(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隔壁の最薄の厚みは、前記第1壁面と前記外面との間の最薄の厚み、及び、前記第2壁面と前記外面との間の最薄の厚みの少なくとも一方よりも小さい、請求項1又は2に記載のカテーテル。
前記第2壁面と前記外面との間において最薄の部分を含む一部に、前記シャフトの外郭を形成する材料よりも強度の高い補強層が設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貫通カテーテルと共に先端を屈曲させたワイヤーを使用した場合、先端に屈曲部を有するワイヤーは、カテーテルのルーメン内を移動するときに、屈曲部がルーメンの壁面に引っ掛かり易い。そのため、従来のカテーテルでは、ワイヤーの先端が、ルーメンの壁部を突き破ることがある。壁部を突き破ったワイヤーは、血管に接触し、血管を損傷するおそれがある。
【0007】
本発明の一側面は、ルーメンの破損を抑制できるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るカテーテルは、第1ワイヤー、及び、先端に屈曲部を有する第2ワイヤーのそれぞれを通過させるシャフトを備え、シャフトは、第1壁面により形成され、第1ワイヤーを通過させる第1ルーメンと、第2壁面により形成されると共に第1ルーメンと隔壁を挟んで並んで設けられ、第2ワイヤーを通過させる第2ルーメンと、を有し、第1ルーメン及び第2ルーメンは、シャフトの長手方向に沿って配置され、シャフトの長手方向に直交する断面において、シャフトの外面と第2壁面との間隔が最薄となる第2壁面上の第1点は、第2壁面上の所定の2点を結びかつ最長となる第1直線と重ならない位置にある。
【0009】
本発明の一側面に係るカテーテルでは、第2ルーメンの最薄部は、第1直線の延長線と重ならない位置に配置される。これにより、第2ワイヤーの屈曲部が、第2ルーメン内において、第2壁面とシャフトの外面との距離の最薄部に接触することを避けることができ、第2ワイヤーの先端が第2ルーメンの壁面に突き刺さったり、壁部を貫通、破損して血管に接触したりすることを防ぐことができる。
【0010】
本発明の異なる実施形態においては、第1ルーメンは、断面において、第1直線の延長線と重ならない位置に配置されており、第1点と隔壁が最薄となる第2壁面上の第2点とを結ぶ第2直線は、断面において、第1直線よりも短いことが好ましい。この構成では、第1直線は、第2ルーメンのシャフト外面及び隔壁の最薄部に重なることがない。これにより、第2ワイヤーの屈曲部が、第2ルーメン内において、隔壁の最薄部に接触することを防止することができ、第2ワイヤーの先端が第2ルーメンの壁面に突き刺さったり、壁部を貫通、破損して血管に接触したり、第1ルーメン内に進入することを防ぐことができる。
【0011】
一実施形態においては、隔壁の最薄の厚みは、第1壁面と外面との間の最薄の厚み、及び、第2壁面と外面との間の最薄の厚みの少なくとも一方よりも小さくてもよい。この構成では、シャフトの外郭の厚みが確保されるため、ワイヤーがルーメンの壁面に接触した場合であっても、シャフトの外郭が破損することをより抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、第1壁面及び第2壁面を形成する材料は、シャフトの外郭を形成する材料よりも滑り性が高くてもよい。この構成では、第1ワイヤー及び第2ワイヤーを、第1ルーメン内及び第2ルーメン内においてスムーズに移動させることができる。
【0013】
一実施形態においては、シャフトの外郭を形成する材料は、第1壁面及び第2壁面を形成する材料よりも弾性率が低いことが好ましい。この構成では、シャフトの柔軟性を確保できる。シャフトが柔軟なカテーテルは、血管内に挿入しやすく、操作性が高い。
【0014】
一実施形態においては、第2壁面と外面との間において最薄の部分を含む一部に、シャフトの外郭を形成する材料よりも強度の高い補強層が設けられていてもよい。この構成では、第2ワイヤーが第2ルーメンの最薄の部分に接触する場合であっても、補強層により、第2ワイヤーが最薄の部分を貫通してシャフトの外に突き出ることを抑制できる。
【0015】
一実施形態においては、補強層は、第2ルーメンの周囲に設けられていてもよい。この構成では、補強層により、第2ワイヤーが第2ルーメンの壁面を貫通してシャフトの外に突き出ることをより一層抑制できる。
【0016】
一実施形態においては、第1ルーメンの遠位側の一端には、第1開口が設けられ、第1ルーメンの近位側の他端には、第2開口が設けられており、第2ルーメンの遠位側の一端には、第3開口が設けられ、第2ルーメンの近位側の他端には、第4開口が設けられており、第1開口は、第3開口よりも遠位側に配置されており、第2開口は、第4開口よりも遠位側に配置されていてもよい。この構成では、第1ルーメンの先端が、第2ルーメンの先端よりも遠位側に位置している。これにより、第1ワイヤーに沿わせてカテーテルを病変部へデリバリーすることが容易になる。更に第1ルーメンに配置した第1ワイヤーを使ってカテーテルを固定し、第2ルーメンに配置した第2ワイヤーで狭窄部を貫通させるという使用をする際に、カテーテルの固定を強固にすることができる。
【0017】
一実施形態においては、第1ルーメンを囲う位置に配置され、放射線が不透過である材料で形成された第1マーカー及び第2マーカーを有し、第1マーカーは、第1開口と第3開口との間に配置され、第2マーカーは、第3開口よりも近位側で且つ第2開口よりも遠位側に配置されていてもよい。この構成により、放射線透過画像に基づいてカテーテルを操作する場合、第1マーカーで第1開口の位置を、第2マーカーで第2開口の位置を正確に把握できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、ワイヤーによるルーメンの破損を抑制できるカテーテルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
本発明の一実施形態に係るカテーテルは、血管の狭窄部の治療の際に、ワイヤーを血管の狭窄部に通過させて血流を再開する治療に用いる貫通カテーテルである。以下の説明においては、
図1に示されるように、2つのルーメンが並行に配置されている側(図示左側の端部)を遠位、その反対側(図示右側の端部)を近位、と定義する。
【0022】
本発明の一実施形態に係るカテーテルは、第1ワイヤーと、先端に屈曲部を有する第2ワイヤーとを通過させるシャフトとを備える。シャフトは、第1ルーメンと、第2ルーメンとを備える。第1ワイヤーは、第1ルーメンを通過する。第1ルーメンは、第1壁面により形成される。第2ワイヤーは、第2ルーメンを通過する。第2ルーメンは、第2壁面により形成される。第1ルーメンは、カテーテルの遠位側にのみ配置され、第2ルーメンは、カテーテルの遠位側から近位側にわたって配置される。第1ルーメンと第2ルーメンとは、長手方向に並んで配置される。第1ルーメンと第2ルーメンとを隔てる部分が隔壁である。第1ルーメンと第2ルーメンとの長軸、つまり長手方向の軸は、平行であることが好ましい。壁面は、シャフトの内面である。ルーメンは、チューブ状のシャフトの内腔である。シャフトの外面は、シャフトの外側の面である。シャフトの外郭は、シャフトのルーメンを除く部分である。
【0023】
本発明の一実施形態に係るカテーテルに用いるシャフトは、途中で異なるシャフトをつなげたものであってもよく、遠位端から近位端までつなぎ目のない1本のシャフトで構成されていてもよい。本発明の一実施形態に係るカテーテルは、
図1に示すカテーテルのように、第1ルーメン20及び第2ルーメン22が形成された遠位側のシャフト(第2シャフト)5と、第2ルーメン22が形成された近位側のシャフト(第1シャフト)3とを、第2ルーメン22がつながるように連結してもよい。あるいは、本発明の一実施形態に係るカテーテルは、第1ルーメンを与えるシャフトと、第2ルーメンを与えるシャフトとを長手方向に沿って並行に並べ、接合した構成であってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態に係るカテーテルは、部分的に2重管構造であってもよい。特に、第1ルーメンの近位側が2重管構造であることが好ましい。
【0025】
ルーメン内を通過するワイヤーは、血管の狭窄部に進入したり、カテーテルを目的部位まで案内したりするために用いられる。第1ワイヤーは、血管の狭窄部に進入したり、カテーテルを目的部位まで案内したりするためのガイドワイヤーである。第1ワイヤーは、第1ルーメンに配置される。第2ワイヤーは、血管の狭窄部に進入するワイヤーである。第2ワイヤーは、第2ルーメンに配置される。ワイヤーの径及び長さは、挿入するカテーテルに応じて適宜選択することができる。ワイヤーを構成する材料は、金属が好ましく、例えば、タングステン、ニッケルチタン合金、ステンレススチールなどが挙げられる。特に、白金又は金、もしくはこれらを含む合金などの、X線(放射線)が不透過である材料で形成されていることが好ましい。
【0026】
図1に示されるように、第2ワイヤー9の先端9aは、屈曲形状である。屈曲形状は、屈曲点を設けることにより形成される。ワイヤーの屈曲部とは、ワイヤーの先端から屈曲点までの部分をいう。屈曲角度は、5度以上90度以下が好ましい。第2ワイヤーの最先端から屈曲点までの長さは、0.5mm以上50mm以下が好ましい。屈曲点の数は、1箇所、もしくは、2箇所が好ましく、病変部のサイズに応じて適宜選択できる。ワイヤーを遠位側から近位側に向かって見た場合に、屈曲部は、ワイヤーの長手方向の軸に非並行に配置されることとなる。
【0027】
本発明の一実施形態に係るカテーテルのワイヤーを通過させるルーメンの長手方向に直交する断面は、円形、楕円形、多角形、不定形など、又は、これらの形状を組み合わせた形状とすることができる。本発明の一実施形態に係るカテーテルは、シャフトの長手方向に直交する断面において、シャフトの外面と第2壁面との間隔が最も薄くなる第2壁面上の第1点は、以下に述べる第1直線と重ならない位置にある。第1直線とは、第2壁面上の所定の2点を結びかつ最長となる部分である。第1直線は、断面上に複数ある場合もある。
【0028】
一般に、先端が屈曲しているワイヤーの屈曲部は、シャフトの壁面に接触すると、屈曲部の先の先端がシャフトの壁面を突き破り易いという問題がある。ワイヤーの先端は、細くなっているため、シャフトの壁面を突き破り易い。特に、屈曲部がシャフトの壁面に接触すると、屈曲部からシャフトの先端に力が加わり、ワイヤーの先端がシャフトの壁面を突き破り易くなる。血管治療に用いられるカテーテルは、細い血管まで到達できるようになるべく細く形成される。したがって、シャフト及びルーメンも細いことが好ましい。ワイヤーの屈曲部は、直線状のワイヤーを曲げて形成されるため、長手方向に直交する断面において、断面積に占めるワイヤーの割合が、屈曲部では、直線状の場合よりも大きくなる。したがって、屈曲部が長くなると、ワイヤーの先端は壁面に接触し易くなる。さらに屈曲部が長くなると、ワイヤーがルーメン内を通過するときに、ワイヤーの先端及び/又は屈曲部が壁面を擦りながら、又は壁面を拡張しながら進むことになる。また、発明者らの観察によると、ワイヤーの屈曲部は、ルーメンの断面において最も距離が長い部分を選ぶように通過することが多い。また、シャフトの外郭部分が薄い部分は、ルーメンと外面との距離が短く、ワイヤーの先端及び/又は屈曲部分が接触した場合に、シャフトが破壊され易い部分である。
【0029】
本発明の一実施形態に係るカテーテルでは、屈曲部を有するカテーテルが通過する第2ルーメンの壁面(第2壁面)の外面との距離が最も薄い部分が、第2ルーメンの断面の最も距離が長い部分である第1直線と一致しない。つまり、前記最も薄い部分が第1直線又はその延長上に位置しない。本発明の一実施形態に係るカテーテルでは、第2ワイヤーの先端及び屈曲部は、ルーメンの断面において、最も距離が長い第1直線部分に配置される。このため、ワイヤーの先端及び/又は屈曲部が壁面に接触しにくい。さらに、断面において、第1直線が、第2ルーメンの外面との間隔が最も薄い部分と重ならないため、第2ワイヤーの先端及び/又は屈曲部が第2壁面と接触したとしても、壁面を突き破ってワイヤーがカテーテルから突出することを防ぐことができる。このような断面形状として、
図6(a)から
図6(e)に示す種々の断面が挙げられる。いずれの断面形状も、ルーメン断面の最長部分と、シャフトの外面とルーメンの壁面の距離が最も短い部分とが重ならない形状である。
図6(a)において、第1壁面により形成される第1ルーメン20は、第2壁面により形成される第2ルーメン22と隔壁を挟んで並んで設けられている。シャフトの外面と第2壁面との間隔が最薄となる第2壁面上の第1点P6は、第2壁面上の所定の2点P1、P2を結びかつ最長となる第1直線D1と重ならない位置にある。
【0030】
図7は、比較例に係るカテーテルのルーメンの断面の例である。
図7(a)に示すシャフト50において、第2壁面上の所定の2点を結びかつ最長となる第1直線D11、D12は、第2ルーメン54の対角線である。シャフトの外面と第2壁面との間隔が最薄となる第2壁面上の第1点P11、P12は、第1ルーメン52を上側とした場合に、下側の2つの頂点である。第1点は、第1直線上に位置するため、第1直線上に配置される第2ワイヤーの先端や屈曲部が壁面に接触した場合に、外面との間隔が短い第1点からルーメンを破損するおそれがある。
図7(b)に示すシャフト50において、第1直線は、第2ルーメン54の直径である。第1点は、第1ルーメン52を上側とした場合に、周上の最下部点である。
図7(a)と同様に、第1点は、第1直線上に位置するため、第1直線上に配置される第2ワイヤーの先端及び/又は屈曲部が壁面に接触した場合に、外面との間隔が短い第1点からルーメンを破損する恐れがある。
【0031】
本発明の一実施形態として、カテーテルの長手方向に直交する断面において、第1ルーメンは、上記第1直線と重ならない位置に配置され、かつ、第2ルーメンの断面の形状は、前記第1点と以下に示す第2点を結ぶ直線である第2直線の距離が、第1直線の距離よりも短いことが好ましい。第2点は、第2ルーメン上の点であって、第1ルーメンと第2ルーメンの間の部分である隔壁の距離が一番短くなる箇所に位置する点である。第1ルーメンが、上記第1直線と重ならない位置に配置されることにより、第2ルーメン内の第2ワイヤーが第2ルーメンの内壁を突き破った場合でも、第2ワイヤーが第1ルーメンに接触することを防ぐことができる。第2直線は、断面上に複数ある場合もある。
【0032】
第1点は、上記の通り、第2ルーメン上の点であって、シャフトの外面と第2ルーメンとの距離が一番短くなる箇所に位置する点である。第1点を鉛直方向下側とした場合、隔壁側の第2点は、上側に位置することとなる。第2直線は、第1点と第2点とを結ぶ直線である。したがって、第2直線は、隔壁及び外面と第2ルーメンの間隔の最も短くなる箇所同士を結ぶ直線である。第1直線は、第2ルーメンの断面上、最長となる直線である。第2直線は、第1直線よりも短いことが好ましい。これにより、本発明の一実施形態では、壁面が薄い部分が最長部分とならない構造である。
【0033】
第2ワイヤーの屈曲部は、断面上のルーメンの最も長い位置に配置される。このような配置が、屈曲部の安定的な配置状態である。そのため、壁面が薄い部分に第2ワイヤーの先端及び/又は屈曲部分が接触することを構造上避けることができる。このような断面形状として、
図6(a)から
図6(e)に示す種々の断面が挙げられる。上記の第1点と第2点との位置関係から、一実施形態では、第2ルーメンの断面は横長となることが多い。例えば、
図3に示されるように、第2ルーメン22長手方向に直交する断面は、略D字形状であって、平坦部分を第1ルーメン側とすることができる。一実施形態において、第2ルーメンの断面の形状は、楕円形状、長方形状、ひし形状、樽型状など偏平な形状が好ましい。
図6(a)において、第1ルーメン20は、第1直線D1延長線と重ならない位置に配置されている。さらに、第1点P6と、隔壁が最薄となる第2壁面上の第2点P5とを結ぶ第2直線D3の長さは、第1直線D1の長さよりも短い。
【0034】
図7は、比較例に係るカテーテルのルーメンの断面の例である。
図7(b)において、第1直線の延長上に、第1ルーメンが配置されている。第2点は、第1ルーメンを上側とした場合に、周上の最下部点である。したがって、第2直線は、円形の第2ルーメンの最上部と最下部を結ぶ直径であり、第1直線と一致する。これのような構造であるため、第2ワイヤーの先端及び/又は屈曲部が壁面に接触した場合に、隔壁を破損したり、外面との間隔が短い第1点からルーメンを破損したりする恐れがある。
【0035】
第1ルーメンの断面の形状を、第2ルーメンの形状と同様にしてもよい。その場合、第1ワイヤーとして、先端に屈曲部を有するワイヤーを用いてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態として、隔壁の最も薄い部分の厚みは、第1壁面とシャフトの外面との間の最も薄い部分の厚み、又は、第2壁面とシャフトの外面との間の最も薄い部分の厚みのいずれか一方よりも小さいことが好ましい。両方よりも小さくてもよい。ワイヤーの屈曲部分は、より厚みの薄い部分を突き破る可能性が高いため、この構成により、ワイヤーの屈曲部分が、シャフトの外面を突き破ることを防ぐことができる。本発明の一実施形態では、ワイヤーがシャフト外へ突き出ないよう隔壁を小さくすることができる。
【0037】
本発明の一実施形態として、長手方向に直交する断面において、シャフトの断面の大きさは、0.5mm以上1.5mm以下が好ましい。シャフトの断面の大きさは、シャフトの外周上の第1点とそれに向かい合う外周上の第2点間の距離をいう。同様に、第1ルーメンの断面の大きさは、0.25mm以上0.6mm以下が好ましい。第1直線の長さは、0.3mm以上0.8mm以下が好ましい。第2直線の長さは、0.25mm以上0.7mm以下が好ましい。隔壁の長さは、0.01mm以上0.12mm以下が好ましい。隔壁や、外面とルーメンとの間隔は、必要なシャフト、ルーメンの大きさに応じて適宜好ましく選択することができる。
【0038】
本発明の一実施形態に係るカテーテルでは、屈曲部を有するワイヤーを通過させるシャフトを肉厚にしなくても、ワイヤーによるルーメンの破損を抑制できる。その結果、カテーテルのシャフトの柔軟性を確保でき、シャフトを肉厚にした場合よりも操作性を高めることができる。
【0039】
本発明の一実施形態として、カテーテルのシャフトは、柔軟性を有する材料で形成されていることが好ましい。これにより、カテーテルが血管の湾曲に追従して変形しやすく、また、カテーテルが血管接触しても血管を損傷しにくい。シャフトを構成する材料は、熱可塑性樹脂材料が好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂材料が挙げられる。例えば、ポリアミド、高密度ポリエチレンなどであってもよい。シャフトが複数のチューブ状部材をつないで構成される場合又はシャフトが層構造を有する場合、それぞれの部材の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、シャフトが層構造を有する場合は、シャフトの外面を形成する材料と、内面(壁面)を構成する材料を異ならせることができる。
【0040】
本発明の一実施形態として、内面を形成する材料のすべり性が、外面を形成する材料のすべり性よりも高いものとすることができる。例えば、内面の材料を外面の材料より摩擦係数の小さい材料とすることができる。好ましい材料の組み合わせは、ポリアミドエラストマーと高密度ポリエチレンである。あるいは、同じ材料を用いて、シャフトの内面に滑り加工を施すことにより内面のすべり性を向上させてもよい。
【0041】
本発明の一実施態様として、シャフトの外面を形成する材料の弾性率が、内面を形成する材料の弾性率よりも低いものとすることができる。好ましい材料の組み合わせは、ポリアミドエラストマーと高密度ポリエチレンである。シャフトの内面、つまりルーメンのすべり性を高めることにより、ワイヤーが壁面に引っかかることなく滑らかに移動することができる。また、シャフトの外面の材料を弾性率の低いものを用いることにより、シャフトの柔軟性を高めることができる。
【0042】
本発明の一実施形態として、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、カテーテルのシャフトは、第2壁面と外面との間の最薄の部分を含む部分に、シャフトの外面を形成する材料よりも強度の高い材料で形成される補強層27、29が設けられていてもよい。補強材は、シャフトの内部に埋め込まれるように配置される。補強材は、ルーメン及び外面に露出しないことが好ましい。補強層の材料は、樹脂又は金属が挙げられ、金属が好ましい。シャフトの材料が樹脂である場合、補強層の材料は、例えば金属、例えばステンレスとすることができる。補強層の形状は、線状、編組状、コイル状などがあり、各素線の断面は、平線、平角線、丸線など適宜選択することができる。補強層は、第2ルーメンの周囲に設けられることが好ましい。補強層が設けられる第2ルーメンの周囲には、隔壁も含まれる。補強層を設けることによって、屈曲部を有する第2ワイヤーが第2ルーメンを突き破って外面や第1ルーメンまで貫通することを、より抑制できる。第1ワイヤーが第1ルーメンを突き破ることを防止するために、第1ルーメンの周囲に補強層を設けてもよい。
【0043】
本発明の一実施形態として、カテーテルの第1ルーメンの遠位側開口は、第2ルーメンの遠位側開口よりも、遠位側に配置されていることが好ましい。これは、第1ガイドワイヤーによって、カテーテルを固定しやすいようにするためのである。また、カテーテルの第1ルーメンの近位側開口は、第2ルーメンの近位側開口よりも、遠位側に配置されていることが好ましい。これは、カテーテルをラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルとして用いる場合に、第1ルーメンは、第2ルーメンより短いことが好ましいためである。
【0044】
本発明の一実施形態として、第2チューブの遠位側の端面は、傾斜していることが好ましい。このような傾斜は、第2チューブの長手方向に対して、所定の角度をもつ傾斜である。特に、第2チューブの遠位側の端面は、第1チューブを上方向とした場合に、上端が遠位側で且つ下端が近位側となることが好ましい。端面は、連続して傾斜してもよく、階段状、湾曲状であってもよい。なお、端面は傾斜しておらず、チューブの長手方向に直交する端面であってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態として、カテーテルには、放射線が不透過である材料により形成されたマーカーを有することが好ましい。このようなマーカーにより、手技中にカテーテルの位置を把握することができる。特に、マーカーは、第2ルーメンの遠位側開口を挟んで遠位側と近位側の2箇所に設けられることが好ましい。これにより、第2ルーメンの遠位側機構の位置を容易に把握することができる。マーカーの材料として、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、及びこれらを含む合金が挙げられる。マーカーは、ルーメンの周囲を囲む環状であることが好ましい。マーカーは、シャフトの内部に埋め込まれるように配置されることが好ましい。
【0046】
図1に示されるように、第1シャフト3の近位端には、ハブ15が接続されていてもよい。ハブは、先端を屈曲させた第2ワイヤーを、内部のテーパー構造を通じて第2ルーメンへスムーズ導入するためのものである。ハブは、接着剤により、シャフトに接続されることが好ましい。接着剤は、ウレタン系接着等が挙げられる。
【0047】
カテーテルのシャフトは、樹脂材料の押出成形などにより形成することができる。成形の条件は、必要に応じて適宜選択されるべきである。
【0048】
(実施例)
本発明の実施形態の一例として、
図1に示すカテーテル1は、近位側の第1シャフト3と遠位側の第2シャフト5とを備える。第1シャフト3は、アウターチューブ11とインナーチューブ13とを含む。第2シャフト5は、第1チューブ24と第2チューブ26とを含む。第2チューブ26とインナーチューブ13とは連続している。第1ルーメン20は、第1チューブ24の内腔である。第2ルーメン12、22は、インナーチューブ13と第2チューブ26との内腔である。
図1において、第1ルーメン20は、遠位側に配置され、第2ルーメン22、12は遠位側から近位側に配置されている。第1ワイヤー7は、第1ルーメン20を通過する。第2ワイヤー9は、第2ルーメン12、22を通過する。
【0049】
カテーテル1は、第1シャフト3の遠位端と第2シャフト5の近位端との一部とが接続されている。カテーテル1は、第2シャフト5の遠位端から血管に挿入される。第1シャフト3の近位側は、カテーテル1の操作者により操作される部分である。
図2(a)に示されるように、第1シャフト3は、アウターチューブ11の内側にインナーチューブ13が配置された二重管構造である。
【0050】
アウターチューブ11は、ポリアミドにより形成されている。
図2(b)に示されるように、アウターチューブ11の一方向に直交する断面は、円環状である。インナーチューブ13は、高密度ポリエチレンにより形成されている。インナーチューブ13の一方向に直交する断面は、円環状である。第1ルーメン20と並列でない部分の第2ルーメン12の断面は、円形状である。
【0051】
本実施例では、第2シャフト5は、本体28により、第1チューブ24及び第2チューブ26が一体に保持、または一体化されている。本体28は、第1チューブ24及び第2チューブ26よりも弾性率が低い材料で形成されている。本実施例では、本体28は、ポリアミドエラストマー(PAE)により形成されている。本体28は、第2シャフト5の外郭を構成している。本体28の外周面、つまり外面28aは、第2シャフト5の外面である。
【0052】
図2(a)及び
図3に示されるように、本体28は、第1チューブ24及び第2チューブ26を覆っている。第1チューブ24と第2チューブ26とは、本体28の長手方向に直交する断面において、所定の間隔をあけて並行に配置されている。第2チューブ26は、断面の直線部分が第1チューブ24と対向するように配置されている。この結果、第1ルーメン20と第2ルーメン22とは、隔壁25を挟んで並行に配置されている。一実施例では、隔壁25は、第1チューブ24の厚さ、第2チューブ26の厚さ、及び、本体28の厚さを含む。すなわち、隔壁25は、第1ルーメン20を形成する第1壁面、つまり第1チューブ24の内面24aと、第2ルーメン22を形成する第2壁面、つまり第2チューブ26の内面26aとの間の部分である。
【0053】
第1チューブ24は、高密度ポリエチレンにより形成されている。第1ルーメン20の長手方向に直交する断面は、円形状である。第1チューブ24は、後述する本体28よりも滑り性の高い材料で形成されている。第2チューブ26は、高密度ポリエチレンにより形成されている。第2チューブ26は、第1チューブ24と同様に、後述する本体28よりも滑り性の高い材料で形成されている。第2チューブ26は、第1シャフト3のインナーチューブ13と連結されている。インナーチューブ13の第2ルーメン12と第2ルーメン22とは、連続している。第2ルーメン12と並列である部分の第2ルーメン22の長手方向に直交する断面は、略D字状、言い換えると、円形が一部切り欠かれた形状であり、直線部分と円弧状部分とを含む。
【0054】
第1ワイヤー7及び第2ワイヤー9は、ステンレススチールにより形成されている。
図1に示されるように、第2ワイヤー9の先端9aは、屈曲形状であり、長手方向を0°とした場合、45°折り曲げられている。第2ワイヤー2の最先端から屈曲点までの長さは、1mmである。
【0055】
第1シャフト3の近位端には、ハブ15が接続されている。ハブ15は、スチレン−ブタジエン共重合体により形成されている。ハブ15は、第1シャフト3に接着剤17a、17bにより固定されている。本実施例のカテーテルは、近位側が二重管構造であるため、アウターチューブ11の近位端、及び、インナーチューブ13の近位端が、ハブ15に接着剤17a、17bにより接着されている。接着剤17a、17bは、ウレタン接着剤である。インナーチューブ13の第2ルーメン12は、ハブ15の内腔15aと連通している。ハブ15の内腔15aは、第2ワイヤー9を第1シャフト3に導入する導入部である。
【0056】
第1ルーメン20の遠位端及び近位端には、遠位開口(第1開口)21a及び近位開口(第2開口)21bが設けられている。第2ルーメン22の遠位端には、遠位開口(第3開口)23aが設けられている。第2ルーメン12の近位端には、近位開口(第4開口)23bが設けられている。
図1に示されるように、遠位側から、第1開口21a、第3開口23a、第2開口21b及び第4開口23bの順に並んでいる。本実施例では、第1ルーメン20の近位開口21bは、第1シャフト3と第2シャフト5との接続部分に位置している。本実施例において、第2チューブ26の遠位側の端面は、第1ルーメン20に近い側が遠位側、遠い側が近位側となるように、長手方向に直交する面に対して傾斜している。
【0057】
第1チューブ24には、第1マーカー30及び第2マーカー32が設けられている。本実施例では、第1マーカー30及び第2マーカー32は、白金(Pt)及びインジウム(Ir)を含む合金で形成されている。第1マーカー30及び第2マーカー32は、リング状であり、第1チューブ24を囲うように第1チューブ24に取り付けられている。第1マーカー30と第2マーカー32とは、第1チューブ24の長手方向において、第2ルーメンの遠位開口(第3開口)23aを挟んで配置されている。第1マーカー30は、遠位開口(第3開口)23aよりも遠位側、第2マーカー32は、遠位開口(第3開口)23aよりも近位側に配置されている。
【0058】
図3に示されるように、第1ルーメン20は、第2シャフト5の長手方向に直交する断面において、第2ルーメン22の内面26a上の所定の2点P1、P2を結び且つ最長となる第1直線D1の延長線と重ならない位置に配置されている。本実施例では、第1直線は、所定の2点P3、P4によっても規定される。本実施例において、第1直線D1、D2は、第2チューブ26の内面26aの直線部分の端部である点P1、P3と、円弧状部分の点P2、P4と、を結ぶ直線である。
【0059】
第2ルーメン22は、隔壁25が最薄となる内面26a上の第2点P5と、本体28の外周面28aと内面26aとの間が最薄となる内面26a上の第1点P6とを結ぶ第2直線D3が第1直線D1、D2よりも短い。この構成により、第2ワイヤー9の屈曲部は、
図4に示されるように、第2ルーメン22内において、最大径となる第1直線D1、直線D2に配置されて移動する。
【0060】
本実施例では、隔壁25の最小厚みT1は、第2チューブ26の内面26aと外周面28aとの間の最小の厚みT2よりも小さい。内面26aと外周面28aとの間の最薄の部分は、第2チューブ26の厚み及び本体28の厚みを含む。
【0061】
カテーテル1の製造方法について説明する。実施例のカテーテル1の製造では、アウターチューブ11、インナーチューブ13、第1チューブ24、第2チューブ26及び、本体28を構成する第1本体チューブ及び第2本体チューブを準備する。各チューブは、所定の材料によって、押し出し成形により形成する。第1チューブ24及び第2チューブ26の遠位側にはプラズマ処理を施す。プラズマ処理は、アウターチューブ11とインナーチューブ13との接続のために行う。材料の組み合わせによっては、プラズマ処理を施さなくてもよく、施してもよい。
【0062】
第1チューブ24の遠位側に、第1マーカー30及び第2マーカー32を所定の間隔をあけて取り付ける。第1マーカー30及び第2マーカー32は、第1チューブ24にかしめて固定する。他の実施形態について、マーカーの固定方法は特に限定されず、接着剤による接着又はマーカーのチューブへの巻き付けなどの方法がある。
【0063】
第1チューブ24に、ステンレス製の芯材を挿入する。当該芯材の長手方向に直交する断面は、円形状である。また、第2チューブ26に、ステンレス製の芯材を挿入する。当該芯材の長手方向に直交する断面は、略D字形状である。さらに、インナーチューブ13に、第2チューブ26に挿入したステンレス製の芯材を挿入する。当該芯材において、第2チューブ26の近位側に、インナーチューブ13の遠位側が配置される。第2チューブ26に挿入される芯材は、インナーチューブ13の近位端まで挿入される。芯材の長さは、挿入するチューブの長さと同じでもよく、チューブより長いことも短いことも許容される。芯材の長さは、必要に応じて適宜選択することができる。芯材の断面形状は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0064】
第1チューブ24と第2チューブ26とを平行に並べる。具体的には、第1チューブ24に取り付けられた第1マーカー30と第2マーカー32との間に第2チューブ26の遠位端が位置するように、第1チューブ24と第2チューブ26とを並べる。第1チューブ24及び第2チューブ26に第1本体チューブを被せる。第1本体チューブは、遠位端を第1マーカー30と第2マーカー32との間に配置し、近位端を第1チューブ24の近位端に一致させる。また、第1チューブ24の遠位側であって、第1本体チューブが被されていない部分に、第2本体チューブを被せる。第2本体チューブは、遠位端を第1チューブ24の遠位端に一致させ、近位端を第1本体チューブの遠位端に突き当てるように配置する。
【0065】
アウターチューブ11をインナーチューブ13に被せる。アウターチューブ11の遠位端は、第1本体チューブの近位端に突き当てる。第1本体チューブと第2本体チューブ、及び、第1本体チューブとアウターチューブ11の突き当て部分に、オレフィン系シュリンクチューブを被せ、シュリンクチューブを加熱する。シュリンクチューブは、加熱される領域に被せることが好ましい。これにより、第1本体チューブ及び第2本体チューブ、及び、第1本体チューブ及びアウターチューブ11を溶着して一体化する。また、第1チューブ24、第2チューブ26、インナーチューブ13も溶着して一体化する。すべてのチューブが溶着して一体化することにより、第2シャフトの本体28が形成される。また、シュリンクチューブを加熱したときに、第1チューブ24及び第2チューブ26も加熱され、第1チューブ24の内面24a及び第2チューブ26の内面26aの形状が、挿入された芯材の形状に形成される。加熱により、
図2(b)とは異なり、本体28と第1及び第2チューブ24、26の境目など、隣り合うチューブの境界が不明確になる場合もある。加熱は全体を一度に加熱してもよく、複数回加熱してもよく、部分的に加熱してもよく、加熱に時間差があってもよい。
【0066】
アウターチューブ11及びインナーチューブ13の近位端に、ハブ15を接着剤17a、17bにより接続する。これにより、カテーテル1が製造される。ここに示したカテーテルの製造の手順は、記載どおりの順序で行われてもよいし、適宜順序を入れ替えて行ってもよい。他の手順を追加してもよいし、省略してもよい。溶着して一体化するための加熱は、加熱箇所のすべてを一度に加熱してもよいし、順次加熱してもよい。また、チューブ同士を突き当てずに加熱し、溶着後、端部を切断して端面を形成してもよい。
【0067】
上記構成を有するカテーテル1の使用方法について説明する。最初に、第1ワイヤー7を血管内に挿入し、X線透過画像に基づいて、病変部位の末梢まで第1ワイヤー7を進める。ここで、病変部の末梢とは、血管中で病変部に対して近づくカテーテルから見て、病変部の向こう側をいう。次に、第1ワイヤー7の手元側を、第2シャフト5の第1ルーメン20の遠位側から挿入し、第1ワイヤー7に沿ってカテーテルを病変部位付近まで進める。このとき、X線透過画像において、第1マーカー30及び第2マーカー32を目印とすることができる。
【0068】
続いて、先端側に屈曲部を形成した第2ワイヤー9をハブ15から第1シャフト3のインナーチューブ13(第2ルーメン12)に挿入し、第2ワイヤー9を第2シャフト5の第2ルーメン22まで進める。更に、狭窄部の末梢まで第2ワイヤー9を進める。これにより、カテーテル1によって、狭窄部に通過部が形成される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。