【実施例】
【0075】
(実施例1)
アルミニウムアノードのアルカリ金属水酸化物処理
バッテリグレードの、元のままの状態のアルミ箔を処理して、親水性を増大させかつアノードの湿潤性を改善した。理論に拘泥するものではないが、疎水性アルミニウムアノードは、アルミニウム金属と水性電解質との間の界面の高い界面抵抗に起因して、効率的なイオン輸送を妨げ、性能の著しい降下をもたらすと考えられる。アルミニウム金属の表面の親水性は、水酸化リチウム水溶液での処理によって増大した。リチウムは、アルミニウムに対して強力な親和性を有し、ある範囲のリチウム−アルミニウムをベースにした合金を形成することが公知であり、このことは、灰色がかった白色のテクスチャをアルミニウム表面に形成することによって特徴付けられるものである。得られたアルミニウムアノードは、未処理の元のままの状態のアルミニウムよりも親水性が著しいことがわかる。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのその他のアルカリ金属水酸化物の水溶液も、この処理で使用するのに適切である。
【0076】
図1Aは、1Mの水酸化リチウム水溶液の1滴で処理された、1片のアルミ箔の写真であり:
図1Bは、水酸化リチウムの水溶液の液滴の外観の変化を示す、
図1Aの、1片の処理されたアルミ箔の写真である。しばらくしたら、水酸化リチウムの水溶液を拭き取り、アルミ箔の表面を室温(25℃)で空気乾燥させた。5〜10秒から1時間の反応時間を試験したが、反応は、5〜10秒で完了したように見える。
図1Cは、水酸化リチウム溶液の乾燥後の、アルミ箔の灰色がかった白色の外観を示す、
図1Bの、1片の処理されたアルミ箔の写真である。
図1Dは、処理されたアルミ箔上に1滴の脱イオン水を置いたことの影響を示す、
図1Cの、1片の処理されたアルミ箔の写真であり、この写真は、処理されたアルミ箔の親水性の増大を示している。
図1Eは、
図1Dと比較するための、未処理のアルミ箔上の1滴の脱イオン水の写真である。ある特定の実施形態では、約0.01Mから約5.5Mの水酸化リチウムの水溶液を使用することができる。
【0077】
窒素および酸素プラズマならびに酸をベースにした処理を使用する処理などの、アルミニウム金属表面の親水性を増大させるその他の手段は主に、金属表面での親水性の天然の酸化アルミニウム層の導入に依拠する。酸をベースにした処理では複雑な化学作用が行われ、製造コストが増大し、使用および処分に関連した著しい環境上の影響がある。一方、プラズマ処理は、費用のかかる高電圧プロセスであり、大規模製造には不適切である。
【0078】
(実施例2)
アルミニウムアノードvs.酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードバッテリ、およびアルミニウムアノードvs.黒鉛−黒鉛酸化物カソードバッテリ
バッテリを、アルミニウムアノード、酸処理したリチウムマンガン酸化物カソード、および電解質としての硝酸アルミニウムの水溶液を使用して組み立てた。研究を、
図2に示される標準の2032コイン型セル形状因子を使用して実行した。
図2は、コイン型セルの様式にある試験バッテリ100の分解組立て概略図であり、正極ケース110、ばね120、第1のスペーサ130、カソード140、セパレータ150、アノード160、第2のスペーサ170、および負極ケース180を示している。試験バッテリ100の組立て前に、一定量の電解質をセパレータ150とアノード160との間、ならびにセパレータ150とカソード140との間に置く。好ましくは、第1のスペーサ130、カソード140、セパレータ150、アノード160、および第2のスペーサ170を、電解質中に浸漬し、平衡にし、その後、試験バッテリを組み立てる。
【0079】
バッテリグレードのアルミ箔を、アノード160として使用する。バッテリグレードの箔は、一般に>99%純粋である。任意のバッテリグレードの箔の厚さは限定されるべきであり、その理由は:(ワット−時/集電子を含む電極の全体積を単位とする正味の利用可能なエネルギー密度)と定義される、システムレベルでの体積エネルギー密度に、箔の厚さが直接影響を及ぼすからである。より厚い集電子は、バッテリパック/モジュールに積層することができる電極の最大数も低減させる。理想的には、バッテリグレードの集電子は、その厚さが8〜30μmの間で様々である。機械的堅牢性は、電極コーティングまたはセル/バッテリ組立てプロセス中の、いかなる摩耗および引裂きも防止するのに必要である。商用のバッテリグレードの箔の引張り強さは、100〜500N/mmの間で様々である。適切なバッテリグレードのアルミ箔およびその他の材料は、MTI Corporation、Richmond、CAおよびTargray Technology International Inc.、Laguna Niguel、CAから得てもよい。バッテリグレードのリチウムマンガン酸化物カソードおよび黒鉛は、MTI Corporation、Richmond、CAおよびSigma Aldrich、St.Louis、MOから得てもよい。グラフェンおよび黒鉛酸化物は、Sigma Aldrich、St.Louis、MO、Graphene Supermarket、Calverton、NY、およびACS Material、Medford、MAから購入してもよい。
【0080】
アルミ箔アノードを、実施例1に記述したように処理して、それらの親水性を改善した。
【0081】
充放電ステップを、0〜2Vの電圧窓内で実施した。セルが放電されるにつれ、ヒドロキシアルミネート(Al(OH)
4−)イオンが、下記の化学反応(5)に従い形成された:
【0082】
Al
3++4OH
−→Al(OH)
4− (5)
【0083】
ヒドロキシアルミネートイオンは、多孔質膜セパレータを通過して、カソードに向かって移行する。
【0084】
カソードでは、ヒドロキシアルミネートイオンが、カソード材料の細孔およびシート間空隙内を拡散し、酸化して、Al(OH)
3(水酸化アルミニウム)を得る。完全に(100%)放電した試験セルのアルミ箔アノード上の、水酸化アルミニウムの存在は、
図3に示されるように、x線光電子分光法(XPS)を使用して確認されている。XPSプロファイルは、74.3eVで1つの主要なAl 2p遷移を示し、アノード上のギブサイトAl(OH)
3の存在が示される。74.3eVでの遷移は、Kloproggeらによりギブサイトの特徴であることが報告されている。Kloprogge, J.T.ら、XPS study of the major minerals in bauxite: gibbsite, bayerite and (pseudo-) boehmite、Journal of Colloid and Interface Science、2006年、296巻(2号)、572〜576頁。逆充電プロセスでは、水酸化アルミニウムがカソードで還元され、アルミニウムイオンが元のアノードに移行する。
【0085】
カソードでの充放電反応、化学反応(6)および(7)をそれぞれ以下に提示する:
【0086】
放電 Al(OH)
4−→Al(OH)
3+OH
−+ 3e (6);
【0087】
充電 Al(OH)
3+3e
−→Al
3++3OH
− (7)。
【0088】
充電プロセス中、下記の反応式(8)に従いリチウムマンガン酸化物の解離反応を通して酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードでは、追加の関与が観察され得る:
【0089】
LiMnO
2+ e
−→Li
++MnO
2 (8)。
【0090】
次いでリチウムイオンはアルミニウムアノードに向かって流れると考えられ、おそらくはアルミニウムとインターカレートされるが、それはリチウムとアルミニウムとの間の高い親和性によるものであり、混成イオンバッテリ化学が形成される。この仮説は、いかなるリチウム成分もない炭素ベースのカソードで得られた容量と比較したときに観察された、容量の増大(約40%)に関係する可能性がある。しかし、リチウムマンガン酸化物カソードを有する試験セル内のアルミニウムアノードのXPS検査は、完全に充電された状態で、アノード部位でのリチウムをベースにした合金のいかなる有意な兆候も示さなかった。しかしこの結果は、リチウムマンガン酸化物の解離反応が著しく高い電圧(>3V)でおよび所与の電圧窓内で生じるという事実に起因する可能性があり、リチウムイオンの濃度は、アルミニウムをベースにした合金の存在と比較して無視できる。さらにXPSは、表面をベースにした分析技法であり、アルミニウム中の優れたリチウムイオン拡散によってリチウムイオンがバルク状アルミニウムアノード内に拡散され、したがって表面に存在しないと考えられる。
【0091】
動作パラメータおよび性能測定基準。アルミニウムイオンセルを、0V(放電)および2V(充電)の安全な電圧カットオフリミット間で、オン・オフを繰り返した。しかし平均動作電圧は、安全な電圧カットオフリミット内で、アルミニウムアノードおよび酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードを有するセル(
図4A)の放電に関して約1.1Vであり充電に関して1.2Vであり、アルミニウムアノードおよび黒鉛−黒鉛酸化物カソードを有するセル(
図4B)の放電に関して0.4Vであり充電に関して0.9Vであった。
【0092】
図4Aは、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質を有する試験バッテリに、0.1mA/cm
2の電流密度で電流を印加することによって生成された電圧プロファイルを示す。
図4Bは、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、黒鉛−黒鉛酸化物を含むカソード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質を有する試験バッテリに、0.1mA/cm
2の電流密度で電流を印加することによって生成された電圧プロファイルを示す。観察された平均動作電圧は、酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードの使用で著しく高く、それはおそらく、イオンの拡散およびインターカレーションに関してより高い活性化エネルギーに起因する。炭素は、金属イオンの拡散およびインターカレーションに関して著しく低い活性化エネルギーを保有することが公知である(リチウム金属に対する炭素中のリチウムイオンのインターカレーション電圧は、約100mVで生ずる)。
【0093】
さらに電圧プロファイルは、ナトリウムイオンバッテリで観察された電圧プロファイルとは異なる特徴的な電圧プラトー(
図4A)を実証し、より単純なバッテリ管理システムの組込みおよび高い動作電圧に起因したより少ないセルの直列での設置など、極めて重要な利点が可能になり、それらの全ては技術のコストを著しく押し下げることができる。充放電速度は、C/1からC/12の間で限定された(速度C/nは、n時間での充放電を示唆する)。サイクル寿命試験が現在進行中であるが、黒鉛をベースにしたおよび酸処理されたリチウムマンガン酸化物をベースにした両方の構成は、これまで印象深いサイクル寿命を実証してきており、約100%に近いクーロン効率をもたらしている(充電容量と放電容量との比と定義され、バッテリ化学における不可逆性および副反応を示す)。
図5Aは、バッテリ充電容量、白抜きの三角形と、放電容量、白抜きの円形とを、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および黒鉛−黒鉛酸化物複合体カソードを有するバッテリのサイクルインデックスの関数として示す。クーロン効率は、30回にわたる充放電サイクルで100%に近いと推定され、効率的および可逆的な充放電動態を示している。
【0094】
図5Bは、バッテリ充電容量を、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および酸処理されたLi
1−xMnO
2カソードを有するバッテリのサイクルインデックスの関数として示す。800回にわたる充放電サイクル後の容量の低減は、当初の容量の約3%である。
【0095】
当然ながら、酸処理されたリチウムマンガン酸化物アルミニウム化学であって水性電解質によるものは、酸処理されたリチウムマンガン酸化物で観察されたアルミニウムに対するより高い電気化学親和性により、カソードの質量および体積により正規化された、黒鉛−黒鉛酸化物−アルミニウム化学(約50〜75Wh/kgおよび約20〜30Wh/L)よりも高いエネルギー密度(約100〜150Wh/kg)および体積エネルギー密度(約30〜60Wh/L)を提供する。しかし黒鉛−黒鉛酸化物カソードは、一般に、リチウムマンガン酸化物よりも安い。カソード化学に対する他の修正は、黒鉛−黒鉛酸化物カソードの性能測定基準を著しく押し上げる可能性がある。
【0096】
逐次サイクリックボルタンメトリ試験は、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードを有するバッテリ(
図6A)内、または実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および黒鉛−黒鉛酸化物複合体カソードを有するバッテリ(
図6B)内の、イオン拡散係数を測定するため実施した。コイン型セル様式の試験バッテリを、0Vから1.5Vの電圧範囲内で、10mV/秒から50mV/秒の間の様々な電圧掃引速度でオン・オフを繰り返した。
【0097】
拡散係数を、フィックの法則の下記の方程式(I)を使用して計算した:
【0098】
【数1】
【0099】
次いで電流の応答は、下式の通り得ることができる:
【0100】
【数2】
【0101】
式中、nは交換された電子の数であり、Fはファラデー定数であり、Aは電極の面積であり、Dは拡散係数であり、Cはモル濃度であり、tは拡散の時間であり、R
0はカソード粒子の半径である。
【0102】
電流応答は、下式の通り単純化することができ書き直すことができる:
【0103】
i=kt
1/2+b (III)
【0104】
式中、
【0105】
【数3】
【0106】
または
【数4】
である。
【0107】
引き続き、酸処理されたリチウムマンガン酸化物および黒鉛−黒鉛酸化物複合体カソード内のヒドロキシアルミネートイオンの拡散係数は、それぞれ1.14×10
−7cm
2/秒および3.54×10
−8cm
2/秒と計算され、これらは金属イオンバッテリでのイオン拡散係数の許容範囲内に十分入っていた。
【0108】
さらに、電気化学インピーダンス分光法(EIS)を実施して、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および酸処理されたリチウムマンガン酸化物カソードを有するバッテリ(
図7A)と、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、および0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質、および黒鉛−黒鉛酸化物カソードを有するバッテリ(
図7B)との内部抵抗を分析した。挿入図は、スペクトルを当て嵌めるのに使用したランドルの等価回路を示す。
【0109】
動作電圧は、水性電解質系の電解電圧に近いので、EISを分析することは、セル内で気体発生に関連した潜在的な安全性に対する脅威を理解するのに極めて重要である。電解質中の気体ポケット(H
2およびO
2)の発生および存在は、電解抵抗を直接増大させるようになり、それと共に、電極−電解質界面でのこれらの気体の発生が界面抵抗を増大させるようになることが理解される。
【0110】
EISプロファイルをランドルの等価回路モデルに当て嵌め、下記の表2にまとめた電解抵抗、界面抵抗、および電荷移動抵抗を、当て嵌めに基づいて推定した。電解抵抗は、電解質中にいかなる気体ポケットも存在しない状態と一致するように、10〜20Ωという典型的な電解抵抗よりも著しく低い、2〜4Ωの間になるように推定した。界面抵抗は、やはりいかなる絶縁気体ポケットも存在しない状態に一致させて、酸処理されたリチウムマンガン酸化物電解質界面で11Ωになるように、黒鉛−黒鉛酸化物−電解質界面で20Ωになるように推定した。酸処理されたリチウムマンガン酸化物の電荷移動抵抗は、約100Ωになるように、それと共に黒鉛−黒鉛酸化物複合体の電荷移動抵抗は、約131Ωで僅かに高くなるように推定したが、これはおそらく、酸素含有官能基の存在に起因するものである。電荷移動抵抗は、活性電極材料の電子伝導度を示し、気体ポケットの形成とは無関係である。当業者なら、100〜150Ωの電荷移動抵抗がバッテリ貯蔵適用例に適切であると一般に考えられることが理解されよう。
【表2】
【0111】
アルミニウムイオンバッテリ化学の形状因子の拡張性を評価するために、パウチセルおよび柱状セルも組み立てて試験をした。柱状セルアセンブリの概略図を
図8Aに提示する。柱状アセンブリ80は、金属またはポリマー基板82と、絶縁ポリマーガスケット84と、明瞭にするために図示されていない基板の構造に似せた上板とを含んでいた。構成要素は、その縁部に沿って、ねじ山の付いたスルーホールを有していた。金属基板および上板の場合、ナイロンねじを使用してアセンブリを封止すると同時に2枚の板の間の短絡を防止し、一方、ポリマー基板および上板の場合、ナイロンと金属の両方のねじで十分である。柱状セルを、2cm×5cmの電極面積と共に組み立て、定格容量は1mAhであった。標準のポリプロピレンセパレータを、アセンブリで使用した。セルは単一界面を含んでいたが、多数の界面を装置に組み込むこともできる。
【0112】
図8Bは、定格が1mAhである柱状セルの放電電圧プロファイルを示す。セルは、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質を有しており、10μA/cm
2で試験をした。
【0113】
パウチセルは、アルミニウムラミネートパウチセルパッケージケースのセル組立てセクションに、アノード−セパレータ−カソード界面を導入することによって組み立てた。この後、電極を、機械的接触または超音波溶接を通してアルミニウム集電子タブに接続した。次に、パウチセルの3つの縁部を、約20〜50psiおよび150〜180℃に設定されたヒートシーラを使用して封止した。パウチセルのセクションを、気体トラップとして作用する縁部の1つで保持した。気体トラップの目的は、形成サイクル中に気体発生を含有することであり、その後、気体トラップセクションを切断して縁部を後続のサイクリングのために再封止することができる。パウチセルの第4のおよび最終の縁部を封止する前に、電極−セパレータアセンブリを電解質で濡らした。第4の縁部は、約−90psiに真空設定された真空封止炉内で封止する。圧力および温度パラメータは変更せず、それぞれ20〜50psiおよび150〜180℃に設定する。セルアセンブリセクション92、気体トラップ94、および集電子端子96を示す、パウチセル90の概略図を
図9Aに示す。このように組み立てられたパウチセルは、1cm×0.8cmから1cm×1cmの間の電極を含んでおり、定格は0.06〜0.08mAhの間であった。
【0114】
図9Bは、0.8cm×1cmの電極および親水性ポリプロピレンセパレータを含む、パウチセルの放電プロファイルを示す。セルは、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータ、0.5Mの水性硝酸アルミニウム電解質を有しており、約25μA/cm
2で試験をした。柱状セル様式と同様に、このように組み立てられたパウチセルは拡張性を組み込むこともでき、多数の界面を直列/並列構成にパックして、所定の容量および電圧定格を実現することができる。
【0115】
大衆向け家電製品、軍用、自動車、およびグリッドストレージなどの様々なセクターで増え続ける要求を満たすために、代替のエネルギー貯蔵システムを見出す必要性は、ここ10年で指数関数的に増大し続けている。リチウムイオンバッテリは、今日では大衆向け家電製品においては広く普及しているが、高いコストおよび潜在的に危険な安全上の脅威に関するその制約が、グリッドストレージなどの台頭しつつある分野および自動車の適用例におけるその参入を制限してきた。一方、ナトリウムイオンバッテリは、システムレベルでのコストの僅かな低減をもたらし得るが、利用可能な容量およびエネルギー密度に関する性能測定基準、電圧窓、および電解質の選択を著しく制限する。フローバッテリおよび液体金属バッテリなどの、代替の来たるべき技術はまだ開発の初期段階にある。さらに、そのような技術は、実施および安全性のコストに関して追加の難題を課す。例えば、バナジウムレドックスフローバッテリにおける、限定されない容量の利用可能性は、大きい貯蔵タンクおよび工業用ポンプを利用し、そのことがバッテリシステムのコストおよび維持管理を増大させる。液体金属バッテリは、非常に高い温度で動作し、アンチモンおよび鉛などの有毒材料ならびに可燃性リチウム金属の使用を取り入れ、それによって深刻な安全上の懸念がもたらされる。
【0116】
開示された再充電可能なバッテリを使用するシステムおよび方法も開示される。
図8は、本開示のバッテリ810を組み込むシステム800の実施形態のブロック図であり、バッテリ810、電力源830、局所電気負荷840、および電力配電網850に作動可能に接続された制御器820を示している。ある特定の実施形態では、電力源830は、再生可能エネルギー源、即ち風力タービンまたはソーラーパネルをベースにする。制御器820は、電力源830におよび本開示のバッテリ810に作動可能に接続されて、バッテリ810の充電を媒介する。制御器820は、1つまたは複数の局所電気負荷840に、ならびに本開示のバッテリ810に作動可能に接続されて、バッテリ810の放電を媒介する。局所電気負荷840は、携帯電話またはコンピュータの充電器、コンピュータ、家電製品、送水ポンプ、および冷蔵設備を含むがこれらに限定することのない、DC給電またはAC給電を必要とするデバイスを含むことができる。ある特定の実施形態では、制御器820は、電力配電網850に作動可能に接続されて、過剰な電力を電力配電網850に売ることが可能になる。
【0117】
(実施例3)
電解質添加剤
一部の実施例では、電解質、0.5M Al(NO
3)
3を、10〜50体積%の2M LiOHと混合して、複合電解質を得た。理論に拘泥するものではないが、アルミニウムイオンを含む電解質へのLiOHの添加は、電解質中のOH
−1の濃度を増大させ、したがって望ましくない副反応を通した輸送中の活性イオンの損失を防ぐと考えられる。水中のアルミニウムの反応性により、カソード側での反応の前にAl(OH)
41−イオンの酸化を観察することは、一般的ではない。
【0118】
酸化反応は、下式にようにまとめることができる:
【0119】
Al(OH)
41−→Al
3++4OH
−1 (9)。
【0120】
電解質中のOH
−1イオンの濃度に応じて、後でヒドロキシアルミネートの酸化および多価アルミニウムイオンの再形成をもたらす解離反応を通して、カソードに到達する活性ヒドロキシアルミネートイオンを還元することができる。電解質中への2M LiOHの取込みを通してOH
−1イオンの濃度が増大することにより、Al
3++4OH
−1への解離よりもAl(OH)
41−イオンが優先されるように反応の平衡がシフトすると考えられる。
【0121】
図11は、電解質組成が異なる2つのバッテリの充放電特性を比較し:1つのバッテリは、0.5M Al(NO
3)
3(aq)電解質を有し(曲線1)、別のバッテリは、0.5M Al(NO
3)
3および2M LiOH(aq)電解質を有する(曲線2)。各バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソード、平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータを有し、10μA/cm
2の電流密度で試験をした。ある特定の実施形態では、電解質は、硝酸アルミニウムおよび水酸化リチウムのモル比が約1:1から約1:10の水溶液である。
【0122】
図11に示される結果は、複合電解質の取込みが、低減した過電位をもたらすことができることを示唆する。電解質中へのLiOHの取込みは、電解質中で輸送中の活性Alイオン種の損失を防ぐことによって、過電位を低減させる。過電位は、セル組成によって引き起こされた放電電圧ヒステリシスに関する。放電中の電圧ヒステリシスは、内部セル抵抗に起因して予測される動作電圧からの変化と定義され、方程式ΔV=IR(式中、ΔVは電圧の変化であり、Iは電流であり、Rは内部抵抗である)を通して伝えられる。次いで新たな動作電圧、Vop’は、Vop’=Vop−ΔVと定義される。
図11、曲線1において、電解質は0.5M(aq)Al(NO
3)
3でありかつLiOH添加剤はなく、より高い内部抵抗がΔV値の増加を引き起こし(過電位として公知である)、より低い電圧で放電を引き起こす。対照的に、0.5M Al(NO
3)
3および2M LiOH水溶液である電解質を有するバッテリ(曲線2)は、低減した内部セル抵抗を有し、したがってΔV値は曲線1のバッテリの場合よりも小さくなり、その結果、より高い放電電位が得られる(エネルギー密度=容量×動作電圧であるので、より高いエネルギー密度が示唆される)。
【0123】
実施例はLiOH−Al(NO
3)
3複合電解質について記述するが、その他の水酸化物含有化合物を電解質に導入して、類似の効果を実現してもよい。いくつかの代替の電解質添加剤は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの水酸化物を含む。アルカリ金属イオン(例えば、Li+、Na+、またはK+)は、電解質中に単独で存在しかつAl(OH)
41−イオンとは反対の極性を有するので、放電容量には寄与しないことになる。
【0124】
(実施例4)
セパレータ
本明細書に開示されるアルミニウムイオン化学では、大きいAl(OH)
41−イオンを輸送する。したがってセパレータの孔径は、イオン輸送動態を支配することができる。リチウムイオンバッテリなどの標準のバッテリは、比較的より小さいリチウムイオンを流すのに十分な、孔径が0.1μm未満のポリプロピレンセパレータを一般に使用する。しかし、イオンのサイズが増大するにつれ、Al(OH)
41−の場合のように、小さい孔径がイオンの効率的な流れを妨げ、その結果、増大した内部セル抵抗と低下した充電速度および放電速度とをもたらす。したがって、セパレータ表面での電荷の蓄積および抵抗の上昇を低減させる試みでは、より大きい細孔直径を持つセパレータを有するバッテリについて研究した。
【0125】
試験をしたセパレータは、ポリプロピレンセパレータ(標準、0.067μm孔径;Celgard LLC、Charlotte、NC)、混合セルロースエステルセパレータ(0.2μm孔径、Whatman)、ナイロンセパレータ(0.45μm、0.8μm、1.2μm孔径、Whatman)、およびガラスマイクロファイバーセパレータ(1μm孔径、Whatman)を含んでいた。一般に、0.8μmおよび1.2μmを含む、より大きい孔径は、より小さい孔径に比べてより速いイオン移動動態およびより良好な速度能力を可能にする。しかし、孔径がさらに増大するにつれ、アノードおよびカソードの短絡の増大があるようであり、2.7μmの細孔直径で顕著であった。
【0126】
図12は、所与の電流密度で生成された平均放電電位に対するセパレータの孔径の影響を示し、五角形(1)は、0.067μmの細孔を持つポリプロピレンセパレータを有するバッテリでなされた測定値を表し、三角形(2)は、0.20μmの細孔を持つ混合セルロースエステルセパレータを有するバッテリに対してなされた測定値を表し、円形(3)は、0.45μmの細孔を持つナイロンセパレータを有するバッテリに対してなされた測定値を表し、四角形(4)は、0.80μmの細孔を持つナイロンセパレータを有するバッテリに対してなされた測定値を表し、ダイヤモンド形(5)は、1.0μmの細孔を持つガラスマイクロファイバーセパレータを有するバッテリに対してなされた測定値を表す。各バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されるようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノードと、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソードとを有し、かつ電解質は、0.5Mの硝酸アルミニウム水溶液であった。ポリプロピレンセパレータ(五角形)は、10μA/cm
2および20μA/cm
2で試験をし;混合セルロースエステルセパレータ(三角形)およびナイロンセパレータ(円形)は、20μA/cm
2で試験をし;ナイロンセパレータ(四角形)は、20μA/cm
2、40μA/cm
2、および50μA/cm
2で試験をし;ガラスマイクロファイバーセパレータ(ダイヤモンド形)は、20μA/cm
2および40μA/cm
2で試験をした。
【0127】
セパレータの孔径は、意図される適用例で、バッテリの適切性に影響を及ぼす可能性もある。当然ながら、やはり、より大きい孔径を持つセパレータは、より小さい孔径を持つ場合よりも厚い。したがって、最適な孔径の範囲は非常に大きいが、意図される適用例に基づいて特異的な選択を行うことができる。例えば、より小さい孔径(例えばポリプロピレン、0.067μmの細孔直径および25μmの厚さ)は、エネルギー密度(体積および重力)を最適化することができ、一方、より大きい孔径(例えばガラスマイクロファイバー、1μmの細孔直径および500μmの厚さ)は、速度能力を最適化することができ、したがってそのようなバッテリの電力密度を改善する。
【0128】
図13は、10μA/cm
2の電流密度で0.067μmの細孔を持つポリプロピレンセパレータを有するバッテリの放電を示す。バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソードを有し、かつ電解質は、0.5Mの硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0129】
図14は、20μA/cm
2(曲線1)、40μA/cm
2(曲線2)、および40μA/cm
2(曲線3)の電流密度で、0.80μmの細孔を持つナイロンセパレータを有するバッテリの放電を示す。バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソードを有し、かつ電解質は、0.5Mの硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0130】
図15は、20μA/cm
2(曲線1)および40μA/cm
2(曲線2)の電流密度で、1.0μmの細孔を持つガラスマイクロファイバーセパレータを有するバッテリの放電を示す。バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソードを有し、かつ電解質は、0.5Mの硝酸アルミニウム水溶液であった。
【0131】
さらに、低下した内部抵抗の結果、より大きい孔径を持つセパレータで、著しく高い電流密度であってもより高い動作電圧が可能になった。例えば約20μA/cm
2の電流密度で、ポリプロピレンセパレータ(0.067μm孔径)、ナイロンセパレータ(0.8μm孔径)、およびガラスマイクロファイバーセパレータ(1μm孔径)は、それぞれ1.01V、1.17V、および1.18Vの平均放電電位を示した。
図12を参照されたい。下記の表3は、様々なセパレータと共に構成されたバッテリに関する、平均充放電電位および典型的な充放電電圧ヒステリシスの値を、ベースラインに対して比較したものをまとめる(標準の0.067μm孔径のポリプロピレンセパレータは、約10μA/cm
2の電流密度で試験をした)。
【表3】
【0132】
表3は、2倍の電流密度であっても、標準のポリプロピレンセパレータ(1.11V)に比べて、より高い電圧(1.17V〜1.18V)で生成されたナイロンまたはガラスマイクロファイバーセパレータを有するバッテリを示す。他の研究では、充放電ヒステリシス電圧(それぞれ、充電終止と放電開始との間、放電終止と充電開始との間の電圧差)は、4倍高い電流密度であっても(データは図示せず)、十分許容される値の範囲内にあることがわかった。
【0133】
その他の適切なセパレータは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、およびポリ塩化ビニルも含むがこれらに限定するものではない。さらに、陰イオン交換膜およびプロトン交換膜、例えばNAFION(登録商標)を、セパレータとして使用してもよい。アルミナ、酸化ジルコニア、および酸化ケイ素を含むがこれらに限定されないセラミックセパレータを使用することもできる。試験を通して明らかにされるように、セパレータは、0.067μmから1.2μmの間におよぶ孔径を有することができる。しかしより低いまたはより高い多孔度および厚さを持つセパレータを、特定の適用例に使用することもできる。
【0134】
(実施例5)
固体ポリマー電解質
液体水性電解質の代替例として、1つまたは複数の水酸化物供給源と共にまたはなしで、少なくとも1種のアルミニウム塩を取り込んだ固体ポリマー電解質(SPE)を、ある特定の実施形態で使用することができる。SPEの使用によってより高い動作電圧が可能になるだけではなく、広範な動作条件(温度、湿度、機械的応力など)にわたって安定した反応力学が可能になる。アルミニウム塩は、電解質を通したアルミニウムイオンの効率的な流れを確実にするが、添加された水酸化物は、イオンの輸送中にOH
−を提供してAl(OH)
41−イオンの形成を可能にする。アルミニウム塩は、Al(NO
3)
3、Al
2(SO
4)
3、およびAlCl
3と、これらの組合せおよび変形例を含むがこれらに限定するものではない。水酸化物は、Al(OH)
3、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)
3、Mg(OH)
2、およびNH
4OHと、これらの混合物を含むがこれらに限定するものではない。一般に、ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、アセトニトリルブタジエンスチレン、スチレンブタジエンゴム、エチルビニルアセテート、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリメタクリル酸メチル、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0135】
アルミニウム塩をベースにしたSPE:ある特定の実施形態では、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HEP)またはポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの架橋ポリマーを、1:1から1:10の間の範囲である比で硝酸アルミニウムと混合する。次いで混合物を、N−メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解し、重合反応を開始させるために2時間一定に撹拌しながら50〜200℃の範囲である温度で加熱する。溶液が粘性になったのを観察した後、真空炉チャンバに移し、溶媒を除去しかつ結果的に固体ポリマー電解質を得るために、上記温度範囲で2〜24時間さらに加熱する。生成された固体ポリマー電解質は、アルミニウム塩および架橋ポリマーを、選択された重量比で、典型的には架橋ポリマーを9〜50wt%およびアルミニウム塩を50〜91wt%含む。
【0136】
別の実施形態では、架橋ポリマーを、ハロゲン化アルミニウム(AlCl
3、AlBr
3、AlI
3など)、および塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIMCl、Sigma−Aldrich)、臭化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIMBr、Sigma−Aldrich)、またはヨウ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIMI、Sigma−Aldrich)と混合してもよく、ハロゲン化アルミニウムとハロゲン化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとの比は1:1から5:1(重量:重量)の範囲である。次いで組み合わされたハロゲン化アルミニウムとハロゲン化1−エチルメチルイミダゾリウムを、PVDF−HFPまたはPMMAなどの架橋ポリマーと、1:1から10:1(重量:重量)の比で混合する。典型的には、溶媒mL当たり混合物0.1から1gを、N−メチルピロリドンまたはDMSOなどの溶媒と組み合わせる。混合および加熱ステップは、上述のプロセスに類似している。得られた固体ポリマー電解質は、アルミニウム塩、ハロゲン化1−エチルメチルイミダゾリウム、および架橋ポリマーを、選択された重量比で、典型的には架橋ポリマーを9〜50wt%で、アルミニウム塩を50〜91wt%で含有することになる。
【0137】
溶媒に溶解した混合物を、約50℃から200℃の間で2〜24時間、一定に撹拌しながら加熱する。一実施例では、混合物を、一定に撹拌しながら2時間続けて90℃で加熱した。このステップは、重合反応を開始する。このステップの終わりに溶液は粘性になり、重合反応が首尾良く終了したことを示す。次いで混合物を平らなガラスペトリ皿またはその他の適切な容器に注ぎ、真空炉に移し、50℃から200℃の間で一晩、または溶媒を完全に除去するのに必要なだけ、加熱する。このステップの終わりに、機械的に(剥離)またはエタノールを加えることによりガラス表面から放出することができる自立SPEが得られる。SPEの写真を
図16に示すが、この図は、厚さ約1mmおよび直径約3cmの、円筒状の自立型半透明固体ポリマー電解質を示している。
【0138】
SPE中への水酸化物の導入:上記実施例3に記述された電解質への水酸化物の添加は、架橋ポリマーおよびアルミニウム塩の他に混合物中に適切な水酸化物を導入することによって、実現することができる。一実施形態では、100mgの水酸化リチウムおよび900mgの硝酸アルミニウムを約5mLの脱イオン水に添加し、その結果、下記の反応により水酸化アルミニウムが形成された:
【0139】
3LiOH+Al(NO
3)
3→Al(OH)
3+3LiNO
3 (10)。
【0140】
別の容器で、最長6時間の浴内超音波処理により、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−HFP、Sigma−Aldrich)をアセトンに溶解し、5mLのアセトン中にポリマーが500mgの濃度としたが、このとき浴そのものは60℃の温度で維持した。アセトンの体積は、必要に応じておよび必要なときに、後続の溶媒の添加の間は5mLで維持した。アセトンにPVDF−HFPを溶解した後、溶液5mLを、DI水に分散させた水酸化リチウムおよび硝酸アルミニウムの反応生成物を含む電解質水溶液5mLに添加した。電解質水溶液へのPVDF−HFP溶液の添加は、重合反応を開始し、その結果、
図17の挿入図に示されるように自立型固体ポリマー電解質が形成された。
【0141】
特定の実施形態では、上記パラグラフで記述された方法によって調製された固体ポリマー電解質を、酸ベースの脱リチウム化の後にカソードの水酸化リチウムエッチングで処理された酸化マンガンを含むカソードと、実施例1で記述されたように処理されたアルミ箔を含むアノードとを含む、2032コイン型セルで試験をした。セパレータまたは液体電解質は使用せず、固体ポリマー電解質をアノードとカソードとの間に挟んだ。
【0142】
図17は、固体ポリマー電解質を有するバッテリの電圧プロファイルを示し、50μA/cm
2での放電の短い持続時間の後、20μA/cm
2での放電、および20μA/cm
2の電流密度での充電が続くことが示され、矢印で示される固体ポリマー電解質の写真の挿入図も示されている。
【0143】
(実施例6)
充放電サイクル
開示されたアルミニウムイオンバッテリを充放電するのに有用なシステムの実施形態を、
図10に示す。標準的な定電流(一定の電流)充電サイクルに加え、定電位、または定電位および定電流充電サイクルの組合せは、特により速い反応動態(速度能力)に関する性能に影響を及ぼすことが示された。定電位充電に関する電圧の範囲は、1.5Vから2Vの間に在ることが明らかにされ、一方、最適値は約1.8Vであることが明らかにされた。2Vよりも大きい電圧では、電流の急速な上昇によって確認される有意な電気分解が観察された。
【0144】
観察された速度能力の増大は、カソードからアノードに戻るアルミニウムをベースにしたイオンの輸送を助けるためのより強い起電力の存在に起因する可能性があり、そのことにより、電解質中の副反応を通したアルミニウムイオンの損失がほとんどまたは全く引き起こされないと考えられ、それによって定常電場が維持されてイオンの流れの方向が案内される。定電流、定電位、および定電流−定電位充電サイクルに加え、ある特定の実施形態ではセルが充電されるように定電圧掃引速度を適用することができる。ある特定の実施形態では、定電圧掃引速度のdV/dt値は0.01mV/秒から100mV/秒である。定電流充電および定電圧掃引速度充電は共に、充電サイクルの終了を確実にするために最終定電圧充電と併せて適用することができる。典型的には、ある特定の実施形態において、最終定電圧充電は、定電流充電サイクル中に印加された電流の1%から50%の範囲である所定の値よりも下に電流が降下するまで、細流充電が実現されるように維持される。
【0145】
ある特定の実施形態では、放電ステップは、高および低電流密度の定電流ステップの組合せにすることができ、セル化学によって、クーロン効率を最適化しかつ活性イオンの最大拡散とその電子交換反応における関与とを確実にすることが可能になる。放電プロセスは、アルミニウムイオンが酸化マンガン内を拡散する速度の関数であるので、そのような高および低電流の組合せは、カソード−電解質界面での局在化した電荷の蓄積を防止し、セルの効率を最適化する。
【0146】
理論に拘泥するものではないが、カソード−電解質界面の小さい領域は、比較的高い電流密度で電荷を蓄積し続け、イオンの流れが妨げられ、反応動態はより遅くなると考えられる。したがって、短期間の低電流密度放電によるそのような高電流引き込みに従う方法は、この局在化した電荷蓄積の消散を可能にし、表面を通りカソードの縦方向の深さに入るイオン拡散を助け、その結果、カソードの表面が解放されて、引き続きイオンがカソードのバルク内へと拡散される。より高い電流密度では、アルミニウムイオンは、カソードのバルク内に拡散するのに十分な時間を持たず、その結果、カソード−電解質界面で局在化した電荷の蓄積が生ずると考えられる。高い電流密度が、より低い電流密度によって瞬間的に置き換えられるとき、アルミニウムイオンはカソードのバルク内を拡散し始め、その結果、カソード−電解質界面での局在化した電荷の蓄積が低減される。
【0147】
低電流および高電流パルスの組合せを組み込む、そのような放電プロファイルを使用して生成された典型的な電圧プロファイルを、
図18に示す。
図18は、低電流および高電流パルスの組合せによって生成された放電プロファイルを示す。バッテリは、2032コイン型セル様式に組み立てられ、実施例1に記述されたようにLiOHで処理されたアルミ箔を含むアノード、酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含むカソード、0.5Mの硝酸アルミニウム(aq)電解質、および平均孔径が0.067μmである厚さ25μmのポリプロピレンセパレータを有していた。電流密度は、100A/g(低電流パルス)と500A/g(高電流パルス)との間で切り替えられ、この電流は、カソードの質量に対して正規化される。類似の手法を、
図10に例示されるものなどのシステムで使用して、バッテリの全体性能を改善することができる。
【0148】
本開示について例示的な実施形態を参照しながら記述してきたが、当業者なら、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよくかつその要素の代わりに均等物を用いてもよいことが理解されよう。さらに、本開示の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるように多くの修正を行ってもよい。したがって本開示は、本開示を実施するのに企図される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されないものとし、本開示は、添付される特許請求の範囲内に包含される全ての実施形態を含むことになる。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
アルミニウム、アルミニウム合金、またはアルミニウム化合物を含むアノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの直接接触を防止する電気絶縁材料を含む多孔質セパレータと、
アルミニウム塩の溶液を含む電解質と
を含み、電解質が前記アノードおよび前記カソードと電気接触している
バッテリ。
(項目2)
前記アルミニウム合金が、アルミニウムと、マンガン、マグネシウム、リチウム、ジルコニア、鉄、コバルト、タングステン、バナジウム、ニッケル、銅、ケイ素、クロム、チタン、スズ、および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目3)
前記アノードが、前記電解質と接触している前記アノードの表面の親水性を増大させるのに有効な処理を受けたアルミニウムである、項目1に記載のバッテリ。
(項目4)
前記処理が、前記アルミニウムの表面を、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物の水溶液と接触させることを含む、項目3に記載のバッテリ。
(項目5)
前記アルミニウム化合物が、アルミニウム遷移金属酸化物(AlxMyOz、式中、Mは、鉄、バナジウム、チタン、モリブデン、銅、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、クロム、コバルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属であり、x、y、およびzは端数を含む0から8の範囲である);アルミニウム遷移金属硫化物(AlxMySz、式中、Mは、鉄、バナジウム、チタン、モリブデン、銅、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、クロム、コバルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属であり、x、y、およびzは端数を含む0から8の範囲である);アルミニウムリチウムコバルト酸化物(AlLi3CoO2);水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4);水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4);フッ化アルミニウムカリウム(KAlF4);およびこれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載のバッテリ。
(項目6)
前記アルミニウム塩が、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、臭化アルミニウム六水和物、フッ化アルミニウム、フッ化アルミニウム三水和物、ヨウ化アルミニウム六水和物、過塩素酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1に記載のバッテリ。
(項目7)
前記電解質が、前記アルミニウム塩の水溶液である、項目6に記載のバッテリ。
(項目8)
前記電解質が、硝酸アルミニウムの水溶液である、項目6に記載のバッテリ。
(項目9)
前記電解質が、硝酸アルミニウムの0.05〜5M水溶液である、項目6に記載のバッテリ。
(項目10)
前記電解質が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物をさらに含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目11)
前記電解質が、約1:1から約1:10のモル比で硝酸アルミニウムおよび水酸化リチウムの水溶液を含む、項目10に記載のバッテリ。
(項目12)
前記電解質が、ポリテトラフルオロエチレン、アセトニトリルブタジエンスチレン、スチレンブタジエンゴム、酢酸ビニルエチル、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリメタクリル酸メチル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーをさらに含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目13)
前記電解質が、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるハロゲン化アルミニウムと、塩化1−エチルメチルイミダゾリウム、臭化1−エチルメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチルメチルイミダゾリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるハロゲン化1−エチルメチルイミダゾリウムとをさらに含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目14)
前記ハロゲン化アルミニウムおよび前記ハロゲン化1−エチルメチルイミダゾリウムが、1:1から5:1(重量:重量)の比で存在する、項目13に記載のバッテリ。
(項目15)
前記電解質が、水、エタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目16)
前記カソードが、リチウムマンガン酸化物、酸処理されたリチウムマンガン酸化物、リチウム金属マンガン酸化物(ここで、前記金属は、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロム、およびこれらの組合せからなる群から選択される)、酸処理されたリチウム金属マンガン酸化物、黒鉛金属複合体(ここで、前記金属は、ニッケル、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される電導性金属である)、黒鉛−黒鉛酸化物、二酸化マンガン、およびグラフェンからなる群から選択される材料を含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目17)
リチウムを含む前記カソードが、酸処理に供される、項目16に記載のバッテリ。
(項目18)
前記多孔質セパレータが、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、セラミック、ポリエステル、ゴム、ポリオレフィン、ガラスマット、ポリプロピレン、混合セルロースエステル、ナイロン、ガラスマイクロファイバー、ならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される材料を含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目19)
前記アノードがアルミニウム金属を含み、前記カソードが黒鉛−黒鉛酸化物を含み、前記電解質が硝酸アルミニウムを含む水溶液である、項目1に記載のバッテリ。
(項目20)
前記アノードがアルミニウム金属を含み、前記カソードが酸処理されたリチウムマンガン酸化物を含み、前記電解質が硝酸アルミニウムを含む水溶液である、項目1に記載のバッテリ。
(項目21)
前記アノードがアルミニウム金属を含み、前記カソードがリチウムマンガン酸化物を含み、前記アルミニウム塩が硝酸アルミニウムを含み、前記多孔質セパレータが、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、セラミック、ポリエステル、ゴム、ポリオレフィン、ガラスマット、ポリプロピレン、混合セルロースエステル、ナイロン、ガラスマイクロファイバー、ならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される材料を含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目22)
前記多孔質セパレータの平均孔径が、約0.067μmから約1.2μmである、項目1に記載のバッテリ。
(項目23)
アルミニウム、
アルミニウムと、マンガン、マグネシウム、リチウム、ジルコニア、鉄、コバルト、タングステン、バナジウム、ニッケル、銅、ケイ素、クロム、チタン、スズ、および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素とを含むアルミニウム合金、
アルミニウム遷移金属酸化物(AlxMyOz、式中、Mは、鉄、バナジウム、チタン、モリブデン、銅、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、クロム、コバルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属であり、x、y、およびzは端数を含む0から8の範囲である)、
アルミニウム遷移金属硫化物(AlxMySz、式中、Mは、鉄、バナジウム、チタン、モリブデン、銅、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、クロム、コバルト、およびこれらの混合物からなる群から選択される遷移金属であり、x、y、およびzは端数を含む0から8の範囲である)、
アルミニウムリチウムコバルト酸化物(AlLi3CoO2)、
水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、
水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4)、
フッ化アルミニウムカリウム(KAlF4)、またはこれらの混合物からなる群から選択されるアルミニウム化合物
を含むアノードと、
リチウムマンガン酸化物、酸処理されたリチウムマンガン酸化物、リチウム金属マンガン酸化物(ここで、前記金属は、ニッケル、コバルト、アルミニウム、クロム、およびこれらの組合せからなる群から選択される)、酸処理されたリチウム金属マンガン酸化物、黒鉛金属複合体(ここで、前記金属は、ニッケル、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される電導性金属である)、黒鉛−黒鉛酸化物、二酸化マンガン、およびグラフェンからなる群から選択される材料
を含むカソードと、
硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、臭化アルミニウム六水和物、フッ化アルミニウム、フッ化アルミニウム三水和物、ヨウ化アルミニウム六水和物、過塩素酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択されるアルミニウム塩の水溶液を含む電解質と
を含む、項目1に記載のバッテリ。
(項目24)
前記アノードと前記カソードとの直接接触を防止する電気絶縁材料を含む多孔質セパレータであって、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、セラミック、ポリエステル、ゴム、ポリオレフィン、ガラスマット、ポリプロピレン、混合セルロースエステル、ナイロン、ガラスマイクロファイバー、ならびにこれらの混合物および組合せからなる群から選択される材料を含む多孔質セパレータをさらに含む、項目23に記載のバッテリ。
(項目25)
前記バッテリが制御器に作動可能に接続され、前記制御器が、電力源におよび負荷に作動可能に接続されるよう適合されている、項目1から24のいずれか一項に記載のバッテリを含むシステム。
(項目26)
前記制御器が、前記電力源により前記バッテリの充電を制御するのに有効である、項目25に記載のシステム。
(項目27)
前記制御器が、前記負荷により前記バッテリの放電を制御するのに有効である、項目25に記載のシステム。
(項目28)
前記制御器が、高および低電流密度の定電流ステップの組合せである放電パターンを提供するよう適合されている、項目25に記載のシステム。
(項目29)
前記電力源がソーラーパネルまたは風力発電機である、項目25に記載のシステム。
(項目30)
前記負荷が、局所電気負荷または配電網である、項目25に記載のシステム。