(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869938
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】赤色系果汁入り発酵麦芽飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 5/04 20060101AFI20210426BHJP
C12G 3/02 20190101ALI20210426BHJP
【FI】
C12C5/04
C12G3/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-219463(P2018-219463)
(22)【出願日】2018年11月22日
(62)【分割の表示】特願2014-235144(P2014-235144)の分割
【原出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-22535(P2019-22535A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(72)【発明者】
【氏名】古川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】上原 綾子
【審査官】
藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−030577(JP,A)
【文献】
特開2006−050979(JP,A)
【文献】
特開2010−246508(JP,A)
【文献】
特開2014−128251(JP,A)
【文献】
特開2005−312302(JP,A)
【文献】
特開2012−029628(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/000990(WO,A1)
【文献】
特開平05−244924(JP,A)
【文献】
生物工学会誌 (2011) Vol.89, No.9, p.557, [2018年1月19日検索]、インターネット <URL: https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8909/8909_biomedia_>
【文献】
醸協 (1988) Vol.83, No.7, pp.436-441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 5/00
C12G 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁(乳酸菌発酵した果汁を除く)を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、該赤色系果汁がストレート果汁、濃縮果汁および濃縮透明果汁から選択され、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整したことを特徴とする、果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料。
【請求項2】
発酵麦芽飲料が、ビール又は発泡酒であることを特徴とする、請求項1に記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料由来の香味と赤色系果汁による香味及び色調を調和させ、該香味、色調の付与と、該果汁を添加した場合に発生するオフフレーバーを抑制して、芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料、及び、その製造方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、嗜好の多様化に合わせて、ビール等の発酵麦芽飲料においても、特徴的で多様な香味を持ったビールの商品が提供され、クラフトビールとしての人気を博している。クラフトビールでは、原料に、いわゆるビールの主原料でない素材を積極的に使用し、新しい味わいを作出しようとする試みがなされ、様々な製品が製造され、販売されている。該製品において、ビール製造工程において、果実を添加して、その成分を浸出させ、果実の香味をビールに付与する方法が知られている。該果実の香味をビールに付与する方法は、ヨーロッパのビールメーカーを中心に行われてきており、例えば、果汁などを発酵中、又は貯蔵中に加えることによって、果汁の香味とビールの香味を調和させ、特徴のあるビールを製造し、提供されている(フレッド・エクハード他著、田村功訳、「世界ビール大百科」、株式会社大修館書店、1997.12.10.、p369−370)。
【0003】
ビール等の各種発酵アルコール飲料において、その原料に、果実や果汁等を添加する方法も開示されている。例えば、特開2005−312302号公報には、(1)麦芽を含む仕込液を糖化した麦汁と、(2)果汁を含む仕込み液を調製し、該仕込み液を混合し、発酵することにより、麦芽に由来するビールらしい香味を失わず、果汁由来の香味を調和した発酵麦芽飲料の製造方法が、特開2009−77641号公報には、梅酒や、果実酒やビール等の酒類に、果肉ピューレを添加し、圧力50〜350kg・cm
2でホモゲナイズした混濁酒類の製造方法が、特開2012−29628号公報には、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、リナロール、ゲラニルアセテート、β−シトロネロール、及びネロールを含んだ、赤ブドウ様及びマンゴ様の香りをもつ、フルーツ様香気のビールテイスト飲料が開示されている。
【0004】
また、特開2011−30577号公報には、ブドウ果汁、リンゴ果汁、ピーチ果汁のような果汁を含み、糖化液を実質的に含まない発酵原料を乳酸発酵させた乳酸発酵液と、糖化液を含む発酵原料を用いて酵母で発酵することにより、酸味とフルーティーさをもったビールや、発泡酒のような発酵飲料について、特開2005−124591号公報、WO2004/000990には、トウモロコシ、馬鈴薯及び米等のシロップ、アミノ酸含有材料のような窒素源、ホップ、カラメル色素、ベニバナ色素、くちなし色素、赤キャベツ色素、ブドウ色素のような色素等を原料として、該色素を付与した、麦類、麦芽を使用しない発泡性ビール様アルコール飲料の製造方法について開示されている。
【0005】
上記のように、各種アルコール飲料において、そのアルコール飲料の原料の中に、果実や、果汁を添加する方法が開示されている中で、発酵麦芽飲料の製造において、果汁として、アントシアニンを含有する赤色系果汁を原料に使用し、添加した場合には、果実の香りや麦芽の発酵由来の芳醇なフルーティーな香りとは別に、腐敗臭のようなオフフレーバーが発生し、果汁添加による華やかな香りを損ね、爽やかな香味と色調の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料が提供できないという問題がある。したがって、発酵麦芽飲料の製造において、赤色系果汁を添加し、芳醇で爽やかな香味と色調の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料を製造するには、該オフフレーバーの発生を効果的に抑制する方法を提供することが課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−124591号公報。
【特許文献2】特開2005−312302号公報。
【特許文献3】特開2009−77641号公報。
【特許文献4】特開2011−30577号公報。
【特許文献5】特開2012−29628号公報。
【特許文献6】WO2004/000990。
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】フレッド・エクハード他著、田村功訳、「世界ビール大百科」、株式会社大修館書店、1997.12.10.、p369−370。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料由来の香味と赤色系果汁による香味及び色調を調和させ、該香味、色調の付与と、該果汁を添加した場合に発生するオフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、アントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造において、該果汁を添加した場合に発生するオフフレーバーを抑制する方法について鋭意検討する中で、該アントシアニンを含有する赤色系果汁を使用した場合に発生するオフフレーバーの異臭は、ダイアセチルであることを突き止めた。そして、アントシアニンを含有する赤色系果汁を使用した場合には、他の果汁を使用した場合に比べて、ダイアセチルの値が顕著に高いことを確認した。該知見に基づいて、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を、特定濃度以下に調整することにより、オフフレーバーが無く、発酵麦芽飲料由来の香味と赤色系果汁による香味及び色調を調和させた、芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整することにより、果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料を提供することからなる。
【0011】
ここで、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値は、次の方法によって測定される値である:「改訂BCOJビール分析法8.16.3に記載のキャピラリーカラムを装着した電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフィー法に準じた測定方法」
【0012】
また、本発明において、アントシアニンを含有する赤色系果汁を調製するための果実の代表的なものとしては、コンコード、ブドウ、ラズベリー、サワーチェリー、チェリー、ブルーベリー、ストロベリー、クランベリー、ボイソンベリー、アローニャ、ブラックカラント、などを挙げることができる。
【0013】
本発明において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値の調整は、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度により行うことができる。該発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整として、果汁の添加時期が、主発酵開始から、貯蔵終了前であり、果汁添加時の温度が、10℃未満であるように調整した、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度を採用することができる。また、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期の調整を、果汁の添加時期が、主発酵開始後、果汁添加時の浮遊酵母数が、3million-cells/ml〜100million-cells/mlである添加時期のタイミングによって行うことができる。
【0014】
本発明の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、該発酵麦芽飲料としては、ビール又は発泡酒等の発酵麦芽飲料を挙げることができる。
【0015】
本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整により、発酵麦芽飲料中のダイアセチル値を0.06ppm未満に調整することを特徴とする果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法を包含する。該発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整は、果汁の添加時期の調整が、果汁の添加時期を主発酵開始から、貯蔵終了前であるか、或いは、主発酵開始後、果汁添加時の浮遊酵母数が、3million-cells/ml〜100million-cells/mlである時期であり、かつ、果汁添加時の温度が、10℃未満であるように調整することにより、行うことができる。
【0016】
本発明の発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料の発酵液に対する、果汁の添加量は、0.5〜50w/v%の範囲を採用することができる。
【0017】
また、本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整により、発酵麦芽飲料中のダイアセチル値を0.06ppm未満に調整することを特徴とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料のオフフレーバーの抑制方法の発明を包含する。
【0018】
すなわち、具体的には本発明は、[1]麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整したことを特徴とする、果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料や、[2]発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値の調整が、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度により調整されたものであることを特徴とする上記[1]に記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料や、[3]発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度による調整において、果汁の添加時期が、主発酵開始から、貯蔵終了前であり、果汁添加時の温度が、10℃未満であることを特徴とする上記[2]に記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料や、[4]発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度による調整において、果汁の添加時期の調整を、果汁の添加時期が、主発酵開始後であり、浮遊酵母数が、3million-cells/ml〜100million-cells/mlであるように調整されたことを特徴とする上記[2]に記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料や、[5]発酵麦芽飲料が、ビール又は発泡酒であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料からなる。
【0019】
また、本発明は、[6]麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整により、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整することを特徴とする果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法や、[7]発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整と、果汁の添加時期の調整が、果汁の添加時期を主発酵開始から、貯蔵終了前であるか、或いは、主発酵開始後で、果汁添加時の浮遊酵母数が、3million-cells/ml〜120million-cells/mlである時期であり、かつ、果汁添加時の温度が、10℃未満であるように調整することを特徴とする、上記[6]に記載の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法や、[8]発酵麦芽飲料の発酵液に対する、果汁の添加量が固形分として、0.5〜50w/v%であることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載の発酵麦芽飲料の製造方法や、[9]麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法において、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整により、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整することを特徴とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料のオフフレーバーの抑制方法からなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料由来の香味と赤色系果汁による香味及び色調を調和させ、該香味、色調の付与と、該果汁を添加した場合に発生するオフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料、及び、その製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を0.06ppm未満に調整することにより、果汁の香味及び色調の付与と、オフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料を提供することからなる。
【0022】
本発明において、発酵麦芽飲料に添加されるアントシアニンを含有する赤色系果汁を調製するための果実としては、特に限定されないが、代表的なものとしては、コンコード、ブドウ、ラズベリー、サワーチェリー、チェリー、ブルーベリー、ストロベリー、クランベリー、ボイソンベリー、アローニャ、ブラックカラント、を挙げることができる。更に、カーランツ(カシス)、グーズベリー(スグリ)、サクランボを挙げることができる。
【0023】
赤色系果汁の形態は、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮透明果汁などが挙げられるが、その形態は問わない。添加量は、通常、発酵麦芽飲料の発酵液に対して、0.5%〜50w/v%の範囲で添加されるが、好ましくは、0.5w/v%〜30w/v%の範囲で、添加される。
【0024】
本発明の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値は、0.06ppm未満に調整されるが、好ましくは、0.04ppm以下、特に、好ましくは、0.03〜0.01ppmに調整される。
【0025】
本発明において、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値の調整は、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度により行うことができるが、該発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期と、果汁添加時の温度の調整として、果汁の添加時期が、主発酵(通常7日)開始から、貯蔵(通常、2〜3週間)終了前であり、果汁添加時の温度が、10℃未満、とくに好ましくは、5℃未満であるように調整することによって、発酵麦芽飲料中のダイアセチルの値を所定の値に調整することができる。
【0026】
また、発酵麦芽飲料製造工程における、果汁の添加時期の調整を、果汁の添加時期が、発酵開始後、果汁添加時の浮遊酵母数が、3million-cells/ml〜100million-cells/mlである添加時期のタイミングによって、特に好ましくは、20million-cells/ml〜70million-cells/mlである添加時期のタイミングによって、行うことができる。
【0027】
本発明の赤色系果汁入り発酵麦芽飲料の製造方法において、本発明で特定する赤色系果汁の添加の点を除いて、発酵麦芽飲料の原料、添加物、製造条件及び方法において、通常の発酵麦芽飲料の製造方法と変わるところはない。
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
[赤色系果汁添加発酵試験]
【0030】
<試験方法>
赤色系果汁添加発酵試験を、以下の方法で行った。
1.1Lスケールで発酵試験を実施した。麦芽飲料の原料配合は、麦芽100%で実施し、一般的な麦汁の製法を取った。糖化、麦汁濾過を行い、得られた麦汁に、ホップ(チェコ産ザーツ種)を0.5g/1Lを加え90分間煮沸した。得られた液(糖度12°P)を発酵前液とした。
2.「主発酵開始時」果汁添加の水準は、発酵液調製の段階で果汁を添加した。ビール酵母の添加は、ビール酵母を添加時酵母数=10million-cells/mlとなるように添加し、10℃で1週間発酵させた。
3.「主発酵中添加」サンプルは、糖度が4.3°Pを切ってから果汁を添加した。主発酵終了後、沈降した酵母を除去し、後発酵を4℃で10日間実施した。濾紙濾過後、遠心分離を行って、酵母を除去した。
【0031】
<評価>
調製した、果汁入り発酵麦芽飲料について、6名のパネラーにより、官能評価を実施した。評価は、果汁感(果汁の香味)と、複雑な香味の調和(発酵麦芽飲料の香味との調和)の「有」(感じられる)又は「無」(感じられない)の官能評価の結果で評価した。
【0032】
<結果>
結果を、表1に示す。「主発酵開始時」に赤色系果汁を添加した試験品は、ダイアセチルの値が高く、オフフレーバーが強く、全体の香味の調和を損ねた。主発酵開始後に果汁を添加した試験品は、ダイアセチルの値が低く、オフフレーバーが無く、果実香味と、麦芽飲料の香味との調和された良好な香味となった。
【0033】
【表1】
【実施例2】
【0034】
[ダイアセチルの濃度のオフレーバーによる香味への影響]
【0035】
<試験方法>
ダイアセチルの濃度と、該ダイアセチルの濃度がオフレーバーによる香味へ与える影響
についての試験を、以下の方法で行った。
1.実施例1と同じ方法で麦汁を調製した。
2.ビール酵母を添加時酵母数=10million-cells/mlとなるように添加し、10℃で1週間発酵させた。
3.糖度が4.3°Pとなった時点で、果汁を添加した。主発酵終了後、沈降した酵母を除去し、後発酵を4℃で10日間実施した。
4.濾紙濾過後、遠心分離を行って、酵母を除去した。酵母沈降後の試験品に、表2に示すとおりにダイアセチルを添加し、官能評価を実施した。
【0036】
<評価>
官能評価は、4名のパネラーにより、官能評価を実施した。評価は、果汁感(果汁の香味)と、複雑な香味の調和(発酵麦芽飲料の香味との調和)の「有」(感じられる)又は「無」(感じられない)の官能評価の結果で評価した。オフフレーバーについての官能評価は、以下の評価基準により、行い、評価の多い数値で示した。
(評価基準):
「3」:オフフレーバーによる香味への影響が強く、果汁入り飲料への悪影響が感じられた。
「2」:オフフレーバーによる香味への影響があり、果汁入り飲料への悪影響が感じられたが、影響は軽微であった。
「1」:オフフレーバーによる香味への影響が無く、果汁入り飲料への悪影響が感じられなかった。
【0037】
<結果>
結果を、表2に示す。ラズベリー果汁を発酵液中に添加したサンプル(ダイアセチル濃度0.01ppm)に、ダイアセチルを添加したところ、発酵麦芽飲料のダイアセチルの値が0.06ppm未満(0.05ppm以下)であれば、オフフレーバーによる香味への悪影響がなく、かつ果汁感と発酵麦芽飲料の香味の調和((果汁感と発酵麦芽との複雑な香味の調和)が得られた。
【0038】
【表2】
【実施例3】
【0039】
[果汁添加時期と浮遊酵母数]
【0040】
<試験方法>
果汁添加時期と浮遊酵母数が、オフレーバーによる香味へ与える影響についての試験を、以下の方法で行った。
1.実施例1と同じ方法で発酵前液を調製した。
2.ビール酵母を添加時酵母数=10million-cells/mlとなるように添加し、10℃で1週間発酵させた。
3.糖度が4.3°Pとなった後、遠心分離による酵母除去を行った。試験水準の酵母数になるように発酵に用いた酵母と同じ酵母を添加して調製した。
4.主発酵終了後、沈降した酵母を除去し、果汁を添加したのち後発酵を4℃で10日間実施した。
5.濾紙濾過後、遠心分離を行って、酵母を除去し、官能評価を実施した。
【0041】
<評価>
調製した、果汁入り発酵麦芽飲料について、5名のパネラーにより、官能評価を実施した。評価は、果汁感(果汁の香味)と、複雑な香味の調和(発酵麦芽飲料の香味との調和)の「有」(感じられる)又は「無」(感じられない)の官能評価の結果で評価した。また、渋味の評価は、次の基準に従った。
「1」:香味を損ねない程度にある。
「2」:僅かに香味を損ねるが、問題ない範囲である。
「3」:明らかに香味を損ねるほどに渋味が強い。
【0042】
<結果>
結果を、表3に示す。果汁添加時に、酵母細胞数が、3million-cells/ml以上含まれていれば、果汁感と発酵麦芽飲料の香味の調和((果汁感と発酵麦芽との複雑な香味の調和)が得られた。120million-cells/mlでは、雑味(渋味)が目立った。
【0043】
【表3】
【実施例4】
【0044】
[既存品赤色果汁入り発酵麦芽飲料のダイアセチル濃度試験]
【0045】
<試験方法>
既存(市販)品赤色果汁入り発酵麦芽飲料について、ダイアセチル濃度を測定した。
【0046】
<結果>
結果を、表4に示す。表4に示されるように、測定した既存(市販)品赤色果汁入り発酵麦芽飲料は、飲料中のダイアセチル濃度が高めに推移しており、すべてのサンプルにおいて、オフフレーバーが感じられた。
【0047】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、麦芽及びアントシアニンを含有する赤色系果汁を原料とする赤色系果汁入り発酵麦芽飲料において、発酵麦芽飲料由来の香味と赤色系果汁による香味及び色調を調和させ、該香味、色調の付与と、該果汁を添加した場合に発生するオフフレーバーを抑制した芳醇で清涼感を有する赤色系果汁入り発酵麦芽飲料を提供する。