(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870003
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】集積回路のためのパッケージングにおける又は関連する改善
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
G01N27/414 301W
G01N27/414 301V
G01N27/414 301R
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-560621(P2018-560621)
(86)(22)【出願日】2017年5月15日
(65)【公表番号】特表2019-516992(P2019-516992A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】GB2017051352
(87)【国際公開番号】WO2017199009
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2019年12月20日
(31)【優先権主張番号】1608758.7
(32)【優先日】2016年5月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516311685
【氏名又は名称】ディーエヌエーイー グループ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】アンサリ,ザヒド
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0341734(US,A1)
【文献】
特開昭60−056247(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/057289(WO,A1)
【文献】
特開平05−010920(JP,A)
【文献】
特開昭60−073352(JP,A)
【文献】
特開昭56−076042(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0018722(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0078832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置であって、
複数のISFETを備える集積回路(IC)と、
前記複数のISFETが覆われないままになるようにして前記ICを部分的に覆っているオーバーモールド層と、
前記IC全体に亘って提供されているフィルムと、
を備え、
前記フィルムは前記ISFETの各々のための保護層及び/又は感知層として機能し、
前記フィルムはオーバーモールド層を包み込むバリア層として機能し、
前記フィルムは2層又はそれ以上の副層として提供されている、
分析装置。
【請求項2】
前記フィルムは保護層として機能する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記フィルムは感知層として機能する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記フィルムは保護層と感知層の両方として機能する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記フィルムはPCRとpH感知の両方に適合する材料から形成されている、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記オーバーモールド層は熱硬化性プラスチック材料から形成されている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記フィルムは厚さ10nm未満である、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記フィルムは、Si3N4、Ta2O5、又はSiO2である、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記感知層はpH感知層である、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路(IC:integrated circuit)のためのパッケージングにおける又は関連する改善に関するものであり、特に使用時に流体へ暴露させることを目的としているICのためのパッケージングに関する。
【背景技術】
【0002】
センサICの表面の一部の、大気か又は流体への暴露を可能にさせる多数の標準的なICパッケージ製造プロセスが利用可能である。大量製造のための最も費用効果の高い選択肢は、ICを熱硬化性プラスチック材料でオーバーモールドすることである。これらの熱硬化性材料は、IC製品の製造可能性と信頼性を確実にするために制約事項の複雑な組を有していて、可燃性の様な安全要件や特定有害物質の使用制限(RoHS:Restriction of Hazardous Substances)についての工業標準の様な他の法的要件を遵守している。これらのモールドコンパウンドは、有機材料と無機材料の組合せを含む複合的な有標組成物(proprietary composition)を有している。非標準モールドコンパウンドの使用は、費用への負の影響を有し、潜在的製造パートナー数を制限する。
【0003】
半導体工業のモールドコンパウンドの複合的化学組成は、制御の乏しい予測不可能な表面特性をもたらす結果になる。また、それらの材料は流体への暴露に耐えるように設計されておらず、それらは流体や熱へ暴露されたときに化学物質を浸出させる。この様に、化学物質がモールドコンパウンドの表面から浸出し、ガス状であろうと液体であろうと試薬と相互作用し、反応の結果に影響を及ぼし得るので、大多数のモールドコンパウンドは、化学反応が起こるチャンバの壁としての使用に不向きである。このことは、化学的センサがガス状又は液体の試薬へ暴露されることになる何れの反応にも当てはまり、特にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に当てはまる。
【発明の概要】
【0004】
本発明はこの技術背景に鑑みて発案された。
【0005】
本発明によれば、分析装置(assay device)であって、複数のISFETを備える集積回路(IC)と、複数のISFETが覆われないままになるようにしてICを部分的に覆っているオーバーモールド層と、実質的にIC全体に亘って提供されているフィルムと、を備え、フィルムはISFETの各々のための
保護(passivation)層及び/又は感知層として機能し、フィルムはオーバーモールド層を包み込むバリア層として機能する、分析装置が提供されている。
【0006】
実質的にIC全体に亘る単一層の提供は、単一層がオーバーモールド層を包み込むので、生体適合性についての懸念無しに分析装置が工業標準のオーバーモールド製品を活用することを可能にさせる。
【0007】
フィルムは、
保護層、感知層、又は
保護層と感知層の両方、として機能し得る。フィルムが
保護層として機能する場合、フィルムは低イオン輸送特性を有する任意の誘電体から製作されていてもよい。その様な誘電体材料は電流を伝導することはなく、それらは防湿層としても機能する。アルミナ及び二酸化ハフニウムは、良好な
保護特性を提供する誘電体材料の例である。
【0008】
フィルムは、PCR及びpH感知の両方に適合する材料から形成されていてもよい。P
CRとpH感知の両方に適合する材料からフィルムを形成するということは、ISFET上に形成されるチャンバが、何らの更なる層の追加も無しに、PCR及び/又はpH感知に使用できるようになることを意味する。
【0009】
オーバーモールド層は、熱硬化性プラスチック材料から形成されていてもよい。熱硬化性プラスチック材料はIC製造の観点で整備が行き届いており、工業標準の熱硬化性プラスチック材料を用いて作業できるということは費用と製造可能性の点でかなり有利である。
【0010】
フィルムは厚さ10nm未満であってもよい。フィルムの厚さは、オーバーモールドコンパウンドからPCR及び/又はpH感知が起こる流体の中へ化学物質が浸出できなくなるようオーバーモールド層が封止されることを確実にするように選択される。フィルムは、更に、ISFET上に形成されるチャンバの使用可能容量を損なわないように十分に薄くなくてはならない。
【0011】
フィルムは、Si
3N
4、Ta
2O
5、Al
2O
3、又はSiO
2であってもよい。Si
3N
4、Ta
2O
5、及びアルミナは、良好な感知を提供すると共に良好な
保護も提供する。これらのコンパウンドの何れか1つから形成されたフィルムは感知と
保護の両方を提供する。
【0012】
フィルムは、2層又はそれ以上の副層として提供されていてもよい。実質的にIC全体に亘る1層より多い層の提供は、特定の特性を最適化するために異なる副層を選択できるようにする。例えば、第1の副層を10nmのAl
2O
3の層とし、第2の副層を1nmのSi
3N
4又はSiO
2の層とすることもできるだろう。
【0013】
プライマー固定化及びpH感知に適合していて、尚且つ或る程度の
保護を提供するということから、二酸化ケイ素が有利である。したがって、そうでなければISFET上に設けられていたであろう標準的感知層の代わりに二酸化ケイ素フィルムが提供されてもよいだろう。但し、二酸化ケイ素は理想的な
保護層ではないことから、二酸化ケイ素を感知層として備えるフィルムは、第2の副層を有し、例えば、厚さ20nm−50nmのTa
2O
5の層が薄い2nm−5nmのSiO
2の層と組み合わされてもよい。
【0014】
感知層は、以上にSiO
2フィルムに関して例示されているpH感知層であってもよい。本発明の分析装置は、フィルムがデバイスの下層構造のトポロジーに従う場合に、共形モールディング(conformal moulding)を提供する何れの技法によって製造されてもよい。プラズマ堆積法、原子層堆積法、パルスレーザー堆積法は、どれもみな活用できる技法である。また、要求される均一な厚さの高品質フィルムを提供することのできる何れかの他の技法も使用できるであろう。
【0015】
PCRとpH感知の両方に適合する何れかの材料の極めて薄い層の堆積によってチャンバをPCRに適合化させることができ得る、ということが提案される。よって、例えば、Si
3N
4又はTa
2O
5のナノメートルスケールの層が、モールドコンパウンドの被覆を信頼度高く確実にするはずの何れかのプロセスを使用して堆積されてもよいだろう。ICが既にISFETパッド上に
保護部を有しているなら、この感知層は
保護部の上に堆積されてもよいだろう。しかしながら、堆積される層が
保護と感知のどちらの要件も満たす場合、それを、ポストCMOSウェーハ製造プロセスの一環として現在堆積されている感知層の代わりに使用できる。そうすればウェーハは、ポストCMOS加工の必要性が一切なく、CMOS製作から組み立てへ進むことができるだろう。組み立て後、パッケージ化されたICは、
保護層と感知層の両方として機能することになるはずの材料で被覆されることになる。堆積プロセスがICパッケージの底部電気接点のはんだ付
け性を損なわないことを確実にするために配慮が払われなくてはならないが、この要件が満たされることを確実にするやり方は多数ある(例えば、マスキング、選択的堆積法、及びエッチング)。
【0016】
2層又はそれ以上の層の組合せによって、性能と信頼性を更に最適化することができるだろう。例えば、1nmのSi
3N
4層又はSiO
2層が10nmのAl
2O
3層の上に堆積されてもよいだろう。これは、PCR反応のAl
2O
3への暴露を防止するとともにプライマー固定化及びpH感知に適合する最上層を提供しながら、Al
2O
3のより良好な
保護を提供するだろう。最上層が主に固定化のために使用されていて下層がPCR化学に適合している場合、最上層の共形の必要性は軽減され、最上層についてより低コストの堆積プロセスが利用可能であるなら、その低費用プロセスを使用することもできるであろう。
【0017】
これより発明を、単に一例として、添付図面を参照しながら更により具体的に説明してゆく。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるデバイスの概略断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は積層構造であるデバイス10を示している。これらの層はパッケージ基板12上に提供されていて、パッケージ基板12を通して電気接続部14が提供されている。基板12上にはシリコンIC層16が提供されている。シリコンIC層16上には、複数のISFETパッド18が、ISFETパッド18間のCMOS
保護部と共に提供されている。基板12の、ISFET18を提供されていない部分を覆って、モールドコンパウンド17が提供されている。ISFET18上のモールドコンパウンド17の開口部が流体のためのウェル19を効果的に提供している。
【0020】
保護と感知を提供するフィルム20が、実質的にデバイス10全体を覆って提供されている。フィルム20は、既に敷かれている層のトポロジーに従い、ウェル19のための、流体がモールドコンパウンド17に接触しないよう防護する表面被覆を提供している。フィルム20は更にISFETパッド18を覆っていて、そこではフィルム20は感知を提供する。
【0021】
更に当業者には理解されるように、発明は一例として幾つかの実施形態に関連付けて説明されているが、発明は開示されている実施形態に限定されるものではなく、付随の特許請求の範囲に定義されている発明の範囲から逸脱することなく代わりの実施形態が構築される余地がある。