(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記INP又は前記INPの機能的断片が、iceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZで構成されるグループから選択される遺伝子により符号化され、前記遺伝子が、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリス、エルウィニア・カロトボーラ、シュードモナス・アンタークチカ、シュードモナス・アエルギノーサ、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・ヴィリディフラヴァ、パントエア・アグロメランス、エルウィニア・アナナス、及び/又は、シュードモナス・ボレアリスで構成されるグループから選択される有機体で発見されるか前記有機体から採取される、請求項3に記載の流体分析装置。
合体されて流体分析装置としてのマイクロ流体チップを画定する第1及び第2基板をさらに包含し、前記少なくとも一つの流体輸送通路と、前記少なくとも一つの流体輸送通路に沿った前記少なくとも一つの凍結融解バルブとしての複数の離間した凍結融解バルブとが設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つのINAを包含する液体緩衝液との流体連通状態で、前記少なくとも一つのINAが流体分析装置の流体ポートへ流動導入される、請求項1から5のいずれか一項に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つの凍結融解バルブが複数の離間した凍結融解バルブであって、各々が、前記少なくとも一つの流体通路の規定領域との熱連通状態にある熱電冷却器を包含し、前記少なくとも一つの流体通路が、マイクロ流体又はナノ流体通路のサイズである少なくとも一つの区画を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つの流体通路が主輸送通路と少なくとも一つの試薬通路とを包含し、すべてが前記主輸送通路との流体連通状態にある試料インプットと緩衝液インプットとビードウェルアレイとを包含する流体分析装置であって、前記少なくとも一つの凍結融解バルブが、前記主輸送通路及び/又は少なくとも一つの試薬通路との流体連通状態にある複数の離間した凍結融解バルブを包含する、請求項1から7のいずれか一項に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つの流体通路が、前記少なくとも一つのINAが表面に接合及び/又はコーティングされた少なくとも一つの流体通路を包含する、請求項1から8のいずれか一項に記載の流体分析装置。
ビード貯蔵/試料培養室と廃棄物容器と試料計量ループとをさらに包含して、前記試料計量ループが前記ビード貯蔵/培養室と前記試料インプットとの間に所在し、前記試料計量ループが、1μLと1mLの間の容積を有して、前記試料計量ループの各端部分の第1及び第2凍結融解バルブとの流体連通状態にある、請求項8に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つのINAが、氷に似た構造、及び/又は、水分子を氷状の格子に配列する構造を包含しうる、請求項1から10のいずれか一項に記載の流体分析装置。
前記少なくとも一つの凍結融解バルブが複数の離間した凍結融解バルブであり、前記少なくとも一つの流体通路と熱連通している冷却器を−100℃と−1℃の間の温度に設定して前記凍結融解バルブを凍結させることを包含する方法である、請求項12に記載の方法。
前記流体装置が、0.1mmと10mmの間の厚さを持つ流体マイクロチップであり、前記少なくとも一つの凍結融解バルブが複数の離間した凍結融解バルブであり、前記凍結融解バルブの少なくとも幾つかが、3分以内に行われる凍結操作の為に−100℃と−1℃の間に設定される熱電冷却器を有し、前記電子選択的冷却が各試料について複数回実行される、請求項12又は13に記載の方法。
前記装置が流体マイクロチップであって、前記分析物が、有機分子、元素化合物、無機化合物、薬剤、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、グリカン、あるいは他の生体又は合成高分子である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも一つのINAが、氷核形成タンパク質(INP)及び/又は氷核形成タンパク質の機能的断片を包含する、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
前記INP又は前記INPの機能的断片が、iceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZで構成されるグループから選択される遺伝子により符号化され、前記遺伝子が、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリス、エルウィニア・カロトボーラ、シュードモナス・アンタークチカ、シュードモナス・アエルギノーサ、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・ヴィリディフラヴァ、パントエア・アグロメランス、エルウィニア・アナナス、及び/又は、シュードモナス・ボレアリスで構成されるグループから選択される有機体で発見されるか前記有機体から採取される、請求項17に記載の方法。
前記少なくとも一つのINAのコーティングを包含する表面から前記少なくとも一つのINAが導入される、及び/又は、前記少なくとも一つのINAが前記少なくとも一つの流体流路の表面に吸着される、及び/又は化学的に接合される、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも一つの流体通路が主輸送通路と少なくとも一つの試薬通路とを包含し、前記流体分析装置が、すべて前記主輸送通路との流体連通状態にある試料インプットと緩衝液インプットとビードウェルアレイとを包含し、前記少なくとも一つの凍結融解バルブが、前記主輸送通路及び/又は少なくとも一つの試薬通路との連通状態にある複数の離間した凍結融解バルブである、請求項24に記載の方法。
前記流体分析装置がさらに、ビード貯蔵/試料培養室と廃棄物容器とを包含し、前記試料計量ループが前記ビード貯蔵/培養室と前記試料インプットとの間に所在する、請求項24又は25に記載の方法。
前記INP及び/又はINPの機能的断片が、iceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZで構成されるグループから選択される遺伝子により符号化され、前記遺伝子が、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリス、エルウィニア・カロトボーラ、シュードモナス・アンタークチカ、シュードモナス・アエルギノーサ、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・ヴィリディフラヴァ、パントエア・アグロメランス、エルウィニア・アナナス、及び/又は、シュードモナス・ボレアリスで構成されるグループから選択される有機体で発見されるか有機体から採取される、請求項29に記載の方法。
前記試料が複数の細胞を包含し、前記少なくとも一つの凍結融解バルブを使用して前記試料計量ループを電子選択的に冷却して前記少なくとも一つの凍結融解バルブ及び/又は前記試料計量ループで前記試料の少なくとも一部分を凍結させると、前記複数の細胞の少なくとも一部分が溶解する、請求項24から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、比較的高い温度で、及び/又は、FTVシステムを備える従来のマイクロ流体装置よりも高速で凍結させるように確実に作用しうる一つ以上の氷核形成剤(INA)(例えば、一つ以上の氷核形成タンパク質“INP”及び/又はその機能的断片、及び/又はこれを包含する微生物)を採用する一つ以上のFTVを備えるマイクロ流体チップを提供する。
【0010】
本発明の実施形態は、水溶液中で確実に機能して乾燥の必要がなく、それぞれのマイクロ流体装置での多数のバルブ作動を許容しうるINAを提供する。
【0011】
本発明の実施形態は、例えば、ポリマー、ガラス、シリコン、金属、FTVを備えるマイクロ流体チップに適した他の基板のような基板を採用しうる。
【0012】
本発明の実施形態は、少なくとも一つの凍結融解バルブを備える少なくとも一つの流体通路と少なくとも一つの氷核形成剤(INA)とを含む流体分析装置に関する。
【0013】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物のうち一つ以上を含みうる。
【0014】
少なくとも一つのINAは、有機体から抽出される、及び/又は、有機体に由来する。
【0015】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質(INP)及び/又はその機能的断片を含みうる。任意で、INP及び/又はその機能的断片は、シュードモナス・シリンゲの膜から抽出されうる。
【0016】
以下の有機体、すなわちシュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリスのうち一つ以上に発見される、及び/又はこれらから採取される以下の遺伝子、すなわちiceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZのうち一つ以上により、INPが符号化されうる。他の遺伝子及び/又は有機体が使用されてもよい。
【0017】
流体分析装置は、合体されて、少なくとも一つの流体輸送通路を備えるマイクロ流体チップを画定する第1及び第2基板を有し、流体輸送通路は、複数の離間した凍結融解バルブを備える。
【0018】
流体分析装置は、少なくとも一つのINAを包含する液体緩衝液との流体連通状態にある。少なくとも一つのINAは、流体分析装置の流体ポートへ流動導入されうる。
【0019】
少なくとも一つの凍結融解バルブは、複数の離間した凍結融解バルブであって、少なくとも一つの流体通路の画定領域との熱連通状態にある熱電冷却器を各々が含む。
【0020】
少なくとも一つの流体通路は、マイクロ流体又はナノ流体通路となるサイズである少なくとも一つの区画を有しうる。
【0021】
少なくとも一つの流体通路は、主輸送通路と少なくとも一つの試薬通路とを有しうる。
【0022】
流体分析装置は、すべて主輸送通路との流体連通状態にある試料インプットと緩衝液インプットとビードウェルアレイとを有しうる。少なくとも一つの凍結融解バルブは、主輸送通路及び/又は少なくとも一つの試薬通路との流体連通状態にある複数の離間した凍結融解バルブでありうる。
【0023】
少なくとも一つの流体通路は、少なくとも一つのINAが表面に接合及び/又はコーティングされた少なくとも一つの流体通路を含みうる。
【0024】
流体分析装置は、ビード貯蔵/試料培養室と廃棄物容器と試料計量ループとを有しうる。試料計量ループは、ビード貯蔵/培養室と試料インプットとの間に所在しうる。
【0025】
試料計量ループは、約1μLと約1mLの間の容積を有して、試料計量ループのそれぞれの端部分の第1及び第2凍結融解バルブとの流体連通状態にある。INAは、細胞溶解を限定的にではなく含む試料分離の一部としての試料計量ループでの試料の凍結を改良するのに使用されうる。
【0026】
少なくとも一つのINAは、氷に似た構造、及び/又は、水分子を氷状の格子に配列する構造を包含しうる。
【0027】
他の実施形態は、標的分析物を分析する方法に関する。この方法は、少なくとも一つの凍結融解バルブとの流体連通状態にある少なくとも一つの流体通路を備える流体分析装置を用意することと、少なくとも一つの氷核形成剤(INA)を少なくとも一つの流体通路へ導入することと、少なくとも一つの凍結融解バルブを電子選択的に冷却し、少なくとも一つのINAを使用して少なくとも一つの凍結融解バルブを凍結させることとを含む。
【0028】
少なくとも一つの凍結融解バルブは、複数の離間した凍結融解バルブでありうる。この方法は、少なくとも一つの流体通路と熱的に連通している冷却器を、一般的には−100℃から−1℃、より一般的には−50℃と−2℃の間の範囲の温度に(電子的に)設定して、凍結融解バルブを凍結させることを含みうる。
【0029】
流体装置は、0.01mmと10mmの間の厚さを持つ流体マイクロチップでありうる。
【0030】
凍結融解バルブの少なくとも幾つかは、3分以内に発生する凍結作用の為、例えば約−50℃と約−2℃の間など所望の温度範囲に設定される熱電冷却器を有し、それぞれの流体装置、分析物、及び/又は、分析について、電子選択的冷却が複数回実行されうる。
【0031】
装置は流体マイクロチップでありうる。
【0032】
分析物は、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、グリカン、医薬品、あるいは他の生体又は合成高分子か元素又は無機化合物の分子であるか、かかる分子を含みうる。
【0033】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を含みうる。
【0034】
少なくとも一つのINAは、有機体から抽出されるか有機体に由来する。
【0035】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質(INP)及び/又はその機能的断片を含みうる。
【0036】
任意で、INP及び/又はその機能的断片は、シュードモナス・シリンゲの膜から抽出される。
【0037】
以下の有機体、すなわちシュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリスのうち一つ以上に発見される、及び/又はこれらから採取される以下の遺伝子、すなわちiceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZのうち一つ以上により、INPが符号化されうる。他の遺伝子及び/又は有機体が使用されてもよい。
【0038】
液体中の少なくとも一つのINAは、少なくとも一つの流体通路へ流動導入される。
【0039】
液体は緩衝液でありうる。少なくとも一つのINAは緩衝液中で希釈されうる。
【0040】
少なくとも一つのINAのコーティングを包含する表面から少なくとも一つのINAが導入される、及び/又は、少なくとも一つの流体流路の表面に少なくとも一つのINAが吸着される、及び/又は、化学的に接合される。
【0041】
少なくとも一つのINAは、氷に似た構造、及び/又は、水分子を氷状の格子に配列する構造を有しうる。
【0042】
また他の実施形態は、DNA処理の為の液体緩衝液に関する。
【0043】
液体緩衝液は、1分子/μLと100億分子/μLの間まで任意で希釈される少なくとも一つの氷核形成剤(INA)を含みうる。INAの濃度は、100億分子/μLを超えてもよく、ナノモル、マイクロモル、及び/又は、ミリモルの濃度範囲にわたる。
【0044】
少なくとも一つのINAは、有機体から抽出されるか有機体に由来する。
【0045】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質(INP)及び/又はその機能的断片を含みうる。任意で、INP及び/又はその機能的断片は、シュードモナス・シリンゲの膜から抽出されうる。
【0046】
以下の有機体、すなわちシュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリスのうち一つ以上に発見される、及び/又はこれらから採取される以下の遺伝子、すなわちiceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,inaZのうち一つ以上により、INPが符号化されうる。他の遺伝子及び/又は有機体が使用されてもよい。
【0047】
少なくとも一つのINAは、一つ以上のアプタマーを含みうる。
【0048】
少なくとも一つのINAは、氷核形成タンパク質、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物のうち一つ以上を含みうる。
【0049】
少なくとも一つのINAは、氷に似た構造、及び/又は、水分子を氷状の格子に配列する構造を有しうる。
【0050】
一つの実施形態に関して説明された発明の態様は、それについて明記されていなくても異なる実施形態に取り入れられうることに注意していただきたい。すなわち、すべての実施形態及び/又は実施形態の特徴がいかなる手法及び/又は組み合わせで組み合わされてもよいのである。出願人は、そのように原出願時に請求されていなくても、他の単数又は複数の請求項に従属する及び/又はその特徴を取り入れるように原出願時の請求項を補正できる権利を含めて、原出願時の請求項を変更する、及び/又は、それに応じて新たな請求項を出願する権利を留保する。本発明の以上及び他の目的及び/又は態様は、以下に提示される明細書で詳しく説明される。本発明のさらなる特徴と利点と詳細とは、図と以下に続く好適な実施形態についての詳細な説明との解釈により当業者に認識され、このような説明は本発明を例示するものに過ぎない。
【発明を実施するための形態】
【0052】
さて以下では、発明の実施形態が示されている添付の図を参照して本発明がより詳しく説明される。しかしながらこの開示は、多様な形で具体化されてもよく、ここに提示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。同様の数字は、全体を通して同様の要素を指している。図では、ある種の層、構成要素、又は特徴は明瞭化の為に誇張され、破線は他に明記されなければ任意の特徴又は操作を示している。加えて、操作(又はステップ)のシーケンスは、他に明記されなければ、図及び/又は請求項に挙げられた順序に限定されない。図面では、線の太さ、層、特徴、構成要素、及び/又は領域が明瞭化の為に誇張され、破線は他に明記されなければ任意の特徴又は操作を示す。“Figure”の語に代わる“FIG.”及び“Fig.”の略語は、文中及び図中で互換的に使用されうる。
【0053】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、発明を限定することは意図されていない。ここで使用される際に、単数形“a”、“an”、“the”は、文脈上明らかに他を指していない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、“comprises”、“comprising”(包含する)、“includes”、及び/又は“including”(含む)の語は、本明細書で使用される時に、記載の特徴、領域、ステップ、操作、要素、及び/又は、構成要素の存在を明記するものであるが、一つ以上の他の特徴、領域、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又は、これらのグループの存在又は追加を除外しないことが理解されるだろう。ここで使用される際に、“and/or”(及び/又は)の語は、関連して挙げられた項目のうち一つ以上のいかなる、またすべての組み合わせも含む。ここで使用される際に、“between X and Y”(XとYとの間)と“between about X and Y”(約XとYの間)のような語句は、XとYとを含むものと解釈されるべきである。ここで使用される際に、“between about X and Y”(約XとYとの間)のような語句は、“between about X and about Y”(約Xと約Yとの間)を意味する。ここで使用される際に、“from about X to Y”(約XからYまで)のような語句は、“from about X to about Y”(約Xから約Yまで)を意味する。
【0054】
層、領域、又は基板のような特徴が別の特徴又は要素の「上に」あると言及される時には、他の特徴又は要素のすぐ上にあっても、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよいことが理解されるだろう。対照的に、ある要素が別の特徴又は要素の「すぐ上」にあると言及される時には、介在する要素は存在しない。特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続」、「装着」、「結合」されると言及される時には、これは他の要素に直接的に接続、装着、又は結合されても、介在の要素が存在してもよいことも理解されるだろう。対照的に、ある特徴又は要素が別の要素に「直接的に接続」、「直接的に装着」、又は「直接的に結合」されると言及される時には、介在の要素は存在しない。一つの実施形態に関して説明及び図示されたが、説明又は図示された特徴は他の実施形態に適用されうる。
【0055】
他に定義されなければ、(技術的及び科学的な語を含めて)ここで使用されるすべての語は、本開示が属する技術分野の通常の技量を有する者に通常理解されるのと同じ意味を有する。さらに、通常使用されている辞書に定義されているような語は、本出願及び関連技術における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、またここにはっきりと定義されない限り、理想化されるか過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが理解されるだろう。周知の機能又は構造は、簡潔性及び/又は明瞭性の為、詳細に説明されない。
【0056】
“under”(下に)、“below”(下方に)、“lower”(下方の)、“over”(上方に)、“upper”(上方の)、その他のような空間的相対語は、図に示されている一つの要素又は特徴と別の要素又は特徴の関係を表す説明を容易にする為にここで使用されうる。空間的相対語は、図に描かれた配向に加えて、使用又は操作時の装置の多様な配向を包含する意図があることが理解されるだろう。例えば、図の装置が逆転された場合、他の要素又は特徴の「下に」又は「下方に」あると記載される要素は、他の要素又は特徴の「上方に」配向されることになるだろう。こうして、例示的な語である「下に」は、上方と下方の両方の配向を包含しうる。装置は、他の配向を持ち(90度回転されるか他の配向であり)、ここで使用される空間的相対記述子はそれに従って解釈される。同様に、“upwardly”(上向きに)、“downwardly”(下向きに)、“vertical”(垂直の)、“horizontal”(水平の)、その他の語は、他に明記されない限り説明のみを目的としてここで使用される。
【0057】
第1、第2等の語はここでは様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は区分を説明するのに使用されるが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は区分はこれらの語により限定されるべきではないことが理解されるだろう。これらの語は一つの要素、構成要素、領域、層、又は区分を別の領域、層、又は区分と区別する為にのみ使用されている。ゆえに、以下に記される第1の要素、構成要素、領域、層、又は区分が、本発明の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、又は区分と呼ばれることもある。
【0058】
引用文献(特許、特許出願、論文)のすべては、参照により、ここに完全に記載されているかのように援用される。
【0059】
「マイクロチップ」及び「マイクロ流体チップ」の語は互換的に使用され、実質的に平面状の薄型装置を指している。マイクロ流体チップは、剛性、半剛性、又は可撓性である。「薄型」の語は、10mmと0.01mmの間のように10mm以下であって、約3mm、約2.5mm、約2mm、約1.5mm、約1mm、約0.5mm、約0.1mm、約0.01mmである厚さ寸法を指す。マイクロチップは一般的に、約6インチ未満、より一般的には約1インチと6インチの間の幅及び長さを有する。マイクロチップは、長さ寸法より小さい幅寸法を有する。マイクロ流体チップは、幾つかの実施形態では、約2.13インチ(54mm)である幅寸法と、約3.4インチ(85.5mm)である長さ寸法とを有する。マイクロチップは、マイクロサイズ及び/又はナノサイズの流体通路を含みうる。
【0060】
「主寸法」の語は、流体通路の幅及び/又は奥行寸法を指す。
【0061】
流体通路に関する「マイクロサイズ」及び「マイクロ流体」の語は、ミリメートル、サブミリメートル、又はそれより小さいサイズの幅及び/又は奥行を有する流体流路を指し(例えば、この語は、ミリメートル、マイクロメートル、及びナノメートルサイズの通路を含み)、数百ミクロン以下、一般的には900ミクロンより小さく1nmより大きいサイズ範囲の幅及び/又は奥行を有する区画を少なくとも備える通路を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、主輸送通路は、1nmと約500μmの間である少なくとも一つの主寸法を持つ、主な長さを有するマイクロ流体通路でありうる。主輸送通路は例えば、約250μm/250μm(幅/奥行つまり幅/高さ)の主寸法を有する。「主流体輸送通路」の語は、一般的には、分析物が分析の為に流動するマイクロサイズの通路又はナノ通路である、副次的な長さを少なくとも包含する流体通路を指す。
【0063】
「ナノ通路」の語は、ナノメートルスケールである臨界寸法を有する通路又は溝部を指す。ナノ通路の(「臨界」として知られる)主寸法はともに、一般的に、約1〜70nmの間を含む約100nm未満である。幾つかの実施形態において、少なくとも一つの主寸法は(平均又は最大で)約5nm以下でありうる。
【0064】
流体通路は、側壁と床部とを有する。一つ以上の流体輸送通路は、側壁が間に延在する開放上面と密閉底面とを有するように固体基板に形成されうる。流体通路及び/又は関連のポートの上面を密封、被覆、又は他の方法で密閉するのに、一つ以上の上基板、膜、又はカバーが使用されうる。
【0065】
「約」の語は、+/−10%のように、+/−20%以下の間で変化しうるパラメータを指す。
【0066】
「横」通路の語は、それぞれの流体輸送通路と交差する流体通路を指す。流体装置は、主輸送通路に各々が合流する複数の横通路を含みうる。
【0067】
試料中の分析物は、例えば、合成及び生体高分子、ナノ粒子、小分子、DNA、核酸/ポリ核酸、ペプチド、タンパク質、グリカン、医薬品、元素化合物、無機化合物、有機化合物、及び/又はその他を含む様々な混合物を含む試料からの対象分析物である。分析物は一つ以上の単一分析物分子でありうる。試料又は試料の分析物は、アミノ酸又は荷電分子、分子、ペプチド、及びタンパク質など、一つ以上の極性代謝物質を含みうる。試料及び/又は分析物はまた、あるいは代替的に、生物流体、血液、血清、尿素、乾燥血液、細胞増殖培地、溶解細胞、飲料、又は、食品から抽出される分子を含みうる。試料はまた、又は代替的に、水、空気、又は土壌のような環境試料を含みうる。
【0068】
輸送通路での輸送は、界面動電性、濃度分極、及び/又は、油圧又は空気圧(強制的圧力又は圧力勾配)、毛管力、又は重力のうち一つ以上を使用して実行されうる。
【0069】
ここで使用される「氷核形成剤」、「INA」、又はその文法的変形は、氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、氷晶形成を開始することが可能である、及び/又は、その能力を有する薬剤を指す。ゆえにINAは、氷核を形成できる、及び/又は、その能力を有する。INAは、所与の温度でのFTV作動時間を短縮しうる。幾つかの実施形態において、INAは炭素含有INAである(つまり、少なくとも一つの炭素原子を含有する)。幾つかの実施形態において、INAは、氷核形成タンパク質(単数形では“INP”,複数形では“INPs”)及び/又はその機能的断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を含む、及び/又は、これらである。幾つかの実施形態において、INAは、例えばヨウ化銀及び/又は銀を含有するナノ粒子のような銀含有薬剤ではない。幾つかの実施形態において、INAは、それが存在する流体中で塩の沈殿を引き起こす、及び/又は、行うことはない。幾つかの実施形態において、INAは、生体プロセス、及び/又は、マイクロ流体装置を使用して研究及び/又は実行される分析でのプロセスに干渉しない。幾つかの実施形態において、INAはそれが存在する流体中の構成要素に干渉しない。
【0070】
したがって、幾つかの実施形態において、INAは、例えば、INP及び/又はその機能的断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を含む、及び/又は発現させる、無脊椎動物(例えば多細胞無脊椎動物)、細菌、菌類、及び/又は、地衣類のような有機体でありうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を含む、及び/又は、(例えばタンパク質工学により)発現させる細菌及び/又は酵母菌のような有機体から、INAが採取されうる。幾つかの実施形態において、INAは、例えば、INP及び/又はその断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物が存在する有機体の細胞及び/又は細胞構成要素(例えば細胞膜)のような有機体(例えば脊椎動物及び/又は微生物)の構成要素及び/又は由来物でありうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片が細胞膜に残存する、及び/又は、他の膜構成要素(例えば他の細胞膜タンパク質又は脂質)との相互作用が可能である時に、核形成の有効性が最大化されうる。幾つかの実施形態において、氷核形成脂質は、細胞膜のすべて又は一部分を包含するか、合成脂質膜のすべて又は一部分を包含しうる。氷核形成脂質は、他の氷核形成剤の作用を高めうる。幾つかの実施形態において、INAは、INP及び/又はその機能的断片でありうる。幾つかの実施形態において、INAは、例えば、氷核を形成できる合成核酸、合成脂質、及び/又は、合成炭水化物のような、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物でありうる。幾つかの実施形態において、INAは、自然発生による、合成による、又は選択的進化による核酸配列でありうる。
【0071】
二つ以上(例えば3,4,5,6、又はそれ以上)の異なるINAが、本発明の装置、流体通路、及び/又は、FTVに存在しうる。例えば、本発明の装置は複数のFTVを包含し、複数のFTVのうち一つのFTVは、複数のFTVのうち別のFTVと同じINA、同じINA組み合わせ、異なるINA,及び/又は異なるINA組み合わせを含みうる。INAは、本発明の装置、流体通路、及び/又はFTVに、適当な濃度で存在しうる。幾つかの実施形態において、INAは、1μL当たり約1分子又は有機体から1μL当たり約100億分子又は有機体の範囲、あるいは1μL当たり約1,000分子又は有機体から1μL当たり約300万分子又は有機体のような範囲及び/又はその中の個々の値の濃度で、装置、流体通路、及び/又は、FTVに存在しうる。幾つかの実施形態において、INAの濃度は、例えば、約1nMから約1mMのように、ナノモルからミリモルの濃度範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、INAは、100億分子/μLより高い濃度で、装置、流体通路、及び/又は、FTVに存在しうる。幾つかの実施形態において、INAは、ナノモル、マイクロモル、及び/又は、ミリモルの濃度範囲に及ぶ範囲の濃度で、装置、流体通路、及び/又はFTVに存在しうる。
【0072】
幾つかの実施形態において、INA(例えばINP、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物)は、氷核を形成することのできる構造(例えば二次、三次、四次構造又はその一部分)を包含する。幾つかの実施形態において、INA(例えばDNA、RNA、及び/又はペプチドアプタマーなどのアプタマー)は、氷に似た構造を包含する、及び/又は、水分子を氷状の格子に配列しうる。幾つかの実施形態において、INAは、効率的に氷核を形成しうる(つまり、INAは氷状の花粉及び/又は埃粒子の核をランダムに形成するのではない)。幾つかの実施形態において、INAは、平均すると、INAが不在の状態で水及び/又は溶液が凍結する平均時間よりも少ない時間内に所与の温度で水及び/又は溶液を凍結させることにより、効率的に氷核を形成しうる。幾つかの実施形態において、INAが不在の状態で水及び/又は溶液が凍結融解バルブで凍結する時間と比較すると、10回の試験を使用して評価されうる連続的凍結操作にわたって、50秒未満(例えば45,40,35,30,25,20,15,10,5,4,3,2,1秒)の標準偏差を含む短い時間内に所与の温度でマイクロ流体装置のそれぞれの凍結融解バルブで水及び/又は溶液を凍結させることにより、INAは効率的に氷核を形成しうる。
【0073】
INAの例は、米国特許第4,200,228号、第4,706,463号、第4,978,540号、第5,233,412号、第5,489,521号、第5,532,160号、第5,554,368号、第5,620,729号、第5,843,506号、第5,972,686号、第6,361,934号、第7,624,698号と、欧州特許出願第88114120.4号に記載されているものを限定的にではなく含み、各々の一部分は、本段落に関連する教示の為に参照によりその全体が援用される。
【0074】
ここで使用される際に、「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」の語は、アミノ酸残基の重合体を指す。これらの語は、一つ以上のアミノ酸残基が対応の自然発生のアミノ酸とともに自然発生のアミノ酸重合体の人工的な化学類似体である、アミノ酸重合体を含む。
【0075】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」の語は互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば化学的に合成された)DNA又はRNA、そしてRNA及びDNAのキメラを含むRNAとDNAの両方を包含する。ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、又は核酸の語は、鎖の長さに関係なくヌクレオチドの鎖を指す。核酸は、自然発生ヌクレオチドに類似した塩基対であってもなくてもよい、一つ以上の非自然発生ヌクレオチド(例えば自然発生ヌクレオチドの人工的な化学的類似体)を包含しうる。幾つかの実施形態において、核酸は、通常は自然発生せず、必ずしも自然発生ヌクレオチドと同じような塩基対でなくてもよい一つ以上の塩基を包含しうる。核酸は二本鎖又は一本鎖である。「核酸」の語は、他に限定されなければ、自然発生ヌクレオチド(例えばペプチド核酸)に類似した一本鎖核酸となるように交雑されるという点で、自然ヌクレオチド配列の本質的性質を有する類似体を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物は、それが存在する、及び/又は、発現する有機体及び/又は細胞に、氷核活性(Ice
+)表現型を与える。ここで使用される際のIce
+表現型は、0℃より低く−20℃より高い温度、及び/又は、その中の何らかの範囲及び/又は個々の値のような比較的高温で氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、氷晶形成を開始させる、有機体及び/又は細胞の能力を指す。ゆえにIce
+表現型は、−20℃から0℃の範囲の温度で氷核を生成する能力を有機体及び/又は細胞に付与する。当業者であれば認識するように、INP及び/又はその機能的断片(例えば、それが発現される有機体から採取される及び/又は抽出されるINP及び/又はその機能的断片)、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物そのものが、氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、これを開始させる能力を有している。
【0077】
幾つかの実施形態において、INPは、例えば外側細胞膜タンパク質などの細胞膜タンパク質でありうる。INPは、例えば脊椎動物、無脊椎動物(例えば多細胞無脊椎動物)、細菌、菌類、及び/又は、地衣類のような有機体により自然発現する、及び/又は有機体に存在しうる。幾つかの実施形態では、INPは組み換えにより有機体に発現しうる。
【0078】
INPを自然発現させる細菌の例は、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・アンタークチカ、シュードモナス・ヴィリディフラヴァ、シュードモナス・フルオレセンス、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・アナナス、ザントモナス・カンペストリスを限定的にではなく含む。幾つかの実施形態において、INPは、INPを発現させる有機体(例えば細菌)の外側膜に存在しうる。幾つかの実施形態において、INPは、例えばシュードモナス・シリンゲのようなINPを発現させる細菌の膜から採取及び/又は抽出されうる。
【0079】
ポリペプチドに関してここで使用される際に、「断片」の語は、参照ポリペプチド(例えば自然発生INPのような完全長INP)に対して長さが短く、参照ポリペプチドの対応部分と同一又はほぼ同一(例えば90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%同一)である連続アミノ酸のアミノ酸配列を包含する、このアミノ酸配列で本質的に構成される、及び/又は構成されるポリペプチドを指す。このようなポリペプチド断片は、適宜、それが構成要素である大きなポリペプチドに含まれうる。幾つかの実施形態において、ポリペプチド断片は、少なくとも約2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99,100,125,150,175,200,225,250,300,350,350,400,450,500又はそれ以上の連続アミノ酸を包含するか、これらで本質的に構成されるか、これらで構成される。幾つかの実施形態において、ポリペプチド断片は、約10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,125,150,175,200,225,250,300,350,400,450,500より少ない連続アミノ酸を包含するか、これらで本質的に構成されるか、これらで構成される。
【0080】
ポリペプチドに関してここで使用される際に、「機能的断片」の語は、完全長ポリペプチドの少なくとも一つの生物活性(例えば、氷核形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、氷核活性(Ice
+)表現型を付与する能力)を、少なくとも約5%,10%,15%,20%,25%,30%、35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,99%,99.5%、又はそれ以上保持するポリペプチド断片を指す。幾つかの実施形態において、機能的断片は、完全長ポリペプチドの少なくとも一つの生物活性を高レベルで有しうる。幾つかの実施形態において、INPの機能的断片を含有する有機体(例えばINP機能的断片を含有する細菌)は、完全長ポリペプチドの少なくとも一つの生物活性を高レベルで有する。
【0081】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、例えば、8,16,及び/又は48個のアミノ酸配列のリピートのように、2個以上の連続アミノ酸の少なくとも一つのリピートを包含する。幾つかの実施形態において、2個以上の連続アミノ酸(例えば8,16,及び/又は48個のアミノ酸配列)は、INP及び/又は機能的断片で1,2,3,4,5,6,7,8,9、又はそれ以上の回数、リピートされうる。2個以上の連続アミノ酸(例えば8,16,及び/又は48個のアミノ酸配列)は、INP及び/又は機能的断片で1,2,3,4,5,6,7,8,9、又はそれ以上の回数、連続的にリピートされうる。幾つかの実施形態において、リピート配列は、不完全である、及び/又は、自然変異を呈する。アミノ酸配列の例は、グリーン(Green)及びウォーレン(Warren)著のネイチャー1985年(Nature 1985)の317巻pp. 645-648に記載されたものを限定でなく含み、その内容は、本段落に関係する部分について参照により援用される。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、INPの内部領域に存在しうる縦リピートの8,16,及び/又は48個のアミノ酸配列を包含しうる。
【0082】
幾つかの実施形態において、例えば、限定的ではないが、iceE,iceH,inaA,inaE,inaF,inaK,inaPb,inaQ,inaU,inaV,inaW,inaX,及び/又はinaZのような一つ以上の遺伝子により、INPが符号化されうる。INPは、例えば、限定的ではないが、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンスKUIN−1、エルウィニア・ヘルビコラ、エルウィニア・ウレドヴォラ、パントエア・アナナチス、ザントモナス・カンペストリス、エルウィニア・カロトボーラ、シュードモナス・アンタークチカ、シュードモナス・アエルギノーサ、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・ヴィリディフラヴァ、パントエア・アグロメランス、エルウィニア・アナナス、及び/又は、シュードモナス・ボレアリスのような有機体に存在する、これらに発見される、及び/又は、これらから採取されうる。幾つかの実施形態において、表1に示されているような有機体に存在する、発見される、及び/又は、これらから採取される遺伝子により、INPが符号化されうる。例えば、INPは、エルウィニア・ヘルビコラに発見されるか存在する、及び/又はこれから採取されるiceE遺伝子により符号化されるポリペプチドでありうる。
【0083】
表1:氷核形成遺伝子/タンパク質と、これらが発見されるか存在する、及び/又は採取される種の例
【表1】
【0084】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、受け入れ番号第P06620号(ICEN_PSESY)に記載されているポリペプチドのような、inaZ遺伝子により符号化されたポリペプチドでありうる。INPの中心領域(例えばinaZ)はオクタペプチドの122回の不完全なリピートを包含し、氷の構造に類似した構造を有しうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、水分子を氷状の格子に配列しうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、少なくとも一つのベータヘアピン(例えば1,2,3,4,5かそれ以上)を包含する構造を有し、任意で少なくとも一つのベータヘアピンは1,2かそれ以上のオクタペプチドリピートを包含しうる。幾つかの実施形態において、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物は、INPの構造の少なくとも一部に類似した構造を有しうる。
【0085】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、自然に、合成により、及び/又は、組み換えにより得られる、及び/又は生成されうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、それが自然に、及び/又は、組み換えにより発現される有機体から、隔離、取得、採取、及び/又は、抽出されうる。幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、有機体かマイクロ有機体(例えば、細菌、菌類等)から隔離、取得、採取、及び/又は抽出されて、INAとして使用されうる。
【0086】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片は、組み換え技術を通して得られ、自然及び/又は合成DNAからのプラスミドに基づきうる。組み換えINP及び/又はその機能的断片は、細菌(例えば大腸菌(エシェリキア・コリ))及び/又は酵母菌(例えば出芽酵母(サッカロマイシス・セリヴィシエ))のような有機体で発現されうる。同様に、INP薬剤は、植物や動物のような他の適当な有機体で発現されうる。組み換えINP及び/又はその機能的断片は、INP及び/又は機能的断片の発現、精製、改変、及び/又は、安定化を補助するように改変されうる。例えば、組み換えINP及び/又はその機能的断片は、それが発現される有機体からのポリペプチドの精製を促進するポリヒスチジンタグを含むように改変されうる、及び/又は、例えば、温度、pHレベル、イオン強度、及び溶媒強度の範囲のように異なる条件下での変性に対する耐性の向上のようなより好ましい特性を有するように改変されうる。組み換えINP及び/又はその機能的断片は、表面や別の分子への付着の為の官能基を含むように改変されうる。幾つかの実施形態において、組み換えINP及び/又はその機能的断片は、氷核形成を改良するように改変されうる。例えば、組み換えINP及び/又はその機能的断片は、二つ以上のINP/機能領域を一緒にリンクするか若しくはPTM中にリン脂質をリンクする為の配列のリピートを含むか、又はINP領域の間の距離を最適化するスペーサを含むように改変されうる。幾つかの実施形態において、組み換えINP及び/又はその機能的断片は、二つ以上のINP及び/又はその機能的断片を一緒にまとめるように改変されうる。
【0087】
幾つかの実施形態において、INP及び/又はその機能的断片、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は氷核形成炭水化物は、隔離されたものでありうる。ポリペプチド、核酸、脂質、及び/又は炭化水素に関してここで使用される際に、「隔離された」の語は、人の手によって自然環境とは別に存在してそれゆえ自然の産物ではないポリペプチド、核酸、脂質、及び/又は、炭化水素を指す。幾つかの実施形態において、氷核形成ポリペプチド、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物は、細胞物質、ウィルス性物質、培地(組み換えDNA技術により生成される時)、あるいは化学的前駆体か他の化学物質(化学的に合成される時)を実質的に含まない、精製された形で存在する。「隔離断片」は、自然では断片としてかなりの濃度で発生することがなく、自然状態では微量レベルより上で発見されることのないポリペプチド、核酸、脂質、及び/又は、炭水化物の断片である。「隔離された」は、前処理が技術的に純粋(均質)であることを意味するのではなく、むしろ、想定される目的に使用可能な形で氷核形成ポリペプチド、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を提供するのに充分なほど純粋であることを意味している。ある実施形態において、氷核形成ポリペプチド、氷核形成核酸、氷核形成脂質、及び/又は、氷核形成炭水化物を包含する組成物は、少なくとも約50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%,96%,97%,98%,99%、又はそれ以上に純粋である。
【0088】
幾つかの実施形態において、INAは氷晶の核をマイクロ流体スケールで形成しうる。ゆえに、上述したINAは、例えばマイクロ流体チップのようにマイクロ流体スケールで水及び/又は溶液(例えば水溶液)中の氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、氷晶形成を開始させることにより、水及び/又は溶液を凍結させる。マイクロ流体チップ(例えば流体通路及び/又はFTV)で凍結しうる流体(例えば水)の容積は、約1フェムトリットルから約100マイクロリットルの範囲、及び/又は、その中の何らかの範囲及び/又は個々の値でありうる。幾つかの実施形態において、約1ミリリットル又は複数ミリリットルのように、一つ以上の凍結融解バルブで凍結しうる大きな流体容積が使用されうる。ここで使用される際に「凍結させる」は、熱電冷却器のような外部冷却源と関連するマイクロ流体装置のFTVに存在する流体の流れを阻止する、及び/又は、停止させるのに充分な量での固相の形成を指す。ゆえに、凍結後に、マイクロ流体チップでの(例えば流体通路及び/又はFTVでの)固相は、凍結前の流体の容積よりも大きな容積を有しうる。
【0089】
幾つかの実施形態において、マイクロ流体チップでのINAの使用は、平均すると、INAが不在の時に水及び/又は溶液が凍結する温度及び/又は時間より高い温度、及び/又は、短い時間で、水及び/又は溶液を凍結させうる。幾つかの実施形態において、INAが不在の際に所与の時間量で水及び/又は溶液が凍結しうる温度よりも少なくとも5℃高い(例えば6,7,8,9,10℃かそれ以上の)温度で、INAは水及び/又は溶液を凍結させうる。幾つかの実施形態において、INAは、結晶化が発生する前に水及び/又は溶液がその融点(例えば水については0℃)より下に保たれる平均時間を短縮しうる。幾つかの実施形態において、INAは、結晶化が発生する前に水及び/又は溶液がその融点(例えば水については0℃)より下に保たれる平均時間を、例えば少なくとも10%,15%,20%,25%,50%かそれ以上のように、少なくとも約5%以上は短縮しうる。
【0090】
INAは、例えば、約−1℃から約−20℃、約−6℃から約−14℃、約−2℃から約−12℃、約−1℃から約−30℃、約−2℃から約−8℃、約−2℃から約−50℃、又は約−5℃から約−25℃のように、0℃より低く−50℃より高い温度、及び/又は、その中の何らかの範囲及び/又は個々の値で、水及び/又は溶液(例えば水溶液)中での氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は、氷晶形成を開始しうる。ある実施形態において、INAは、約0,−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7,−8,−9,−10,−11,−12,−13,−14,−15,−16,−17,−18,−19,−20,−21,−22,−23,−24,−25,−26,−27,−28,−29,−30,−31,−32,−33,−34,−35,−36,−37,−38,−39,−40,−41,−42,−43,−44,−45,−46,−47,−48,−49,−50℃の温度、及び/又は、その中の何らかの範囲及び/又は個々の値で、水及び/又は溶液中での氷晶形成に触媒作用を及ぼす、及び/又は氷晶形成を開始しうる。凍結/融解温度は、INAを含む溶液を所望の凍結融解領域に保持するマイクロ流体輸送通路で測定されうる。凍結及び/又は融解インプットとなる熱電供給源の実際の温度(設定)は一般的に凍結/融解領域での輸送通路の温度と異なっており、例えば、−45℃から−20℃のような凍結温度設定は結果的に、この設定より上、一般的にはこの設定より約5から25℃上である輸送通路でのINA含有物質の凍結温度となる。
【0091】
当該のFTV22の一つ、一般的にはすべては、3分未満、一般的には約45秒未満、より一般的には2秒と33秒の間の凍結時間で作用しうる。一つ以上のFTV22の融解時間は、対応の凍結時間より短く、1〜15秒の間のように一般的には1〜30秒でありうる。
【0092】
INAは、水及び/又は水溶液などの溶液で機能するように設計され、乾燥している必要はない。INAは幾つかの手法で用意されうる。幾つかの実施形態において、INAが希釈されて、マイクロ流体チップの中及び/又は上へのインプットの為の緩衝液となる。幾つかの実施形態において、INAは、緩衝液、あるいは免疫検定法での使用に適した他の液体中(例えばトリス系かリン酸系の緩衝液)に設けられうる。INPの他の処方/送達メカニズムについては後述する。
【0093】
「回路」の語は、完全にハードウェアの実施形態か、ソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施形態を指す。
【0094】
「均質核形成」の語は、固形状の相(エンブリオ)の小さな凝集体が液相全体に存在する時に、エンブリオが臨界サイズに達して、エンブリオが固相の成長継続を引き起こすことを指す。均質核形成は概して、水については−37℃以下で発生する。
【0095】
「不均質核形成」の語は、液相中の異物(例えばINA)の存在による、準安定の過冷却状態から安定した固体状態までの相転移を指す。不均質核形成は一般的に液体表面の核形成部位で発生し、水については、概して約0℃と約−40℃の範囲の温度で発生する。幾つかの実施形態において、INAは、それが存在する溶液及び/又は液体について不均質な核形成を行いうる。
【0096】
「オリゴヌクレオチド」の語は、約5個のヌクレオチドから約500個のヌクレオチド(例えば、5,6,7,8,9,10,12,15,18,20,21,22,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,100,125,150,175,200,250,300,350,400,450、又は500個のヌクレオチド)の核酸配列を指している。幾つかの実施形態において、例えば、約15個のヌクレオチドから約40個のヌクレオチド、又は約20個のヌクレオチドから約25個、又は約30個のヌクレオチドから、オリゴヌクレオチドが得られ、これは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅試験でのプライマとして、及び/又は、交雑試験やマイクロアレイでのプローブとして使用されうる。処理の為のオリゴヌクレオチドは、例えばDNA、RNA、PNA、LNA、改変主鎖等、天然又は合成のものであるか、当該技術で周知であるようなこれらの何らかの組み合わせでありうる。
【0097】
増幅及び/又は検出のいずれかの為のものを含むプローブ及びプライマは、適当な長さのオリゴヌクレオチド(DNAのような自然発生オリゴヌクレオチドと合成及び/又は改変オリゴヌクレオチドとを含む)であるが、一般的には長さがヌクレオチド5,6,8個分から長さがヌクレオチド40,50,60個分又はそれ以上である。このようなプローブ及び又はプライマは、ビード、チップ、ピン、又はマイクロタイタープレートウェルなどの固形支持体に固定されるか結合されうる、及び/又は、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性元素、又は酵素などの検出可能なグループに結合されるか、その標識が付けられうる。
【0098】
幾つかの実施形態において、INAは、例えば粒子やビードのような固形支持体に固定、付着、又は結合されうる。INAは、流体分析装置へ導入される前に固形支持体に固定、付着、又は結合されうる。固形支持体に固定、付着、又は結合されたINAは、流体分析装置の少なくとも一つの流体通路へ導入される、及び/又は、流体分析装置の少なくとも一つの凍結融解バルブを凍結及び融解するのに使用されうる。
【0099】
幾つかの特定実施形態において、凍結融解バルブを備えてINA(例えばINP及び/又はその機能的断片、及び/又はこれを包含する微生物)を包含する流体装置は、周知の技術によるPCRを実行できる。例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号、第4,965,188号を参照すること。概して、PCRは、最初に、各核酸ストランドに対して相補的である各プライマの伸長生成物が合成されるように、交雑条件で検出される固有配列の各ストランドに一つずつのオリゴヌクレオチドプライマを含む核酸試料を(例えば熱安定性DNAポリメラーゼの存在下で)処理して、各プライマから合成される伸長生成物がその補体から分離された時に他のプライマの伸長生成物の合成テンプレートとして機能するように交雑に充分なほどプライマが固有配列の各ストランドに相補的であることと、それから、変性条件下で試料を処理して、検出される単数又は複数の配列が存在する場合にプライマ伸長生成物をそのテンプレートから分離することを伴う。これらのステップは、所望の程度の増幅が得られるまで周期的に反復されうる。増幅配列の検出は、反応生成物への交雑が可能なオリゴヌクレオチドプローブ(例えば本発明のオリゴヌクレオチドプローブ)を反応生成物に添加することにより検出可能な標識がプローブに付けられることと、それから、周知の技術に従って、あるいはゲルでの直接可視化により標識を検出することとにより、実行されうる。増幅配列は、反応混合物に染料を挿入して蛍光信号強度を監視することによっても検出され、この強度は二本鎖DNAの総質量に比例する。本発明による実施形態はPCR反応に関して説明されるが、ローリングサークル増幅又はループ介在等温増幅(LAMP)のような等温増幅技術を含む逆転写PCR(RT−PCR)のように、他の核酸増幅方法が使用されうることが理解されるべきである。
【0100】
上記のようなDNA増幅技術は、対象の多型や突然変異を含有するDNAに特異的に結合するが同じ交雑条件で対象の多型を含有しないDNAには結合せず、増幅反応ではDNAやその一部分の増幅の為の単数又は複数のプライマとしての役割を果たすプローブ、一対のプローブ、又は二対のプローブの使用を伴う。このようなプローブは時にして、増幅プローブ又はプライマと称される。
【0101】
「試薬」の語は、化学反応を引き起こす為にシステムに添加されるか、反応が発生するかどうかを確認する為に添加されるプライマ、核酸テンプレート、及び/又は、増幅酵素を含む何らかの物質又は化合物を指す。増幅試薬又は試薬は、プライマと核酸テンプレートと増幅酵素とを除き、概して増幅に使用されるこれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド3リン酸、緩衝液等)を指す。一般的に、増幅試薬は、他の反応化合物とともに、反応容器(試験管、マイクロウェル等)に設置又は含有される。
【0102】
ここで使用される際に「磁気」の語は、強磁性、常磁性、超常磁性の特性を含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、本発明の実施形態により検討される流体装置は、対象の多型又は突然変異を含有するDNAを検出するのに使用されて、この突然変異や多型を符号化するDNAに結合するが同じ交雑条件で突然変異や多型を含有しないDNAには結合しないオリゴヌクレオチドプローブであるオリゴヌクレオチドプローブを採用しうる。オリゴヌクレオチドプローブは、下に挙げるような適当な検出可能基の標識が付けられる。このようなプローブは時にして、検出プローブ又はプライマと称される。
【0104】
本発明による実施形態はPCR反応に関して記載されたが、ここに記載されるマイクロ流体装置と方法は、他の様々なプロセス、例えば反応に使用されうることが理解されるべきである。例えば、PCR反応、リアルタイムPCR反応(rt−PCR)、デジタルPCR(dPCR)、RNAからcDNA(RT)への逆転写、先行RTステップからのcDNAのPCR(RT−PCR)、リアルタイム又はデジタル定量化を使用するRT−PCR、免疫PCR(iPCR)とその変形、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル複製、及び/又は、非酵素核酸増幅方法(例えば「DNA回路」)を限定的にではなく含めて、核酸転写及び/又は増幅に関係する反応は、本発明の範囲に含まれる。合成又は交雑に基づく方法による配列を含む次世代配列方法を含む核酸配列の方法も、発明の範囲に含まれる。本発明の範囲に含まれる他の反応は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、単分子アレイ(SiMoA)又はデジタルELISA、コンビナトリアル化学の為の異なる試薬を送達するのに多数のビードが使用される反応、ビードが触媒試薬を送達する反応、及び/又は、確率的ビード装填により決定される化学量で「クリック」ケミストリー試薬が送達される反応を含むが、これらに限定されるわけではない。例えば、開裂試薬を使用するプロセスの例としての米国特許第14/402,565号を参照すること。その内容はここに完全に記載されているかのように参照により援用される。
【0105】
さて、単なる例示としての図を参照すると、本発明の実施形態により検討される流体装置の一例は、
図1A及び1Bに示されているようなマイクロ流体チップ10を含みうる。マイクロ流体チップ10は、少なくとも一つの流体輸送通路20を有する。幾つかの実施形態は、複数の輸送通路を包含しうる。それぞれの輸送通路20は、凍結融解「バルブ」22を備える少なくとも一つの規定の流域20rを有する。凍結融解バルブ22は少なくとも一つの冷却器25との熱連通状態にある。一般的に、流体装置は複数の凍結融解バルブ22を包含し、その各々が、輸送通路20のそれぞれの規定領域で液体を凍結及び融解するのに使用されうるそれぞれの冷却器25、任意で一つ以上の熱電冷却器(TEC)25tを備えている。少なくとも一つの熱電冷却器25tは、例えばペルティエ冷却器でありうる。
【0106】
幾つかの実施形態において、FTV22のうち一つ以上は、凍結作用を高める、つまり凍結時間を短縮しうる複数の冷却器25を、それぞれのFTV22と関連する対応の通路区画20rの上に一つと下に一つのように含みうる。
【0107】
幾つかの特定実施形態において、熱電冷却器25tは、電気絶縁性だが熱伝導性である材料の薄型シートの間に挟まれるn及びp型の半導体から成るソリッドステート装置として構成されうる。n及びp型要素のアレイに直流が印加されると、装置の片側がペルティエ効果により冷却され、周囲環境から熱を吸収する。熱は装置を経て反対側へ伝えられて放出され、TECの両側に温度勾配を生じる。例えば、スグロその他(Sgro et al.)著「マイクロ流体装置における水滴の熱電処理(Thermoelectric Manipulation of Aqueous Droplets in Microfluidic Devices)」分析化学2007年(Anal Chem. 2007)79(13):pp.4845-4851を参照すること。その内容は、ここに完全に記載されているように参照により援用される。マイクロスケール以上のTECは、ナノリットル及び/又はマイクロリットルサイズの容積の局所的冷却の為に、マイクロ流体チップ10に埋め込まれる、一体的に装着される、及び/又は、直接的又は間接的に着脱可能に装着されうる。熱電冷却器の他の例については、例えば、マルテゾスその他(Maltezos et al.)著「マイクロペルティエ接点を使用するマイクロ流体での熱管理(Thermal management in microfluidics using micro-Peltier junctions)」応用物理雑誌(Applied Phys.Lett)87,154105(2005年)を参照すること。その内容は、ここに完全に記載されているように参照により援用される。
【0108】
冷却器25は、輸送通路20に向かう、及び/又は、輸送通路に沿った流動方向に測定される長さLを有するマイクロ流体チップ10との熱連通状態にある熱的フットプリント“F”を有し、FTV領域22の幾つかのフットプリントFは、他のもの(例えば
図2B,2C,3B,3C)よりも(幅及び/又は長さが)大きい。幾つかの特定実施形態において、フットプリントFはそれぞれのTEC25tのサイズにより規定されうる。例えば、FTV領域22の少なくとも幾つかについて、TEC25tは、約16mm
2の表面積を有し、例えば、約4mm×4mmの幅及び長さ寸法を有する。
【0109】
図2A〜2C及び3A〜3Cは、それぞれの冷却器25との熱接触状態にある複数の凍結融解バルブ22と、ビードウェルアレイ40と、試料インプット45と、ビード貯蔵/試料培養室50と、廃棄物容器55とを各々が備えるマイクロ流体チップ10の例を図示している。試料計量ループ47は、ビード貯蔵/培養室50と試料インプット45との間に所在しうる。試料計量ループ47は任意で、図のように蛇行形状を有しうる。幾つかの実施形態において、試料計量ループ47は、約10.75μMと29μLの間のように、約1μLから約1mLの間、より一般的には1と500μLの間の容積を有しうる。ループ47は、主流体輸送通路20に合流する両側開口端部を有しうる。
【0110】
例えば
図2A及び3Aに示されているように、凍結融解バルブ22と関連する流体通路区画の幾つかは、冷却器により冷却される容積を増大させて凍結作用を促進するようなサイズ及び構成を持つ曲線エルボ22bを有する。
【0111】
ビードウェルアレイ40は、全長にわたって、又は実質的に全長にわたって、ウェルアレイ40の下又は上に所在し、その入口/出口のネックに隣接して、その前又は後に終端を持つことが可能な温度制御部材125を有しうる。
【0112】
マイクロ流体チップ10及び/又はチップ10の一つの層は、流体入口/出口領域の為の規定箇所でチップ10の片側又は両側に延在する貫通孔(つまりアクセス開口及び/又はポート)及び/又は流体路を有する。
【0113】
図2A及び3Aに示されているように、試料インプット45は、アクセス開口又はビア45aの試料インプットを含みうる。ビード貯蔵/試料培養室50はアクセスビア又は開口50aを含みうる。ビード洗浄・二次試薬培養室52はアクセス開口又はビア52aを含みうる。緩衝液インプット60はアクセスビア又は開口60a(
図3A)を含みうる。封止剤インプット66はアクセス開口又はビア66aを含みうる。検出基板(及び/又はPCRマスターミックス)70はアクセス開口又はビア70aを含みうる。廃棄物容器55は、片側の貫通孔又はビア55aを含みうる。二次試薬インプット63はアクセス開口又はビア63aを含みうる。
【0114】
図3Aは、マイクロ流体チップ10が、貫通孔又はビア68aを備えるアレイ前処理試薬室68と、貫通孔又はビア69aを備えるアレイ洗浄・オイルパージ廃棄物室69とを含みうることを図示している。
【0115】
図2A〜2Cは冷却器25を備える15個の凍結融解バルブ22を図示し、
図3A〜3Cは冷却器25(例えばTEC部材/要素25t)を備える14個の凍結融解バルブ22を図示しており、幾つかはマイクロ流体チップ10の上面10t(
図4)に、複数個はマイクロ流体チップ10の底部10bにある。
【0116】
図2Cに示されているように、凍結融解バルブ22の為の冷却器25(例えばTEC部材25t)は、例えばバルブ7,8のようにビードウェルアレイ40に通じる通路区画20sの各側に配置され、ビード貯蔵/培養室50の上流でこれに隣接するバルブ7は流体チップ10の上側に所在し、残りはマイクロ流体チップ10の下に所在する。
図3Cに示されているように、凍結融解バルブ8,9の為の冷却器25はマイクロ流体チップ10の上に所在し、一方はビード貯蔵/培養室50の上流でこれに隣接し、一方はビードウェルアレイ40に通じる通路区画20sの内側にある。
【0117】
凍結融解バルブ22(つまり
図2Cのバルブ7/8、
図3Cのバルブ8/9)の為の上側冷却器25は、薄い領域、例えば上基板10tの厚さの約30〜95%である領域、及び/又は、チップそのものの本体に所在し、このエリア/容積の外側の1〜2mmの間の公称又は平均厚さを有する基板の上部の厚い領域では約900μmである。すなわち、マイクロ流体チップ10は、成形されて例えば流体通路20,63i,20sを保持する上基板10t(
図4A,4B)を有する。薄い領域22tは、上部に実装された冷却器25tを保持する、及び/又は、これとの熱連通状態にあるようなサイズ及び構成を持ちうる。
【0118】
マイクロ流体チップ10は、緩衝液インプット60と複数の試薬インプット63(例えば
図7の流体容器63f)とを含みうる。
図2A〜2Cは3個の二次試薬インプット63を図示しているのに対して、
図3A〜3Cは2個の二次試薬インプット63を図示している。試薬インプット63の各々は、冷却器25を備える対応の凍結融解バルブ22を有するインプット通路63iと関連している。
【0119】
マイクロ流体チップ10は、二次試薬インプット63の一つ又はすべてとの流体連通状態にあるビード洗浄/二次培養室52を含みうる。
【0120】
マイクロ流体チップ10は、検出基板領域及び/又はPCRマスターミックス領域70を含みうる。使用の場合、PCRマスターミックスは、熱安定性DNAポリメラーゼとdNTPとMgCl
2と反応緩衝液とを例えばPCRによるDNAテンプレートの効率的な増幅に最適な濃度で含有する、予混合された使用状態の溶液を包含しうる。
【0121】
マイクロ流体チップ10は、封止剤インプット66を含みうる。封止剤は、鉱物、シリコン、炭化水素、フルオロカーボン系、このような油の混合物、多官能基合成油、及び/又は、ワックスを包含しうる。
【0122】
図2B,2C,3B,3Cは、それぞれ規定された流体通路の局所的領域の周囲に描かれた閉鎖外周により図示されている、冷却器25と関連する凍結融解バルブ22の例示的フットプリントFを図示している。これらの図は、空気透過膜35,135も図示している。
図2B及び2Cは、試薬インプット63、ビード洗浄・二次試薬培養室52の上にある1枚の膜35と、ビード貯蔵試料培養室50の上の別の膜135とを図示している。
図3B及び3Cは、廃棄物容器55と試薬インプット63とをそれぞれ覆う2枚の別々の離間した膜35を図示している。別の空気透過膜135は、ビード貯蔵/培養室50と隣接の検出基板及び/又はPCRマスターミックス70とアレイ前処理試薬68との上に所在している。
【0123】
図4A及び4Bを参照すると、マイクロ流体チップ10は複数の積層、一般的には合体される第1及び第2基板層を包含しうる。
図4Aは、上基板10tと底基板10bの両方が視覚的に透過性であり、一般的には透明又は半透明であることを図示している。
図4Bは、底基板10bが不透明(例えば不透明な黒色)であるのに対して上部10tが視覚的に透過性であることを図示している。
【0124】
上基板層10tは、少なくとも一つの流体輸送通路20の少なくとも一部分を保持できる。輸送通路20と他の流体通路とは内部通路である(上基板10tに包囲されている)か、基板10tの開放上面として形成されうる。後者の場合、オーバーレイ又はカバーが上層10tの上面に装着されて輸送通路20を密閉するか、輸送通路20がその長さ又はその一部分にわたって大気に開放されている。底基板層10bはビードウェルアレイ40を保持しうる。上記のように、ビア及び/又は流体入口/出口通路は、容器又は室を外部流体供給源及び/又は排水設備のうち一つ以上と接続するために使用されうる。
【0125】
図4A及び4Bに示されているように、試料入口45、ビード貯蔵部50、二次試薬培養室52、廃棄物容器55、二次試薬インプット63、検出基板及び/又はPCRマスターミックス70を含めて、室又は容器の幾つかは、大気/環境条件に開放されうる。単数又は複数の空気透過膜35,135は、これらの特徴/構成要素の上に所在しうる。
【0126】
上基板10t及び/又は底基板10bは適当な材料を包含し、剛性、半可撓性、又は可撓性でありうる。底層及び上層10t,10bの基板は、同じか異なる材料でありうる。上層及び/又は底層10t,10bは、シリコン、ガラス、硬質プラスチック、硬質ポリマー材料、可撓性ポリマー材料、又はこのような材料の混成物か複合物でありうる。凍結融解バルブ22のマイクロ流体チップで流体の流れを調整するのに、凍結が使用されうる。マイクロ流体チップ10は、弾性/可撓性(例えばポリジメチルシロキサン)である基板において、及び/又は、非弾性/非可撓性(例えばガラスと硬質プラスチック)である基板において、一つ以上の主輸送通路及び二次流体緩衝液及び/又は試薬通路を保持しうる。
【0127】
図5は、空気透過膜35,135を備えるマイクロ流体チップ10を図示している。膜35は、幾つかの実施形態において、廃棄物容器55と二次試薬インプット63と検出基板及び/又はPCRマスターミックス70との上に所在している。膜35,135は、PTFE又は他の適当な材料を包含し、「空気専用」膜でありうる。「空気専用」の語は、気体は膜から放出されるか膜を横断できるのに対して、液体又は粒子状物質はゼロから少なくとも1psi(又は2,3,4,5psiのようにさらに高い)印加圧力差では通過できないことを意味している。
【0128】
図5Bは、ビード貯蔵/試料培養室50で乾燥されたビードを図示しており、室50の上の位置の空気透過膜135は含んでいない。
【0129】
幾つかの特定実施形態において、上基板10tは、流体通路20及び他の流体通路とともに射出成形されうる。輸送通路20は例えば、幅250μmで奥行250μmの通路を包含しうる。試料計量通路47の幅はさらに広く、一般的には、試料計量通路47の各端部の流路20より広い約50%など、20〜60%の間でありうる。幾つかの実施形態において、計量通路47は約500μmの幅であり、通路20の直線区画に再合流する前に複数回上下動する。アレイ室40は比較的浅く、例えば、奥行が約200μmなど、計量通路47とアレイ40との間の輸送通路20よりも10〜50%浅い。アレイ40は、上基板10tと底基板10bの接合中に室が潰れないようにする、横方向及び縦方向に離間するデバイダ40dなどの物理構造をアレイ室40cに含みうる。デバイダ40dは、幅広のアレイ室40での流体流の制御を容易にする。
【0130】
底基板10bは、視覚的透過性、例えば透明又はクリア、あるいは半透明、一般的には半透明黒色であり、また一般的にはプラスチックである。底基板10bは約100〜200万個の間の「スリット」又は「彗星」形状のビードと反応ウェルのアレイ40を含む。アレイ40は、約200万個の円筒形ウェルを保持しうる。上基板10tの孔は容器として使用されうる。これらは乾燥ビード及び/又は乾燥試料を収容しうる。
【0131】
一つ以上の空気透過(フィルタ)膜35,135で覆われると、孔(例えばアクセス開口又はビア)により、リーダが緩衝液をチップ10へ押入する時に空気が排出されうる。廃棄物容器55の真空は、凍結融解バルブ22とともに、再水和された試料を培養室及び/又は反応室50,52へ吸入するのに使用されうる。インプット66(
図2A〜2C,3A〜3C)を介した油又は他の封止剤は、ビードアレイ40を撮像して蛍光信号を読み取る前に、個々の反応物を互いに封止するのに使用されうる。当業者には周知のように磁石が装着されたアクチュエータアームを使用して、ビードが装填され、チップ10内で動かされる。
【0132】
INA(例えばINP及び/又はその機能的断片、及び/又はこれを包含する微生物)を包含する緩衝液60f(
図2A,3A)は、一般的にはマイクロ流体チップ10が少なくとも一つの冷却器25との熱接触状態に置かれた後で、緩衝液インプット60(
図2A,3A)から輸送通路20へ流動導入されうる。より一般的には、規定の位置に配置された複数の離間した熱電冷却器25tとの熱接触状態になるようにマイクロ流体チップ10が試験固定/実装アセンブリの所定位置に載置され、そして溶媒和されたINAを含む緩衝液60fが、通路20と試薬インプット63iとを含む流体通路に所在する/流体通路を充填するようにマイクロ流体チップ10へ流動導入される。
【0133】
凍結融解バルブ25は、TEC25tなどの冷却器25を「凍結」作用/モードの為の規定温度、一般的には−100℃と−1℃の間に設定することにより作動しうる。幾つかの実施形態において、凍結温度は約−45℃(定常状態内部温度は−32℃と推定)と約−20℃(定常状態内部温度は−11℃と推定)の間でありうる。−45℃を下回る温度が使用されてもよく、幾つかの実施形態では、温度は約−50℃以上から約−1℃までである。−20℃を超える温度が使用されてもよい。一つ以上のFTV22の多様な凍結作用は、異なる温度及び/又は時間設定を有する。−45℃においてINA含有緩衝液は、INAを含まない対照物の2倍以上も急速にまた、高い再現性で凍結することが分かっている。チップの外面に−20℃が印加されると、INA含有緩衝液は凍結時間に関して濃度依存作用を示したのに対して、INAを含まない緩衝液は観察された時間枠内に全く凍結しなかった。本発明の実施形態は、従来のFTVシステムよりもシステムの凍結時間及び温度要件を低下させることのできるマイクロ流体凍結融解バルブ作用を促進するのに使用されうると考えられる。凍結融解システムは、ガラス及びシリコンなどの非可撓性/非弾性材料を含む多様なマイクロ流体基板との適合性を備え、ユーザにとって利用可能な装置設計の数を拡大しうる。
【0134】
上述したある種の実施形態は、緩衝液インプット60(例えば
図2A,3A)などを介して主要(作用)緩衝液に溶媒和されたINAを提案しているが、流体マイクロチップ10にINAを提供及び/又は導入する他の手法も考えられる。例えば、マイクロ流体チップ10の一つ以上の流体通路にINA含有緩衝液が(部分的又は完全に)充填されてから乾燥されることにより、通路又は通路区画をINAで受動的にコーティングする。そしてこれらのタンパク質は装置を再水和した後に凍結核を形成するのに使用されうる。タンパク質が時間とともに洗い流された場合にはこの方法での無限数のバルブ作用ステップは可能ではないが、装置の操作の為にわずかなアクチュエータが使用されると、うまく機能する。その例は、装置使用の初期段階のみで凍結が必要とされるか、さもなければ、INAを洗い流す緩衝液の交換を最小にしてわずかな凍結ステップのみが行われる装置を含む。
【0135】
例えばPEG−Sulfo−NHS連結の化学的性質によりINAを通路壁に共有結合で付着させて、洗浄のみの除去に対する耐性を一定の核形成箇所が備えるという利点を伴う類似の作用を達成することも可能である。
【0136】
非共有結合による付着を通して、INAの標的展開も可能である。その事例の一つは、(例えば組み換え発現中に直接、又はその後で共有結合により)ストレプトアビジンをINAに、そしてINAが所望される装置の領域にビオチンを結合することであろう。ストレプトアビジン改変INAであれば、それが所望されるエリアに強固に結合される。非共有結合による標的展開の別の事例は、標的分子により装置の領域を改変してから、標的分子の部位に接合する抗体又はアプタマーにINAを結合することを伴う。ポリスチレン微小球などの大きな粒子も、粒子への(共有結合による、又は受動的な)付着に続いて、INAの担体として使用されうる。付加的に、疎水性又は親水性の表面の相互作用や、他の非共有結合又は静電気の力により、INAがマイクロ流体通路壁に吸着されうる。最後に、システムがタンパク質の抽出及び溶媒和を必要としない場合には、有機体全体(例えば未変化のシュードモナス・シリンゲ)又はINA含有膜を使用する代わりに抽出プロセスが完全に不要となる。最も高い可能な氷核形成温度(およそ−2℃から−6℃)が必要とされるシステムでは、細胞膜からINPを除去した後にこれらの核形成部位の>99.9%が失われるので、未変化の有機体又は膜の使用が必要である。
【0137】
INAを含む凍結融解バルブを使用する溶液(例えば水溶液)の凍結は、このようなINAを含まない周知の従来マイクロ流体チップよりも高い温度で開始されうる。INAは任意で、流体添加材として細菌から採取されうる。凍結プロセスは、INAの不在時に必要とされるものと比較して比較的高い温度で発生しうる。INAは約−2℃の温度で氷晶化プロセスを開始することができるのに対して、水はおよそ−40℃まで過冷却され、(純水中で、又は凹凸のない通路を備えるマイクロ流体装置に)核形成部位が不在であると結晶化しない。高い温度での凍結の誘発に加えて、及び/又は、これに代わって、INAは、結晶化が発生する前に水が氷点未満に保持されなければならない平均時間を著しく短縮できる。INA凍結融解処理技術の実行は、精密な流体制御によりチップアーキテクチャの製造を簡単かつ容易にするのに使用され、可動バルブ部品を不要にし、製作及び運転コストを大幅に削減する。
【0138】
幾つかの実施形態において、INAは、試料を調製する方法で使用されうる。例えば、INAは、細胞溶解を限定的ではなく含む試料調製の一部として流体分析装置の試料計量ループで試料の凍結を向上させるのに使用されうる。幾つかの実施形態において、試料は複数の細胞を包含し、複数の細胞の少なくとも一部分は、試料計量ループで少なくとも一つの凍結融解バルブを使用して試料計量ループを電子選択的に冷却し、少なくとも一つの凍結融解バルブ及び/又は試料の少なくとも一部分を凍結させることにより溶解されうる。幾つかの実施形態において、試料計量ループ及び/又は少なくとも一つの凍結融解バルブが加熱されて、試料計量ループ、少なくとも一つの凍結融解バルブ、及び/又は試料の少なくとも一部分を融解する。試料計量ループ及び/又は少なくとも一つの凍結融解バルブの加熱は、能動加熱又は受動加熱でありうる。能動加熱は、試料計量ループ及び/又は少なくとも一つの凍結融解バルブを電子選択的に加熱できる。能動加熱は熱源(例えば熱電供給源)を使用して、凍結融解バルブ及び/又は試料計量ループの温度を上昇させる。受動加熱は、熱源からの熱の能動印加を伴わずに周囲環境に基づいて凍結融解バルブ及び/又は試料計量ループが室温まで温まる(例えば融解する)時のものである。
【0139】
図6は、分析物を処理及び/又は分析する方法を実行できる例示的な動作を図示している。図のように、複数の離間した凍結融解バルブとINAを含む流体通路とを備える流体装置が用意される(ブロック160)。凍結融解バルブが凍結温度まで冷却されると、凍結融解バルブでの液体の流れを停止させる(ブロック170)。凍結融解バルブが融解温度まで加熱されると、液体が凍結融解バルブを流れる(ブロック180)。凍結融解バルブの加熱は能動的であっても受動的であってもよい。
【0140】
INAは、細菌のような有機体から採取される、及び/又は、有機体に由来する(ブロック162)。
【0141】
INAは、凍結融解バルブと関連する少なくとも一つの流体通路へ液体中で流動導入されうる(ブロック165)。流動導入は単一又は連続的な規定量又はボーラス(つまりバッチ)であるか、継続的に実行されうる。単一のマイクロ流体装置での連続的な処理操作において、INAの量は一定であるか、増加するか、又は減少しうる。
【0142】
装置は、(直接的又は間接的に合体される)底基板と上基板とを有するマイクロ流体チップでありうる。底基板は0.01mmと10mmの間の厚さを有する(ブロック164)。
【0143】
流体マイクロチップとの熱連通状態にある熱電冷却器(TEC)を使用して、冷却及び加熱が実行されうる(ブロック175)。TECの幾つかは底基板に隣接して所在し、また幾つかは上基板に隣接して所在する。凍結温度までの冷却の為、TECは−100℃と−1℃の間の温度に設定されうる(ブロック177)。
【0144】
抽出されたINA溶液が、緩衝液に対する適当な量、単なる例として挙げると1:10から1:10,000で希釈された緩衝溶液に添加されうる(ブロック166)。幾つかの実施形態において、INAは、1μL当たり約1分子又は有機体から1μL当たり100億分子又は有機体の量で、及び/又はその中の何らかの範囲及び/又は個々の値で、緩衝溶液に存在しうる。幾つかの実施形態において、INAは、幾つかの特定実施形態での10〜50nMを含めて、約1ナノモルから100ミリモルまでの量で緩衝溶液に存在しうる。
【0145】
INAは、凍結融解バルブと関連する流体流路と関連する少なくとも一つの表面にコーティングとして設けられる、及び/又はこれに接合される(ブロック172)。接合/コーティング表面は、装置上に、あるいは流体装置との流体連通状態にある移動経路と関連する導管又は他の装置にある。
【0146】
凍結融解バルブの幾つか又はすべてを連続的又は同時的に(つまり選択的に)凍結させるように、冷却が制御可能に実行されうる(ブロック173)。同様に、凍結融解バルブの幾つか又はすべてを連続的又は同時的に(つまり選択的に)加熱するように、加熱が制御可能に実行されうる。凍結融解バルブの幾つか又はすべては、能動加熱又は受動加熱されうる。
【0147】
INAは、一つ以上のINP、氷核形成(IN)核酸、IN脂質、及び/又は、IN炭水化物を包含するか、これらである(ブロック174)。
【0148】
INAは、一つ以上の合成アプタマーを包含するか、これである(ブロック176)。
【0149】
図7は、一体型リーダ300と、マイクロ流体チップ10の為の保持アセンブリ250とを備える例示的な自動検査システム200を図示している。システム200は、例えば電圧及び流体のインプットのような冷却器25の為の制御インプットを含むサポートモジュール200hを有している。ワイヤ材料及びチューブ材料W,Tは、保持アセンブリ250をモジュール200hの制御/流体インプットに接続する。電圧及び/又は流体インプットはマイクロ流体チップ10を保持する同じモジュールに一体化されるか、例えば別々の協働サブアセンブリ又はモジュール200hであってもよい。システム200は、取り付けアセンブリ250とリーダ300とを支持するベース202を含みうる。ベース202は、凍結融解バルブ22での作用の為に流体流路への流体導入用のINAを一般的に包含する二次試薬流体63f及び/又は緩衝液を支持する。
【0150】
システム200は、凍結融解バルブ22の動作を制御及び/又は指示する為にタイミング/温度入力をユーザが選択できるようにするディスプレイ210とグラフィックユーザインタフェース(GUI)260(
図9)とを備える制御装置200c(
図8)を含むか、これとの通信状態にある。特定の試料又はタイプ又はチップサイズ及び/又は構成について凍結融解バルブセットのデフォルト動作及び/又は電子選択可能な規定動作メニューが、利便性の為にプリセットされうる。ディスプレイ210は、システム200、モジュール200hに搭載されるか、システム200及び/又はモジュール200hから離間している。
【0151】
図8を参照すると、システム制御装置200cはシステム200に搭載されるかシステムから離間しており、一つ以上及び/又は異なるFTV22によるセットについての温度パラメータ又は指示のような設定をユーザが調節する為のGUI260を備えるように構成されうる。システム制御装置200cは、全体がローカルコンピュータに、一部がローカルコンピュータに保持される、及び/又は、複数のデータベース/サーバ(例えばCLOUDベース)の間で分散されうる。「コンピュータ」の語は、FTV22の制御とこれとの通信により動作の制御を可能にする、一般的には少なくとも一つのデジタル信号プロセッサを包含する電子装置を含むように広く使用される。コンピュータはローカルであっても、モジュール200hを含む部位から離間していてもよい。
【0152】
ディスプレイ210は、システム200に搭載されていても、これから離間していてもよい。ディスプレイ210は、スマートフォン、電子ノートブック、その他のような、普及型コンピューティング装置と関連するディスプレイを包含しうる。GUI260はAPPにより用意されうる(APPは一般的には一つ以上のアイコンを介してアクセス可能な規定の機能を有する)。システム制御装置200cは、一つ以上の冷却器25、例えばTEC要素25tの為の一つ以上の温度制御装置205を制御できる。温度制御装置205は、ラブビュー(LabVIEW)又は他の適当なオペレーティングプログラムを実行するコンピュータにより制御されうるナショナルインスツルメンツ(National Instruments)データ取得/電圧出力カードにより制御されうる波長電子機器(ボーズマン(Bozeman),MT)PTC5K−CH 5A温度制御装置のように適当な温度制御装置でありうる。各TEC要素25tは、独自のPTC5K−CH制御装置又はセットを有するか、すべてが温度制御装置を共有しうる。幾つかの実施形態において、TEC要素25tの動作を制御するのに、カスタム温度制御回路が使用されうる。電気路128は、温度制御装置205を一つ以上のTEC要素25tに接続できる。
【0153】
図9は、ステップ及びタイミング調節とともに、凍結融解バルブ22(図のバルブ10〜15)の為のユーザ選択可能な温度調節(Ti)を含むGUI260の直感操作スクリーンを図示している。チップ10のレイアウトのグラフィック表示が、ディスプレイ210に提示されうる。ユーザは、GUI260を使用して凍結融解バルブ22と関連するそれぞれの冷却器25の設定及び持続時間を調節できる。
【0154】
図10は、TEC部材/要素25tが熱伝導ブロックとの適切な熱接触又はTEC部材25tとの直接接触を有するようにマイクロ流体チップ10を保持する為の実装アセンブリ250を図示している。実装アセンブリ250は、チップ10の上基板及び底基板10t,10bと片側で、TEC25tと他の側でそれぞれ当接する金属(例えば銅又は他の適当な熱伝導材料)のシムのような、複数の熱伝導部材26を含みうる。幾つかの実施形態において、熱伝導材料及び/又はブロック26は基板10t及び/又は10bに装着されてから、TEC部材25tとの熱連通状態で実装アセンブリ250に載置される。
図10に示されているように、TEC部材25tは、マイクロ流体チップ10のバルブ箇所と整合された保持基板(例えばプレート)251bの上に載置されうる。
【0155】
箔又は熱伝導コーティングは、少なくとも凍結融解バルブ22(不図示)の領域で基板10b,10tに形成されうる。
【0156】
TEC部材25tと実装装置とは容易な交換を可能にするように構成され、モジュール設計はさらなる設計変更を促進できる。
【0157】
図10に示されているように、実装アセンブリ250は、窓部251wの周りに延在する外周を有する剛性の上プレート251tを含みうる。
図8は、輸送通路20の分析物について分析データを取得できる回路及び/又は少なくとも一つのプロセッサ200pを備えるコンピュータ200cを含みうることも図示している。「コンピュータ」の語は、一般的には少なくとも一つのデジタル信号プロセッサを包含して動作を制御する電子装置を含むように広く使用されている。コンピュータはローカルであるか、装置10を含む部位から離間している。
【0158】
リーダ300は、輸送通路20及び/又はアレイ40での分析物分子の一連の画像を撮影する検出器と励起源とを含みうる。システム200のリーダ300は、(ミラー及びレンズ又は他の対物レンズを任意で含みうる)(一般的には蛍光標識が付けられた分子を励起する光を発生させる為の)励起光源と、カメラ、光電子増倍管、又はフォトダイオードのうち一つ以上のような画像作成装置又は検出器とを含みうる。対物レンズ/レンズは、使用の際に、装置10の主要面の下又は上に所在しうる。電気インプット/アウトプット及び流動操作部は、装置10の反対側に所在しうる。装置10は、図のように実質的に水平ではなく、側面を下にして作動するように起こされて(平坦な主要面が直立又は傾斜していて)もよい。
【0159】
以下の非限定的な例で、本発明がより詳しく説明される。
【0160】
バルブ作動時間と低温での可変性とを低減する為の氷核形成タンパク質の使用
免疫検定法に適したブロッキング緩衝液(50mMトリス+10%牛新生仔血清+0.1%Tween−20+0.05%アジ化ナトリウム,pH=7.4)が、およそ1mmの厚さを各々が持つ2枚の基板から成る幅250μmで奥行250μmの通路を含む厚さ2mmのプラスチックマイクロ流体チップへの供給に使用された。バルブ作用が所望される箇所で通路がTEC要素(
図1A/1B)の上に配置されるように、TECの上にチップが載置された。通路内容物の凍結及び融解は、TECを−45℃と+25℃にそれぞれ設定することによりチップ上で実施された。結果的におよそ−32℃の定常状態温度を示すようにプラスチックでの熱損失がモデリングされるので、通路のFTV領域に見られる実際の温度は−45℃よりかなり高いことに注意すべきである。各凍結及び融解事象は、明視野顕微鏡による通路の監視に従ってタイミング調整され、時間は、25℃からのTECの冷却又は−45℃からのチップの加熱の開始時に始まる(時間は、自身とチップとを冷却又は加熱するのにTECが必要とする時間を含む)。氷の急速な出現が各凍結事象の終点として使用されたのに対して、その消滅は各融解事象の終点として使用された。INP抽出物の10倍希釈(1:10,1:100,1:1,000,1:10,000)がトリス緩衝液で調製され、これらの試料の各々により同じタイミング実験が実行された。INP非含有トリス緩衝液は37秒の平均時間を必要とし、標準偏差は2.0秒であった(推定では通路温度≒−32℃)。INP抽出物の添加は凍結時間と再現性とに大きく影響し、すべての場合に凍結はおよそ18〜20秒で発生し標準偏差はおよそ1秒であるので、検査された四つのINP濃度において濃度依存作用は観察されなかった。
【0161】
TECの上の単一の厚さ1mmのプラスチック基板についてのIRカメラからの温度測定を使用すると、凍結の時点で内部温度は≒−22℃であると推定される。10回の凍結/融解試験が各試料について実施され、これらのデータは
図11に示されている。
【0162】
融解時間はINP濃度に全く影響されず、INP非含有緩衝液(
図12に図示)についての事例を含むすべての事例ではおよそ20〜22秒であった。
【0163】
図11は、トリスブロッキング緩衝液での凍結時間に対するINP抽出希釈液の作用を図示している。INP非含有対照物と比較して、四つのINP抽出希釈液すべてが−45℃ではおよそ2倍急速に凍結し、濃度依存作用は見られなかった。−20℃で、INP非含有緩衝液は5回の30分試験では凍結しなかった。必要な凍結時間と標準偏差(絶対及び相対パーセントの両方)は、この温度でのINP濃度と相関して減少する。−20℃(*)での1:10,000のINP緩衝液は15回の3分試験では10回だけ凍結した。−45℃の試験についてはN=10であり、−20℃の試験についてはN=15であった。エラーバーは、各方向での一つの標準偏差を表す。
【0164】
図12は、トリス緩衝液での五つの異なるINP濃度についての凍結時間を図示している。初期温度は、通路を凍結させるのに使用される温度を指し、通路はこの温度から通路がすぐに融解するように設定されている。いずれの温度での融解についても濃度依存作用は明白ではなかった。INP非含有緩衝液は−20℃では凍結しなかった為、この温度でのこの緩衝液には融解時間が適用できなかった。−45℃の試験についてはN=10であり、−20℃の試験についてはN=15であった。エラーバーは、各方向の一つの標準偏差を表している。
【0165】
高いバルブ作用温度についての温度要件を軽減する為の氷核形成タンパク質の使用
低温の自由融解バルブ作用に使用されるシステム及びINP抽出希釈液が、低温試験について説明したのと同じように再び検査されたが、ただし、使用された凍結温度は−20℃であった(通路内部の定常状態温度は−11℃と推定)。15回の試験が実施され、そのデータが
図11に示されている。INP非含有ブロッキング緩衝液は、−20℃に設定されたTECでは5回の30分試験中に凍結が観察されなかった。すべてのINP含有試料は、濃度依存作用を伴ってこの温度で凍結した。1:10及び1:100のINP抽出希釈液は−45℃で凍結するのに長くかかり、平均凍結時間はそれぞれ33秒±2.0秒と36秒±2.0秒であった(両方の場合に推定される通路温度は−11℃)。1:1,000のINP抽出希釈液は、−45℃でトリス緩衝液のものと類似の作用を示し、凍結時間(平均44秒)は類似しており、標準偏差は大きかった(6.5秒)。15回の3分試験において、1:10,000のINP抽出希釈液は10回凍結し、平均は91秒で標準偏差は45秒と極めて大きかった。その最短凍結時間は41秒、最長は174秒であった。−45℃での試験のように、融解時間はINP濃度に影響されなかった。すべての−20℃試験においておよそ15秒で凍結し、標準偏差は1秒未満であった。これらのデータは
図12に示されている。
【0166】
薄型チップで作動時間を短縮する為の氷核形成タンパク質の使用
最終的な一連の実験は、底基板の厚さが1mmではなく0.5mmであることを除いて上記の試験で使用されたもの(標準チップ)と同一である薄型チップを利用して実行された。INPを含むか含まないトリス緩衝液を使用して、−45℃及び−20℃のTEC温度で凍結時間が再び検査された。これらの実験では、INP抽出液の1:100希釈液のみが検査された。基板厚さを半分にする作用は顕著であった。−45℃で、INPを含むか含まないと凍結時間はそれぞれ13秒±0.48秒と22秒±0.92秒であったのに対して、これらの条件での標準チップでは19秒±1.1秒と37秒±2.0秒であった。−20℃でINPを含んでいると、凍結には18秒±0.74秒を必要とし、これは標準チップでINPを含む−45℃の場合とほぼ同じであった。標準チップのように、INPを含まないと−20℃では割り当てられた時間内に凍結が観察されなかった。これらのデータと、関係する標準チップデータとの比較が、
図13に示されている。
【0167】
図13は、INPを含むか含まない標準チップ(1mm基板)と薄型チップ(0.5mm基板)の間の凍結時間の比較を図示している。各凍結温度及び緩衝液条件について、INPを含まない−20℃の場合を除いて、標準チップよりも薄型チップでかなり急速に凍結が発生し、いずれのチップ内容物も割り当て時間内には凍結しなかった。観察された最速の凍結時間は、−45℃でINPを含む薄型チップにおいて発生した(標準チップについては〜13秒と〜19秒)。最大の性能差は−20℃で発生し、薄型チップは標準チップのおよそ2倍の速さで凍結した(〜18秒と〜36秒)。温度は−45℃から−20℃まで上昇し、INPを含む薄型チップについて必要な追加時間は〜5秒のみであり、一方で、標準チップについては必要な追加凍結時間は〜18秒であり、効果的に2倍になった。薄型チップ試験すべてについてN=10であった。エラーバーは各方向の一つの標準偏差を表す。
【0168】
上記は本発明を例示しており、これを限定するものとは解釈されない。本発明のわずかな例示的実施形態が説明されたが、本発明の新規の教示及び利点を大きく逸脱することなく例示的実施形態には多くの変形が可能であることを当業者は容易に認識するだろう。したがって、このような変形はすべて、請求項に規定された本発明の範囲に含まれることが意図されている。本発明は、以下の請求項と、これに含まれる請求項の同等物により規定される。