【実施例1】
【0011】
本実施例では、電力変換装置を用いて高周波の単相負荷へ非接触にて電力を供給する非接触供給システムの例を説明する。
図1は、交流電源100と電力変換装置110と高周波の単相負荷120から成る非接触供給システムの構成図の例である。交流電源100は、通常電力会社などから供給される商用三相交流電源などでありコンバータ回路111へ接続されている。
【0012】
コンバータ回路111は、例えば、ダイオードを用いた三相ブリッジ型の整流回路で構成されており、交流電源100より供給された交流電力を直流に変換する働きをしている。その直流に変換した電力は、平滑コンデンサ112を通すことにより平滑化し、インバータ回路113へ入力する。インバータ回路113は、制御装置114から入力されるスイッチング信号により動作し、供給されてくる直流の電力を、所定の電流で所定の高周波、例えば10kHzの単相交流電力に変換し給電線用の導電路121へ出力する。
【0013】
従って、インバータ回路113は、逆変換部の主回路となるものであり、平滑コンデンサ112によって平滑化された直流電力の正極側Pに接続された3個のスイッチング素子U、スイッチング素子V、スイッチング素子Wと、負極側Nに接続された3個のスイッチング素子X、スイッチング素子Y、スイッチング素子Zの計6個のスイッチング素子で構成されている。そして、この例では、各スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)を用いた場合を示しており、これには夫々にフライホイールダイオードが逆並列接続されている。
【0014】
ところで、このようなインバータの主回路では、直流の正極側のスイッチング素子を上アームと呼び、負極側のスイッチング素子を下アームと呼ぶ。上アームのスイッチング素子Uと下アームのスイッチング素子Xが、U-X相の1相分のスイッチング素子アームとなる。また、上アームのスイッチング素子Vと、下アームのスイッチング素子Yが、V-Y相の1相分のスイッチング素子アームとなる。また、上アームのスイッチング素子Wと下アームのスイッチング素子Zが、W-Z相の1相分のスイッチング素子アームとなる。全体で、U-X相とV-Y相とW-Z相の三相分のスイッチング素子アームを形成している。
【0015】
三相交流用の電力変換装置では、このような三相分のスイッチング素子アームの出力により三相交流電圧を得るが、本実施例による電力変換装置110のインバータ回路113では、まず、三相分のスイッチング素子アームの内の、二相分のスイッチング素子アーム、すなわち、U-X相のスイッチング素子アームとV-Y相のスイッチング素子アームの出力R、Sを共通に接続する。この出力R、Sを共通に接続した端子を、インバータ回路113の一方の交流出力端子Aとする。そして、残りの一相分のスイッチング素子アームであるW-Z相の出力Tを、他方の交流出力端子Bとして取り出すようになっており、これにより単相出力の電力変換装置が、構成されるようにしている。
【0016】
高周波の単相負荷120は、交流出力端子Aと交流出力端子Bより供給される高周波の単相電流を流す給電線用の導電路121と、例えば、1台以上の移動台車122、移動台車123、…とで構成されている。
【0017】
ここで、これらの移動台車122、移動台車123、…は、例えば、クリーンルーム内で使用される物体運搬車のことで、導電路121から非接触で電力の供給を受け、走行用のモータを駆動して移動するようになっている。導電路121は、移動台車122、移動台車123、…の移動経路に沿って往復する2本の線路である。これに、移動台車122、移動台車123、…に搭載してある2次巻線だけを有する、鉄心の1部を除いて開放閉路型とした変圧器を組み合わせ、導電路121を1次巻線として移動台車122、移動台車123、…で電力が非接触で受け取れるようにしてある。
【0018】
次に、本実施例の電力変換装置のインバータ回路113の構造上の配置を、
図2を用いて説明する。インバータ回路113は、冷却フィン200と、冷却フィン200上に配置してある、U相のスイッチング素子部211と、V相のスイッチング素子部212と、W相のスイッチング素子部213と、X相のスイッチング素子部214と、Y相のスイッチング素子部215と、Z相のスイッチング素子部216とで構成されている。
【0019】
この夫々のスイッチング素子部は、内部で各スイッチング素子としてIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)を用いており、これには夫々にフライホイールダイオードが逆並列接続された構成となっている。また、これらのスイッチング素子部211、スイッチング素子部212、…スイッチング素子部216は、夫々がインバータ回路113の構成を成すように銅バーや、電線等で接続されており、さらに電力変換装置110の構成を成すように、
図1の平滑コンデンサ112や、交流出力端子A、 交流出力端子Bとも銅バーや電線等で接続されている。このことは、
図2では省略している。
【0020】
このときV-Y相のスイッチング素子部であるスイッチング素子部212、スイッチング素子部215は、左右に配置されたU-X相のスイッチング素子部211、スイッチング素子部214、及び、W-Z相のスイッチング素子部213、スイッチング素子部216の発熱の煽りを受ける為、冷却が最も困難となる。そこで、スイッチング素子の発生損失を少なくする配慮が必要となる。
【0021】
次に、実施例1における電力変換装置110内の制御装置114について説明する。制御装置114はマイコンなどを搭載した回路基板で構成しており、インバータ回路113の上アームのU相と上アームV相のスイッチング素子と、下アームのX相と下アームY相のスイッチング素子にオン制御信号を供給する働きをする。なお、残りのW相とZ相のスイッチング素子に対するオン制御信号の供給については図示が省略されている。
【0022】
具体的には、負荷120に流れる電流iを、電流検出器CTにより検出し、この検出結果から出力電流iが、外部から制御装置114に提供される出力電流指令値に、一致するように制御装置114にてU相、V相、X相、Y相の各スイッチング素子のオン時間T2、T5、T8、T11を独立して制御する。これにより交流出力端子Aと交流出力端子B間に1サイクル中でプラス側及びマイナス側に1パルスずつの電圧を発生させ、導電路121に流れる電流を制御することができる。
【0023】
例えば、移動台車122、移動台車123…の実稼働台数が少なく、出力電流指令値が、小さな値に設定されていた場合は、これらのパルス幅の内、各アームのパルス幅、例えばパルス幅T2、T5を短くするような制御が行われる。この場合、スイッチング素子全体の発生損失は小さい状態となる。
【0024】
また、反対に、例えば移動台車122、移動台車123…の実稼働台数が多く、出力電流指令値が、大きな値に設定されていた場合は、パルス幅T8、T11を長くするような制御が行われる。この場合、スイッチング素子全体の発生損失は大きい状態となる。
【0025】
次に、制御装置114から出力する信号により行われるインバータ回路113の制御動作におけるパルスを発生させるスイッチング素子の発生損失について
図3のタイミングチャートにより説明する。Tは、交流出力端子Aと交流出力端子B間に発生させるべき単相交流の2サイクルの期間を表わし、T=T13+T14の各1サイクル期間ずつで構成される。
【0026】
したがって、出力される単相交流電圧の周波数をfとすれば、T13=T14=1/fとなる。そして、まず、この1サイクル期間T13の半分のサイクル期間であるT13/2中には、下アームのZ相のスイッチング素子をオン(導通)制御させると共に、上アームではU相のスイッチング素子をオン制御させることにより電力変換装置の出力に、プラス側のパルスを発生させる。
【0027】
次に、残り半分のサイクル期間であるT13/2中には、上アームのW相のスイッチング素子を、同じくオン制御すると共に、下アームではX相のスイッチング素子をオン制御させることにより電力変換装置の出力に、マイナス側のパルスを発生させる。これにより交流出力端子Aと交流出力端子B間に周波数fの単相交流電圧が発生されるように制御する。
【0028】
そして、次のサイクル期間T14では、この1サイクル期間T14の半分のサイクル期間であるT14/2中には、下アームのZ相のスイッチング素子を、オン(導通)制御させると共に、上アームではV相のスイッチング素子を、オン制御させることにより電力変換装置の出力に、プラス側のパルスを発生させる。次に、残り半分のサイクル期間であるT14/2中には、上アームのW相のスイッチング素子を、同じくオン制御すると共に、下アームでは、Y相のスイッチング素子をオン制御させることにより電力変換装置の出力にマイナス側のパルスを発生させる。実施例1では、二相分の前記スイッチング素子アームを構成する上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子は、1サイクルごとに、交互に、前記出力電圧パルスを発生させるように制御されている。そのため、1サイクル中で、プラス側とマイナス側、それぞれ1つずつの電圧パルスを発生させているので、従来技術に比べて、スイッチング素子の発生損失を低減できる。
【0029】
これにより、T13期間と同じく交流出力端子Aと交流出力端子B間に周波数fの単相交流電圧が発生されるように制御する。なお、このようなインバータ主回路の制御には、通例、スイッチング素子の動作にデッドタイムを設けるのが一般的である。
図3では、例えば、スイッチング素子Wとスイッチング素子Zは、いずれかがオンとなっている。切り替え時に両方のスイッチング素子がオンになる期間が生じないように、デッドタイムという期間を設けている。デッドタイムは、両方のスイッチング素子がオフとなる期間であるため短絡を生じないようにできる。
図3に示すスイッチングパターンで、スイッチング素子U、スイッチング素子V、スイッチング素子W、スイッチング素子X、スイッチング素子Y、スイッチング素子Zが、スイッチングを繰り返すことにより、夫々のスイッチング素子は損失を発生し温度上昇することとなる。
【0030】
ところで、スイッチング素子の損失は定常損失及びスイッチング損失に分けられ、さらに、スイッチング損失は、ターンオン損失とターンオフ損失に分けられる。このいずれの損失も、
図3における出力電圧パルス及び出力電流iに依存する。
【0031】
図3のV
PNは、インバータ回路113の上アームU相、または上アームV相がオンした際に、
図1の交流出力端子Aと、交流出力端子Bに発生するパルスの波高値であり、−V
PNは、インバータ回路113の下アームX相、または下アームY相がオンした際に、
図1の交流出力端子Aと、交流出力端子Bに発生するパルスの波高値である。
【0032】
図3の出力電流i61は、プラス側パルス立ち上がり時の出力電流の瞬時値を示しており、出力電流i62は、プラス側パルス立ち下がり時の出力電流の瞬時値を示している。出力電流は、還流期間T3により減少する。
図2において述べたとおり、スイッチング素子V、スイッチング素子Yは、左右のスイッチング素子U、スイッチング素子X及びスイッチング素子W、スイッチング素子Zの発熱の煽りを受ける為、冷却が最も困難となる。そこで、実施例1における電力変換装置110では、前述の通りスイッチング素子Uとスイッチング素子V、スイッチング素子Xとスイッチング素子Yを、各サイクル毎に、切り替えてオンさせることで、スイッチング素子V、スイッチング素子Yの局所的過熱を抑え冷却効率を高めることが可能となる。
【0033】
図3では、T13期間において、スイッチング素子Uおよびスイッチング素子Xをオンとし、T14期間において、スイッチング素子スイッチング素子Vおよびスイッチング素子Yをオンとしていたが、これに限らない。例えば、T13期間において、スイッチング素子Uおよびスイッチング素子Yをオンとし、T14期間において、スイッチング素子スイッチング素子Vおよびスイッチング素子Xをオンとしてもよい。このようなタイミングで、スイッチング素子を制御することで、冷却が最も困難となるスイッチング素子V、スイッチング素子Yは、1サイクル中に、片方の素子のみがオンとなるので、温度上昇を抑えることができる。