(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定子と回転子を備え、前記固定子は、周方向に隣接して配置されている複数のティースに巻き付けられている固定子巻線と、固定子内側空間を形成する固定子内周面を有し、前記回転子は、前記固定子内側空間内に回転可能に配置され、周方向に沿って主磁極と補助磁極が交互に配置されているとともに、前記主磁極に磁石挿入孔が形成されており、前記磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている永久磁石電動機であって、
前記固定子巻線は、前記複数のティースに集中巻き方式で巻き付けられており、
前記回転子の外周面は、前記主磁極のd軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R1の円弧形状を有する第1外周面部分と、前記補助磁極のq軸と交差し、前記回転子の中心を中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有する第2外周面部分と、前記
第1外周面部分と前記第2外周面部分を接続する接続部分を有し、
前記回転子の直径Dは、[45mm≦D≦90mm]を満足するように設定され、
前記第1外周面部分と前記固定子内周面との間の距離Gは、[0.45mm≦G≦0.65mm]を満足するように設定され、
前記回転子の中心に対する前記第1外周面部分の開角度θ1は、[(50/P)度≦θ1≦(60/P)度](P:回転子の極対数)を満足するように設定され、
前記距離G、前記磁石挿入孔の幅Wおよび前記第1外周面部分と前記第2外周面部分との間のq軸上の距離Hは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqが、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]を満足するように設定されていることを特徴とする永久磁石電動機。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、空調器、車載機器等の駆動装置として永久磁石電動機が用いられている。例えば、特許文献1(特開2001−211582号公報)に開示されている永久磁石電動機が知られている。特許文献1に開示されている永久磁石電動機は、固定子と回転子を備え、回転子は、磁石挿入孔に挿入されている永久磁石を有している。永久磁石としては、安価なフェライト磁石や、フェライト磁石より高価であるが、残留磁束密度や保持力が大きい希土類磁石、例えば、ネオジウム(Nd)と鉄(Fe)を含むネオジウム磁石が用いられる。
永久磁石電動機のトルクTは、永久磁石による磁束量をΦ、q軸電流をIq、d軸電流をId、q軸インダクタンスをLq、d軸インダクタンスをLd、回転子の極対数をPとすると、以下の式で表される。
T=P[Φ・Iq+(Ld−Lq)Id・Iq]
上式の右辺の第1項は、永久磁石の磁束によるマグネットトルクを示し、第2項は、回転子の突極性(d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差)によるリラクタンストルクを示している。
ここで、(Lq>Ld)に設定するとともに、固定子巻線の電流を進角制御することによってリラクタンストルクが正となり、マグネットトルクとリラクタンストルクの和であるトルクTが増加する。
このため、従来の永久磁石電動機では、リラクタンストルクを有効に利用して永久磁石電動機のトルクTを増加させるために、q軸インダクタンスLqがd軸インダクタンスLdより大きくなるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の永久磁石電動機では、リラクタンストルクを利用して、永久磁石の使用量を低減するために、q軸インダクタンスLqがd軸インダクタンスLdより大きくなるように構成されている。
ここで、本発明者は、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)と永久磁石電動機の効率(鉄損や銅損)との関係について検討した。その結果、比(Lq/Ld)が大きくなると、すなわち、q軸インダクタンスLqがd軸インダクタンスLdに較べて大きくなると、鉄損が増加して、効率が低下することが分かった。なお、比(Lq/Ld)を小さくすると、リラクタンストルクが小さくなる。
また、近年、希土類磁石の性能を高める技術が開発されている。例えば、特開2008−263179号公報や特開2009−289994号公報に、ネオジウム磁石の外周面からディスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)を拡散させることによってネオジウム磁石の保持力を高める技術が開示されている。
このような高性能の永久磁石を用いることにより、マグネットトルクによって所望のトルク全部あるいは大部分を確保することができるようになった。一方、このような場合において、比(Lq/Ld)が大きいと、鉄損が増加して効率を向上させることができない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、効率の向上に重点をおき、リラクタンストルクの低下を許容しながら、効率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の永久磁石電動機は、固定子と回転子を備えている。
固定子は、周方向に隣接して配置されている複数のティースと、複数のティースに巻き付けられている固定子巻線と、固定子内側空間を形成する固定子内周面を有している。好適には、固定子は、周方向に沿って延在するヨークと、ヨークから径方向に沿って径方向内側に延在する複数のティースを有し、各ティースの先端側のティース先端面によって固定子内側空間が形成される。また、本発明の永久磁石電動機では、固定子巻線が集中巻き方式で各ティースに巻き付けられている集中巻き永久磁石電動機として構成されている。固定子巻線を集中巻方式で巻き付けることにより、分布巻方式で巻き付ける場合に比べて巻線作業が容易であり、銅損が少なく、また、小型に製造することができる。
回転子は、固定子内側空間内に回転可能に配置されている。また、回転子は、周方向に沿って主磁極と補助磁極が交互に配置されているとともに、主磁極に、軸方向に沿って延在する磁石挿入孔が形成されている。そして、磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている。永久磁石としては、好適には、性能が高められた希土類磁石、例えば、ディスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)が拡散されたネオジウム磁石が用いられる。もちろん、ネオジウム磁石等の高性能の希土類磁石を用いることもできる。磁石挿入孔に挿入された永久磁石によって、主磁極と補助磁極が規定され、また、主磁極のd軸と補助磁極のq軸が規定される。なお、d軸は、回転子の中心と主磁極の周方向中央を結ぶ線として規定され、q軸は、回転子の中心と補助磁極の周方向中央を結ぶ線として規定される。
回転子の外周面は、主磁極のd軸と交差
し、回転子の中心を中心点とする半径R1の円弧形状を有する第1外周面部分と、補助磁極のq軸と交差
し、回転子の中心を中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有する第2外周面部分
と、第1外周面部分と第2外周面部分を接続する接続部分を有している。
本発明は、直径Dが[45mm≦D≦90mm]の範囲内に設定されている回転子を備える永久磁石電動機として構成される。
また、第1外周面部分と固定子内周面との間の距離(エアギャップ)Gが、[0.45mm≦G≦0.65mm]の範囲内に設定されている。距離Gが0.45mmより短い場合には、エアギャップ中の空間高調波が増加する。このため、鉄損が増加する。距離Gが0.65mmより長い場合には、エアギャップの磁気抵抗が増大する。このため、固定子巻線に流す電流を増大させる必要があり、銅損が増大する。
また、回転子の中心に対する第1外周面部分の開角度θ1が、[(50/P)度≦θ1≦(60/P)度](P:回転子の極対数)の範囲内に設定されている。回転子の直径Dが[45mm≦D≦90mm]の範囲内に設定されている集中巻き方式の永久磁石電動機では、第1外周面部分の開角度θ1が、(50/P)度より小さい場合、あるいは、(60/P)度より大きい場合には、コギングトルクが増加し、騒音や振動が増大する。
そして、距離G、磁石挿入孔の幅Wおよび第1外周面部分と第2外周面部分との間のq軸上の距離(第2外周面部分の、q軸上の深さ)Hは、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)が、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるように設定されている。(Lq/Ld)が0.9より小さい場合には、鉄損および銅損が増加して効率が低下する。(Lq/Ld)が1.1より大きい場合には、鉄損が増大して効率が低下する。すなわち、(Lq/Ld)が、0.9と1.1の範囲内に設定されていることにより、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
本発明では、リラクタンストルクの低下を許容しながら、効率を向上させることができる。
本発明の他の形態では、
接続部分は、直線状に延在している。接続部分は、好適には、d軸に平行(「略平行」を含む)に直線状に延在するように形成されるが、径方向に平行(「略平行」を含む)に直線状に延在するように形成することもできる。接続部分が直線状に延在していると、第1外周面部分と第2外周面部分との間の磁気抵抗が大きく変化する。これにより、磁束が第1外周面部分に集中し、効率が
向上する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の永久磁石電動機では、リラクタンストルクの低下を許容しながら、効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、本明細書中では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子の中心(回転中心)を通る回転中心線の延在方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直交する方向から見て、回転子の中心を中心点とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直交する方向から見て、回転子の中心を通る方向を示す。
【0009】
本発明の永久磁石電動機の第1実施形態100を、
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の永久磁石電動機100の断面図であり、
図2は、
図1の要部拡大図である。
永久磁石電動機100は、固定子110と、固定子110に対して回転可能に支持されている回転子120により構成されている。
固定子110は、板状の電磁鋼板を複数枚積層して形成された固定子コアにより構成されている。固定子110は、周方向に沿って延在するヨーク111と、ヨーク111から径方向に沿って回転中心O側(径方向内側)に延在するティース112を有している。ティース112は、径方向に沿って延在するティース基部113と、ティース基部113の径方向内側に連設され、周方向に沿って延在するティース先端部114により形成されている。ティース先端部114の径方向内側には、ティース先端面114aが形成されている。ティース先端面114aは、回転中心Oを中心点とする円弧形状に形成されている。各ティース112のティース先端面114aによって、固定子110の内側に固定子内側空間が形成される。ティース先端面114aが、本発明の「固定子内周面」に対応する。
周方向に隣接するティース112によりスロット115が形成されている。
本実施形態の永久磁石電動機100では、ティース112(スロット115)が6個設けられている(6スロット)。そして、固定子巻線(図示省略)は、集中巻き方式で各ティース112(詳しくは、ティース基部113)に巻き付けられている。
固定子巻線を集中巻き方式で巻き付ける方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、固定子110の軸方向両側に、絶縁特性を有する樹脂により形成された樹脂ボビンを配置する。樹脂ボビンは、周方向および軸方向に沿って延在する外壁部、外壁部より径方向内側に配置され、周方向および軸方向に沿って延在する複数の内壁部、外壁部と各内壁部を連結するように径方向に沿って延在する複数の連結部、外壁部、内壁部および連結部により形成される凹部を有する。樹脂ボビンは、外壁部、連結部および内壁部が、それぞれ固定子110のヨーク111、ティース基部113およびティース先端部114に対向する位置に配置される。そして、樹脂ボビンを固定子110の軸方向両側に配置した状態で、樹脂ボビンの各連結部を介して固定子110の各ティース112(ティース基部113)に固定子巻線を巻き付ける。
固定子巻線を集中巻方式で巻き付けることにより、分布巻方式で巻き付ける場合に比べて、巻線作業が容易であり、銅損が少なく、また、小型に製造することができる。
【0010】
回転子120は、板状の電磁鋼板を複数枚積層して形成された回転子コアにより構成されている。回転子120は、内周面210により形成される回転軸挿入孔に回転軸(図示省略)が挿入され、固定子110の固定子内側空間内に回転可能に配置されている。本実施形態では、回転子120は、第1外周面部分120a(後述する)とティース先端面114a(固定子内周面)との間に空隙(エアギャップ)Gが保持されるように配置されている。
回転子120は、周方向に沿って主磁極[A]〜[D]と補助磁極[AB]〜[DA]が交互に配置されている。本実施形態では、回転子120の主磁極の数(極数)が4に設定されている。すなわち、4極構造の回転子120を有している。
各主磁極には磁石挿入孔131、132が形成され、磁石挿入孔131、132には永久磁石141、142が挿入されている。永久磁石141、142としては、好適には、性能が高められた希土類磁石、例えば、ディスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)が拡散されたネオジウム磁石が用いられる。もちろん、所望のトルクに応じて、ネオジウム磁石等の希土類磁石を用いることもできる。
永久磁石141、142によって、主磁極[A]〜[D]と補助磁極[AB]〜[DA]が規定され、また、主磁極[A]〜[D]のd軸と補助磁極[AB]〜[DA]のq軸が規定される。
d軸は、回転中心Oと主磁極[A]〜[D]の周方向中心を結ぶ線として規定され、q軸は、回転中心Oと補助磁極[AB]〜[DA]の周方向中心を結ぶ線として規定される。
【0011】
回転子120の外周面は、d軸と交差する第1外周面部分120a、q軸と交差し、第1外周面部分120aより径方向内側に配置されている第2外周面部分120b、第1外周面部分120aと第2外周面部分120bを接続する接続部分120cおよび120dを有している。
本実施形態では、第1外周面部分120aは、回転中心Oを中心点とする半径R1の円弧形状を有し、第2外周面部分120bは、回転中心Oを中心点とする半径R2(<R1)の円弧形状を有している。また、接続部分120c、120dは、d軸に平行(「略平行」を含む)に直線状に延在している。接続部分120c、120dは、回転中心Oを通る径方向に平行(「略平行」を含む)に直線状に延在するように形成することもできる。なお、第1外周面部分120a、第2外周面部分120b、接続部分120c、120dの形状は、これに限定されない。
【0012】
本実施形態では、主磁極[A]〜[D]には、直線状に延在する第1磁石挿入孔131と第2磁石挿入孔132が、d軸を挟んで両側に、回転中心O側に飛び出ているV字を構成するように形成されている。
第1磁石挿入孔131は、内周側壁部131a、外周側壁部131b、内周側端壁部131c、外周側端壁部131d、連結用端壁部131eを有している。第2磁石挿入孔132は、内周側壁部132a、外周側壁部132b、内周側端壁部121c、外周側端壁部132d、連結用端壁部132eを有している。
第1磁石挿入孔131と第2磁石挿入孔132の間には、d軸に平行(「略平行」を含む)に延在する内周側端壁部131cと132cによって中央ブリッジ部125が形成されている。また、第1磁石挿入孔131と第2外周面部分120bの間には、外周ブリッジ部126が形成され、第2磁石挿入孔132と第2外周面部分120bの間には、外周ブリッジ部127が形成されている。また、q軸に平行(「略平行」を含む)に延在する第1磁石挿入孔131の連結用端壁部131eと第2磁石挿入孔132の連結用端壁部132eによって、第1磁石挿入孔131と第2磁石挿入孔132の間に通路が形成されている。
第1磁石挿入孔131と第2磁石挿入孔132には、第1永久磁石141と第2永久磁石142が挿入されている。
第1永久磁石141は、内周壁141a、外周壁141b、内周側端壁141c、外周側端壁141dにより、断面が四角形状に形成されている。第1永久磁石141の内周側端壁141cと第1磁石挿入孔131の内周側端壁部131cとの間に空隙部131fが形成され、第1永久磁石141の外周側端壁141dと第1磁石挿入孔131の外周側端壁部131dとの間に空隙部131gが形成されている。第2永久磁石142は、内周壁142a、外周壁142b、内周側端壁142c、外周側端壁142dにより、断面が四角形状に形成されている。第2永久磁石142の内周側端壁142cと第2磁石挿入孔132の内周側端壁部132cとの間に空隙部132fが形成され、第2永久磁石142の外周側端壁142dと第2磁石挿入孔132の外周側端壁部132dとの間に空隙部132gが形成されている。
【0013】
本実施形態の永久磁石電動機100の回転子120は、直径Dが、[45mm≦D≦90mm]の範囲内に設定されている。
また、第1外周面部分120aとティース先端面114a(固定子内周面)との間の距離(エアギャップ)Gが、[0.45mm≦G≦0.65mm]の範囲内に設定されている。距離Gが0.45mmより短い場合には、エアギャップ中の空間高調波が増加する。このため、鉄損が増加する。距離Gが0.65mmより長い場合には、エアギャップの磁気抵抗が増大する。このため、固定子巻線に流す電流を増大させる必要があり、銅損が増大する。
また、回転中心Oに対する第1外周面部分120aの開角度θ1が、[(50/P)度≦θ1≦(60/P)度]の範囲内に設定されている。なお、Pは、回転子120の極対数(本実施形態では「2」)である。第1外周面部分120aの開角度θ1は、第1外周面部分120aと周方向一方側の接続部分120cとの接続点Mと、第1外周面部分120aと周方向他方側の接続部分120dとの接続点Nの間の角度である。回転中心Oに対する第2外周面部分120bの開角度θ2は、回転子120の極対数Pと第1外周面部分120aの開角度θ1によって定まる。回転子の直径Dが[45mm≦D≦90mm]の範囲内に設定されている集中巻き方式の永久磁石電動機では、第1外周面部分120aの開角度θ1が、(50/P)度より小さい場合、あるいは、(60/P)度より大きい場合には、コギングトルクが増加し、騒音や振動が増大する。
【0014】
ここで、回転子120におけるd軸磁束およびq軸磁束の流れについて、
図2を参照して説明する。
なお、
図2において、Gは、回転子120の第1外周面部分120aとティース先端面114a(固定子内周面)との間の距離、すなわち、回転子120と固定子110との間のエアギャップを示している。また、Wは、第1磁石挿入孔131および第2磁石挿入孔132の幅(内周側壁部と外周側壁部との間の間隔)を示している。磁石挿入孔の幅は、磁石挿入孔の内周側壁部と外周側壁部の間の距離で表される。また、Hは、第1外周面部分120aと第2外周面部分120bとの間の、q軸上の距離、すなわち、第2外周面部分120bの、q軸上の深さを示している。
回転子120では、
図2に太い実線矢印で示されている経路でd軸磁束が流れ、太い破線矢印で示されている経路でq軸磁束が流れる。
d軸磁束が流れる通路のd軸インダクタンスLdは、[エアギャップG+第1磁石挿入孔131の幅W+第2磁石挿入孔132の幅W+エアギャップG]によって、すなわち、[2G+2W]によって規定される。
また、q軸磁束が流れる通路のq軸インダクタンスLqは、[エアギャップG+第2外周面部分120bの深さH+第2外周面部分120bの深さH+エアギャップG]によって、すなわち、[2G+2H]によって規定される。
以上のことから、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)は、[エアギャップG+磁石挿入孔(第1の磁石挿入孔131、第2の磁石挿入孔132)の幅W]に対する[エアギャップG+第2外周面部分120bの深さH]の比によって、すなわち、エアギャップG、磁石挿入孔の幅Wおよび第2外周面部の深さHによって規定されることが分かる。
【0015】
次に、第2外周面部分の深さHと、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、鉄損、銅損、効率の関係を、
図3のグラフを参照して説明する。
図3において、横軸は深さH(mm)を示し、縦軸は、インダクタンス(H)、鉄損(W)、銅損(W)および効率(%)が示されている。
図3から、d軸インダクタンスLdは、第2外周面部分120bの深さHに関係なくほぼ一定である。また、q軸インダクタンスLqは、深さHが深くなるに従って非線形に減少していく。また、銅損は、深さHが浅い領域では少ないが、深い領域において急激に増大する。また、鉄損は、中間領域において減少し、中間領域に前後において増大する。
ここで、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)と、銅損、鉄損および損失との関係を把握することができる。すなわち、比(Lq/Ld)が1.1より大きい領域では、鉄損が多いため、効率はよくない。そして、比(Lq/Ld)が1.1以下になると、銅損はほぼ同じであるが、鉄損が減少するため、効率が良くなっている。さらに、比(Lq/Ld)が、0.9より小さくなると、鉄損が増加するとともに、銅損も増加するため、効率が悪くなっている。
以上のことから、比(Lq/Ld)が、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるように設定することによって、効率を向上させることができることが理解できる。
【0016】
以上のように、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)は、[エアギャップG]、[磁石挿入孔(第1の磁石挿入孔131、第2の磁石挿入孔132)の幅W]および[第2外周面部分120bの深さH]によって規定されることが分かった。
また、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)が、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるように設定することによって、効率を向上させることができることが分かった。
したがって、[エアギャップG]、[磁石挿入孔(第1の磁石挿入孔131、第2の磁石挿入孔132)の幅W]と[第2外周面部分120bの深さH]を、d軸インダクタンスLdに対するq軸インダクタンスLqの比(Lq/Ld)が、[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるよう設定することによって、効率を向上させることができる。
[エアギャップG]、[磁石挿入孔の幅W]と[第2外周面部分120bの深さH]を、(Lq/Ld)が[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるように設定する方法としては、適宜の方法を用いることができる。例えば、先ず、エアギャップGを設定し、その後、(Lq/Ld)が[0.9≦(Lq/Ld)≦1.1]の範囲内となるように[磁石挿入孔の幅W]と[第2外周面部分120bの深さH]を設定する方法を用いることができる。
【0017】
なお、永久磁石電動機のd軸インダクタンスLdやq軸インダクタンスLqを測定する方法としては、公知の種々の測定方法を用いることができる。例えば、「電気学会誌・論文誌D,第113巻,第11号,頁1330−1331,1993年」に記載されている測定方法を用いることができる。
【0018】
第1実施形態の永久磁石電動機100では、4極構造(極対数P=2)で、主磁極に、回転中心側に飛び出ているV字を構成するように磁石挿入孔を形成した回転子120を用いたが、回転子の極数や、主磁極に形成する磁石挿入孔の配置形状は種々変更可能である。
【0019】
第2実施形態の永久磁石電動機の回転子220が、
図4に示されている。
図4に示されている回転子220は、6極構造(極対数P=3)で、主磁極に、回転中心側に飛び出ているV字を構成するように磁石挿入孔が形成されている。
回転子220の外周面は、d軸と交差する第1外周面部分220a、q軸と交差する第2外周面部分220b、接続部分220c、220dを有している。
回転子220には、第1実施形態の回転子120と同様に、直線状に延在する第1磁石挿入孔231と第2磁石挿入孔232が、d軸を挟んで両側に、回転中心O側に飛び出ているV字を構成するように形成されている。また、第1磁石挿入孔231と第2磁石挿入孔232に、断面が四角形状を有する第1永久磁石241と第2永久磁石242が挿入されている。また、第1実施形態の回転子120と同様に、中央に中央ブリッジ部が形成され、外周側に外周ブリッジ部が形成され、磁石挿入孔の両端部に空隙が形成されている。
【0020】
第3実施形態の永久磁石電動機の回転子320が、
図5に示されている。
図5に示されている回転子320は、4極構造(極対数P=2)で、主磁極に、d軸と交差する方向に直線状に延在するように磁石挿入孔が形成されている。
回転子320の外周面は、d軸と交差する第1外周面部分320a、q軸と交差する第2外周面部分320b、接続部分320c、320dを有している。
回転子320には、d軸と交差する方向、好適には、d軸と直交(「略直交」を含む)する方向に直線状に延在するように磁石挿入孔331が形成されている。また、磁石挿入孔331に、断面が四角形状を有する永久磁石341が挿入されている。また、外周側に外周ブリッジ部が形成され、磁石挿入孔の両端部に空隙が形成されている。
【0021】
第4実施形態の永久磁石電動機の回転子420が、
図6に示されている。
図6に示されている回転子420は、4極構造(極対数P=2)で、主磁極に、d軸と交差し、回転中心側に飛び出ている円弧形状に沿って延在するように磁石挿入孔が形成されている。
回転子420の外周面は、d軸と交差する第1外周面部分420a、q軸と交差する第2外周面部分420b、接続部分420c、420dを有している。
回転子420には、d軸と交差し、d軸上に中心点を有するとともに、回転中心側に飛び出ている円弧形状に沿って延在するように磁石挿入孔431が形成されている。また、磁石挿入孔431に、断面が円弧形状を有する永久磁石441が挿入されている。また、外周側に外周ブリッジ部が形成され、磁石挿入孔の両端部に空隙が形成されている。
【0022】
第5実施形態の永久磁石電動機の回転子520が、
図7に示されている。
図7に示されている回転子520は、4極構造(極対数P=2)で、主磁極に、d軸と交差し、回転中心側に飛び出ている台形形状を構成するように磁石挿入孔が形成されている。
回転子520の外周面は、d軸と交差する第1外周面部分520a、q軸と交差する第2外周面部分350b、接続部分520c、520dを有している。
回転子520には、直線状に延在する第1〜第3磁石挿入孔541〜543が、d軸と交差し、回転中心側の飛び出ている台形形状を構成するように形成されている。また、第1〜第3磁石挿入孔531〜533に、断面が四角形状を有する第1〜第3永久磁石541〜543が挿入されている。また、第2磁石挿入孔542と第1磁石挿入孔541および第3磁石挿入孔543の間に中央ブリッジ部が形成され、外周側に外周ブリッジ部が形成され、第1磁石挿入孔531および第3磁石挿入孔533の両端部に空隙が形成されている。
【0023】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である、
固定子のスロット数や回転子の極対数(極数)は、適宜変更可能である。
回転子の主磁極に形成される磁石挿入孔の形状、数や配置位置、磁石挿入孔に挿入される永久磁石の形状、数や挿入位置等は適宜変更可能である。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる、