(54)【発明の名称】L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母ヤロウィア・リポリティカの菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物及びその用途並びにL−ヒドロキシプロリンの製造方法
【文献】
FALCIONI, Francesco, et al.,Efficient Hydroxyproline Production From Glucose in Minimal Media by Corynebacterium glutamicum,BIOTECHNOLOGY BIOENGINEERING,2015年,Vol.112,p.322-330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コラーゲン産生促進、表皮細胞の増殖促進、皮膚の保湿、皮膚の老化防止、皮膚のたるみの予防又は改善、皮膚のハリの改善、しわの予防又は改善及びアトピー性皮膚炎の改善から選ばれる用途に用いられる請求項15に記載の化粧料又は化粧料原料。
前記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−プロリン(Pro)及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の合計含量(μg/mL)に対するL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))が、35〜100である請求項19に記載のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物。
前記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上である請求項19又は20に記載のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
本明細書中、酵母の属種は、The Yeasts, a Taxonomic Study Fifth Edition(Elsevier発行、2011年)に記載の属種名で記載した。
【0020】
本発明の第一の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物であって、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンを含有し、L−プロリン(Pro)及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の合計含量(μg/mL)に対するL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))が、35〜100である。
【0021】
本発明の第二の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物であって、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上である。
以下、本発明の第一の態様及び第二の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を、まとめて本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物ともいう。
【0022】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物である。
本発明における酵母は、ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)に属する酵母であればよく、1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)は、さまざまな寄託機関等より入手可能である。寄託機関としては、例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)等が挙げられる。また、自然界から分離することもできる。
【0023】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリン(Hyp)を含有する。本発明におけるL−ヒドロキシプロリンは、4−ヒドロキシ−L−プロリンである。本明細書中、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に含まれるL−ヒドロキシプロリンは、遊離のL−ヒドロキシプロリンを指す。酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物におけるL−ヒドロキシプロリン含量又は蓄積量は、遊離のL−ヒドロキシプロリン量を指す。その菌体又は菌体培養物中に遊離のL−ヒドロキシプロリンを蓄積する酵母は報告されていなかった。
【0024】
本発明の第一の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−プロリン(Pro)及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の合計含量(μg/mL)に対するL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))が、35〜100である。このような酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの効能が期待される飲食品や化粧料の原料等に好適に使用される。「L−プロリン(Pro)及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の合計含量(μg/mL)に対するL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)の割合」(100×Hyp/(Pro+Hyp))を、以下では「(Hyp/(Pro+Hyp))割合」ともいう。本明細書中、上記(Hyp/(Pro+Hyp))割合におけるL−プロリン含量は、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に含まれる遊離のL−プロリン含量を指す。
好ましい態様において、本発明の第二の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が、35〜100である。
上記(Hyp/(Pro+Hyp))割合は、好ましくは40〜100であり、より好ましくは50〜100であり、より好ましくは60〜100であり、さらに好ましくは70〜100であり、さらにより好ましくは80〜100であり、特に好ましくは90〜100である。上記(Hyp/(Pro+Hyp))割合がこのような酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、Hypの含量割合が高く、L−ヒドロキシプロリンの効能が期待される飲食品や化粧料の原料等として特に好適である。
【0025】
本発明の第二の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上である。
本発明の第一の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上であることが好ましい。L−ヒドロキシプロリンの含量が上記範囲である酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの効能が期待される飲食品や化粧料の原料等として好適である。
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のL−ヒドロキシプロリンの含量は、15μg/mL以上であることがより好ましく、17μg/mL以上がより好ましく、20μg/mL以上がより好ましく、30μg/mL以上がさらに好ましく、40μg/mL以上がさらに好ましく、50μg/mL以上がさらに好ましく、70μg/mL以上がさらに好ましく、100μg/mL以上がさらに好ましく、150μg/mL以上がさらに好ましく、200μg/mL以上が特に好ましく、250μg/mL以上が特に好ましく、300μg/mL以上が特に好ましく、400μg/mL以上が特に好ましく、450μg/mL以上が特に好ましく、475μg/mL以上が特に好ましく、500μg/mL以上が最も好ましい。
酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のL−ヒドロキシプロリンの含量の上限は特に限定されず、多い方が好ましいが、通常、6000μg/mL以下であり、3000μg/mL以下又は2000μg/mL以下であってもよい。
本発明によれば、酵母の菌体又は菌体培養物に由来するL−ヒドロキシプロリンの含量が、上記範囲である酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を提供することができる。
【0026】
酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物中のL−プロリンの含量(μg/mL)及びL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物が菌体を含む場合には、加熱等による自己消化や酵素分解処理等により菌体を破砕し、菌体内容物を溶出したものを用いて、L−プロリン及びL−ヒドロキシプロリンの含量を測定する。L−プロリン及びL−ヒドロキシプロリン含量の測定方法及びHPLCの測定条件等は、実施例に記載の方法及び条件等を採用すればよい。好ましくは、(1)o−フタルアルデヒド(OPA)及び4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−Cl)により順次アミノ酸を誘導体化して、HPLCにより分析する方法(励起波長503nm/蛍光波長541nmで検出)、又は、(2)メルカプトプロピオン酸、OPAで1級アミノ基を誘導体化後クロロ蟻酸−9−フルオレニルメチル(FMOC)により2級アミノ酸を誘導体化して、HPLCにより分析する方法(励起波長266nm、蛍光波長305nmで検出)により、より好ましくは上記(2)の方法により、L−プロリン及びL−ヒドロキシプロリンを定量する。
【0027】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を液体培地中で好気培養し、必要に応じて菌体破砕等を行って得られるものである。
酵母の菌体培養物は、酵母の菌体及び/又は培養上清を含むことが好ましく、酵母の菌体内容物を含んでいてもよい。酵母の菌体は、生菌であってもよく、死菌であってもよい。酵母の菌体及び/又は培養上清を含む菌体培養物として、上記酵母を好気培養して得られる酵母の菌体(培養菌体)及び培養上清を含む菌体培養液、該菌体培養液から酵母の菌体を集菌したもの(菌体)、又は該菌体培養液から菌体を除去した培養上清が挙げられる。菌体培養液の培養上清を、単に培養上清という。菌体培養物は、好ましくは、酵母の菌体及び培養上清を含む菌体培養液又は培養上清である。
また、菌体又は菌体培養物の抽出物は、通常、菌体内容物を含み、菌体内容物及び培養上清を含むことが好ましい。菌体又は菌体培養物の抽出物として、菌体又は菌体を含む菌体培養物(好ましくは菌体培養液)に、自己消化処理や酵素分解処理等の菌体破砕処理を行って、酵母菌体内容物を培養液中等に溶出したもの(菌体破砕物)、菌体破砕処理を行った菌体又は菌体培養物(菌体破砕物)から菌体残渣を除去したものが挙げられ、好ましくは、菌体破砕処理を行った菌体培養液(菌体破砕物)又は該菌体破砕物から菌体残渣を除去して得られる、菌体内容物及び培養上清を含む抽出物である。
【0028】
上記のように、本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、通常、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を液体培地中で好気培養して得られる酵母の菌体及び培養上清を含む菌体培養液に、必要に応じて集菌、菌体破砕等の処理を行って調製される。
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に含まれるL−ヒドロキシプロリンは、上記の好気培養により得られる酵母の菌体又は菌体培養物に由来することが好ましい。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に含まれるL−ヒドロキシプロリンは、上記の好気培養前には実質的に存在しないことが好ましい。
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、例えば、化粧料、酒類を含む飲食品等の原料として好適に使用することができるものである。
【0029】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)を、OD600で除した値(μg/mL/OD600)が、0.5以上であることが好ましい。L−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)を、OD600で除した値(μg/mL/OD600)を、以下、Hyp/OD600値ともいう。Hyp/OD600値が高いほど、細胞あたりのL−ヒドロキシプロリンの含量が多いため好ましい。酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のHyp/OD600値の上限は特に限定されず、多いほど好ましいが、通常、300以下である。Hyp/OD600値は、1以上であることがより好ましく、例えば、1〜150が好ましい。Hyp/OD600値は、25以上がさらに好ましく、50以上がさらにより好ましい。
【0030】
ODとはoptical densityの略で、光学密度を指す。ODは、細胞の濃度などを表す。一般的には600nm又は660nmの波長の可視光に対する吸光度OD600又はOD660を測定する(バイオ実験イラストレイテッド▲7▼使おう酵母 できるTwo Hybrid、秀潤社、2003年発行)。
Hyp/OD600値の計算に使用されるOD600は、菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の調製に用いた、菌体及び培養上清を含む菌体培養液(菌体及び培養上清を含む菌体培養物)の600nmの吸光度である。
より具体的には、上記の酵母を液体培地中で好気培養して得られる酵母の菌体培養液をそのまま菌体培養物とする場合には、OD600は、該菌体培養液(菌体培養物)の吸光度OD600である。酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物が、酵母の菌体を破砕して菌体内容物を溶出させた菌体又は菌体培養物の抽出物の場合には、OD600は、その調製に使用した菌体培養液(菌体破砕前の酵母の菌体及び培養上清を含む菌体培養液)の吸光度OD600である。OD600は、例えば、分光光度計により測定することができる。
【0031】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、エタノール含量が1v/v%以下であることが好ましい。エタノール含量が1v/v%以下であると、各種飲食品や化粧料等の原料として特に好適に使用することができる。エタノールが1v/v%を超えると、酵母の増殖などに悪い影響がある場合がある。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のエタノール含量は、より好ましくは0.8v/v%以下であり、さらに好ましくは0.5v/v%以下である。エタノール含量は、公知の方法により測定することができる。
【0032】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の形態は特に限定されないが、例えば、ペースト状、懸濁状、エキス状、液状等が挙げられる。
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、後述するように化粧料、飲食品等の原料として好適に使用することができるものである。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を乾燥等により粉末化して使用することもできる。
【0033】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含有する液体培地中で好気培養し、必要に応じて菌体破砕等することにより、得ることができる。より具体的には、窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む。
酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源、及び、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、該酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンが蓄積し、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体又は菌体培養物が得られる。酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源、及び、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、該酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程を含む方法は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の製造方法、又は、L−ヒドロキシプロリンの製造方法として好ましい。
【0034】
本発明のL−ヒドロキシプロリンの製造方法は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程(以下、Hyp蓄積工程ともいう)を含む。上記窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源である。
本発明の製造方法は、所望によりHyp蓄積工程以外の工程を有してもよい。例えば、後述する前培養工程、集菌工程、菌体破砕工程等の1又は2以上の工程を有していてもよい。
【0035】
本発明のL−ヒドロキシプロリンの製造方法においては、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を得ることができる。
上記Hyp蓄積工程を行うことにより、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体又は菌体培養物が得られる。得られる酵母の菌体又は菌体培養物は、通常、上記(Hyp/(Pro+Hyp))割合が35〜100である。また、Hyp蓄積工程により得られる酵母の菌体又は菌体培養物は、通常、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上である。このような酵母の菌体又は菌体培養物は、上述した本発明の酵母の菌体又は菌体培養物として使用できる。また、得られた菌体又は菌体培養物に、所望によりさらに菌体破砕処理等の処理を行って、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体又は菌体培養物の抽出物を調製することもできる。
Hyp蓄積工程を含むL−ヒドロキシプロリンの製造方法は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の製造方法としても好ましい。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を得る場合、Hyp蓄積工程及びその好ましい態様は、L−ヒドロキシプロリンの製造方法におけるHyp蓄積工程及びその好ましい態様と同じである。
【0036】
Hyp蓄積工程において、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の液体培地ヘの添加方法は、炭素源及び窒素源を含有する液体培地中に直接少量の菌体を接種することで増殖させることができるが、短期間で菌体濃度を上昇させるためには、前培養した菌液を接種することが好ましい。前培養に用いる培地は特に限定されず、Hyp蓄積工程(通常、本培養)で使用される液体培地と同じ培地でもよく、酵母に使用することができる公知の培地を使用してもよい。前培養の時間は、通常10〜72時間であり、好ましくは12〜48時間である。前培養温度は、15〜40℃とすることが好ましい。前培養した菌液を接種する量としては、通常、Hyp蓄積工程で使用する培地量の1/100000〜1/2であり、1/1000〜1/10が好ましく、1/200〜1/10がより好ましく、1/200〜1/20がさらに好ましい。接種量が上記範囲であれば、Hyp蓄積工程において酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の増殖が速く、L−ヒドロキシプロリンを効率よく蓄積させることができる。
【0037】
Hyp蓄積工程で使用される液体培地の窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源である。このような窒素源を用いて酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を好気培養すると、菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンが蓄積する。このような窒素源は1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドは1種であってもよく、2種以上であってもよい。
L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドとは、L−ヒドロキシプロリンを構成アミノ酸に含むペプチドであればよいが、好ましくは、構成アミノ酸の10重量%以上がL−ヒドロキシプロリンであるペプチドである。一態様において、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドであることも好ましい。
【0038】
L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源は、例えば、L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質を加水分解することにより得ることができる。L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質とは、構成アミノ酸にL−ヒドロキシプロリンを含むタンパク質であればよいが、好ましくは、構成アミノ酸の10重量%以上がL−ヒドロキシプロリンであるタンパク質である。上記L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質として、コラーゲン性タンパク質等が好ましい。コラーゲン性タンパク質として、例えば、内臓、皮、魚鱗、骨等のコラーゲンを含む組織から調製されるタンパク質;コラーゲン、ゼラチンが挙げられる。コラーゲン性タンパク質の原料由来は特に限定されない。例えば牛由来、豚由来、魚由来等の動物由来のコラーゲン性タンパク質を好適に使用することができる。コラーゲン性タンパク質は、市販品を使用することができる。L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質の加水分解は、酵素等により公知の方法で行うことができる。
【0039】
L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源として、例えば、動物由来のペプトンを好適に使用することができる。好ましくは、牛、豚又は魚由来のペプトンであり、より好ましくは牛又は魚由来のペプトンである。本発明の一態様において、ペプトンとして、獣肉ペプトン、心筋ペプトン、ゼラチンペプトンも好ましい。
本発明において使用できるL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源の市販品の一例として、例えば、製品名Pepton(#211677)(Bacto社)等が挙げられる。
【0040】
一態様において、上記L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドは、好ましくはコラーゲンペプチドである。コラーゲンペプチドとは、加水分解コラーゲンを意味し、天然コラーゲンを熱処理して変性させたゼラチン又は天然コラーゲンを加水分解したコラーゲンペプチド、又は、これらを化学的、酵素的に修飾したものの何れであってもよい。加水分解は、酵素、酸、アルカリ等により行うことができ、好ましくは酵素により行われる。好ましくは、天然コラーゲンを熱処理して変性させたゼラチン又は天然コラーゲンを加水分解したコラーゲンペプチドを用いる。コラーゲンペプチドの原料由来は特に限定されない。例えば牛由来、豚由来、魚由来等の動物由来のコラーゲンペプチドを好適に使用することができる。好ましくは、魚由来のコラーゲンペプチドである。コラーゲンペプチドは、市販品を使用することができる。
【0041】
本発明において使用できるコラーゲンペプチドの市販品の一例として、例えば、新田ゼラチン(株)製の「コラーゲンペプチド イクオスHDL−50SP」(製品名)(平均分子量5000)、「コラーゲンペプチドType S」(製品名)(平均分子量1200)、「スーパーコラーゲンペプチド SCP−2000」(製品名)(平均分子量2000)、野洲化学工業(株)製の「コラーゲンペプチドP−5000」(製品名)(平均分子量5000)、「コラーゲンペプチドF−5000」(製品名)(平均分子量5000)、日祥(株)製の「マリンコラーゲンオリゴCF」(製品名)(平均分子量900〜1100)、「マリンコラーゲンオリゴMF」(製品名)(平均分子量900〜1500)等が挙げられる。中でも、「コラーゲンペプチドType S」(平均分子量1200)、「コラーゲンペプチド イクオスHDL−50SP」(平均分子量5000)等が好ましい。
これらの中で、例えば「コラーゲンペプチド イクオスHDL−50SP」、「コラーゲンペプチドType S」、「コラーゲンペプチドF−5000」、「マリンコラーゲンCF」、「マリンコラーゲンオリゴMF」は魚に由来するものであり、「コラーゲンペプチドP−5000」、「スーパーコラーゲンペプチド SCP−2000」は豚に由来するものである。
【0042】
本発明の好ましい実施態様においては、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源は、好ましくはコラーゲンペプチド(より好ましくは魚由来のコラーゲンペプチド)及び/又はペプトン(より好ましくは牛、豚又は魚由来、さらに好ましくは牛又は魚由来のペプトン)であり、特に好ましくはコラーゲンペプチドである。このようなL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源を使用すると、酵母の菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量が多くなる。ペプトンは、獣肉ペプトン、心筋ペプトン、ゼラチンペプトンであってよい。本発明のL−ヒドロキシプロリンの製造方法の好ましい実施態様の一例は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源、並びに、コラーゲンペプチド及び/又はペプトンを含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程を含む。
【0043】
一態様において、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源は、平均分子量が10000以下であることが好ましく、例えば、平均分子量が100〜10000が好ましい。L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドは、平均分子量が10000以下であることが好ましく、例えば、平均分子量が100〜10000が好ましい。また、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドは、分子量が10000以下であることも好ましい。
コラーゲンペプチドは、平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。平均分子量が上記範囲のコラーゲンペプチドを窒素源に使用すると、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量が多くなる。
L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドの平均分子量は、ゲル濾過などにより算出される。コラーゲンペプチドの平均分子量は、通常、写真用ゼラチン試験法(PAGI法)第10版「20−2 平均分子量」に記載されている方法により算出される値である。ペプチドの平均分子量は、重量平均分子量を指す。
【0044】
コラーゲンペプチドの平均分子量は、より好ましくは1000〜6000であり、さらに好ましくは1000〜5500であり、特に好ましくは1000〜5000である。このようなコラーゲンペプチドを窒素源に使用すると、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量がより多くなる。また、一態様において、コラーゲンペプチドの平均分子量として、1000〜3000がより好ましく、1000〜1500がさらに好ましい。本発明の別の好ましい態様においては、コラーゲンペプチドの平均分子量は、2000〜5500がより好ましく、3000〜5000がさらに好ましい。
【0045】
上記液体培地中のL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源の濃度は、0.1〜10重量%が好ましく、0.25〜5重量%がより好ましく、1〜5重量%であることがさらに好ましい。上記窒素源の濃度が上記範囲であると、菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンが蓄積する。このため、例えば、L−ヒドロキシプロリン含量が10μg/mL以上である酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を得ることができる。また、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が35〜100である菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を得ることができる。液体培地中の上記窒素源の濃度は、1.5〜4.5重量%がさらにより好ましく、2〜4重量%が特に好ましい。上記窒素源の濃度は、培養開始時に上記濃度であればよい。
一態様において、上記液体培地中のコラーゲンペプチド又はペプトンの濃度が、上記範囲であることが好ましい。
【0046】
上記炭素源は特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラフィノース、マンノース、マルトース、ガラクトース、マンニトール、トレハロース、メレビトース、セロビオース、澱粉、糖蜜、ソルビトール、L−ソルボース、グリセロール、エタノール、グルシトール等の糖質又は糖アルコール;酢酸、クエン酸、又はグルコン酸等の有機酸等が挙げられる。炭素源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。中でも、炭素源はグルコース、フルクトース、スクロース等の糖が好ましく、グルコースが特に好ましい。
【0047】
液体培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%であり、より好ましくは1〜5重量%であり、さらに好ましくは2〜5重量%である。液体培地中の炭素源の濃度が1重量%以上であると、菌体の増殖速度が速いため好ましい。なお、炭素源の濃度は、培養開始時に上記濃度であればよい。
【0048】
本発明の製造方法においては、炭素源(C)とL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源(N)との重量比(C/N)が0.25〜20であることが好ましい。C/Nの重量比が上記範囲であると、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量が多くなるため好ましい。一態様において、上記C/Nの重量比は、0.25〜5がより好ましく、0.3〜3がより好ましく、0.4〜1.5がさらに好ましい。C/Nの重量比が上記範囲であると、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量がより多くなる。一態様において、例えばL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源(N)にコラーゲンペプチド(好ましくは平均分子量が1000〜5000)又はペプトンを使用する場合には、上記C/Nの重量比は0.25〜5がより好ましく、0.3〜3がより好ましく、0.4〜1.5がさらに好ましく、0.5〜1.3が特に好ましい。
別の好ましい態様において、上記C/Nの重量比は、0.5〜20も好ましい。
上記C/Nの重量比は、培養開始時に上記範囲であればよい。
【0049】
液体培地は、上述した炭素源及びL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源以外の成分を含んでもよく、例えば、酵母抽出物(Yeast extract)を含むことが好ましい。酵母抽出物は、通常L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含まず、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源には含まれない。酵母抽出物は、酵母の培養に使用できるものであればよく、特に限定されず、市販品を使用することができる。例えば、製品名Bacto yeast Extract(#212750)(Bacto社)等を好適に使用することができる。
酵母抽出物を使用する場合、酵母抽出物の濃度は、液体培地に対して0.1〜3重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。酵母抽出物の濃度は、培養開始時に上記濃度であればよい。
【0050】
一態様において、液体培地のpHは、3〜9が好ましく、4〜9がより好ましく、4を超えて9以下がさらに好ましく、4.5〜8.8がさらにより好ましく、5〜8.7が特に好ましい。液体培地のpHは、適宜調整すればよい。pH調整には、公知の酸又はアルカリ剤を使用でき、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、グルタミン酸、酢酸、酪酸、乳酸、蟻酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
培養温度は、15〜45℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃がさらに好ましい。培養温度がこの温度範囲であると、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の増殖が速く、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリンの蓄積量が多くなる。
【0052】
好気培養を行う方法は特に限定されず、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を接種した液体培地を、例えば、振盪培養又は攪拌培養すればよい。振盪又は攪拌の速度は特に限定されないが、好ましくは30〜600rpmであり、一態様において、より好ましくは50〜600rpmであり、さらに好ましくは、100〜600rpmである。また別の好ましい態様において、振盪又は攪拌の速度は、より好ましくは30〜500rpmであり、さらに好ましくは50〜300rpmである。このような速度で振盪培養又は攪拌培養すると、L−ヒドロキシプロリンの蓄積量が多くなるため好ましい。より好ましくは、上記速度で振盪培養する。また、所望により滅菌された空気又は酸素でバブリングを行ってもよい。また、培養形式は、回分培養、流加培養、連続培養のいずれでもよいが、回分培養が好ましい。本発明の製造方法においては、静置培養を行ってもよい。
【0053】
培養時間は特に限定されず、適宜設定すればよいが、例えば、好気培養を10〜100時間行うことが好ましい。培養時間が上記範囲であると、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンが蓄積する。また、通常、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が35〜100である、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物、L−ヒドロキシプロリン含量が10μg/mL以上である酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を得ることができる。また、エタノール含量が少ない(例えば、1v/v%以下)酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物が得られる。培養時間が10時間未満であると、L−ヒドロキシプロリンの蓄積量が少ない場合や、得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の(Hyp/(Pro+Hyp))割合が35未満となる場合がある。培養時間が100時間を超えると、得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のエタノール濃度が1v/v%を超える場合がある。また、コンタミネーションが起こりやすくなったり、酵母の死滅後に自己消化による着色等が生じたりする場合がある。培養時間は、より好ましくは10〜80時間であり、さらに好ましくは12〜72時間であり、さらにより好ましくは20〜60時間であり、さらにより好ましくは24〜55時間であり、特に好ましくは24〜50時間である。また、本発明の製造方法においては、菌体又は菌体培養物中のL−ヒドロキシプロリン含量が10μg/mL以上となるまで、好気培養を行うことが好ましい。
本発明の製造方法において、好気培養は、通常、本培養として行われるが、前培養であってもよく、前培養及び本培養において好気培養を行ってもよい。
【0054】
上記の好気培養を行うことにより、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンが蓄積する。菌体培養物は、酵母の菌体及び培養上清を含む菌体培養液であってもよく、酵母の菌体であってもよく、又は、菌体培養液の培養上清であってもよい。Hyp蓄積工程を行うことにより、L−ヒドロキシプロリンを含有し、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が、35〜100である酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体又は菌体培養物を得ることができる。また、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上である酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体又は菌体培養物を得ることができる。酵母の菌体又は菌体培養物に、例えば菌体破砕処理を行うことにより、酵母の菌体又は菌体培養物の抽出物を得ることができる。
【0055】
本発明においてL−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はその抽出物を調製する場合は、例えば、Hyp蓄積工程で得られる酵母の菌体及び培養上清を含む菌体培養液をそのままL−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体培養物とすることができる。また、菌体培養液から酵母の菌体を集菌し、得られた菌体を酵母の菌体又は菌体培養物としてもよく、菌体培養液から菌体を除去した培養上清を菌体培養物とすることもできる。さらに、上記菌体又は菌体培養液に、必要に応じて菌体を破砕する処理を行って、菌体内容物を培養液中等に溶出させて菌体又は菌体培養物の抽出物を調製することもできる。菌体又は菌体培養物の抽出物の調製においては、菌体を破砕した後、菌体残渣を除去する工程を行ってもよい。また、菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物には、必要に応じて殺菌、加熱等の処理を行ってもよい。本発明の製造方法は、このような集菌工程、菌体破砕工程、菌体残渣除去工程、殺菌工程等の1又は2以上の工程を含んでもよい。
【0056】
菌体培養液から菌体を集菌する方法は特に限定されず、通常行われている方法を採用することができ、例えば、遠心分離等が挙げられる。
上記菌体を破砕する方法は特に限定されず、通常行われている方法を採用することができ、例えば、自己消化法、酵素分解法、アルカリ抽出法等が挙げられる。中でも、自己消化法が好ましい。自己消化法においては、例えば菌体又は菌体培養物を40〜60℃で60〜180分間、又は、95〜100℃で5〜15分間加熱すればよい。
菌体残渣を除去する方法は特に限定されない。例えば、濾過、遠心分離等の公知の方法により菌体残渣を除去すればよい。
殺菌を行う場合には、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を75〜90℃(より好ましくは80℃)、45〜90分(より好ましくは60分)加熱することが好ましい。菌体残渣除去及び殺菌を行う場合、いずれを先に行ってもよい。
【0057】
本発明において得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物、及び、その好ましい態様は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物、及び、その好ましい態様と同じである。本発明の製造方法によれば、例えば、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が、35〜100であり、かつ、L−ヒドロキシプロリン含量が10μg/mLである酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を製造することができる。酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物中のL−ヒドロキシプロリンは、通常、上記酵母の菌体又は菌体培養物に由来するものである。
上記方法により得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に、さらに天然物由来又は合成されたL−ヒドロキシプロリンを添加してもよいが、好ましい態様においては、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に含まれるL−ヒドロキシプロリンは、上記のHyp蓄積工程により得られる酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体又は菌体培養物に由来するL−ヒドロキシプロリンからなる。
【0058】
本発明で得られるL−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、後述する飲食品、化粧料等の原料等として使用することができる。また、本発明のL−ヒドロキシプロリンの製造方法においては、得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物から、L−ヒドロキシプロリンを精製する工程を行ってもよい。L−ヒドロキシプロリンの精製は、例えば、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法により行えばよい。
【0059】
本発明は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の、L−ヒドロキシプロリンを製造するための使用も包含する。
上記ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)は、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を製造するためにも好適に使用される。L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が、35〜100であることが好ましい。L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上であることも好ましい。L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の好ましい態様は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の好ましい態様と同じである。
【0060】
本発明の使用は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させることを含むことが好ましい。
上記窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源であることが好ましい。
【0061】
本発明の使用においては、上記L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドがコラーゲンペプチドであることが好ましい。また、上記コラーゲンペプチドの平均分子量は1000〜10000であることが好ましい。
【0062】
本発明の使用においては、上記液体培地中のL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源の濃度が0.25〜5重量%であることが好ましい。また、炭素源(C)とL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源(N)との重量比(C/N)が0.25〜20であることが好ましい。一態様において、上記C/N比は0.5〜20であることも好ましい。本発明の使用においては、上記好気培養を10〜100時間行うことが好ましい。
【0063】
本発明の使用における液体培地、炭素源及びL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源並びにこれらの好ましい態様は、上述したL−ヒドロキシプロリンの製造方法におけるものと同じである。また、好気培養の条件及びその好ましい態様も、上述したL−ヒドロキシプロリンの製造方法におけるものと同じである。本発明の使用は、上述した集菌工程、菌体破砕工程、菌体除去工程、殺菌工程等の1又は2以上の工程を含んでもよい。
【0064】
上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、化粧料、飲食品、医薬品等の各種組成物に配合することができる。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含む組成物も、本発明に包含される。本発明の組成物は、上述した本発明の第一の態様及び第二の態様の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物のいずれかを含めばよく、両方を含んでよい。本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含む組成物は、該酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に由来するL−ヒドロキシプロリンを含む。
本発明の組成物として、例えば、化粧料(化粧料組成物)、飲食品(飲食品組成物)、医薬品(医薬品組成物)、医薬部外品(医薬部外品組成物)等が挙げられる。組成物は、これらの原料であってもよい。一態様において、組成物は、化粧料又は飲食品、これらの原料であることが好ましい。
【0065】
本発明の組成物中の上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量は特に限定されず、該組成物の種類、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、組成物に対して、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の固形分換算の含量を0.00001〜50重量%とすることが好ましく、0.00005〜20重量%がより好ましく、0.0001〜10重量%がさらに好ましい。
【0066】
本発明の組成物が化粧料又は医薬品である場合、その剤型は特に限定されず、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をとることができる。
化粧料は特に限定されず、例えば、クレンジング剤、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、美容液、育毛剤、オイル、ゲル、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、エナメル、ファンデーション、リップスティック、おしろい、パック、香水、パウダー、オーデコロン、ボディソープ、石鹸、入浴剤、日焼け止めクリーム等とすることができる。
【0067】
上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含む化粧料又は化粧料原料は、本発明における好ましい態様の1つである。化粧料及び化粧料原料は、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物以外の成分を含んでいてもよい。化粧料及び化粧料原料には、化粧料に通常配合される種々の成分を配合することができる。例えば、油分、香料、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、顔料、色素等を適宜配合することができる。これらの配合比率は適宜選択すればよい。本発明の化粧料原料は、本発明の化粧料を製造するために好適に使用される。
化粧料の用法及び用量は、化粧料の種類等に応じて、適宜決定することができる。
本発明の化粧料又は化粧料原料は、L−ヒドロキシプロリンを含有することから、例えば、コラーゲン産生促進、表皮細胞の増殖促進、皮膚の保湿、皮膚の老化防止、皮膚のたるみの予防又は改善、皮膚のハリの改善、しわの予防又は改善及びアトピー性皮膚炎の改善から選ばれる用途に好適に用いられ、皮膚のハリの改善、及び、しわの予防又は改善から選ばれる用途により好適に用いられる。
【0068】
化粧料中の上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量は、化粧料に対して、固形分換算で0.00001〜10重量%が好ましく、0.0001〜10重量%とすることが好ましく、0.0001〜5重量%がより好ましく、0.001〜5重量%がより好ましく、0.01〜3重量%がさらに好ましく、0.05〜2重量%が特に好ましい。また、別の好ましい態様において、化粧料中の上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量は、化粧料に対して、固形分換算で0.00005〜1重量%がより好ましく、0.0001〜0.5重量%がさらに好ましい。
化粧料原料中の上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量は、化粧料原料に対して、例えば、固形分換算で0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.05〜5重量%がさらに好ましく、0.1〜2重量%が特に好ましい。化粧料原料中のL−ヒドロキシプロリン含量は、例えば、5〜300ppmが好ましく、10〜200ppmがより好ましく、50〜100ppmがさらに好ましい。一態様において、化粧料中のL−ヒドロキシプロリン含量は、例えば、0.01〜20ppmとすることができ、0.03〜15ppmが好ましく、0.05〜10ppmがより好ましい。L−ヒドロキシプロリン含量が上記の範囲となるように、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を配合することが好ましい。
【0069】
本発明の組成物が飲食品(飲食品組成物)である場合、飲食品は特に限定されない。飲食品の形態は、液状、半液体状又は固体状、ペースト状のいずれであってもよく、例えば、一般的な飲食品、健康食品、機能性食品等のいずれでもよい。
一般的な飲食品は特に限定されず、酒類も含まれる。健康食品とは、健康的な又は健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品、自然食品等を含む。栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保健用食品、栄養機能食品を含む。
【0070】
栄養補助食品として、美容ドリンク、サプリメント等が挙げられる。本発明の飲食品は、カプセル等の医薬製剤の形態、ドリンク剤等であってもよい。
飲食品には、飲食品に配合することが認められている種々の成分を配合することができる。このような成分としては例えば、結合剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、崩壊剤、懸濁化剤、界面活性剤、防腐剤、甘味料、酸味料等が挙げられる。
上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含む飲食品は、本発明における好ましい態様の1つである。
【0071】
飲食品中の上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量は、例えば、飲食品に対して、固形分換算で0.0001〜10重量%とすることが好ましく、0.001〜5重量%がより好ましく、0.01〜1重量%がさらに好ましい。また、飲食品中のL−ヒドロキシプロリン含量は、0.0001〜0.01重量%が好ましく、L−ヒドロキシプロリン含量が上記の範囲となるように、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を配合することが好ましい。上記化粧料、化粧料原料、飲食品等の組成物中のL−ヒドロキシプロリン含量は、遊離のL−ヒドロキシプロリン含量である。L−ヒドロキシプロリンは、好ましくは、上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に由来する。
【0072】
本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含有する化粧料、飲食品、これらの原料等の組成物は、これらに通常使用されている原料、添加剤等をその種類に応じて選択して配合し、これに本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を配合し、公知の手法によって製造することができる。
【0073】
本発明は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程(Hyp蓄積工程)を含む、L−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料の製造方法も包含する。上記窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源である。本発明のL−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料の製造方法の好ましい態様は、上述したL−ヒドロキシプロリンの製造方法の好ましい態様と同じである。上記L−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料の製造方法は、本発明の化粧料原料の製造方法として好ましい。
Hyp蓄積工程を行うことにより、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体又は菌体培養物が得られる。また、酵母の菌体又は菌体培養物に上述した菌体破砕処理を行うことにより、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体又は菌体培養物の抽出物が得られる。このようにして得られる酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物、及び、その好ましい態様は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物、及び、その好ましい態様と同じである。得られるL−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、所望により化粧料に通常使用される添加剤等を配合して、L−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料として使用することができる。また、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物から精製したL−ヒドロキシプロリンに、所望により化粧料に通常使用される添加剤等を配合して、L−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料を製造することもできる。本発明により得られるL−ヒドロキシプロリン含有化粧料原料は、コラーゲン産生促進、表皮細胞の増殖促進、皮膚の保湿、皮膚の老化防止、皮膚のたるみの予防又は改善、皮膚のハリの改善、しわの予防又は改善及びアトピー性皮膚炎の改善から選ばれる用途の化粧料に好適に使用される。
【0074】
本発明は、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含む、L−ヒドロキシプロリン補強用組成物も包含する。
上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンを含有するが、L−プロリン(Pro)及びL−ヒドロキシプロリン(Hyp)の合計含量(μg/mL)に対するL−ヒドロキシプロリンの含量(μg/mL)の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))が、35〜100であることが好ましい。上記酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物は、L−ヒドロキシプロリンの含量が10μg/mL以上が好ましい。このような酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含むL−ヒドロキシプロリン補強用組成物は、化粧品、飲食品等のL−ヒドロキシプロリンを補強、補充又は強化するための添加剤として特に好適に使用することができる。酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の好ましい態様は、上述した本発明の酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物及びその好ましい態様と同じである。L−ヒドロキシプロリン補強用組成物は、L−ヒドロキシプロリン補強用の添加剤組成物として、飲食品、化粧料等に好適に使用することができる。L−ヒドロキシプロリン補強用組成物は、L−ヒドロキシプロリン補充用組成物又はL−ヒドロキシプロリン強化用組成物と言い換えることもできる。
【0075】
本発明のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物は、L−ヒドロキシプロリンを含有する酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含んでいればよく、該菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量が100重量%であってもよいが、所望により、他の成分を含んでいてもよい。例えばL−ヒドロキシプロリン補強用組成物を食品添加剤として使用する場合には、食品に使用される公知の添加剤1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0076】
本発明のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物は、例えば、化粧料添加剤としても好適に使用される。L−ヒドロキシプロリン補強用組成物を化粧料添加剤として使用する場合は、該組成物中、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物を含んでいればよく、該菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物の含量が100重量%であってもよいが、所望により、化粧料に使用される公知の添加剤1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0077】
本発明のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物の製造方法は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程を含むことが好ましい。このような工程を含むL−ヒドロキシプロリン補強用組成物の製造方法も本発明に包含される。上記窒素源は、L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含む窒素源である。本発明のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物の製造方法及びその好ましい態様は、上述したL−ヒドロキシプロリンの製造方法及びその好ましい態様と同じである。本発明のL−ヒドロキシプロリン補強用組成物の製造方法は、所望により、酵母の菌体もしくは菌体培養物又はこれらの抽出物に公知の食品添加剤、化粧料添加剤等を添加する工程を含んでいてもよい。
【0078】
本発明の別の態様のL−ヒドロキシプロリンの製造方法は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させる工程を含む。
本発明の別の態様の製造方法においては、上記窒素源が、L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質又はL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含むことが好ましい。
本発明の別の態様の製造方法においては、上記L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質がコラーゲン性タンパク質であり、上記L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドがコラーゲンペプチドであることが好ましい。本発明の別の態様の製造方法においては、上記コラーゲン性タンパク質及びコラーゲンペプチドの平均分子量が1000〜100000であることが好ましい。
本発明の別の態様の製造方法においては、上記液体培地中の窒素源の濃度が0.25〜5重量%であり、炭素源(C)と窒素源(N)との重量比(C/N)が0.5〜20であることが好ましい。また、上記好気培養を10〜100時間行うことが好ましい。
【0079】
本発明の別の態様の使用は、酵母ヤロウィア・リポリティカ(
Yarrowia lipolytica)の、L−ヒドロキシプロリンを製造するための使用であって、上記酵母を、炭素源及び窒素源を含む液体培地中で好気培養することにより、上記酵母の菌体又は菌体培養物中にL−ヒドロキシプロリンを蓄積させることを含み、上記窒素源がL−ヒドロキシプロリン含有タンパク質又はL−ヒドロキシプロリン含有ペプチドを含むことが好ましい。
本発明の別の態様の使用においては、上記L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質がコラーゲン性タンパク質であり、上記L−ヒドロキシプロリン含有ペプチドがコラーゲンペプチドであることが好ましい。本発明の別の態様の使用においては、上記コラーゲン性タンパク質及びコラーゲンペプチドの平均分子量が1000〜100000であることが好ましい。
本発明の別の態様の使用においては、上記液体培地中の窒素源の濃度が0.25〜5重量%であり、炭素源(C)と窒素源(N)との重量比(C/N)が0.5〜20であることが好ましい。また、上記好気培養を10〜100時間行うことが好ましい。
【0080】
上記L−ヒドロキシプロリン含有タンパク質としては、例えば、上述したコラーゲン性タンパク質が挙げられる。コラーゲン性タンパク質等のL−ヒドロキシプロリン含有タンパク質の平均分子量は、好ましくは10000を超えて100000以下である。タンパク質の平均分子量は、重量平均分子量を指す。コラーゲン性タンパク質等のL−ヒドロキシプロリン含有タンパク質の平均分子量は、ゲル濾過などにより算出される。
【実施例】
【0081】
以下、本発明をより具体的に説明する試験例等を示す。なお、本発明はこれらの試験例等のみに限定されるものではない。試験例中、特に断らない場合には、「%」は「重量%」を意味する。
【0082】
試験例中、検量線の作成に使用するL−ヒドロキシプロリン(Hyp)標準溶液等の調製には、ナカライテスク(株)製のL−4−ヒドロキシプロリンを使用した。L−プロリン(Pro)標準溶液等の調製等には、ナカライテスク(株)製のL−プロリンを使用した。試験例で測定したL−ヒドロキシプロリン及びL−プロリンは、いずれも遊離のL−ヒドロキシプロリン及びL−プロリンである。
【0083】
試験例中で使用した培地は、全て液体培地である。試験例中で使用したYPD培地は、特に断らない場合は、Y:P:Dが1:2:2(重量比)(Y:酵母抽出物1.0%、P:ペプトン2.0%、D:グルコース2.0%)とした。
培地調製に使用した酵母抽出物は、Bacto社製の製品名Yeast Extract(#212750)である。ペプトンは、Bacto社製の製品名Pepton(#211677)、ウシの細胞をブタの膵臓由来の酵素で分解したものを使用した。
試験例において、培養開始前の培地のpHは、約6.5〜8.5であった。
【0084】
<試験例1>
L−ヒドロキシプロリン(以下、Hyp)を蓄積する酵母のスクリーニング
表1に示す60株の酵母を使用し、Hypを培養物中に蓄積する酵母のスクリーニングを行った。表1に各菌株の属種名を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
以下の条件で、YPD培地で酵母を培養した後、HPLCでHypを定量した。
【0087】
(培養)
0.5%L−プロリン(以下、Pro)を添加したYPD培地1mLに、各菌株を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)した後、室温で4〜7日間静置培養して酵母の菌体培養液(菌体培養物)を得た。
【0088】
(サンプル調製)
酵母の菌体培養液に以下の処理を行って、培養物サンプルを調製し、Hyp含量を測定した。
上記の培養後、集菌し、菌体を1mLの生理食塩水で洗浄した。菌体を0.2mLの50mM カリウムリン酸緩衝液(以下、KPB)(pH6.0)に懸濁し、10分間煮沸して、自己消化により菌体内容物を溶出させた(煮沸法)。得られた菌体抽出物から遠心分離(14000rpm、5min、4℃)により菌体残渣を除いた。これにより、Hyp蓄積量を測定するための培養物サンプルを調製した。
【0089】
培養物サンプルをウォーターズ社の(AccQ-Fluor Reagent Kit)を使用して、AccQTag法により誘導体化し、以下の条件でHPLCでHypを定量した。
【0090】
HPLC分析に使用した装置及び条件を以下に示す。
(装置)
高速液体クロマトグラフ: Prominence((株)島津製作所)
カラム: XBridge C18 5μm(2.1 x 150 mm、ウォーターズ社製)
(測定条件)
溶離液A:酢酸アンモニウム(10mM、pH5)
溶離液B:メタノール(0〜0.5min.(0%→1%),0.5〜18min.(1%→5%),18〜19min.(5%→9%),19〜29.5min.(9%→17%),29.5〜40min.(17%→60%),40〜43min.(60%))
流速:0.3mL/min
温度:40℃
検出:蛍光検出器(励起波長:250nm、検出波長:395nm)
溶離液Bの濃度(%)は、v/v%である。
結果を
図1に示す。
【0091】
図1は、酵母のHyp蓄積量を示すグラフである。
図1の縦軸(Hyp(μg/mL))は、培養物サンプル1mLあたりのHyp(μg)を示す。
上記の試験から、Hypを蓄積する酵母が見出された。特に
Yarrowia lipolyticaが、Hyp蓄積量が多かった。
【0092】
<試験例2>
酵母
Yarrowia lipolyticaについて、培地によってHyp蓄積量が変化するかを調べた。
Yarrowia lipolytica NBRC0717を使用し、以下の液体培地を使用した。
Yarrowia lipolytica NBRC0717は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)から入手した。
【0093】
YPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース)
YTD(1%酵母抽出物、2%トリプトン、2%グルコース)
YM(0.3%酵母抽出物、0.3%麦芽エキス、0.5%ペプトン、2%グルコース)
PD(0.4%ポテト抽出物、2%グルコース)
SD(合成培地、1%グルコース)
【0094】
(前培養及び本培養)
(1)条件1
0.5%Proを添加したYPD培地1mLに、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
0.5%Proを添加した各培地(上記YPD、YTD、YM、PD又はSD)2mLに、前培養液0.2mLを接種して、28℃で36時間振盪培養(300rpm)して
Yarrowia lipolyticaの菌体培養液を得た。
(2)条件2
0.5%Proを添加したYPD培地の代わりに、0.5%Proを添加したSD培地を使用した以外は、条件1と同じ条件で前培養を行った。0.5%Proを添加した各培地(上記YPD、YTD、PD又はSD)2mLに、前培養液0.2mLを接種して、28℃で45時間振盪培養(300rpm)して
Yarrowia lipolyticaの菌体培養液を得た。
【0095】
(サンプル調製)
条件1又は2の培養後、酵母の菌体培養液に以下の処理を行って培養物サンプルを調製し、Hyp含量を測定した。
上記の培養後、集菌し、菌体を1mLの生理食塩水で洗浄した。菌体を0.2mLの50mM KPB(pH6.0)に懸濁し、10分間煮沸して、自己消化により菌体内容物を溶出させた(煮沸法)。得られた菌体抽出物から遠心分離(14000rpm、5min、4℃)により菌体残渣を除いた。これにより、Hyp蓄積量を測定するための培養物サンプルを調製した。
【0096】
(Hyp定量)
培養物サンプルをo−フタルアルデヒド(OPA)及び4−クロロ−7−ニトロベンゾフラザン(NBD−Cl)により誘導体化し、HPLCでHypを定量した。
(誘導体化方法)
4-Chloro-7-nitrobenzofurazan(NBD−Cl)による誘導体化
0.4M ホウ酸カリウム緩衝液(pH9.5)を50μL分注し、培養物サンプルを2μL加えた。300mM OPA(Wako 167−09263)(メタノールに溶解)を2μL加えて混合し、37℃で20分間反応後、2mM NBD−Cl(Sigma25455)(メタノールに溶解)を50μL加えて混合し、37℃で20分間反応した液に、1N HClを25μL、50%メタノールを75μL加え、14000rpmで5分間遠心した上清をHPLC測定用のサンプルとし、HPLC用のバイアルへ移した。
【0097】
HPLC分析に使用した装置及び条件を以下に示す。
カラム:XBridge C18 column(5μm;2.1mm×150mm;Waters)
A液:10mM 酢酸アンモニウム(pH5.0)
B液:メタノール
グラジエント:
0〜0.5分:B.Conc 0v/v%→1v/v%
0.5〜18分:B.Conc 1v/v%→5v/v%
18〜19分:B.Conc 5v/v%→9v/v%
19〜29.5分:B.Conc 9v/v%→17v/v%
29.5〜40分:B.Conc 17v/v%→60v/v%
40〜43分:B.Conc 60v/v%
流速:0.3mL/分
カラム温度:40℃
検出器:蛍光検出器、励起波長503nm/蛍光波長541nm
注入量:10μL
【0098】
検量線は、Hypの、5μmol/L、10μmol/L、20μmol/L、50μmol/L、100μmol/L、250μmol/Lの50mM KPB(pH6.0)溶液を調製して作成した。
【0099】
結果を
図2に示す。
図2は、各培地で培養した
Yarrowia lipolyticaのHyp蓄積量を示すグラフである((a):条件1、(b):条件2)。
図2の縦軸のHyp(μg/mL)は、培養物サンプル1mLあたりのHyp(μg)である。条件1の培養では、YPD及びYM培地で培養した菌体にヒドロキシプロリンが多く蓄積した(ペプトンを含む培地)。条件2の培養では、YPD培地で培養した菌体にHypが蓄積した。
【0100】
<試験例3>
培養日数による蓄積量の変動を調べた。
Yarrowia lipolyticaのNBRC1551株、NBRC0717株、NBRC0746株及びNBRC1195株をそれぞれYPD培地で1日、2日又は3日間培養し、酵母の菌体(細胞)から溶出させたHypをHPLCを用いて定量した。NBRC番号で特定されるこれらの酵母は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)から入手した。
【0101】
(前培養)
YPD培地1mLに、各菌株を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
【0102】
(本培養)
YPD培地2mLに、前培養液0.2mLを接種して、28℃で1〜3日間振盪培養(300rpm)して菌体培養液を得た。
【0103】
(サンプル調製及びアミノ酸定量)
試験例2と同じ方法で培養物サンプルを調製し、OPA及びNBD−Clにより誘導体化した。
試験例2と同じ条件でHPLCによる分析を行い、Hyp及びProを定量した。Proの検量線は、Proの5μmol/L、10μmol/L、20μmol/L、50μmol/L、100μmol/L、250μmol/Lの50mM KPB(pH6.0)溶液を調製して作成した。
【0104】
各培養物サンプルのPro及びHyp量を表2に示す。また、Pro及びHypの測定値から、Pro及びHypの合計含量(μg/mL)に対するHypの含量(μg/mL)の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))を計算した。その結果も表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
Yarrowia lipolyticaは、培養によってL−ヒドロキシプロリンを蓄積した。得られた菌体培養物は、L−ヒドロキシプロリンを含有した。また、(Hyp/(Pro+Hyp))割合が35以上であった。
【0107】
<試験例4>
Yarrowia lipolyticaのゼラチン資化性を検討した。
Yarrowia lipolyticaのNBRC1551株、NBRC0717株及びNBRC0746株を使用して、PD培地又は0.125%ゼラチンを添加したPD培地で5日間培養し、菌体から菌体内容物を溶出させてHypをHPLCにより定量した。PD培地は、試験例2で使用したものと同じ培地を使用した。
【0108】
(前培養)
PD培地1mLに、各菌株を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
(本培養)
PD培地又は0.125%ゼラチン(和光純薬工業(株)製、製品名ゼラチン)を添加したPD培地2mLに、前培養液0.2mLを接種して、28℃で5日間振盪培養(300rpm)して菌体培養液を得た。
(サンプル調製及びHyp定量)
培養物サンプルの調製及びHyp定量は、試験例2と同じ方法で行った。結果を
図3に示す。
【0109】
図3は、PD培地又は0.125%ゼラチンを添加したPD培地で5日間培養した
Yarrowia lipolyticaのHyp蓄積量を示すグラフである(白:0.125%ゼラチンを含むPD培地(PD+gel)、黒:PD培地)。縦軸のHyp(μg/mL)は、培養物サンプル1mLあたりのHyp(μg)である。
図3から、高分子ゼラチンのまま培地に添加すると、Hypの蓄積は試験例3と比較して少なかった。
【0110】
<試験例5>
Yarrowia l
ipolytica NBRC0717を用いて、YPD培地組成によりHyp蓄積量が変化するか検討した。表3に#1〜#12の各培地のYPD組成を示す。表3中、Yは、酵母抽出物、Pはペプトン、Dはグルコースである。酵母抽出物(Y)を一定にし、ペプトン(P)及びグルコース(D)を変化させた(表中の数値は終濃度(重量%))。
【0111】
【表3】
【0112】
(前培養)
各YPD培地1mLに、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
(本培養)
各YPD培地2mLに、前培養液0.2mLを接種して、28℃で4日間振盪培養(300rpm)して菌体培養液を得た。
(サンプル調製及びHyp定量)
培養物サンプルの調製及びHyp定量は、試験例2と同じ方法で行った。
【0113】
上記のYPD培地で培養した酵母
Yarrowia lipolyticaは、Hypを蓄積した。#1及び#7〜11の培地で培養した場合にHyp蓄積量が多かった。#1及び#7〜11の培地で培養した場合の結果を
図4に示す。
【0114】
図4は、組成が異なるYPD培地で培養した
Yarrowia lipolyticaのHyp蓄積量を示すグラフである((a):Hyp蓄積量(μg/mL)、(b):細胞あたりのHyp量(μg/mL/OD600))。
図4の(a)の縦軸は、培養物サンプル1mLあたりのHyp(μg)である。
図4の(b)の縦軸の(Hyp/OD)は、細胞あたりのHyp量であり、培養物サンプル1mL中のHyp量(μg)をOD600の測定値で除した値(μg/mL/OD600)である。
OD600は、核酸蛋白質分光光度計(装置名Bio spec mini、(株)島津製作所)を用いて、培養物サンプルの調製に使用した菌体培養液60μLを超純水1150μLで希釈し、吸光度(600nm)を測定した
【0115】
<試験例6>
試験例5で使用したYPD培地#1及び#10において、Pとして使用したペプトンをコラーゲンペプチド(新田ゼラチン社製の製品名スーパーコラーゲンペプチド SCP−2000、ブタ由来、平均分子量2000)に置換して、Hypの蓄積量を調べた。酵母は、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を使用した。YPD培地において、ペプトンの一部又は全部をコラーゲンペプチドに置換した培地は、YPD改変培地ともいえる。
YPD培地のPの組成
ノーマル:ペプトン100%
CP50:ペプトン50% コラーゲンペプチド50%
CP100:コラーゲンペプチド100%
【0116】
培地組成
(1)YPD#1−ノーマル(YPD#1)
(2)YPD#1−CP50(YPD#1において、ペプトンの代わりにCP50を使用)
(3)YPD#1−CP100(YPD#1において、ペプトンの代わりにCP100を使用)
(4)YPD#10−ノーマル(YPD#10)
(5)YPD#10−CP50(YPD#10において、ペプトンの代わりにCP50を使用)
(6)YPD#10−CP100(YPD#10において、ペプトンの代わりにCP100を使用)
【0117】
(前培養)
YPD培地1mLに、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
(本培養)
上記(1)〜(6)の各培地2mLに、前培養液0.1mLを接種して、28℃で4日間振盪培養(300rpm)して菌体培養液を得た。
(サンプル調製及びHyp定量)
培養物サンプルの調製及びHyp定量は、試験例2と同じ方法で行った。
結果を
図5示す。
【0118】
図5は、ペプトン又はコラーゲンペプチドを含む培地で培養した
Yarrowia lipolyticaのHyp蓄積量、細胞あたりのHyp量及びOD600を示すグラフである。((a):Hyp蓄積量(μg/mL)、(b):細胞あたりのHyp量(μg/mL/OD600)、(c):OD600)。
図5の(a)〜(c)中、Nは、Pがノーマルの培地、50は、PがCP50の培地、100はPがCP100の培地であることを意味する。ペプトンを完全にコラーゲンペプチドに置換した培地でも
Yarrowia lipolyticaは増殖でき、Hypを蓄積した。
【0119】
<試験例7>
Yarrowia lipolytica NBRC0717を用いて、培養時のエアレーションの影響を検討した。培地は、試験例5のYPD培地#1及び#10を使用した。
【0120】
(前培養)
YPD培地1mLに、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を1白金耳接種し、28℃で24時間振盪培養(300rpm)して前培養液を得た。
(本培養)
各YPD培地(#1又は#10)2mLに、前培養液0.1mLを接種して、28℃で3日間振盪培養(300rpm)又は静置培養して菌体培養液を得た。
(サンプル調製及びHyp定量)
培養物サンプルの調製及びHyp定量は、試験例2と同じ方法で行った。また、培養上清についても、培養物サンプルと同じ方法で誘導体化し、HPLCでHypを定量した。
結果を
図6に示す。
【0121】
図6は、振盪培養又は静置培養した
Yarrowia lipolyticaのHyp蓄積量を示す図である((a):培養物サンプル(細胞内)の培地あたり換算Hyp量、(b):培養上清中のHyp量)。
Yarrowia lipolyticaは、好気培養するとHyp蓄積量が多かった。
【0122】
<試験例8>
試験例7で得られた培養上清中のエタノール濃度及びグルコース濃度をHPLC(発酵カラム(バイオ・ラッド社製、製品名Aminex発酵モニター用カラム)を使用)で定量した。
結果を
図7に示す。
【0123】
図7は、振盪培養又は静置培養した
Yarrowia lipolyticaの培養上清のエタノール濃度及びグルコース濃度を示すグラフである((a):エタノール濃度(v/v%)、(b):グルコース濃度(重量%))。
【0124】
<試験例9>
Yarrowia lipolytica NBRC0717について、YPD培地の組成(Y:P:Dの比率及びPの種類)及び培養時間を変化させて本培養を行い、菌体培養物中のHyp含量及びPro含量を測定した。
【0125】
(前培養)
YPD培地3mLに、
Yarrowia lipolytica NBRC0717を1白金耳接種し、30℃で1日静置培養して前培養液を得た。
【0126】
(本培養)
上記で得られた前培養液100μLを、下記のYPD培地5mLに接種して30℃で振盪培養(60rpm)した。培養時間は、1日又は2日として菌体培養液(菌体培養物)を得た。
本培養では、YPD培地のPとして、ペプトン又はコラーゲンペプチド(CP)を使用した。コラーゲンペプチドには、コラーゲンペプチド イクオス HDL−50SP(製品名、新田ゼラチン(株)製、平均分子量5000)(以下、コラーゲンペプチド(CP1)と記載する)又はコラーゲンペプチドType S(製品名、新田ゼラチン(株)製、平均分子量1200)(以下、コラーゲンペプチド(CP2)と記載する)を使用した。
また、本培養におけるYPD培地のY:P:Dの比率は、(1)Y:P:D=1:2:2(重量比)(Y:酵母抽出物1.0%、P:ペプトン又はコラーゲンペプチド2.0%、D:グルコース2.0%)、又は、(2)Y:P:D=1:4:5(重量比)(Y:酵母抽出物1.0%、P:ペプトン又はコラーゲンペプチド4.0%、D:グルコース5.0%)とした。表4に、本培養で使用した培養条件1〜12を示す。
【0127】
【表4】
【0128】
本培養で得られた
Yarrowia lipolyticaの菌体培養液に、以下の自己消化工程及び殺菌工程を行って培養物サンプルを調製し、Hyp含量を測定した。
(自己消化工程)
Yarrowia lipolyticaの菌体培養液を50℃で2時間インキュベートして、自己消化により菌体内容物を培養液中に溶出した。
(殺菌工程)
上記で自己消化した培養液を80℃で1時間インキュベートした。
得られた抽出物から遠心分離(3000rpm、5min、1℃)により菌体残渣を除いた。これにより、Hyp蓄積量を測定するための培養物サンプルを調製した。
【0129】
(サンプル調製)
得られた培養物サンプルを0.1N塩酸溶液で希釈して、HPLCのサンプルを調製した。培養時間1日の菌体培養液から調製した培養物サンプルは、10倍希釈、培養時間2日の菌体培養液から調製した培養物サンプルは、条件12以外は40倍希釈し、条件12は20倍希釈した。
【0130】
(HPLC分析)
HPLCでは、オートサンプラーで1級アミノ酸(1級アミノ基)、2級アミノ酸(2級アミノ基)の蛍光標識化を行い、逆相のHPLCで分析を行うシステムを用いた。1級アミノ基の蛍光標識には、o−フタルアルデヒド(OPA)を、2級アミノ基の蛍光標識には、クロロ蟻酸−9−フルオレニルメチル(FMOC)を、それぞれ使用した。
【0131】
上記で調製したHPLCのサンプルを、サンプルバイアルに0.45μmのフィルターでろ過してオートサンプラーにセットした。空バイアルにMPA(メルカプトプロピオン酸)試薬30μL、OPA試薬15μL、上記サンプル5μLを入れて1分静置後、FMOC試薬を5μL加え2分間反応した溶液1μLをHPLCに注入した。OPAと1級アミノ酸が反応し、残った2級アミノ基を持つHyp及びProがFMOCと反応する。それぞれの蛍光波長を2チャンネルで検出することにより、すべてのアミノ酸を同時に検出することが可能である。
【0132】
HPLC分析に使用した装置及び条件を以下に示す。
(装置)
(株)島津製作所製の高速液体クロマトグラフ Nexera X2 システム(製品名)
システムコントローラ:CBM−20A、送液ユニット:LC−30AD(2台)、脱気ユニット:DGU−20A5R、ミキサ:MR180μL II、オートサンプラー:SIL−30AC、カラムオーブン:CTO−20AC、蛍光検出器:RF−20AXS、ワークステーション:LabSolutions LC/GC
【0133】
(測定条件)
カラム:Inertsil ODS−4 100mm×3.0mmφ S−2μm (ジーエルサイエンス(株))
ガードカラム:UHPLC Fitting(製品名、ジーエルサイエンス(株))(Max. Pressure:130MPa)
移動相
A液:15mmol/L KH
2PO
4及び5mmol/L K
2HPO
4(pH6.5)
B液:15/45/40(v/v/v)=水/アセトニトリル/メタノール
R0(リンス液):水/メタノール=20/80(v/v)
R3(リンス液):水/アセトニトリル=80/20(v/v)
初期B液濃度:10v/v%
流量:0.8mL/min
カラムオーブン温度:35℃
注入量:1μL
検出:
Ch1:励起波長350nm、蛍光波長450nm
Ch2:励起波長266nm、蛍光波長305nm
セル温度:25℃、Gain: ×4、Sensitivity: Midium
【0134】
グラジエントプログラム
0〜1.5分:B.Conc 10v/v%
1.5〜6分:B.Conc 10v/v%→30v/v%のグラジエント
6〜11分:B.Conc 30v/v%→40v/v%のグラジエント
11〜15分:B.Conc 100v/v%
20〜21.5分:B.Conc 100v/v%→10v/v%
25分:コントローラ停止
検量線:Hyp及びProそれぞれについて、6.25μmol/L、25μmol/L、50μmol/L、100μmol/Lの0.1N HCl溶液を調製した。これらの各溶液を、上記の方法でMPA、OPA及びFMOCの各試薬と反応させ、HPLCで分析して検量線を引いた。
アミノ酸混合標準液H型溶液及びL−ヒドロキシプロリンを含む0.1N塩酸溶液についても、同様に各試薬と反応させてHPLCで分析した。使用したアミノ酸混合標準液H型は、和光純薬工業(株)製である。
【0135】
図8は、アミノ酸混合標準液H型及びL−ヒドロキシプロリンを含む0.1N塩酸溶液(各アミノ酸濃度20μmol/L)を分析したHPLCチャートである((a):Ch1の励起波長350nm、蛍光波長450nmで検出、(b):Ch2の励起波長266nm、蛍光波長305nmで検出)。
【0136】
培養物サンプルのHyp及びProの定量結果を表5に示す。表中、CP1は、上記のコラーゲンペプチド(CP1)(製品名コラーゲンペプチド イクオス HDL−50SP)であり、CP2は、コラーゲンペプチド(CP2)(製品名コラーゲンペプチド Type S)である。Hyp及びProの定量結果から、各培養物サンプル中のPro及びHypの合計含量に対するHypの含量の割合(100×Hyp/(Pro+Hyp))を計算した。その結果も表5に示す。表の培養条件は、本培養の条件である。なお、培養開始前の各培地には、遊離のHypはほとんど含まれなかった。
【0137】
【表5】
【0138】
<試験例10>
(前培養)
YPD培地3mLに、
Yarrowia lipolyticaを1白金耳接種し、28℃で1日振盪培養(100rpm)して前培養液を得た。
【0139】
(本培養)
培地にYPD改変培地(酵母抽出物1.0%、コラーゲンペプチド(CP1)2.0%、グルコース1.0%)を使用し、28℃で2日間、振盪培養(200〜500rpm)した以外は、試験例9と同じ方法で本培養を行った。コラーゲンペプチド(CP1)は、試験例9と同じものである。
本培養で得られた
Yarrowia lipolyticaの菌体培養液に、試験例9と同じ方法で自己消化工程及び殺菌工程等を行って培養物サンプルを調製した。試験例9と同じ方法で、Hyp含量及びPro含量を測定した。試験はn=4で行った。結果を表6に示す
【0140】
【表6】
【0141】
<試験例11>
試験例1〜10で使用した
Yarrowia lipolyticaを用いて、試験例9〜10と同じ方法で培養し、菌体培養液を得た。これを50℃で2時間インキューベートすることにより、自己消化により菌体内容物を培養液中に溶出した後、80℃で1時間インキュベートした。その後、1℃で遠心分離(3000rpm、5min)し、菌体残渣を除いたL−ヒドロキシプロリン含有菌体培養物の抽出物(Hyp含有菌体培養物の抽出物)を得た。Hyp含有菌体培養物の抽出物は、適宜希釈して使用することもできる。
【0142】
以下、試験例11で得た各Hyp含有菌体培養物の抽出物を配合した皮膚外用剤組成物の製造例の一例を示す。
<製造例1>石鹸
原料の配合量を表7に示す。
石鹸素地を混合攪拌し、その後各Hyp含有菌体培養物の抽出物を投入し均一に混合後、成型した。
【0143】
【表7】
【0144】
<製造例2>シャンプー
原料の配合量を表8に示す。
精製水に1,3−ブチレングリコールに溶解した防腐剤を投入した。均一に攪拌後、ラウレス硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドを投入し、その後色素、香料及び残りの1,3−ブチレングリコールを投入し、各Hyp含有菌体培養物の抽出物を投入後、均一に混合攪拌した。
【0145】
【表8】
【0146】
<製造例3>コンディショナー
原料の配合量を表9に示す。
(1)塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム及び食塩を精製水に投入し、80℃まで加温し溶解した。
(2)セトステアリルアルコール、水素添加ポリイソブテン及びグリセリンモノステアレートを80℃まで加温し溶解した。
(3)(1)をホモミキサーで攪拌しながら(2)を添加し、添加後5分間予備攪拌を行った。
(4)予備攪拌終了後、50℃まで攪拌しながら冷却し、各Hyp含有菌体培養物の抽出物を添加しさらに35℃まで攪拌冷却し調製した。
【0147】
【表9】
【0148】
<製造例4>ヘアトニック
原料の配合量を表10に示す。
精製水にサリチル酸、グリセリン、エタノールに溶解したビタミンE、L−メントールを投入し、さらに精製水の一部に溶解したグリチルリチン酸ジカリウムを投入し、その後各Hyp含有菌体培養物の抽出物を投入し、均一に混合し調製した。
【0149】
【表10】
【0150】
<製造例5>ミスト
原料の配合量を表11に示す。
精製水にクエン酸及びクエン酸ナトリウムを投入し溶解した。その後エタノールに溶解した防腐剤及びポリソルベート80を投入した。その後各Hyp含有菌体培養物の抽出物を投入し均一に攪拌し調製した。
【0151】
【表11】
【0152】
<製造例6>化粧水
原料の配合量を表12に示す。
精製水にクエン酸及びクエン酸ナトリウムを投入し溶解した。次にグリセリン、1,3−ブチレングリコール及びエチレンジアミン四酢酸三ナトリウムを順次投入し、さらにエタノールに溶解したポリオキシエチレン(18)オレイルアルコールエーテル、ビタミンE及びメチルパラベンを投入し均一になるまで攪拌した。その後各Hyp含有菌体培養物の抽出物を投入し均一に攪拌し調製した。
【0153】
【表12】
【0154】
<製造例7>乳液
原料の配合量を表13に示す。
(1)ステアリン酸、セチルアルコール、ミリスチン酸オクチルドデシル及び流動パラフィンを80℃まで加温し溶解した。
(2)トリエタノールアミン、ヒアルロン酸ナトリウム、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリオキシエチレン(10)モノオレイン酸エステル及びエチレンジアミンヒドロキシ三酢酸ナトリウムを精製水に投入し80℃まで加温した。
(3)(1)をホモミキサーで攪拌しながら(2)を投入し、投入後5分間予備攪拌した。
(4)予備攪拌終了後、50℃まで冷却し、各Hyp含有菌体培養物の抽出物を加え、さらに35℃まで冷却し調製した。
【0155】
【表13】
【0156】
<製造例8>クリーム
原料の配合量を表14に示す。
(1)ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、セスキステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セトステアリルアルコール、スクワラン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリット、オリーブ油、ミリスチン酸オクチルドデシル及びメチルポリシロキサンを80℃まで加温し溶解した。
(2)精製水にグリセリン、1,3−ブチレングリコール、水酸化ナトリウム及びメチルパラベンを投入し、80℃まで加温し溶解した。
(3)(1)をホモミキサーで攪拌しながら(2)を投入し、投入後5分間予備攪拌した。
(4)予備攪拌終了後、50℃まで冷却し、各Hyp含有菌体培養物の抽出物を加え、さらに35℃まで冷却し調製した。
【0157】
【表14】