(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタが、第1の範囲の波長の光を透過する第1フィルタと、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を透過する第2フィルタと、前記第1及び第2の範囲とは異なる第3の範囲の波長の光を透過する第3フィルタとを含む、
請求項4に記載の被検物質検出方法。
前記光検出器は、microPMT、PiNフォトダイオード、APD、MPCC、EMCCD、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、或いは、NMOSイメージセンサである、
請求項10に記載の被検物質検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
<1>構成
第1実施形態に係る被検物質検出システムの構成について説明する。被検物質検出システムは、被検物質検出装置1と、信号変換装置2と、画像処理装置3と、を備える。
【0012】
被検物質検出装置1は、光源11と、光拡散部材12と、被検物質保持部13と、光検出器6と、を備える。光源11と、光拡散部材12と、被検物質保持部13と、光検出器6は、それぞれこの順で積層された状態で配置されている。被検物質保持部13における光源11側には、光拡散部材12が配置されている。被検物質検出装置1は、光源11および光拡散部材12を含む第1ユニット1aと、被検物質保持部13および光検出器6を含む第2ユニット1bとから構成されている。この光検出器6は、後述の受光部16を含む。
【0013】
光源11は、第1ピーク波長の光を出射する。第1実施形態の第1ピーク波長は、270nmである。光源11としては、LED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子が用いられる。光源11が、電球等に比べて消費電力が比較的低いLED等の半導体発光素子から構成されているので、光源11として電球等を用いた構成に比べて省電力化を図ることができる。この光源11から光が照射される際、領域S22には被検物質保持部13における被検物質と蛍光物質を含む複合体が存在している。光源11から光が領域S22に照射されると、当該複合体に含まれる蛍光物質が光励起される。蛍光物質は、第1ピーク波長の光により励起されると、ピーク波長が第1ピーク波長とは異なる第2ピーク波長の光を発する蛍光物質である。第1実施形態では、第2ピーク波長は705nmである。蛍光物質としては、量子ドットが用いられる。なお、量子ドットについては、後出する<3>において詳細に説明する。
【0014】
光拡散部材12は、光源11から入力される光を拡散する機能を有する。この光拡散部材12としては、例えば透明な基材中に基材とは屈折率が異なる透明粒子が分散されたもの、又は透明な基材の表面がブラスト加工されたものを使用すればよい。
図2中の矢印L1で示すように、光源11から光拡散部材12の光源11に対向する一面側に入射する光は、光拡散部材12の厚さ方向に直交する方向に拡散し、
図2中の矢印L2で示すように、光拡散部材12の光源11側とは反対側の他面側から出射する。
【0015】
図2に示すように、被検物質保持部13は、基材13aと、基材13aにおける光拡散部材12に対向する面側に固定化された捕捉物質21とから構成される。この被検物質保持部13は、捕捉物質21が被検物質を捕捉した状態で被検物質を保持する。
【0016】
基材13aは、透明材料から板状に形成されており、後述の光検出器6の光電変換素子161を覆うように配置されている。
【0017】
捕捉物質21は、基材13aにおける光拡散部材12に対向する面側に固定化されている。この捕捉物質21の基材13aへの固定化は、基材13aに結合する結合基等を介して行なうことができる。この結合基としては、例えば、チオール基、ヒドロキシル基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ基等が挙げられる。基材13a上への捕捉物質21の固定化は、物理吸着法やイオン結合法等により行なわれていてもよい。基材13a上における捕捉物質21の固定量は、特に限定されるものではなく、用途及び目的に応じて設定することができる。
【0018】
捕捉物質21は、被検物質の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、被検物質が核酸である場合、捕捉物質21として、核酸にハイブリダイズする核酸プローブや核酸に対する抗体、核酸と結合するタンパク質等を用いることができる。被検物質がタンパク質またはペプチドである場合、捕捉物質21として、タンパク質やペプチドに対する抗体等を用いることができる。このように、被検物質保持部13は、捕捉物質21に対応する特定の有機物質を選択的に保持することができる。したがって、被検物質とともに他の夾雑物質が混合した試料の中から、被検物質だけを取り出すことが可能となる。
【0019】
捕捉物質21による被検物質の捕捉は、例えば、捕捉物質21と被検物質とが結合する条件下で行なうことができる。捕捉物質21と被検物質とが結合する条件は、被検物質の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、被検物質が核酸であり、捕捉物質21が核酸にハイブリダイズする核酸プローブである場合、被検物質の捕捉は、ハイブリダイゼーション用緩衝液存在下において行なうことができる。また。被検物質が核酸、タンパク質またはペプチドであり、捕捉物質21が核酸に対する抗体やタンパク質に対する抗体またはペプチドに対する抗体である場合、被検物質の捕捉は、リン酸緩衝生理的食塩水、ヘペス(HEPES)緩衝液、ピペス(PIPES)緩衝液、トリス(Tris)緩衝液等の抗原抗体反応を行なうのに適した溶液中で行なうことができる。更に、被検物質が、リガンドであり、捕捉物質21がリガンドに対するレセプタである場合や、被検物質がレセプタであり、捕捉物質21がレセプタに対するリガンドである場合、被検物質の捕捉は、リガンドとレセプタとの結合に適した溶液中で行なうことができる。
【0020】
光検出器6は、主として、受光部16と、支持基板162と、受光部16と支持基板162とを電気的に接続するためのワイヤ164と、支持基板162と受光部16との間に設けられた樹脂部162aと、を備える。
【0021】
受光部16は、第1保護層14と第2保護層15と光電変換素子161と、を備える。第1保護層14は、第2保護層15の上に積層され、第2保護層15は、光電変換素子161の上に積層されている。ここで、第1保護層14と第2保護層15と光電変換素子161とは、一体的に形成されている。
【0022】
このような光検出器6は、
図3に示す感度特性を有する。第1実施形態では、光検出器6は、受光部16にシリコン基板を用いた光電変換素子が用いられたセンサであり、より具体的には、シリコン基板を用いたフォトダイオードが用いられたCMOSイメージセンサである。このCMOSイメージセンサは、シリコン基板にフォトダイオードやMOSFET、配線等が周知のイオン注入技術や成膜技術等を利用して作り込まれたものである。
【0023】
CMOSイメージセンサは、フォトダイオードと当該フォトダイオードに接続されたMOSFETとからなる複数のセル(図示せず)が、格子状に配列された構成を有する。このように、CMOSイメージセンサのような固体撮像素子を用いることで、光検出器6を構成する複数のセルの集積化を図ることができるので、その分、光検出器で得られる撮像画像の解像度の向上を図ることができ、ひいては、被検物質の検出感度の向上を図ることができる。CMOSイメージセンサは、PMT(Photo Multiplier Tube)等に比べて消費電力が比較的低いので、光検出器としてPMT等を用いた構成に比べて省電力化を図ることができる。
【0024】
第1実施形態に係る光検出器6の感度特性は
図3に示すとおりである。
図3中、ηは光検出器6の量子効率、ηmaxは量子効率の最大値、ηthは量子効率5%を示す。最大量子効率ηmaxは450nm以上900nm以下の波長帯域に含まれている。光検出器6は、第1ピーク波長における量子効率が約0%である一方、第2ピーク波長における量子効率が約40%であり、第2ピーク波長における量子効率は第1ピーク波長における量子効率の2倍をはるかに上回っている。
【0025】
第1保護層14および第2保護層15は、光電変換素子161を保護する層である。第1保護層14は、例えば窒化シリコン(SiN)膜から構成され、第2保護層15は、例えば酸化シリコン(SiO2)膜から構成される。この第2保護層15は、第1保護層14を補強する役割を果たす。第1保護層14における被検物質保持部13側には、複数のマイクロレンズから構成されるマイクロレンズアレイが設けられている。
【0026】
光電変換素子161は、例えばシリコン基板を用いたフォトダイオードである。光電変換素子161の各セルで受光された光は、フォトダイオードにより検出信号に変換されて支持基板162側へ送られる。第1保護層14には、この光電変換素子161を構成する複数のセルそれぞれに対応する位置にマイクロレンズが1つずつ設けられている。光電変換素子161の周部には、各セルからの信号を外部に取り出すための端子が設けられている。
【0027】
支持基板162は、受光部16を支持する。支持基板162は、シリコン基板から形成され、中央部に凹部が形成されるとともに、凹部の外周部に信号取り出し用の端子(図示せず)が複数設けられている。支持基板162の凹部の内側には、受光部16が配設されている。
【0028】
ワイヤ164は、光電変換素子161の周部に設けられた端子と、支持基板162に設けられた端子とを接続している。このワイヤ164は、樹脂部162a内に埋設されている。
【0029】
ところで、第1ユニット1aは、他に、例えば光源11を移動可能に支持する支持部材(図示せず)と、光源11から照射される光の強度や向き、位置等を制御する光源制御部(図示せず)とを備えている。ここで、支持部材は、光源11の向きや位置を変更するための光源移動機構を有している。
【0030】
図4は、第1実施形態に係る被検物質検出装置1の第2ユニット1bの概略断面図である。
図4に示すように、第2ユニット1bは、被検物質保持部13と光検出器6とを収納するハウジング17を備える。ハウジング17には、光検出器6の受光部16に光を取り込むための窓部17aと、受光部16に接続された信号線をハウジング17の外部に導出させるための信号線導出孔17bとが設けられている。ハウジング17の窓部17aは、被検物質保持部13により覆われている。ハウジング17の信号線導出孔17bの内面と信号線の外面との間には、水密性を保つようにブッシング18が設けられている。
【0031】
信号変換装置2は、光電変換素子161から取得した信号を画像情報に変換して画像処理装置3へ出力する。この信号変換装置2は、例えば光電変換素子161から取得したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器を含んで構成されている。
【0032】
画像処理装置3は、信号変換装置2から入力される画像情報に基づいて、被検物質保持部13上の画像を生成し、生成した画像を表示部3aに表示する。ここで、表示部3aは、例えばディスプレイ等から構成されている。
【0033】
画像処理装置3は、信号変換装置2から入力される画像情報に基づいて、光検出器6で検出される光の光量を算出することができる。画像処理装置3は、光検出器6で検出可能な光の光量と蛍光物質の量との関係を示す検量データを保持している。画像処理装置3は、この検量データに基づき、蛍光物質の量を算出するとともに、算出した蛍光物質の量から検物質の量を算出する機能を有する。
【0034】
この画像処理装置3は、CPUと、ROM、RAM等のメモリと、を備えるコンピュータを含んで構成されている。CPUが、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、画像処理装置3の各種機能が実現されている。
【0035】
<2>被検物質の検出方法
次に、第1実施形態に係る被検物質検出装置1を用いた被検物質検出方法について説明する。
図5および
図6(a−1)〜(a−3)は、第1実施形態に係る被検物質検出方法の処理手順を説明するための模式図である。
【0036】
まず、
図5(a)に示すように、例えばディスペンサD1を使用して、被検物質が分散された試料S11を、被検物質保持部13上に滴下する。試料S11は、例えば、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む液体中に被検物質が分散したものである。この工程により、被検物質保持部13には、捕捉物質により被検物質が捕捉されている領域S21が形成される。
【0037】
このとき、
図6(a−1)や(a−2)に示すように、試料S11中に分散している被検物質31が、被検物質保持部13上に設けられた捕捉物質21によって捕捉される。例えば、被検物質31がタンパク質から構成され、捕捉物質21として被検物質31に対する抗体を用いた場合、捕捉物質21は、タンパク質から構成される被検物質31を捕捉する。このとき、捕捉物質21は、液体試料中の被検物質31を選択的に捕捉し、被検物質31以外の他の物質(夾雑物質)を捕捉しない。
【0038】
次に、
図5(b)に示すように、Tris Buffer Saline with Tween 20、又はPhosphate buffered saline with Tween 20等の洗浄液W1を用いて、被検物質保持部13から試料S11を除去する。このとき、ユーザは、例えば被検物質検出装置1の第2ユニット1bだけを被検物質検出装置1から取り外して洗浄すればよい。
【0039】
これにより、被検物質保持部13における領域S21に存在する被検物質31のみが残る。なお、以下の説明においては、「Tris Buffer Saline with Tween 20」のことを「TBS-T」又は「TBS」ということがある。
【0040】
続いて、
図5(c)に示すように、例えばディスペンサD2を使用して、蛍光物質である量子ドットを保持しており、捕捉物質21に捕捉された被検物質31に結合する結合物質が分散された試薬S12を、被検物質保持部13における領域S21に滴下する。この工程により、被検物質保持部13には、捕捉物質21と被検物質31と量子ドットとを含む複合体が存在する領域S22が形成される。
図6(a−3)に示すように、領域S22には、捕捉物質21と被検物質31と量子ドットを保持した結合物質41とを含む複合体が形成されている。試薬S12は、例えば、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む液体中に量子ドットを保持した抗体が分散したものである。このハイブリタイゼーション用緩衝液は、例えば試料S11に含まれるものと同じものを採用すればよい。
【0041】
その後、
図5(d)に示すように、Tris Buffer Saline with Tween 20、又はPhosphate buffered saline with Tween 20等の洗浄液W2を用いて、被検物質保持部13から試薬S12を除去する。このとき、ユーザは、例えば被検物質検出装置1の第2ユニット1bだけを被検物質検出装置1から取り外して洗浄すればよい。
【0042】
この工程により、被検物質保持部13から夾雑物質が除去され、被検物質保持部13における領域S22に存在する、捕捉物質21と被検物質31と量子ドットを保持した結合物質41とを含む複合体のみが残る。
【0043】
その後、
図5(e)に示すように、光源11から光L2を、被検物質保持部13における領域S22に照射することにより、領域S22に存在する複合体に含まれる量子ドットは蛍光を発する。この量子ドットから発せられる光K1は、光検出器6の光電変換素子161で受光される。
【0044】
光検出器6は、光電変換素子161が量子ドットから発せられる光K1を受光すると、当該光K1に対応する検出信号を信号変換装置2に入力する。この工程により、信号変換装置2は、光検出器6から取得した検出信号を画像情報に変換して画像処理装置3へ出力する。画像処理装置3は、画像情報に基づいて画像を生成し表示部3aに表示する。
【0045】
<3>量子ドットについて
次に、第1実施形態に係る量子ドットについて詳細に説明する。
【0046】
図6(b−1)は、第1実施形態に係る被検物質検出方法で用いられる量子ドットの概略構成図であり、
図6(b−2)は、
図6(b−1)におけるコア411およびシェル412部分のエネルギバンド図である。
【0047】
図6(b−1)に示すように、量子ドット410は、コア411と、コア411を被覆するシェル412と、シェル412を被覆する有機層413と、有機層413に結合している修飾物質414と、から構成されている。
【0048】
コア411は、第1半導体から構成されている。
図6(b−2)に示すように、シェル412は、第1半導体に比べてバンドギャップが広い第2半導体から構成されている。この第1半導体と第2半導体との組み合わせとしては、例えばInP/ZnS、CuInS/ZnS、InP/ZnS、CdSe/ZnS等が挙げられる。
【0049】
量子ドット410としては、コア411とシェル412とが同じ材料から構成されているものであってもよい。この場合、コア411およびシェル412を構成する第1、第2半導体としては、例えばCdTe、CdSe、CdS等が挙げられる。
【0050】
有機層413は、TOPO(トリオクチルフォスフィンオキシド)やHDA(ヘキサデシルアミン)等から構成されている。
【0051】
修飾物質414は、例えばグルタチオン等のトリペプチドから構成されている。なお、修飾物質414としては、トリペプチドに限定されるものではなく、例えば、合成化合物であるチオールやポリエチレンイミン、天然物由来のペプチド、糖鎖、リン脂質等から構成されていてもよい。
【0052】
図7は、量子ドット410の、吸収スペクトルと蛍光スペクトルとを示す図である。ここでは、吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルは、平均粒径が互いに異なる7種類の量子ドットについて測定した結果を示している。測定された量子ドット410は、コア411を構成する第1半導体がCdSeであり、シェル412を構成する第2半導体がZnSである。なお、
図7における、吸収スペクトル(j−2)(j=1〜7)および蛍光スペクトル(k−1)(k=1〜7)は、番号j,kが大きいものほど平均粒径が小さいものに対応する。
【0053】
図7に示すように、量子ドット410の吸収スペクトル(j−2)(j=1〜7)に対して、蛍光スペクトル(k−1)(k=1〜7)は長波長側にシフト(ストークスシフト)している。量子ドット410の蛍光スペクトル(k−1)(k=1〜7)は、量子ドット410のコア411の平均粒径が小さくなるほど短波長側にシフトしている。
【0054】
このように、蛍光物質として量子ドット410を採用すれば、量子ドット410の平均粒径を変化させることにより、量子ドット410から放射される光の波長帯域を変更することができる。したがって、例えば光検出器6の感度特性に応じて量子ドット410の平均粒径を適宜設定することにより、被検物質の検出感度の向上を図ることができる。この観点から、量子ドットの平均粒径は、10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
【0055】
量子ドット410は、例えば、液相で行う化学合成法を利用して作製することができる。具体的には、コア411およびシェル412の表面がTOPOやHDA等の有機層で被覆された粒子(以下、「表面修飾前量子ドット」と称する)を、配位性有機溶媒中で化学合成することにより作製する。なお、量子ドットは、表面修飾前量子ドットの表面の有機層を、両親媒性のチオール化合物等で置換する方法(配位子置換法)により作製することもできる。量子ドットは、他に、表面修飾前量子ドットの表面の有機層を両親媒性ポリマで被覆する(カプセル化法)ことにより、作製することもできる。
【0056】
以上説明したように、第1実施形態に係る被検物質検出方法において、190nm以上350nm以下の第1ピーク波長の光を蛍光物質に照射すると、蛍光物質は450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する。蛍光物質から発せられる第2ピーク波長の光は、第2ピーク波長における量子効率が、第1ピーク波長における量子効率の2倍以上である光検出器6により検出される。これにより、光検出器は第2ピーク波長の光より第1ピーク波長の光を検出しにくくなり、第1ピーク波長の光を検出することによるバックグラウンドレベルが低くなるので、その分、微弱な第2ピーク波長の光を検出することが可能となる。つまり、蛍光の検出信号のS/N比が向上する。そのため、高い検出感度で、被検物質を検出することができる。
【0057】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る被検物質検出方法は、第1実施形態に係る被検物質検出装置と同様の被検物質検出装置を使用する。第1実施形態では、捕捉物質21に捕捉された被検物質31に結合する結合物質として、量子ドットを保持した結合物質を用い、量子ドットから発せられる第2ピーク波長の光を検出することにより、被検物質31を検出したが、第2実施形態に係る被検物質検出方法は、第1実施形態と異なり、捕捉物質21に捕捉された被検物質31に結合する結合物質として、酵素標識された結合物質を用い、酵素と基質との反応により生じる蛍光物質から発せられる第2ピーク波長の光を検出することにより、被検物質31を検出する。ここでは、被検物質検出装置の構成についての説明は省略する。被検物質検出方法のみについて説明する。
【0058】
図8および
図9は、第2実施形態に係る被検物質検出方法の処理手順を説明するための模式図である。
まず、第1実施形態で説明した方法と同様の方法により、被検物質保持部13に、捕捉物質により被検物質が捕捉されている領域S21(
図5(b)参照)を形成する。ここにおいて、
図6(a−2)に示すように、試料S11中に分散している被検物質31が、被検物質保持部13上に設けられた捕捉物質21によって捕捉される。
【0059】
次に、
図8(a)に示すように、例えばディスペンサD21を使用して、酵素標識された結合物質241が分散された試薬S212を、被検物質保持部13における領域S21に滴下する。すると、被検物質保持部13には、捕捉物質21と被検物質31と酵素標識された結合物質241とを含む複合体が存在する領域S23が形成される。ここで、試薬S212は、例えば、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む液体中に酵素標識された抗体が分散したものである。酵素(
図9の2411)としては、例えばペルオキシターゼやアルカリフォスターゼを採用すればよい。ハイブリタイゼーション用緩衝液は、例えば第1実施形態で説明した試料S11に含まれるものと同じものを採用すればよい。
【0060】
図9(a)および(b)に示すように、試薬S212中に分散している酵素標識された結合物質241は、領域S23に存在する捕捉物質21に捕捉された被検物質31に結合する。これにより、捕捉物質21と被検物質31と酵素標識された結合物質241とを含む複合体が形成される。
【0061】
次に、
図8(b)に示すように、Tris Buffer Saline with Tween 20、又はPhosphate buffered saline with Tween 20等の洗浄液W22を用いて、被検物質保持部13から試薬S212を除去する。これにより、被検物質保持部13における領域S23に存在する複合体のみが残る。このとき、被検物質検出装置1から第2ユニット1bを取り外して、第2ユニット1bを洗浄することができる。
【0062】
続いて、
図8(c)に示すように、例えばディスペンサD22を使用して、蛍光基質が分散された試薬S213を、被検物質保持部13における領域S23に滴下する。この試薬S213は、例えば、ハイブリダイゼーション用緩衝液を含む液体中に蛍光基質が分散したものである。
【0063】
蛍光基質としては、例えばペルオキシターゼと反応して蛍光物質であるレゾルフィンを生成するペルオキシターゼ用蛍光基質や、アルカリフォスターゼと反応して蛍光物質であるBBT−アニオンを生成するアルカリフォスターゼ用蛍光基質を採用すればよい。なお、ペルオキシターゼ用蛍光基質から生成されるレゾルフィンは、例えば有機系色素に比べて強い蛍光を発する蛍光物質である。アルカリフォスターゼ用蛍光基質から生成されるBBT−アニオンは、例えば有機系色素に比べて大きなストークスシフトと広い蛍光スペクトルを持つ蛍光物質である。このハイブリタイゼーション用緩衝液は、例えば試薬S212に含まれるものと同じものを採用すればよい。
【0064】
上記工程により、蛍光基質242と、領域S23上に存在する複合体の酵素とが反応して生成された蛍光物質243が、試薬S213中に分散される。このとき、被検物質保持部13には、蛍光基質242と酵素との反応により生成された蛍光物質243が存在する領域S24が形成される。
【0065】
図9(c)に示すように、蛍光基質242は、領域S23上に存在する複合体の酵素と反応して、蛍光物質243を生成する。例えば、酵素がペルオキシターゼの場合、酵素とペルオキシターゼ用蛍光基質とが反応して、蛍光物質243であるレゾルフィンが生成される。
【0066】
その後、
図8(d)に示すように、光源11から光L2を、蛍光基質242と酵素との反応により生成された蛍光物質243が存在する領域S24に照射することにより、試薬S213中に分散した蛍光物質243を蛍光させる。この蛍光物質243から発せられる光K2は、受光部16の光電変換素子161で受光される。
【0067】
以上説明したように、第2実施形態に係る被検物質検出方法において、190nm以上350nm以下の第1ピーク波長の光を蛍光物質に照射すると、蛍光物質は450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する。蛍光物質から発せられる第2ピーク波長の光は、第2ピーク波長における量子効率が、第1ピーク波長における量子効率の2倍以上である光検出器6により検出される。これにより、光検出器6は第2ピーク波長の光より第1ピーク波長の光を検出しにくくなり、第1ピーク波長の光を検出することによるバックグラウンドレベルが低くなるので、その分、微弱な第2ピーク波長の光を検出することが可能となる。つまり、蛍光の検出信号のS/N比が向上する。そのため、高い検出感度で、被検物質を検出することができる。
【0068】
第1及び第2実施形態に係る被検物質検出方法では、光検出器6は、第1ピーク波長の光が照射される際、第1ピーク波長の光が照射される方向に、蛍光物質、光検出器6の順となるよう配置されている。このように、光源11から出射される第1ピーク波長の光と、被検物質保持部13に存在する複合体の蛍光物質から発せられる第2ピーク波長の光との両方が光検出器6に入射しやすい構成であっても、光検出器6は第2ピーク波長における量子効率が、第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であるので、第2ピーク波長の光より第1ピーク波長の光を検出しにくい。そのため、第1ピーク波長の光を検出することによるバックグラウンドレベルが低くなるので、その分、微弱な第2ピーク波長の光を検出することができる。
【0069】
なお、第1及び第2実施形態の光検出器106であるモノクロCMOSイメージセンサは、カラーフィルタによって入射光の一部が吸収されないため、同じ光電変換素子を用いるカラーCMOSイメージセンサに比べて量子効率は高くなる。
【0070】
<第3実施形態>
第3実施形態は、
図10に示すように、光検出器106の構成が第1実施形態とは異なっている。光検出器106以外の被検物質検出装置の構成、及び被検物質検出方法は、第1及び第2実施形態と同様とすることができる。
【0071】
第3実施形態の光検出器106は、受光部116と、カラーフィルタ119と、マイクロレンズ120と、カバー部材121とを備えたカラーCMOSイメージセンサである。受光部116は、光電変換素子161aと、光電変換素子161a上に設けられた第1保護層114、及び第2保護層115とを備えている。光電変換素子161aと第1保護層114と第2保護層115とは、この順で下から積層されている。光電変換素子161aは、第1実施形態と同様にフォトダイオードを用いることができる。第1保護層114も、第1実施形態と同様に窒化シリコン膜によって構成することができる。第2保護層115も、第1実施形態と同様に酸化シリコン膜によって構成することができる。
【0072】
カラーフィルタ119は、受光部116上に複数設けられている。複数のカラーフィルタ119は、それぞれ特定の波長域の光を選択的に透過し、その他の波長域の光を吸収する吸収フィルタにより構成されている。具体的に、複数のカラーフィルタ119は、それぞれ赤色、緑色、及び青色の波長域の光を透過する。したがって、光検出器106は、カラーフィルタ119によって複数色にわたる波長域の光、すなわち複数色の可視光を識別して検出することができる。
【0073】
光検出器106は、カラーフィルタ119によって620nm以上750nm未満の範囲にピーク波長のある赤色の分光感度を有する第1の検出部と、495nm以上570nm未満の範囲にピーク波長のある緑色の分光感度を有する第2の検出部と、450nm以上495nm未満の範囲にピーク波長のある青色の分光感度を有する第3の検出部として機能する。
【0074】
第1の検出部のカラーフィルタ119である赤色フィルタRは、赤の波長域以外の光を吸収する第1吸収部を構成する。第2の検出部のカラーフィルタ119である緑色フィルタGは、緑の波長域以外の光を吸収する第2吸収部を構成する。第3の検出部のカラーフィルタ119である青色フィルタBは、青の波長域以外の光を吸収する第3吸収部を構成する。
【0075】
マイクロレンズ120は、各カラーフィルタ119に対応するように複数設けられている。各マイクロレンズ120は、上方から入射した光をカラーフィルタ119を介して受光部116の光電変換素子161aに集光する。
【0076】
カバー部材121は、石英ガラス板等の透明な板材からなり、マイクロレンズ120を上方から覆っている。被検物質を含む複合体は、カバー部材121上に設けられ、光源11が発する励起光が上方から照射される。カバー部材121は、第1及び第2実施形態で説明した被検物質を含む複合体を用いる場合は、第1及び第2実施形態の基材13aとして機能する。
【0077】
複数のカラーフィルタ119は、
図11に示す配列パターンで並べられている。具体的には、光検出器106であるCMOSイメージセンサの1画素αが2×2の4区画α1〜α4に分割され、そのうちの1区画α1に、赤色フィルタRが設けられ、他の1区画α4に、青色フィルタBが設けられ、残りの2区画α2とα3に、緑色フィルタGが設けられている。そして、
図11に示す配列パターンが、受光部116の全体にわたって規則的に並べられている。
【0078】
図12は、カラーCMOSイメージセンサの1画素における区画あたりの量子効率をカラーフィルタの色別に示している。η
red、η
green、η
blueは、それぞれ赤色フィルタR、緑色フィルタG、青色フィルタBが設けられた各区画α1〜α4の量子効率である。
【0079】
一方、
図11に示すカラーCMOSイメージセンサの1画素αあたりの量子効率η
pixelは、この1画素α中の全区画α1〜α4の量子効率の平均として表される。すなわち、量子効率η
pixelは、次の式(1)によって求めることができる。
η
pixel=(η
blue+η
green+η
green+η
red)/4
=1/4η
blue+1/2η
green+1/4η
red ・・・(1)
【0080】
図13には、1画素αあたりの量子効率η
pixel、その成分1/4η
blue、1/2η
green、及び1/4η
redとをそれぞれ示している。カラーCMOSイメージセンサは、複数の画素αが集積されることによって構成されるため、1画素αあたりの量子効率η
pixelと、カラーCMOSイメージセンサ全体の量子効率η
allとは同一となる。すなわち、次の式(2)が成り立つ。
η
all=η
pixel ・・・(2)
【0081】
図13において、ηmaxは、1画素αのあたりの量子効率η
pixel、すなわちカラーCMOSイメージセンサの量子効率η
allの最大値を示し、ηthは、量子効率5%を示す。量子効率ηmaxとなるときの波長は、450nm以上900nm以下の範囲の波長域に含まれている。カラーCMOSイメージセンサからなる本実施形態の光検出器106は、光源11が発する190nm以上350nm以下の第1ピーク波長の光に対しては量子効率が約0%となる。一方、蛍光物質が発する第2ピーク波長の光は、
図13に示すように約22%となっている。したがって、第3実施形態の光検出器106を用いた場合においても、第2ピーク波長における量子効率が、第1ピーク波長における量子効率の2倍以上となる。
【0082】
これにより、光検出器106は、第2ピーク波長の光より第1ピーク波長の光を検出しにくくなり、第1ピーク波長の光を検出することによるバックグラウンドレベルが低くなるので、その分、微弱な第2ピーク波長の光を検出することが可能となる。つまり、蛍光の検出信号のS/N比が向上する。そのため、高い検出感度で、被検物質を検出することができる。さらに、検出器106は、第2ピーク波長の光の色を識別して検出することができる。
【0083】
<変形例>
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内の全ての態様を含む。例えば、以下に示す変形例を含む。
【0084】
(1)第1〜第3実施形態に係る被検物質検出方法は、本発明を被検物質の検出に用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被検物質に限らず、蛍光物質からの蛍光を検出する蛍光検出方法に用いてもよい。この場合、第1〜第3実施形態で用いた捕捉物質は必須では無い。そのため、この蛍光検出方法に用いる装置としては、例えば、第1実施形態における被検物質検出装置1の被検物質保持部13を基材13aに代えた装置を用いることができる。
【0085】
(2)第1〜第3実施形態では、第1ピーク波長が270nmである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明において、第1ピーク波長は、190nm以上350nm以下であればよい。
【0086】
本発明において、第1ピーク波長は、例えば、
図14に示すように、242nm〜243nmの間にあってもよい。
図14は、変形例に係るLEDから出射される深紫外光の光学スペクトルの一例を示す図である。なお、
図14は、LEDへの順方向バイアスの大きさを7種類の大きさに設定した場合それぞれにおける光学スペクトルを示している。
図14において、(1)〜(7)のうち番号が大きいほど順方向バイアスが大きい。
【0087】
なお、光源は波長が短くなるほど光の出力が低下するため、蛍光の検出信号の強度向上の観点から、本発明において、第1ピーク波長は、240nm以上が好ましい。光検出器に入射する光に起因した検出信号のバックグラウンドレベルを抑制する観点から、本発明において、第1ピーク波長は、300nm以下が好ましい。このように、蛍光の検出信号のS/N比向上の観点から、本発明において、第1ピーク波長は、240nm以上300nm以下が好ましい。なお、汎用の光源としては、波長190nmよりも長いものが取得しやすい。一方、光源から出射される光の波長が、350nmより長い場合、汎用の光検出器では光源からの光を検出してしまい、バックグラウンドノイズの原因となる可能性がある。
【0088】
(3)第1〜第3実施形態では、第2ピーク波長が、705nmである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明において、第2ピーク波長は、450nm以上900nm以下であればよい。日本照明学会では明るさを定義するのに360nmから830nmの分光感度を用いているため、本発明において、第2ピーク波長が830nm以下であれば、汎用の光検出器および蛍光物質を使用しやすく、より好適である。そのため、第2ピーク波長は、450nm以上830nm以下が好ましい。
【0089】
(4)第1〜第3実施形態に係る被検物質検出方法では、光検出器6,106が、第1ピーク波長の光に対する量子効率が約0%であり、第2ピーク波長における量子効率が約40%又は約22%である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明において、光検出器は、第2ピーク波長における量子効率が、第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であればよい。
【0090】
なお、本発明において、光検出器に入射する光に起因した検出信号のバックグラウンドレベルを抑制する観点から、光検出器は、第1ピーク波長の光に対する量子効率が10%未満であることが好ましい。言い換えれば、第1ピーク波長は、光検出器が10%以上の量子効率で検出しない波長であることが好ましい。このような構成とすることにより、蛍光の検出信号のS/N比のさらなる向上を図ることができる。
【0091】
本発明において、光検出器に入射する光に起因した検出信号のバックグラウンドレベルをさらに抑制する観点から、光検出器は、第1ピーク波長の光に対する量子効率が5%未満であることがより好ましい。言い換えれば、第1ピーク波長は、光検出器が5%以上の量子効率で検出しない波長であることがより好ましい。このような構成とすることにより、蛍光の検出信号のS/N比のさらなる向上を図ることができる。
【0092】
(5)第1〜第3実施形態に係る被検物質検出方法では、光検出器6,106として、シリコン基板を用いた光電変換素子を含むCMOSイメージセンサが用いられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0093】
なお、光検出器がシリコン基板を用いた光電変換素子を含むと、シリコンが190nm以上350nm以下の第1ピーク波長の光をさえぎるため、光検出器における第1ピーク波長の光に対する量子効率が低くなる。そのため、光検出器に入射する光に起因した検出信号のバックグラウンドレベルを抑制する観点から、光検出器はシリコン基板を用いた光電変換素子を含むことが好ましい。具体的に、シリコン基板を用いた光電変換素子を含む光検出器としては、CMOSイメージセンサ、microPMT(Photomultiplier Tube)、PiN(Positive−intrinsic−Negative)フォトダイオード、APD(Avakanche Photodiode)、MPCC(Multi−Pixel Photon Counter)、EMCCD(Electron Multiplying Charge Coupled Device)、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、或いは、NMOS(Negative Channel Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが挙げられる。その中でも、CMOSイメージセンサおよびmicroPMTは、第1ピーク波長における量子効率が特に低いので、蛍光の検出信号におけるS/N比を向上させることができるので、本発明において、光検出器は、CMOSイメージセンサまたはmicroPMTが好ましい。
【0094】
(6)第1〜第3実施形態に係る被検物質検出方法では、蛍光物質として量子ドットを用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、蛍光物質として有機系色素を用いてもよい。有機系色素としては、例えば、クマリン(Coumarin)、ローダミン(Rohdamine)、キサンテン(Xanthene)またはシアニン(Cyanine)から合成される有機系色素を採用することができる。
【0095】
図15は、変形例に係る被検物質検出方法で用いられる有機色素の蛍光スペクトルの一例を示す。ここで、一例に示す有機系色素は、いずれもモレキュラープローブ社製の有機色素である。
図15において、(1−3)は、Alexa Fluor 790、(2−3)は、Alexa Fluor 750、(3−3)は、Alexa Fluor 680、(4−3)は、Alexa Fluor 647、(5−3)は、Alexa Fluor 633、(6−3)は、Alexa Fluor 594、(7−3)は、Alexa Fluor 555、(8−3)は、Alexa Fluor 488、(9−3)は、Alexa Fluor 405、(10−3)は、Alexa Fluor 355に対応する。
【0096】
なお、有機系色素は、他に、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680およびAlexa Fluor 700(いずれもモレキュラープローブ社製)を用いてもよい。
【0097】
更に、有機系色素としては、他に、9−フェニルキサンテン系色素、シアニン系色素、メタロシアニン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、クマリン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ローダミン系色素、キサンテン系色素、クロロフィル系色素、エオシン系色素、マーキュロクロム系色素、インジゴ系色素、BODIPY系色素、CALFluor系色素、オレゴングリーン系色素、ロードル(Rhodol)グリーン、テキサスレッド、カスケードブルー、核酸(DNA、RNA等)、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、Ln2O3:Re、Ln2O2S:Re、ZnO、CaWO4、MO・xAl2O3:Eu、Zn2SiO4:Mn、LaPO4:Ce、Tb、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5及びCy9(いずれも、アマシャムバイオサイエンス社製);DY−610、DY−615、DY−630、DY−631、DY−633、DY−635、DY−636、EVOblue10、EVOblue30、DY−647、DY−650、DY−651、DY―800、DYQ−660及びDYQ−661(いずれも、Dyomics社製);Atto425、Atto465、Atto488、Atto495、Atto520、Atto532、Atto550、Atto565、Atto590、Atto594、Atto610、Atto611X、Atto620、Atto633、Atto635、Atto637、Atto647、Atto655、Atto680、Atto700、Atto725及びAtto740(いずれも、Atto−TEC GmbH社製);VivoTagS680、VivoTag680及びVivoTagS750(いずれも、VisEnMedical社製)等を採用してもよい。なお、上記LnはLa、Gd、Lu又はYを示し、Reはランタニド族元素を示し、Mはアルカリ土類金属元素を示し、xは0.5〜1.5の数を示す。
【0098】
なお、量子ドットは、例えば有機系色素や蛍光蛋白質等に比べて輝度が高くかつ光源から照射される光による退色が起こりにくい。したがって、有機系色素や蛍光蛋白質等の蛍光物質は長波長の光よりも短波長の光により退色が起こりやすいが、そのように短波長の光を蛍光物質に照射する場合であっても、蛍光物質として量子ドットを使用することで、短波長の光による退色が起こりにくく、微量の被検物質の検出や長時間に亘る被検物質の観察に有利である。そのため、本発明において、蛍光物質は、量子ドットが好ましい。
【0099】
(7)第1〜第3実施形態では、光源11が、LED等の半導体発光素子から構成される例について説明したが、光源11の種類はこれに限定されるものではない。例えば、光源11として放電ランプ(例えばHIDランプ等)等から構成されるものであってもよい。
【0100】
(8)更に、第1〜第3実施形態では、量子ドット410の修飾物質414として、グルタチオン等のペプチド1種類から構成される例について説明したが、修飾物質414は、1種類の有機物質のみからなるものに限定されるものではない。例えば、修飾物質414が、ペプチドと、当該ペプチドに結合した抗体或いはレセプタに対するリガンドとから構成されるものであってもよい。
【0101】
(9)第3実施形態の光検出器106は、蛍光物質から発せられる光の一部を透過するフィルタとして吸収フィルタを備えていたが、吸収フィルタではなく、干渉フィルタであってもよい。第3実施形態の光検出器106は、カラーフィルタ119として、赤色、緑色、青色の3色のフィルタを備えていたが、シアン、マゼンダ、黄色の3色のフィルタを備えていてもよい。光検出器106は、カラーフィルタ119を備えないものであってもよい。例えば、光検出器106として、色による吸収の深さの違いを利用して複数色を識別して検出する積層型のイメージセンサ、光電変換膜を積層した有機膜イメージセンサ、又はディフレクタ等の分光部を備えた分光型イメージセンサ等を用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例等により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0103】
<実施例1>
(CMOSイメージセンサ上への蛍光物質の固定)
第1実施形態の検出器6を構成するモノクロCMOSイメージセンサに予め備えられているカバーガラスを取り外し、2次元アレイ状に配置されたマイクロレンズアレイ上に、蛍光物質として1μMの量子ドットを含む試料と、リファレンス試料としてTBS-Tを滴下した。その後、そのCMOSイメージセンサを50℃の環境に10分放置することにより、試料を乾燥させた。なお、CMOSイメージセンサの感度特性は
図3に示されたとおりである。なお、モノクロCMOSイメージセンサには、アプティナイメージング社製のMT9M001を用いた。量子ドットには、ライフテクノロジー社製のQdot 705 ストレプトアビジンコンジュゲートQ10163MPを用いた。
【0104】
(励起光の照射)
その後、CMOSイメージセンサの上部から光拡散部材(Diffuser)を介して励起光を照射した。それぞれの励起光強度は、CMOSイメージセンサの画素値が飽和しない範囲での最大強度とした。
比較例1では、青色LEDを有する光源を用いて、ピーク波長が470nmの光を照射した。
比較例2では、紫外LEDを有する光源を用いて、ピーク波長が365nmの光を照射した。
本実施例では、深紫外LEDを有する光源を用いて、ピーク波長が270nmの光を照射した。
【0105】
(実験結果)
図16(a−1)は、比較例1で得られる画像、
図16(b−1)は、比較例2で得られる画像、
図16(c−1)は、実施例で得られる画像である。
図16(a−2)は、
図16(a−1)のA−A線における強度プロファイルを示し、
図16(b−2)は、
図16(b−1)のA−A線における強度プロファイルを示し、
図16(c−2)は、
図16(c−1)のA−A線における強度プロファイルを示す。
図16(a−2)(b−2)(c−2)のグラフにおいてはA−A線上の位置をX座標と示している。
【0106】
図16(a−1)および
図16(a−2)に示すように、比較例1の場合、画像中において、リファレンスとしてTBS-Tを添加した領域(以下、領域Refという)の検出強度および量子ドットを添加した領域(以下、領域S25)の検出強度が、画像中の他の領域の検出強度に比べて低い。これは、青色LEDを用いた光源から出射される光のピーク波長(470nm)が、CMOSイメージセンサの感度が比較的高い波長帯域内に存在するため、CMOSイメージセンサから出力される検出信号のバックグラウンドレベルが高くなっているためと考えられる。
【0107】
図16(b−1)および(b−2)に示すように、比較例2の場合、領域S25における検出感度は、領域S25および領域Refを除く画像内の領域における検出感度に比べて高い。領域Refにおける検出感度は、領域S25および領域Refを除く画像内の領域における検出感度に比べてやや低い。これは、CMOSイメージセンサは、ピーク波長が470nmである比較例1の光に比べて、ピーク波長が365nmの比較例2の光に対する感度が低いため、比較例1に比べてCMOSイメージセンサから出力される検出信号のバックグラウンドレベルが低下しているからと考えられる。比較例2の場合も、検出信号のバックグラウンドレベルは、領域S25における検出強度の80%程度であり、検出信号におけるS/N比が十分に高いとはいえない。
【0108】
一方、
図16(c−1)および(c−2)に示すように、実施例1の場合、領域S25における検出感度が、領域S25および領域Refを除く画像内の領域における検出感度に比べて極めて高くなっている。領域Refにおける検出感度は、バックグラウンドレベルと同程度になっており、領域S25における検出感度に比べて極めて低くなっている。これは、CMOSイメージセンサは、270nmの波長に対する感度が略ゼロであるため、バックグラウンドレベルの上昇が抑制されているからと考えられる。実施例1の場合、検出信号のバックグラウンドレベルは、領域S25における検出強度の4%程度であり、十分に高いS/N比を得ることができている。
【0109】
これらの結果から、蛍光物質に照射する光のピーク波長を、CMOSイメージセンサの感度が実質的にない270nmの波長とし、蛍光物質から発せられる蛍光の波長を、CMOSイメージセンサの感度が十分ある705nmの波長とすることで、CMOSイメージセンサから出力される検出信号のバックグラウンドレベルの上昇を抑制し、蛍光の検出信号におけるS/N比を向上させることができることが分かる。
【0110】
<実施例2>
図10に示す光検出器106であるカラーCMOSイメージセンサのカバー部材121上に、蛍光物質として以下に示す1μMの量子ドットとリファレンスとを各0.5μL滴下し、50℃で10分加熱して乾燥させた。実施例2として、LED光源からピーク波長270nmの深紫外光を照射することで蛍光像を得た。比較例として、光源からピーク波長405nmの紫外光を照射することで明視野像を得た。
【0111】
カラーCMOSイメージセンサには、アプティナイメージング社製のMT9M001C12STCを用いた。
【0112】
リファレンスには以下の(1)を用い、量子ドットには以下の(2)〜(6)を用いた。
(1)TBS
(2)Qdot 525 ストレプトアビジンコンジュゲート Ex. 425nm / Em. 525nm (Q10141MP, ライフテクノロジー社製)
(3)Qdot 585 ストレプトアビジンコンジュゲートEx. 425nm / Em. 585nm (Q10111MP, ライフテクノロジー社製)
(4)Qdot 625 ストレプトアビジンコンジュゲートEx. 425nm / Em. 625nm (A10196, ライフテクノロジー社製)
(5)Qdot 705 ストレプトアビジンコンジュゲートEx. 425nm / Em. 705nm (Q10161MP, ライフテクノロジー社製)
(6)Qdot 800 ストレプトアビジンコンジュゲートEx. 425nm / Em. 800nm (Q10173MP, ライフテクノロジー社製)
【0113】
図17に実施例2の結果を示し、
図18に比較例の結果を示す。
図17(a)及び
図18(a)は、それぞれ蛍光像及び明視野像の画像を示している。それぞれ画像上の1〜6の丸付き数字と波長の値とは、上記(1)のリファレンス及び(2)〜(6)の量子ドットに対応している。
図17(b)及び
図18(b)は、それぞれ
図17(a)及び
図18(a)の画像上に点線で示されるX(1)軸上の強度プロファイルを示す。
図17(c)及び
図18(c)は、
図17(a)及び
図18(a)の画像上に点線で示されるX(2)軸上の強度プロファイルを示す。
【0114】
図18に示す比較例では、上記(1)のリファレンス及び上記(2)〜(6)の量子ドットのいずれにおいても青色の検出強度が高くなり、さらのその周囲においても青色の検出感度が高くなった。これは、
図12に示すように、紫外光のピーク波長405nmが、光検出器106の青色の分光感度に重複するため、光検出器106から出力される検出信号のバックグラウンドレベルが高くなったためと考えられる。一方、リファレンス及び量子ドットの領域では赤色、緑色、及び青色の検出強度が、その周囲の検出強度よりも低くなった。これにより、リファレンス及び量子ドットの明視野像を確認することができた。
【0115】
図17に示す実施例2では、量子ドット(2)〜(6)から発せられた蛍光が、波長に応じた色で検出され、量子ドットの周囲の検出強度は極めて低くなった。また、蛍光を発しないリファレンス(1)はほとんど検出されなかった。したがって、蛍光の検出信号のS/N比が向上し、高い検出感度で蛍光物質を検出することができた。また、第3実施形態の光検出器106を用いれば、光源の波長を変えることによって明視野像と複数色の蛍光像との双方を取得することができた。
【0116】
<実施例3>
以下の(2)〜(5)に示す蛍光物質としての蛍光ビーズと、以下の(1)に示す非蛍光ビーズとを、それぞれ10μLずつ混釈して50μLの溶液とし、これを
図10に示す光検出器106であるカラーCMOSイメージセンサのカバー部材121上に、滴下して50℃で30分加熱して乾燥固定した。実施例3として、光源からピーク波長270nmの深紫外光を照射することで蛍光像を得た。比較例として、光源からピーク波長405nmの紫外光を照射することで明視野像を得た。
【0117】
非蛍光ビーズには以下の(1)を用い、蛍光ビーズには以下の(2)〜(5)を用いた。
(1)15μm ポリスチレン非蛍光ビーズ(18328, ポリサイエンス社製)
(2)15μm ポリスチレン蛍光ビーズ Ex. 365nm / Em. 415nm(F-8837、ライフテクノロジー社製)
(3)15μm ポリスチレン蛍光ビーズ Ex. 505nm / Em. 515nm(F-8844、ライフテクノロジー社製)
(4)15μm ポリスチレン蛍光ビーズ Ex. 540nm / Em. 560nm(F-8841、ライフテクノロジー社製)
(5)15μm ポリスチレン蛍光ビーズ Ex. 580nm / Em. 605nm(F-8842、ライフテクノロジー社製)
【0118】
図19(a)に比較例の結果を示し、
図19(b)に実施例3の結果を示す。
図19(a−1)及び(b−1)は、それぞれ明視野像及び蛍光像の全体画像を示し、
図19(a−2)及び(b−2)は、
図19(a−1)及び(b−1)の一部を拡大した像を示す。
図19(b−2)の画像上の1〜5の数字は、上記(1)の非蛍光ビーズ及び上記(2)〜(5)の蛍光ビーズに対応している。また、
図19(b−2)の画像上の非蛍光ビーズ(1)及び蛍光ビーズ(2)〜(5)を横断する点線上の強度プロファイルを、
図20に示す。なお、
図20において、
図19(b−2)の点線上の位置をX座標としている。
【0119】
図19(a)に示すように、ピーク波長λpeakが405nmの紫外光を照射することによって、光検出器106により非蛍光ビーズ(1)及び蛍光ビーズ(2)〜(5)の明視野像を得ることができた。
図19(b)に示すように、ピーク波長λpeakが
270nmの深紫外光を照射することによって光検出器106により蛍光ビーズ(2)〜(5)の蛍光像を得ることができた。
図20に示すように、光検出器106は、蛍光ビーズ(2)〜(5)から発せられた蛍光が、波長に応じた色で検出され、蛍光ビーズの周囲の検出強度は極めて低くなった。したがって、蛍光の検出信号のS/N比が向上し、高い検出感度で蛍光物質を検出することができた。また、第3実施形態の光検出器106を用いれば、光源の波長を変えることによって、明視野像と複数色の蛍光像との双方を取得することができた。
【0120】
<実施例4>
図21に示すように、ストレプトアビジン結合蛍光磁性粒子320に捕捉されたビオチン結合一次抗体321と抗原331とを結合させ、さらに酵素3411で標識された二次抗体341を抗原331に結合させた複合体を生成し、この複合体を蛍光基質溶液中に懸濁した溶液を作製した。蛍光基質と酵素3411との反応により蛍光物質が生成される。具体的には、自動前処理装置を用いて、抗原捕捉用抗体溶液(HISCL(登録商標)-2000i用R1試薬、シスメックス株式会社製)50μLと、0IU/mL又は2500IU/mLのリコンビナントHBs抗原(HISCL HBsAg、シスメックス株式会社製)20μLを42℃で3分間反応させた。磁性ビーズ懸濁液(HISCL-2000i用R2試薬、シスメックス株式会社製)30μLを添加し、42℃で3分間反応させたのち、磁気分離を行った。この反応により、
図20の(I)に示すように、抗原捕捉用抗体が磁性ビーズに捕捉された。
【0121】
その後、洗浄液300μLの分注と磁気分離の組合せ洗浄を計2回実施した。ALP標識抗体溶液(HISCL-2000i用R3試薬、シスメックス株式会社製)100μLを添加し、42℃で3分間反応させた後、磁気分離を行った。これにより、
図20の(II)に示すように、抗原に酵素標識二次抗体が結合した。その後、洗浄液300μLの分注と磁気分離との組合せ洗浄を計3回実施した。さらに、洗浄液150μLの分注と磁気分離の組合せ洗浄を行った。その後、分散液(HISCL-2000i用R4試薬、シスメックス株式会社製)50μLを添加し、混合撹拌した。さらにALP用蛍光基質であるAttoPhos(登録商標)溶液(S1000、プロメガ株式会社製)20μLを添加し、混合撹拌した。
【0122】
ネガティブコントロールとして0IU/mLのリコンビナントHBs抗原を反応させた混合溶液と、ポジティブコントロールとして2500IU/mLのリコンビナントHBs抗原を反応させた混合溶液とを、
図10に示す光検出器106であるカラーCMOSイメージセンサ上にそれぞれ2μLずつ滴下した。そして、LED光源によりピーク波長270nmの深紫外光を照射することにより蛍光像を取得した。その蛍光像を
図22に示す。また、
図22の蛍光像におけるX軸上の強度プロファイル(画素値)を
図23に示す。
【0123】
図22及び
図23に示すように、ネガティブコントロールの蛍光像では、蛍光物質の量が少ないため、全体的に検出強度の低い画像となった。これに対してポジティブコントロールは、酵素標識と蛍光基質との反応で生成された蛍光物質を多く含むため、検出強度が高く、しかも波長に応じた色を識別したカラー画像が得られた。