特許第6869894号(P6869894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869894リポタンパク質代謝障害の治療のためのPCSK9阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869894
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】リポタンパク質代謝障害の治療のためのPCSK9阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20210426BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210426BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210426BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 45/08 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210426BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C07K16/40ZNA
   C07K16/46
   C12N15/09 Z
   C12N9/99
   A61K45/08
   A61P3/06
   A61K39/395 N
   !C12P21/08
【請求項の数】15
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2017-549203(P2017-549203)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-511596(P2018-511596A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】DK2016050082
(87)【国際公開番号】WO2016150444
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】PA201570158
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】PA201570623
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】PA201570839
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】グスタフセン, カミラ
(72)【発明者】
【氏名】マドセン, ペーダー ソンダーガード
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン, シモン グレルプ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−536384(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/107739(WO,A1)
【文献】 特表2014−530188(JP,A)
【文献】 特表2014−508142(JP,A)
【文献】 特表2012−511913(JP,A)
【文献】 特表2014−511378(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/150983(WO,A1)
【文献】 Trends in Pharmacological Sciences,1995年,Vol.16, No.6,pp.198-204
【文献】 Circulation Research,2014年,Vol.114, No.6,pp.1022-1036
【文献】 Biochem. J.,2009年,Vol.419,pp.577-584
【文献】 PNAS,2009年,Vol.106, No.24,pp.9820-9825
【文献】 PNAS,2009年,Vol.106, No.24,pp.9546-9547
【文献】 Nature Communications,2017年 9月,Vol.8,#503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCSK9(配列番号1)のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合部位内の領域を特異的に認識して結合する抗体またはその抗原結合断片であって、
前記HSPG結合部位が、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167にあり、前記抗体またはその抗原結合断片が、PCSK9(配列番号1)のR93、R96、R97、R104、R105、及びH139からなる群から選択される1個以上のアミノ酸残基に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記断片がFab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片からなる群から選択される、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体が一本鎖抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
(i)配列番号10、配列番号11、及び配列番号12によって定義される3つのCDRを含む重鎖可変領域またはそのヒト化型、並びに
(ii)配列番号13、配列番号14、及び配列番号15によって定義される3つのCDRを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号7によって定義される重鎖可変領域若しくはそのヒト化型、及び配列番号5によって定義される軽鎖可変領域若しくはそのヒト化型を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
(i)配列番号16、配列番号17、及び配列番号18によって定義される3つのCDRを含む重鎖可変領域またはそのヒト化型、並びに
(ii)配列番号19、配列番号20、及び配列番号21によって定義される3つのCDRを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
配列番号9によって定義される重鎖可変領域若しくはそのヒト化型、及び配列番号3によって定義される軽鎖可変領域若しくはそのヒト化型を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、医薬組成物。
【請求項10】
リポタンパク質代謝障害を治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
以下の少なくとも1種を更に含む、請求項9または10に記載の医薬組成物:
−PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体;
−スタチン;
−コレスチラミン;
−エゼチミブ。
【請求項12】
前記リポタンパク質代謝障害が、脂質異常症、高コレステロール血症、及び冠動脈性心疾患からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記リポタンパク質代謝障害が、高脂血症、及び高トリグリセリド血症からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記リポタンパク質代謝障害が、シトステロール血症、メタボリックシンドローム、黄色腫、肥満、及び糖尿病からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記リポタンパク質代謝障害が、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、急性冠動脈症候群、高血圧症、狭心症、及び血管炎症からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リポタンパク質代謝障害の治療のためのプロタンパク質転換酵素サブチリシン様/ケキシン9型(PCSK9)の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症によって引き起こされる冠動脈疾患は、欧州及び米国において死因の上位を占める。アテローム性動脈硬化症を発症させる主要なリスク因子は、コレステロールを運搬する低密度リポタンパク質(LDLコレステロールすなわちLDL−C)粒子の血中濃度の上昇を伴う高コレステロール血症である。LDLコレステロール粒子の代謝は、体内のコレステロールの必要量を満たすため、コレステロールの合成と食事摂取とのバランスをとるように高度に調節されている。LDLコレステロールの代謝回転に関わる重要な調節因子が、LDL粒子の細胞内取り込みを媒介し、LDLコレステロールの血中濃度を低下させるLDL受容体(LDLR)である。LDLRの欠乏または機能障害によって引き起こされる家族性高コレステロール血症の患者にそれが表れている。
【0003】
LDLコレステロールの血漿レベルを低下させる方法として奏功しているのが、細胞内のLDLRレベルを上昇させることであり、現在、LDLコレステロールを低下させるために最も広く使用されている薬物がスタチンである。スタチンは、コレステロールの合成を阻害し、LDLRの発現を上方調節することにより、総合的に血中LDLコレステロール量を低下させる。しかしながら、相当数の患者が、スタチンに反応しないか、または様々な副作用によりスタチンに耐性がない。更にスタチンは、先頃、LDLRの強力な陰性調節因子として同定された(Seidah et al.,2014)プロタンパク質転換酵素サブチリシン様/ケキシン9型(PCSK9)の発現を増加させ、その結果、LDLコレステロールに対する有益な効果を相殺する。
【0004】
最近の血漿LDL−Cを低下させるための手段が、PCSK9の標的化である(Lagace et al.,2006)。PCSK9がLDLRに結合する能力により、細胞内のLDLRレベルが低下し、それによってこの受容体の再利用が損なわれ、リソソーム分解が増強される。PCSK9の機能獲得型変異は、LDLRの分解の増加による血中LDL−Cの有意な上昇をもたらす。対照的に、PCSK9の機能喪失型変異を有する個体は、LDL−Cレベルの低下を示し、冠動脈性心疾患の発生事例は少ない。複数の大手製薬企業が、高コレステロール血症を緩和するPCSK9を標的とした治療戦略の承認を取得している。PCSK9のLDLR結合部位に対するPCSK9特異的抗体の投与は、第III相臨床試験においてLDL−C血漿レベルを低下させると報告されている(Mullard(2015)Nat Rev Drug Discov;Sheridan(2015)Nature Biotechnology)。しかしながら、PCSK9:LDLRの結合定数は120〜620nMの範囲内であるが(Cunningham et al.,2007;Fisher et al.,2007)、対するPCSK9の血漿濃度は約6nMである(Lakoski et al.,2009)。このことは、生理的に適切な濃度でPCSK9がLDLRと直接結合する可能性が極めて低いことを表している。更にPCSK9は肝臓内のLDLRのみを標的としており、高レベルのLDLRを同様に発現する、例えばステロイドホルモン産生組織内のLDLRは標的としない。このことは、肝臓特異的な共受容体の必要性を示唆している(Seidah et al.,2014)。このように、LDLRはPCSK9の一次受容体ではない可能性が高い。むしろ、未知の受容体(受容体X)が血中のPCSK9を捕捉し、その後それをLDLRに送達している可能性がある。したがって、この受容体に対するPCSK9の結合を阻害することは、PCSK9:LDLR相互作用の阻害よりも優れた戦略である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、LDLRが肝細胞表面に対する唯一のPCSK9受容体ではないという知見に関する。本発明者らは、PCSK9がヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の結合モチーフを有することを見出した。このモチーフに導入された突然変異体、ならびにヘパリンによるHSPGへの結合の阻害は、驚くべきことにPCSK9誘導性分解からLDLRを保護する。PCSK9とHSPGとの間の相互作用の阻害は、PCSK9阻害抗体の臨床試験と比較して優れた治療可能性を有する(Chan et al.,2009)。重要なことに、PCSK9のHSPG結合モチーフは、LDLR結合表面のHSPG結合モチーフとは異なる。HSPGは、1つ以上のヘパラン硫酸グリコサミノグリカン鎖で置換されたコアタンパク質からなる。ヘパリンは、ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンの一種である。HSPGは、HSPG結合モチーフを有するタンパク質リガンドに結合する高度にグリコシル化された細胞表面タンパク質であり、例えば増殖因子の局所集積を生成する(Xu and Esko,2014)。このデータは、PCSK9がHSPGに結合することと、PCSK9におけるHSPG結合モチーフの部位特異的突然変異誘発により相互作用が消滅し、その結果ヘパリンに結合できないPCSK9突然変異体が生じて、LDLRの分解能の阻害を呈することを示している。更に、ヘパリン、ヘパリン模倣体、またはPCSK9のHSPG結合部位に対するモノクローナル抗体と共に細胞をインキュベートすると、培地中のPCSK9濃度の増加に伴って、LDLRレベルの上昇をもたらす。総合すると、本実施例に概説する結果は、PCSK9の機能がHSPGの結合に依存し、PCSK9とHSPGとの間の相互作用が抑止されると、細胞内のLDLRレベルが上昇することを示す。
【0006】
したがって、HSPGは、細胞表面LDLRのPCSK9を介する分解において重要な共受容体として機能する。本知見は、HSPGがPCSK9誘導性のLDLRの下方調節において重要な機能を有することを示している。
【0007】
PCSK9機能の遮断、特にLDLRレベルに対するPCSK9の効果を阻害する際に、PCSK9とHSPGとの間の相互作用部位を標的とすることができる。このように高コレステロール血症を治療及び冠動脈性心疾患を予防する新たな方法を開示する。
【0008】
第1の態様において、本発明は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン受容体のPCSK9への結合を阻害することができる化合物に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、リポタンパク質代謝障害の治療を目的とする医薬品の製剤化のための、本明細書で定義される化合物に関する。
【0010】
更に別の態様では、本発明は、医薬品として使用するための本明細書で定義される化合物に関する。
【0011】
更に別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象におけるリポタンパク質代謝障害の治療方法に使用するための本明細書で定義される化合物に関する。
【0012】
更に別の態様では、本発明は、治療を必要とする対象におけるリポタンパク質代謝障害の治療方法であって、前記対象に本明細書で定義される化合物を投与することを含む前記方法に関する。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、治療を必要とする個体におけるリポタンパク質代謝障害、例えば脂質異常症、高コレステロール血症、及び心臓冠動脈疾患からなる群の治療方法であって、
i.前記個体から単離された組織サンプルまたは血漿サンプルを提供するステップと、
ii.前記組織中のLDLRのレベル、ならびに/または前記血漿サンプル中のPCSK9のレベル及び/もしくはLDL−Cのレベルを測定するステップと、
iii.ステップii)の発現レベルを対照組織サンプルまたは対照血漿サンプルのレベルと対比するステップと、
iv.治療計画を評価するステップと、
v.本明細書で定義される治療有効量の組成物を含む組成物を個体に投与するステップと、を含む方法に関する。
【0014】
更に別の態様では、本発明はLDLRの分解を阻害する方法に関し、前記方法は本明細書で定義される化合物を投与することを含む。
【0015】
更に別の態様では、本発明は本明細書で定義される化合物を含む医薬組成物に関する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、PCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する抗体の選択方法であって、
i.配列番号1のアミノ酸残基78〜167からなるドメインのうちの少なくとも1個のアミノ酸残基、例えば配列番号1のアミノ酸残基78〜167からなるドメインのうちの、例えば少なくとも5個、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも35個、例えば少なくとも40個、例えば少なくとも45個、例えば少なくとも50個、例えば少なくとも55個、例えば少なくとも60個、例えば少なくとも65個、例えば少なくとも70個、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも80個、例えば少なくとも全てのアミノ酸を含むPCSK9のポリペプチド断片、またはPCSK9のポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド断片を哺乳動物に投与するステップと;
ii.前記ポリペプチドを認識する抗体を同定して選択するステップと、
iii.競合ELISAアッセイにおいて、前記選択された抗体が1種以上の対照抗体を置換できるかを決定するステップと、を含む前記方法に関する。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、ヘパリンなどのHSPGのPCSK9への結合を阻害することができるペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体の選択方法であって、
i.複数のペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を提供するステップと;
ii.前記複数のペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞と共に培地中でインキュベートするステップと;
iii.前記培地中のPCSK9のレベル及び/または前記細胞のLDLRのレベルを測定するステップと;
iv.ステップiiiで測定したとき、PCSK9及び/またはLDLRを最も高レベルで生じさせるペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を選択するステップと、を含む前記方法に関する。
【0018】
更に別の態様では、本発明は本明細書で定義される化合物と選択的に結合することができる化合物に関する。
【0019】
更に別の態様では、本発明は本明細書で定義される抗体の作製方法であって、
i.PCSK9のHSPG結合ドメインを含むタンパク質、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその断片もしくはその機能的等価物を哺乳動物に投与するステップと;
ii.PCSK9(配列番号1)に結合できる場合に前記抗体を選択するステップと;
iii.前記突然変異したPCSK9がHSPGに結合できない場合、突然変異したPCSK9に結合できない場合に前記抗体を選択するステップと、を含む前記方法に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、血漿LDL−Cレベルの低下を必要とする対象において血漿LDL−Cレベルを低下させる方法に関し、前記方法は、本明細書で定義される化合物または医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】文献に記載されている現行モデルの図。LDLRが、コレステロールを運搬するLDL−C粒子を血中から取り込み、それをリソソームに送達して分解すると同時に、エンドソーム(A)での運搬物の放出後、この受容体(LDLR)が細胞表面にリサイクルされることを示す。PCSK9に結合すると、LDLR自体がリソソーム(B)で分解される。したがって、PCSK9が高活性になると、細胞表面でのLDLRレベルの低下及び血漿コレステロールの増加をもたらし、対してPCSK9活性が阻害されると、血漿コレステロールレベルが低下し、冠動脈疾患の進行が遅延化する。
図2-1】(A)それぞれ左右の矢印によって示されるLDLR結合部位及びHSPG結合部位を有するPCSK9の空間充填モデルを示す。
図2-2】(B)示された正荷電アミノ酸(R:アルギニン、H:ヒスチジン)を有する、PCSK9(PDB ID:2PMW)の予測されるHSPG結合部位(Piper et al.,2007)の静電表面(赤が負;青が正)にあるヘパリン五糖(SANORG、スティック)を示す。
図2-3】(C)SANORGをPCSK9(リボン)のHSPG結合部位に重ね合わせた状態。
図2-4】(D)ヘパリナーゼIの存在下または不在下で処理後の、PCSK9を発現する非透過性HepG2細胞(白色)。細胞核をHoechstで染色した(暗灰色)。(E)ヘパリンへのPCSK9結合をヘパリンのアフィニティークロマトグラフィーにより分析した。PCSK9は、500mMのNaCl濃度でカラムから溶出した。
図3-1】示されたアミノ酸残基がアラニンに変異したPCSK9変異体をCHO細胞に一過性発現させた。(A)細胞溶解物及び細胞培地の抗PCSK9ウェスタンブロッティングは、細胞溶解物中で、全てのPCSK9変異体の発現と共に、プロタンパク質(proPCSK9)から成熟PCSK9への正確なプロセッシングを示し、また細胞培地への成熟PCSK9の分泌を示した。モックトランスフェクト細胞ではPCSK9の発現は検出されなかった。
図3-2】(B)アフィニティークロマトグラフィー、続いて抗PCSK9を用いた画分のウェスタンブロッティングによって、一過性トランスフェクトされたCHO細胞の培地に分泌されたPCSK9突然変異体のヘパリンへの結合について分析した。突然変異体は全て、示された位置にアラニン置換を有する。野生型(WT)PCSK9及び突然変異体R165R167は、0.3〜0.4MのNaClに相当する画分に溶出したが、PCSK9突然変異体R96R97及びR104R105は、ヘパリンに対しては親和性の減少を示し、フロースルーまたは第1画分に検出された。PCSK9突然変異体R93R104R105H139及びR93R96R97R104R105H139は、フロースルーにのみ検出され、ヘパリンには結合しなかった。
図3-3】(C)HSPG結合ドメインは、LDLR断片(PDB:3P5B)との複合体中のPCSK9の表面を表すPCSK9の空間充填モデルに示されるように、LDLR結合部位の反対側に位置する。LDLR断片はベータプロペラドメイン及びEGFドメインAとB及びL7を含み、一方、PCSK9のC末端、触媒ドメイン及びプロドメインは塩基性ヘリックスで示されている。モデル化したヘパリン断片はスティックとして示されている。(D)HepG2細胞の培養培地からの内因性PCSK9及びApoEを、アフィニティークロマトグラフィー及びウェスタンブロットにより分析したところ、ヘパリンに対して同様の結合を示した。
図4】WTPCSK9(10nM)と18時間インキュベートしたHepG2細胞は、突然変異体(R93R96R97R104R105H139)PCSK9(mut)とインキュベートした細胞よりも有意に低いレベルのLDLRを示す。LDL受容体レベルをウェスタンブロッティング(A)により評価した。GAPDHのレベルを対照として示す。棒グラフ(B)は、デンシトメトリー(n=3)によって定量化されたLDLRの平均値と、標本平均の標準誤差(SEM)を示す。結果は、スチューデントt検定を用いて評価した。**p<0.01、****p<0.0001。
図5-1】ヘパリン(50U/ml)と24時間インキュベートしたHepG2細胞は、ウェスタンブロッティングによる評価でLDLRレベルの上昇を示す(A)。GAPDHのレベルを対照として示す。棒グラフ(B)は、デンシトメトリー(n=4)によって定量化されたLDLRの、平均値と標本平均の標準誤差(SEM)を示す。ヘパリンとのインキュベーションはまた、ELISAによって測定したところ、培地中のPCSK9のレベルも上昇させる(C)。棒グラフは平均PCSK9濃度とSEM(n=4)を示す。結果は、スチューデントt検定を用いて評価した。***p<0.001、****p<0.0001。
図5-2】(D)=非透過性HepG2細胞のPLA分析は、LDLRとPCSK9との共局在が、ヘパリン(50U/ml)と細胞とのインキュベーションで顕著に減少することを示した。
図6】(A)無細胞PCSK9/LDLR結合アッセイ(BPS Bioscience)を使用して、PCSK9(BPS Bioscience 71207)のLDLR結合領域を標的とする対照阻害剤、抗PCSK9抗体(5nM)とは対照的に、ヘパリン(5及び50U/ml)がPCSK9とLDLRとの直接的な相互作用を阻害しないことを見出した。結合アッセイにて、固定化されたLDLRに結合したビオチン化PCSK9からの化学発光シグナルを定量化し、阻害剤のないサンプルからのシグナルに対して正規化された結果をここに示す。棒グラフは、標準偏差エラーバー付きの平均値(n=3)を示す。結果は、スチューデントt検定を用いて評価した。*****p<0.00001。Y軸:阻害剤なしの場合との比(%)。(B)ELISA(n=3)で測定した、培地中のPCSK9に対するヘパリンの用量依存的効果。Y軸:培地中のPCSK9(%)。(C)RT−PCRによる細胞溶解物中のmRNAレベルの定量分析。
図7】HepG2細胞を、ヘパリン類似体Arixtra(フォンダパリヌクス、GlaxoSmithKline Pharma)の濃度(0〜250μg/ml)を増加させながら24時間インキュベートすると、LDLRレベルが上昇した。GAPDHのウェスタンブロットを負荷対照として示す。
図8-1】(A)フラミン(100U/ml)及びInnohep(100U/ml)と18時間インキュベートした後のHepG2細胞におけるLDLRのウェスタンブロットであり、この2種の低分子量ヘパリン治療用製剤が、ヘパリン(50U/ml)の効果に匹敵するほどLDLRの細胞内レベルを上昇させることができることを示す。GAPDHのウェスタンブロットを負荷対照として示す。(B)10μgのPCSK9単独または50Uのヘパリンとの併用での静脈内投与から1時間経過した、マウスの肝臓におけるLDLRレベルを示すウェスタンブロット。50μgの膜製剤を充填した。対照として、PCSK9誘導性分解の標的ではないことが以前に示されたPCSK9受容体であるソルチリンについてのウェスタンブロットを示す。
図8-2】(C)バンドB)の定量化をデンシトメトリーにより定量化した。またドットプロットは、各サンプルの個々のレベルを、ビヒクル(0.9%NaCl)を注射した対照とのパーセント比の平均値及びSEMで示す。PCSK9及びヘパリンを同時注射したマウスは、LDLRレベルの有意な上昇を示している(24.0±4.04%に対して60.3±12.3%のLDLR、n=7マウス/群、p=0.0157、両側スチューデントt検定)。
図8-3】(D)ヒトHSPG結合ドメインを有するラットPCSK9をコードするDNAで免疫した3匹のラットからの血清(1μl)による天然ヒト35S標識PCSK9の免疫沈降を示すオートラジオグラフィー(16時間露出)。陰性対照として、この動物からの免疫前血清を使用した。(E)免疫前IgGまたは免疫IgG(1μg/ml)と一晩インキュベートした後のHepG2細胞におけるLDLRを示すウェスタンブロット。免疫前対照と比較して、免疫IgGとのインキュベート後に、細胞内LDLRレベルの顕著な上昇が見られた。
図8-4】(F)Aldevronによって実施されたELISAスクリーニングで選択した24の個々のmAb(500μlの馴化ハイブリドーマ培地)によるヒト35S−PCSK9の免疫沈降を示すオートラジオグラフィー(16時間露出)。対照としてmAb#2A8を使用したが、これは、ELISAスクリーニング(*)(Aldevronによって実施されたELISA試験スクリーニングでは、mAb#2A8を非特異的に試験した)、及び未馴化ハイブリドーマ培地(**)でPCSK9免疫反応性を何も示さなかった。
図8-5】(G)ウェスタンブロットにより分析した、mAb(1:10希釈の馴化ハイブリドーマ培地)とインキュベートしたHepG2細胞におけるLDLRレベルを示す棒グラフ(2〜4回の実験の平均とSEM)。12の個々のmAbクローンは、LDLRを約2倍上昇させる。(H)全てがPCSK9阻害効果を示す12の個々のmAb(500μlの馴化ハイブリドーマ培地)による、ヒト35S突然変異体PCSK9(アラニン残基に変異したR93R96R97R104R105H139を有する)の免疫沈降を示すオートラジオグラフィー(16時間露出)。対照として、ポリクローナル抗体(pAb、R&D systemsのAF3888)を使用した。mAbのうち3つは、PCSK9突然変異体を沈降させなかったが、これはそれらがHSPG結合ドメインを特異的に認識することを示す。
図8-6】(I)mAbの1G8、5E11及び10E5による、35S−PCSK9のWTならびに変異体R96R97、R104R104、R93R96R97H139、及びR93R96R97R104R105H139の免疫沈降を示すオートラジオグラフィーであり、各mAbがHSPG結合ドメイン内のエピトープを認識することを示す。対照として、R&D systemsのAF3888(pAb)を使用した。
図9-1】(A)ヘパリン模倣体硫酸デキストラン(200μg/ml)と24時間インキュベート後のHepG2細胞におけるLDLRのウェスタンブロットであり、この化合物が、LDLRの細胞内レベルを強力に上昇させることができることを示す。比較としてヘパリン(50U/ml)を示す。GAPDHを負荷対照として示す。(B)硫酸デキストラン(0〜200μg/ml)とインキュベート後のHepG2細胞におけるLDLRの濃度依存的増加を示す、LDLRレベルのデンシトメトリーによる定量化。棒グラフは、未処理細胞比のLDLR平均(%)とSEMエラーバーを示す。
図9-2】(C)PCSK9及び硫酸デキストランのマイクロスケール熱泳動(MST:Microscale Thermophoresis)結合曲線。Y軸:蛍光シグナル。X軸:硫酸デキストランまたはデキストランの濃度、K=180μM。円:硫酸デキストラン。正方形:デキストラン。
図9-3】(D)硫酸ペントサン(0〜200μg/ml)と24時間インキュベート後のHepG2細胞におけるLDLRのウェスタンブロット、及び(E)デンシトメトリーによる定量化であり、50〜200μg/mlの硫酸ペントサンで処理した細胞からの細胞溶解物が、LDLRを4倍増加させることを示す。棒グラフは、未処理細胞比のLDLR平均(%)とSEMエラーバーを示す。
図9-4】(F)PCSK9及び硫酸ペントサンのMST結合曲線。Y軸:蛍光シグナル。X軸:硫酸ペントサン濃度。円:硫酸ペントサン、K=381μM。正方形:対照。
図9-5】(G)スラミン(0〜200μg/ml)と24時間インキュベート後のHepG2細胞におけるLDLRの定量化。棒グラフは、未処理細胞比のLDLR平均(%)とSEMエラーバーを示す。スラミンとインキュベートしたHepG2細胞におけるLDLRの代表的なウェスタンブロットを(A)に示す。(H):PCSK9及びスラミンのMST結合曲線。Y軸:蛍光シグナル。X軸:スラミン濃度。円:スラミン、K=190μM。正方形:対照。
図9-6】(I)ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドS−dC−36(0〜5.0μM)と24時間インキュベート後のHepG2細胞におけるLDLRのウェスタンブロット、及び(J)デンシトメトリーによる定量化であり、細胞受容体レベルの濃度依存的な上昇を示す。棒グラフは、未処理細胞比のLDLR平均(%)とSEMエラーバーを示す。結果は、スチューデントt検定を用いて評価した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図9-7】(K)PCSK9及びS−dC−36のMST結合曲線。Y軸:蛍光シグナル。X軸:S−dC−36の濃度。円:S−dC−36、K=4.8μM。正方形:対照。
図10-1】PCSK9(10μg)注射前のヘパリナーゼIの注入は、PCSK9誘導性のLDLRの分解を完全に阻害する。代表的なサンプルのウェスタンブロット(A)及びLDLRを定量化した棒グラフ(B)を示す。ウェスタンブロットでは、GAPDHを負荷対照として使用している(e:空のレーン)。対照はn=7、PCSK9はn=6、ヘパリナーゼはn=5、ヘパリナーゼ/PCSK9はn=5。
図10-2】PCSK9のみを注射したマウスと比較して、PCSK9(10μg)とヘパリン(50U)またはスラミン(300μg)を同時注射したマウスは、LDLRレベルの有意な上昇を示している(C)。対照はn=15、PCSK9はn=10、PCSK9/ヘパリンはn=7、PCSK9/スラミンはn=3。(D)マウスPCSK9特異的ELISAによって評価した、ヘパリン(50u)の静脈注射後のPCSK9の血漿レベル。
図11】10μgのPCSK9単独または50μgのmAbとの併用での静脈内投与から1時間経過した、マウスの肝臓におけるLDLRレベル。
図12】蛍光色素Bodipyで標識した10ng/mlのLDL粒子と4時間インキュベートした後、スラミン(200μg/ml)と一晩インキュベートした後のHepG2細胞における相対蛍光シグナルを示す棒グラフ。スラミンによるPCSK9の阻害は、LDLの取り込みを2倍増加させる。
図13】(A)及び(B)100μMのスラミンまたはHMG CoA還元酵素阻害剤メバスタチン及びシンバスタチンと24時間及び48時間インキュベートした後のHepG2細胞において、ウェスタンブロットにより評価したLDLRレベルを示す棒グラフ。スラミンとインキュベートした細胞は、スタチンとインキュベートした細胞よりも高レベルのLDLRを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
ヘパリン類似体:本明細書で使用される場合、本用語は、ヘパリンと構造的に類似する化合物を指す。
【0023】
ヘパリン模倣体:本明細書で本用語は、ヘパリンのように機能的に挙動する、すなわち模倣する化合物を指す。したがって、本用語は、構造的に類似している化合物双方を含むが、本開示の文脈においてヘパリンと構造は異なるが、機能が同じである化合物もまた含む。
【0024】
LDLコレステロール(LDL−C)レベル:所与の個人に最適なLDL−Cレベルは、それぞれの潜在的な心臓疾患リスクに応じて異なる。健常人の場合、理想とされるLDL−Cレベルは、2.6〜3.3mmol/L(すなわち100〜129mg/dL)未満が望ましい。3.4〜4.1mmol/L、すなわち130〜159mg/dLは高レベルの境界域であり、4.1〜4.9mmol/L、すなわち160〜189mg/dLは高レベルであり、4.9mmol/Lすなわち189mg/dL超は極めて高レベルである。心臓疾患リスクのある個人の場合、2.6mmol/Lすなわち100mg/dL未満のレベルが推奨され、心臓疾患のリスクが非常に高い個人の場合、1.8mmol/Lすなわち70mg/dL未満のレベルが望ましい。
【0025】
低密度リポタンパク質受容体(LDLR)レベル:細胞内でのLDLRの合成は、細胞内の遊離コレステロールのレベルによって調節され、コレステロールが細胞の必要量に対して過剰である場合、LDLRの転写は阻害されることになる。LDLRレベルは、限定するものではないが、ウェスタンブロッティング、RT−PCR、及びフローサイトメトリーなどの当技術分野で既知の方法により推定することができる。
【0026】
低分子量ヘパリン:天然ヘパリンは種々の長さ、すなわち種々の分子量の分子鎖から構成される。例えば、多分散系製薬等級のヘパリンは、5000〜40,000超ダルトンの様々な分子量の鎖で構成されている。低分子量ヘパリンは、対照的に短鎖の多糖類のみで構成される。低分子量ヘパリンは、8000Da未満の平均分子量を有し、全鎖の少なくとも60%が8000Da未満の分子量を有しているヘパリン塩であると定義される。低分子量ヘパリンは、高分子ヘパリンの分画または脱重合などの当業者に既知の様々な方法によって得られる。
【0027】
リポタンパク質代謝障害:本用語は、例として高コレステロール血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、シトステロール血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群、黄色腫、高血圧症、狭心症、肥満、糖尿病、及び血管炎症を含む、脂質恒常性の障害及びそれに関連する障害を指す。
【0028】
PCSK9のレベル:一般集団におけるPCSK9の血漿レベルは30〜3000ng/mLに分布し、中央値は一般的に男性よりも女性の方が高い。PCSK9のレベルはLDL−Cのレベルと相関する。
【0029】
ホスホロチオエート(またはホスホロチオエートオリゴヌクレオチドすなわちS−オリゴ)は、非架橋酸素の1つが硫黄で置換されたDNA変異体である。ヌクレオチド間結合の硫化は様々なヌクレアーゼの作用を大幅に低減し、脂質二重層を横断する可能性を増加させると考えられている。
【0030】
本発明は特許請求の範囲に記載の通りである。
【0031】
本発明は、第1の態様においてHSPGのPCSK9への結合を阻害することができる化合物に関する。本開示を通じて、HSPGのPCSK9変異体への結合を阻害することができる化合物も本発明の範囲内であると理解するものとする。PCSK9変異体とは、配列番号1と本質的に同じ配列を有するポリペプチド、例えば配列番号1のいくつかの残基の保存的置換を有する変異体であると理解される。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167のうちの少なくとも1個、すなわちPCSK9(配列番号1)の、例えばアミノ酸残基78〜92のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基93〜97のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基98〜103のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基104〜105のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基106〜135のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基136〜139のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基140〜164のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基165〜167のうちの少なくとも1個を含む、PCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。
【0033】
本明細書では、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167のうちの少なくとも1個、すなわちPCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167のうちの、例えば少なくとも2個、例えば少なくとも5個、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも35個、例えば少なくとも40個、例えば少なくとも45個、例えば少なくとも50個、例えば少なくとも55個、例えば少なくとも60個、例えば少なくとも65個、例えば少なくとも70個、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも80個、例えば少なくとも85個、例えば少なくとも全てを含むPCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する化合物を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物は、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜92のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基93〜97のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基98〜103のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基104〜105のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基106〜135のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基136〜139のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基140〜164のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基165〜167のうちの少なくとも1個を含む領域を特異的に認識して結合する。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物は、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜92、例えばアミノ酸残基93〜97、例えばアミノ酸残基98〜103、例えばアミノ酸残基104〜105、例えばアミノ酸残基106〜135、例えばアミノ酸残基136〜139、例えばアミノ酸残基140〜164、例えばアミノ酸残基165〜167のうちの少なくとも1つを含む領域を特異的に認識して結合する。
【0036】
したがって、一実施形態では、化合物は、アミノ酸残基78〜167を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基78〜95を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基96〜100を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基101〜105を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基106〜110を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基111〜115を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基116〜120を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基121〜125を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基126〜130を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基131〜135を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基136〜140を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基141〜145を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基146〜150を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基151〜155を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基156〜160を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。別の実施形態では、化合物は、アミノ酸残基161〜167を含むPCSK9のHSPG結合部位内の領域を特異的に認識して結合する。
【0037】
したがって、PCSK9(配列番号1)のR93、R96、R97、R104、R105、K136、H139、R165、及びR167からなる群から選択される1個以上のアミノ酸、すなわちPCSK9のR93、R96、R97、R104、R105、K136、H139、R165、及びR167からなる群から選択される、例えば1個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば5個のアミノ酸、例えば6個のアミノ酸、例えば7個のアミノ酸、例えば8個のアミノ酸、例えば全てのアミノ酸に結合する化合物が提供される。
【0038】
したがって、一実施形態では、化合物はPCSK9のR93に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR96に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR97に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR104に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR105に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のK136に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のH139に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR165に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR167に結合する。
【0039】
一実施形態では、化合物はPCSK9のR96及びR97に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR104及びR105に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のK136及びH139に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR93及びH139に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR93、R104、R105、及びH139に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR165及びR167に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR93、R96、R97、R104、R105、及びH139に結合する。
【0040】
抗体
本明細書で定義される化合物が、抗体またはその機能的等価物である化合物も開示する。
【0041】
本発明の抗体は、本明細書に定義される抗原を認識して結合できるいずれのポリペプチドまたはタンパク質であってもよい。前記抗体は前記抗原と特異的に結合できることが好ましい。用語「特異的に結合する」とは、非特異的抗原(例えばBSA)に対するよりも、少なくとも10倍高い親和性で抗原に結合することを意味する。
【0042】
この抗体は、天然に存在する抗体またはその機能的等価物であってもよい。天然に存在する抗体は、抗原を認識して結合する能力を有するヘテロ四量体の糖タンパク質である。これには、ジスルフィド結合によって相互に結合した、同一な2本の重(H)鎖と同一な2本の軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVと略記)と重鎖定常領域(本明細書でCと略記)を含むか、好ましくはそれからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVと略記)と軽鎖定常領域(本明細書でCと略記)を含むか、好ましくはそれからなる。V及びV領域は更に、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域と、その領域に割り込むフレームワーク領域(FR)と称される、より保存的な領域に細分化することができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRを含むか、好ましくはそれからなる。
【0043】
天然に存在する抗体はまた、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダ及びラマ)が産生する重鎖抗体(HCAb)であってもよい。HCAbは、軽鎖及び第1の定常ドメインが欠損した、重鎖のみのホモ二量体である(Hamers−Casterman et al.,1993)。他の天然に存在する抗体は、会合する軽鎖がない2本の重鎖の二量体として存在する新規テンジクザメ抗原受容体(New or Nurse Shark Antigen Receptor:NAR)タンパク質の場合と同様に軽鎖を欠損している場合もある。各鎖は1つの可変(V)ドメインと5つの定常ドメインから構成される。NARタンパク質は、抗体分子よりもはるかに軽量である単一免疫グロブリン可変様ドメインを構成する(Greenberg et al.,1995.)。
【0044】
本発明による天然に存在する抗体は、1つのヘテロ四量体からなるものでも、いくつかの同一のヘテロ四量体を含むものであってもよい。したがって、本発明による天然に存在する抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEからなる群から選択することができる。免疫グロブリンのサブユニット構造及びこれらの異なるクラスで構成される3次元構造は周知である。本発明の好ましい実施形態において、抗体は、IgG、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3、及びIgG−4である。
【0045】
この抗体は、天然に存在するモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体であってもよい。他の実施形態では、抗体は、天然に存在するポリクローナル抗体などのポリクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体については、本明細書中、以下で更に詳述する。
【0046】
天然に存在する抗体は特定の種の抗体であってもよく、例えば抗体はマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ロバ、ラクダ、またはヒトの抗体であり得る。抗体は、マウスまたはラットのモノクローナル抗体であってもよい。ただし、抗体はまた、いくつかの種由来の抗体同士のハイブリッドであってもよく、例えば、抗体はヒト化抗体などのキメラ抗体であってもよい。ヒト抗体及びヒト化抗体については、本明細書中、以下で更に詳述する。
【0047】
抗体の抗原結合断片
抗体の抗原結合断片は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片である。したがって、いくつかの実施形態では、抗体の機能的等価物には抗体の結合断片が含まれる。好ましくは、前記断片は、天然に存在する抗体の抗原結合断片である。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実現され得ることが示されている。天然に存在する抗体の抗原結合断片の例としては、例えば、(I)V、V、C、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片;(iii)V及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)1本のアームの抗体のV及びVからなるFv断片;または(V)VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989)が挙げられる。Fab断片は、パパイン消化によって調製することができる。F(ab’)断片は、ペプシン処理により調製することができる。
【0048】
抗体の抗原結合断片は、好ましくは、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、またはより好ましくは場合により合成リンカーによって結合され得る2つ以上の単離されたCDRの組み合わせを含む。抗体の抗原結合断片の更なる例は、(i)免疫グロブリンのヒンジ領域のポリペプチドに融合された抗原結合部位、(ii)ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、(iii)CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、ドメイン結合免疫グロブリン融合タンパク質である。抗原結合部位は、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。このようなドメイン結合免疫グロブリン融合タンパク質の詳細は、US2003/0118592及びUS2003/0133939に開示されている。これらの抗体断片は当業者に既知である従来の技術を用いて得られ、無傷抗体と同様の方法で断片の有用性についてスクリーニングされる。
【0049】
抗体の抗原結合断片はまた、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であるダイアボディであってもよい。ダイアボディは、好ましくは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)に、軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間を対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、各ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディについては、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,1993に詳細に記載されている。
【0050】
異種特異的抗体
本明細書に開示される抗体はまた、二重特異性抗体のような「異種特異的抗体」であってもよい。二重特異性抗体は、特異性の異なる2つの異なった抗原結合部位を含むタンパク質またはポリペプチドである。例えば、二重特異性抗体は、(a)第1の抗原内の第1のエピトープと、(b)第2の抗原内の第2のエピトープとを認識して結合することができるか、または同一抗原内の2つの異なったエピトープを認識して結合することができる。用語「異種特異的抗体」は、特異性の異なる3つ以上の異なった抗原結合部位を有する任意のタンパク質またはポリペプチドを含むことを意図する。例えば、異種特異的抗体は、(a)第1の抗原の第1のエピトープと、(b)第2の抗原の第2のエピトープと、(c)第3の抗原の第3のエピトープとを認識して結合することができるか、または(a)第1の抗原の第1のエピトープと、(b)第2の抗原の第2及び第3のエピトープとを認識して結合することができるか、または同一抗原の異なったエピトープを認識して結合することができる。したがって、本発明は、限定するものではないが、同一または異なる抗原上の異なったエピトープを対象とする、二重特異性、三重特異性、四重特異性、及び他の多重特異性抗体を含む。
【0051】
二重特異性抗体は、例えばモノクローナル抗体を出発して、例えば、化学的架橋によって、または組換え技術を用いて、2種のハイブリドーマを融合し、その特異性を組み合わせることにより調製することができる。例えば、2つの異なった抗体(1及び2)のV及びVを組換え手段によって結合し、「クロスオーバー」鎖V1−V2及びV2−V1を形成した後、二量化し、両方の抗原結合部位を再構築する(WO94/09131を参照)。二重特異性抗体はまた、例えばWO94/13806に記載される特異性の異なる2つの一本鎖抗体を遺伝子結合することにより調製してもよい。また、1つの抗体の2つの抗原結合断片を結合してもよい。
【0052】
ヒト抗体及びヒト化抗体
ヒト治療を目的としたヒト以外の抗体の使用は必ずしも望ましくない。したがって、本発明による抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。
【0053】
本明細書から理解されるように、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列を使用する系から得られる抗体である。ヒト抗体は、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されたハイブリドーマのトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えば、マウス)から単離された抗体であってもよい。ヒト抗体はまた、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離してもよい。ヒト抗体はまた、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離してもよい。
【0054】
ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体に、in vitro突然変異誘発またはin vivo体細胞突然変異誘発を施すことができるため、組換え抗体のV及びV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列V及びV配列に由来し、またそれと関連するが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然で存在しなくてもよい配列である。
【0055】
ヒト抗体は、野生型ヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列中、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%同一である。前記トランスジェニック動物またはトランス染色体動物は、再構成されていないヒト重鎖(μ及び/またはγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座を含んでいてもよい。更に、動物は、内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座を不活性化する1つ以上の突然変異を含んでいてもよい。このような動物の例は、Lonberg et al.(1994)及びWO02/43478に記載されている。
【0056】
本明細書に開示される抗体は、キメラ抗体、すなわち異なった種に由来する領域を含む抗体であってもよい。キメラ抗体は、例えば、ある動物種からの可変領域と、別の動物種からの定常領域とを含み得る。例えば、キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域と、ヒトである定常領域を有する抗体であり得る。このような抗体をヒト化抗体と称する場合もある。したがって、抗体はまた、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列から得た配列によって部分的にコードされ、かつ他の配列から得た配列によって部分的にコードされるヒト化抗体であってもよい。前記他の配列は、好ましくは、他の種、より好ましくは他の哺乳動物種からの生殖細胞系列の免疫グロブリンである。特に、ヒト化抗体は、抗原結合部位がヒト以外の種、好ましくはマウスまたはラットなどのヒト以外の哺乳動物からの免疫グロブリンに由来するが、分子の免疫グロブリン由来部分の残りの一部または全部がヒト免疫グロブリンに由来する抗体であり得る。前記ヒト以外の種からの抗原結合部位は、例えば、完全なVもしくはVまたは両方からなるか、あるいはVもしくはVまたは両方の対応するヒトフレームワーク領域に1つ以上のCDRがグラフトされたものであってもよい。したがって、ヒト化抗体において、CDRはマウスまたはラットモノクローナル抗体由来であってよく、抗体の他の領域はヒト起源のものである。
【0057】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体(MAb)は、抗体分子が類似していることから、同一エピトープを認識して結合する抗体の集団を指す。モノクローナル抗体は一般に宿主細胞株によって、多くはハイブリドーマ細胞株によって産生される。モノクローナル抗体及び抗体合成ハイブリドーマ細胞の作製方法は当業者に周知である。抗体産生ハイブリドーマは、例えば、抗体産生Bリンパ球と不死化されたBリンパ球細胞株との融合により調製してもよい。本発明によるモノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術によって、またはAntibodies:A Laboratory Manual,By Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載のように調製することができる。前記モノクローナル抗体は、好適な哺乳動物種であればどれに由来してもよいが、多くの場合、モノクローナル抗体は、マウスまたはラットモノクローナル抗体などの齧歯類抗体である。
【0058】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、特異的な所定の抗原を認識して結合する異なった抗体分子の混合物を含む抗体の集団を指す。したがって、ポリクローナル抗体は、前記抗原内の異なったエピトープを認識することができる。一般に、ポリクローナル抗体は、以前に抗原で免疫された動物、好ましくは哺乳動物の血清から精製される。ポリクローナル抗体は、例えばAntibodies:A Laboratory Manual,By Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載された方法であれば、いずれによっても調製することができる。
【0059】
組換え抗体
抗体はまた、組換え抗体、すなわち組換え手段により調製、発現、生成、または単離された抗体であってもよい。本発明による組換え抗体は、例えば、合成ライブラリを使用して、またはファージディスプレイによって産出してもよい。いくつかの実施形態では、抗体は組換え細胞内で産生される。組換え細胞は、細菌及び真核微生物を含む群から選択される微生物であってもよい。組換え抗体は、細菌、酵母または多細胞生物由来の細胞培養液などの微生物宿主生物中で産生し得る。多くの場合、Escherichia coliが宿主生物として有用である。多くの場合、組換え抗体は、Fab断片、F(ab’)、Fv断片のような少なくとも1つの抗原結合部位を含む天然に存在する抗体の断片であるか、または組換え抗体がscFVである。したがって、いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片、F(ab’)、Fv断片のような少なくとも1つの抗原結合部位を含む天然に存在する抗体の断片である。他の実施形態では、組換え抗体はscFVである。
【0060】
組換え抗体は、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイなど、様々なシステムを用いて同定することができる。ファージディスプレイの起点は通常、一本鎖抗体またはファージによって発現される天然に存在する抗体の断片などの抗体のライブラリである。ファージディスプレイでの使用に適したファージは、例えばM13、fd繊維状ファージ、T4、T7、またはλファージなど、多種多様である。ファージミドを使用することもできるが、それには通常、ヘルパーファージの使用を必要とする。典型的には、ライブラリは10〜1015の範囲、例えば10〜1011の異なるファージを含む。抗体は、ナイーブまたは免疫源のいずれであってもよい。ライブラリの抗体は、確実に表面に提示されるようにファージコートタンパク質(例えば、g3pまたはg8p)と融合させてもよい。したがって、抗体(断片)は、ファージコートタンパク質をコードする核酸の上流または下流にクローニングされ、好適なプロモーターに操作可能に連結された核酸配列によってコードされてもよい。
【0061】
例えば抗体可変ドメインに関する、抗体をコードするゲノム情報を、組換えDNA技術を用いて非免疫または免疫したドナーのB細胞から得て、V及びV遺伝子セグメントを増幅し、適切なファージにクローニングすることができる。合成ライブラリは、V及びV遺伝子セグメントのin vitro再構成によって、及び/またはV及びV遺伝子セグメントへの人工配列の導入によって調製することができる。例えば合成ライブラリは、V及びV遺伝子のフレームワークを使用するが、ランダムなオリゴヌクレオチドによってコードされ得る、その人工的な相補性決定領域(CDR)に導入して調製することができる。ライブラリはまた、後に宿主細胞中で組み合わされる、異なったライブラリであってもよい。したがって、1つのライブラリが、重鎖のFv断片もしくはFab断片またはVなどの重鎖配列と、軽鎖のFv断片またはFab断片Vなどの他の軽鎖配列を含んでもよい。通常、選別は例えば2〜5回、2〜3回などの複数ラウンドを実施する。この操作は、抗原を固定化して、ファージと抗原を接触させ、結合したファージを単離することにより行うことができる。抗原は、プラスチック表面、ビーズ(磁気ビーズなど)、カラム中の樹脂などの任意の好適な固体表面上に固定化するか、または細胞表面に発現させることができる。
【0062】
一本鎖抗体
天然に存在する抗体はヘテロ四量体である。しかし、本明細書で定義される抗体はまた、1つ以上の抗原結合部位を含む単一のポリペプチドであってもよい。このような抗体は「一本鎖抗体」とも称される。したがって、抗体はまた一本鎖抗体であってもよい。一本鎖抗体は、Fv断片、V、及びVのうちの2つのドメインを含み得る。このような一本鎖抗体を得るために、V及びVをコードする遺伝子を組換え法を用いて結合することができる。通常、一本鎖抗体は、合成リンカー、例えば5〜100個、例えば5〜50個、例えば25個のアミノ酸からなるリンカーによって分離されている。前記リンカーは、VのN末端をVのC末端と、またはVのC末端をVのN末端と結合することもできる。リンカーによって、VとV領域とが対合して一価抗体様の分子を形成している単一のタンパク質鎖(別称、一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv))を産生することができる。例えば、Bird etal.(1988)Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883)を参照のこと。
【0063】
一本鎖抗体はまた、二価抗体、例えば、リンカーによって2つずつ結合し得る、2つのVと2つのV領域を含む単一のペプチド鎖であってもよい。一本鎖抗体はまた、多価抗体、例えば、リンカーによって2つずつ結合し得る、複数のVと複数のV領域を含む単一のペプチド鎖であってもよい。V及びV領域は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ単一特異的抗体または異種特異的抗体を形成し得る。前記V及び前記Vは、天然に存在するVまたはVであっても、少なくとも1つの抗原結合部位を含む合成のV及びVであってもよい。好ましくは、前記V及び前記Vは、天然に存在するV及びVである。
【0064】
本明細書に開示される化合物は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、抗体の産生に適している当技術分野で既知の任意の生物、例えば、マウス、ヒツジ、ウサギなどの生物、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、またはCHO細胞などの哺乳動物細胞株などの細胞培養液を起源とすることができる。抗体をヒト化してもよい。好ましくは、抗体はマウスモノクローナル抗体である。
【0065】
抗体の結合断片を含む機能的等価物も本発明の範囲内である。断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びScFv断片などのFv断片からなる群から選択することができる。機能的等価物はまた一本鎖抗体であってもよい。他の実施形態は、例えば、上記で詳述したPCSK9のHSPG結合ドメインに結合する抗体の結合断片を含むか、またはそれからなる機能的等価物に関する。いくつかの実施形態では、機能的等価物は更に、例えば抗体断片の半減期、安定性、バイオアベイラビリティ、溶解性また他の関連する特性を高めることができる遺伝子組換えドメインを含み得る。例えば、遺伝子組換えドメイン内スルフィド結合は抗体を安定化できることが当技術分野で知られている(Wozniak−Knopp et al.2012)。安定化の他の方法としては、例えば、Fv断片の安定化をもたらすVドメインとVドメインとの間のペプドリンカーの使用が挙げられる(Reiter et al.,1994)。
【0066】
機能的等価物はまた、抗体模倣体、すなわち抗体を模倣する小分子であってもよい。限定するものではないが、抗体模倣体は、抗体と構造的に関連しないが抗原に特異的に結合できる核酸を含めた有機化合物である。抗体模倣体は通常、人工ペプチドまたはタンパク質であり、一般に約3〜20kDaのモル質量を有する。一部のタイプは、抗体様βシート構造を有する。抗体模倣体は、抗体と比べて良好な溶解性、組織透過性、熱、及び酵素に対する安定性を示す場合があるほか、比較的製造コストが低い。
【0067】
このように、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167のうちの少なくとも1個、すなわちPCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜167のうちの、例えば少なくとも2個、例えば少なくとも5個、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも35個、例えば少なくとも40個、例えば少なくとも45個、例えば少なくとも50個、例えば少なくとも55個、例えば少なくとも60個、例えば少なくとも65個、例えば少なくとも70個、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも80個、例えば少なくとも85個、例えば全てを含むPCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する抗体またはその機能的等価物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜92のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基93〜97のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基98〜103のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基104〜105のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基106〜135のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基136〜139のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基140〜164のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基165〜167のうちの少なくとも1個を含むエピトープを特異的に認識して結合する。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、PCSK9(配列番号1)のアミノ酸残基78〜92のうちの少なくとも1個、例えばアミノ酸残基93〜97、例えばアミノ酸残基98〜103、例えばアミノ酸残基104〜105、例えばアミノ酸残基106〜135、例えばアミノ酸残基136〜139、例えばアミノ酸残基140〜164、例えばアミノ酸残基165〜167を含むエピトープを特異的に認識して結合する。
【0070】
したがって、一実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基78〜167を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基78〜95を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基96〜100を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基101〜105を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基106〜110を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基111〜115を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基116〜120を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基121〜125を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基126〜130を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基131〜135を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基136〜140を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基141〜145を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基146〜150を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基151〜155を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基156〜160を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物は、アミノ酸残基161〜167を含むPCSK9のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する。
【0071】
したがって、PCSK9(配列番号1)のR93、R96、R97、R104、R105、K136、H139、R165、及びR167からなる群から選択される1個以上のアミノ酸、すなわちPCSK9のR93、R96、R97、R104、R105、K136、H139、R165、及びR167からなる群から選択される、例えば1個のアミノ酸、例えば2個のアミノ酸、例えば3個のアミノ酸、例えば4個のアミノ酸、例えば5個のアミノ酸、例えば6個のアミノ酸、例えば7個のアミノ酸、例えば8個のアミノ酸、例えば全てのアミノ酸に結合する抗体またはその機能的等価物が提供される。
【0072】
したがって、一実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR93に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR96に結合する。別の実施形態では、化合物はPCSK9のR97に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR104に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR105に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のK136に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のH139に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR165に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR167に結合する。
【0073】
一実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR96及びR97に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR104及びR105に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のK136及びH139に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR93及びH139に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR93、R104、R105、及びH139に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR165及びR167に結合する。別の実施形態では、抗体またはその機能的等価物はPCSK9のR93、R96、R97、R104、R105、及びH139に結合する。
【0074】
特定の実施形態では、この抗体はモノクローナル抗体である。一実施形態では、抗体はマウスモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的等価物はヒト化されている。抗体は一本鎖抗体であってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。一実施形態では、二重特異性抗体は、上記に詳述したようなPCSK9のHSPG結合部位を認識して結合することができるが、PCSK9のLDLR結合部位を認識して結合することもでき、その結果、そのような抗体のPCSK9への結合は、PCSK9へのHSPG及びLDLRの結合を阻害する。理論に束縛されるものではないが、LDLR結合部位は、PCSK9(配列番号1)の残基194(A194)及び残基367〜381、特にP379を含むドメインを含む。したがって、いくつかの実施形態では、化合物は、上記のようにPCSK9のHSPG結合部位に結合することができ、LDLR結合ドメインの少なくとも1つのアミノ酸残基に結合することができる二重特異性抗体であり、LDLR結合ドメインの少なくとも1つのアミノ酸残基が、配列番号1の残基194であるか、または配列番号1の残基367〜381を含むドメイン内に含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体は、PCSK9のLDLR結合ドメインに結合することができない。
【0077】
したがって、以下を含む抗体またはその抗原結合断片も開示する:
(i)配列番号10、配列番号11または配列番号12によって定義される3つのCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域またはそのヒト化型、及び
(ii)配列番号13、配列番号14、または配列番号15によって定義される3つのCDRのうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型。
【0078】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの1つと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの1つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)、またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの1つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)、またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの1つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)、及びCDR3(配列番号15)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの2つと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの2つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの2つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの2つと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)、及びCDR3(配列番号15)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)の全てと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)の全てと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)の全てと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)またはCDR3(配列番号15)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)の全てと、CDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)、及びCDR3(配列番号15)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7によって定義される重鎖可変領域またはそのヒト化型、及び/または配列番号5によって定義される軽鎖可変領域またはそのヒト化型を含む。
【0091】
他の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号16、配列番号17または配列番号18によって定義される3つのCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域またはそのヒト化型と、
(ii)配列番号19、配列番号20または配列番号21によって定義される3つのCDRのうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型と、を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの1つと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの1つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの1つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの1つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)、及びCDR3(配列番号12)のうちの2つと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの2つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの2つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)のうちの2つと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)、及びCDR3(配列番号21)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)の全てと、軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)の全てと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)の全てと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)またはCDR3(配列番号21)のうちの少なくとも2つを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域またはそのヒト化型は、CDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)、及びCDR3(配列番号18)の全てと、CDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)、及びCDR3(配列番号21)の全てを含む軽鎖可変領域またはそのヒト化型とを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9によって定義される重鎖可変領域またはそのヒト化型、及び/または配列番号3によって定義される軽鎖可変領域またはそのヒト化型を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的等価物は抗体変異体である。このような変異体には、限定するものではないが、半減期、溶解性、及び/またはバイオアベイラビリティを高めるために修飾された抗体が含まれる。機能的等価物は、PCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位に結合することができる抗体の断片を含み得る。いくつかの実施形態では、断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片からなる群から選択される。このような変異体は、遺伝子組換えドメイン内ジスルフィド結合を含み得る。
【0106】
抗体またはその機能的等価物は、ドメインシャッフリングによって得てもよい。ドメインシャッフリングは、従来的なクローニングまたはリガーゼ非依存的方法、例えばウラシル特異的切断試薬(USER)によるクローニング及び融合(Nour−Eldin et al.,2010;Villiers et al.,2010)などの当技術分野において既知の方法により行うことができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体またはその機能的等価物の1つ以上のFv断片は、VドメインとVドメインとの間にペプチドリンカーを含む。
【0108】
LDLR及びLDL−Cのレベル
本明細書に開示される化合物のPCSK9への結合は、前記化合物の不在下での結合と比較して、PCSK9のLDLRへの結合を低下させる。これは更に、前記化合物の不在下でのレベルと比較して、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞の、例えば表面でのLDLRレベルを上昇させる。いくつかの実施形態では、化合物は抗体であり、それがPCSK9に結合することで、前記抗体の不在下での結合と比較して、PCSK9のLDLRへの結合を低下させる。これは更に、前記抗体の不在下でのレベルと比較して、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞のLDLRレベルを上昇させる。
【0109】
したがって、いくつかの実施形態では、化合物のPCSK9への結合は、前記化合物の不在下でのレベルと比較して、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞のLDLRレベルを上昇させる。特定の実施形態では、化合物は上記で定義された抗体であり、この抗体のPCSK9への結合は、前記抗体の不在下でのレベルと比較して、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞のLDLRレベルを上昇させる。
【0110】
いくつかの実施形態では、化合物のPCSK9への結合は、前記化合物の不在下での分解と比較して、LDLRのリソソーム分解を減少させる。特定の実施形態では、化合物は上記で定義された抗体であり、この抗体のPCSK9への結合は、前記抗体の不在下での分解と比較して、LDLRのリソソーム分解を減少させる。
【0111】
いくつかの実施形態では、化合物のPCSK9への結合は、前記化合物の不在下でのレベルと比較して、LDL−Cの血漿レベルを低下させる。用語「血漿LDL−Cレベル」は、血漿中のLDL−Cのレベル、すなわちLDL−Cタンパク質の量を指すと理解するものとする。特定の実施形態では、化合物は上記で定義された抗体であり、この抗体のPCSK9への結合は、前記抗体の不在下でのレベルと比較して、LDL−Cの血漿レベルを低下させる。
【0112】
LDL−Cの血漿レベルは、in vivoまたはin vitroで測定することができる。LDL−Cの血漿レベルを決定する方法は、当技術分野で既知であり、ウェスタンブロット、免疫染色、ELISA、超遠心分離、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、及び電気泳動法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本明細書に開示される化合物は、血清中で安定な抗体であり得る。
【0114】
本明細書ではまた、特に投与後に無毒性である上記に定義された化合物を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は投与後に無毒性である抗体である。
【0115】
いくつかの実施形態では、化合物は、PCSK9のLDLR結合部位に結合する抗体などの抗PCSK9抗体またはスタチンなどの別の化合物と併用投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、ロデルシズマブ(lodelcizumab)、ラルパンシズマブ(ralpancizumab)、アリロクマブ、エボロクマブ、及びボコシズマブからなる群から選択される抗体と一緒に投与される。
【0116】
したがって本明細書では、血漿LDL−Cレベルの低下を必要とする対象において血漿LDL−Cレベルを低下させる方法であって、本明細書で定義される化合物または医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む前記方法を提供する。血漿LDL−Cレベルは、上記のような、当技術分野で既知である任意の方法によってin vivoまたはin vitroで測定することができる。
【0117】
ヘパリン類似体及びヘパリン模倣体
いくつかの実施形態では、HSPGのPCSK9への結合を阻害することができる化合物は、ヘパリン類似体またはヘパリン模倣体である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、R.Lever et al.(eds.),Heparin−A Century of Progress,Handbook of Experimental Pharmacology 207,Springer−Verlag Berlin Heidelberg 2012を参照のこと。
【0118】
ヘパリン類似体またはヘパリン模倣体は、HSPGの競合的アンタゴニスト、不競合的アンタゴニスト、非競合的アンタゴニスト、サイレントアンタゴニスト、部分アゴニストまたは逆アゴニストであり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、化合物はヘパリンである。他の実施形態では、ヘパリン類似体またはヘパリン模倣体はペプチドである。
【0120】
いくつかの実施形態では、ヘパリン類似体またはヘパリン模倣体は、ヘパリンのPCSK9への結合を阻害することができる。ヘパリン類似体またはヘパリン模倣体は、本明細書の上記に記載されたPCSK9のアミノ酸残基のうちのいずれにも結合し得る。
【0121】
化合物、ヘパリン類似体、またはヘパリン模倣体は、式(I)の一般構造を有し得る:
【化1】

(式中、
− Rは、COOH、及びSOからなる群から選択され、
− R、R、R、及びRは、O及びOHからなる群から選択され、
− Rは、硫酸基からなる群から選択され、
− Rは、スルファメート基、OH、及びOからなる群から選択され、
− Rは、硫酸基からなる群から選択され、
− nは1以上の整数であり、
ここで、R及び/またはRは、場合によりモノマー単位を連結するリンカーとして作用することができる。)
【0122】
一実施形態では、ヘパリン類似体または模倣体は、
a)フォンダパリヌクス(Arixtra(商標))であり、次式を有する化合物:
【化2】

b)ダルテパリンナトリウムまたはチンザパリンナトリウムなどの低分子量ヘパリン;及び
c)式(II)の化合物:
【化3】

(式中、R及びR10は、H、COOH、SO、O、OH、スルフェート、及びスルファメートからなる群から独立して選択され、nは1以上の整数)である。
【0123】
一実施形態では、式(II)の化合物はペントサンであり、次式を有する:
【化4】

(式中、nは1以上の整数。)
【0124】
一実施形態では、化合物は低分子量ヘパリンである。特定の実施形態では、低分子量ヘパリンは、ダルテパリンナトリウム(商標名フラミン)である。別の実施形態では、低分子量ヘパリンは、チンザパリンナトリウム(商標名Innohep(商標))である。
【0125】
更に別の実施形態では、化合物は、式(II)の化合物である:
【化5】

(式中、R及びR10は、H、COOH、SO、O、OH、スルフェート、及びスルファメートからなる群から独立して選択され、nは1以上の整数)。
【0126】
一実施形態では、式(II)の化合物はペントサンであり、次式を有する:
【化6】

(式中、nは1以上の整数。)
【0127】
いくつかの実施形態では、化合物はスラミンである。スラミンは次式を有する:
【化7】
【0128】
特定の実施形態では、化合物は式(III)の化合物である:
【化8】

(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、及びR19は、COOH、SO、O、OH、スルフェート、及びスルファメートからなる群から独立して選択され、nは1以上の整数であり、ここで、R14は、場合によりモノマー単位を連結するリンカーとして作用することができる。)
【0129】
一実施形態では、式(III)の化合物は硫酸デキストランであり、次式を有する:
【化9】

(式中、nは1以上の整数。)
【0130】
別の実施形態では、化合物はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドS−dNnであり、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり、nは前記ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド中のホスホロチオエート結合の数である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、ヘパリン模倣体として作用し、ヘパリン結合タンパク質、例えばbFGFに結合することが知られている(Benimetskaya et al.,1995)。そのポリアニオン骨格によって、ヘパリン、硫酸デキストラン、及びペントサンと類似性をもつ。いくつかの実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはS−dCnである。他の実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはS−dAnである。他の実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはS−dGnである。他の実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはS−DTnである。他の実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのいずれのヌクレオチドも、他のヌクレオチドとは独立してA、T、G、及びCからなる群から選択される。
【0131】
nが整数のヌクレオチドであるS−dCnの一般構造は、以下の式で表される:
【化10】
【0132】
好ましくは、nは12〜60である。したがって、いくつかの実施形態では、nは15〜55、例えば20〜50、例えば25〜45、例えば30〜40、例えば36である。
【0133】
通常、S−オリゴヌクレオチドは、その配列が標的mRNAに相補的であるように設計され、それにより前記標的mRNAの分解を特異的に誘導する。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、本開示の文脈におけるホスホチオエートオリゴヌクレオチドにとって重要なメカニズムは、様々なタンパク質に非特異的に結合する能力であると考えている(例えば、Yabukov et al.,1993;Stein et al.1995を参照)。したがって、いくつかの実施形態では、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、アンチセンス活性を有しないか、またはほとんど有しない。むしろ、本明細書に記載されるPCSK9のアミノ酸残基のいずれとも独立したヌクレオチド配列に結合する。S−オリゴヌクレオチドの設計を最適化して、このようなアンチセンス活性を示さないヌクレオチド配列を有するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを得る方法は、当業者に知られている。
【0134】
オリゴヌクレオチドの長さ、特にホスホロチオエートの結合数は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのヘパリン模倣活性に影響を及ぼすが、S−オリゴヌクレオチド内のヌクレオチド配列はヘパリン模倣活性に本質的に影響を及ぼさないと思われる。したがって、当技術分野で慣例となっているように、S−オリゴヌクレオチド中のホスホロチオエート結合の長さ及び数が最適化されていれば、どの配列でも使用することができる。
【0135】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの合成方法は、当技術分野で既知である。非限定的な例として、硫黄元素の二硫化炭素溶液をリン酸水素塩と反応させる方法もあれば、亜リン酸トリエステルをテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)または3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキシド(BDTD)のいずれかで硫化する方法もある。
【0136】
ホスホロチオエート結合は本質的にキラルである。硫化法では、各導入部位に異性体の混合物が供給され、長さnのオリゴの場合、2n−1の異性体が生じる。理論に束縛されるものではないが、任意の標準S−オリゴヌクレオチド調製物中の異性体混合物は、オリゴヌクレオチドの生物活性に影響を与えないと思われる。一実施形態では、S−オリゴヌクレオチドは異性体混合物である別の実施形態では、S−オリゴヌクレオチドは、1形態の異性体として提供される。
【0137】
オリゴヌクレオチドを分解抵抗性にする場合、ホスホロチオエート結合がオリゴヌクレオチド全体に存在する必要はない。どのような方法でホスホロチオエート結合の数を調節できるかを当業者は理解している。
【0138】
リポタンパク質代謝障害
本明細書では、医薬品として使用するための上記に定義される化合物も提供する。
【0139】
本明細書に開示される化合物は、リポタンパク質代謝障害を治療するために有用である。したがって、本明細書では、リポタンパク質代謝障害の治療を目的とする医薬品の製剤化のための、本明細書で定義される化合物の使用も提供する。また、治療を必要とする対象におけるリポタンパク質代謝障害の治療方法に使用するための本明細書で定義される化合物についても開示する。PCSK9の配列は、対象ごとに異なる場合があり、例えば、保存的置換を生じ得る個体特異的なSNPが一部の個体に見出される場合がある。このようなPCSK9変異体へのHSPGの結合を阻害する化合物もまた本発明の範囲内であることは理解されるであろう。
【0140】
リポタンパク質代謝障害は、脂質恒常性の障害及びそれに関連する障害であり、例として高コレステロール血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、シトステロール血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、メタボリックシンドローム、急性冠動脈症候群、黄色腫、高血圧症、狭心症、肥満、糖尿病、及び血管炎症を含む。このような障害は、例えば、リポタンパク質粒子の構造タンパク質、様々な種類のリポタンパク質を認識する細胞受容体、または脂肪を分解する酵素の欠損によって引き起こされ得る。このような欠損の結果として、脂質が血管壁に沈着することがある。
【0141】
高コレステロール血症(または脂質異常症)は、血液中に高レベルのコレステロールが存在する状態である。これは、高脂血症(脂質の血中濃度の上昇)及び高リポタンパク血症(リポタンパク質の血中濃度の上昇)の一形態である。
【0142】
高トリグリセリド血症は、トリグリセリドの血中濃度が高いことを示す。トリグリセリドのレベル上昇は、高コレステロール血症がない場合でもアテローム性動脈硬化症に関与し、心血管疾患の素因となる。トリグリセリドのレベルが非常に高い場合には、急性膵炎のリスクも高まる。
【0143】
シトステロール血症またはフィトステロール血症は、例えば高コレステロール血症、腱及び結節性黄色腫、アテローム性動脈硬化症の早期発生に至る、食物ステロールの過剰吸収及び胆汁排泄の減少を特徴とする希な常染色体劣性遺伝の脂質代謝障害である。
【0144】
アテローム性動脈硬化症(動脈硬化性血管疾患すなわちASVDとしても知られる)は、動脈壁が、生存している活性白血球(炎症を引き起こす)及び死細胞の残存物(コレステロール及びトリグリセリドを含む)の両方を含む白血球の浸潤及び蓄積の結果として肥厚する動脈硬化の特異的形態である。したがってアテローム性動脈硬化症は、動脈壁における白血球の慢性炎症性反応に起因して、動脈血管に影響を及ぼす症候群である。
【0145】
動脈硬化症は、動脈壁の肥厚、硬化、弾性損失を伴う病態である。
【0146】
アテローム硬化性動脈疾患、アテローム硬化性心血管疾患、冠状動脈性心疾患、または虚血性心疾患としても知られる冠動脈性心疾患は、最も一般的な種類の心臓疾患であり、心臓発作の原因である。この疾患は、心臓動脈の内壁に沿って蓄積されるプラークが、動脈の内腔を狭くし、心臓への血流を減少させることによって引き起こされる。
【0147】
メタボリックシンドロームはエネルギー消費と蓄積の障害であり、以下の5つの医学的病態:腹部(中心性)肥満、高血圧、空腹時血漿グルコースの上昇、高血清トリグリセリド、及び高密度コレステロールのレベル低下のうち3つが併存する場合に診断される。メタボリックシンドロームは、心血管疾患、特に心不全及び糖尿病の発症リスクを高める。メタボリックシンドロームはまた、メタボリックシンドロームX、心血管代謝症候群、症候群X、インスリン抵抗性症候群、リーベン症候群、及びCHAOS(オーストラリア)としても知られている。メタボリックシンドロームと糖尿病前症は、単に一連の異なったバイオマーカーによって診断されるだけで同じ障害であると見なされる。
【0148】
急性冠症候群は、冠状動脈中の血流低下により、心筋の一部が適切に機能できないか、または機能停止する病態群を指す。
【0149】
黄色腫は、脂質が皮膚内の大きな泡沫細胞に蓄積する脂質代謝異常の皮膚症状である。黄色腫は、高脂血症と関連性がある。
【0150】
動脈性高血圧と呼ばれることもある高血圧症または高血圧は、動脈内の血圧が上昇する慢性の医学的病態である。
【0151】
狭心症(またはアンギナ)は、多くが冠状動脈の閉塞または攣縮による心筋の虚血を原因とする、胸部の痛み、圧迫、または絞扼の感覚を指す。狭心症は、貧血、心不整脈、及び心不全に由来し得るが、その主因は冠動脈疾患である。
【0152】
肥満は、過剰な体脂肪が健康に悪影響を及ぼし得る程度まで蓄積し、寿命の短縮及び/または健康問題の増加、例えば、心臓疾患、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症、ある種の癌、及び変形性関節症などのリスク増加に至る医学的病態である。
【0153】
一般に糖尿病と呼ばれる真性糖尿病は、高血糖値が長期にわたって存在する代謝性疾患群である。糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病を含め、数種類が存在する。1型糖尿病は、膵臓にあるランゲルハンス島のインスリン産生β細胞の欠損を特徴とし、インスリン欠乏をもたらす。2型糖尿病は、インスリン抵抗性を特徴とし、インスリン分泌の相対的な低下を併発する場合がある。体内組織のインスリンに対する応答性の欠損には、インスリン受容体が関与すると考えられている。2型糖尿病と類似する妊娠糖尿病は、全妊娠の約2〜10%に起こる。
【0154】
いくつかの実施形態では、リポタンパク質代謝障害は、PCSK9の血漿レベルの異常と関係している。他の実施形態では、リポタンパク質代謝障害は、肝細胞のようなLDLR発現細胞表面でのLDLRレベルの異常と関係している。リポタンパク質代謝障害はまた、PCSK9の血漿レベルの異常、及び肝細胞のようなLDLR発現細胞表面でのLDLRレベルの異常と関係し得る。PCSK9の血漿レベルは、ヒトで30〜3000ng/mlの範囲である。PCSK9の異常な血漿レベルとは、健常人の平均値と有意に異なるPCSK9の血漿レベルを指す。いくつかの実施形態では、PCSK9の異常な血漿レベルは、健常人の平均値よりも有意に高い。同様に、例えば肝細胞表面での異常なLDLRレベルとは、健常人の平均値と有意に異なるLDLRレベルを指す。いくつかの実施形態では、肝細胞のようなLDLR発現細胞表面での異常なLDLRレベルは、健常人の平均値よりも有意に低い。
【0155】
いくつかの実施形態では、この障害は、LDL−Cレベルの異常、特にLDL−Cレベルの上昇を特徴とする。
【0156】
リポタンパク質代謝障害の治療
リポタンパク質代謝障害の治療を必要とする個体または対象は、リポタンパク質代謝障害に罹患している個体、罹患が疑われる個体、または罹患するリスクのある個体である。いくつかの実施形態では、治療を必要とする個体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0157】
好ましい実施形態では、リポタンパク質代謝障害は、脂質異常症、高コレステロール血症、及び冠動脈性心疾患からなる群から選択される。好ましい実施形態では、リポタンパク質代謝障害は、冠動脈性心疾患である。
【0158】
いくつかの実施形態では、治療は予防的である。
【0159】
いくつかの実施形態では、治療は、本明細書に開示される化合物を前記対象に投与するステップを含む。化合物は、体重1kg当たり0.1mg〜1000mgの1日投与量で投与することができる。したがって、いくつかの実施形態では、0.1mg〜1000mg/kg体重、例えば0.2〜900mg/kg体重、例えば0.3〜800mg/kg体重、例えば0.5〜700mg/kg体重、例えば1.0〜500mg/kg体重、例えば5〜400mg/kg体重、例えば10〜300mg/kg体重、例えば25〜250mg/kg体重、例えば50〜200mg/kg体重、例えば75〜150mg/kg体重、例えば100〜125mg/kg体重の1日投与量で化合物を投与する。いくつかの実施形態では、0.1mg〜1000mg/kg体重、例えば0.1〜10mg/kg体重、例えば10〜25mg/kg体重、例えば25〜50mg/kg体重、例えば50〜100mg/kg体重、例えば100〜250mg/kg体重、例えば250〜500mg/kg体重、例えば500〜750mg/kg体重、例えば750〜1000mg/kg体重の1日投与量で化合物を投与する。
【0160】
本明細書では、治療を必要とする個体における脂質異常症、高コレステロール血症、及び心臓冠動脈疾患からなる群から選択されるリポタンパク質代謝障害の治療方法であって、
i.前記個体から単離された組織サンプルまたは血漿サンプルを提供するステップと、
ii.前記組織中のLDLRのレベル、ならびに/または前記血漿サンプル中のPCSK9のレベル及び/もしくはLDL−Cのレベルを測定するステップと、
iii.ステップii)の発現レベルを対照組織サンプルまたは対照血漿サンプルのレベルと対比するステップと、
iv.治療計画を評価するステップと、
v.本明細書で開示される治療有効量の化合物を含む組成物を個体に投与するステップと、を含む方法も開示する。
【0161】
いくつかの実施形態では、この方法は、
i.前記個体から単離された組織サンプルを提供するステップと、
ii.前記組織のLDLRのレベルを測定するステップと;
iii.ステップii)の発現レベルを対照組織サンプルのレベルと対比するステップと、
iv.治療計画を評価するステップと、
v.本明細書で開示される治療有効量の化合物を含む組成物を個体に投与するステップと、を含む。
【0162】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療有効量の化合物を含む組成物は、前記組織の細胞表面でのLDLRのレベルが異常である場合に個体に投与される。いくつかの実施形態では、LDLRのレベルの異常は、LDLRのレベルの低下である。いくつかの実施形態では、組織サンプルは肝細胞のようなLDLR発現細胞を含んでおり、前記細胞表面でのLDLRのレベルが測定される。
【0163】
他の実施形態では、この方法は、
i.前記個体から単離された血漿サンプルを提供するステップと、
ii.前記血漿サンプル中のPCSK9のレベル及び/またはLDL−Cのレベルを測定するステップと、
iii.ステップii)の発現レベルを対照血漿サンプルのレベルと対比するステップと、
iv.治療計画を評価するステップと、
v.本明細書で開示される治療有効量の化合物を含む組成物を個体に投与することと、を含む。
【0164】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物を含む治療有効量の組成物は、血漿サンプル中のLDL−Cのレベル及び/またはPCSK9のレベルが異常である場合に個体に投与される。いくつかの実施形態では、LDL−Cのレベルの異常は、LDL−Cのレベルの上昇である。いくつかの実施形態では、組織サンプルは肝細胞のようなLDLR発現細胞を含んでおり、前記細胞表面でのLDLRのレベルが測定される。
【0165】
本明細書では、LDLRの分解を阻害する方法も開示し、前記方法は本明細書で定義される化合物を投与することを含む。特に化合物は、本明細書の上記に定義される一般式(I)の化合物であり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、化合物はフォンダパリヌクスなどのヘパリン類似体または模倣体である。別の実施形態では、化合物はペントサンである。更に別の実施形態では、化合物はスラミンである。更に別の実施形態では、化合物は硫酸デキストランである。更に別の実施形態では、化合物は、ダルテパリンナトリウムまたはチンザパリンナトリウムなどの低分子量ヘパリンである。更に別の実施形態では、化合物は、本明細書の上記に定義されるホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである。
【0167】
医薬組成物
本明細書では、本明細書で定義される少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物についても開示する。いくつかの実施形態では、組成物は本明細書で開示される1種の化合物を含む。他の実施形態では、組成物は、2種の化合物またはそれ以上、例えば3種の化合物またはそれ以上、例えば4種の化合物またはそれ以上、例えば5種の化合物またはそれ以上を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、組成物は以下のうち少なくとも1つを更に含む:
−PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体;
−スタチン;
−コレスチラミン
−コレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミブ。
【0169】
したがって、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される少なくとも1種の化合物と、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体、スタチンまたはコレスチラミンからなる群から選択される少なくとも1つの追加化合物とを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体とを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、スタチンとを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、コレスチラミンとを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体と、スタチンとを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体と、コレスチラミンとを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、コレスチラミンと、スタチンとを含む。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に定義される1種の化合物と、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体と、スタチンと、コレスチラミンとを含む。
【0170】
医薬組成物は場合により、1種以上の薬学的に許容される担体賦形剤を含んでもよく、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 1995,edited by E.W.Martin,Mack Publishing Company,19th edition,Easton,Paに記載されている従来技術によって調剤することができる。組成物は、例えばカプセル、錠剤、エアロゾル、溶液、懸濁液、または局所適用などの従来形態であってもよい。通常、本発明の医薬組成物は、例えば静脈内注射または皮下注射による非経口投与用に処方することができ、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量注入の単位用量形態で、または防腐剤を添加した多回用量容器で提供することができる。組成物は、例えば水性ポリエチレングリコール溶液など、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳濁液のような形態をとってもよい。組成物は、経口摂取に適したものであってもよい。これは、小分子組成物に特に適している。油性または非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、これには保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、安定化剤、及び/または分散剤などの処方剤が含有されていてもよい。あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で構成するために、滅菌固体の無菌単離によって、または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってもよい。非経口製剤に有用な油としては、石油、動物性油、植物性油、または合成油が挙げられる。このような製剤に有用な油の具体例としては、ラッカセイ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ワセリン、及び鉱油が挙げられる。非経口製剤での使用に適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは好適な脂肪酸エステルの例である。非経口製剤は通常、溶液中に約0.0001〜約25重量%、例えば約0.5〜約25重量%の活性成分を含有する。防腐剤及び緩衝剤を使用してもよい。このような組成物には、注射部位の刺激を最小限にする、または除去するために、約12〜約17の親水性親油性比(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤が含有されている場合がある。このような製剤中の界面活性剤量は通常、約0.000001〜約15重量%、例えば約0.000001〜約5重量%、または約5〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えばソルビタンモノオレエート、及びプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される、疎水性塩基とエチレンオキシドの高分子量付加物などが挙げられる。非経口製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量または多回用量密封容器で提供することができるほか、注射用として使用直前に例えば水などの滅菌液体賦形剤の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0171】
しかしながら、最終的に関連組織を標的とするように薬剤を血流に導入するため、本発明による薬物送達の主な経路は非経口である。
【0172】
薬剤はまた、生体活性物質が供給されるように、動物の任意の粘膜、例えば鼻、膣、眼、口、生殖器官、肺、消化管、または直腸、好ましくは鼻または口の粘膜を通過するように投与してもよい。
【0173】
好ましい実施形態では、本発明の薬剤は、非経口的に、すなわち静脈内、筋肉内、脊髄内、皮下、鼻腔内、直腸内、膣内、または腹腔内投与により投与される。皮下及び筋肉内形態の非経口投与が一般に好ましい。このような投与に適した剤形は、従来技術によって調製することができる。化合物はまた、鼻腔内投与及び経口吸入投与による吸入によって投与してもよい。このような投与に適した、エアロゾル製剤または定量吸入器などの剤形は、従来技術によって調製することができる。
【0174】
一実施形態では、本発明による医薬組成物は、注射などによる非経口投与に合わせて製剤化される。
【0175】
更なる実施形態では、本発明による医薬組成物は、静脈内、筋肉内、脊髄内、腹腔内、皮下、ボーラスまたは連続投与に合わせて製剤化される。
【0176】
投与の速度及び頻度は、個々の症例に応じて医師が決定してよい。一実施形態では、投与は30分〜24時間間隔で、例えば1〜6時間の間隔で、例えば1日1回行われる。
【0177】
治療の継続期間は、疾患の重症度に応じて変化し得る。一実施形態では、治療の継続期間は、1日〜28日、例えば2日〜25日、例えば5日〜20日、例えば7日〜15日である。慢性症例の場合、治療の継続期間は、生涯にわたる場合がある。
【0178】
投与量は患者の特性ならびに投与の手段及び様式に応じて、担当医師が決定することができる。本発明の一実施形態では、本明細書の上記に定義される医薬組成物の活性化合物の投与量は、0.1mg〜1000mg/kg体重である。
【0179】
投与量は、ボーラス投与として、または連続投与として投与されてもよい。ボーラス投与に関して、医薬組成物は、30分〜24時間間隔で、例えば1日1回投与してもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、組成物のpHはpH4〜pH10である。
【0181】
いくつかの実施形態では、組成物は経口投与に合わせて製剤化される。
【0182】
いくつかの実施形態では、組成物は非経口投与に合わせて製剤化される。特定の実施形態では、非経口投与は注射によるものである。このような非経口投与は、静脈内、筋肉内、脊髄内、腹腔内、皮下、ボーラス、または連続投与であり得る。
【0183】
抗体の選択方法
本明細書では、PCSK9(配列番号1)のHSPG結合部位内のエピトープを特異的に認識して結合する抗体の選択方法であって、
i.配列番号1のアミノ酸残基78〜167からなるドメインのうちの少なくとも1個のアミノ酸残基、例えば配列番号1のアミノ酸残基78〜167からなるドメインのうちの、例えば少なくとも5個、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも20個、例えば少なくとも25個、例えば少なくとも30個、例えば少なくとも35個、例えば少なくとも40個、例えば少なくとも45個、例えば少なくとも50個、例えば少なくとも55個、例えば少なくとも60個、例えば少なくとも65個、例えば少なくとも70個、例えば少なくとも75個、例えば少なくとも80個、例えば少なくとも全てのアミノ酸を含むPCSK9のポリペプチド断片、またはPCSK9のポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドを哺乳動物に投与するステップと;
ii.前記ポリペプチドを認識する抗体を同定して選択するステップと、
iii.競合ELISAアッセイにおいて、前記選択された抗体が1種以上の対照抗体を置換できるかを決定するステップと、を含む前記方法も開示する。
【0184】
PCSK9のポリペプチド断片またはPCSK9のポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドの投与方法は、当技術分野において既知であり、これには哺乳動物の免疫化またはファージディスプレイが含まれる。
【0185】
いくつかの実施形態では、この方法は更に、前記対照抗体の少なくとも1つを置換できる抗体を選択するステップを含む。対照抗体とは、PCSK9またはその断片に結合することができる抗体である。
【0186】
競合ELISAにおいて、前記選択された抗体が1つ以上の対照抗体と置換できるかを決定するステップには、
i.前記対照抗体によって認識されるエピトープを含むPCSK9またはその断片を提供するステップと;
ii.試験抗体及び前記対照抗体を前記PCSK9またはその断片に付加するステップであって、試験抗体または対照抗体のいずれかが、検出可能な標識で標識されているか、または両方の抗体が、異なった検出可能な標識で標識されているステップと;
iii.PCSK9での検出可能な標識の存在を検出するステップと、を含み、
それにより、試験抗体が対照抗体を置換できるかを検出する。
【0187】
この方法は更に、抗体を試験して抗体がLDLRの分解を阻害できるかを判定することと、LDLRの分解を阻害できる抗体を選択することとを含み得る。
【0188】
本明細書では、ヘパリンなどのHSPGのPCSK9への結合を阻害することができるペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体の選択方法であって、
i.複数のペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を提供するステップと;
ii.前記複数のペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を、肝細胞由来細胞株などのLDLR発現細胞株に由来する細胞と共に培地中でインキュベートするステップと;
iii.前記培地中のPCSK9のレベル及び/または前記細胞のLDLRのレベルを測定するステップと;
iv.ステップiiiで測定したとき、PCSK9及び/またはLDLRを最も高レベルで生じさせるペプチドまたはヘパリン類似体もしくは模倣体を選択するステップと、を含む前記方法も開示する。
【0189】
いくつかの実施形態では、PCSK9のレベルは、細胞表面から脱離するPCSK9のレベルである。
【0190】
本明細書に開示される化合物を結合できる化合物
本明細書では、上記で定義される化合物と選択的に結合することができる化合物についても開示する。いくつかの実施形態では、上記で定義される化合物と選択的に結合することができる化合物は抗体である。
【0191】
本明細書に開示される抗体の作製方法本明細書で定義される抗体の作製方法であって、前記方法は
i.PCSK9のHSPG結合ドメインを含むタンパク質、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその断片もしくはその機能的等価物を哺乳動物に投与するステップと;
ii.PCSK9(配列番号1)に結合できる場合に前記抗体を選択するステップと;
iii.前記突然変異したPCSK9がHSPGに結合できない場合、突然変異したPCSK9に結合できない場合に前記抗体を選択するステップと、を含む。
【0192】
PCSK9のHSPG結合ドメインを含むタンパク質、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはその断片もしくはその機能的等価物を投与する方法は、当技術分野において既知であり、これには哺乳動物の免疫化またはファージディスプレイが含まれる。
【0193】
いくつかの実施形態では、前記突然変異したPCSK9は、93位、96位、97位、104位、105位、136位、139位、165位、または167位の少なくとも1つで突然変異している。いくつかの実施形態では、突然変異はアラニン置換である。いくつかの実施形態では、93位、96位、97位、104位、105位、136位、139位、165位、または167位のアミノ酸残基の2つ以上が突然変異している。
【0194】
特定の実施形態では、突然変異したPCSK9は、突然変異体R93A、R96A、R97A、R104A、R105A、K136A、H139A、R165A、またはR167Aからなる群から選択され、この位置は配列番号1に定められているPCSK9の位置である。特定の一実施形態では、変異したPCSK9は、PCSK9のR93位、R96位、R97位、R104位、R105位、及びH139位で突然変異している。好ましくは、突然変異はアラニンへの突然変異である。
【0195】
いくつかの実施形態では、PCSK9のHSPG結合ドメインを含むタンパク質、またはその断片もしくはその機能的等価物が投与される哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモットのような齧歯動物である。
【0196】
この方法は更に、前記哺乳動物から抗体産生細胞を単離することと、前記抗体産生細胞からハイブリドーマ細胞を調製することと、前記ハイブリドーマを培養することと、前記ハイブリドーマによって産生される抗体を単離することとを含み得る。ハイブリドーマ細胞から抗体を単離する方法は、当技術分野で既知である。
【0197】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に開示される抗体を作製するためのものであり、前記抗体をコードする核酸構築物で宿主細胞をトランスフェクトするステップを含む。抗体は、組換え細胞によって作製してもよい。好適な組換え細胞は、細菌及び真核微生物を含む群から選択された微生物であり得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、微生物は、Escherichia coli、Lactobacillus zeae、Bacillus subtilis、Streptomyces lividans、Staphylococcus carnosus、Bacillus megaterium、及びCorynebacterium glutamicumを含む群から選択される細菌である。
【0199】
他の実施形態では、微生物は、Saccharomyces cerevisiae、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombe、Yarrowia lipolytica、及びKluyveromyces lactisを含む群から選択される真核微生物である。
【0200】
また宿主細胞は、植物細胞及び動物細胞を含む群から選択することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Arabidopsis sp.、エンドウマメ、イネ、トウモロコシ、タバコ、オオムギ、またはその種子を含む群から選択される植物細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣、マウス、及びヒトを含む群から選択される哺乳動物に由来する動物細胞である。他の実施形態では、動物細胞は、昆虫または鳥類細胞株に由来する。
【0201】
この方法は、抗体を同定及び選択するステップを更に含み得る。
【実施例】
【0202】
実施例1:PCSK9内のHSPG結合部位のマッピング。
我々は、PCSK9(PDB:2PMW)の静電表面を調べ(図2−2(B))、PCSK9プロドメインに位置する6つの表面露出した塩基性残基からなる推定ヘパリン結合部位を同定した。結合部位は、ヘパリン五糖(SANORG)の硫酸基と完全な対合を示す、93位、96位、97位、104位、及び105位のアルギニン(R)残基、ならびに139位のヒスチジン(H)によって形成されている(Herbert et al.,1996)(Herbert et al.,1996)(図2−2(B)及び2−3(C))。この結合部位は、PCSK9の不活性な触媒ドメインに位置するLDLR結合表面の反対側に存在する(図2−1(A))。PCSK9の共結晶構造にヘパリン断片がドッキングしてLDLR(PDB:3P5B)と複合体化することは、HSPG結合によって、以降のPCSK9:LDLR複合体形成が可能になることを示唆している(図3−3(C))。
【0203】
実施例2:ヘパリナーゼ処理は、in vitroでのPCSK9細胞表面の会合を阻害し、in vivoでのPCSK9誘導性分解からLDL受容体を保護する。我々はHSPGがPCSK9の取り込みに関与している可能性があると推測した。そこで、PCSK9を安定発現するヒト肝細胞由来HepG2細胞をヘパリナーゼIで処理した。酵素ヘパリナーゼIは、ウロン酸とD−グルコサミン間の1,4位のO結合でヘパラン硫酸GAG鎖を切断し、それによって細胞表面のヘパラン硫酸鎖を除去する。
【0204】
PCSK9で安定的にトランスフェクトされたHepG2細胞をカバースリップ当たり50.000細胞ずつ播種して一晩インキュベートした後、PBS(0.0002UN/ml)中のヘパリナーゼI(Sigma Aldrich/H2519)またはPBS単独を添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートした後、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、一次抗体及び二次抗体を用いて非透過性細胞を免疫染色した。細胞核はHoechst色素(Sigma Aldrich)で可視化した。画像はZeiss LSM780で取得した。
【0205】
実際に、処理は表面PCSK9染色の強度に顕著な減少をもたらしたが、これは、HSPGがPCSK9細胞の結合に重要であることを示唆している(図2−4(D))。
【0206】
in vivoでのPCSK9活性に対する、ヘパラン硫酸GAGの酵素的除去の効果を試験するため、10〜12週齢の雄BALB6/cJRjマウスに尾静脈カテーテル経由でヘパリナーゼI(30U)を注入して投与する5分前にPCSK9(10μg)を注射した。対照マウスでは、ヘパリナーゼ注射及び/またはPCSK9注射の代わりに0.9%生理食塩水を注射した。ヘパリナーゼ注射中に、マスク経由でイソフルランを連続投与してマウスに軽麻酔した。注射後1時間でマウスを犠牲死させ、肝組織サンプルを採取して瞬間凍結した後、ウェスタンブロットによるタンパク質の抽出及びLDLRレベルの評価を行った(図10−1(A))。ヘパリナーゼIの注射は、PCSK9誘導性分解からLDLRを完全に保護したが、これは、HSPGがin vivoでのLDLRのPCSK9誘導性分解に役立つことを示している(図10−1(A)及び(B))。
【0207】
PCSK9とヘパラン硫酸GAG鎖との間の直接的な相互作用を検証するために、我々はヘパリンと共有結合されたセファロースビーズを用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いた。
【0208】
PBS中の5mlのHiTrapヘパリンHPカラム(GE Healthcare)に、精製したPCSK9を充填した。カラムをAkta Primeに接続し、5カラム容積分の10mMのNaH2PO4(pH7.4)で洗浄した。PCSK9を10mMのNaH2PO4(pH7.4)及び2MのNaClの直線勾配法を用いて溶出し、画分をSDS−PAGEにより分析した。測定した導電率に基づいて、溶出プロファイルを、変換係数0.065mS/mMのNaClを用いてNaCl濃度の関数に変換した。PCSK9はヘパリンカラムに保持され、NaCl濃度約500mMで溶出された(図2−4(E))が、これはヘパリンとの強力かつ高度に特異的な相互作用を示している。
【0209】
別の実験では、HepG2細胞からの馴化培地を、10mMのNaH2PO4(結合緩衝液)中のヘパリンセファロースCL−6Bビーズ(GE Healthcare)と共にインキュベートした。ローターにて4℃で一晩インキュベートした後、ビーズを結合緩衝液で洗浄し、NaCl濃度を増加させながらヘパリン結合タンパク質をバッチ溶出した。インプット画分、フロースルー画分、及び溶出画分中のPCSK9をウェスタンブロッティングにより評価した。
【0210】
我々は、HepG2細胞の馴化培地からの内因性PCSK9もまた、ヘパリンセファロースに結合し、十分に確立されたHSPG結合タンパク質であるApoEのものと同様の溶出プロファイルを示すことを見出した(図3−3(D))。
【0211】
実施例3:PCSK9/HSPG相互作用にとって重要な残基の同定
PCSK9/HSPG相互作用に関与する重要な残基を更に絞り込むために、HSPG結合モチーフ内に点突然変異を有するPCSK9変異体をクローニングして発現させた。PCRにより突然変異体を導入して、3D構造モデルのドッキングによって同定された荷電アミノ酸アルギニン(Arg/R)、リシン(Lys/K)、及びヒスチジン(His/H)をアラニン(Ala/A)のような中性残基によって置換した。
【0212】
ヒト野生型及び以下のアラニン置換変異体を分析した:
野生型PCSK9(配列番号1)
突然変異体R93
突然変異体R96R97
突然変異体R104R105
突然変異体R165R167
突然変異体R93R104R105H139A
突然変異体R93R96R97R104R105H139
【0213】
不適切に折り畳まれたPCSK9は一般にプロペプチドが切断されず、それにより小胞体に保持されるため、PCSK9突然変異体のプロセッシング及び分泌をモニターすることによって、フォールディングに誤りがないか評価することができる。proPCSK9の成熟タンパク質へのプロセッシング及び成熟PCSK9変異体の分泌を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の一過性トランスフェクションと、それに続く細胞溶解物及び周辺培地中のPCSK9のウェスタンブロット分析により評価した(図3−1(A))。
【0214】
PCSK9突然変異体タンパク質がヘパリンに結合する能力を、アフィニティークロマトグラフィーと、それに続く抗PCSK9抗体を用いたウェスタンブロッティングにより評価した。目的のPCSK9変異体でトランスフェクトしたCHO細胞からの馴化培地を、10mMのNaH2PO4(結合緩衝液)中のヘパリンセファロースCL−6Bビーズ(GE Healthcare)とインキュベートした。ローターにて4℃で一晩インキュベートした後、ビーズを結合緩衝液で洗浄し、NaCl濃度を増加させながらヘパリン結合タンパク質をバッチ溶出した。インプット画分、フロースルー画分、及び溶出画分中のPCSK9をウェスタンブロッティングにより評価した。
【0215】
突然変異体R93、R96R97、及びR104R105は、野生型PCSK9または突然変異体R165R167と比較してヘパリンに対して低親和性を示し、突然変異体R93R104R105H139及びR93R96R97R104R105H139はヘパリンに結合せず、フロースルーのみで検出された(図3−2(B))。
【0216】
実施例4:突然変異したHSPG結合ドメインを有するPCSK9変異体は、LDL受容体分解を誘導できない
精製したPCSK9変異体を細胞アッセイで試験し、野生型PCSK9と比較したLDLRの分解を誘導する能力を試験した。LDLR分解の誘導を、HepG2細胞と、野生型PCSK9(WT)または上記のPCSK9突然変異体とのインキュベーションによって分析し、LDLRレベルをウェスタンブロッティングにより評価した。HepG2細胞を、12ウェルプレートに1ウェル当たり250.000細胞の密度で播種した。一晩のインキュベーション後、培地を、PCSK9WTまたは突然変異体R93R96R97R104R105H139を含有する新鮮な培地と交換した。18時間のインキュベーション後に細胞を採取して溶解し、LDLRレベルをウェスタンブロッティング及びデンシトメトリーによる定量化によって評価した。
【0217】
突然変異体R93R96R97R104R105H139とインキュベートした細胞のLDLRレベルは、WTPCSK9とインキュベートした細胞で測定されたレベルと比較して顕著に(約2倍)高かった(図4(A)及び(B))が、これは、HSPG結合ドメイン内の突然変異がPCSK9誘導性LDLR分解を減少させたことを示している。
【0218】
実施例5:ヘパリン及びヘパリン類似体は、PCSK9:LDLR複合体の形成を妨げる。
近接ライゲーションアッセイ(PLA)を用いて、外因的に添加されたヘパリンが内在性PCSK9の結合を細胞表面のHSPGと競合することで、PCSK9:LDLR複合体の形成を妨げるかどうかを試験した(Soderberg et al.,2006)。
【0219】
PLA(DuolinkII、Olink Bioscience)は、抗PCSK9(R&D systems/AF3888)及び抗LDLR(Abcam/ab52818)を一次抗体として用いて、製造業者のプロトコルに従って実施した。互いの距離が30nm以内に位置するPCSK9及びLDLRは、オリゴヌクレオチド複合体化二次抗体によって可視化する。この二次抗体は、環形成オリゴヌクレオチドとハイブリダイズされ、それによってローリングサークル増幅をプライミングする。増幅されたDNAは、相補的な蛍光標識オリゴヌクレオチドの添加によって可視化される(Soderberg et al.,2006)。
【0220】
このアッセイを非透過性HepG2細胞の内因性細胞表面PCSK9及びLDLRに対して用い、PCSK9:LDLR複合体のクラスター存在量を観察した(図5−2(D))。これは、ヘパリンとのインキュベーション時に数及び強度の両面で顕著に減少した。このことは、HSPGへのPCSK9結合が、以降の細胞表面LDLRとの複合体形成に役立つことを示唆している。
【0221】
我々は、HepG2細胞をヘパリン(50U/ml)とインキュベート(18時間)すると、LDLRタンパク質のレベルが2〜3倍上昇し(図5−1(A)〜(B))、また低分子量ヘパリンの2種の治療用製剤で同様の効果が観察されることを見出した(図8−1(A))。
【0222】
ヘパリン処理したHepG2細胞における細胞内LDLRの増加は用量依存的であり、培地中のPCSK9の顕著な増加も伴った(図6(B))。PCSK9濃度は、R&D SystemsのHuman(DPC900)Quantikine ELISAキットを使用して製造業者のプロトコルに従って測定した。
【0223】
最も高濃度のヘパリンでのPCSK9を除いて、mRNAに変化が観察されなかったため、ヘパリンによって誘導される細胞内LDLR及び細胞外PCSK9の増加は、翻訳後レベルで発生した(図6(C))。
【0224】
iScript cDNA合成キット(BIORAD)による0.5μgのRNA鋳型からのcDNA合成に続いて、NucleoSpin RNA調製キット(Macherey−Nagel)を使用してHepG2細胞からのRNA抽出を行った。リアルタイムPCRをiQ SYBR Greenスーパーミックス及びiTaqポリメラーゼを用いて、以下のプライマーを使用して行い、LDLR(フォワードプライマー5’ACGGCGTCTCTTCCTATGACA3’(配列番号22)、リバースプライマー5’CCTTGGTATCCGCAACAGA3’ (配列番号23))、PCSK9(フォワードプライマー5’CCTGGAGCGGATTAC−CCCT3’ (配列番号24)、リバースプライマー5’CTGTATGCTGGTGTCTAGGAGA3’ (配列番号25))、及びGAPDH(フォワードプライマー5’ACAACTTTGGTATCGTGGAAGG3’ (配列番号26)、リバースプライマー5’GCCATCACGCCACA−GTTTC3’ (配列番号27))の転写物を検出した。
【0225】
我々は、PCSK9のmRNAレベルが2倍の上昇であるにもかかわらず、LDLRのレベルが約2.5倍上昇したことから明らかなように、25U/mlのヘパリンが、PCSK9活性に効果的に拮抗することを見出した(図8−1(B))。
【0226】
ヘパリン(50U/ml)と24時間インキュベートしたHepG2細胞を、ウェスタンブロッティングによって評価したところ、LDLRレベルの上昇を示した(図5−1(A))。また、LDLRレベルをデンシトメトリー(n=4)によって定量化した(図5−1(B))。ヘパリンとのインキュベーションはまた、ELISAによって測定したところ、培地中のPCSK9レベルを上昇させた(図5−1(C))。
【0227】
製造業者のプロトコルに従って、PCSK9/LDLR結合アッセイ(BPS Bioscience)によって分析したところ、ヘパリンはPCSK9とLDLRとの間の直接的な相互作用を妨害しない(図6(A))。簡潔には、LDLR細胞外ドメインでコーティングしたマイクロタイタープレートウェルを、ヘパリン(5または50U/ml)、またはPCSK9(BPS Bioscience#71207)のLDLR結合ドメインに対して惹起する抗PCSK9抗体の存在下で、ビオチン化PCSK9とインキュベートした。洗浄後、ウェルを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジンとインキュベートし、HRP基質の添加及び化学発光マイクロプレートリーダーを使用したシグナルの評価により、PCSK9のLDLR細胞外ドメインへの結合を評価した。
【0228】
PCSK9とLDLRとの間の相互作用が、ヘパリンの添加による影響を受けなかったことは、ヘパリンのPCSK9への結合が、PCSK9と細胞表面HSPGとの相互作用を防止することによってLDLRの分解を減少させることを示している。
【0229】
フォンダパリヌクス(Arixtra)(25、100、または250μg/ml)と24時間インキュベートしたHepG2細胞は、ウェスタンブロッティングによって評価したところ、LDLRレベルの上昇を示した(図7)。この結果は、フォンダパリヌクスのようなヘパリン類似体のPCSK9への結合が、PCSK9と細胞表面HSPGとの相互作用を防止することによってLDLR分解を減少させることを示している。
【0230】
実施例6:ヘパリン模倣体は、PCSK9:LDLRの相互作用を妨げる。
過去100年間にヘパリンの構造を模倣する複数の分子が、多数の治療用途のために開発されており、そのうちの7つが現在臨床使用されている。これらはヘパリン模倣体と呼ばれ、様々なオリゴ糖、オリゴヌクレオチド、及びナフタレン誘導体を含む多様な化学クラスに属している。出願人は、ヘパリン模倣体のサブセットが、HepG2細胞中のPCSK9に結合してLDLRを増加させる能力について試験した(図9−1〜9−7)。
【0231】
マイクロスケール熱泳動(MST)(Jerabek−Willemsen et al.,2011)を用いて、PCSK9とリガンド(スラミン、硫酸デキストラン5000、デキストラン5000、硫酸ペントサン、及びS−dC−36)との平衡結合親和性を評価した。MO−L003 Monolith Blue−NHS標識キット(NanoTemper Technologies)を用いてPCSK9を標識し、1:1モル比のタンパク質対色素の標識効率を達成した。PCSK9は最終濃度100nMで使用した。非標識結合パートナーを、(PBS+0.05%Tween−20中で)1:1希釈で滴定した。最高濃度は、スラミンの場合は15.4mM、デキストラン硫酸5000の場合は2.3mM、デキストラン5000の場合は2.3mM、硫酸ペントサンの場合は16.3mM、及びS−dC−36の場合は250μMであった。MST測定は、20%LED及び80%MST駆動力を用いたMonolith NT.115装置(NanoTemper Technologies)の標準処理キャピラリー管(NanoTemper Technologies)で実施した。レーザーのオン/オフ時間はそれぞれ5秒と35秒であった。陰性対照は、前述と同じ条件下で、16本全てのキャピラリー管において、MST緩衝液中の100nMの標識PCSK9を用いて実施した。スラミン、硫酸デキストラン5000、及びS−dC−36では、80%MST駆動力での温度ジャンプ相から、硫酸ペントサンでは、80%MST駆動力での熱泳動+温度ジャンプ相から結合曲線を得た。各結合相手に対して、シグモイド用量反応曲線をGraphPad Prism 6を用いてフィッティングして平均KD値を得た。高濃度のスラミンの存在下でPCSK9の蛍光消光が観察されたため、MST装置で分析する前に、PCSK9を10%SDSで前処理し、次にサンプルを90℃で15分間加熱することにより変性試験を実施した。これにより消光効果が排除され、非変性条件下でのPCSK9の蛍光消光が実際のリガンド結合事象に起因することが示された。
【0232】
MSTを用いて測定したところ、硫酸化オリゴ糖硫酸デキストラン(図9−2(C))及び硫酸ペントサン(図9−4(F))はいずれも、それぞれ179.5μM及び381.3μMの親和性でPCSK9と直接結合して、細胞内LDLRの用量依存的増加をもたらし(図9−1(A)〜(B)及び図9−3(D)〜(E))、ビヒクル対照と比較して約400%のプラトーに達し、このアッセイにおけるスタチンの最大効果よりも顕著に優位であった。非硫酸化デキストランがPCSK9に対する親和性を示さなかったことから、この相互作用は硫酸基の存在に依存していた。アフリカ睡眠病における抗寄生虫薬である、硫酸化ナフタレン誘導体スラミンは、190μMの親和性でPCSK9に結合し(図9−5(H))、最大15倍のLDLRの増加をもたらし(図9−1(A)、9−5(G))、蛍光標識されたLDL粒子の細胞内取り込みの増加も伴った(図12)。更に出願人は、36量体の一本鎖DNA分子を試験し、これが4.8μMのKDでPCSK9に結合し(図9−7(K))、この濃度範囲で強力な阻害効果を示すことを見出した(図9−6(I)〜(J))。
【0233】
実施例7:低分子量ヘパリンの治療用製剤は、PCSK9誘導性分解からLDLRを保護する。
低分子量ヘパリン製剤フラミン(1〜100U/ml)またはInnohep(1〜100U/ml)と一晩インキュベートしたHepG2細胞は、ウェスタンブロッティングによって評価したところ、LDLRレベルの上昇を示した(図8−1(A))。フラミン及びInnohepの効果は、ヘパリン(図5−1(A))及び五糖類Arixtra(図7)の効果に匹敵した。
【0234】
これらの結果は、ヘパリン:PCKS9複合体を鋳型として用いた構造ベースの薬物設計が、小分子PCSK9阻害剤の開発において実現可能なアプローチであることを示している。
【0235】
実施例8:ヘパリンは、in vivoでのPCSK9誘導性分解からLDLRを保護する。
マウス(BALB6/cJRj)に、10μgのヒト組換えPCSK9を単独で、またはヘパリン(50U)との併用で単回静脈内投与(尾静脈)を施した。注射後1時間でマウスを犠牲死させ、肝組織サンプルを採取した。膜タンパク質製剤中のLDLRのウェスタンブロット分析では、PCSK9のみを注射したマウスと比較して、ヘパリンと同時注入したマウスの肝LDLRは有意に高いレベルを示した(図8−1(B)、図8−2(C)に定量化)。
【0236】
これらの結果は、PCSK9:ヘパリンの相互作用が、小分子PCSK9阻害剤開発の枠組みを提供し得ることを示している。
【0237】
実施例9:PCSK9のHSPG結合に対するポリクローナル抗体は、PCSK9活性を阻害する
ポリクローナル抗体は、ヒトHSPG結合ドメインを含むキメララットPCSK9をコードするDNAで3匹のラットを免疫化することによって作製した。免疫沈降によって、免疫動物から得た血清サンプルをPCSK9結合抗体について試験した。
【0238】
1μlの免疫または免疫前のラット血清からの抗体を、GammaBindビーズ(GE Healthcare)に固定化し、以前に記載されているように(Gustafsen et al.,2014)、PCSK9で一過性トランスフェクトされた代謝標識HEK293の馴化培地からの35SヒトPCSK9の沈降(4℃で3時間)に使用した。0.1%Triton X100を含有するTBS中で3回洗浄した後、沈降したタンパク質を、20mMのジチオエリトリトール(DTE)を補充したNUPAGEサンプル緩衝液中でサンプルを煮沸することにより溶出させ、SDS−PAGEにより分離し、蛍光イメージングにより可視化した。
【0239】
全動物からの免疫血清が、35−S標識PCSK9を特異的に沈降した。免疫前動物由来の血清を用いて実施した対照免疫沈降では、PCSK9の沈降は検出されなかった(図8−3(D))。
【0240】
免疫及び免疫前の血清サンプルから精製したIgGを、PCSK9誘導性のLDLR分解のin vitroモデルを用いて試験したところ、免疫IgGとインキュベートしたHepG2細胞がLDLRレベルの顕著な上昇を示した(図8−3(E))。この結果は、PCSK9のHSPG結合ドメインを標的とする抗体がPCSK9活性を効率的に阻害することを示している。
【0241】
実施例10:PCSK9のHSPG結合ドメインに対するPCSK9阻害mAbの作製
PCSK9のHSPG結合ドメインに対するモノクローナル抗体(mAb)は、Aldevron Freiburg,Germanyによって、ヒトHSPG結合ドメインを含むキメララットPCSK9をコードするDNAで3匹のラットを免疫化することにより作製した。ハイブリドーマクローンを産生するモノクローナル抗体は、ラット脾臓リンパ球とミエローマ細胞との融合及びそれに続く抗体産生細胞の単細胞サブクローニングの後、ハイブリドーマ上清を含むmAbを回収することにより得た。GammaBindビーズ(GE Healthcare)に固定化されたmAb産生ハイブリドーマクローンからの500μlの馴化培地を用いた、35SヒトPCSK9の免疫沈降によって個々のmAbを試験した。我々は、試験した26のmAbのうち16が、天然の35SヒトPCSK9を特異的に沈降することを見出した(図8−4(F))。
【0242】
HepG2細胞におけるPCSK9結合mAbの更なる機能試験は、12のクローンがPSCK9活性を阻害し、LDLRの細胞内レベルを約2倍上昇させることを示した(図8−5(G))。
【0243】
この12のクローンを試験して、それらがR93R96R97R104R105H139のPCSK9突然変異体に結合できるかどうかを調べた(図8−5(H))。LDLRの細胞内レベルを約2倍上昇させることができたクローンのうち4つは、この突然変異体に結合できなかった(図8−4(F)、8−5(G)、及び8−5(H)のmAb 1G8、5E11、8HA、及び10E5を比較)。更に試験したところ、mAb 1G8及び5E11がWT PCSK9のみを認識するのに対し(図8−6(I))、mAb 10E5はWT PCSK9ならびに突然変異体R96R97及びR104R105を沈降することを示した(図8−6(I))。この結果は、これらの3つのクローンがHSPG結合ドメインに特異的に結合することを示している。
【0244】
クローン5E11及び8HAを配列決定した(配列番号2、4、6、及び8)。
【0245】
実施例11:臨床試験のためのヒト化モノクローナル抗体の作製。
ラットPCSK9とヒトPCSK9のHSPG結合モチーフで構成されるキメラタンパク質をコードするDNAでラットを免疫化することにより、モノクローナル抗体を作製する。候補抗体は、ELISAアッセイにおいてヒトPCSK9への結合をスクリーニングすることにより検出する。候補抗体を、エピトープ、ヒトPCSK9に対する親和性、及び天然のPCSK9の認識に関して特性決定する。選択した候補抗体がPCSK9機能を阻害する能力をHepG2細胞培養アッセイで試験し、最も有望な抗体を、内因性のマウスPCSK9プロモーターの制御下でヒトPCSK9を発現するトランスジェニックマウスにおいて試験する。投与時に、肝臓中のLDL受容体レベル及び血漿中のコレステロールを分析することにより、抗体のPCSK9中和作用を評価する。リード候補はヒト化して、臨床試験用に調製する。
【0246】
実施例12:PCSK9のHSPG結合に対する抗体を用いた、LDLコレステロールの低下。
LDLコレステロールレベルの上昇した患者に、ヒトPCSK9中のHSPG結合部位に対するヒト化抗体からなる活性化合物を処方する。患者は1〜28日の間隔で25〜500mgの組成物の皮下注射を受ける。LDL−Cレベルの顕著な低下が観察される。このデータは、ヒトPCSK9のHSPG結合部位に対する抗体の非経口投与が、対象におけるLDL−Cレベルの低下をもたらし得ることを示す。
【0247】
実施例13:スタチン治療に反応しない患者のLDLコレステロールの低下。
LDLコレステロールの上昇した患者に、スタチン治療を処方する。患者はスタチン治療に反応しない。次に、ヒトPCSK9のHSPG結合部位に対するヒト化抗体を含む25〜500mgの組成物の皮下注射による治療を患者に処方する。注射は1〜28日の間隔で行う。LDL−Cレベルの顕著な低下が観察される。これは、ヒトPCSK9のHSPG結合部位に対する抗体の非経口投与が、スタチン治療に反応しない患者においてLDL−Cレベルの低下をもたらし得ることを示す。
【0248】
実施例14:PCSK9のHSPG結合部位に対する低分子化合物を用いた、LDLコレステロールの低下。
LDLコレステロールレベルの上昇した患者に、ヒトPCSK9のHSPG結合部位を阻害するように設計された小分子化合物の投与を処方する。この化合物は、0.1〜30mg/kgの用量で経口投与する。LDL−Cレベルの顕著な低下が観察される。これは、ヒトPCSK9のHSPG結合部位を阻害するように設計された小分子の経口投与が、患者においてLDL−Cレベルの低下をもたらし得ることを示す。
【0249】
実施例15:PCSK9のHSPG結合部位に対する抗体の作製。
精製したマウスPCSK9キメラは、マウスHSPG結合の配列伸長をヒト配列伸長(配列番号1のアミノ酸残基78〜167内に包含される)で置換して構築される。マウスをキメラで免疫化する。その後、直接ELISAによって2段階でクローンを選別する。第1のステップで、野生型ヒトPCSK9に結合することができる抗体を、精製した野生型ヒトPCSK9でコーティングされたマイクロタイターウェルを使用して選別する。第2の選別ステップでは、マイクロタイターウェルをHSPGに結合不能な突然変異体ヒトPCSK9でコーティングする。突然変異体PCSK9に結合することができる抗体が選別される。固定化されたヒトPCSK9に対する選択抗体の親和性を、そのKを測定することによって評価する。引き続き、HepG2細胞におけるPCSK9誘導性LDLR分解を阻害する能力について抗体を試験する。
【0250】
ヒトPCSK9のHSPG結合ドメインに誘導され、PCSK9誘導性LDLR分解を阻害することができる抗体がそれによって選別される。
【0251】
実施例16:Biacoreを用いたHSPG結合部位に対する抗体の選択。
PCSK9のHSPG結合部位に対する抗体の親和性及び特異性は、記載されているように(Munck Petersen et al.,1999)、活性化されたCM5センサーチップを備えたBiacore 3000 Instrumentで実施される表面プラズモン共鳴法を用いて評価する。HSPGに結合できない野生型ヒトPCSK9またはヒト突然変異体PCSK9を、pH4.0の10mM酢酸ナトリウム中で密度74〜83fmol/mmになるように固定化し、残りの結合部位は1Mエタノールアミンでブロックする。抗体サンプルを、10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、1.5mMのCaCl、1mMのEGTA、及び0.005%Tween 20(CaHBS)中、25℃で5μl/分で注入する。結合性は、固定化されたタンパク質フローセルと対応する対照フローセルとの間の応答の差として算出される相対応答単位(RU)で表される。速度論的パラメータは、例えばBIAevaluation 4.1を用いて決定する。
【0252】
実施例17
HSPG結合ドメインに対するPCSK9 mAbを、内因性マウスPCSK9プロモーターの制御下でヒトPCSK9を発現する、LDLR(LDLR+/−)の冠動脈疾患マウスモデルヘテロ接合体を用いて試験する。西洋型食餌を与えた動物を、6〜8か月間にわたり3週毎にPCSK9 mAb(10mg/kg)で処置する。実験の最後に、マウスを犠牲にし、大動脈のアテローム性動脈硬化病変を顕微鏡検査する。血漿LDL−cは、実験期間中、2か月ごとにELISAによって評価する。
【0253】
実施例18:HSPG及びLDLR結合部位に対する抗体を用いた併用療法。
PCSK9のHSPG−結合ドメイン(配列番号1のアミノ酸78〜167の間)に誘導されるヒト化抗体は、PCSK9のLDLRへの結合を阻害する抗体と併用される。相乗効果が観察され、それによって投与に要する各抗体の量が低減され、副作用の減少に繋がる。
【0254】
実施例19:スタチン治療に反応しない患者のLDLコレステロールの低下。
患者は、LDL−Cレベルの上昇を抑えるスタチン治療を受ける。しかしながら、当初LDL−Cレベルが低下した後、スタチン誘発性のPCSK9の発現増加により、この治療はLDL−Cレベルの有意な低下には奏功しない。
【0255】
スタチンに加えて、HSPGのPCSK9への結合を阻害する化合物を患者に投与する。投与は低用量(25〜150mg)の化合物をスタチンと併用して毎週行う。LDL−Cレベルの顕著な低下が観察され、LDL−Cが望ましいレベルに達する。
【0256】
本実施例は、スタチンを用いた治療に、PCSK9のHSPG結合ドメインに対する抗体の投与を補うと、LDL−Cレベルの低下に奏功し得ることを示す。
【0257】
実施例20:突然変異したHSPG結合部位を有するPCSK9は、LDLコレステロールレベルを上昇させない。
野生型PCSK9及びPCSK9のHSPG結合突然変異体は、CGジヌクレオチドを含まない発現プラスミド(Invivogen)のハイドロダイナミック法による尾静脈注射によってマウス肝臓で過剰発現させる。このプラスミドは、CG塩基対のメチル化による不活性化が起こりやすい従来のプラスミドと比較して、長期発現を示す。野生型PCSK9の過剰発現は、LDLRの分解の増強を誘発し、血清LDLコレステロールの上昇をもたらすことで、「機能獲得型」変異体として作用する。PCSK9のHSPG突然変異体は、LDL受容体の分解を低減することにより、血清LDLコレステロールレベルの上昇を生じさせない「機能喪失型」変異体として作用する。
【0258】
この結果は、動物におけるLDL受容体の分解に対して、PCSK9のHSPG結合ドメインが果たす中心的役割を示している。
【0259】
実施例21:PCSK9とヘパリン及びヘパリン模倣体との相互作用に基づく小分子PCSK9阻害剤の構造ベースの薬物設計。
HepG2細胞培養アッセイにおいて、低分子量ヘパリン及びヘパリン模倣体から選択された候補化合物が、PCSK9機能を阻害し、LDLRレベルを増加させる能力について試験する。ヘパリン類似体フォンダパリヌクス(商標名Arixtra)を対照化合物として使用する。得られた構造情報を用いて3−5ファーマコフォアモデルを導出し、これを用いて300万種の購入可能な化合物からなる既存データベースをスクリーニングする。HepG2細胞での機能試験のため、多様性に基づいて50種の化合物のコレクションを選択する。適切な阻害剤は、分子ドッキングモデルの補正及び購入可能な化合物の二次スクリーニングを容易にする。購入してin vitro試験に用いる50種の化合物を選択する。その後、3種の最も有望な候補をマウスモデルで試験し、肝臓内のLDLRレベル及び血漿中のコレステロールに対するin vivo効果を評価する。
【0260】
実施例22:PCSK9阻害剤候補の試験
PCSK9阻害剤候補の前臨床試験を、内因性マウスPCSK9プロモーターの制御下でヒトPCSK9を発現する、LDLR(LDLR+/−)の冠動脈疾患マウスモデルヘテロ接合体を用いて実施する。西洋型食餌を与えた動物を、6〜8か月間にわたりPCSK9阻害剤で処置し、その後、解剖された大動脈の脂肪沈着物をオイルレッドO染色した後、顕微鏡によりアテローム斑領域を評価した。コレステロールの血漿濃度は、実験期間中、2か月ごとにELISAによって評価する。
【0261】
本試験により、PCSK9阻害剤候補が血清コレステロールを低下させる能力の評価が可能になる。
【0262】
実施例23:スラミンは、PCSK9誘導性分解からLDLRを保護する
スラミンは、非炭水化物ベースの硫酸化ヘパリン模倣体のクラスに属し、そのトロンビンとの複合体の構造モデルにおいて、ヘパリンと重複する結合部位を示す(Lima et al.,2009)。スラミン(0〜200μg/ml)と一晩インキュベートしたときのPCSK9阻害効果をHepG2細胞で試験した(図9−1(A)〜(B))。試験濃度が最大のスラミン(200μg/ml)を用いた細胞では、LDLRレベルが15倍、上方調節された。このことは、スラミンがPCSK9誘導性分解からLDLRを強力に保護することを示唆している。
【0263】
実施例24:肝臓LDLRレベルに対するスラミンの効果
スラミンのin vivo試験は、西洋型食餌を与えたマウスと西洋型食餌を与えなかったマウスに、5〜20μgのヒト組換えPCSK9を単独で、または50〜200μgのスラミンとの併用で単回静脈内投与(尾静脈)して実施する。各群5〜7匹のマウスを犠牲にし、ウェスタンブロット分析により肝臓LDLRレベル(注射後1時間)を、ELISAにより血漿LDL−c(注射後7時間)を評価する。
【0264】
本試験は、スラミンの投与がin vivoでのLDLRレベルの上昇をもたらすことを裏付けるものとなる。
【0265】
実施例25:硫酸デキストラン及びペントサンは、PCSK9誘導性分解からLDLRを保護する
修飾多糖化合物のヘパリン模倣体クラスにおいて、硫酸デキストラン(図9−1(A)〜(B))及びペントサン(図9−3(D)〜(E))を、HepG2を用いたin vitro細胞アッセイで試験した。一晩インキュベートした後、ウェスタンブロッティングによりLDLRレベルを評価すると、硫酸デキストラン(0〜200μg/ml)での処理時にLDLRは濃度依存的増加を示し、LDLRの上方調節は最大3倍であった。ペントサン(0〜200μg/ml)のインキュベートは、50μg/mlからの濃度で4倍のLDLRの上昇をもたらした。
【0266】
実施例26:肝臓LDLRレベルに対するペントサンの効果
ヒトPCSK9を発現するマウスにペントサンポリサルフェートを注射し、この物質がPCSK9誘導性分解からLDLRを保護する能力を評価する。
【0267】
本試験は、ペントサンの投与がin vivoでのLDLRレベルの上昇をもたらすことを裏付けるものとなる。
【0268】
実施例27:血清コレステロールレベルに対するペントサンの効果
血清コレステロールが上昇した患者を、ペントサンポリサルフェートの経口投与または皮下注射により処置して、この物質が血清コレステロールを低下させる能力を評価する。ペントサンポリサルフェートは、製造業者による経口用量の摂取後、2時間を中央値として消化管から吸収される。その後、コレステロールレベルを測定する。
【0269】
本試験は、ペントサンが血清コレステロールレベルの低下をもたらすことを裏付けるものとなる。
【0270】
実施例28:ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドS−dC−36は、PCSK9誘導性分解からLDLRを保護する
オリゴヌクレオチドs−dC−36(0.5〜5.0μM)(図9−6(I)〜(J))とインキュベートしたHepG2細胞は、細胞内LDLRタンパク質のレベル上昇を示した(5.0μMのS−dC−36で2倍上昇)。S−dC−36は、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのヘパリン模倣体クラスに属し、このデータはS−dC−36がPCSK9誘導性の分解からLDLRを効率的に保護することを示唆している。
【0271】
実施例29:LDLR保護のためのホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの最適長の決定
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、ヘパリン結合タンパク質に結合し、その機能を阻害する。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが様々なタンパク質に非特異的に結合する能力は、十分に実証されている(Yakubov et al.,1993;Stein 1995)。アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは通常、標的mRNAに特異的に結合するための相補的塩基配列を有し、それによりmRNAの分解を誘導するように設計される。
【0272】
PCSK9に結合し、それによりLDLRを分解から保護するためのホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの最適長を、HepG2細胞株を用いた細胞培養アッセイにおいて決定する。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの塩基配列は、種々の細胞株及び組織における遺伝子発現に対して最小の効果を有するように選択される。
【0273】
実施例30:LDLR保護に対する最適化ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの効果
最適化されたホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、ヒトPCSK9を発現するマウスに注射し、この物質がPCSK9誘導性分解からLDLRを保護する能力を評価する。
【0274】
実施例31:血清コレステロールレベルに対する最適化ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの効果
最適化されたホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、血清コレステロールが上昇した患者に注射し、この物質が血清コレステロールを低下させる能力を評価する。
【0275】
実施例32:LDLRレベルに対するミポメルセンの効果
HepG2細胞をミポメルセンとインキュベートし、この物質がLDLRのレベルを上昇させる能力を評価する。ミポメルセンは、apoB100アンチセンス修飾ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであり、コレステロール低下薬である。これは、アポリポタンパク質B100のメッセンジャーRNAを標的とするアンチセンス治療薬である。家族性高コレステロール血症に対して、この治療薬を週1回の注射により投与する。
【0276】
本試験は、ミポメルセンがLDLRレベルの上昇をもたらすことを示すものとなる。
【0277】
実施例33
スラミンまたはPPDAS(ピリドキサル−ホスフェート−6−アゾフェニル−2’−4’−ジスルホン酸)で処置したApoE−/−マウスを、肝臓LDLRレベルの上方調節について試験する。スラミン及びPPDASは、apoE−/−マウスのプラークサイズを減少させることが報告されている(Guns et al.,2009)。
【0278】
実施例34
スラミンで処置したApoE−/−マウスを、肝臓LDLRレベルの上方調節について試験する。
スラミンは、apoE−/−マウスのプラークサイズを減少させることが報告されている(Guns et al.,2009)。
【0279】
実施例36
ATPとは対照的に、P2Y6選択的アゴニストUDPは、J774マクロファージでのmRNA発現、ならびに誘導性一酸化窒素合成酵素及びインターロイキン−6の活性を増加させる。この効果は、スラミン(100〜300μM)またはピリドキサル−ホスフェート−6−アゾフェニル−2’−4’−ジスルホン酸(PPADS、10〜30mM)によってブロックされる。最終的に、コレステロール摂取したapoE−/−マウスをスラミンまたはPPADS(それぞれ50及び25mg/kg/日)で4週間処置すると、プラーク組成(相対SMC及びマクロファージ含量)または細胞複製を変化させることなく、プラークサイズが減少する。
【0280】
実施例37
mAb 5E11のin vivo効果を10〜12週齢の雄BALB6/cJRjマウスで試験する。0.9%生理食塩水(ビヒクル対照)、または5E11(50〜250μg)を含む、もしくは含まないPCSK9(10μg)をマウスに静脈内(尾静脈)注射する。1つの実験では、注射の1時間後にマウスから採取し、肝臓LDLRレベルをウェスタンブロッティングにより評価する。並行実験では、5E11及びPCSK9のLDL受容体結合部位に対する抗体の1:1混合物に相当する量をマウスに注射して、LDLR及びHSPG結合部位の両方を標的とするPCSK9阻害の効果を評価する。血漿LDL−c濃度は、注射後の特定の時点でELISAにより評価する。mAb 8H4を用いて同様の実験を行う。
【0281】
配列
配列番号1:PCSK9タンパク質−NCBIアクセッション番号:NG_009061.1

配列番号2(3)、4(5)、6(7)、及び8(9)は、記載のようなラットハイブリドーマBNT−8H4−B8/C7−E11、BNT−5E11−D4/G1−E4によって発現される免疫グロブリン遺伝子の可変領域を配列決定することにより得た。
配列番号2:BNT−8H4−B8/C7−E11_VK DNA

LOCUS BNT−8H4−B8/C7−E11_VK 318bp DNA直鎖状
配列番号3:BNT−8H4−B8/C7−E11 VK DNA
配列番号4:BNT−5E11−D4/G1−E4_VK DNA

LOCUS BNT−5E11−D4/G1−E4_VH 336bp DNA直鎖状

配列番号5:BNT−5E11−D4/G1−E4_VK タンパク質

配列番号6:BNT−5E11−D4/G1−E4_VH DNA


配列番号7:BNT−5E11−D4/G1−E4_VH タンパク質

配列番号8:BNT−8H4−B8/C7−E11_VH DNA
LOCUS BNT−8H4−B8/C7−E11_VH 354bp DNA直鎖状 2016年3月9日


配列番号9:BNT−8H4−B8/C7−E11_VH タンパク質
配列番号10−配列番号7のCDR1
SGYDWS
配列番号11−配列番号7のCDR2
DISYSGSTNY NPSLKS
配列番号12−配列番号7のCDR3
LPG
配列番号13−配列番号5のCDR1
RSSQSLEYSD GYTYLE
配列番号14−配列番号5のCDR2
EVSNRFS
配列番号15−配列番号5のCDR3
FQGTHDPLT
配列番号16−配列番号9のCDR1
SSGICVS
配列番号17−配列番号9のCDR2
TICWEDSKGY NPSLKN
配列番号18−配列番号9のCDR3
VYYWYFDF
配列番号19−配列番号3のCDR1
KGSQNINNYL A
配列番号20−配列番号3のCDR2
NTNSLQT
配列番号21−配列番号3のCDR2
YQYNNGNT
【0282】
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図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]