(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869903
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】部分義歯の修復または調整のプランニング
(51)【国際特許分類】
A61C 13/007 20060101AFI20210426BHJP
A61C 13/267 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61C13/007
A61C13/267
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-566797(P2017-566797)
(86)(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公表番号】特表2018-519911(P2018-519911A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016067228
(87)【国際公開番号】WO2017013142
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】102015213682.5
(32)【優先日】2015年7月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オスカム,トーマス
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/049879(WO,A1)
【文献】
特開平10−251781(JP,A)
【文献】
特表2009−528869(JP,A)
【文献】
特開2010−167079(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02496981(GB,A)
【文献】
特表2011−509812(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0107771(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0043565(KR,A)
【文献】
特表2012−520694(JP,A)
【文献】
特表2015−502209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/007
A61C 13/267
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の方法のステップによる、部分義歯の修復または調整のコンピュータを使用したプランニングの方法であって、
a) 前記コンピュータは、前記部分義歯が顎の上に配置された第一のデジタル3D顎モデルを義歯参考モデル(M1)として生成し、
b) 前記コンピュータは、前記部分義歯なしの顎の第二のデジタル3Dモデルを顎モデル(M2)として生成し、
c) 前記コンピュータは、前記義歯参考モデル(M1)の前記顎モデル(M2)に対する位置関係を決定し、
d) 前記コンピュータは、前記位置関係を考慮に入れながら、前記義歯参考モデル(M1)から前記顎モデル(M2)を差し引くことにより、デジタル義歯モデル(P)を生成し、
e) 前記コンピュータは、自動的にあるいはユーザによる入力により、前記義歯モデル(P)におけるホールディングおよび/または支持要素(3)を同定し、
f) 前記コンピュータは、前記義歯モデル(P)に基づいて前記部分義歯の挿入軸(4)を計算し、
g) 前記コンピュータは、前記義歯モデル(P)における、前記挿入軸(4)から生じるホールディングおよび/または支持要素(3)のアンダーカットの深さを計算し、
h) 前記コンピュータは、顎モデル(M2)の呈示において前記挿入軸(4)および前記アンダーカットの深さを表示する、方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、ユーザによる入力により前記提案された挿入軸4が変更されたとき、前記顎モデル(M2)において表示されるアンダーカットの深さを自動的に再計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記挿入軸(4)を考慮に入れることにより前記顎モデル(M2)を見えなくし、前記義歯モデル(P)を前記見えなくした顎モデル(M2)の上に配置し、およびユーザによる入力により前記義歯モデル(P)を補完および/または変更する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記部分義歯下側の第三のデジタル3Dモデルを生成し、前記第三のデジタル3Dモデルにより前記義歯モデル(P)下側(2)を補完および/または差換える、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記挿入軸(4)および前記アンダーカットの深さの計算の前および/または後に、監視される領域に対し前記顎モデル(M2)において自動的におよび/またはユーザの入力により印を付け、ならびにアンダーカットの深さをこれらの領域について計算しおよび顎モデル(M2)において表示する、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記顎モデル(M2)上で印が付けられた追加される前記ホールディングおよび支持要素(3)の領域を、前記挿入軸(4)の計算の間、考慮する、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
前記コンピュータは、前記アンダーカットの深さを偽色で前記顎モデル(M2)の表面を色づけることにより可視化する、請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータは、楔が生じそうな領域を、前記義歯モデル(P)、前記顎モデル(M2)、および前記挿入軸(4)に基づき決定し、前記顎モデル(M2)に表示する、請求項1〜7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分義歯の修復または調整のデジタルプランニングための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科技工室の典型的な業務は、義歯の制作に加え、不具合のある義歯の修復、または例えば、顎の新たな不具合に対応することにより、既存の義歯に加えること、などである。典型的なケースとしては、モデル鋳造の破損した一つ以上のブラケットの交換がある。このケースのやっかいな点とは、特に、部分義歯の元の挿入軸のその後の推定である。このステップは、しかしながら、既存のブラケットのため、および追加されるブラケットおよび/または領域のための正確なアンダーカットの深さを確保するために、ならびにカウンターブラケットおよびガイドブラケットのようなパーツがアンダーカットの深さを持たないことを確実にするために、追加作業はもちろん修復の両方にとって必要である。
【0003】
本発明の目的は、先行技術を改良すること、および義歯の修復または調整のための簡単で信頼性の高い方法を提供すること、である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の主題は、次の方法のステップによる義歯の修復または調整のコンピュータを使用したプランニングのための方法である:部分義歯が顎上に配置される第一のデジタル3D顎モデルを義歯参考モデルとして生成すること、部分義歯なしでの第二の3D顎モデルを顎モデルとして生成すること、顎モデルに対する義歯参考モデルの位置関係を決定すること、位置関係を考慮に入れながら義歯参考モデルから顎モデルを差し引くことによりデジタル義歯モデルを生成すること、義歯モデルのホールディングおよび/または支持要素を自動的に同定することおよび/またはユーザにより同定が行われること、義歯モデルに基づき部分義歯の挿入軸を計算すること、挿入軸から生じる部分義歯のホールディングおよび/または支持要素のアンダーカットの深さを計算すること、顎モデルの呈示において挿入軸とアンダーカットの深さとを表示すること。
【0005】
部分義歯は例えばサブリンガルバーまたはトランスバースストリップなどの義歯床およびブラケットなどのホールディングおよび支持要素を含むフレームワークから構成される。義歯サドルおよび人口歯がフレームワークの上に固定される。
【0006】
部分義歯有りおよびなしでのデジタル3D顎モデルが、例えば、顎の型取りによって生成された石膏モデルのスキャン、または三角測量方式に則って動作する口腔内カメラによる顎の直接スキャン、などのスキャンにより生成される。
【0007】
この方法により得られたデータから、またはそれにより計算された義歯モデルから、部分義歯の形状およびホールンディングおよび支持要素の位置を考慮に入れる挿入軸を決定することが可能であり、したがって部分義歯のために、もともと想像された挿入軸に少なくともおおよそ対応することが可能である。
【0008】
挿入軸を変更するとき表示されるアンダーカットの深さの表示および自動調整は、アンダーカットの深さおよびユーザによる挿入軸の変化の間のアンダーカットの深さの発生について簡単かつ継続的なモニタリングを容易にする。さらに、表示とアンダーカットの深さの調整とにより、追加のホールディングおよび支持要素が、それらが加えられるとき所望の張力を生成することが確実である。
【0009】
有利には、提案された挿入軸は入力手段によりユーザによって変更され、アンダーカットの深さは自動的に再計算され、したがって、ユーザは直接一見しただけですべての重要な要件を有し、迅速かつ容易に正確な挿入軸を推定および決定し得る。
【0010】
有利には、顎モデルは挿入軸を考慮に入れる間見えないようにされ、義歯モデルが見えなくなった顎モデルの上に置かれ、入力手段によりユーザによって補完または変更される。したがって、設計中の直接モニタリング、およびまたそれに続く容易かつ直接的なコンピュータを使用した、追加されるパーツまたは部分義歯の領域の製造が可能である。
【0011】
有利には、部分義歯の下側の第三のデジタル3Dモデルが生成され、義歯モデルが極めて正確に実際の部分義歯と合うように、義歯モデルの下側が第三のデジタル3Dモデルによって追加および/または差換えされる。
【0012】
有利には、挿入軸およびアンダーカットの深さの計算の前および/または後、顎モデルの呈示においてモニタリングされる領域が自動的に印がつけられおよび/または入力手段により印がつけられ、例えば、新たに配置されるホールディングおよび支持要素のため、または部分義歯に追加される他のパーツのため、アンダーカットの深さの簡単かつ信頼性が高いモニタリングが可能なように、それらの領域のアンダーカットの深さの計算が実施され、かつ表示される。
【0013】
有利には、挿入軸の計算の前に、追加されるホールディングおよび支持要素の領域は、顎モデルの上に印がつけられ、挿入軸の計算の間に考慮に入れられる。いかにまたはどこに、新しいホールディングおよび支持要素がまたは追加されるべきホールディングおよび支持要素が、拡張されるか既知である場合、挿入軸の計算の結果は、これらの領域に印をつけ、これらの領域を考慮に入れることにより、改善されうる。
【0014】
有利には、アンダーカットの深さは、ユーザにより容易かつ直接知覚可能であるように顎モデルの表面を偽色で色づけすることにより、可視化される。
【0015】
有利には、楔が生じる可能性のある領域が、義歯モデル、顎モデル、および挿入軸に基づいて決定され、顎モデルに表示される。楔は少なくとも顎モデルおよび義歯モデルに基づいて推定され得、例えば、顎モデルの対応する表面領域の着色ハイライトにより、警告としてユーザに表示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施形態を図面で示す。示すように:
【
図1】
図1は、部分義歯が配置された第一のデジタル3D顎モデルを示す。
【
図2】
図2は、部分義歯のない第2のデジタル3D顎モデルを示す。
【
図4】
図4は、デジタル3D顎モデル内のアンダーカットの深さおよび挿入軸の表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜4は、本発明による方法を模式的に可視化したものである。
図1は、顎または部分義歯が配置された顎の型取りにより生成された石膏モデルのスキャンにより生成され、義歯参考モデルM1として記憶される、第一のデジタル3Dモデルを示す。第二の3Dモデルが
図2に描かれ、同様に対応するスキャンにより生成され、顎モデルM2として記憶される、部分義歯なしの顎を示す。
【0018】
続いて、義歯参考モデルM1と顎モデルM2の間で位置関係が決定される。これは、例えば、公知のアルゴリズムにより特定される完全に一致する領域に基づいて自動的に実施され得る。特に、オーバーラップする領域が位置関係の自動的決定に不十分な場合、位置関係は部分的または完全に手動で決定され得る。
【0019】
3DモデルM2を、互いに並んで配置されたM1から差し引くことにより、上側1として義歯参考モデルM1に含まれる部分義歯の上側を有する義歯モデルPが計算される(
図3)。この差引きの結果である義歯モデルPの下側2は、このためのすべての情報が義歯参考モデルM1および顎モデルM2に含まれていないため、おおよそ義歯の下側に対応するだけである。任意で、第三のデジタル3DモデルM3は部分義歯の下側のスキャンにより生成され得、義歯モデルPの下側2はこのデータ(図示せず)により差換えまたは補完され得る。
【0020】
図3に示されるとおり、義歯モデルPはまた、ユーザが、入力手段(図示せず)により例えばブラケットなどのホールディングおよび支持要素3に印をつけるために入力手段を使用し得る、または自動的に検出されたホールディングおよび支持要素3の位置を確認または修正し得るように、該ユーザに対して表示される。
【0021】
想定される挿入軸4は、続いて義歯モデルPおよびここで検出されるホールディングおよび支持要素3に基づいて自動的に決定され、例えば、
図3に示すとおり、矢印によってユーザに表示される。挿入軸4に関する「想定される」とは、提案された挿入軸4が、考慮すべきホールディングおよび支持要素3のアンダーカットの深さに関する既に記憶された境界条件を満足することを意味する。
【0022】
提案された挿入軸4から生じるアンダーカットの深さは、義歯モデルP、顎モデルM2、および検出されたホールディングおよび支持要素3に基づき決定され、例えば偽色によって、顎モデルM2において表示される。
図4では、顎モデルM1および義歯参考モデルM1または義歯モデルPに基づき決定される、部分義歯の接触面5が破線により顎上に示される。アンダーカットの深さは十字記号と円により示される。アンダーカットの深さは、特にホールディングおよび支持要素3の領域において、部分義歯の接触面5の領域において決定される。
【0023】
現在のホールディングおよび支持要素3に印をつけることおよび/または現在のホールディングおよび支持要素3を自動的に検出することに加え、他の方法のステップでは、顎モデルM2内の領域は自動的に選択されおよび/またはユーザによって選択され(
図4の破線)、アンダーカットの深さがその後決定されおよび表示される。したがって、新しいホールディングおよび支持要素が配置される顎の領域のアンダーカットの深さが決定され得、および新しいホールディングおよび支持要素の配置において考慮に入れられ得る。
【0024】
この方法のステップは、挿入軸の計算の前および/または後に実施され得る。
【0025】
ホールディングおよび支持要素が追加されるまたは他のパーツが追加される領域が、挿入軸4の計算の前に既に確定しおよび顎モデルにおいて既に印がつけられている場合、これらの領域は、挿入軸4の計算の間追加の支持要素のホールディングとして見なされ、その結果は改善され得る。
【0026】
入力手段によって、提案された挿入軸4の変更を行う可能性がユーザに提供され得、すべての表示された顎モデルM2内のアンダーカットの深さが自動的に変更に適合される。
【0027】
加えて、他の任意の方法のステップにおいて、楔が生じる可能性のある顎の領域が、義歯モデルP、顎モデルM2、および挿入軸4に基づき決定され得、顎モデルM2(図示せず)に表示される。義歯モデルPの下側2が第三の3DモデルM3からの情報により補完される場合、これらの領域は明らかに特定可能である。そのような追加のスキャンなしに、少なくとも見込みは決定され、および対応する警告が表示され得る。
【0028】
続いての方法のステップにおいて、顎モデルM1は見えなくされる。挿入軸4から生じる顎モデルM1のすべてのアンダーカット領域は充填され、および充填材はホールディングおよび支持要素の接触領域においてその後再び取り除かれる。ホールディングおよび支持要素の接触領域は既知であるため、見えなくなる間にこれらの領域を記憶することがまた可能である。例えば、2度〜8度の小さな傾斜角が見えなくなる間に使用される。
【0029】
その後の設計ステップにおいて、義歯モデルPは見えなくされた顎モデルM1の上に配置され、ならびに、例えばホールディングおよび支持要素3ならびに/または保定プレートならびに固定のためのオーバーラップする領域が追加および/または変更されるなど、変更または追加が入力手段によりユーザによって義歯モデルP上で実施され、その変更の結果はモニタリングのために、アンダーカットの深さおよび/または楔について、見えなくされた顎モデルM2の上で表示される。
【0030】
義歯モデルPへの追加が完了した場合、例えば現在のデジタルデータに基づきCAM装置によって、追加されたパーツがその後生成され、例えばオーバーラップしている領域を結合することにより、部分義歯上に固定される。
【0031】
参考
1 義歯モデルの上側
2 義歯モデルの下側
3 ホールディングおよび支持要素
4 挿入軸
5 部分義歯の接触面
M1 義歯参考モデル
M2 顎モデル
P 義歯モデル