特許第6869901号(P6869901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869901化学化合物を製造する方法および装置、化学化合物ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869901
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】化学化合物を製造する方法および装置、化学化合物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/02 20060101AFI20210426BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 1/10 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 15/02 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20210426BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20210426BHJP
   C07D 307/60 20060101ALI20210426BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
   C07C2/02
   C10G2/00
   C07C1/10
   C07C11/02
   C07C15/02
   C07C15/04
   C07C15/06
   C07C15/08
   C07D307/60 B
   C07D307/60 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-564048(P2017-564048)
(86)(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公表番号】特表2018-524297(P2018-524297A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】FI2016050409
(87)【国際公開番号】WO2016198744
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】20155453
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】マッティー レイニカイネン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンネ フルッコ
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504664(JP,A)
【文献】 特開2003−064072(JP,A)
【文献】 特表平06−508850(JP,A)
【文献】 特開平01−157972(JP,A)
【文献】 特開2014−111768(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/052379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス系原料から化学化合物を製造する方法であって、
− 前記バイオマス系原料を、ガス化ガスを生成するためにガス化機器にてガス化し、
− 前記ガス化ガスを、炭化水素組成物を生成するためのFe系触媒からなる触媒層を備える前記反応器において処理して、
− オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分を、C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素留分、C4オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素留分ならびに/またはC6〜C18α−オレフィン類を含む前記炭化水素留分が前記炭化水素組成物から分離されるように、前記炭化水素組成物から回収し、ならびに
芳香族化合物、無水マレイン酸および無水アルケニルコハク酸の少なくとも1つである化学化合物を生成するために、前記分離した炭化水素留分を処理し、
前記分離した炭化水素留分の処理は、
C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素組成物または前記炭化水素留分を、常圧にて、芳香族化合物を生成するためのゼオライト触媒の存在下で行う芳香族化によって処理すること、および、
C4オレフィン類およびパラフィン類からなる前記炭化水素留分を、無水マレイン酸を生成するために部分酸化すること、
の少なくとも1つによって行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
反応圧が1〜10バールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒層の温度が前記反応器内において200〜350℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素組成物を水によって凝縮することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分を回収するために、前記炭化水素組成物を分留することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素組成物の前記分留を、蒸留を使用して行うことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくともベンゼン留分を前記芳香族化合物から分離し、前記ベンゼン留分を、無水マレイン酸を生成するために部分酸化する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
無水アルケニルコハク酸を生成するために、オレフィン類が無水マレイン酸と反応するように、C6〜C18α−オレフィン類を含む前記炭化水素留分を無水マレイン酸との反応によって処理することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バイオマス系原料から化学化合物を製造する装置であって、
− 前記バイオマス系原料(1)をガス化してガス化ガス(3)を生成するガス化機器(2)、
− 前記バイオマス系原料(1)をガス化機器(2)に供給する供給機器、
− 炭化水素組成物(5)を生成するために前記ガス化ガス(3)を処理する、Fe系触媒からなる触媒層を備えた反応器(4)、
− オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分(7、7a、7b、7c)を、C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素留分、C4オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素留分ならびに/またはC6〜C18α−オレフィン類を含む前記炭化水素留分が前記炭化水素組成物から分離されるように回収する回収機器(6)、ならびに
− 前記分離した炭化水素留分から、芳香族化合物、無水マレイン酸および無水アルケニルコハク酸の少なくとも1つである化学化合物(9、11、17、19)を生成する少なくとも1つの処理機器(8、10、12、16、18)
を含み、
前記処理機器は、
C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む前記炭化水素組成物または前記炭化水素留分を、常圧にて、芳香族化合物を生成するためのゼオライト触媒の存在下で行う芳香族化によって処理すること、および、
C4オレフィン類およびパラフィン類からなる前記炭化水素留分を、無水マレイン酸を生成するために部分酸化すること、
の少なくとも1つを行うことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学化合物を製造するための、請求項1の前提部で定義する方法および請求項14の前提部で定義する装置に関する。本発明はさらに、請求項15の前提部で定義する化学化合物および請求項17の前提部で定義するその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の化学成分が化石源材料から製造できることが、先行技術から既知である。化学物質製造の分野では、生物由来の代替品が求められている。
【0003】
化石源材料から無水マレイン酸が実用的に製造されていることが、先行技術から既知である。米国特許出願公開第2012/0015411号明細書より、発酵およびバナジウム系触媒またはモリブデン系触媒を使用する酸化によって、再生可能材料から無水マレイン酸を製造する方法が既知である。さらに米国特許出願公開第2013/0143972号明細書より、少なくとも10バールの圧力にて生成物ガスを形成し、生成物ガスをアルコール合成で処理することによって、バイオマスからアルコール類、カルボン酸類、エステル類、アルデヒド類、オレフィン類およびポリマーなどの化学物質を製造する方法が既知である。
【0004】
化石源材料から無水アルケニルコハク酸が製造されることが、先行技術から既知である。
【0005】
さらに、炭素原料を気化してフィッシャー−トロプシュ(F−T)合成で処理できることが、先行技術から既知である。基本型のF−T合成では、炭素原料由来のガスをコバルト触媒の存在下で、200〜250℃の温度および20〜40バールの圧力にて直鎖炭化水素に転化する。通例、F−T合成においては、ディーゼル油や他の中間蒸留物が製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化学化合物を製造する新型の方法および装置を開示することである。さらに本発明の目的は、バイオマス系原料から新規化学化合物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による方法および装置および化学化合物は、特許請求の範囲に提示したものによって特徴付けられる。
【0008】
本発明は、バイオマス系原料から化学化合物を製造する方法に基づく。本発明により、バイオマス系原料を、ガス化ガスを生成するガス化機器にてガス化し、このガス化ガスを、オレフィン類を含む炭化水素組成物を生成するFe系触媒を含む少なくとも1つの触媒層を備えた反応器内で処理し、オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分を炭化水素組成物から回収して、炭化水素留分から化学化合物を生成する。
【0009】
本発明の装置は、バイオマス系原料をガス化してガス化ガスを生成するガス化機器と、バイオマス系原料をガス化機器に供給する供給機器と、炭化水素組成物を生成するために、ガス化ガスをFe系触媒によって処理する、少なくとも1つの触媒層を備えた反応器と、オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分を回収する回収機器と、炭化水素留分から化学化合物を生成する少なくとも1つの処理機器とを備える。
【0010】
さらに本発明は、本発明による方法によって得られる化学化合物に基づく。
【0011】
この文脈において、バイオマス系原料は、任意のバイオマス材料もしくはバイオマス系材料または各種のバイオマス材料の任意の組合せを示す。バイオマス材料はバイオマス以外の他の材料も含有し得るが、バイオマス材料は少なくとも60重量%のバイオマスを含有する。バイオマスは、森林残留物、他の木材バイオマスおよび/または農業バイオマスなどであり得る。
【0012】
この文脈において、炭化水素組成物はオレフィン類を含有する。一実施形態において、炭化水素組成物は、オレフィン炭化水素が豊富である。炭化水素組成物は高級オレフィン組成物であることが好ましい。さらに、炭化水素組成物はパラフィン類も含有し得る。さらに炭化水素組成物は、他の炭化水素を含有し得る。
【0013】
ガス化機器として、任意の好適なガス化機器またはガス発生機を使用することができる。一実施形態において、ガス化機器は流動床ガス発生機である。ガス化機器では、低圧を使用することが好ましい。
【0014】
一実施形態において、ガス化ガスを精製する。一実施形態において、ガス化ガスを濾過する。一実施形態において、タールを例えば改質によってガス化ガスから除去する。一実施形態において、ガス化ガスを洗浄するので、反応器前の硫黄濃度は約5ppmを下回る。ガスの超洗浄は不要であることが好ましい。一実施形態において、装置は濾過機器または精製機器を備える。
【0015】
一実施形態において、ガス化ガスをガス化機器から反応器に供給する。一実施形態において、装置は、ガス化ガスを反応器に供給する第2供給機器を備える。一実施形態において、炭化水素組成物を生成するために、反応器の触媒層を通じてガス化ガスを供給することによって、ガス化ガスを処理する。ガス化ガスのH2/CO比は、反応前の調整が不要であることが好ましい。
【0016】
触媒反応では、それ自体既知である任意の好適な反応器を使用することができる。反応器は、固定床反応器、スラリ反応器、他の好適な反応器などであり得ることが好ましい。反応器は連続反応器であることが好ましい。一実施形態において、反応器はフィッシャー−トロプシュ型反応器(FT反応器)である。一実施形態において、反応器は改良型フィッシャー−トロプシュ反応器である。
【0017】
一実施形態において、反応器内の反応圧は1〜10バール、好ましくは3〜8バール、より好ましくは4〜6バールである。一実施形態において、反応圧を、ガス化圧に従って調整する。ガス化では圧力は通例5バールを下回るため、ガス化に由来するガス化ガスが反応器内で処理される場合、触媒反応において同じ圧力範囲を使用することができる。反応器では低圧を使用することが好ましい。反応でより低い圧力を使用する場合、次いで硫黄の触媒への吸収は、より弱くなる。さらに、より低い圧力によって、設備技術がより簡易になる。
【0018】
一実施形態において、本発明の装置は、触媒層の圧力を制御する圧力制御機器を備える。一実施形態において、圧力制御機器を反応器と連結して配置する。
【0019】
一実施形態において、反応器の触媒層の温度は200〜350℃である。反応器では、高温を使用することが好ましい。温度は、触媒反応中に制御され得ることが好ましい。温度は、十分な反応速度および所望の生成物留分が得られるように選択することが好ましい。低圧では活性が低いので、より高温を使用する。より高温では、より軽質の生成物を製造することができる。
【0020】
一実施形態において、本発明の装置は、触媒層中の温度を制御する温度制御機器を備える。一実施形態において、この温度制御機器を反応器と連結して配置する。
【0021】
触媒層の反応において、炭化水素組成物をFe系触媒によって製造する。Fe系触媒とは、任意のFe系触媒または任意の改質Fe系触媒を意味する。一実施形態において、Fe系触媒層の後の炭水化物からのオレフィン系炭化水素の量は、60重量%を超え、好ましくは70重量を超え、より好ましくは80重量%を超え、最も好ましくは90重量%を超える。一実施形態において、触媒層に結合した合成ガスから、硫黄が除去され得る。鉄系触媒は、触媒層および硫黄除去床の両方として作用することが好ましい。一実施形態において、硫黄は追加のステップにおいて、好ましくは触媒層の前に除去され得る。一実施形態において、少なくとも1種の促進剤を添加して触媒を改質する。
【0022】
この文脈において、触媒層は任意の触媒層、触媒床などを意味する。
【0023】
本発明により、炭化水素組成物は、ガス化ならびに低圧およびFe触媒を用いた反応によって生成することができる。
【0024】
一実施形態において、炭化水素組成物から水が除去され得る。
【0025】
一実施形態において、オレフィン類を含む少なくとも1つの炭水化物留分を回収するために、炭化水素組成物を分留する。一実施形態において、Fe系触媒を含む少なくとも1つの触媒層を備える反応器内での炭化水素組成物の生成後に、分留を行う。一実施形態において、分留は炭化水素組成物の処理後、例えば芳香族化後に行う。一実施形態において、装置は、オレフィン類を含む少なくとも1つの炭化水素留分を回収する分留機器を備える。
【0026】
一実施形態において、炭化水素組成物を、分留前または分留に続いて、水によって凝縮する。一実施形態において、装置は凝縮機器を備える。
【0027】
一実施形態において、Fe系触媒を含む少なくとも1つの触媒層を備える反応器内で炭化水素組成物を生成した後に、炭化水素組成物から水素を分離する。一実施形態において、軽質炭化水素、例えばC1およびC2炭化水素を炭化水素組成物の精製後に、炭化水素組成物から分離する。一実施形態において、非凝縮性炭化水素を除去する。一実施形態において、凝縮性炭化水素を芳香族化または他の処理に導入する。
【0028】
一実施形態において、分留は蒸留を使用して行う。一実施形態において、装置は蒸留機器を備える。一実施形態において、分留は分離を使用して行う。一実施形態において、装置は、化水素組成物を分留する分離機器を備える。一実施形態において、分留は結晶化を使用して行う。または、分留は、これ自体既知である任意の好適な分留機器を使用して行われ得る。
【0029】
少なくとも1つの炭化水素留分を、分留に続いて回収することが好ましい。一実施形態において、1つの炭化水素留分を回収する。一実施形態において、少なくとも2つの炭化水素留分を回収する。一実施形態において、同じ機器によって所望の留分すべてを回収する。または、所望の留分は、異なる機器によって回収され得る。
【0030】
炭化水素留分は、オレフィン類およびパラフィン類を含むことが好ましい。一実施形態において、C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む炭化水素留分を、炭化水素組成物から分離する。一実施形態において、C4オレフィン類およびパラフィン類を含む炭化水素留分を炭化水素組成物から分離する。一実施形態において、C6〜C18α−オレフィン類を含む炭化水素留分、一実施形態において、C8〜C16α−オレフィン類を含む炭化水素留分を、炭化水素組成物から分離する。各炭化水素留分は、他の薬剤、化合物、炭化水素、留出物または成分も含有し得る。炭化水素留分は液体形態であることが好ましい。
【0031】
一実施形態において、炭化水素留分は、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましい70〜100重量%のCおよびC4+炭化水素を含む。一実施形態において、炭水化物留分は、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましい70〜100重量%のC炭化水素を含む。一実施形態において、炭化水素留分は、50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましい70〜100重量%のC〜C18炭化水素を含む。
【0032】
一実施形態において、無水マレイン酸、無水アルケニルコハク酸およびその組合せからなる群から選択される化学化合物を生成するために、炭化水素留分を処理する。
【0033】
一実施形態において、常圧にて、芳香族化合物を含む炭化水素組成物を生成するためのゼオライト触媒の存在下で行う芳香族化によって、炭化水素組成物を処理する。一実施形態において、芳香族化の後の分留によって、所望の炭化水素留分を回収する。分留は上で示したように行うことができる。
【0034】
一実施形態において、C3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含む炭化水素留分を、常圧にて、芳香族化合物を生成するためのゼオライト触媒の存在下で行う芳香族化によって処理する。一実施形態において、例えばメンブレンを使用して、水素を芳香族化反応器から除去する。一実施形態において、少なくともベンゼン留分を芳香族化合物から分離する。一実施形態において、芳香族化合物を、例えば蒸留および/または結晶化によって分留する。一実施形態において、ベンゼン留分は、ベンゼンおよびo−キシレンを含有する。一実施形態において、C4留分を芳香族化合物から分離する。一実施形態において、無水マレイン酸を生成するために、ベンゼン留分を部分酸化する。
【0035】
一実施形態において、炭化水素留分を、常圧にて、芳香族化合物を生成するためのゼオライト触媒の存在下で行う芳香族化によって処理し、芳香族化合物を分留して、少なくともベンゼン留分を芳香族化合物から分離し、無水マレイン酸を生成するために、ベンゼン留分を部分酸化する。
【0036】
この文脈において、ゼオライト触媒とは、任意のゼオライト系触媒または任意の改質ゼオライト系触媒を意味する。一実施形態において、ゼオライト触媒は、ZSM−5ゼオライト触媒である。
【0037】
一実施形態において、芳香族化中の温度は、320〜550℃である。
【0038】
芳香族化の前に、炭化水素組成物または炭化水素留分から水の除去が不要であることが好ましい。水は、芳香族化中に触媒を保護する。同様に、この手順は廃水の精製として作用することができる。
【0039】
一実施形態において、芳香族化の生成物から水を除去する。
【0040】
一実施形態において、好ましくは炭化水素組成物の分留後に、無水マレイン酸を生成するために、C4オレフィン類およびパラフィン類からなる炭化水素留分を部分酸化する。一実施形態において、芳香族化および分留の後に、C4オレフィン類およびパラフィン類からなる炭化水素留分を、無水マレイン酸を生成するために部分酸化する。前記炭化水素留分は、C4オレフィン類およびパラフィン類以外の他のオレフィン類またはパラフィン類を実質的に含まないことが好ましい。
【0041】
一実施形態において、無水アルケニルコハク酸、一実施形態において、無水オクテニルコハク酸を生成するために、オレフィン類が無水マレイン酸と反応するように、好ましくはα−オレフィン類、例えばC6〜C18α−オレフィン類、より好ましくはC8〜C16α−オレフィン類を含む炭化水素留分を無水マレイン酸との反応によって処理する。反応を任意の好適な反応器、例えば混合反応器にて行うことができる。一実施形態において、反応を150〜250℃の温度にて行う。無水マレイン酸は、例えばこの文脈において定義した方法による、または他の無水マレイン酸の製造方法による、生物由来の無水マレイン酸であり得る。
【0042】
回収されない他の炭化水素留分を、バイオ芳香族化合物もしくは他の化学物質の製造に、または燃料もしくはエネルギーとして利用することができる。
【0043】
一実施形態において、化学化合物を最終生成物として、最終生成物を製造するための成分として、またはエネルギー成分としてそのままもしくは追加処理後に使用および利用する。一実施形態において、最終生成物は化学物質、例えばポリエステル、カップリング剤、例えば無水マレイン酸系カップリング剤、生物由来紙用添加物、例えば紙用サイズ剤、エネルギー成分などである。一実施形態において、最終生成物は、無水マレイン酸、無水アルケニルコハク酸およびその組合せを含む。
【0044】
一実施形態において、本発明の方法および装置を、化学物質の製造に、無水マレイン酸の製造に、無水アルケニルコハク酸の製造に、紙用サイズ剤の製造に、エネルギーの生産にまたはその組合せに使用および利用する。
【0045】
本発明によって、所望の化学生成物をバイオマス系原料から簡単に生成することができる。本発明により、品質の良い化学化合物を好首尾に製造することができる。本発明により、化学化合物を生成する反応を低圧で実施することができる。本発明によって、バイオマスを貴重な生成物に非常に効率的に利用することができる。
【0046】
本発明により、バイオマスガス化と、後続の非常に穏和な反応条件下での改良フィッシャー−トロプシュ反応によって、広範囲のバイオマスから無水マレイン酸を費用効率的に製造することが可能になる。各反応生成物を利用することにより、最適なバイオマスの利用および価値付加が実現される。例えばC4ガスは通例、LPGとして使用されるが、C4ガスは今や生化学物質に転化される。さらに本発明により、完全に生物由来の高価値の紙用化学物質を製造することができる。
【0047】
本発明の方法および装置は、化学化合物をコスト効果的およびエネルギー効果的に製造する可能性を提供する。本発明は、バイオマスから化学化合物を製造する工業的に適用可能で簡単かつ手軽な方法を提供する。本発明の方法および装置は、製造工程として、小規模工程としても容易にかつ簡単に実現される。
【0048】
以下の段落において、添付図面を参照し、詳細な例示的な実施形態を用いて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明による一実施形態を示す。
図2】本発明による別の実施形態を示す。
図3】本発明による別の実施形態を示す。
図4】試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0050】
実施例1
図1は、化学化合物を製造するための本発明による方法を示す。
【0051】
化学化合物(9)をバイオマス系原料(1)から生成する。ガス化ガス(3)を生成するために、バイオマス系原料(1)をガス化機器(2)によってガス化する。ガス化ガスを洗浄することが好ましい。
【0052】
ガス化ガス(3)を、Fe系触媒を含有する触媒層を備える反応器(4)内に供給し、炭化水素組成物(5)を生成するために、ガス化ガスを反応器内で1〜10バールの圧力下で処理する。反応器(4)から炭化水素組成物(5)を分留機器(6)、例えば蒸留装置内に供給し、分留機器(6)において、炭化水素組成物(5)を分留して、少なくとも1つの炭化水素留分(7)を炭化水素組成物から回収する。炭化水素組成物は、分留の前に水によって凝縮され得る。炭化水素留分(7)を処理ステップ(8)において処理して、化学化合物を生成する。
【0053】
反応器(4)は、反応器の触媒層において温度および圧力を制御するように配置された、温度制御機器および圧力制御機器を備える。硫黄は主に、触媒層が硫黄除去層として作用する反応器(4)において、ガス化ガスから除去することが好ましい。
【0054】
実施例2
図2は、無水マレイン酸を製造するための、本発明による方法を示す。
【0055】
無水マレイン酸(11、17)をバイオマス系原料(1)から生成する。ガス化ガス(3)を生成するために、バイオマス系原料(1)をガス化機器(2)によってガス化する。ガス化ガスを洗浄することが好ましい。
【0056】
ガス化ガス(3)を、Fe系触媒を含有する触媒層を備えた改良フィッシャー−トロプシュ反応器(4)に供給し、炭化水素組成物(5)を生成するために、ガス化ガスを反応器内で1〜10バールの圧力下で処理する。炭化水素組成物(5)は、オレフィン類と、パラフィン類をも含む。反応器(4)から炭化水素組成物(5)を分留機器(6)、例えば蒸留装置内に供給し、分留機器(6)において炭化水素組成物(5)を分留して、少なくとも2つの炭化水素留分(7aおよび7b)を炭化水素組成物から回収する。第1の炭化水素留分(7a)はブテンおよびブタンを含有する。第2の炭化水素留分(7b)は、C3およびC4+炭化水素、例えばC3およびC4+オレフィン類およびパラフィン類を含有する。
【0057】
第1の炭化水素留分(7a)を部分酸化して(10)、無水マレイン酸(11)とする。
【0058】
第2の炭化水素留分(7b)を、芳香族化反応器(12)内で常圧にてゼオライト触媒の存在下で、芳香族炭化水素(13)に転化する。芳香族炭化水素(13)を例えば蒸留または結晶化によって分留し(14)、ベンゼンおよびo−キシレンを含むベンゼン留分(15)を芳香族炭化水素から分離する。ベンゼン留分(15)を部分酸化して(16)、無水マレイン酸(17)を生成する。
【0059】
改良フィッシャー−トロプシュ反応器(4)は、反応器の触媒層において温度および圧力を制御するように配置された、温度制御機器および圧力制御機器を備える。硫黄は主に、触媒層が硫黄除去層として作用する反応器(4)におけるガス化ガスから除去することが好ましい。
【0060】
実施例3
図3は、無水アルケニルコハク酸(ASA)を製造するための、本発明による方法を示す。
【0061】
無水アルケニルコハク酸(19)をバイオマス系原料(1)から生成する。ガス化ガス(3)を生成するために、バイオマス系原料(1)を流動床ガス発生機(2)でガス化する。ガス化ガスを洗浄することが好ましい。
【0062】
ガス化ガス(3)を、Fe系触媒を含有する触媒層を備えた改良フィッシャー−トロプシュ反応器(4)に供給し、炭化水素組成物(5)を生成するために、ガス化ガスを反応器内で1〜10バールの圧力下で処理する。反応器(4)から炭化水素組成物(5)を分留機器(6)、例えば蒸留装置内に供給し、分留機器(6)において、炭化水素組成物(5)を分留して、少なくとも1つの炭化水素留分(7c)を炭化水素組成物から回収する。炭化水素留分(7c)は、C8〜C16α−オレフィン類を含有する。炭化水素留分(7c)を処理機器(18)内で無水マレイン酸との反応によって処理すると、オレフィン類が無水マレイン酸と反応して、無水アルケニルコハク酸(19)を生成する。無水マレイン酸は、例えば実施例2の方法による生物由来の無水マレイン酸、または他の無水マレイン酸であってよい。
【0063】
反応器(4)は、反応器の触媒層において温度および圧力を制御するように配置された、温度制御機器および圧力制御機器を備える。硫黄は主に、触媒層が硫黄除去層として作用する反応器(4)において、ガス化ガスから除去することが好ましい。
【0064】
実施例4
森林残留物の木質チップを、セラミックフィルタおよび触媒改質機を装備した循環流動床ガス発生機においてガス化した。吸着床を使用して、ガスの後流を乾燥および精製する。精製したガスを、管状反応器(ステンレス鋼、内径12mm)において、カリウムを助触媒とした沈殿鉄触媒上で処理した。反応条件は、GHSV 2000h−1、H/CO比1.4(mol/mol)、温度240℃および圧力5バールであった。これらの条件下で、CO転化率は反応50時間後に約65%であった。水を反応生成物から分離して、炭化水素組成物をガスクロマトグラフィーによって分析した。組成およびオレフィン類の割合を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例5
高級オレフィン系炭化水素留分を実施例4の生成物から蒸留を使用して回収した。得られた留分の組成を表2に示す。留分は、オレフィン類に加えてパラフィン類も含有する。
【0067】
【表2】
【0068】
300ml実験用オートクレーブに、回収した留分の一部および無水マレイン酸を約1.2:1のモル比で投入した。オートクレーブを閉じ、窒素を充填して、220℃まで加熱した。反応器をこの温度で5時間維持した。反応器をタービンミキサによって600rpmにて混合した。得られた生成物は、ASAを収率48%で含有していた。
【0069】
実施例6
実施例4と同じ設備および反応条件を使用して、フィッシャー−トロプシュ型反応(FT反応)を行った。FT反応の反応圧を制御する背圧弁の出口を、ステンレス鋼製で内径40mmの管状反応器である、芳香族化反応器に直接連結した。ZnおよびLaを助触媒としたZSM−5ゼオライト触媒の存在下で、芳香族化反応を行った。重量時間空間速度(WHSV)が0.4または1.1g/(g触媒h)となるように、接触質量を選択した。反応器を炉によって350〜400℃の温度まで加熱し、大気圧にて反応を行った。水を生成物から分離し、生成物を芳香族化後にガスクロマトグラフィーを使用して分析した。生成物の組成を図4に示す。
【0070】
本発明で使用した部品および機器は当分野においてそれ自体既知であるため、本文脈ではこれらについて、これ以上詳細に記載しない。
【0071】
本発明による方法および装置は、様々な種類の化学化合物を生成するための様々な実施形態において好適である。
【0072】
本発明は、上述した実施例のみに限定されず、むしろ特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内で多くの変更が可能である。
図1
図2
図3
図4