特許第6869890号(P6869890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869890
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】金電気めっき溶液及び方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/48 20060101AFI20210426BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20210426BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20210426BHJP
   C25D 5/36 20060101ALI20210426BHJP
   C25D 5/18 20060101ALI20210426BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20210426BHJP
   C23G 5/00 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C25D3/48
   C25D5/26 Q
   C25D5/02 B
   C25D5/36
   C25D5/18
   C25D7/00 G
   !C23G5/00
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-537505(P2017-537505)
(86)(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公表番号】特表2018-505967(P2018-505967A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】US2016013654
(87)【国際公開番号】WO2016115494
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2019年1月10日
(31)【優先権主張番号】62/104,280
(32)【優先日】2015年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508130890
【氏名又は名称】ハッチンソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,カート シー.
(72)【発明者】
【氏名】リーマー,ダグラス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファンク,スティーブン エー.
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−099128(JP,A)
【文献】 米国特許第04168214(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/48
C25D 5/02
C25D 5/18
C25D 5/26
C25D 5/36
C25D 7/00
C23G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン化金(III)カリウム、シアン化金(III)アンモニウム、及びシアン化金(III)ナトリウムのうちの少なくとも1つであるシアン化金(III)化合物、並びに
塩酸を含む溶液における塩化物の溶解物としての塩素アニオン
を含む金電気めっき溶液であり、
前記金電気めっき溶液において、前記塩素アニオンの濃度は、水素イオン濃度よりも高く、
前記塩化物は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化ナトリウムのうちの少なくとも1つであり、
前記金電気めっき溶液は、酸化酸及び硝酸塩を含まない、金電気めっき溶液。
【請求項2】
前記シアン化金(III)化合物は、シアン化金(III)カリウム、シアン化金(III)アンモニウム、及びシアン化金(III)ナトリウムのうちの1つであり、
前記塩化物は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化ナトリウムのうちの1つであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムである場合、前記塩化物は塩化カリウムであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)アンモニウムである場合、前記塩化物は塩化アンモニウムであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)ナトリウムである場合、前記塩化物は塩化ナトリウムである、請求項1に記載の金電気めっき溶液。
【請求項3】
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムであり、前記塩化物が塩化カリウムである、請求項2に記載の金電気めっき溶液。
【請求項4】
前記シアン化金(III)化合物の濃度は、金電気めっき溶液1リットルあたり、金1.0グラム〜金3.0グラムであり、前記塩素アニオンの総濃度は、金電気めっき溶液1リットルあたり、0.30モル〜0.60モルである、請求項1に記載の金電気めっき溶液。
【請求項5】
前記シアン化金(III)化合物の濃度は、金電気めっき溶液1リットルあたり、金1.8グラム〜金2.2グラムであり、前記塩素アニオンの総濃度は、金電気めっき溶液1リットルあたり、0.45モル〜0.55モルである、請求項4に記載の金電気めっき溶液。
【請求項6】
前記金電気めっき溶液は、エチレンジアミン塩酸塩を含まない、請求項1に記載の金電気めっき溶液。
【請求項7】
前記塩素アニオンの濃度は、前記金電気めっき溶液のpHに影響を与えることなく調整されたものである、請求項1に記載の金電気めっき溶液。
【請求項8】
ステンレス鋼面に直接的に電着金パターンを形成する方法であって、該方法は、
前記ステンレス鋼面にフォトレジストパターンを形成するステップと、
前記フォトレジストパターンによって被覆されていない前記ステンレス鋼面の部分を洗浄するステップと、
前記ステンレス鋼面を金電気めっき溶液に浸漬するステップと、
前記金電気めっき溶液から前記ステンレス鋼面上に金を電気めっきするために、前記金電気めっき溶液内のアノードと前記ステンレス鋼面との間に電圧を印加して前記アノードから前記ステンレス鋼面へ電流を発生させるステップとを含み、
前記金電気めっき溶液は、
シアン化金(III)カリウム、シアン化金(III)アンモニウム、及びシアン化金(III)ナトリウムのうちの1つであるシアン化金(III)化合物、並びに
塩酸を含む溶液における塩化物の溶解物としての塩素アニオン
を含み、
前記金電気めっき溶液において、前記塩素アニオンの濃度は、水素イオン濃度よりも高く、
前記塩化物は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化ナトリウムのうちの1つであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムである場合、前記塩化物は塩化カリウムであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)アンモニウムである場合、前記塩化物は塩化アンモニウムであり、
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)ナトリウムである場合、前記塩化物は塩化ナトリウムであり、
前記金電気めっき溶液は、酸化酸及び硝酸塩を含まない、方法。
【請求項9】
前記シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムであり、前記塩化物が塩化カリウムである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記金電気めっき溶液内の前記シアン化金(III)カリウムの濃度を、該金電気めっき溶液1リットルあたり、金1.0グラム〜金3.0グラムに維持するステップ、及び、前記金電気めっき溶液内の前記塩素アニオンの総濃度を、該金電気めっき溶液1リットルあたり、0.30モル〜0.60モルに維持するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記金電気めっき溶液内の前記シアン化金(III)カリウムの濃度を、該金電気めっき溶液1リットルあたり、金1.8グラム〜金2.2グラムに維持するステップ、及び、前記金電気めっき溶液内の前記塩素アニオンの総濃度を、該金電気めっき溶液1リットルあたり、0.45モル〜0.55モルに維持するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステンレス鋼面の洗浄は、酸素プラズマ洗浄処理を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記電圧は連続的な直流を発生させ、前記連続的な直流は、前記ステンレス鋼面において、1平方デシメートルあたり、1アンペア〜40アンペアの電流密度を発生させる、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記電圧はパルス状直流を発生させる、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記パルス状直流は、前記ステンレス鋼面において、1平方デシメートルあたり、1アンペア〜40アンペアの時間平均電流密度を発生させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金電気めっき溶液のpHに影響を与えずに、前記塩素アニオンの濃度を調整するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2015年1月16日出願の米国仮出願第62/104,280号に基づく優先権を主張し、該出願の全体が言及によって本願明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は金電気めっき溶液、及び金を電気めっきする方法に関する。より詳しくは、本発明は金電気めっき溶液、及び可能な金パターニングでステンレス鋼面に金を電気めっきする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子デバイス金属面の金めっきは、金属面との信頼性の高い低接触電気抵抗性を与えるためによく必要とされるものである。これは、特に自然に酸化物パッシべーション層を形成する材料製の金属面について当てはまる。そうした材料は、例えばステンレス鋼を含む。
【0004】
ステンレス鋼は、ほとんどの化学物質に不浸透性である通常安定的なクロム酸化物を形成するので、「さびない」ものである。また化学的侵襲に対するこの耐性が、金電気めっきを行うことや、ステンレス鋼面に対する金めっきの良好な密着性を得ることについて、ステンス鋼面を課題のあるものとしている。
【0005】
通常、ステンレス鋼への金の電気めっきには、ステンレス鋼上に比較的薄いニッケル「ストライク」層をめっきするために、酸・塩化物溶液が用いられる。そして、「結合」層としても知られるニッケル層に、金が電気めっきされる。これは、ニッケルが金に完全にカプセル化される限り有効である。しかし、一部のニッケルが、例えばフォトレジストにより画定された金・ニッケルパターンの端部で露出すると、広く用いられている金属洗浄処理などの後続する処理ステップにおいて金属が導電性溶液と接触するときに、ガルバニック反応が起こる。このガルバニック反応はニッケル層を腐食し、金層のアンダーカットを生じる。金層のアンダーカットは、金・ニッケルのパターン化構造の完全性を損なう。
【0006】
このように、パターン化金構造を必要とするアプリケーションにおいて、ステンレス鋼面上に直接金をめっきすることが望ましい。つまり、腐食やガルバニック溶解を受けやすい「結合」層を導入することなく、金層とステンレス鋼面との間で良好な密着性をもたらすフォトレジスト適合金めっき処理が必要とされている。
【0007】
シアン化金(I)の化学的性質もまた、金の電気めっきに利用されている。しかしながら、シアン化金(I)は、ステンレス鋼の電気めっき溶液に通常用いられる低pH条件では、良好に作用しない。例えば、pHが4よりも低いと、シアン化金(I)複合体は分離(不均化)を開始して、金が沈殿し始め、シアン化物が毒性ガスとして放出される。四塩化金(III)酸(HAuCl)などの一部の形態の塩化金(III)は、pHが4よりも低くても安定し得る。しかしながら、塩化金(III)めっき溶液では、ステンレス鋼に良好に密着する電着金層が形成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,149,344号明細書
【特許文献2】米国特許第3,121,053号明細書
【発明の概要】
【0009】
種々の実施形態は金電気めっき溶液に関する。金電気めっき溶液は、シアン化金(III)化合物、塩素化合物、及び塩酸を含む。シアン化金(III)化合物は、シアン化金(III)カリウム、シアン化金(III)アンモニウム、及びシアン化金(III)ナトリウムの少なくとも1つである。塩素化合物は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化ナトリウムの少なくとも1つである。一部の実施形態において、シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムである場合、塩素化合物は塩化カリウムであり、シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)アンモニウムである場合、塩素化合物は塩化アンモニウムであり、シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)ナトリウムである場合、塩素化合物は塩化ナトリウムである。さらなる実施形態において、シアン化金(III)化合物はシアン化金(III)カリウムであり、塩素化合物は塩化カリウムである。一部の実施形態において、溶液は、約0〜約1、又は約0.7〜約0.9のpHを有する。一部の実施形態において、シアン化金(III)化合物の濃度は、溶液1リットルあたり、金約1.0グラム〜金3.0グラムであり、塩素アニオンの濃度は、溶液1リットルあたり、約0.30モル〜0.60モルである。さらなる実施形態において、シアン化金(III)の濃度は、溶液1リットルあたり、金約1.8グラム〜金2.2グラムであり、塩素アニオンの濃度は、溶液1リットルあたり、約0.45モル〜0.55モルである。一部の実施形態において、溶液は、エチレンジアミン塩酸塩、及び/又は硝酸を包含する酸化酸を含まない。
【0010】
種々の実施形態は、電着金パターンをステンレス鋼面に直接的に形成する方法に関する。そうした方法は、フォトレジストパターンをステンレス鋼面に形成すること、フォトレジストパターンによって被覆されていないステンレス鋼面の部分を洗浄すること、ステンレス鋼面を金電気めっき溶液に浸漬すること、及び金電気めっき溶液からステンレス鋼面上に金を電気めっきするために、金電気めっき溶液内のアノードとステンレス鋼面との間に電圧を印加してアノードからステンレス鋼面へ電流を発生させることを含み得る。金電気めっき溶液は、シアン化金(III)化合物、塩素化合物、及び塩酸を含む。シアン化金(III)化合物は、シアン化金(III)カリウム、シアン化金(III)アンモニウム、及びシアン化金(III)ナトリウムの少なくとも1つである。塩素化合物は、塩化カリウム、塩化アンモニウム、及び塩化ナトリウムの少なくとも1つである。シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)カリウムである場合、塩素化合物は塩化カリウムであり、シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)アンモニウムである場合、塩素化合物は塩化アンモニウムであり、シアン化金(III)化合物がシアン化金(III)ナトリウムである場合、塩素化合物は塩化ナトリウムである。一部の方法では、シアン化金(III)化合物はシアン化金(III)カリウムであり、塩素化合物は塩化カリウムである。
【0011】
そうした方法はまた、金電気めっき溶液が約0〜約1のpHを有するように、又は金電気めっき溶液が約0.7〜約0.9のpHを有するように、金電気めっき溶液に十分な塩酸を添加することを含み得る。またそうした方法は、金電気めっき溶液内のシアン化金(III)カリウムの濃度を、溶液1リットルあたり、金約1.0グラム〜金3.0グラムに維持すること、及び、金電気めっき溶液内の塩素アニオンの濃度を、溶液1リットルあたり、約0.30モル〜0.60モルに維持することを含み得る。そうした方法は、金電気めっき溶液内のシアン化金(III)カリウムの濃度を、溶液1リットルあたり、金約1.8グラム〜金2.2グラムに維持すること、及び、金電気めっき溶液内の塩素アニオンの濃度を、溶液1リットルあたり、約0.45モル〜0.55モルに維持することをさらに含み得る。
【0012】
そうした方法において、電圧は連続的な直流を発生させ、該連続的な直流は、ステンレス鋼面において、1平方デシメートルあたり、1アンペア〜40アンペアの電流密度を発生させる。そうした方法において、電圧はパルス状直流を発生させ、該パルス状直流は、ステンレス鋼面において、1平方デシメートルあたり、1アンペア〜40アンペアの時間平均電流密度を発生させ得る。
【0013】
そうした方法は、プラズマ洗浄処理を含む酸素でのステンレス鋼面洗浄をさらに含み得る。プラズマ処理は部分真空内で行われ得るか、又は大気圧下で行われ得る。
【0014】
電着金パターンをステンレス鋼面に直接的に形成するそうした方法は、ディスクドライブのヘッドサスペンション、光学画像安定化サスペンション、又は医療装置のステンレス鋼面に金を蒸着させるために用いられ得る。
【0015】
複数の実施形態が開示されるが、本発明の例示的実施形態が記載される以下の発明の詳細な説明から、本発明のさらに他の実施形態が当業者には明白になる。ゆえに、発明の詳細な説明は本質的に例示として考慮され、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電気めっき溶液評価用めっき試験セルの概略断面図を示す。
図2図2は、金層とステンレス鋼(SST)層との間にニッケル層を含む層構造の概略図を示す。
図3図3は、金層とステンレス鋼(SST)層との間にニッケル層を含む層構造の概略図を示す。
図4図4は、一部の実施形態における、金パターンを有するハードディスクドライブサスペンション部品の一部の斜視図である。
図5図5は、一部の実施形態において、SST層を備えたSST側及びトレース層を備えたトレース側、及びSST上に電着された金パターンを有するサスペンション湾曲テールの上面図を示す。
図6図6は、一部の実施形態において、SST層を備えたSST側及びトレース層を備えたトレース側、及びSST上に電着された金パターンを有するサスペンション湾曲テールの底面図を示す。
図7図7は、一部の実施形態において、SST上に電着された金パターンを有する複数の動的電気試験(dynamic electric test、DET)パッドを含む湾曲テールの一部の斜視図を示す。
図8図8は、一部の実施形態において、SST上に電着された金パターンを有する複数の動的電気試験(DET)パッドを含む湾曲テールの一部の斜視図を示す。
図9図9は、一部の実施形態において、SST上に電着された金パターンを有するジンバルの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は種々の変形及び代替的形態に適するが、図面には一例として特定の実施形態が示されており、以下に詳細に記載される。しかしその意図は、記載される特定の実施形態に本発明を限定するものではない。これに対して、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内に該当するすべての変形、同等及び代替形を含むことが意図される。
【0018】
以下に記載される実施形態では、ステンレス鋼面に直接的に金層を電気めっきすることが可能になる。得られた金電気めっき層はステンレス鋼面に対して良好な密着性を有し、必要な密着性を得るためにその後の加熱処理、クラッディング圧力、又は他の後処理を必要としない。一部の実施形態は、市販で入手可能な一部のフォトレジストに適合する。
【0019】
金電気めっき溶液から陰極チャージステンレス鋼面に金イオンを電気めっきすることで、金がステンレス鋼面に直接的に電着され得る。例えば、金電気めっき溶液は、金イオンを適切な電解液に溶解することで調製されるとよい。
【0020】
所定の実施形態において、金イオンは、シアン化金(III)カリウム(KAu(CN))、シアン化金(III)アンモニウム(NHAu(CN))、シアン化金(III)ナトリウム(NaAu(CN))、及びその組合せなどの、シアン化金(III)からのものであるとよい。シアン化金(III)カリウム(KAu(CN))、シアン化金(III)アンモニウム(NHAu(CN))、又はシアン化金(III)ナトリウム(NaAu(CN))の適切な濃度は、金電気めっき溶液1リットルあたり、金約1.0グラム〜金約3.0グラム、金約1.8グラム〜金約2.2グラム、又は金約2グラムを含むが、これに限定されない。
【0021】
金電気めっき溶液はまた、1つ以上の酸を含むとよい。金電気めっき溶液に用いられる適切な酸は塩酸(HCl)を含む。酸は、金電気めっき溶液のpHを調整するために、脱イオン水などの水と混合されるとよい。
【0022】
金電気めっき溶液は、低pH又は酸性pHであり得る。例として、金電気めっき溶液は、約1未満及び0よりも高いpHを有し得る。さらに、金電気めっき溶液に適切なpHは約0.7〜0.9であるとよい。一部の実施形態において、金電気めっき溶液を約1未満のpHなどの低pHに維持することにより、電着処理時にステンレス鋼面が電解洗浄される。この電解洗浄処理は、ステンレス鋼面からパッシべーション酸化物を除去し、良好な密着性でステンレス鋼面に直接的に電着金層を形成し得る。
【0023】
金イオンを含有する金電気めっき溶液は、塩化カリウム(KCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、及び/又は塩化ナトリウム(NaCl)も含むとよい。一部の実施形態において、塩化カリウム、塩化アンモニウム又は塩化ナトリウムは、pHにあまり影響を与えることなく塩素アニオン濃度を調整するために、金電気めっき溶液に添加されるとよい。例として、一部の実施形態において、金電気めっき溶液は、溶液1リットルあたり、約0.30モル〜0.60モルの塩素アニオン濃度を有するとよい。さらに、金電気めっき溶液は、溶液1リットルあたり、約0.45モル〜0.55モルの塩素アニオン濃度を有するとよい。
【0024】
一部の実施形態において、シアン化金(III)カリウム(KAu(CN))、シアン化金(III)アンモニウム(NHAu(CN))、又はシアン化金(III)ナトリウム(NaAu(CN))などのシアン化金(III)と、塩化カリウム(KCl)又は塩化アンモニウム(NHCl)などの塩化物と、塩酸(HCl)との金電気めっき溶液は、良好な密着性でステンレス鋼面に直接的に電着金層を形成する。金電気めっき溶液は、市販のフォトレジストに適しており、電気めっきアノードに蓄積を起こさない。
【0025】
シアン化金(III)は、金(III)とシアン化物との間の強力な結合強度のため、0に近いpHで安定である。この強力な結合強度のため、シアン化金(III)は、例えばシアン化金(I)と比較するとめっき効率が低い。例として、シアン化金(III)を含有し且つpHが約0である金電気めっき溶液内の電着において、電気めっき面で起こる反応の約30%のみが金析出である。残りの70%は、高効率めっきでは通常求められない表面酸化物との水素反応などの他の化学反応に関与する。一部の実施形態において、酸化物との水素反応の少なくとも一部は、ステンレス鋼面に電着するときに、所望の目的を果たすものであることが驚くべきことに分かっている。つまり、酸化物との水素反応の少なくとも一部が、ステンレス鋼面を電解洗浄し、ステンレス鋼面に対する金の良好な又は向上した密着性を実現し得る。
【0026】
それに対して、HAuClなどの他の形態の金(III)は、pH4未満で安定であり得るが、金(III)と塩化物との間で、金析出反応よりも水素反応を得るには不十分である結合強度を有する。このように、塩化金(III)めっき溶液は、ステンレス鋼に良好な密着性を有する電着金層を形成しない。
【0027】
一部の実施形態において、金電気めっき溶液は、フォトレジスト又は他の所望の有機材料を有するステンレス鋼面などの面における使用に適し得る。例として、一部の実施形態において、金電気めっき溶液は、有機材料に対する腐食性を有するか又は結合して有機材料に対する腐食性を生じる、硝酸、硫酸、硝酸塩、又は他の成分などの酸化酸を含まないとよい。
【0028】
一部の実施形態において、金電気めっき溶液はエチレンジアミン塩酸塩を含まないとよい。一部の実施形態において、エチレンジアミン塩酸塩は、導電性の向上及び塩素イオンの供給のために用いられ得る。しかし、一部の実施形態において、エチレンジアミンは電気めっきアノードに重合し、無効化することが分かっている。
【0029】
一部の実施形態において、ステンレス鋼面に直接的に電着金パターンを形成することは、基板のステンレス鋼面にフォトレジストパターンを形成することから開始されるとよい。フォトレジストパターンは、例としてネガ型ドライフィルムフォトレジストを用いて形成されるとよい。そうしたフォトレジストは水溶液を用いて現像されるとよい。フォトレジストパターンの現像及び任意的焼き締め後に、フォトレジストに被覆されていないステンレス鋼面部分は、金が電着されるべきステンレス鋼面部分から残留有機物を除去するために、任意的に洗浄されるとよい。つまり、露出されているステンレス鋼面部分又は露出を意図したステンレス鋼面部分から残留有機物を除去するために、ステンレス鋼面が洗浄されるとよい。残留有機物を除去するための洗浄は、例えば、大気プラズマ洗浄又はコロナ洗浄などの短時間の酸素プラズマ洗浄処理にステンレス鋼面を曝露させることで、行われ得る。酸素プラズマ洗浄処理は、インライン処理(例えば、連続リールトゥリール処理)又はオフライン処理(例えば、パネル又は枚葉式処理)にて実施されるとよい。
【0030】
一部の実施形態において、任意的なウェット洗浄処理がプラズマ洗浄処理の次に行われてもよい。ステンレス鋼面の表面エネルギーを増大させ、且つ金電気めっき溶液におけるウェッティングを促進させるために、ウェット洗浄処理では、ステンレス鋼面を金電気めっき溶液に浸漬させる前にウェット洗浄液に浸漬させるとよい。ウェット洗浄液は、1つ以上の非酸化ミネラル又は有機酸を含むとよい。一部の実施形態において、ウェット洗浄液は塩酸又はクエン酸を含むとよい。
【0031】
洗浄処理の後に、パターン化ステンレス鋼面を有する1つ以上の基板は、金電気めっき溶液に浸漬されるとよい。1つ以上のアノードも金電気めっき溶液に浸漬され、金電気めっき溶液からステンレス鋼面上に金を電気めっきするために、アノードとステンレス鋼面との間に電圧が印加され、アノードからステンレス鋼面へ電流を発生させるとよい。
【0032】
一部の実施形態において、電流は電極間に発生する連続的直流である。他の実施形態において、電流の形態は、(裁断直流としても知られる)パルス状直流であり得る。パルス状直流では、直流はオンとオフとの周期をなす。オン/オフ周期において電流がオンである時間は、該周期において電流がオフである時間とは異なり得る。電流がオンである時間は、周期の5%〜周期の50%の範囲であるとよい。オン/オフ周期の周波数は、5Hz〜200Hzであるとよい。電流は、金を所望の厚みに蒸着させるために多数回オン/オフ周期をなすとよい。
【0033】
一部の実施形態において、発生した連続的直流は、ステンレス鋼面において、1平方デシメートルあたりのアンペア数(ampere per square decimeter、ASD)が1ASD〜40ASDの電流密度を有するとよい。他の実施形態において、ステンレス鋼面における電流密度は約4ASDであるとよい。
【0034】
電流がパルス状直流である一部の実施形態において、電流密度は、ステンレス鋼面において、1ASD〜40ASDの時間平均電流密度である。他の実施形態において、ステンレス鋼面における時間平均電流密度は約4ASDであるとよい。
【0035】
本明細書に記載されるように、電気めっき処理時にステンレス鋼の電解洗浄が起こり得る。例として、電気めっきがpH1以下で行われる一部の実施形態において、水が陰極(負)チャージステンレス鋼面で電離するため、水素カチオンが発生する。これらの水素カチオン及び/又は酸分によって供給された水素カチオンが、鉄、ニッケル及びクロムの表面酸化物からの酸素と結合する水素反応中和物を生成する。金電気めっき溶液内の塩化物は、ここで弱く結合した鉄、ニッケル及びとクロムと複合し、酸化物を含まない金属としてステンレス鋼面に「再電気めっき」される。このように、一部の実施形態において、電着処理では、ステンレス鋼表面から酸化物パッシべーション層を除くことに加え、金属汚染レベルも低く保たれ得る。
【0036】
一部の実施形態において、ステンレス鋼に直接的に電気めっきされた金は良好な密着性を有する。また、テープ試験、スクラッチ試験、曲げ試験、引き剥がし試験、又は任意の他のプル試験若しくはせん断試験などの当該分野において既知の任意の適切な方法によって、密着性が検証されるとよい。さらに定量化可能なスクラッチ試験は、少なくとも3ミクロンの厚みに金を電気めっきしてライン及びスペースを形成し、1組の20ミクロンのライン及びスペースにわたり剃刀刃を走らせることによって行われるとよい。ステンレス鋼面への密着性が不適切又は不良である電気めっき金は、ステンレス鋼面から剥がれる。例えば、金とステンレス鋼との間に任意の空隙が存在する場合、金層はステンレス鋼面から剥がれる。空隙のないめっき(即ち良好又は適切な密着性)のさらなる検証は、集束イオンビームによって、金とステンレス鋼との境界を観察することで行われるとよい。
【0037】
一部の実施形態において、塩化カリウム(KCl)又は塩化アンモニウム(NHCl)などの塩化物は、本明細書に記載されるように遊離の鉄、ニッケル及びクロムを複合化するため、塩酸(HCl)によって得られる塩素イオンのほかに塩素イオンを加えるものであり得る。塩化カリウム(KCl)又は塩化アンモニウム(NHCl)を調整することで、総塩化物濃度は、塩酸(HCl)によって調整されるpHとは別に調整可能である。
【0038】
追加的又は代替的に、塩酸(HCl)などの酸と組み合わせられた塩化カリウム(KCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、又は塩化ナトリウム(NaCl)は、pH緩衝系となり、電気めっき処理時に変化し得る金電気めっき溶液pHにおけるリスクを低減又は除き得る。
【実施例】
【0039】
本発明の範囲内である多くの改変形及び変形が当業者には明白であるため例示のみとして意図される以下の実施例に、本発明はさらに詳細に記載される。
【0040】
[電気めっき試験]
図1は、電気めっき溶液及び電気めっき処理条件を評価するために使用される電気めっき試験セルの概略断面図を示す。このタイプの試験セルはハルセルとしても既知であり、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。ハルセルは、単回の電気めっき試験において広範囲の電流密度が示されるように設計されている。このため、例えば電流密度の変化に対する電気めっき処理特性の感度を測定可能である。さらに、連続電気めっき試験の実行において目的の電気めっき溶液の成分濃度を変化させることで、成分濃度に対するめっき処理特性の感度も測定され得る。
【0041】
図1は、めっき槽12、電源14、アノード16、アノードケーブル18、カソード20、カソードケーブル22、及び金電気めっき溶液24を含む電気めっき試験セル10を示す。めっき槽12内のいずれの電位の部位同士もめっき槽12を介してショートしないように、めっき槽12は少なくとも部分的に電気絶縁材料で作製された。電源14は直流電源であった。アノード16は、例えばイリジウム及びチタニウムなど、金電気めっき溶液24に対して少なくとも大部分は化学的に不活性である材料製のプレート形状電極であった。アノードケーブル18及びカソードケーブル22は、効果的な電気めっきに十分なレベルの電流を通電可能な電気ケーブルであった。カソード20は、ステンレス鋼製のプレート形状電極であった。
【0042】
図1に示されるように、金電気めっき溶液24をめっき槽12の少なくとも一部に満たした。アノードケーブル18によって電源14の正端子をアノード16に電気的に接続した。カソードケーブル22によって電源14の負端子をカソード20に電気的に接続した。アノード16はアノード面26を包含した。アノード面26は、金電気めっき溶液24内に浸漬され且つカソード20に向くアノード16の表面であった。カソード20はカソード面28を包含した。カソード面28は、金電気めっき溶液24内に浸漬され且つアノード16に向くカソード20の表面であった。カソード面28は、近位部30、遠位部32、近位部30及び遠位部32の間の中間部34を包含した。図1に示されるように、カソード20は、近位部30とアノード面26との距離が遠位部32とアノード面26との距離よりも短くなるように、アノード16に対して配置された。アノード面26とカソード面28とのこの構成の結果、電流密度はカソード面28に沿って約40倍変化し、最高電流密度が近位部30で発生し、最低電流密度が遠位部32で発生し、中間電流密度が中間部34で発生した。
【0043】
各電気めっき試験時に、電流を、電源14の正端子からアノードケーブル18を介してアノード16に流した。また電流は、アノード面26から金電気めっき溶液24を介してカソード20のカソード面28に流れた。金電気めっき溶液24内の水はカソード面28で電離し、水素カチオン、及びカソード面28における鉄、ニッケル及びクロムの酸化物の酸素と積極的に結合する水素反応中和物を発生させた。金電気めっき溶液24内の高レベルの塩化物は、ここで弱く結合した鉄、ニッケル及びとクロムと複合し、酸化物のない金属としてカソード面28のステンレス鋼に「再電気めっき」された。カソード面28の酸化物パッシベーション層が除かれると、金電気めっき溶液24内のシアン化金(III)からの金がカソード面28にめっきされた。カソード20から、電流の流れがカソードケーブル22を介して電源14の負端子に戻った。
【0044】
[実施例1〜3]
上述の電気めっき試験を、以下の表に示すような変動塩化物濃度の電気めっき実施例に用いた。各実施例において、カソード面にわたる電流密度は、近位部で40ASDの高さから遠位部で1ASDの低さの範囲であり、中間部内では公称3.8ASDであった。各実施例において、金電気めっき溶液は、シアン化金(III)カリウム(KAu(CN))、塩化カリウム(KCl)、及び塩酸(HCl)の水溶液からなるものであった。KAu(CN)を、溶液1リットルあたり金2.0グラム(又は溶液1リットルあたりKAu(CN)約3.5グラム)の濃度に保持した。HCl濃度は0.31Mに保持され、金電気めっき溶液のpHを1よりも低く保った。めっき時間は、温度23℃で60秒間であった。
【0045】
各実施例において、KClの濃度を変化させて塩化物濃度を変えた。アノードとカソードとの測定電位(電極間電位)によって示されるような、金電気めっき溶液の導電性における変化を検討するために、塩化物濃度を低下させた。実施例及び結果は以下の表にまとめられる。
【表1】
【0046】
表のとおり、記載の実施形態における塩化物濃度の変化は、電極間電位によって示されるように、小さいが浴槽導電性において測定可能な変化である。3つすべての実施例において、ステンレス鋼カソード面における電気めっき金の視覚的検討では、以下に記載されるスクラッチ試験に基づいて、滑らかで、光沢があり、良好な密着性を示した。これは、試験電流密度の範囲である1ASD〜40ASDにおける場合であった。このように、表の実施例に示されるように、実施形態は堅牢であり、広範な条件にわたって良好な結果をもたらす。
【0047】
[実施例構成]
SST層上に直接的に金層を電気めっきすることにより、ハードディスクドライブサスペンションに用いられ得る有利な金パターンの作製が可能になる。本明細書に記載の有利な適用例はハードディスクドライブサスペンションに関連する。しかし、本開示は、当業者によってその有用性が認識され、例として、光学画像安定化サスペンション装置(例えば、国際公開第2014/083318号公報に開示されるタイプのものなど)並びに挿入又は埋め込み型医療装置(例えば、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、リード、及び電極など)などの他の種々の適切なアプリケーションにおいても、SST上に直接的に金を電気めっきするために、本開示の金電気めっき溶液が利用され得ることが認められる。
【0048】
図2〜3は、本発明の一部の実施形態における、金層110とステンレス鋼(SST)層115との間のニッケル層105の層を含む層構造100の概略図である。図2は、金層110がニッケルの層105上にめっきされた直後の層構造100を示す。図3は、例えば金属洗浄処理によって起こったガルバニック反応によって腐食したニッケル層105を伴う層構造100を示す。図示されるように、金層110の端部は支持されず、これは、腐食によりニッケル層105にアンダーカットが起こるゴールドフラッシュとしても知られる。金層110の一部はさらにはく離を受けやすく欠陥を生じる。
【0049】
一方で、金電気めっき溶液は、金層110をフォトレジストによってパターン化して、ニッケル層105なしでSST層115上に直接的に金層110を電気めっきすることを可能にする。金層110は、金属洗浄処理後でもSST層115に直接的に支持され、端部の品質を向上し、挟まれたニッケル層105の使用に関連するはく離の可能性を低減する。電着及びパターン化金層110は、ハードディスクドライブ部品を含む種々のアプリケーションに用いられ得る。
【0050】
図4は、一部の実施形態における、金パターン210を有するハードディスクドライブサスペンション部品200の一部の斜視図である。部品200は、SSTパッド205及びSSTパッド205上に直接的に電着された金パターン210を含む。フォトレジストでの金電着処理により、SSTパッド205上に不連続的な金パターン210を形成することが可能である。換言すると、金パターンは、非接続独立形状を含み得る。金パターン210は、金を含まない空間又は間隙によって完全に隔てられ、SSTパッド205を露出させる。図示される実施形態において、金パターン210は、第1の同心リング215及び第1の同心リングの内部の第2の同心リング220を含む。金パターン210は、同心リング215、220を隔てる間隙225をさらに含み、SSTパッド205の一部を露出させる。図示されるように、間隙225は、所望であれば同心リング215、220を完全に隔てることができる。金パターン210は複数の端部を含むものの、ニッケル層が金とSSTとの間に堆積された場合よりもはく離しにくい。
【0051】
図5及び図6はそれぞれ、一部の実施形態において、SST層305を備えたSST側及びトレース層310を備えたトレース側、及びSST上に電着された金パターンを有するサスペンション湾曲テール300の上面図及び底面図を示す。通常は誘電層317がSST層305とトレース層310とを隔てる。テール300は、1つ以上の接続部を形成するために、異方性導電フィルム(anisotropic conductive film、ACF)を用いて1つ以上の接合領域で他の回路と電気的に接続され得る。このタイプの接合では、銅接合パッドに接合するときに構造的支持を行うSSTパッドが通常は利用される。SSTパッドに金パターンを直接的に電気めっきするという特性により、SSTパッドは、構造支持部であることに加えて電気的接合パッドとして使用できる。
【0052】
図5に最適に示されるように、テール300は、1つ以上のSSTパッド320を備えたSST層305を含む。所定の実施形態において、SSTパッド320は、SST層305の残りの部分から及びその他のSSTパッドからそれぞれ電気的に絶縁される。SSTパッド320の1つ以上は、対応する金接合パッド325を備える。所定の実施形態では、金接合パッド325は、フォトレジストでの電着処理を介して、SSTパッド320上に直接的に蒸着される。金接合パッド325は、素のSSTパッド320に対して電気接続インターフェースが改善されたものである。電気特性の改善により、SSTパッド320上の金接合パッド325はテール300の接合端子として用いられ得る。一部の実施形態において、すべてのSSTパッド320には対応する金接合パッド325がある。他の実施形態において(図示されず)、一部のSSTパッドには対応する金接合パッドがある。
【0053】
図6を見ると、テール300は、テールに沿って延びる複数のトレースを含むトレース層310を含み、複数のトレースの一部は互いに電気的に絶縁されている。1つ以上のトレース、又はトレース層310の一部は、テールの近位側近傍の第1端部を含み、テールに沿って第2端部又は終端点まで遠位に延びる。一部の実施形態において、1つ以上のトレースは1つ以上の銅接合パッド340で終止する。さらなる実施形態において、1つ以上のトレースは1つ以上のビア330で終止する。各ビア330はトレースをSSTパッド320又はSST層305の部分に接続する。1つ以上のビア330は銅接合パッド340に接続され得る。
【0054】
図示される実施形態に示されるように、1つ以上のSSTパッド320には、対応する銅接合パッド340、及びSSTパッド320を対応する銅接合パッド340に電気的に接続する1つ以上の対応するビア330がある。SSTパッド320は、テール300のトレース側へのACF接合時に、対応する銅接合パッド340との接合が可能になる。
【0055】
また、図示されるように、1つ以上のSSTパッド320には対応する銅接合パッド340がないが、トレース部315がある。しかし、金接合パッド325を備えたそうしたSSTパッド320では、テール300のSST側にACF接合するために、ACFフィルムが金接合パッド325に堆積されるとよい。SSTパッド320上の金接合パッド325を含むこの構造は、テール300のSST側に銅を導入する追加処理をせずに、テール300の両側へのACF接合を可能にする。さらに、銅接合パッド340がないと、この構造は、トレース層310のトレースがテール300に沿って延びるさらなる空間を与え、テール300において高密度のトレース及び接合領域を可能にする。
【0056】
図7及び図8は、一部の実施形態において、SST上に電着された金パターンを有する複数の動的電気試験(DET)パッド405を含む湾曲テール400の一部の斜視図を示す。DETパッド405は、テール400のSST側からの試験プロービングを可能にする。所定の実施形態において、DETパッド405の1つ以上は、SSTパッド415上に直接的に蒸着された金パッド410を含む。SSTパッド415は、SST層420の一部であるとも考えられ得る。SST層420は誘電層425の一方側に堆積される。誘電層425の他方側には、トレース層430が配置される。トレース層430に配置された被覆層435の開口部を介して、トレース層430が露出される。1つ以上の銅接合パッド440が、例えば被覆層435から露出されるとよい。サスペンションが組み立てられるとき、湾曲テール400は、銅接合パッド440を介して組立体の他の部分に電気的に接続されるとよい。1つ以上の銅接合パッド440は、誘電層425のビア(図示されず)を介して、対応するDETパッド405に電気的に接続されるとよい。この構造では、裏側を利用するステップが不必要になることから、誘電層を完全に貫通する銅DETパッドを含む構造よりも容易に製造され得る。
【0057】
図9は、一部の実施形態において、SST上に電着された金パターンを有するジンバル500の斜視図である。図示されるように、ジンバル500は、熱アシスト磁気記録(heat−assisted magnetic recording、HAMR)ジンバルの一部としてレーザダイオードを受信するように構成される。図示されるジンバル500は、誘電層510上に配置されたSST層505を含み、誘電層510にはトレース層515が少なくとも部分的に裏に配置される。SST層505は、SST層505の他の部分から電気的に絶縁されたSSTアイランド520を含む。第1の1つ以上の金接合パッド一式525は、SSTアイランド520上に直接的に堆積されるとよい。第2の1つ以上の金接合パッド一式530は、SST層505の他の部分に直接的に配置されるとよい。第1及び第2の金接合パッド一式525、530は共に、レーザダイオード用の2つの電気端子を提供する。この構造は、他の実施形態に関して本明細書に記載されるように、銅パッドを利用する構造よりも容易に製造され得る。
【0058】
記載された例示の実施形態に対して、本発明の範囲から外れることなく、種々の改変形及び追加が行われ得る。例として、上述の実施形態は特定の特徴について言及するが、本発明の範囲は、特徴の種々の組合せを含む実施形態や、記載の特徴のすべてを含むわけではない実施形態も包含する。従って、本発明の範囲は、すべてのその同等形と共に、特許請求の範囲内に該当するようなそうしたすべての代替形、改変形及び変形を包含することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9