特許第6870020号(P6870020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870020市場予兆管理システム、市場予兆管理方法及び市場予兆管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870020
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】市場予兆管理システム、市場予兆管理方法及び市場予兆管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20210426BHJP
【FI】
   G06Q10/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-54425(P2019-54425)
(22)【出願日】2019年3月22日
(65)【公開番号】特開2020-154950(P2020-154950A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2019年3月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 2018年3月27日 ウェブサイトのアドレス https://www.mizuho−fg.co.jp/release/20180327_2release_jp.html, https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20180327_2release_jp.pdf, https://www−03.ibm.com/press/jp/ja/pressrelease/53842.wss 公開者 株式会社みずほフィナンシャルグループ, 株式会社みずほ銀行, 日本アイ・ビー・エム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592052416
【氏名又は名称】株式会社 みずほ銀行
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻 明久
(72)【発明者】
【氏名】萩原 章
(72)【発明者】
【氏名】相澤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】石榑 信宏
【審査官】 田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2001/037157(WO,A1)
【文献】 特開2012−247998(JP,A)
【文献】 特表2007−509447(JP,A)
【文献】 特開2002−015000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去日毎に、過去日に関連する市場データを用いて、複数の予測モデルにより算出した各過去日の特徴量を記録した履歴情報記憶部と、
複数の予測モデルを用いて、市場動向を検知する制御部を備えた市場予兆管理システムであって、
前記制御部が、
予測対象日に関連する市場データを用いて、各予測モデルにより、前記予測対象日の特徴量を算出し、
前記算出した各特徴量と、前記履歴情報記憶部に記録された各過去日の特徴量とを比較して、過去日において、前記特徴量の類似度に応じて類似日を特定し、
前記類似日の市場データを取得して、前記類似日の市場データを用いて第1の統計値を算出し、
所定期間の過去日の市場データを用いて第2の統計値を算出し、
前記第1の統計値と前記第2の統計値との差分を算出し、前記差分に応じた予兆情報を算出することを特徴とする市場予兆管理システム。
【請求項2】
各予測モデルに対して、予測の確からしさに応じたモデル評価情報を記録した評価情報記憶部を更に備え、
前記制御部が、
前記評価情報記憶部に記録されたモデル評価情報を用いて、各前記予測モデルにより算出した前記特徴量が類似する前記類似日を特定することを特徴とする請求項に記載の市場予兆管理システム。
【請求項3】
前記制御部が、
前記予測対象日の市場データの実績値を取得し、
前記評価情報記憶部に記録されたモデル評価情報において、前記予測対象日の市場データの実績値と、前記第1の統計値との類似度が極大化するように調整したモデル評価情報を算出する最適化処理を実行し、
前記算出したモデル評価情報を、前記評価情報記憶部に更新記録することを特徴とする請求項2に記載の市場予兆管理システム。
【請求項4】
過去日毎に、過去日に関連する市場データを用いて、複数の予測モデルにより算出した各過去日の特徴量を記録した履歴情報記憶部と、
複数の予測モデルを用いて、市場動向を検知する制御部を備えた市場予兆管理システムを用いて、市場予兆の管理を行なう方法であって、
前記制御部が、
予測対象日に関連する市場データを用いて、各予測モデルにより、前記予測対象日の特徴量を算出し、
前記算出した各特徴量と、前記履歴情報記憶部に記録された各過去日の特徴量とを比較して、過去日において、前記特徴量の類似度に応じて類似日を特定し、
前記類似日の市場データを取得して、前記類似日の市場データを用いて第1の統計値を算出し、
所定期間の過去日の市場データを用いて第2の統計値を算出し、
前記第1の統計値と前記第2の統計値との差分を算出し、前記差分に応じた予兆情報を算出することを特徴とする市場予兆管理方法。
【請求項5】
過去日毎に、過去日に関連する市場データを用いて、複数の予測モデルにより算出した各過去日の特徴量を記録した履歴情報記憶部と、
複数の予測モデルを用いて、市場動向を検知する制御部を備えた市場予兆管理システムを用いて、市場予兆の管理を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
予測対象日に関連する市場データを用いて、各予測モデルにより、前記予測対象日の特徴量を算出し、
前記算出した各特徴量と、前記履歴情報記憶部に記録された各過去日の特徴量とを比較して、過去日において、前記特徴量の類似度に応じて類似日を特定し、
前記類似日の市場データを取得して、前記類似日の市場データを用いて第1の統計値を算出し、
所定期間の過去日の市場データを用いて第2の統計値を算出し、
前記第1の統計値と前記第2の統計値との差分を算出し、前記差分に応じた予兆情報を算出する手段として機能させることを特徴とする市場予兆管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場の予兆を検知するための市場予兆管理システム、市場予兆管理方法及び市場予兆管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
株式等の市場において、取引価格の変動の予測が大切である。例えば、ディープラーニング等の機械学習を用いて、市場の動向を予測する技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示された技術においては、取引管理システムの予測制御部は、複数の銘柄について、予測期間候補及び株価の変動幅候補の組み合わせ毎に、株価の変動履歴を含むデータセットを用いて、予測期間候補後の株価について、2階層以上の隠れ層からなる機械学習により予測変動幅を計算する。次に、予測期間候補後の実際の株価の変動幅候補と予測変動幅とを比較し、予測精度が高い予測期間及び変動幅の組み合わせを特定する。そして、注文情報を取得した場合、この組み合わせの予測期間後の予測株価について、変動幅との関係を算出し、変動幅との関係に基づいて、取引執行タイミングを決定する。
【0003】
また、事象間の因果関係の推移を踏まえて、事象の推移を予測する技術が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に開示された技術においては、時系列予測装置が、予測対象である事象を含む複数の事象の夫々に関連する時系列データ、及び事象間の因果関係に関連する時系列データに基づき、上記事象間の因果関係の強さを示す指標である関連度を算出し、算出した関連度に基づき上記事象に関連する時系列データの推移を予測する。時系列予測装置は、上記事象間の因果関係に関連する時系列データにおける、上記事象に関連する用語の共起頻度を用いて関連度を算出する。時系列予測装置は、予測対象である事象と因果関係を有する事象に関連する時系列データに基づき、予測対象である事象に関連する時系列データの推移を予測する複数の予測モデルを構築し、関連度に応じて各予測モデルに重み付けを行うことにより予測モデルの夫々の予測結果を統合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−28945号公報
【特許文献2】国際公開第2016/063341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、予測モデルを用いる場合にも、一つの予測モデルでは、的確に予兆を捉えることができるとは限らない。また、予測モデルにより動向を直接的に予測する場合には、その予測の根拠が明確でない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための市場予兆管理システムは、過去日毎に、過去日に関連する市場データを用いて、複数の予測モデルにより算出した各過去日の特徴量を記録した履歴情報記憶部と、複数の予測モデルを用いて、市場動向を検知する制御部を備える。そして、前記制御部が、予測対象日に関連する市場データを用いて、各予測モデルにより、前記予測対象日の特徴量を算出し、前記算出した各特徴量と、前記履歴情報記憶部に記録された各過去日の特徴量とを比較して、過去日において、前記特徴量の類似度に応じて類似日を特定し、前記類似日の市場データを取得して、前記市場データに基づいて予兆情報を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の予測モデルを横断的に活用することにより、効率的に市場における予兆を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のシステムの説明図。
図2】本実施形態のハードウェア構成の説明図。
図3】本実施形態の記憶部に記録されるデータの説明図であって、(a)はモデル記憶部、(b)は評価情報記憶部、(c)は履歴記憶部の説明図。
図4】本実施形態の処理手順の説明図。
図5】本実施形態の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図5に従って、市場予兆管理システム、市場予兆管理方法及び市場予兆管理プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、複数の予測モデルを用いた出力値を算出し、各予測結果について過去履歴の類似日を特定し、この類似日の実績分布を用いて予測を行なう場合を説明する。
図1に示すように、本実施形態の市場予兆管理方法では、ユーザ端末10、予兆管理サーバ20、市場情報管理サーバ30を用いる。
【0010】
(ハードウェア構成例)
図2は、ユーザ端末10〜市場情報管理サーバ30等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0011】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0014】
記憶部H14は、ユーザ端末10、予兆管理サーバ20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。例えば、記憶部H14は、予兆管理に用いる各種情報を記憶する。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、ユーザ端末10〜市場情報管理サーバ30における各処理(例えば、予兆管理処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、ユーザ端末10、予兆管理サーバ20のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する図3図4に示す各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(予兆管理システムの機能)
次に、ユーザ端末10、予兆管理システムとしての予兆管理サーバ20の機能を説明する。
ユーザ端末10は、予兆管理を行なう担当者が用いるコンピュータ端末である。このユーザ端末10は、各種情報の入力を行なうための入力部(キーボードやポインティングデバイス等)や各種情報を出力するための出力部(ディスプレイやプリンタ等)を備えている。
【0018】
予兆管理サーバ20は、市場の予兆を管理するコンピュータシステムである。この予兆管理サーバ20は、制御部21、モデル記憶部22、評価情報記憶部23、履歴記憶部24を備える。
【0019】
制御部21は、予兆管理プログラムを記憶し、モデル記憶部22〜履歴記憶部24に記録された情報を用いて、予兆管理プログラムに従って予兆管理処理(学習段階、個別予測段階、統合予測段階及び評価段階の各処理)を実行する。このため、予兆管理プログラムを実行することにより、制御部21は、学習部210、個別予測部211、統合予測部212、評価部213として機能する。
【0020】
学習部210は、市場データを用いて、各予測モデルの生成や更新等を行なう。
個別予測部211は、複数の予測モデルを用いて、複数の予測結果を算出する。本実施形態では、予測結果として、直近の市場動向の特徴量を算出する。
【0021】
統合予測部212は、個別予測部211が算出した複数の予測結果を用いて、統合的な予測を行なう。本実施形態では、予測結果に基づいて市場の特徴量が類似する過去日(類似日候補)を特定する。そして、類似日候補に重み付けを行なって類似日を特定し、類似日に基づいて市場における動向を予測する。
評価部213は、実際の市場結果との比較に基づいて、予測モデルや重み付けの最適化を行なう。
【0022】
図3(a)に示すように、モデル記憶部22には、市場動向を予測するための複数の予測モデル220が記録される。各予測モデル220には、それぞれを特定するための識別子(モデルID)が付与されている。この予測モデル220は、市場における各指標値を用いて、将来の市場動向を表す指数(特徴量)を算出するための予測手法(パターン認識手段、関数、ネットワーク等)である。例えば、パターン認識手段としては、市場の各指標の相関関係の類似度を市場構造として指数化し、この指数の変化をパターン認識により補足する手法を用いることができる(市場の構造変化予測モデル)。また、別のパターン認識手段としては、市場データの変化パターン(構造指数)をクラスタリングした局面を生成し、局面の特徴、局面遷移の特徴を分析する手法を用いることができる(市場の局面予測モデル)。また、関数としては、例えば、回帰分析モデルを用いて、市場データの特徴量を算出する手法を用いることができる。ネットワークとしては、ディープラーニング等により生成された中間層(ネットワーク)を用いることができる。
【0023】
図3(b)に示すように、評価情報記憶部23には、モデル評価テーブル230が記録される。このモデル評価テーブル230には、各予測モデルを特定するためのモデルIDに対して、重み付けを行なうための重み付け値(モデル評価情報)が記録されている。この重み付け値は、各予測モデルにおける出力値の確からしさを評価した情報である。この重み付け値は、市場値を取得した場合に、評価部213によって更新される。
【0024】
図3(c)に示すように、履歴記憶部24には、履歴管理レコード240が記録される。この履歴管理レコード240は、各日の市場結果を取得した場合に記録される。履歴管理レコード240には、過去日付、各モデルIDに関連付けられた出力値、市場結果に関するデータが記録される。
【0025】
過去日付データ領域には、予測を行なった年月日(過去日)に関するデータが記録される。
モデルIDデータ領域には、各予測モデルを特定するための識別子が記録される。
出力値データ領域には、各予測モデルを用いて算出した出力値に関するデータが記録される。ここでは、過去日付より前の日付の市場データを用いて、この過去日付の市場動向を予測した出力値(特徴量)が記録される。本実施形態では、複数の予測モデルを用いるため、モデルID、出力値について複数のセットが記録される。
市場結果データ領域には、過去日付の実際の市場データが記録される。
【0026】
この予兆管理サーバ20は、市場情報管理サーバ30に接続されている。この市場情報管理サーバ30は、各種市場データを管理するコンピュータシステムである。この市場データには、市場の各種指標(例えば、株価平均型株価指数、浮動株基準株価指数、時価総額加重平均型株価指数等)が含まれる。予兆管理サーバ20は、市場情報管理サーバ30から取得した市場データを用いて、市場予兆管理処理を実行する。
【0027】
(予測モデル管理処理)
次に、図4を用いて、上記のように構成された予兆管理サーバ20において、予測モデル管理処理の処理手順について説明する。この予測モデル管理処理は、定期的に実行される。
【0028】
まず、予兆管理サーバ20の制御部21は、市場データの取得処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、制御部21の学習部210は、市場情報管理サーバ30から、市場データを取得する。ここでは、過去の所定期間(例えば、20年間)の市場データを取得する。
【0029】
そして、予兆管理サーバ20の制御部21は、予測手法毎に、予測モデルの生成処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、制御部21の学習部210は、各予測手法の学習方法により、各予測モデルを生成する。そして、学習部210は、生成した各予測モデルを用いて、モデル記憶部22の予測モデル220を更新する。更に、学習部210は、予測モデル220を更新した場合には、更新された予測モデル220を用いて、各過去日付の出力値を算出し、履歴記憶部24の履歴管理レコード240を更新する。
【0030】
(市場予兆管理処理)
次に、図5を用いて、上記のように構成された予兆管理サーバ20において、市場予兆を管理する場合の処理手順について説明する。この処理は、ユーザ端末10から、予測対象日(例えば、当日)の市場予兆管理処理の実行指示を取得した場合に行なわれる。
【0031】
まず、予兆管理サーバ20の制御部21は、市場データの取得処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、制御部21の学習部210は、市場情報管理サーバ30から、予測対象日の市場動向を予測するために、各予測モデルに用いる市場データを、市場情報管理サーバ30から取得する。
【0032】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、予測モデル毎に、出力値の取得処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、制御部21の個別予測部211は、取得した市場データに対して、モデル記憶部22に記録された各予測モデル220を適用し、各予測モデル220による出力値を算出する。そして、個別予測部211は、モデルIDに関連付けて、出力値を仮記憶する。
【0033】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、各出力値を用いて、類似日候補の抽出処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、予測モデル220毎に、算出した出力値が、履歴記憶部24に記録された出力値が所定範囲に含まれる類似日を抽出する。そして、統合予測部212は、モデルIDに関連付けて、類似日候補を仮記憶する。
【0034】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、予測モデルの重み付け値を用いて類似日の特定を実行する(ステップS2−4)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、評価情報記憶部23のモデル評価テーブル230から、各予測モデル220の重み付け値を取得する。次に、統合予測部212は、抽出した類似日候補の中で、各予測モデル220の重み付け値を用いて、類似度が高い複数個の類似日候補に絞り込む。例えば、統合予測部212は、重み付け値が高いモデルIDに関連付けられた類似日候補を、重み付け値が低いモデルIDに関連付けられた類似日候補よりも優先することにより、類似度が高い類似日を特定する。そして、統合予測部212は、重み付け値を用いて複数個に絞り込んだ類似日候補を類似日として特定する。
【0035】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、複数の類似日の市場結果の取得処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、特定した複数の類似日における市場結果を履歴記憶部24から取得する。
【0036】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、複数の類似日の市場結果の統計値の算出処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、取得した複数の類似日における市場結果の統計値を算出する。ここでは、統計値としては、複数の類似日の市場結果の類似日実績分布(第1の統計値)を算出する。類似日実績分布としては、例えば、各値動き値に対する頻度分布を用いる。
【0037】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、類似日の統計値と全体統計値の比較処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、予め定められた所定期間(例えば全期間の20年分)のすべての過去日付の市場結果を履歴記憶部24から取得する。次に、統合予測部212は、ステップS2−6と同様に、全期間における市場結果の統計値(第2の統計値としての全期間実績分布)を算出する。そして、全期間実績分布と類似日実績分布とを比較する。
【0038】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、比較結果に基づいて、市場動向の予測処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、制御部21の統合予測部212は、全期間実績分布と類似日実績分布との差分に応じて、予測値を算出する。例えば、全期間実績分布に対して、類似日実績分布が値上がり傾向側の頻度が高い場合には、予測値として、両分布の差分に応じて「値上がり傾向」の強さを、ユーザ端末10に出力する。
【0039】
その後、予測対象日について、実際の市場データが算出された場合には、予兆管理サーバ20の制御部21は、市場結果の取得処理を実行する(ステップS2−9)。具体的には、制御部21の評価部213は、市場情報管理サーバ30から、予測を行なった予測対象日の実際の市場結果を取得する。
【0040】
次に、予兆管理サーバ20の制御部21は、重み付けの最適化処理を実行する(ステップS2−10)。具体的には、制御部21の評価部213は、メモリに、モデルIDに関連付けて仮記憶した類似日候補の市場結果を履歴記憶部24から取得する。次に、評価部213は、類似日候補の市場結果から算出される類似日実績分布と、実際の市場結果との類似度が極大化するように、重み付け値の調整を行なう。例えば、評価情報記憶部23に記録されているモデル評価テーブル230の重み付け値をベースにして、重み付け値の調整可能な範囲で、類似日実績分布が、実際の市場結果に近づく(類似度が高くなる)ように重み付け値の調整を行なう。そして、評価部213は、調整した重み付け値を用いて、評価情報記憶部23のモデル評価テーブル230を更新する。
【0041】
本実施形態の市場予兆管理システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、予測モデル管理処理を実行する。これにより、市場データを評価するための複数の予測モデルを生成することができる。
【0042】
(2)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、予測モデル毎に、出力値の取得処理を実行する(ステップS2−2)。これにより、複数のモデルにより、市場データを評価することができる。
【0043】
(3)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、各出力値を用いて、類似日候補の抽出処理(ステップS2−3)、予測モデルの重み付け値を用いて類似日の特定処理(ステップS2−4)を実行する。これにより、各予測モデルの確からしさに基づいて、現在の市場状況と類似した過去日付を特定することができる。
【0044】
(4)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、複数の類似日の市場結果の取得処理(ステップS2−5)、複数の類似日の市場結果の統計値の算出処理(ステップS2−6)を実行する。これにより、類似日の動向を利用して、将来の市場動向を予測することができる。
【0045】
(5)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、類似日の統計値と全体統計値の比較処理(ステップS2−7)、比較結果に基づいて、市場動向の予測処理(ステップS2−8)を実行する。これにより、全体的な状況と、現在の状況との違いに基づいて、市場動向の予兆を把握することができる。
【0046】
(6)本実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、市場結果の取得処理(ステップS2−9)、重み付けの最適化処理(ステップS2−10)を実行する。これにより、各予測モデルの評価を見直すことができる。
【0047】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、モデル記憶部22には、市場予兆を予測するための複数の予測モデル220が記録される。この予測モデル220には、市場の構造変化予測モデル、市場の局面予測モデル、回帰分析モデル、ネットワーク等を用いる。複数の予測モデル220を用いればよく、各予測モデル220は上記手法に限定されるものではない。
【0048】
・上記実施形態では、複数の類似日の市場結果の取得処理(ステップS2−5)、類似日の統計値と全体統計値の比較処理(ステップS2−7)、重み付けの最適化処理(ステップS2−10)において、市場結果を履歴記憶部24から取得する。この市場結果を市場情報管理サーバ30から取得するようにしてもよい。この場合には、市場情報管理サーバ30に、過去の市場結果を保存させておく。
【0049】
・上記実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、市場結果の取得処理(ステップS2−9)、重み付けの最適化処理(ステップS2−10)を実行する。ここでは、予測対象日における各予測モデル220の出力値を用いて、重み付け値の調整を行なう。重み付けの最適化方法は、これに限定されるものではない。例えば、所定期間の類似日候補の出力値を用いて、実際の市場結果と一致するように、各予測モデル220の重み付け値の調整を行なうようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、予測対象日として当日を用いたが、将来日であればよい。例えば、過去の市場データを用いて、所定日数先の市場動向を予測するようにしてもよい。
・上記実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、類似日の統計値と全体統計値の比較処理を実行する(ステップS2−7)。ここでは、制御部21の統合予測部212は、全期間における市場結果を履歴記憶部24から取得し、全期間における市場結果の統計値(全期間実績分布)を算出する。これに代えて、全期間実績分布を予め計算しておき、予兆管理サーバ20の記憶部に記録しておいてもよい。この場合には、市場データが更新されるたびに、全期間実績分布を更新する。
【0051】
・上記実施形態では、予兆管理サーバ20の制御部21は、比較結果に基づいて、市場動向の予測処理を実行する(ステップS2−8)。この場合、制御部21の統合予測部212は、予測結果を、ユーザ端末10に出力する。ここで、予測結果の出力先はユーザ端末10に限定されるものではない。例えば、取引を行なう取引実行システムに出力し、この取引実行システムが予測結果に基づいて、取引を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…ユーザ端末、20…予兆管理サーバ、21…制御部、210…学習部、211…個別予測部、212…統合予測部、213…評価部、22…モデル記憶部、23…評価情報記憶部、24…履歴記憶部、30…市場情報管理サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5