用鉄筋12は、第2のコンクリートプレキャスト床版20に向かって直線状に延びている。各継手用鉄筋12の先端部には、各継手用鉄筋12から拡径する拡径部材13が取り付けられている。継手用鉄筋12は、橋軸直角方向D2に沿って複数配置されており、且つ高さ方向D3に沿って複数(例えば2本)配置されている。
【0031】
橋軸直角方向D2における継手用鉄筋12の間隔は、例えば15cmである。継手用鉄筋12は、端部壁14、隔壁15及び底版17と同様、端面11bから橋軸方向D1に突出するが、継手用鉄筋12の突出長さは、端部壁14、隔壁15及び底版17それぞれの突出長さよりも短い。継手用鉄筋12は、端部壁14と隔壁15の間、及び、複数の隔壁15の間に複数本ずつ(例えば2本ずつ)設けられる。なお、継手用鉄筋12の他に、橋軸直角方向D2に延びる鉄筋が複数本配置されていてもよい。
【0032】
第2のコンクリートプレキャスト床版20の継手用鉄筋22は、端面21bから第1のコンクリートプレキャスト床版10に向かって突出している。継手用鉄筋22には、継手用鉄筋12と同様に、拡径部材13が取り付けられている。継手用鉄筋22の配置、構成及び作用は、例えば、継手用鉄筋12の配置、構成及び作用と同様である。継手用鉄筋12及び継手用鉄筋22は、端部壁14と隔壁15の間、及び複数の隔壁15の間において、例えば、千鳥状に配置されている。
【0033】
プレキャストブロック21の上面21aには、覆工板30が配置される凹部21cが形成されている。凹部21cは、端面21bの上端から橋軸方向D1に延びている。また、図3及び図4に示されるように、各隔壁15の高さ(高さ方向D3の長さ)は、端部壁14の橋軸直角方向D2端部側の上面14aの高さよりも低くなっており、この低くなっている部分に覆工板30が載せられる。
【0034】
端部壁14の上面14aの高さと、隔壁15の上面15aの高さの差は、覆工板30の厚さ、及び凹部21cの深さと一致する。また、平面視における凹部21cと複数の上面15aとを含む矩形状の領域の面積は、平面視における覆工板30の面積と略同一である。従って、プレキャストブロック21の凹部21c、及び複数の隔壁15の上面15aに覆工板30を載せることにより、覆工板30の上面30aは、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21aと連続する。すなわち、覆工板30は、平面視における凹部21cと複数の上面15aとを含む矩形状の領域にちょうど入り込むと共に、上面11a、上面21a及び覆工板30の上面30aが同一平面上に位置するように設置される。
【0035】
隔壁15の突出端面16は、様々な形状とすることが可能である。例えば、図4(a)に示されるように、突出端面16は、底版17から矩形状に突出していてもよい。各隔壁15の底版17側の端部にハンチ部15bが設けられていてもよい。また、図4(b)に示されるように、隔壁15は、突出端面16に代えて、底版17に向かうに従って拡張するように傾斜する傾斜部16aを有する突出端面16Aを有していてもよい。
【0036】
図4(b)では、下側に拡がる台形状の突出端面16Aを示しているが、このように高さ方向D3全体に延びる傾斜部16aを一対に有する突出端面16Aであってもよいし、下側のみに傾斜部16aを有する突出端面であってもよい。以上のような突出端面16,16Aを有する隔壁15は、下側に拡がる部位を有するため、剛性が高い隔壁15とすることができる。
【0037】
突出端面16,16Aには、例えば、各隔壁15にプレキャストブロック21を連結するための連結具が挿入される穴部16bが形成されている。穴部16bは、突出端面16,16Aの下側、すなわち、連結具を挿入しやすい位置に形成されている。図5(a)に示されるように、突出端面16,16Aの穴部16bには、連結具23が挿入される。穴部16b及び連結具23は、第2のコンクリートプレキャスト床版20に対する第1のコンクリートプレキャスト床版10の高さを合わせる高さ合わせ部である。
【0038】
例えば、穴部16bは隔壁15に埋め込まれたインサートであり、連結具23は穴部16bに圧入される位置合わせ用のピンである。穴部16bに連結具23を挿入することにより、コンクリートプレキャスト床版10,20を保持することができ、仮施工時にコンクリートプレキャスト床版10,20の荷重を預けることができる。なお、穴部16b及び連結具23の配置は逆であってもよく、すなわち、隔壁15が連結具23を備え、プレキャストブロック21が穴部16bを備えていてもよい。
【0039】
図5(b)に示されるように、穴部16b及び連結具23に代えて、高さ合わせ部として、各隔壁15にプレキャストブロック21の凸部21dが挿入される凹部16cが形成されていてもよい。凸部21dは、凹部16cに嵌合する形状とされており、一例として、凸部21d及び凹部16cは半球状とされている。なお、凸部21d及び凹部16cの形状は、矩形状等、半球状以外の形状であってもよい。また、凸部21d及び凹部16cの配置は逆であってもよく、隔壁15が凸部21dを備え、プレキャストブロック21が凹部16cを備えていてもよい。
【0040】
図5(c)に示されるように、穴部16b及び連結具23に代えて、高さ合わせ部として、各隔壁15及びプレキャストブロック21に、互いに嵌り合う波形の凹凸部16d,21eが形成されていてもよい。凹凸部16dは、突出端面16のみに形成されていてもよいし、突出端面16に加えて端部壁14の突出端面、及び底版17の突出端面に形成されていてもよい。突出端面16、端部壁14の突出端面、及び底版17の突出端面に凹凸部16dが形成される場合には、プレキャストブロック11の突出端面全体に凹凸部16dが形成されることになるため、プレキャストブロック11とプレキャストブロック21との付着長さを長くすることができると共に製造しやすいという利点がある。
【0041】
更に、図6(a)及び図6(b)に示されるように、隔壁15及びプレキャストブロック21のそれぞれに、緊張材35が挿入される貫通孔15c,21fが形成されていてもよい。貫通孔15cは突出端面16(又は突出端面16A)に開口しており、貫通孔21fは端面21bに開口している。貫通孔15c及び貫通孔21fは、端面21b及び突出端面16において橋軸方向D1に延びると共に、例えば、端面21b及び突出端面16から離れるに従って下方に湾曲している。
【0042】
貫通孔15c及び貫通孔21fのそれぞれは、例えば、曲線状のシース管15d及びシース管21gが埋設されることによって形成されている。シース管15d及びシース管21gの材料は、例えば、セラミック、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、ステンレス、又は防錆処理が施された金属等、防錆材料によって構成されている。シース管15d及びシース管21gのそれぞれは、シース管15d及びシース管21gの外方に突出する複数の凸部15e,21pを有する。凸部15e,21pによりシース管15d,21gのコンクリートに対するより確実な一体化が可能となる。なお、凸部15e,21pは省略してもよい。また、シース管15dにはシース管21gに挿入されるガイド管15fが連続しており、ガイド管15fは突出端面16から橋軸方向D1に突出している。
【0043】
シース管15dのガイド管15fとの反対側の端部は下方に湾曲しており、シース管15dの開口15gは隔壁15の下面15kから窪む凹部15hに形成されている。凹部15hは、開口15gを含む内面15jと、内面15jの上端から下面15kにまで延びる内面15mと、によって形成されている。内面15j,15mは橋軸方向D1に対して傾斜しており、凹部15hは斜めに欠き込まれているため、欠き込み量を減らすことができる。従って、プレキャストブロック11の強度の低下を抑えることができる。
【0044】
開口15gの法線方向(開口15gからシース管15dが延びる方向)は、内面15jの法線方向と一致している。なお、斜めに欠き込まれる凹部15hに代えて、斜めに突出する山状の凸部が設けられ、当該凸部の外面に開口15gが形成されていてもよい。また、プレキャストブロック21のシース管21gは、シース管15dと同様の構成を備えている。すなわち、シース管21gの開口21hは下面21jから窪む凹部21kに形成され、凹部21kは開口21hを含む内面21mと内面21nによって形成され、開口21hの法線方向は内面21mの法線方向と一致している。
【0045】
前述したように、貫通孔15c及び貫通孔21fには、緊張材35が挿通されて締め付けられる。緊張材35は、例えば、曲線状に湾曲して延びる曲がりボルト35aと、一対のワッシャ35bと、一対のナット35cによって構成される。曲がりボルト35aの両端側には雄螺子部35dが形成されており、雄螺子部35dにナット35cがねじ込まれる。緊張材35は、曲がりボルト35aが貫通孔15c及び貫通孔21fに挿通されて開口15g,21hにおいてワッシャ35bを介して各ナット35cが雄螺子部35dに締め込まれることにより、プレキャストブロック21と隔壁15に緊張力を付与する。
【0046】
次に、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20とを接合する接合方法について説明する。まず、第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30を準備する(第1のコンクリートプレキャスト床版、第2のコンクリートプレキャスト床版及び覆工板を準備する工程)。
【0047】
次に、第1のコンクリートプレキャスト床版10、第2のコンクリートプレキャスト床版20及び覆工板30を現場まで運搬する。そして、吊り上げ及び吊り降ろしを行うことにより第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20を設置する。このとき、第1のコンクリートプレキャスト床版10の各隔壁15の突出端面16に接着剤Aを塗布する(接着剤を塗布する工程)。接着剤Aは、突出端面16の不陸を修正するために設けられる。
【0048】
そして、図2及び図3に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10の各隔壁15の突出端面16と第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bとを突き合わせる(突き合わせる工程)。このとき、端部壁14と端面21bとが突き当たると共に、底版17と端面21bとが突き当たる。第1のコンクリートプレキャスト床版10の継手用鉄筋12と第2のコンクリートプレキャスト床版20の継手用鉄筋22とが千鳥状となるように、突出端面16及び端面21bの突合せを行う。
【0049】
突出端面16と端面21bとを突き合わせた後には、覆工板30を第1のコンクリートプレキャスト床版10の各隔壁15の上面15a、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の凹部21cの上に設置する。この覆工板30の設置により、継手空間Sを上から塞ぎ込む(覆工板を設置する工程)。なお、覆工板30を設置した後には、覆工板30とプレキャストブロック21の間、及び覆工板30とプレキャストブロック11の間、に隙間を埋める埋め込み材を注入してもよい。更に、継手空間Sに充填材40を充填させる(充填材を充填する工程)。充填材40の充填は、覆工板30の注入孔31から継手空間Sに充填材40を充填することによって行う。
【0050】
継手空間Sに充填した充填材40が硬化した後には、図6(a)及び図6(b)に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20に緊張力を付与する緊張材35を設置する(緊張力を付与する工程)。具体的には、開口15g又は開口21hから貫通孔15c,21fに曲がりボルト35aを挿入し、内面15j,21mにワッシャ35bを当接させると共に、ナット35cを雄螺子部35dにねじ込んでナット35cでワッシャ35bを押さえつけることにより、緊張材35の締め付けを行う。
【0051】
緊張材35の締め付けは、充填材40の硬化後に行うことが好ましいが、別のタイミングで実行することも可能である。例えば、コンクリートプレキャスト床版10,20の位置合わせのときに緊張材35を軽く締めて充填材40を打ち、充填材40が硬化した後に緊張材35を強く締め付けてもよい。以上のように緊張材35を設置した後に、継手部構造1が完成する。
【0052】
次に、本実施形態に係る第1のコンクリートプレキャスト床版10及び接合方法の作用効果について詳細に説明する。図2に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10では、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる端面11bから複数の継手用鉄筋12が突出すると共に、端面11bから複数の隔壁15が突出している。複数の隔壁15のそれぞれは、端面11bから突出すると共に、橋軸方向D1及び高さ方向D3に延在している。
【0053】
よって、端面11bを第2のコンクリートプレキャスト床版20に向けて接合を行うときに、複数の隔壁15を第2のコンクリートプレキャスト床版20に当接させることができる。従って、端面11bと第2のコンクリートプレキャスト床版20の間に複数の隔壁15が介在した状態で第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の接合が行われるので、接合部分の強度を高めることができる。
【0054】
また、図3に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10は、端面11bの高さ方向D3の下側から橋軸方向D1に突出する底版17を備える。底版17の先端を第2のコンクリートプレキャスト床版20に接触させることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20の間に、下端が封止された継手空間Sを形成することができる。よって、継手空間Sに充填材40を充填するときに型枠を不要とすることができるので、施工性を高めることができる。
【0055】
また、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる隔壁15の突出端面16は、第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bに当接し、突出端面16には、図5に示されるように、高さ合わせ部として穴部16b、凹部16c又は凹凸部16dが設けられる。よって、隔壁15の突出端面16に高さ合わせ部が設けられることにより、隔壁15の突出端面16を第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bに当接させたときに、第2のコンクリートプレキャスト床版20に対する第1のコンクリートプレキャスト床版10の高さを合わせることができる。よって、従来面倒であったコンクリートプレキャスト床版の高さ合わせを自動的に行うことができ、高さ合わせをスムーズに行うことができるため、施工性をより高めることができる。更に、本実施形態の高さ合わせ部(穴部16b、凹部16c又は凹凸部16d)では、高さだけでなく、水平方向の位置合わせを自動的に行うことも可能である。
【0056】
また、複数の隔壁15の上面15aには、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21aと連続するように設けられる覆工板30が配置される。すなわち、複数の隔壁15の上面15aに覆工板30が配置され、覆工板30は第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11aと第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21aとに連続するように設けられる。
【0057】
従って、図3に示されるように、覆工板30の配置により、複数の隔壁15に支持された覆工板30で継手空間Sを塞ぐと共に、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21a、及び覆工板30の上面30aを揃えることができる。よって、第1のコンクリートプレキャスト床版10の上面11a、第2のコンクリートプレキャスト床版20の上面21a、及び覆工板30の上面30aに車両等を通すことができるので、各コンクリートプレキャスト床版10,20の接合作業を効率よく行うことができる。
【0058】
また、図1に示されるように、覆工板30には充填材40が注入される注入孔31が形成されており、注入孔31から複数の隔壁15の間に充填材40が注入される。よって、注入孔31から継手空間Sに充填材40を注入することができるので、各コンクリートプレキャスト床版10,20の接合作業をより効率よく行うことができる。
【0059】
また、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる隔壁15の突出端面16、並びに、第1のコンクリートプレキャスト床版10に接合される第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bには、図6(a)及び図6(b)に示されるように、橋軸方向D1に延びる貫通孔15c,21fが形成されており、貫通孔15c,21fには、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20とに緊張力を付与する緊張材35が挿通される。
【0060】
よって、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の間で橋軸方向D1に延びる貫通孔15c,21fに緊張材35を挿通し緊張材35を締め付けることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20に緊張力を付与することができる。従って、緊張力の付与により、第1のコンクリートプレキャスト床版10の突出端面16と第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bとの接着力を高めることができ、端面21bと突出端面16とを補強することができるので、接合部分の強度を一層高めることができる。
【0061】
また、第1のコンクリートプレキャスト床版10は、貫通孔15cに連続して突出端面16から突出すると共に、第2のコンクリートプレキャスト床版20の貫通孔21fに挿入されるガイド管15fを備える。よって、第1のコンクリートプレキャスト床版10のガイド管15fを第2のコンクリートプレキャスト床版20の貫通孔21fに挿入することにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20の接合を容易に行うことができる。更に、突出端面16から突出するガイド管15fを備えることにより、貫通孔15cへの接着剤Aの侵入を抑制することができる。
【0062】
本実施形態に係る接合方法では、複数の隔壁15の突出端面16に接着剤Aを塗布し、突出端面16を第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bに突き合わせることにより、第2のコンクリートプレキャスト床版20との接合を容易に行うことができる。また、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の貫通孔15c,21fに緊張材35を挿通して緊張材35を締め付けることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20に緊張力を付与することができる。従って、前述したように、突出端面16と第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bとの接着力を高めることができるので、接合部分の強度を一層高めることができる。
【0063】
また、突き合わせる工程の後に、複数の隔壁15の間に充填材40を注入する工程を備え、緊張力を付与する工程では、注入された充填材40が硬化した後に緊張材35を締め付けることによって緊張力を付与してもよい。この場合、継手空間Sに充填された充填材40が硬化した後に緊張材35を締め付けることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10の突出端面16と第2のコンクリートプレキャスト床版20の端面21bとを補強することができると共に、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版20との界面全体を圧縮状態にすることができる。従って、接合部分の強度を更に高めることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る継手部構造41について図7を参照しながら説明する。図7に示されるように、継手部構造41は、覆工板50が位置決め用のピン51とアンカー筋52を備える点、及び、第2のコンクリートプレキャスト床版60のプレキャストブロック61の上面61aに形成された凹部61cに高さ方向D3に窪む穴部61dが設けられる点、が第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0065】
穴部61dは、凹部61cの上面61eに形成されている。穴部61dは、例えば、プレキャストブロック61に埋め込まれたインサートであり、穴部61dには、覆工板50に固定されたピン51が圧入される。穴部61d及びピン51は、第2のコンクリートプレキャスト床版60に対する覆工板50の位置決めを行う位置決め部として機能する。なお、位置決め部は、凹部及び凸部、又は波形の凹凸部等、穴部61d及びピン51とは異なる形態であってもよい。アンカー筋52は、覆工板50の下面50aから下方に延びており、アンカー筋52の先端には折り返し部52aが設けられている。折り返し部52aは、アンカー筋52の下部からU字状に上方に湾曲して折り返されている。アンカー筋52は、継手空間Sに配置されると共に充填材40に埋設される。
【0066】
第2実施形態に係る継手部構造41では、第1実施形態と同様、第1のコンクリートプレキャスト床版10の端面11bと第2のコンクリートプレキャスト床版60の間に複数の隔壁15が介在した状態で第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版60の接合が行われる。従って、接合部分の強度を高めることができるので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
更に、覆工板50は、凹部61cの上面61eに形成された穴部61dに上方から挿入される位置決め用のピン51を有する。よって、位置合わせ用のピン51を凹部61cの上面61eに形成された穴部61dに挿入することにより、凹部61cに対する覆工板50の位置合わせを容易に行うことができる。従って、覆工板50の設置作業を容易に行うことができる。また、覆工板50は、継手空間Sにおいて下方に突出するアンカー筋52を有する。従って、継手空間Sにおいてアンカー筋52が充填材40に埋設されることにより、第1のコンクリートプレキャスト床版10と第2のコンクリートプレキャスト床版60との接合強度をより高めることができる。
【0068】
以上、本発明に係るコンクリートプレキャスト床版及び接合方法の各実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、コンクリートプレキャスト床版の各部の構成、並びに、接合方法の各工程の内容及び順序は適宜変更可能である。
【0069】
例えば、前述の実施形態では、板状の隔壁15が複数設けられる第1のコンクリートプレキャスト床版10について説明したが、隔壁の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述の実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【0070】
また、前述の実施形態では、曲がりボルト35aを備えた緊張材35によって緊張力を付与する例について説明したが、緊張材の形状、大きさ、数、材料及び配置態様については適宜変更可能である。例えば、直線状のボルトを備えた緊張材によって緊張力を付与することも可能である。
【0071】
また、前述の実施形態では、シース管15d、シース管21g及びガイド管15fによって貫通孔15c,21fが形成される例について説明したが、シース管及びガイド管の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は適宜変更可能である。また、ガイド管15fを省略することも可能である。
【0072】
また、前述の実施形態では、図2及び図3に示されるように、第1のコンクリートプレキャスト床版10が端部壁14、隔壁15及び底版17を備える例について説明した。しかしながら、第1のコンクリートプレキャスト床版10及び第2のコンクリートプレキャスト床版20の両方が端部壁、隔壁、及び底版を備えていてもよい。この場合、各コンクリートプレキャスト床版10,20から突出する端部壁、隔壁、及び底版の突出長さは、前述した実施形態の半分となるため、継手用鉄筋12,22の突出長さよりも短くなる。
【0073】
また、前述の実施形態では、ピン51及びアンカー筋52を備えた覆工板50について説明したが、覆工板におけるピン及びアンカー筋の形状、大きさ、数、材料及び配置態様については適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
1,41…継手部構造、10…第1のコンクリートプレキャスト床版(コンクリートプレキャスト床版)、11,21,61…プレキャストブロック、11a,21a,61a…上面、11b,21b…端面、12,22…継手用鉄筋、13…拡径部材、14…端部壁、14a…上面、15…隔壁、15a…上面、15b…ハンチ部、15c…貫通孔、15d…シース管、15e,21p…凸部、15f…ガイド管、15g…開口、15h…凹部、15j,15m…内面、15k…下面、16,16A…突出端面、16a…傾斜部、16b…穴部、16c…凹部、16d…凹凸部、17…底版、20,60…第2のコンクリートプレキャスト床版(相手側コンクリートプレキャスト床版)、21c,61c…凹部、21d…凸部、21e…凹凸部、21f…貫通孔、21g…シース管、21h…開口、21j…下面、21k…凹部、21m,21n…内面、23…連結具、30,50…覆工板、30a…上面、31…注入孔、35…緊張材、35a…曲がりボルト、35b…ワッシャ、35c…ナット、35d…雄螺子部、40…充填材、50a…下面、51…ピン、52…アンカー筋、52a…折り返し部、61d…穴部、61e…上面、A…接着剤、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向、D3…高さ方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7