(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869952
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】二輪車用4速変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20210426BHJP
F16H 9/24 20060101ALI20210426BHJP
B62M 11/06 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
F16H3/093
F16H9/24
B62M11/06 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-505686(P2018-505686)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公表番号】特表2018-529052(P2018-529052A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】EP2016068326
(87)【国際公開番号】WO2017021367
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月16日
(31)【優先権主張番号】102015000041477
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514151524
【氏名又は名称】ピアッジオ・アンド・シー.・エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネスティ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ウォルター
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−068696(JP,A)
【文献】
特開昭57−022448(JP,A)
【文献】
特開昭63−083449(JP,A)
【文献】
特開昭63−158352(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0259696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
F16H 9/24
B62M 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより生成される動力を、ハブシャフト(5)を有する駆動輪である二輪車の後輪に伝達する変速手段として前記二輪車に搭載される二輪車用4速変速機(1)であって、
第1プーリ(9)及び第2プーリ(10)が配設され、エンジンによる動力を受けるクランク軸(2)と、
第3プーリ(12)及び第4プーリ(14)並びに第1ギヤ(18)及び第2ギヤ(19)が配設されたプライマリシャフト(3)であって、前記第3プーリ(12)は、第1フリーホイール(15)に組み付けられ、前記第1フリーホイール(15)は、前記プライマリシャフト(3)上に組み付けられ、前記第1ギヤ(18)は、前記プライマリシャフト(3)上に配設され、かつ、前記第1フリーホイール(15)及び前記第4プーリ(14)に組み付けられる、プライマリシャフト(3)と、
前記第1プーリ(9)と前記第3プーリ(12)を接続し、1速及び2速を伝達するための第1同期ベルト(11)と、
前記第2プーリ(10)と前記第4プーリ(14)を接続し、3速及び4速を伝達するための第2同期ベルト(13)と、
前記駆動輪に接続され、前記プライマリシャフト(3)の前記第1ギヤ(18)及び第2ギヤ(19)にそれぞれ係合するように第3ギヤ(20)及び第4ギヤ(21)が配設されたセカンダリシャフト(4)と、
を備え、
前記第1ギヤ(18)及び前記第3ギヤ(20)は、前記1速及び3速を伝達するのに適するとともに、前記第2ギヤ(19)及び前記第4ギヤ(21)は、前記2速及び4速を伝達するのに適しており、
前記3速及び4速の伝達を行うよう作動する第1同期装置(16)と、
前記2速及び4速の伝達を行うよう作動する第2同期装置(17)と、
をさらに備え、
前記それぞれのプーリ及びギヤ上において、第1フリーホイール(15)は、前記1速及び2速の伝達のために設けられ、第2フリーホイール(22)は、前記1速及び3速の伝達のために設けられ、
1速においては、所定の毎分回転数において、前記クランク軸(2)に組み付けられた遠心クラッチ(8)は係合し、第1プーリ(9)は、第1同期ベルト(11)を介して前記第3プーリ(12)により引き摺られ、それにより前記クランク軸(2)からの動力は、前記プライマリシャフト(3)に伝達され、前記プライマリシャフト(3)の回転は、前記第1ギヤ(18)及び第3ギヤ(20)を介して、前記プライマリシャフト(3)から前記セカンダリシャフト(4)に伝達され、その動力は、一対のギヤ(6)、(7)を介して、前記セカンダリシャフト(4)から前記ハブシャフト(5)に伝達され、
2速においては、所定の瞬間において、変速機のシステムは、1速から2速への移行を要求され、その移行のために変速機は、前記第1同期ベルト(11)を用い、
前記プライマリシャフト(3)上に配置される前記第2同期装置(17)が作動し、そして、2速の伝達に適した前記第2ギヤ(19)及び前記第4ギヤ(21)を同期させることにより介入し、
3速においては、所定の瞬間において、変速機のシステムは、2速から3速への移行を要求され、その場合には、変速は、前記第2同期ベルト(13)により行われ、
駆動車軸である前記クランク軸(2)上に配置される前記第1同期装置(16)は、前記3速及び4速に関係する前記第2プーリ(10)の同期を実行することにより作動され、
その現時点で動作している前記第2同期ベルト(13)は、前記第4プーリ(14)によって、変速機の前記プライマリシャフト(3)に動力を伝達し、前記2つの同期ベルト(11)、(13)が同時に動いていることにより、前記第1フリーホイール(15)は、1速及び2速に関係する前記第3プーリ(12)を解放可能であり、前記プライマリシャフト(3)が、変速機により設定される2つの異なる速度を有することを回避し、
従動軸である前記プライマリシャフト(3)上では、前記第2同期装置(17)は、前記第2ギヤ(19)及び前記第4ギヤ(21)の伝動の同期を停止するよう、作動させないようにされ、動力は、1速及び3速の伝達に適した前記第1ギヤ(18)及び前記第3ギヤ(20)を介して、前記プライマリシャフト(3)から前記セカンダリシャフト(4)に移行し、
4速においては、前記第2ギヤ(19)及び前記第4ギヤ(21)を再び同期させることにより、前記第2同期装置(17)は、前記第1同期装置(16)とともに、作動され、前記4速を得ることに貢献し、
前記セカンダリシャフト(4)上の第2フリーホイール(22)は、同じシャフトで同時に2つの変速比が存在することを防止し、一対の前記第1ギヤ(18)及び前記第3ギヤ(20)が解放され、それらの第1ギヤ(18)及び第3ギヤ(20)は、一対の前記第2ギヤ(19)及び前記第4ギヤ(21)により設定されるより高い速度のために、動力を伝達せず、その結果、前記セカンダリシャフト(4)は、前記4速により設定される速度で回転する、
二輪車用4速変速機(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の二輪車用4速変速機(1)において、
前記第1同期装置(16)を作動する、
二輪車用4速変速機(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の4速変速機(1)において、
前記第2フリーホイール(22)は、前記セカンダリシャフト(4)上に組み付けられた前記第3ギヤ(20)に組み付けられる、
二輪車用4速変速機(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の4速変速機(1)において、
前記第2フリーホイール(22)は、前記プライマリシャフト(3)上に組み付けられた前記第1ギヤ(18)に組み付けられる、
二輪車用4速変速機(1)。
【請求項5】
請求項1に記載の4速変速機(1)において、
前記第1同期ベルト(11)及び前記第2同期ベルト(13)は、歯付ベルトからなる同期ベルトであり、前記プーリ(9)、(10)、(12)、(14)には、同期変速機の動作を実行するために歯が設けられている、
二輪車用4速変速機(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の4速変速機を含む、二輪車又はスクーター型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主題として、4速同期変速機を有し、特に、エンジンで生成される動力を1つの駆動輪又は2つの駆動輪、特に、二輪車の後輪に伝達する変速手段として、スクーターなどの二輪車に載せられるものを有する。以下では、二輪車とスクーターとを同義と考える。
【0002】
現代のスクーターでは、最も一般的な変速機は、連続変速機又は連続可変装置と呼ばれるCVT(無段変速機)タイプである。
【0003】
CVTは、持続けん引(continuous traction)を提供するとともに、異なる比率の手動操作を要求しないという利点を有する。しかしながら、摺動手段を用いることにより、そのような変速機は、中でも、伝動ベルトのヒステリシス効果が最大のとき、一時的な運動において、低い効率により特徴付けられる。
【0004】
これにより、車両の全体的効率を押し下げ、その消費を増加させる。
【0005】
一方、この分野においてずっと感じられる要求は、できる限りその消費を限定することである。しかしながら、市場に要求されるならば、快適度を保つことにより、ユーザは、CVT変速機により手慣れていた。
【0006】
米国特許第4,505,352号は、動力を伝達するために、複数のプーリを有するが、フリーホイールを有さない二輪車用変速機を開示する。
【0007】
欧州特許出願公開第2,151,602号は、複数の油圧クラッチを有するが、プーリを有しない二輪車用の有段自動変速機を開示する。中国実用新案第CN201784785U号は、電気二輪車用のギヤボックスを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の基礎となる目的は、都市交通のための二輪又は三輪の二輪車における変速機の全体効率を大いに増加させることである。
【0009】
本発明の基礎となる思想は、同期変速機、すなわち、同期又は実質同期ベルト(例えば、プーリからベルトへ及びベルトからプーリへの動力の同期伝送に適した歯を備えるベルト)を含み、ヒステリシス効果を最小に低減するために、ピニオン−チェーン−クラウン型のシステムで得ることができるものに比べ、変速機効率を高める変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
伝統的なCVTシステムにより保証されるものと比較可能である十分な範囲、すなわち、第1ギヤの比率で割った最高ギヤの比率により与えられる値を保証するために、4つのギヤ(4段)の利用を提供することができる。
【0011】
したがって、上述のような二輪車用4速同期変速機により、上述の課題を解決する。二輪車用4速同期変速機は、
第1及び第2プーリ
が配設され、エンジンによる動力を受けるクランク軸と、
第3及び第4プーリ並びに第1及び第2ギヤ
が配設されるプライマリシャフトと、
第1及び第3プーリを接続し、1速及び2速
を伝達
するための第1
同期ベルトと、
第2及び第4プーリを接続し、3速及び4速
を伝達
するための第2
同期ベルトと、
駆動輪に接続され、プライマリシャフトの第1及び第2ギヤにそれぞれ係合する第3及び第4ギヤを含むセカンダリシャフトと、
を備え、
第1及び第3ギヤは、1速及び3速を伝達するのに適するとともに、第2及び第4ギヤは、2速及び4速を伝達するのに適しており、
3速及び4速の伝達を
行うよう作動する第1同期装置と、
2速及び4速の伝達を
行うよう作動する第
2同期装置と、
をさらに備え、
それぞれのプーリ及びギヤ上において、第1フリーホイールが
1速及び
2速の伝達
のために設けられ、第2フリーホイールが1速及び3速の伝達
のために設けられることを特徴とする。
【0012】
本発明における4速同期変速機の主たる利点は、無段変速機と同様の性能を得るとともに、同時に、高収率及び簡便な自動運転を得ることにある。
【0013】
上記の観点から、簡単でコンパクトなソリューションで、自動化可能なこの4速変速機を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、添付図面を参照して、一例として示すが、限定的な目的ではないいくつかの好適実施形態に従って本発明を説明する。
【
図1】本発明における4速同期変速機の第1例の不等角投影図を示す。
【
図2】異なる角度から取った
図1の同期変速機の不等角投影図を示す。
【
図4】異なる変速比の動作を示す
図1の同期変速機の図式化した縦断面図を示す。
【
図5】異なる変速比の動作を示す
図1の同期変速機の図式化した縦断面図を示す。
【
図6】異なる変速比の動作を示す
図1の同期変速機の図式化した縦断面図を示す。
【
図7】異なる変速比の動作を示す
図1の同期変速機の図式化した縦断面図を示す。
【
図8】異なる変速比の動作を示す
図1の同期変速機の図式化した縦断面図を示す。
【
図9】本発明における4速同期変速機の第2例の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図3を参照して、いくつかのギヤを備える変速機、特に、4速変速機は、全体として参照符号1で指定される。4速変速機1は、自動車両、特に、スクーターの駆動輪、すなわち、その後輪(図示せず)を作動する変速手段として、自動車両に組み付けられるのに適したタイプである。
【0016】
この目的のために、4速変速機は、エンジンにより回転するクランク軸2(関連するピストンロッド30(
図1及び
図2)及びクランク31(
図3〜
図9)を示す)と、第1従動シャフト、すなわち、プライマリシャフト3と、本実施形態のように、車輪に直接接続可能であり、車両の駆動輪に接続されるハブシャフト5に回転を伝達するセカンダリシャフト4と、を備える。
【0017】
なお、軸やシャフトの配置は、クランク軸2が、駆動輪、すなわち、ハブシャフト5の回転軸に略平行な位置にあることを前提とする。したがって、この伝達機関は、自動車両に対して横断するクランク軸を有するエンジンからの動力を、同様に、車両に対して横断する軸を有する車輪に伝えるというタスクを有する。
【0018】
セカンダリシャフト4からハブシャフト5への移行は、駆動輪に伝達する回転方向を反転する機能を有する一対のギヤ6、7を介して行われる。この場合、その回転方向は、クランク軸2の回転方向に対して同時に起こり、一対のギヤ6、7は、一定の減速比をハブに挿入する。
【0019】
一方がハブの上述の減速比なしで済ますのに対し、他方がクランク軸2の回転方向を反転するために設けられている限り、同じセカンダリシャフト4によりハブシャフト5を構成することができることを意味する。
【0020】
上述の内容の観点から、どのような場合でも、セカンダリシャフトは、機械的観点から、伝達に係る駆動輪に直接的に又は間接的に接続される。
【0021】
クランク軸2及びプライマリシャフト3は、略平行であり、異なる速度比に応じて動力を伝達可能な変速手段により接続される。そのような変速手段は、クランク軸2上に組み付けられる第1群の歯付プーリと、プライマリシャフト3上に組み付けられる第2群の歯付プーリと、第1群の歯付プーリから第2群の歯付プーリに延伸する一対の伝動ベルトとを備える。
【0022】
伝動ベルトとしては、その間でオフセットされた2つのプーリ間、特に、その間で平行な軸間で動力を伝達するのに適したあらゆる可撓性環状手段を意味する。そして、伝動ベルトは、何らかのベルト又はチェーンを含み、プーリは、同期接続を実行するために、念のため、歯付にさえすることができる。
【0023】
以降の実施形態と同様に、本実施形態では、有利に、伝動ベルトは同期伝送ベルトである。同期ベルトとしては、ベルトは、通常、摩擦や摺動による損失に悩まされることなく、車輪の直径間の比により決定される変速比で、ある車輪又は歯付プーリからの動力を別の車輪又は歯付プーリに伝達する歯付ベルトあるいはローラチェーンを意味する。
【0024】
連続変速機や連続可変装置として公知の典型的なCVT(無段変速機)タイプの変速機の代わりに、摺動部も摩擦による引き摺り部もないので、上述の同期タイプの変速機となる。
【0025】
したがって、以降の実施形態と同様に、本実施形態では、上述のプーリは、歯付ベルトにより連結され、好ましくは、ゴム製の歯付プーリである。
【0026】
主クラッチ8は、クランク軸2上に組み付けられる。本例では、主クラッチ8は、周知の遠心式である。このタイプのクラッチは、クランク軸2からの動力を変速手段に伝達するのを可能にし、所定範囲、例えば、1000〜2000回転/分で構成される回転状態を自動的に確立する。低い回転状態では、主クラッチ8は係合せず、エンジンはニュートラルであるのに対し、駆動輪には応力が加えられない。
【0027】
しかしながら、特定の適用では、このタイプのクラッチは、完全に同等の手動カップリングを有するクラッチ、又は、サーボ機構により作動するクラッチにより置換可能であることを意味する。
【0028】
どのような場合でも、変速機1は、主クラッチ8を介して、ピストンから動力を受けるクランク軸の駆動系から動力を受けるクランク軸2の従動系を含む。
【0029】
主クラッチ8の後段には、第1プーリ9及び第2プーリ10がクランク軸2上に載置される。第1プーリ9及び第2プーリ10は、それぞれ、第1同期ベルト11により第3プーリ12、及び第2同期ベルト13により第4プーリ14に接続される。
【0030】
本例では、第3プーリ12は、プライマリシャフト3上に載置される第1フリーホイール15に組み付けられる。
【0031】
また、クランク軸2の上部には、第2同期ベルト13の同期のために、すなわち、第2及び第4プーリ10、14の接続のために、第1同期装置16があり、一方、プライマリシャフト3の上部には、そのようなプライマリシャフト3上に載置される複数のギヤを同調させる第2同期装置17がある。これらは、以下で詳細に説明する。
【0032】
参照符号18及び19が指定された第1及び第2ギヤは、プライマリシャフト3上に載置される。第1及び第2ギヤは、第3ギヤ20及び第4ギヤ21にそれぞれ係合されるとともに、両者はセカンダリシャフト4上に載置される。本実施形態では、第3ギヤ20は、第2フリーホイール22に組み付けられる。
【0033】
上述の変速機の動作は、以下のように概略的に要約される。まず、エンジンは、空転しており(
図4)、最低回転では開放する遠心式の主クラッチ8が存在するため、変速機から切り離されている。
【0034】
所定の毎分回転数(
図5)において、遠心クラッチ8は係合し、1速及び2速に関係する第1プーリ9を介して、クランク軸2からの動力は、第3プーリ12により引き摺られる変速機1のプライマリシャフト3に伝達される。動力の伝達は、第1同期ベルト11を介して行われる。その回転は、第1及び第3ギヤ18、20を介して、プライマリシャフト3からセカンダリシャフト4に伝達され、その動力は、一対のギヤ6、7を介して、セカンダリシャフト4からハブシャフト5に伝達される。
【0035】
運転者により決定可能な、あるいは、システムにより自動的に設定可能な所定の瞬間において、十分に的確な実行ロジックに従って、システムは、1速から2速への移行を要求される。この場合でさえ、変速機は、第1同期ベルト11(
図5)を用いる。
【0036】
しかしながら、この場合には、プライマリシャフト3上に配置される第
2同期装置17
が作動し、そして、2速及び4速の伝達に適した一対のギヤ、すなわち、第2及び第4ギヤ19、21を同期させることにより介入する。
【0037】
ここで、セカンダリシャフト4は、1速に割り当てられた変速比を駆動するときに回転可能な速度よりも速く回転し始めるので、第1及び第3ギヤ18、20、特に、第3ギヤ20は、車輪の1つに配置される第2フリーホイール22の存在のために、超えられ、除外される。
【0038】
この時点では、変速機1のプライマリシャフト3は、1速に割り当てられた変速比を駆動するとき回転可能な速度よりも速く回転し始めるので、第1及び第3プーリ9、12により形成される対は、超えられ、除外される。そして、プライマリシャフト3は、第2ギヤにより設定される比率で回転する(
図6)。
【0039】
運転者により決定可能な、あるいは、システムにより自動的に設定可能な所定の瞬間において、十分に的確な実行ロジックに従って、システムは、2速から3速への移行を要求される。この場合には、変速機は、第2同期ベルト13(
図7)を用いなければならない。
【0040】
駆動車軸2上に置かれる第1同期装置16は、第3及び第4ギヤの第2プーリ10の同期を実行することにより作動される。後者の場合には、現在動作している第2同期ベルト13は、変速機のプライマリシャフト3に動力を伝達する。2つのベルト11、13が同時に動いているので、第1シャフト
すなわちプライマリシャフト3は、伝達により設定される2つの異なる速度を有し得る。しかしながら、第1及び第2ギヤに関係する第3プーリ
12を
解放可能な第1フリーホイール15の存在により、これを回避している。
【0041】
しかしながら、同じ瞬間、従動軸上では、プライマリシャフト3上の第2同期装置17は、第2及び第4ギヤのギヤ比の同期を停止するように、作動させないように(無効化)しなければならない。したがって、動力は、3速及び4速に関係する一対のプーリを介して、プライマリシャフト3に到達し、プライマリシャフト3は、第3ギヤにより設定される速度で回転する。
【0042】
同様に、動力は、1速及び3速の伝達に適した第1及び第3ギヤ
18、20を介して、プライマリシャフト3からセカンダリシャフト4に移行する。
【0043】
なお、この場合、同期装置は、プライマリシャフト3により到達される回転速度にかかわらず、作動させないように(無効化)しなければならない。これにより、同期装置は、作動型、すなわち、回転状態の単なる到達ではなく、システム決定により決定された作動後、作動又は非作動となるタイプでなければならない。
【0044】
一方、3速及び4速の伝達を同期させるためにクランク軸2に作用する第1同期装置16は、非作動型、すなわち、周知の遠心式の同期装置に起こるような、所定の回転状態に到達すると作動するタイプであってもよい。
【0045】
しかしながら、ここで図示の実施形態では、両同期装置16、17は、制御ロジックを備えるシステムにより、あるいは、念のため、運転者により、システムにあらゆる変速比を課すことができる自由を得るために、作動型である。
【0046】
最後の場合として、4速の挿入が維持する(
図8)。クランク軸上の第1同期装置16に関しては、3速の場合と何も変更がない。実際には、第2及び第4プーリ10、14間の第2同期ベルト13が動作し続ける。
【0047】
しかしながら、第4ギヤのために、プライマリシャフト3上で作動される第2同期装置17でさえ、2速及び4速に貢献するギヤ対、すなわち、第2及び第4ギヤ19、21を再び同期させることにより、介入しなければならない。
【0048】
再び、セカンダリシャフト4上の第2フリーホイール22の存在は、同じシャフトで同時に2つの変速比が存在することを防止する。特に、1速及び3速の伝達に関係する一対のギヤ18、20が解放され、それらは、一対の第2及び第4ギヤ19、21により設定されるより高い速度(ギヤ)のために、動力を伝達しない。このように、セカンダリシャフト4は、4速により設定される速度で回転する。
【0049】
2つの同期装置の作動スキームは、以下の表1に要約することができる。
【0051】
第1実施形態の記述では、フリーホイール15、22の特定の配置を検討した。
【0052】
特定の場合には、第1フリーホイール
15は、1速及び2速に関係する伝達を
解放するのに必要な変速機のプライマリシャフト3上に挿入され、第2フリーホイール22は、1速及び3速に関係する伝達を
解放するのに必要なセカンダリシャフト4上に挿入された。
【0053】
第2実施形態(
図9)において、変速機システムの同じ機能を得ることができる。ここで、2つのフリーホイールのうち、第2フリーホイール22でさえ、
また、1速及び3速の伝達を
解放する目的で、変速機のプライマリシャフト3上に組み付けられる。
【0054】
なお、第2フリーホイール22は、第1ギヤ18上に組み付けられる。
【0055】
一方で、プライマリシャフト3の構造を支持させるならば、そのような選択肢は、少し複雑になり、他方で、1速及び3速に関係するギヤ18、20の定義を明確により簡単にする。
【0056】
後者の場合に加え、全体寸法及び適切な支持スキームの理由のために、2つのフリーホイールのうち第1フリーホイール15さえ動作させる必要がある。そして、後者は、第1及び第2ギヤに関係する第3プーリ12に実質的に整列される。機能的観点から、フリーホイール自身をより良い方法で作動させることにより、もうこれ以上、第1ベルト11の張力が事実上プライマリシャフト3の屈曲を生じさせないので、この面は非常に有益である。
【0057】
なお、要求に応じて、1速又は2速の伝達を
解放する第1フリーホイール15の目的を考慮することにより、第1プーリ9を支持するために、第1フリーホイール15をクランク軸2上にさえ配置することができる。
【0058】
最後に、複数のフリーホイールの配置の選択は、一義的なものではない。特に、1速及び3速の係合を
解放するのに適したフリーホイールは、本変速機の基礎となる原理を少しも修正(変更)することなく、プライマリシャフト上でもセカンダリシャフト上でも実行可能である。
【0059】
上述の4速同期変速機に対して、追加の及び偶発的なニーズを満足する目的で、当業者は、添付の特許請求の範囲により規定されるように、すべて本発明の保護範囲内において、いくつもの追加の改良をもたらすことができる。