(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870044
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ナノ線状構造チタン酸リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20210426BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20210426BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20210426BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20210426BHJP
【FI】
C01G23/00 B
C01G23/00 Z
H01M4/485
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-158055(P2019-158055)
(22)【出願日】2019年8月30日
(65)【公開番号】特開2020-33251(P2020-33251A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】201811002667.X
(32)【優先日】2018年8月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519316254
【氏名又は名称】中国石油天然气股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PetroChina Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】金旭
(72)【発明者】
【氏名】李建明
(72)【発明者】
【氏名】劉合
(72)【発明者】
【氏名】焦航
(72)【発明者】
【氏名】王曉▲チィ▼
(72)【発明者】
【氏名】孫亮
(72)【発明者】
【氏名】劉曉丹
【審査官】
佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1454865(KR,B1)
【文献】
中国特許出願公開第104201364(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102531050(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第107256961(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104261465(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0253039(US,A1)
【文献】
特表2016−501806(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0102458(US,A1)
【文献】
YU, J. et al.,Chemical Communications,英国,2011年,Vol.47,pp.9161-9163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00 − 23/08
H01M 4/00 − 4/62
B82Y 30/00 − 40/00
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン源を水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散させ、攪拌して混合溶液が得られるステップS1と、
ステップS1で得られる混合溶液を加熱し反応させてナノ線状構造前駆体が得られるステップS2と、
ステップS2で得られるナノ線状構造前駆体に分離乾燥処理を行うステップS3と、
分離乾燥処理したナノ線状構造前駆体に低温アニール処理を行うステップS4と、
ステップS4で低温アニール処理したナノ線状構造前駆体に熱液反応を行ってナノ線状構造チタン酸リチウムが得られるステップS5と、
を含む、ナノ線状構造チタン酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記チタン源が、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンプロポキシド、テトラブチルチタネート、チタングリコレート、チタングリセロレート、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、四フッ化チタン、フッ化チタン酸アンモニウム、窒化チタン、酸化チタン、メタチタン酸とオルトチタン酸の中から選択される一つまたは複数の組み合わせである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チタン源が、水和チタン酸の中から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水和チタン酸が、チタニウム含有化合物の加水分解反応によって得られる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記チタニウム含有化合物がチタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンプロポキシド、テトラブチルチタネート、チタングリコレート、チタングリセロレート、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、四フッ化チタン、及びフッ化チタン酸アンモニウムの中から選択される一つまたは複数の組み合わせである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加水分解反応は、前記チタニウム含有化合物を純水に分散させ直接に加水分解して水和チタン酸を生成するものであり、或いは、
前記加水分解反応は、前記チタニウム含有化合物をアルカリ性物質含有水溶液に分散させ加水分解して水和チタン酸を生成するものである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ性物質がアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンとジエタノールアミンの中から選択される一つまたは複数の組み合わせである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記水和チタン酸は、チタニウム含有化合物の加水分解反応と精製処理によって得られ、
前記精製処理には、純度が97%以上の水和チタン酸を得るようにチタニウム含有化合物の加水分解反応による生成物を精製することを含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップS1において、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における水酸化リチウムの濃度が0.4mol/L−1.0mol/Lであり、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における過酸化水素の体積分率が5/1000〜10%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップS2において、前記加熱反応は混合溶液を60℃−100℃まで加熱して反応するものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
反応時間が0.5時間−24時間である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップS3における前記乾燥の温度が20℃−80℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップS4における前記低温アニール処理の温度が120℃−200℃であり、時間が0.5時間−12時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップS4における前記低温アニール処理は、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気に低温アニール処理を行うものである、請求項1又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップS5における前記熱液反応の温度が80℃−150℃であり、時間が1時間−24時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップS5で得られるナノ線状構造チタン酸リチウムを表面改質するステップを含み、
前記表面改質ステップには、ナノ線状構造チタン酸リチウムにカーボン、カーボンナノチューブ、グラフェンと黒リンの中から選択される一つまたは複数の組み合わせを担持させることを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたナノ線状構造チタン酸リチウムを酸交換してナノ線状構造チタン酸が得られることを含む、ナノ線状構造チタン酸の製造方法。
【請求項18】
前記ナノ線状構造チタン酸リチウムを酸交換した後、洗浄分離し乾燥して、ナノ線状構造チタン酸が得られることを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記酸交換には、水素イオン交換を行うようにナノ線状構造チタン酸リチウムを酸溶液に入れて前記ナノ線状構造チタン酸が得られることを含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記酸溶液が硝酸溶液、塩酸溶液、硫酸溶液と酢酸溶液の中から選択される一つまたは複数の組み合わせであり、前記酸溶液における酸の濃度が0.001mol/L−0.1mol/Lである、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載の製造方法により得られるナノ線状構造チタン酸に水熱反応及び/又は高温アニールを行ってナノ線状構造酸化チタンが得られることを含む、ナノ線状構造酸化チタンの製造方法。
【請求項22】
水熱反応の反応系が中性水系、酸性水系又はアルカリ性水系の中から選択されるものである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記水熱反応の温度が100℃−200℃であり、水熱反応の時間が1時間−24時間である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項24】
高温アニールの温度が350℃−800℃であり、時間が1時間−24時間である、請求項21に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー、環境にやさしい材料の製造分野に関し、具体的に、本発明はナノチューブ階層構造チタン酸リチウムの製造方法ならびにその応用及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸リチウム、チタン酸及び酸化チタンは、リチウムイオン電池、カリウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、触媒、光触媒、太陽電池、水の光分解、センサーとバイオロジーなどの分野に幅広く応用され、材料分野では研究の注目点になる。
チタン酸リチウム、チタン酸と酸化チタン材料は、各応用性能がそれらの見かけ構造と密接に関係する。一次元線状ナノ材料は、単結晶ナノ粒子と比較して、粒子間の結晶界面を減少でき、キャリアの長軸方向での輸送に寄与し、以下のような特点がある。
(1)当該ナノレベルで、材料の比表面積と活性サイトが急激に増加し、
その表面反応及び媒体との相互作用を大幅に速くすること、
(2)光触媒の分野では、光による電子−正孔対の長軸方向での自由遷移に寄与し、電子正孔の再結合確率を減少し、光触媒効率を向上させること、
(3)電池電極材料の分野では、長軸が電子の有効遷移に寄与し、短軸がリチウム、ナトリウム又はカリウムイオンの速やかな挿入と脱離の過程に寄与し、一次元ナノ構造がナノ粒子より良い充放電特性をもつこと、
(4)太陽電池の分野では、一次元ナノ構造が粒子間の結晶界面を大幅に減少でき、電子の光アノードでの輸送に寄与し、電池の電子回収転化効率を大幅に向上させること、など。
一次元構造は主にナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ及びナノリボンを含む。その中に、ナノチューブは、内外に2つの表面を有して、高い比表面積を持たせるので、一次元材料構造の研究と応用に利点があり、注目されるものである。
階層構造は、高い規則度を持つので、多種機能を実現でき、その設計開発も徐々に注目を集めることになる。階層構造は、材料の比表面積を増加し、ナノ粒子接触の規則性を増加し、電子の有効遷移などを向上することができる。しかしながら、目前に報道されたチタン酸リチウム、チタン酸及び酸化チタン階層構造はいずれも粒子状であり、一次元構造を持つ階層構造材料が実現されなかったため、階層構造材料による電子の有効分離と輸送をさらに向上させることができない。
そこで、階層構造を持つ一次元ナノ材料、特に一次元のナノチューブ状階層構造を製造すると、材料の比表面積を大幅に向上させるとともに、粒子間の結晶界面を良好に減少し、電子−正孔の再結合しやすい難題を解決し、さらに電子の長軸方向での有効輸送を向上することができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の
一つの実施形態によれば、ナノ
線状構造チタン酸リチウムの製造方法
が提供される。
【0004】
上記目的を達成するために、本発明
の一つの実施形態は、
チタン源を水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散させ、攪拌して混合溶液が得られるステップS1と、
ステップS1で得られる混合溶液を加熱し反応させてナノ線状構造前駆体が得られるステップS2と、
ステップS2で得られるナノ線状構造前駆体に分離乾燥処理を行うステップS3と、
分離乾燥処理したナノ線状構造前駆体に低温アニール処理を行うステップS4と、
ステップS4で低温アニール処理したナノ線状構造前駆体に熱液反応を行ってナノ
線状構造チタン酸リチウムが得られるステップS5と、
を含む、ナノ
線状構造チタン酸リチウムの製造方法を提供する。
【0005】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記チタン源が、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンプロポキシド、テトラブチルチタネート、チタングリコレート、チタングリセロレート、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、四フッ化チタン、フッ化チタン酸アンモニウム、窒化チタン、酸化チタン、メタチタン酸とオルトチタン酸の中から選択される一つまたは複数の組み合わせである。
【0006】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記チタン源が水和チタン酸の中から選択される。
【0007】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水和チタン酸がチタニウム含有化合物の加水分解反応によって得られる。
【0008】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記チタニウム含有化合物がチタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンプロポキシド、テトラブチルチタネート、チタングリコレート、チタングリセロレート、硫酸チタン、硫酸チタニル、四塩化チタン、四フッ化チタンとフッ化チタン酸アンモニウムの中から選択される一つまたは複数の組み合わせである。
【0009】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記加水分解反応は前記チタニウム含有化合物を純水に分散させ直接に加水分解して水和チタン酸を生成するものであり、或いは、
前記加水分解反応は前記チタニウム含有化合物をアルカリ性物質含有水溶液に分散させ加水分解して水和チタン酸を生成するものである。
【0010】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記加水分解反応が常温に行われる。
【0011】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記アルカリ性物質がアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンとジエタノールアミンの中から選択される一つまたは複数の組み合わせである。
【0012】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記アルカリ性物質含有水溶液におけるアルカリ性物質の濃度が0.001−1Mである。
【0013】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水和チタン酸はチタニウム含有化合物の加水分解反応と精製処理によって得られ、
前記精製処理には、純度が97%以上の水和チタン酸を得るようにチタニウム含有化合物の加水分解反応による生成物を精製することを含む。
【0014】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記精製処理の形態が水洗−遠心分離、水洗−膜分離、水洗−濾過及び透析の中から選択される一つまたは複数の組み合わせである。
【0015】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS1において、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における水酸化リチウムの濃度が0.4mol/L−1.0mol/Lであり、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における過酸化水素の体積分率が5/1000〜10%である。
【0016】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における過酸化水素の体積分率が1.5%−7%である。
【0017】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液における過酸化水素の体積分率が2%−5%である。
【0018】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS2において、前記加熱反応は混合溶液を60℃−100℃まで加熱して反応するものである。
【0019】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS2において、前記加熱反応は混合溶液を70℃−95℃まで加熱して反応するものである。
【0020】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS2において、前記加熱反応の反応時間が0.5時間−24時間である。
【0021】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS2において、前記加熱反応の反応時間が3時間−10時間である。
【0022】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS2において、前記加熱反応の反応時間が4時間−8時間である。
【0023】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS3において、前記乾燥の温度が20℃−80℃である。
【0024】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS4において、前記低温アニール処理の温度が120℃−200℃であり、時間が0.5時間−12時間である。
【0025】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS4において、前記低温アニール処理の時間が1時間−12時間である。
【0026】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS4において、前記低温アニール処理が、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気に低温アニール処理を行うものである。
【0027】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS5において、前記熱液反応の温度が80℃−150℃であり、時間が1時間−24時間である。
【0028】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS5において、前記熱液反応はステップS4で低温アニール処理したナノ線状構造前駆体を水又は水酸化リチウムの水溶液中に分散するものである。
【0029】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、ステップS5において、前記水酸化リチウム水溶液の濃度が0.05mol/L−0.3mol/Lである。
【0030】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記方法には、ステップS5で得られるナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを表面改質するステップをさらに含み、
前記表面改質ステップは、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウムにカーボン、カーボンナノチューブ、グラフェンと黒リンの中から選択される一つまたは複数の組み合わせを担持させることを含む。
【0031】
一方、本発明は、本発明の前記製造方法で製造されるナノチューブ階層構造チタン酸リチウムをさらに提供する。
一方、本発明は、前記ナノチューブ階層構造チタン酸リチウムで製造されるイオン電池電極をさらに提供する。
【0032】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記イオン電池がリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、又はマグネシウムイオン電池の中から選択されるものである。
【0033】
一方、本発明は、本発明の前記ナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを酸交換してナノチューブ階層構造チタン酸が得られることを含む、ナノチューブ階層構造チタン酸の製造方法をさらに提供する。
【0034】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記方法には、本発明の前記ナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを酸交換した後、洗浄分離し乾燥して、ナノチューブ階層構造チタン酸が得られることを含む。
【0035】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記酸交換が水素イオン交換を行うようにナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを酸溶液に入れて前記ナノチューブ階層構造チタン酸が得られることを含む。
【0036】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記酸溶液が硝酸溶液、塩酸溶液、硫酸溶液と酢酸溶液の中から選択される一つまたは複数の組み合わせであり、前記酸溶液における酸の濃度が0.001mol/L−0.1mol/Lである。
【0037】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記酸溶液における酸の濃度が0.01mol/L−0.1mol/Lである。
【0038】
一方、本発明は、本発明の前記製造方法で製造されるナノチューブ階層構造チタン酸を更に提供する。
一方、本発明は、本発明の前記ナノチューブ階層構造チタン酸のイオン電池製造又は汚染物吸着への応用をさらに提供する。
【0039】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記イオン電池がリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、又はマグネシウムイオン電池の中から選択されるものである。
【0040】
一方、本発明は、本発明の前記ナノチューブ階層構造チタン酸に水熱反応及び/又は高温アニールを行って前記ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られることを含む、ナノチューブ階層構造酸化チタンの製造方法をさらに提供する。
【0041】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、水熱反応の反応系が中性水系、酸性水系又はアルカリ性水系の中から選択される。
【0042】
ここで、前記酸性水系が本分野で一般の酸の水溶液であってもいいが、例えば硫酸、塩酸、硝酸と酢酸の水溶液の中から選択されるものであってもいい。
前記アルカリ性水系が本分野で一般のアルカリの水溶液であってもいいが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液又はアンモニア水であってもいい。
【0043】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水熱反応の温度が100℃−200℃であり、水熱反応の時間が1時間−24時間である。
【0044】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水熱反応の温度が120℃−180℃である。
【0045】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、前記水熱反応の時間が6時間−24時間である。
【0046】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、高温アニールの温度が350℃−800℃であり、時間が1時間−24時間である。
【0047】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、高温アニールの温度が400℃−600℃である。
【0048】
本発明にかかる具体的な実施形態によれば、高温アニールの時間が2時間−6時間であるが、好ましくは3時間−4時間である。
【0049】
一方、本発明は、本発明の前記製造方法で製造されるナノチューブ階層構造酸化チタンを更に提供する。
【発明の効果】
【0050】
総括すると、本発明は、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウムの製造方法ならびにその応用及び製品を提供する。本発明の技術内容は以下のような利点がある。
(1)本発明の方法で提供する階層構造は、ナノチューブの比表面積を増加し、反応の活性サイトを増加することができる。
(2)本発明の方法で提供する階層構造は、規則がある構造の組み立てであり、階層構造における粒子間の結晶界面を減少でき、電子などキャリアの粒子間の有効遷移に寄与し、材料の応用効果を向上する。
(3)本発明の方法で提供する一次元ナノチューブ状構造は、電子などキャリアの長軸方向での輸送に寄与し、材料の応用効果を向上する。
(4)本発明の方法は製造プロセスが簡単であって、プロセスパラメータを制御しやすく、大規模で工業的に生産しやすくなる。
(5)本発明の方法は、原料を入手しやすく、生産コストが低い。
本発明で製造するナノチューブ階層構造チタン酸リチウムは、応用面では以下のような利点がある。
(1)本発明の階層構造の長軸が電子の有効遷移に寄与し、階層構造がリチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンの速やかな挿入と脱離の過程に寄与し、大きい比表面積が電解液と電極との接触面積に寄与し、電流密度を減少し、優れた電池の快速充放電特性を持たせる。
(2)本発明の階層構造は、電子−正孔分離に寄与し、触媒反応活性サイトを増加し、高い光触媒活性を持って、水の光分解による水素製造又は光触媒による有機汚染物の分解に寄与する。
(3)本発明の階層構造は、その大きい比表面積が染料を多く吸着できるとともに、その一次元構造が電子の輸送に寄与するので、太陽電池の面では利点がある。
(4)本発明の階層構造は、水素ガス、酸素ガス、ホルムアルデヒド、プロパン、エタン、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などのガスのセンサーのようなガスセンサーに寄与する。
(5)本発明の階層構造は、大きい比表面積を持って、多い有機物又は重金属イオンを吸着でき、環境改善の効果を奏するとともに、一本の階層構造ナノチューブが大きい重量と体積を持つので、沈降性分離又は膜分離が簡単になり、材料のリサイクル効果を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明にかかるナノチューブ階層構造酸化チタン製造フローである。
【
図2】本発明にかかる実施例1のナノチューブ階層構造チタン酸リチウムのSEM図である。
【
図3】実施例1で得られる階層構造チタン酸リチウムがリチウムイオン電池の負極に応用される場合には異なる充放電速度でのリチウムイオン電池の放電容量図。
【
図4】本発明にかかるナノチューブ階層構造酸化チタンのSEM図である。
【
図5】実施例10のナノチューブ階層構造酸化チタンの光触媒によるメチレンブルーの分解速度図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の本質および特徴を読者がよりよく理解するのを助けるために、具体的な実施例によって本発明の実施過程および生じる有益な効果を説明したが、本発明の実施可能な範囲を限定するものではない。
【0053】
実施例1
図1のフローに従って、攪拌の条件で、1グラムの硫酸チタニルを100mLの水溶液に分散溶解して溶液を形成した後、溶液が中性になるまでに濃度が0.05モル/Lのアンモニア水を上記溶液にゆっくり滴下して、硫酸チタニルを徐々に且つ完全に加水分解させて水和チタン酸沈殿物を生成した後、水和チタン酸沈殿物を超音波で分散して、脱イオン水で複数回洗浄し、遠心分離した。次に、水酸化リチウム濃度が0.7モル/L、過酸化水素の体積分率が2.5%の水溶液となるように過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解した。その後、上記遠心分離した水和チタン酸沈殿物を、100mLの上記調製した水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散し、攪拌して、黄色い透明な溶液が形成された。次に、上記黄色い透明な溶液を75℃まで加熱した後に定温で8時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。その後、上記白い固体をオーブン中に入れて、60℃で20時間乾燥した。その後、ナノワイヤ表面の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末をオーブン中に入れて120℃で12時間アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を100mLの純水に分散し、100℃で5時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は
図2に示された。
図3は、実施例1で得られる階層構造チタン酸リチウムがリチウムイオン電池の負極に応用される場合には異なる充放電速度でのリチウムイオン電池の放電容量図である。リチウムイオン電池電極の製造にはスキージ法が採用された。まず、チタン酸リチウム階層構造ミクロスフェア生成物:superP:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)=7:2:1の質量比となるように、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤としてスラリーが混合調製され、さらにスキージ機でスラリーを銅箔に均一に塗布した後、金属リチウムを対極とし、1mol/L LiPF
6/EC−DMC−EMC(1:1:1)を電解液とし、GlassFiberをセパレータとして、グラブボックスに型番がCR2032のボタン電池が組み立てられ、電気化学テストに供した。
図3から分かるように、材料のリチウムイオン電池特性のテスト結果が優れ、電池は倍率が異なる充放電速度で相変わらずに高い放電容量を持っていた。
【0054】
実施例2
攪拌の条件で、2グラムの硫酸チタンを100mLの水溶液に分散溶解して溶液を形成した後、溶液が中性になるまでに濃度が0.10モル/Lの水酸化ナトリウムを上記溶液にゆっくり滴下して、硫酸チタンを徐々に且つ完全に加水分解させて水和チタン酸沈殿物を生成した後、水和チタン酸沈殿物を超音波で分散して、脱イオン水で複数回洗浄し、遠心分離した。次に、水酸化リチウム濃度が0.8モル/L、過酸化水素の体積分率が5%の水溶液となるように過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解した。その後、上記遠心分離した水和チタン酸沈殿物を、100mLの上記調製した水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散し、攪拌して、黄色い透明な溶液が形成された。次に、上記黄色い透明な溶液を85℃まで加熱した後に定温で6時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。その後、上記白い固体をオーブン中に入れて、25℃で24時間真空乾燥した。その後、ナノワイヤ表面の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末をオーブン中に入れて、120℃で12時間真空アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を100mLの40%純水含有エタノール溶液に分散し、120℃で6時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は、基本的に
図2に示されたものと同様である。
【0055】
実施例3
攪拌の条件で、5グラムの四塩化チタンを100mLの水溶液に分散溶解して溶液を形成した後、溶液が中性になるまでに濃度が0.10モル/Lの水酸化カリウムを上記溶液にゆっくり滴下して、四塩化チタンを徐々に且つ完全に加水分解させて水和チタン酸沈殿物を生成した後、水和チタン酸沈殿物を超音波で分散して、脱イオン水で複数回洗浄し、遠心分離した。次に、水酸化リチウム濃度が0.6モル/L、過酸化水素の体積分率が4%の水溶液となるように過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解した。その後、上記遠心分離した水和チタン酸沈殿物を、200mLの上記調製した水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散し、攪拌して、黄色い透明な溶液が形成された。次に、上記黄色い透明な溶液を95℃まで加熱した後に定温で4時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。その後、上記白い固体をオーブン中に入れて、80℃で12時間真空乾燥した。その後、ナノワイヤ表面及び内部部分の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末をオーブン中に入れて、150℃で6時間アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を200mLの0.01モル/L硝酸含有水溶液に分散し、140℃で2時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は、基本的に
図2に示されたものと同様である。
【0056】
実施例4
攪拌の条件で、2グラムのチタンイソプロポキシドを100mLの水溶液に分散し、直接に加水分解させて水和チタン酸沈殿物を形成した後、水和チタン酸沈殿物を超音波で分散して、脱イオン水で複数回洗浄し、遠心分離した。次に、水酸化リチウム濃度が0.8モル/L、過酸化水素の体積分率が5%の水溶液となるように過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解した。その後、上記遠心分離した水和チタン酸沈殿物を、100mLの上記調製した水酸化リチウム含有過酸化水素水溶液に分散し、攪拌して、黄色い透明な溶液が形成された。次に、上記黄色い透明な溶液を80℃まで加熱した後に定温で4時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。その後、上記白い固体をオーブン中に入れて、70℃で15時間真空乾燥した。その後、ナノワイヤ表面及び内部部分の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末をオーブン中に入れて、200℃で1時間アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を150mLの0.1モル/L水酸化カリウム含有水溶液に分散し、150℃で1.5時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は、基本的に
図2に示されたものと同様である。
【0057】
実施例5
まず、過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解して、水酸化リチウム濃度が0.9モル/Lで過酸化水素体積分率が3%である水溶液100mLが形成された。攪拌の条件で、上記水溶液へ1グラムの硫酸チタニルをゆっくり加え、攪拌によって黄色い透明な溶液が形成された。その後、上記黄色い透明な溶液を70℃まで加熱した後、定温で8時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。次に、上記白い固体をオーブン中に入れて、60℃で20時間真空乾燥した。その後、ナノワイヤ表面及び内部部分の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末を管状炉に入れて、窒素雰囲気に150℃で3時間アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を100mLの純水に分散し、100℃で5時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は、基本的に
図2に示されたものと同様である。
【0058】
実施例6
まず、過酸化水素と水酸化リチウムを水に溶解して、水酸化リチウム濃度が0.6モル/Lで過酸化水素体積分率が2%である水溶液100mLが形成された。攪拌の条件で、上記水溶液へ1グラムのテトラブチルチタネートをゆっくり加え、攪拌によって黄色い透明な溶液が形成された。その後、上記黄色い透明な溶液を80℃まで加熱した後、定温で5時間攪拌し、反応を停止させ、白い固体が分離された。次に、上記白い固体をオーブン中に入れて、60℃で20時間真空乾燥した。その後、ナノワイヤ表面及び内部部分の過酸化水素を除去するために、上記乾燥した白い固体粉末を管状炉に入れて、水素雰囲気に150℃で3時間アニール処理した。その後、上記低温処理した白い固体粉末を100mLの40%エタノール含有純水に分散し、120℃で3時間反応させて、ナノチューブ階層構造チタン酸リチウム生成物が得られた。そのSEM図は、基本的に
図2に示されたものと同様である。
【0059】
実施例7
実施例1で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを分離した後、オーブン中に入れて、120℃で24時間乾燥した。その後、乾燥したナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを脱イオン水で複数回洗浄分離した後、水素イオン交換を行うように0.01モル/Lの硝酸溶液に入れて、水素イオン交換後に、洗浄液のpHが中性に近いまでに脱イオン水で複数回洗浄し、その後、分離乾燥して、ナノチューブ階層構造チタン酸が得られた。
【0060】
実施例8
実施例1で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを分離した後、オーブン中に入れて、150℃で12時間乾燥した。その後、乾燥したナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを脱イオン水で複数回洗浄分離した後、水素イオン交換を行うように0.05モル/Lの塩酸溶液に入れて、水素イオン交換後に、洗浄液のpHが中性に近いまでに脱イオン水で複数回洗浄し、その後、分離乾燥して、ナノチューブ階層構造チタン酸が得られた。
【0061】
実施例9
実施例1で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを分離した後、オーブン中に入れて、200℃で4時間乾燥した。その後、乾燥したナノチューブ階層構造チタン酸リチウムを脱イオン水で複数回洗浄分離した後、水素イオン交換を行うように0.1モル/Lの酢酸溶液に入れて、水素イオン交換後に、洗浄液のpHが中性に近いまでに脱イオン水で複数回洗浄し、その後、分離乾燥して、ナノチューブ階層構造チタン酸が得られた。
【0062】
実施例10
実施例7で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸をマッフル炉に入れ、400℃で4時間アニールして、ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られた。そのSEM図は
図4に示された。
図5が本実施例のナノチューブ階層構造酸化チタンの光触媒によるメチレンブルーの分解速度図でる。それは、テスト条件について、本実施例で製造された階層構造酸化チタン生成物 50mgを10mg/Lのメチレンブルー溶液に分散して、3ワットLED紫外線ランプの照射下で光触媒によってメチレンブルーを分解した。同じテスト条件で、P25が比較物質として使用された。
図5から分かるように、本実施例で製造された材料の光触媒による有機物の分解性能は従来に商業化されたP25製品より優れ、光触媒による有機汚染物の分解の応用では大きく期待されている。
【0063】
実施例11
実施例7で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸をマッフル炉に入れ、600℃で3時間アニールして、ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られた。そのSEM図は、基本的に
図4に示されたものと同様である。
【0064】
実施例12
実施例7で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸を100mL純水に分散し、180℃で6時間反応させて、ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られた。そのSEM図は、基本的に
図4に示されたものと同様である。
【0065】
実施例13
実施例7で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸を濃度が0.01モル/Lの硝酸溶液100mLに分散し、150℃で12時間反応させて、ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られた。そのSEM図は、基本的に
図4に示されたものと同様である。
【0066】
実施例14
実施例7で製造されたナノチューブ階層構造チタン酸を濃度が0.01モル/Lのアンモニア水溶液100mLに分散し、120℃で24時間反応させて、ナノチューブ階層構造酸化チタンが得られた。そのSEM図は、基本的に
図4に示されたものと同様である。