(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方の端子ピンまたは/および前記他方の端子ピンの表面において前記絶縁体と接触している部分の少なくとも一部に、凹部または凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の点火器。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するため、急速にエアバッグを膨張展開させるガス発生器が用いられている。このガス発生器としては、ステアリングホイールに装備される運転席用エアバッグ装置等に用いられるディスク型のガス発生器、または、シートベルトプリテンショナ等に用いられるマイクロガスジェネレータ(MGG)等が挙げられる。
【0003】
このようなガス発生器は、金属製のハウジングおよび当該ハウジングに取り付けられるホルダ(保持部材)を備えている。ホルダは、ハウジングに設けられた接着剤層により当該ハウジングに接着されることがある。上記ハウジング内にはガス発生剤が収容される。また、ホルダには点火器が保持される。点火器は一対の端子ピンを有している。
【0004】
上記点火器は金属製のアイレットを備えており、このアイレットに上記一対の端子ピンが保持されている。具体的には、例えば特許文献1で示されるように、一方の金属ピンはリング状の成形部品の貫通孔に設けられたガラス栓に溶融接合され、アースとしての機能を有する他方の金属ピンはろう付けによって上記アイレットに導通接続されている。また、例えば特許文献2には、特許文献1のようなアイレットを用いずに、セラミック体の貫通孔に電極ピンを挿入する態様の着火具が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、端子ピンを固定するための工程および部材が多いため、工程の簡素化およびこれに伴うコストダウンの余地がある。また、エアバッグ装置など、高い耐衝撃性等が要求される装置に用いられる点火器においては、端子ピンの引抜き強度を向上する必要があるところ、上記従来の端子ピンの引抜き強度は高いとはいえない。
【0007】
そこで、本発明は、端子ピンを固定する際の工程およびコストを削減することができると共に、当該端子ピンの引抜き強度を従来よりも向上することができる点火器および当該点火器を備えるガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(
1)
本発明は、膨張部材を膨張させるガス発生器に用いられ、燃焼によりガスを発生するガス発生剤を着火燃焼させる点火器であって、所定量の電流が供給される一対の端子ピンと、前記一対の端子ピンのうち一方の端子ピンが挿通される第1孔部および他方の端子ピンが挿通される第2孔部を有し、有底筒状に形成された金属製の保持部材と、前記保持部材の内部に充填されて設けられ、一方の前記端子ピンを前記保持部材および前記他方の端子ピンから絶縁する絶縁体と、を備え、前記他方の端子ピンは前記保持部材と導通されていると共に、前記他方の端子ピンが前記第2孔部に挿通された状態で、前記他方の端子ピンの一端部は、前記保持部材の外側面と面一に形成され、前記第2孔部における前記保持部材の外面側の周壁端部にはテーパが形成されているものであ
る。
【0015】
上記(
1)の構成によれば
、一の金属ピンをろう付けによってアイレットに導電接続していた従来構成とは異なり、一対の端子ピンの双方を対応する各孔部にそれぞれ挿通した状態で絶縁体を充填して固定するので、端子ピンを固定する際の工程(従来のろう付け工程)を削減することができる。これに伴い、製造コストも削減することができる。
【0016】
また、他方の端子ピンが第2孔部に挿通された状態で、当該他方の端子ピンの一端部が保持部材の外側面と面一に形成される態様によれば、端子ピンの引抜き強度を向上することができる。詳しくは、通常、保持部材に第2孔部が形成される際に、当該孔部からの工具の抜きに起因して当該第2孔部の外側の周壁端部にテーパが形成される。そして、形成された第2孔部に端子ピンを圧入した状態で、圧入方向とは逆の方向から端子ピンに圧力をかけることで当該端子ピンの一端が潰れ、端子ピンの一部が上記テーパに係合する。その後、端子ピンの潰れた一端を切削、研磨等により上記面一とする。このような構成によれば、他方の端子ピンの一部がテーパに係合して当該端子ピンが第2孔部から抜け難くなるため、引抜き強度の向上につながる。また、保持部材から突出する部分がなくなるため、点火器の軽量化につながると共に、他部材との干渉が生じるおそれもない。
【0017】
(
2) 上記(1)
の点火器においては、前記一方の端子ピンまたは/および前記他方の端子ピンの表面において前記絶縁体と接触している部分の少なくとも一部に、凹部または凸部が形成されていることが好ましい。
【0018】
上記(
2)の構成によれば、一方の端子ピンまたは/および他方の端子ピンが各孔部から抜け難くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、端子ピンを固定する際の工程およびコストを削減することができると共に、当該端子ピンの引抜き強度を従来よりも向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る点火器を備えたガス発生器について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、ガス発生器の型の一例として、ディスク型のガス発生器に本発明の点火器を適用する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の点火器は公知のマイクロガスジェネレータ等の他のガス発生器にも適用することができる。
【0022】
図1に示すように、ガス発生器100は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状に形成され、下部側シェル(イニシエータシェル)10および上部側シェル(クロージャシェル)20により構成されるハウジングを有する。このハウジングの内部に設けられた収容空間(燃焼室)には、例えば樹脂材料により形成され且つ上記ハウジング内に配設される部分と当該ハウジング外に配設される部分とで一体的に構成される保持部36、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下側保持部材62、上側保持部材63、クッション材(蓋部材)64、シールテープ(閉塞部材)24、およびフィルタ材70等が収容されている。上記収容空間には、ガス発生剤61が主として収容されたガス発生剤収容室60が設けられている。
【0023】
下部側シェル10および上部側シェル20は、圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品である。具体的には、下部側シェル10および上部側シェル20は、例えば上型および下型からなる一対の金型を用いて、圧延された一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示するような形状に成形される。
【0024】
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによって上記ハウジングが構成される。下部側シェル10は底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の各端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、例えば電子ビーム溶接、レーザー溶接、又は摩擦圧接等の方法が好適に利用できる。
【0025】
上部側シェル20は、周壁部22の下端から連続して外側に向けて突出した固定部25を有している。この固定部25は、ハウジングを外部の部材(図示略)に対して固定するための部位であり、これにより設置後にガス発生器100が固定部25を介して当該外部の部材によって支持されることになる。なお、上部側シェル20の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。
【0026】
また、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられている。これにより、底板部11の中央部には、突状筒部13の外壁によって窪み部14が形成される。突状筒部13は、金属製の下部側シェル10の一部であり、保持部36のうちハウジング内に配設された部分を介して点火器40が固定される部位である。突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視で円形状の開口部15が設けられている。この開口部15は、点火器40の一対の鉄、アルミ、ステンレス鋼等の金属材料で構成された端子ピン42、43が挿通される部位である。端子ピン42、43は、開口部15を介して窪み部14からハウジング外側(下部側シェル10側)に向けて突出して配置されている。開口部15の大きさは、点火器40の最大外形部分である点火部41の外形よりも小さくなっている。これにより、万一、保持部36に予期せぬ破損が生じた場合であっても、ハウジング内部の圧力上昇を受けて点火器40が開口部15を通過してハウジングの外部に飛び出てしまうことが防止される。下部側シェル10の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。なお、端子ピン42、43の固定方法については後述する。
【0027】
保持部36は、点火器40の端子ピン42、43を部分的に露出させた状態で保持すると共に、端子ピン42、43とコントロールユニット(図示略)とを電気的に接続するためのハーネスの雄型コネクタ(図示略)を接続するための雌型コネクタ部36aを有している。保持部36は例えば樹脂材料を用いたインサート成形によって形成される。詳しくは、下部側シェル10の開口部15を介して点火器40を差し込む。次に、下金型(図示略)で下部側シェル10を固定し、上金型(図示略)で点火器40を固定する。上金型から樹脂材料を流し込み、保持部36を形成する。
【0028】
点火器40は、保持部36に保持されることによりハウジング内に配置されている。点火器40は、火炎を発生するものであり、点火部41と上述の端子ピン42、43とを備えている。この端子ピン42、43は、点火器40のスクイブカップ(有底カップ部材)52内に設けられた金属製(鉄、アルミ、ステンレス鋼等の金属材料)の保持部材(アイレット)44に直接又は間接的に保持されている。この保持部材44は、プレス加工の深絞りにより有底筒状に形成されており、その開口側端面と上記スクイブカップ52の開口側端面とがほぼ面一となるように当該スクイブカップ52内に配されている。端子ピン42はガラス及び/または樹脂溶融物との接触領域に連結路開口部の軸線方向の伸長部にわたって配置され、順々に連結されている複数の突起を有したものでもよい。この態様の端子ピン42はその突起により、第2孔部46から抜け難くなり、引抜き強度が向上する。なお、点火器40の内部構成の詳細については、
図2を用いて後で詳述する。点火部41は、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬51と当該点火薬51を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)49とを含んでいる。上記点火薬51は、点火器40のスクイブカップ52内において上記保持部材44の配置領域を除いた空間領域に設けられている。端子ピン42、43は、上記点火薬51を着火させるため上記抵抗体49を介して互いに接続されている。上記抵抗体49は、端子ピン42、43の先端を連結するように取り付けられ、この抵抗体49を取り囲むように又はこの抵抗体49に近接するように上記点火薬51が上記スクイブカップ52内に装填されている。上記抵抗体49としては一般にニクロム線等が利用され、上記点火薬51としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。
【0029】
衝突を検知した際には、端子ピン42、43を介して上記抵抗体49に所定量の電流が流れるようになっている。抵抗体49に電流が流れることにより、当該抵抗体49においてジュール熱が発生し、点火薬51が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬51を収納している上記スクイブカップ52を破裂させる。抵抗体49に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体49にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0030】
上述のカップ状部材50は、保持部36および点火器40を覆うように設けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その伝火室55が点火部41に面するようにガス発生剤収容室60内に配置されている。また、カップ状部材50は、開口端側にフランジ状に延出された先端部54を有しており、この先端部54は底板部11と下側保持部材62とによって挟み込まれた状態で固定されている。このようなカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇又は発生した熱の伝導に伴って破裂又は溶融するものであり、例えばアルミニウムまたは熱硬化性樹脂等の機械的強度が比較的低いものが用いられる。
【0031】
伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO
3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物等が用いられる。また、伝火薬56としては、オートイグニッション(AI)機能を有するものを用いることも可能である。AI機能とは、点火器40の作動によらずに自動発火する機能である。AI機能を有する伝火薬56は、ガス発生剤61よりも低い温度で自動発火するので、ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、外部から加熱されることによるガス発生器100の異常動作の誘発を防ぐことができる。
【0032】
ガス発生剤収容室60は、下部側シェル10および上部側シェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、上述のカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間であって、ガス発生剤61が収容される空間を形成する。また、ガス発生剤収容室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、上述のフィルタ材70が当該ハウジングの内壁に沿って配置されている。フィルタ材70は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されることにより、ガス発生剤収容室60を径方向に取り囲んでいる。
【0033】
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた上記熱粒子により着火され、燃焼することによってガスを発生する薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等又はこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、又は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダ、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダ、又は、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0034】
フィルタ材70は、例えばステンレス鋼又は鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したもの、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、或いは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。フィルタ材70は、ガス発生剤収容室60内で発生したガスがこのフィルタ材70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、ガス発生剤収容室60内で発生したガスが確実にフィルタ材70中を通過するようにすることが必要である。フィルタ材70の下端部の内周壁は下側保持部材62に保持されている。
【0035】
続いて、フィルタ材70に対面する上部側シェル20の周壁部22(すなわち、固定部25が設けられた位置よりも天板部21側に位置する部分の周壁部)の部分には、ガス噴出口23が複数設けられている。ガス噴出口23は、フィルタ材70を通過したガスをハウジングの外部に排出するためのものである。また、上部側シェル20の周壁部22のフィルタ材70側に位置する主面には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシールテープ24が貼付されている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ガス発生剤収容室60の気密性が確保されている。
【0036】
下側保持部材62は、作動時において、ガス発生剤収容室60にて発生したガスがフィルタ材70を経由することなく当該フィルタ材70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する。下側保持部材62は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼又は特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板又はステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0037】
ガス発生剤収容室60のうち天板部21側に位置する端部には、上側保持部材63が配置されている。上側保持部材63は、フィルタ材70と天板部21との境目部分を覆うように配置されている。上側保持部材63は、フィルタ材70の天板部21側に位置する内周壁に接触することでフィルタ材70を位置決めして保持するとともに、その内部に配置されたクッション材64を保持している。上側保持部材63は、作動時において、ガス発生剤収容室60にて発生したガスがフィルタ材70を経由することなくフィルタ材70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する。上側保持部材63は、下側保持部材62と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼又は特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板又はステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0038】
上側保持部材63の内側には、ガス発生剤61に接触するように円盤形状のクッション材64が配置されている。クッション材64は、天板部21とガス発生剤61との間に配置されることにより、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。クッション材64は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体、ロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、又は、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
【0039】
以上のような構成において、ガス発生器100が搭載された車両が衝突した際には、車両に設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、車両に設けられたコントロールユニットからの端子ピン42、43に対する通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂又は溶融し、上述の熱粒子がガス発生剤収容室60へと流れ込む。
【0040】
流れ込んだ熱粒子により、ガス発生剤収容室60に収容されているガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。ガス発生剤収容室60内で発生したガスは、フィルタ材70を通過し、その際にフィルタ材70によって熱が奪われて冷却されると共に、ガス中に含まれるスラグがフィルタ材70によって除去されてハウジングの外周縁部に流れ込む。そして、ハウジングの内圧の上昇に伴い、ガス噴出口23を閉塞するシールテープ24による封止が破られ、当該ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器100に接続されるエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを展開および膨張させるようになっている。
【0041】
次に、端子ピン42、43の固定方法について説明する。端子ピン42、43が固定された状態は、
図2(a)に示す通りである。
図1の点火器40は、
図2(a)に示すように、上述の保持部材44を備えている。この保持部材44は、その底部において、端子ピン43の一端が挿通される第1孔部45および端子ピン42の一端が挿通される第2孔部46を有している。
【0042】
第1孔部45および第2孔部46は、上記底部において間隔を空けて例えば円形状に形成されている。第1孔部45の直径は端子ピン43の一端の直径よりも大きく、第2孔部46の直径は端子ピン42の一端の直径とほぼ同じとなっている。端子ピン43が第1孔部45に挿通された状態では、当該端子ピン43は第1孔部45の周壁に接触していない。これに対して、端子ピン42が圧入によって第2孔部46に挿通された状態において、当該端子ピン42は第2孔部46の周壁に接触している。これにより、端子ピン42は保持部材44と電気的に導通接続されている。
【0043】
保持部材44の内部には、樹脂材料等よりなる絶縁体47が設けられている。この絶縁体47は、保持部材44の内部に充填されて設けられ、端子ピン43を保持部材44および端子ピン42から絶縁すると共に、端子ピン42を端子ピン43から絶縁している。なお、端子ピン42は直線状に形成されているが、端子ピン43については、当該端子ピン43のうち上記絶縁体47内の部分が屈曲して形成されている。絶縁体には樹脂、ガラス材料、特にエポキシ樹脂等の絶縁材料が用いられる。
【0044】
ここで、
図2(b)に示すように、保持部材44の第2孔部46の軸方向外側の周壁端部にはテーパ48が形成されている。このテーパ48は、第2孔部46を形成する際に、当該第2孔部46からの工具の引き抜きに起因して形成されるものである。なお、第2孔部46の軸方向内側の周壁端部にも同様にテーパが形成される。
【0045】
図2(a)のように端子ピン42を固定する際には、まず
図3(a)に示すように、端子ピン42を第2孔部46に圧入する。その後、圧入方向とは逆の方向(図示した矢印の方向)から端子ピン42の一端に圧力を加えることで、
図3(b)に示すように、当該端子ピン42の一端が潰れて大径部42aが形成される。この大径部42aは、端子ピン42の軸径よりも大きく、保持部材44の外面に当接される。これにより、大径部42aが保持部材44の外面に引っ掛かるため、端子ピン42が第2孔部46から抜け難くなり、引抜き強度が向上する。
【0046】
一方、上記大径部42aを切削、研磨等により削ることによって、上述の
図2(a)のように、端子ピン42の一端を保持部材44の外側面と面一に形成してもよい。この場合、端子ピン42の一端を潰す際に当該端子ピン42の一部が上記テーパに係合することとなるので、このような態様でも、端子ピン42が第2孔部46から抜け難くなり、引抜き強度が向上する。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、一の金属ピンをろう付けによってアイレットに導電接続していた従来構成とは異なり、端子ピン42、43の双方を対応する孔部46、45にそれぞれ挿通した状態で絶縁体47を充填して固定するので、端子ピンを固定する際の工程(従来のろう付け工程)を削減することができる。これに伴い、製造コストも削減することができる。
【0048】
また、端子ピン42が第2孔部46に挿通された状態で、当該端子ピン42の一端が保持部材44の外側面と面一に形成される態様によれば、端子ピン42の引抜き強度を向上することができる。すなわち、端子ピン42を第2孔部46に圧入した後、当該圧入方向とは逆の方向から端子ピン42に圧力をかけることで当該端子ピン42の一端が潰れ、端子ピン42の一部がテーパ48に係合する。その後、端子ピン42の一端が潰れてできた大径部42aを切削、研磨等により上記面一とする。このような構成によれば、端子ピン42が第2孔部46から抜け難くなるため、引抜き強度の向上につながる。
【0049】
或いは、端子ピン42の大径部42aを削らない場合でも、当該大径部42aが保持部材44の外面に当接されるため、端子ピン42が第2孔部46から抜け難くなり、引抜き強度を向上することができる。
【0050】
さらに、端子ピン42の大径部42aを削る場合には、保持部材44から突出する部分がなくなるため、点火器40の軽量化につながると共に、他部材との干渉が生じるおそれもない。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
上記実施形態では、端子ピン42、43自体に加工を施さなかったが、これに限定されるものではなく、端子ピン42、43の途中部分(特に、絶縁体47との接触部分)の少なくとも一部に凹部又は凸部(たとえば、ローレット加工を施した部分など)を設ける態様を採用してもよい。これにより、端子ピン42、43がより抜け難くなる。