(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記探索範囲設定部は、前記移動量の複数の実績データにおける前記移動量の最大値または最小値と前記撮影装置の標準の移動量との差を前記移動量のばらつきの最大として、前記移動量のばらつきの最大値に応じた幅を算出する、
請求項3または請求項4に記載の検査画像合成装置。
前記探索範囲設定部は、前記移動量の実績データから得られた前記移動量のばらつきの大きさに余裕分を加えた値を前記移動量のばらつきの最大値として、前記移動量のばらつきの最大値に応じた探索範囲の幅を算出する、
請求項3または請求項4に記載の検査画像合成装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態に係る検査画像合成システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、検査画像合成システム1は、撮影装置100と、検査画像合成装置200とを備える。検査画像合成装置200は、通信部210と、表示部220と、操作入力部230と、記憶部280と、制御部290とを備える。制御部290は、移動量演算部291と、探索範囲設定部292と、画像合成部293とを備える。
【0022】
検査画像合成システム1は、検査対象物を目視検査(Visual Testing;VT)するための、検査対象物の表面の撮影画像を提供する。
撮影装置100は、検査対象物の表面を走査して一定時間間隔で撮影を行う。
図2は、撮影装置100の走査パターンの例を示す図である。
図2では、検査対象物900の表面における撮影装置100の走査パターンが線L11で示されている。また、検査対象物900の表面の傷C11が示されている。
【0023】
図2の走査パターンでは、撮影装置100は、検査対象物900の表面を図の左右に往復しながら図の下方向に移動していく。撮影装置100は、往路、復路のそれぞれで撮影を行う。
但し、撮影装置100の走査パターンは特定のものに限定されない。撮影装置100の走査パターンとして、目視検査対象範囲全域を撮影可能ないろいろな走査パターンを用いることができる。
【0024】
図3は、撮影装置100の走査パターンの第2の例を示す図である。
図3では、検査対象物900は、円柱と円錐台と直方体とを組み合わせた形状をしている。撮影装置100は、矢印で示すように検査対象物900の上部側から、検査対象物周方向に回転しながら検査対象物900を走査し、1周する毎に下方に移動して周方向の走査を繰り返す。
撮影装置100がこのように走査を行うことで、円柱および円錐台など円形を有する検査対象物に対しても走査を行うことができる。
【0025】
図4は、撮影装置100の走査パターンの第3の例を示す図である。
図4では、検査対象物900の表面における撮影装置100の走査パターンが実線および破線で示されている。撮影装置100が実線に沿って移動する際の画像が目視検査に用いられる。一方、撮影装置100が破線に沿って移動する際の画像は、目視検査には用いられない。
ここで、撮影装置100の駆動部の歯車のバックラッシ等に起因して、往路と復路とで撮影装置100の動作が異なる場合が考えられる。この場合、撮影装置100が1方向で撮影した画像のみを用いることで、バックラッシ等の影響を受けにくくすることができる。
【0026】
検査画像合成装置200は、撮影装置100が検査対象物の表面を撮影した画像を複数繋ぎ合わせたパノラマ画像を生成する。ここでいうパノラマ画像は、撮影装置100の実際の画角よりも広い画角で撮影したのに相当する画像(従って、検査対象物の、より広い範囲を示す画像)である。
検査画像合成装置200は、例えばパソコン(Personal Computer;PC)またはEWS(Engineering Workstation)等のコンピュータを用いて構成される。
【0027】
通信部210は、他の装置と通信を行う。特に、通信部210は、撮影装置100からの撮影データを受信する。この撮影データには、撮影装置100が撮影した画像が画像データにて含まれ、また、当該画像の撮影位置情報(当該画像を撮影した際の撮影装置100の位置情報)が含まれる。通信部210は、画像情報取得部の例に該当する。
ここでの撮影位置情報は、撮影と撮影との間の撮影装置100の移動量が分かるものであればよい。例えば、撮影位置情報は、撮影装置100の積算移動距離情報であってもよい。あるいは、撮影位置情報は、撮影時の撮影装置100の位置を3次元座標データまたは2次元座標データで示すものであってもよい。
【0028】
表示部220は、例えば液晶パネルまたはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)パネル等の表示画面を有し、各種画像を表示する。例えば、表示部220は、検査画像合成装置200が生成した検査対象物のパノラマ画像を表示する。
操作入力部230は、例えばキーボードおよびマウス等の入力デバイスを用いて構成され、ユーザ操作を受ける。例えば、表示部220が検査対象物のパノラマ画像を表示しているときに、操作入力部230が、画像の倍率変更を指示するユーザ操作、および、表示範囲の変更(移動)を指示するユーザ操作を受けるようにしてもよい。
【0029】
記憶部280は、各種データを記憶する。例えば、記憶部280は、通信部210が受信した撮影データを時系列に記憶する。
記憶部280は、検査画像合成装置200が備える記憶デバイスを用いて構成される。
制御部290は、検査画像合成装置200の各部を制御して各種処理を行う。制御部290は、検査画像合成装置200が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部280からプログラムを読み出して実行することで構成される。
【0030】
移動量演算部291は、時系列で隣り合う、撮影装置100からの画像毎の撮影位置情報から、これら画像間の移動量を演算する。特に、移動量演算部291は、当該移動量を画素数で算出する。
例えば、移動量演算部291は、時系列で隣り合う画像毎の撮影位置情報の差分をとることで、これらの撮影位置間の距離(すなわち、撮影装置100の移動量)を算出する。そして、移動量演算部291は、算出した距離に撮影装置100の撮影画像における単位距離当たりの画素数を乗算することで、当該距離を画素数に換算する。
【0031】
図5は、撮影装置100が撮影した画像の時系列の例を示す図である。
図5の横軸は時刻を示す。
図5では、各画像の撮影時刻がフレーム番号で示されている。ここでいうフレームは、撮影装置100の1回の撮影で得られる画像(従って、撮影装置100が撮影した個々の画像)である。
図5に示す各画像のうち、フレーム番号t+ω、t+(ω+1)、t+(ω+2)の各画像には、きず(
図2のきずC11)の一部が写っている。
図2に示す走査パターンで、撮影装置100が図の上下方向に一定で左から右へ移動しながら、
図5の画像を撮影する。これにより、フレーム番号t+ω、t+(ω+1)、t+(ω+2)の順に画像を見ると、きずの像は、高さ(図の上下方向)一定で、図の右側から、中央、左側へと移動している。
【0032】
図6は、撮影装置100の移動量の例を示す図である。
図6では、
図5の各画像のうちフレーム番号t+ωの画像と、フレーム番号t+(ω+1)の画像とが、左右の端を揃えて縦に並べて示されている。以下の説明では、フレーム番号t+ωの画像を第1画像と称し、フレーム番号t+(ω+1)の画像を第2画像と称する。
【0033】
第1画像における点P11と、第2画像における点P12とは、検査対象物の表面における同一箇所を示している。第1画像と第2画像とは、図の上下方向には、ずれていない。距離dが、第1画像を撮影してから第2画像を撮影するまでの撮影装置100の移動量に該当する。移動量演算部291は、この距離dを、撮影装置100が撮影した画像における画素数pで算出する。
図6の状態から第2画像を右方向に画素数pだけずらした後、第2画像を上方向に移動させて第1画像の上下の端と第2画像の上下の端を揃えることで、これら2つの画像のパノラマ画像を得られる。
【0034】
探索範囲設定部292は、時系列で隣り合う、撮影装置100からの画像間で重なり合う画素の範囲を、移動量演算部291が算出した移動量に基づいて算出する。探索範囲設定部292は、算出した画素の範囲を、画像合成部293が行うテンプレートマッチングにおける探索範囲として設定する。
図7は、画像の重ね合わせの例を示す図である。
図7の例では、
図6を参照して説明したように、第1画像と第2画像とを、左右に画素数pだけずらし、上下を揃えて重ね合わせている。
【0035】
仮に、撮影装置100が撮影と撮影との間に必ず距離Dずつ
図2の左から右に移動し、その間、
図2の上下方向にずれなければ、
図7のように得られた画像を横方向に画素数pずつずらして重ね合わせれば、(横1行分の)パノラマ画像を得られる。この場合、重ね合わせる画素の範囲は一意に定まり、画像マッチングを行う必要はない。
【0036】
しかしながら、実際には、撮影装置100を常に一定速度で移動させることは困難であり、撮影と撮影との間の撮影装置100の移動量にばらつきが生じる。そこで、探索範囲設定部292は、撮影装置100の移動量のばらつきに応じた幅を有する探索範囲を設定する。
また、通常、撮影装置100が移動する際、予定された移動方向(
図2の横方向)に移動量のばらつきが生じるだけでなく、予定された移動方向と直交方向(
図2の上下方向)にもずれる(移動量0からばらつきが生じる)。そこで、探索範囲設定部292は、画像の画素の縦方向、横方向それぞれに移動量のばらつきに応じた幅を有する探索範囲を設定する。
【0037】
図8は、撮影装置100の移動量にばらつきがある場合の画像の重ね合わせの例を示す図である。
図8では、重ね合わせで図の左側に位置する画像(
図7の例では第1画像)の位置を位置q1で示している。この位置q1との関係で、重ね合わせで図の右側に位置する画像(
図7の例では第2画像)の位置を、位置q2、q2’、q2’’の3通り示している。
以下では、重ね合わせで図の左側に位置する画像を左画像と称し、重ね合わせで図の右側に位置する画像を右画像と称する。
【0038】
また、画素数p
hは、探索範囲設定部292が想定する撮影装置100の標準の移動量を画素数で表したものである。
図8の例では、撮影と撮影との間に撮影装置100が画素数p
hだけ図の右方向へ移動することを標準としている。
画素数Δp
hは、探索範囲設定部292が想定する、予定された移動方向(図の横方向)における移動量のばらつきの最大値である。
図8の例では、撮影と撮影との間に撮影装置100が画素数p
h−Δp
hからp
h+Δp
hまでの範囲内で図の右方向へ移動することを想定している。
画素数Δp
vは、探索範囲設定部292が想定する、予定された移動方向と垂直方向(図の縦方向)における移動量のばらつきの最大値である。
図8の例では、撮影と撮影との間に撮影装置100が図の上下いずれにも画素数Δp
Vの範囲内でずれることを想定している。
【0039】
位置q2は、撮影装置100が、予定された移動方向である図の右方向に画素数p
hだけ移動し、縦方向にずれなかった場合の、右画像の位置である。位置q2’は、撮影装置100が、図の右方向に画素数p
h−Δp
hだけ移動し、図の上方向に画素数Δp
vだけずれた場合の、右画像の位置である。位置q2’’は、撮影装置100が、図の右方向に画素数p
h−Δp
hだけ移動し、図の上方向に画素数Δp
vだけずれた場合の、右画像の位置である。
位置q2’、q2’’は、いずれも図の上下、左右共に想定される最大のぱらつきがあった場合の位置を示している。位置q1、q2’、q2’’の重なった部分である領域A11は、想定範囲内において2つの画像が必ず重なる部分を示している。
【0040】
図9は、テンプレートマッチングにおけるテンプレートの設定例を示す図である。
図9の例で、探索範囲設定部292は、撮影装置100の移動量のばらつきの想定範囲内で左画像が右画像と必ず重なる部分である領域A11をテンプレートマッチングにおけるテンプレートに設定している。
図9の横方向における左画像の画素数をp
xとすると、探索範囲設定部292の想定範囲内で撮影装置100の横方向の移動量の最大値であるp
n+Δp
n(標準の移動量+ばらつきの最大値)をp
xから減算したp
x−p
n+Δp
nが、テンプレート(領域A11)の横方向の画素数となる。
また、
図9の縦方向における左画像の画素数をp
yとすると、探索範囲設定部292の想定範囲内で撮影装置100の縦方向の移動量の最大値であるΔp
nの2倍を減算したp
y−2Δp
nが、テンプレート(領域A11)の縦方向の画素数となる。撮影装置100が上方向にずれる場合、下方向にずれる場合の両方を想定してΔp
nの2倍を減算している。
【0041】
ここでいうテンプレートマッチングは、探索範囲内においてテンプレートの画素値のパターンの出現位置を探索するパターンマッチング手法である。具体的には、以下の手順でパターンマッチングを行う。
【0042】
(1)マッチング対象の2つの画像のうちの一方(
図8〜8の例では、左画像)の一部(
図8〜8の例では領域A11)をテンプレートに設定する。
(2)マッチング対象の2つの画像のうちのもう一方(
図8〜8の例では、右画像)の一部を探索範囲に設定する。
(3)探索範囲内で、画素値がテンプレートと最もよく一致するする部分画像を探索する。画素値の一致度合いの評価スコアとして、例えば各画素における画素値の差の二乗平均など、画素値の差の大きさを評価可能なスコアを算出し、スコアが最小となる部分画像(画素値の差の大きさが最も小さいと評価される部分画像)を探索する。
【0043】
図10は、テンプレートマッチングにおける探索範囲の設定例を示す図である。探索範囲設定部292は、右画像のうちテンプレート(
図9の領域A11)と重なり合う(検査対象物の表面のうち同一部分を撮影した画像ないし部分画像である)可能性のある範囲を探索範囲に設定する。
図10の例では、探索範囲設定部292は、領域A12を探索範囲に設定する。
【0044】
探索範囲設定部292の想定範囲内で撮影装置100の横方向の移動量の最小値であるp
n−Δp
n(標準の移動量−ばらつきの最大値)を、
図10の横方向における右画像の画素数p
xから減算したp
x−(p
n−Δp
n)が、探索範囲(領域A12)の横方向の画素数となる。
図10の縦方向について、右画像の全体(画素数p
y)が探索範囲に設定される。
図10で領域A12内に領域A11を示しているように、テンプレートマッチングでは、探索範囲内にテンプレートと同じ形、向きおよび大きさの部分画像を設定し、画素値の一致度合いの評価スコアを算出する。設定し得る全ての部分画像のうち、評価スコアが最小となる部分画像の位置を検出する。
なお、ここでいうテンプレートマッチングを実行する手法は、特定の手法に限定されない。
【0045】
図9に例示されるテンプレートおよび
図10に例示される探索範囲を設定するために、撮影装置100の標準の移動量(
図8〜8の例では画素数p
h)と、撮影装置100の移動量のばらつきの最大値(
図8〜8の例では画素数Δp
hおよびΔp
v)を設定する必要がある。
これらのうち撮影装置100の標準の移動量については、撮影装置100に設定される移動速度と撮影の周期(撮影と撮影との間の時間間隔)を乗算し、画素数に換算することで算出し得る。
【0046】
一方、撮影装置100の移動量のばらつきの最大値については、何らかの撮影装置100の動作の実績データに基づいて求めることが考えられる。
例えば、探索範囲設定部292または人が、撮影装置100が過去に撮影した時系列の画像から、撮影毎に撮影装置100の移動量を算出し、算出した移動量から移動量のばらつきの最大値を設定するようにしてもよい。撮影装置100が過去に撮影した時系列の画像として、過去の点検時に撮影した画像、または、工場等での試験時または調整時に撮影した画像を用いることが考えられる。
あるいは、撮影装置100の動作テストにて、撮影と撮影との間の移動量が記録されていれば、この動作テストデータから撮影装置100の移動量のばらつきの最大値を設定することができる。
【0047】
撮影装置100の移動量の実績データが幾つか得られた場合、探索範囲設定部292または人が、移動量の最大値または最小値を検出し、得られた最大値または最小値と撮影装置100の標準の移動量との差を、撮影装置100の移動量のばらつきの最大値として用いるようにしてもよい。あるいは、探索範囲設定部292または人が、移動量の実績データから得られたばらつきの大きさにマージン(余裕分)を加えた値を、撮影装置100の移動量のばらつきの最大値として用いるようにしてもよい。
あるいは、探索範囲設定部292または人が、撮影装置100の移動量の度数分布を求めて、3σを算出し、移動量のばらつきの最大値として用いるなど、撮影装置100の移動量のばらつきの最大値を確率的手法で求めるようにしてもよい。
【0048】
また、探索範囲設定部292または人が撮影装置100の移動量のばらつきの最大値を求める際、撮影装置100に検査対象物の表面を走査させるために設定される走査軌跡情報に基づいて、移動量のばらつきの最大値を設定するようにしてもよい。
例えば、
図2の走査パターンで、撮影装置100が図の左から右へ移動するときと、右から左へ移動するときとでは、画像に写った像の移動方向も逆になる。例えば、
図5のフレーム番号t+ω、t+(ω+1)、t+(ω+2)の各画像では、写っているきずの像が画像の右から左へ移動している。撮影装置100が図の右から左へ移動するときは、このきずの像の動きも逆向きになる。また、撮影装置100が
図2の縦方向に移動するときの画像は目視検査には用いられない。撮影装置100が過去に撮影した画像の時系列に基づいて撮影装置100の移動量を算出する場合、画像と走査軌跡情報とを突き合わせて画像における移動方向を把握して、撮影装置100の移動量を求めるようにしてもよい。
【0049】
また、
図3の走査パターンの場合、検査対象物900のうち円柱の部分よりも円錐台の部分の方が1周分の長さが長く、また、円錐台の部分の下側ほど1周分の長さが長くなる。このように、検査対象物900の部分に応じて撮影装置100の移動量が異なる場合、走査軌跡情報を参照して、画像と撮影装置100の位置とを対応付けることが考えられる。
図4の走査パターンの場合、撮影装置100が破線に沿って移動するときの画像は目視検査には用いられない。この場合も、走査軌跡情報を参照して、画像と撮影装置100の位置とを対応付けることが考えられる。
【0050】
画像合成部293は、探索範囲設定部292が設定した探索範囲にてテンプレートマッチングを行って、時系列で隣り合う画像間で重なり合う画素の範囲を特定する。そして、画像合成部293は、特定した画素の範囲を重ね合わせたパノラマ画像を合成する。
ここで、画像マッチングの方法としてテンプレートマッチング以外に特徴点抽出による画像マッチングもある。しかしながら、目視検査用の撮影で得られる画像は一般的に色調差に乏しく、適切な特徴点を抽出することが困難である。このことから、目視検査用に撮影された画像に対する画像マッチングでは、特徴点抽出による画像マッチングを行うよりもテンプレートマッチングを行う方がパターンマッチングの精度がよいと期待される。
【0051】
テンプレートマッチングでは、探索範囲の大きさとテンプレートの大きさとの差が大きいほど、探索範囲内にとり得る部分画像の数が多くなり、処理に時間を要する。
これに対し、検査画像合成装置200では、探索範囲設定部292がテンプレートを設定し、テンプレートと重なり合う可能性のある部分を探索範囲に設定することで、探索範囲内にとり得る部分画像の数が少なくて済み、処理時間が比較的短くて済む。
【0052】
次に、検査画像合成システム1を用いた検査の手順について説明する。
図11は、検査画像合成システム1を用いた検査の手順の例を示すフローチャートである。
図11の検査手順で、撮影装置100が検査対象物の表面の撮影を行う(ステップS101)。
次に、検査画像合成装置200が、撮影装置100による検査対象物の表面の画像をパノラマ合成して、検査対象の表面の目視検査対象範囲の全体画像を生成する(ステップS102)。
【0053】
点検作業員は、検査画像合成装置200が生成した全体画像を用いて目視検査を行う(ステップS103)。
そして、点検作業員は目視検査にて指示があったか否かを判定する(ステップS104)。ここでいう指示は、形状変化またはきず等の異常個所である。
指示が無かったと判定した場合(ステップS104:NO)、点検作業員は、検査結果を報告する(ステップS121)。
ステップS121の後、
図11の処理を終了する。
【0054】
一方、指示があったと判定した場合(ステップS104:指示あり)、点検作業員は、検査画像合成装置200が生成した全体画像のうち、指示に該当する部分を拡大し、より詳細に目視検査を行う(ステップS111)。
そして、点検作業員は、検査結果を報告し(ステップS112)、また、別手法による検査、健全性の評価または補修工事など、指示に対する対応措置を決定し実施する(ステップS113)。
ステップS113の後、
図11の処理を終了する。
【0055】
図11の検査手順は、検査画像合成装置200が画像のパノラマ合成を行って目視検査対象範囲の全体画像を生成することで、点検作業員に大きな負担が生じずに全体画像を得られることを前提に成立している。
図11の検査手順では、目視検査対象範囲の全体画像を得られることで、点検作業員は、検査対象物の形状を容易に把握することができる。また、検査対象物に指示がある場合、検査対象物における指示の位置を容易に把握できる。また、指示が比較的大きく撮影装置100の画角に入りきらない場合でも、点検作業員は、目視検査対象範囲の全体画像を参照することで、指示の全体形状を容易に把握できる。
【0056】
また、検査画像合成装置200が目視検査対象範囲の全体画像を生成するので、撮影装置100が撮影する個々の画像の画角は比較的小さくてよい。この点で、撮影装置100は高解像度で撮影を行うことができる。撮影装置100が高解像度で撮影を行い、検査画像合成装置200がその画像をパノラマ合成して目視検査対象範囲の全体画像を生成することで、高解像度の全体画像を得られる。目視検査で指示が見つかった場合、点検作業員は、全体画像の該当箇所を拡大してより詳細な目視検査を行うことができる。
【0057】
検査画像合成システム1を用いない一般的な点検では、検査対象物の画像を用いて目視検査を行い、指示が見つかった場合は、撮影の倍率を上げて該当箇所を撮影し直して再度目視検査を行っている。これに対し、検査画像合成システム1を用いた検査では、上記のように検査対象物を再撮影する必要がない。この点で、検査画像合成システム1を用いることで効率よく検査を行うことができる。
また、検査画像合成システム1を用いない一般的な点検では、撮影装置が撮影する画像を点検作業員がリアルタイムで参照して指示の有無を確認している。これに対し、検査画像合成システム1を用いた検査では、点検作業員は、目視検査対象範囲の全体画像を参照して指示の有無を確認すればよく、リアルタイム性による時間的な拘束が無い。
また、検査画像合成システム1を用いない一般的な検査では、点検作業員が参照する画像が時系列で変化してく。これに対し、検査画像合成システム1を用いた検査では、点検員は、目視検査対象範囲の全体画像を参照するので、画像が時系列で変化するということはない。この点で、検査画像合成システム1を用いた検査では、検査精度を向上させることができる。特に、検査画像合成システム1を用いた検査では、動画像ではなく静止画像で目視検査を行うことができる。また、画像が時系列で変化しないので、観察時間(目視検査を行う時間)を限定されず、その結果、異常等の見逃しの可能性を低減させることができる。
【0058】
以上のように、通信部210は、検査対象物の表面を走査して一定時間間隔で撮影を行う撮影装置100から、撮影した画像と撮影位置情報とを取得する。移動量演算部291は、時系列で隣り合う画像毎の撮影位置情報から、これら画像間の移動量を演算する。探索範囲設定部292は、時系列で隣り合う画像間で重なり合う画素の範囲を撮影装置100の移動量に基づいて算出し、テンプレートマッチングにおける探索範囲として設定する。画像合成部293は、探索範囲にてテンプレートマッチングを行って画像間で重なり合う画素の範囲を特定し、特定した画素の範囲を重ね合わせたパノラマ画像を合成する。
【0059】
探索範囲設定部292が、撮影装置100の移動量に基づいて探索範囲を設定することで、探索範囲の絞り込みを行うことができる。この点で、検査画像合成装置200によれば目視検査用に撮影された複数の画像の重なり部分を、より短時間で特定することができる。
また、画像合成部293がパノラマ画像を合成して目視検査対象範囲の全体画像を生成することで、点検作業員は、全体の位置関係を把握して効率よく、また、高精度に目視点検を行うことができる。
【0060】
また探索範囲設定部292は、撮影装置100移動量のばらつきに応じた幅を有する探索範囲を設定する。
これにより、探索範囲設定部292は、撮影装置100の移動量にばらつきがあってもテンプレートマッチングを行える程度に探索範囲を絞り込むことができる。この点で、検査画像合成装置200によればテンプレートマッチングの精度の確保と処理時間の低減との両立を図ることができる。
【0061】
また、探索範囲設定部292は、画像の画素の縦方向、横方向それぞれに移動量のばらつきに応じた幅を有する探索範囲を設定する。
これにより、検査画像合成装置200では、予定されている撮影装置100の移動方向における撮影装置100の移動量のばらつきに加えて、予定されている撮影装置100の移動方向に垂直方向のずれに対応して、探索範囲の絞り込みを行うことができる。
【0062】
また、探索範囲設定部292は、撮影装置100が過去に撮影した時系列の画像から撮影装置100の移動量のばらつきに応じた探索範囲の幅を算出する。
これにより、探索範囲設定部292は、撮影装置100の動作の実績に基づいて探索範囲を設定することができる。この点で、探索範囲設定部292は、探索範囲を高精度に設定することができる。
【0063】
また、探索範囲設定部292は、撮影装置100の動作テストデータから撮影装置100移動量のばらつきに応じた探索範囲の幅を算出する。
これにより、探索範囲設定部292は、撮影装置100の動作の実績に基づいて探索範囲を設定することができる。この点で、探索範囲設定部292は、探索範囲を高精度に設定することができる。
【0064】
また、探索範囲設定部292は、移動量の複数の実績データにおける移動量の最大値または最小値と撮影装置100の標準の移動量との差を移動量のばらつきの最大として、前記移動量のばらつきの最大値に応じた探索範囲の幅を算出する。
これにより、探索範囲設定部292は、移動量のばらつきの最大値または最小値に応じて探索範囲の幅を高精度に設定することができる。
【0065】
また、探索範囲設定部292は、移動量の実績データから得られた移動量のばらつきの大きさに余裕分を加えた値を移動量のばらつきの最大値として、移動量のばらつきの最大値に応じた探索範囲の幅を算出する。
探索範囲設定部292が移動量のばらつきの最大値に余裕分を含めて算出することで、移動量のばらつきの大きさを過小評価する可能性を低減させることができる。
【0066】
また、探索範囲設定部292は、移動量の度数分布における3σを移動量のばらつきの最大値として、移動量のばらつきの最大値に応じた探索範囲の幅を算出する。
探索範囲設定部292が、移動量のばらつきの大きさを確率的手法に基づいて算出する点で、探索範囲の幅を高精度に設定することができる。
【0067】
また、探索範囲設定部292は、撮影装置100に検査対象物の表面を走査させるために設定される走査軌跡情報に基づいて、撮影装置100の移動量のばらつきに応じた探索範囲の幅を算出する。
これにより、探索範囲設定部292は、撮影装置100が行う走査におけるいろいろな動作パターンに対応して撮影装置100の移動量のばらつきを求めることができ、これに基づいて探索範囲を設定することができる。撮影装置100の移動量のばらつきを求めるためのデータを多く得られる点で、探索範囲設定部292は、探索範囲を高精度に設定することができる。
【0068】
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ10は、CPU11と、主記憶装置12と、補助記憶装置13と、インタフェース14を備える。
上述の検査画像合成装置200は、コンピュータ10に実装される。そして、上述した制御部290の各部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置13に記憶されている。CPU11は、プログラムを補助記憶装置13から読み出して主記憶装置12に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU11は、プログラムに従って、上述した記憶部280に対応する記憶領域を主記憶装置に確保する。
【0069】
なお、制御部290の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0070】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。