特許第6870046号(P6870046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6870046-癌治療 図000066
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870046
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】癌治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20210426BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/385 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61K31/675
   A61K31/12
   A61K31/155
   A61K31/352
   A61K31/385
   A61K31/4045
   A61K31/485
   A61P35/00
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】106
(21)【出願番号】特願2019-163624(P2019-163624)
(22)【出願日】2019年9月9日
(62)【分割の表示】特願2018-92024(P2018-92024)の分割
【原出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2019-203034(P2019-203034A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年9月9日
(31)【優先権主張番号】61/811,209
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516033259
【氏名又は名称】ネッド バイオシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ ランバート ベント
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−2304(JP,A)
【文献】 FINN SCHOTT ANDERSEN,CEA REDUCTION TO 6 IN LESS THAN ONE MONTH ON LOW DOSE METRONOMIC CHEMOTHERAPY,[ONLINE],2010年 4月27日,URL,http://www.humlegaarden.com
【文献】 Apoptosis,2005年,Vol.10, No.2,p.359-368
【文献】 Cancer Lett,2004年,Vol.215, No.2,p.159-166
【文献】 PMID 1949579,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1949579
【文献】 BMC Med,2011年,Vol.9,Document No.9
【文献】 Nut Res Pract,2009年,Vol.3, No.4,p.265-271
【文献】 PMID 22826883,2011年,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22826883
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも7つの薬剤を含む、少なくともII期の後期乳癌を処置するための組み合わせ物であって、前記少なくとも7つの薬剤は、シクロホスファミド、メトホルミン、アルファリポ酸、クルクミン、ゲニステイン、メラトニン、およびナルトレキソンを含む、組み合わせ物。
【請求項2】
前記乳癌が末期癌である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記乳癌が、別の治療モダリティによる処置後に再発した癌である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記少なくとも7つの薬剤のいずれも、その最大許容用量で利用される化学療法剤ではない、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記薬剤のそれぞれが、10超の治療指数を有する、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記薬剤の少なくとも1つがメトロノーム投薬で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記癌が少なくともII期、III期またはIV期にある点で、前記癌が進行している、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記癌が転移している、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記薬剤のそれぞれが、前記薬剤の最大許容用量を大きく下回る用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
シクロホスファミドが50mg/日の用量で投与され、メトホルミンが50〜2000mg/日の用量で投与され、かつ/またはナルトレキソンが1.5〜4.5mg/日の用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記少なくとも7つの薬剤の少なくとも一部が、連続レジメンにしたがって投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記組み合わせ物が、前記癌の1つまたはそれを超える症状または特徴が消散した後に、継続して投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
前記組み合わせ物が、複数回の投薬で被験体に投与され、前記複数回の投薬のそれぞれはある期間だけ互いに隔てられることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
前記少なくとも7つの薬剤が、化学療法の補助として投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
シクロホスファミド、メトホルミン、アルファリポ酸、クルクミン、ゲニステイン、メラトニン、およびナルトレキソンのそれぞれの少なくとも1単位用量を含む、後期乳癌を処置するための製造物品。
【請求項16】
少なくとも7つの薬剤を含む、癌を処置するための組み合わせ物であって、前記少なくとも7つの薬剤は、メトロノームシクロホスファミド、メトホルミン、アルファリポ酸、クルクミン、ゲニステイン、メラトニン、およびナルトレキソンを含む、組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
癌は世界中で主な死因であり、2008年には760万件の死亡(全死亡の約13%)を占めている。世界保健機関によれば、毎年、肺癌、胃癌、肝臓癌、結腸癌および乳癌は、最も多い癌死の原因である。癌は、米国における死因の第2位であり、心臓病のみがそれを上回る。United States Cancer Statistics:1999−2008 Incidence and Mortality Web−based
Reportによれば、2008年には、565,000人を超える人々が癌で死亡し、148万人を超える人々が癌と診断されている。毎年、癌のコストは、失われた命の数および新たな診断を超えて拡大している。癌の財政コストも圧倒的である。国立衛生研究所によれば、2010年には、米国は、医療費および生産性の損失において、癌のために推定2638億ドルの費用がかかっている(www.cdc.gov/chronicdisease/resources/publications/AAG/dcpc.htm.を参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
本発明は一般に、癌を処置するための(いくつかの実施形態では上皮細胞起源の癌を処置するための)方法および組成物に関する。本明細書に記載される改善された処置方法およびレジメンは、個別的な癌処置の開発に対する包括的な新規アプローチの産物である。処置に対するアプローチは、癌の成長および転移が、抑制されていない(unchecked)細胞プロセス(特に、血管新生)、およびそれと同時に、患者における複数の代謝経路およびシグナリング経路の活性化に依存すると認識する。正常な個体において癌の成長を抑制するかまたは少なくとも支援しない経路は、癌患者では不活性であり、遮断または減衰されている;同様に、正常な個体では抑制(in check)または相殺している癌支援的な経路は、癌患者では増幅されている。いくつかの実施形態では、本発明の治療アプローチの目的は、血管新生を阻害または減衰すること、ならびに癌の生存または成長に寄与すると検出されているか、または疑われている代謝経路、細胞間シグナリング経路および細胞内シグナリング経路の多くをリバランス(rebalance)することである。
【0003】
いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載され提供される処置プロトコールの目的は、以下の1つまたはそれよりも多くを達成することである:
・腫瘍血管新生(すなわち、腫瘍が成長および進行するために必要とする血管系の形成および発達)または血管新生を支援する経路(シグナル伝達を誘導する血管模倣(例えば、腫瘍幹細胞活性)の破壊を含む)を遮断、中断または減衰すること;
・好ましくは、抗腫瘍アポトーシス促進活性を増加させながら、化学療法の有効性を増強するために、化学療法薬に対する化学耐性の機構を軽減、遮断または反転すること;
・アポトーシスを受ける能力を促進または更新する、好気的解糖(「ワールブルク効果」)からグルコース酸化への代謝シフトを支援すること;
・腫瘍細胞の成長を促進する細胞内腫瘍細胞シグナル伝達経路を遮断、中断または減衰すること;
・局所組織への腫瘍浸潤および腫瘍転移(すなわち、他の組織または器官への腫瘍細胞の拡散)を促進する細胞間シグナリング経路を阻害すること;
・細胞増殖に対する阻害効果を有するオピオイド免疫モジュレーションを誘導すること(Donahue RNら、Low−dose naltrexone targets opioid growth factor receptor pathway to
inhibit cell proliferation:mechanistic evidence from tissue culture model,Exp.Biol.Med.(Maywood),2011 Sep 1;236(9);1036−50);
・処置レジメンに追加される化学療法および任意の他の有効成分の毒性副作用を軽減または回避すること;および
・患者の宿主防御(特に、宿主免疫系)、それらの一般健康および幸福を増大または増強すること。
【0004】
いくつかの実施形態では、本発明は、癌処置に従来含まれる1つまたはそれを超える薬剤の使用と、1つまたはそれを超える天然に存在する化合物および/または栄養素、例えば「栄養補助食品(nutraceutical)」の投与とを組み合わせる癌処置のユニークなアプローチを提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される処置プロトコールは、内因性シグナリング経路を阻害、停止および/もしくは別の方法で破壊し、もしくは適切な場合には増強し、ならびに/または抗血管新生レギュレーター(例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンまたはトロンボスポンジン(thrombospodin)−1)(これは調節不全になると、癌性成長または腫瘍の形成につながるか、またはこれらの発達を支援する)をアップレギュレートするように設計される。
【0006】
好ましい実施形態では、本発明は、上皮細胞関連の癌または腫瘍を処置するための組成物および方法を対象とする。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、癌もしくは腫瘍が寛解しているか、または換言すれば疾患の証拠がないと決定されたら、開示される処置レジメンを継続することによって、癌の再発を予防するように設計される。
【0008】
本明細書に記載される方法および組成物の1つのユニークな特徴は、特定の患者に実現される利益を最大化するために、それぞれの化合物および投薬量の組み合わせを、各個体または患者に合わせて調整し得ることである。この点において、処置レジメンは、レジメン開始前における特定のパラメータの前処理分析(例えば、処置すべき患者から得られた血液または生検組織の分析)に基づくものである。
【0009】
本発明は、従来の腫瘍学が補完的なモダリティと融合され得る、癌治療に対するユニークで統合的なアプローチを提供する。補完的な態様は、従来型および非従来型の両方の各処置要素が、癌細胞内の血管新生および発癌性シグナル伝達経路、ならびに腫瘍細胞とそれらの局所的な細胞および生化学的微小環境との間の細胞間シグナル伝達を阻害するように設計される相乗的なアプローチを容易にするために、天然化合物および非化学療法薬の使用を強調し、腫瘍血管新生の継続的なプロセスを刺激する細胞間シグナル伝達の破壊を強く強調している。
【0010】
本発明は、本明細書に記載されるように、特定の従来の化学療法レジメンに関連する様々な問題の原因を定義することを含む、様々な新規の洞察を包含する。
【0011】
例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、複数の経路を標的化する治療モダリティを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、複数回および/または複数の方法で特定の経路を一緒に標的化する構成要素の組み合わせを利用する治療レジメンを提供する(例えば、図1の説明を参照のこと)。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、特定の単一の投薬可能(druggable)ターゲットを特異的にモジュレートしない(例えば、癌遺伝子産物を阻害し、または腫瘍抑制遺伝子産物を増強する)という点で伝統的な化学療法剤ではない様々な薬剤が、特に、本明細書に記載されるように組み合わせて利用する場合に、癌処置に有用であるという認識を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、非致命的なおよび/または慢性の疾患、障害および状態の処置のために開発および/または利用されているある特定の薬剤が、予想外のことに、それらが本明細書に記載される経路を標的化し、および/または本明細書に記載されるように組み合わせて利用される場合に、癌処置に特に有用であるという認識を包含する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、薬剤(特に、治療指数が高く、および/または特にそれらの最大許容用量(maximum tolerated dose)よりも十分に少ない用量の薬剤)の慢性投与が、予想外のことに、特に、本明細書に記載されるように組み合わせて利用する場合に、癌処置に特に有用であるという認識を包含する。
【0015】
本開示により提供される様々な他の洞察および利点は、本明細書でさらに詳細に議論される。
【0016】
本発明のある特定の特に好ましい実施形態では、方法および/または組成物は、処置を必要とする患者に合わせて個別に調整され、例えば、その個体の処置のために選択された組成物の各化合物の最適な組み合わせおよび投薬量を決定するために、処置すべき患者から採取された血液サンプルまたは組織生検で測定された多数のパラメータに基づくものである。
【0017】
ある特定の実施形態では、(例えば、本明細書に開示される方法および教示に従うことによって)一度癌が寛解したら、寛解期間を維持もしくは延長するために、または1つもしくはそれを超える異常にアップレギュレートされた癌支援代謝および/もしくはシグナリング経路、または1つもしくはそれを超える異常にダウンレギュレートされた癌抑制代謝および/もしくはシグナリング経路が正常に戻るまで、患者は、本発明の処置レジメンを継続し得ることも企図される。このように、本発明の方法に従うことは、疾患の再発を予防するのに役立つ。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明により提供される処置レジメンは、従来の抗癌治療薬(化学療法剤)に加えて投与され得る有効成分の組み合わせの投与を含むため、本発明の組み合わせは、多くの場合、天然に存在する化合物、栄養素、抽出物または他の栄養補助化合物、例えばクルクミンなど、非化学療法剤、例えばメトホルミン、ナルトレキソン、メラトニンなど;および/または化学療法剤、例えばシクロホスファミドを含むであろう。いくつかの実施形態では、癌患者に投与すべき組成物は、これらの栄養補助化合物(現在入手可能な薬物として、または承認されている薬物として)、非化学療法薬および化学療法薬の3〜8つまたはそれを超える組み合わせを含み得る(例えば、図1を参照のこと)。当業者(例えば患者の癌専門医またはプライマリケア医)であれば、化合物の特定の組み合わせおよびそれぞれの投薬量を決定し得る。
【0019】
したがって、本発明は一般に、従来の腫瘍学が補完的なモダリティと融合され得る、癌治療に対するユニークで統合的なアプローチを対象とする。補完的な態様は、従来の薬剤の使用を増大および/または改善して、相乗効果または複合効果を促進するために、低毒性の組み合わせを使用することを強調している。特に、本発明の併用療法処置の構成要素は、癌の生存に、癌による損害に、および患者の健康の改善に寄与するすべてのまたは可能な限り多くの生物系に対処するために、血管新生、および癌細胞内の発癌シグナル伝達経路、および腫瘍細胞とそれらの局所的な細胞および生化学的微小環境との間の細胞間シグナル伝達をまとめて無効化するように設計される。本明細書に記載される癌処置に対する新規なアプローチに含まれる有効成分は、癌、例えば上皮起源の癌(例えば、乳癌、食道癌、子宮癌、肝臓癌など)、ならびに血管新生および複数のシグナリング経路のレギュレーションが求められるすべての形態の癌または他の疾患の従来の処置を改善することが実証された。
【0020】
したがって、様々な態様では、本発明は、場合により化学療法の補助として、癌と診断された患者に投与するための組成物であって、癌の発生に関与する特定の代謝経路または細胞内シグナリング経路または細胞間シグナリング経路をそれぞれがレギュレートすることができる少なくとも3つの成分を含み、少なくとも3つのこのような経路に対処する組成物を提供する。本発明の組成物は、癌患者における特定の内在性経路またはプロセスが同時に処置されるように、3つまたはそれを超える成分の混合物の形態であり得るか、または単に、一緒に使用されるようにパッケージされた別個の成分であり得る。
【0021】
一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも3つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物は表1から選択され、以下の3つの表(表2〜4)の少なくとも2つから選択される。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
一実施形態では、本発明の組成物は、ナルトレキソン、メトホルミンおよびシクロホスファミドの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、1つまたはそれを超える他の化合物がこの組み合わせに追加される。
【0027】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも4つの異なる化合物から構成され、1つの化合物が、上記4つの表1〜4のそれぞれから選択される。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、シクロホスファミド、メトホルミン、メラトニンおよびクルクミンを含む。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、上記4つの化合物と、それに加えて、ナルトレキソン、アルファリポ酸およびゲニステインとを含む。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、シクロホスファミド、メトホルミン、メラトニン、クルクミン、ナルトレキソン、アルファリポ酸およびスクアラミンを含む。
【0029】
別の実施形態では、本発明の組成物は、表1〜4から選択される少なくとも5つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物は、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される。
【0030】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、クルクミン、ゲニステイン、シクロホスファミド、メラトニンおよびメトホルミンを含む。別の実施形態では、本発明の組成物は、表1〜4から選択される少なくとも6つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物は、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される。特定の実施形態は、クルクミン、シクロホスファミド、メトホルミン、メラトニン、アルファリポ酸およびナルトレキソンを含む組成物である。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、表5に記載されている7つの化合物またはそれらの等価物を含む:
【0032】
【表5】
【0033】
上記組成物は、有利には、標準的な化学療法剤のサプリメントとして使用される。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明は、癌を処置するためのサプリメントであって、各1日量を提供するのに十分な投薬量で、以下の表6に記載されている化合物を含むサプリメントを提供する:
【0035】
【表6-1】
【0036】
表1〜6に記載されている化合物のそれぞれについて、元の化合物と同じ有効成分を含有するか、または元の化合物と同じ細胞プロセス(例えば、血管新生)、代謝経路、細胞内シグナリング経路もしくは細胞間シグナリング経路に対して同様の効果を有する等価な化合物に置き換え得る。表1〜6に記載されている好ましい化合物の適切な等価物は、以下に議論される。
【0037】
本発明はまた、癌の処置(より具体的には、上皮起源の癌の処置)における前記組成物のいずれかの使用を企図する。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、少なくとも3つの化合物を含む組成物の使用であって、少なくとも1つの化合物が表1から選択され、上記3つの表2、3および4の少なくとも2つから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、少なくとも4つの化合物を含む組成物の使用であって、1つの化合物が、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、表1〜4から選択される少なくとも5つの化合物を含む組成物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、表1〜4から選択される少なくとも6つの化合物を含む組成物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、表1〜4から選択される少なくとも6つの化合物を含む組成物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、表1〜4から選択される少なくとも7つの化合物を含む組成物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、上記表1、2、3および4のそれぞれから選択される使用を含む。さらなる実施形態では、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)組成物であって、シクロホスファミド、メトホルミン、メラトニンおよびクルクミンを含む組成物が提供される。さらなる実施形態では、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)組成物であって、上記4つの化合物と、それに加えてナルトレキソン、アルファリポ酸およびゲニステインとを含む組成物が提供される。さらなる実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)医薬を作製するための、上記表5に列挙されている化合物を含む組成物の使用を含む。
【0039】
さらに別の実施形態では、本発明は、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)方法であって、上記組成物のいずれかを投与することを含む方法を提供する。癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮起源の癌を処置するための)方法であって、化学療法の補助として、上記組成物のいずれかを投与することを含む方法も開示される。
【0040】
本発明はまた、癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮細胞関連癌を処置するための)方法であって、
(a)前記個体の上皮組織または血液における、VEGF、MMP−9、MMP−2、TNF−α、TGF−β、EGFR、IL−6およびレプチンからなる群より選択される1つまたはそれを超える血管新生促進レギュレーターの異常に高いレベルを検出し、ならびに/または前記個体の器官組織または血液における、アンギオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン−1もしくは他の抗血管新生レギュレーターの異常に低いレベルを検出する工程;
(b)以下のグループI、II、III、IVおよびVで特定されている少なくとも2つの代謝経路、細胞間シグナリング経路または細胞内シグナリング経路の異常なまたは望ましくない活性化であって、少なくとも2つの別個のグループの経路について検出される異常なまたは望ましくない活性化を検出する工程:
【0041】
【表6-2】
【0042】
(c)シクロホスファミドと、以下の表7(例えば、表7Aまたは表7B)にしたがって、(a)および(b)で検出された経路活性化に対応する化合物の群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む組成物を投与する工程を含み、正常へと(すなわち、癌を示していない個体における活性のレベルへと)前記異常なまたは望ましくない経路活性化を変化させるのに有効な量で前記化合物を投与する方法を提供する。
【0043】
【表7-1】
【0044】
【表7-2】
【0045】
【表7-3】
【0046】
【表7-4】
【0047】
上記表5および表6は、癌と診断された患者を処置するための(より具体的には、上皮細胞関連癌を処置するための)本明細書に記載される処置レジメンの一部として有利に投与され得る構成要素のリストを示す。表6のリストは、各化合物の典型的な1日用量を含む。当技術分野の実務者であれば、リストのどの化合物が、およびそれぞれのどの投薬量が最も有益であるか(すなわち、腫瘍サイズを減少させる可能性が最も高いか)を決定するために、これらの投薬量は、例えば、患者の血液分析の結果、患者の進行のモニタリングなどに基づいて、個々の患者に合わせて調整されると理解するであろう。患者の継続的なモニタリングを通じて、それに応じて化合物および投薬量を調整する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
血管新生、アポトーシス、免疫監視、代謝およびエネルギー論およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも3つの癌関連経路を一緒に標的化する少なくとも3〜8つの薬剤を組み合わせて投与することによって、癌を処置する方法。
(項目2)
少なくとも3〜8つの前記薬剤がいずれも、その最大許容用量で利用される化学療法剤ではない、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記薬剤のそれぞれが、約10超の治療指数を有する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記薬剤の少なくとも1つをメトロノーム投薬で投与する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記少なくとも3つの経路のそれぞれが少なくとも2つの薬剤によって標的化されるように、前記薬剤が選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも3つの経路のそれぞれが少なくとも3つの薬剤によって標的化されるように、前記薬剤が選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
少なくとも3〜8つの前記薬剤が、アルファリポ酸、クルクミン、メトロノームシクロホスファミド、ゲニステイン、メラトニン、メトホルミン、N−アセチルシステイン、ナルトレキソン、オピオイド成長因子、スクアラミンおよびそれらの等価物からなる群より選択される、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
アルファリポ酸、クルクミン、メトロノームシクロホスファミド、ゲニステイン、メラトニン、メトホルミン、N−アセチルシステイン、ナルトレキソン、オピオイド成長因子、スクアラミンおよびそれらの等価物からなる群より選択される少なくとも3〜8つの薬剤を、癌を患っている被験体に投与することによって、癌を処置する方法。
(項目9)
前記癌が少なくともII期、III期またはIV期にある点で、前記癌が進行している、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記癌が転移している、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記薬剤の最大許容用量を大きく下回る用量で、前記薬剤のそれぞれを投与する、項目8に記載の方法。
(項目12)
アルファリポ酸の等価物が、TNF−α誘導性NF−カッパB経路の活性化を阻害する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目13)
ナルトレキソンの等価物が、他のオピオイド受容体アンタゴニストである、項目8に記載の方法。
(項目14)
オピオイド成長因子の等価物が、オピオイド成長因子受容体(OGFr)に結合する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目15)
スクアラミンの等価物が、成長因子を阻害し、かつナトリウム−プロトンアンチポーターポンプシステムを阻害する他の抗生物質剤である、項目8に記載の方法。
(項目16)
クルクミンの等価物が、PI3K/Akt、MAPKおよびNF−κB活性化のシグナル伝達経路、ならびにソニックヘッジホッグ(Shh)シグナリングを阻害する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目17)
クルクミンの等価物が、上皮成長因子受容体(EGFRおよびerbB2)、インスリン様成長因子1型受容体(IFG−1R)、ソニックヘッジホッグ(SHH)/GLI)およびWnt/b−カテニンおよびPARP、IKK、EGFR、JNK、MAPK、5−LOX、STAT、IL−6、COX−2およびMMPをダウンレギュレートする他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目18)
ゲニステインの等価物が、NF−カッパBおよびAktシグナリング経路の活性化を阻害する他のイソフラボンである、項目8に記載の方法。
(項目19)
ゲニステインの等価物が、酸化促進物質シグナリングおよびその結果としての細胞死につながる内因性銅を標的化する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目20)
シクロホスファミドの等価物が、非毒性低用量で毎日投与する場合には他のメトロノーム抗血管新生細胞傷害性抗腫瘍薬である、項目8に記載の方法。
(項目21)
メトホルミンの等価物が、酸化ストレス、嫌気的解糖、ワールブルク効果およびCOX−2活性化を介して細胞代謝に影響を与える他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目22)
メトホルミンの等価物が、インスリン感受性を改善し、かつインスリン成長因子−1(IGF−1)の活性を抑制する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目23)
メラトニンの等価物が、低酸素状態およびVEGF mRNA発現の下でHIF−1α安定化を阻害することによって、腫瘍血管新生を抑制する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目24)
メラトニンの等価物が、COX−2/PGE2、p300/NF−κBおよびPI3K/Akt/シグナリングを抑制すると同時に、Apaf−1/カスパーゼ依存性アポトーシス経路を活性化することによって、細胞増殖を阻害し、かつインビトロで癌細胞のアポトーシスを誘導する他の薬剤である、項目8に記載の方法。
(項目25)
N−アセチルシステイン(NAC)の等価物が、アポトーシスをレギュレートし、かつ好中球性炎症を制御するためのCOX−2タンパク質、NFκBおよびJNK経路の発現をモニタリングする他の薬剤である、項目8に記載の方法。2R.少なくとも3〜8つの前記薬剤が、
その最大許容用量でのまたはその最大許容用量付近での投与を特徴とする少なくとも1つの従来の化学療法剤;および
アルファリポ酸、クルクミン、ゲニステイン、メラトニン、メトホルミン、N−アセチルシステイン、ナルトレキソン、オピオイド成長因子またはそれらの等価物からなる群より選択される1つまたはそれを超える栄養補助剤または非化学療法剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目26)
連続レジメンにしたがって、少なくとも3〜8つの前記薬剤の少なくとも一部を投与する、項目1に記載の方法。
(項目27)
前記方法が、前記癌の1つまたはそれを超える症状または特徴が消散した後に、投与を継続することを含む、項目1に記載の方法。
(項目28)
化学療法の補助として、少なくとも3〜8つの前記薬剤を投与する、項目1に記載の方法。
(項目29)
アルファリポ酸、メトロノームシクロホスファミド、クルクミン、ゲニステイン、メラトニン、メトホルミン、ナルトレキソンからなる群より選択される1つまたはそれを超える薬剤を用いて、癌を処置する方法であって、前記方法は、1つまたはそれを超える前記薬剤を、癌を患っているかまたは癌に感受性の被験体に投与することを含み、その結果、前記被験体が、前記薬剤の少なくとも3つによる治療を受けている、方法。
(項目30)
前記被験体が、前記薬剤の少なくとも4つによる治療を受けている、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記被験体が、前記薬剤の少なくとも5つによる治療を受けている、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記被験体が、前記薬剤の少なくとも6つによる治療を受けている、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記被験体が、前記薬剤の全部による治療を受けている、項目29に記載の方法。
(項目34)
前記被験体が、以下の投薬レジメン:
【表20-1】
にしたがって、前記薬剤の少なくとも3つによる治療を受けている、項目29に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が癌を患っている、項目29に記載の方法。
(項目36)
前記癌が後期癌から選択される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記癌が、II期癌、III期癌またはIV期癌である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記癌が末期癌である、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記被験体が転移癌を患っている、項目35に記載の方法。
(項目40)
前記被験体が、別の治療モダリティによる処置後に再発した癌を患っている、項目35に記載の方法。
(項目41)
前記被験体が固形腫瘍を患っている、項目35に記載の方法。
(項目42)
前記被験体が上皮起源の腫瘍を患っている、項目35に記載の方法。
(項目43)
前記被験体が、上皮細胞癌、肉腫および血液癌(白血病またはリンパ腫)からなる群より選択される癌を患っている、項目35に記載の方法。
(項目44)
前記被験体が、上皮細胞癌または肉腫を患っている、項目35に記載の方法。
(項目45)
前記被験体が、乳癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌などからなる群より選択される癌を患っている、項目35に記載の方法。
(項目46)
前記被験体が腺癌腫を患っている、項目35に記載の方法。
(項目47)
前記被験体が平滑筋肉腫を患っている、項目35に記載の方法。
(項目48)
3つの化合物を含む組成物であって、前記3つの化合物のそれぞれが、癌を患っている個体における癌の進行に関与する特定の代謝経路または細胞内シグナリング経路または細胞間シグナリング経路をレギュレートすることができ、少なくとも3つのこのような経路に対処する、組成物。
(項目49)
前記3つの化合物が、栄養補助剤および/または非化学療法剤を含む、項目48に記載の組成物。
(項目50)
前記3つの化合物が、ナルトレキソン、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目49に記載の組成物。
(項目51)
前記組成物が1つまたはそれを超える栄養補助剤をさらに含む、項目50に記載の組成物。
(項目52)
少なくとも3つの異なる化合物を含む組成物であって、少なくとも1つの化合物が以下の表1:
【表20-2】
から選択され、2つまたはそれを超える化合物が、以下の表2、3または4:
【表20-3】
から選択される、組成物。
(項目53)
前記少なくとも3つの異なる化合物の2つが、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目52に記載の組成物。
(項目54)
前記少なくとも3つの異なる化合物が、クルクミン、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目52に記載の組成物。
(項目55)
前記癌が上皮起源の癌である、項目48に記載の組成物。
(項目56)
少なくとも4つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物が、表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目52に記載の組成物。
(項目57)
前記4つの異なる化合物が、シクロホスファミド、メトホルミン、メラトニンおよびクルクミンである、項目56に記載の組成物。
(項目58)
ゲニステインおよび/またはアルファリポ酸をさらに含む、項目56に記載の組成物。(項目59)
ナルトレキソンをさらに含む、項目57に記載の組成物。
(項目60)
少なくとも5つの異なる化合物を含む組成物であって、少なくとも1つの化合物が、以下の表1〜4:
【表20-4】
のそれぞれから選択される、組成物。
(項目61)
前記組成物が、クルクミン、シクロホスファミド、メラトニン、メトホルミンおよびナルトレキソンを含む、項目60に記載の組成物。
(項目62)
少なくとも6つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物が、表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目60に記載の組成物。
(項目63)
前記少なくとも6つの異なる化合物が、クルクミン、シクロホスファミド、メラトニン、アルファリポ酸、メトホルミン、ナルトレキソンを含む、項目62に記載の組成物。
(項目64)
少なくとも8つの異なる化合物を含む組成物であって、少なくとも1つの化合物が、以下の表1〜4:
【表20-5】
のそれぞれから選択される、組成物。
(項目65)
癌を患っている個体を処置するための(より具体的には、上皮細胞関連癌を処置するための)組成物であって、前記組成物は、以下の化合物:
【表20-6】
から選択される少なくとも7つの化合物またはそれらの等価物を、列挙されている1日量を提供するのに十分な投薬量で含む、組成物。
(項目66)
癌を処置するための組成物の使用であって、前記組成物は少なくとも3つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物が、以下の表1:
【表20-7】
から選択され、2つまたはそれを超える化合物が、以下の表2、3または4:
【表20-8】
から選択される、使用。
(項目67)
前記癌が上皮起源のものである、項目66に記載の使用。
(項目68)
前記癌が上皮起源の癌である、項目66に記載の使用。
(項目69)
前記少なくとも3つの異なる化合物の2つが、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目66に記載の使用。
(項目70)
前記少なくとも3つの異なる化合物が、ナルトレキソン、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目66に記載の使用。
(項目71)
前記組成物が、少なくとも4つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物が、4つの表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目66に記載の使用。
(項目72)
前記組成物が、少なくとも5つの異なる化合物を含み、前記化合物の少なくとも1つが、表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目66に記載の使用。
(項目73)
前記組成物が、少なくとも6つの異なる化合物を含み、前記化合物の少なくとも1つが、表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目66に記載の使用。
(項目74)
上皮起源の癌を患っている個体を処置するための方法であって、少なくとも3つの化合物を含む組成物を前記個体に投与することを含み、前記3つの化合物のそれぞれが、癌を患っている個体における癌の進行に関与する特定の代謝経路または細胞内シグナリング経路または細胞間シグナリング経路をレギュレートすることができ、少なくとも3つのこのような経路に対処する、方法。
(項目75)
前記3つの化合物が、栄養補助剤、化学療法剤または非化学療法剤である、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記3つの化合物が、ナルトレキソン、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目74に記載の方法。
(項目77)
前記組成物が1つまたはそれを超える栄養補助剤をさらに含む、項目76に記載の方法。
(項目78)
上皮起源の癌を患っている個体を処置するための方法であって、少なくとも3つの異なる化合物を含む組成物を前記個体に投与することを含み、少なくとも1つの化合物が、以下の表1:
【表20-9】
から選択され、2つまたはそれを超える化合物が、以下の表2、3または4:
【表20-10】
から選択される、方法。
(項目79)
前記少なくとも3つの異なる化合物の2つが、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記少なくとも3つの異なる化合物が、ナルトレキソン、シクロホスファミドおよびメトホルミンである、項目78に記載の方法。
(項目81)
前記組成物が、少なくとも4つの異なる化合物を含み、少なくとも1つの化合物が、4つの表1、2、3および4のそれぞれから選択される、項目78に記載の方法。
(項目82)
前記少なくとも4つの異なる化合物が、クルクミン、メトホルミン、メラトニンおよびシクロホスファミドである、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記組成物が、ナルトレキソン、アルファリポ酸およびゲニステインをさらに含む、項目82に記載の方法。
(項目84)
上皮起源の癌を患っている個体を処置するための方法であって、少なくとも8つの異なる化合物を含む組成物を前記個体に投与することを含み、前記化合物の少なくとも1つが、以下の表1〜4:
【表20-11】
のそれぞれから選択される、方法。
(項目85)
前記組成物が、クルクミン、ゲニステイン、シクロホスファミド、メラトニン、アルファリポ酸、およびスクアラミン、メトホルミン、およびナルトレキソンを含む、項目84に記載の方法。
(項目86)
上皮起源の癌を患っている個体を処置するための方法であって、以下の化合物:
【表20-12】
から選択される少なくとも7つの化合物またはそれらの等価物を含む組成物を前記個体に投与することを含む、方法。
(項目87)
上皮起源の癌を患っている個体を処置するための組成物であって、前記組成物は、以下の化合物:
【表20-13】
から選択される少なくとも7つの化合物またはそれらの等価物を、列挙されている1日量を提供するのに十分な投薬量で含む、組成物。
(項目88)
前記個体が、1つまたはそれを超える化学療法剤の投与を含むさらなる処置を受けている、項目1に記載の方法。
(項目89)
内皮起源の癌を患っている個体を処置するための方法であって、前記方法は、以下:
(a)前記個体における、VEGF、MMP−9、MMP−2、TNF−α、TGF−β、EGFR、IL−6およびレプチンからなる群より選択される1つまたはそれを超える血管新生促進レギュレーターの異常に高いレベルを検出し、ならびに/または前記個体における、トロンボスポンジン−1、アンギオスタチン、エンドスタチンもしくは他の抗血管新生レギュレーターの異常に低いレベルを検出する工程;
(b)以下のグループI、II、III、IVおよびV:
【表20-14】
で特定されている少なくとも3つの代謝経路、細胞間シグナリング経路または細胞内シグナリング経路の異常なまたは望ましくない活性化を検出する工程であって、異常なまたは望ましくない活性化は、少なくとも3つの別個のグループにおける経路について検出される、工程:
(c)以下の表:
【表20-15】
【表20-16】
にしたがって、(a)および(b)で検出された異常に対応する化合物の群より選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を投与する工程を含み、ここで上皮起源の癌の癌を示していない個体の正常状態へと前記異常状態を変化させるのに有効な量で前記化合物を投与する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、複数の経路を標的化することによる本発明の癌処置戦略の説明を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
定義
以下に提供されるのは、本明細書で使用される用語のある特定の定義であり、これらの多くまたはほとんどが、当業者の一般的な理解を確認する。
【0050】
活性化剤:本明細書で使用される用語「活性化剤」は、その存在またはレベルが、その薬剤の非存在下で(または、異なるレベルの薬剤で)観察されるものと比較して上昇した標的のレベルまたは活性と相関する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、活性化剤は、その存在またはレベルが、特定の参照のレベルまたは活性(例えば、適切な参照条件下(例えば、公知の活性化剤、例えば陽性対照の存在下)で観察されるもの)と同程度であるかまたはそれよりも大きい標的のレベルまたは活性と相関するものである。
【0051】
投与:本明細書で使用される用語「投与」は、被験体または系への組成物の投与を指す。動物被験体(例えば、ヒト)への投与は、任意の適切な経路によるものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支注入によるものを含む)、頬側、経腸、皮内(interdermal)、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、経粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管内(気管内注入によるものを含む)、経皮、膣および硝子体のものであり得る。
【0052】
対処:本明細書に記載される治療によって標的化されるプロセスまたは経路に関して使用される場合、「対処」は、本発明の治療プロトコールを投与することによって(例えば、本発明の治療プロトコールに含まれる薬剤の1つまたは組み合わせによって)、そのプロセスまたは経路が正常へと(すなわち、正常な個体、または処置される癌を患っていない個体におけるそのプロセスまたは経路の特徴的な機能へと)変化されることを意味する。
【0053】
成人:本明細書で使用される用語「成人」は、18歳またはそれを超えるヒトを指す。成人の体重は、90ポンド〜250ポンドの典型的な範囲で広く変化し得る。
【0054】
薬剤:当業者には明らかであるように、本明細書で使用される用語「薬剤」は、例えば、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、小分子、金属またはそれらの組み合わせを含む任意の化学クラスの化合物または実体を指し得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、それが天然に見られ、および/または天然から得られるという点で天然の産物であるか、または前記天然の産物を含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、それが人為的な作用によって設計、操作および/もしくは生産され、ならびに/または天然に見られないという点で人工的な1つまたはそれを超える実体であるか、または前記1つまたはそれを超える人工的な実体を含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、単離された形態または純粋な形態で利用され得る;いくつかの実施形態では、薬剤は、粗製形態で利用され得る。いくつかの実施形態では、潜在的な薬剤は、例えば、その中の活性剤を同定または特徴付けするためにスクリーニングされ得るコレクションまたはライブラリとして提供される。本発明にしたがって利用され得る薬剤のいくつかの特定の実施形態としては、小分子、抗体、抗体断片、アプタマー、核酸(例えば、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣物などが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬剤はポリマーであるか、またはポリマーを含む。いくつかの実施形態では、薬剤はポリマーではなく、および/またはいかなるポリマーも実質的に含まない。いくつかの実施形態では、薬剤は、少なくとも1つのポリマー部分を含有する。いくつかの実施形態では、薬剤は、いかなるポリマー部分も持たず、いかなるポリマー部分も実質的に含まない。
【0055】
アンタゴニスト:本明細書で使用される用語「アンタゴニスト」は、i)別の薬剤の効果を阻害、減少もしくは軽減し、および/またはii)1つまたはそれを超える生物学的事象を阻害、減少、軽減もしくは遅延する薬剤を指す。アンタゴニストは、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属を含む任意の化学的クラスの薬剤、および/または関連阻害活性を示す任意の他の実体であり得るか、またはこれらを含み得る。アンタゴニストは、直接的(この場合、それは、その標的に対して直接的にその影響を発揮する)または間接的(この場合、それは、その標的に対する結合以外によって;例えば、標的のレベルまたは活性が変化するように、標的のレギュレーターと相互作用することによって、その影響を発揮する)なものであり得る。
【0056】
抗体:当技術分野で公知であるように、「抗体」は、特定の抗原に特異的に結合する免疫グロブリンである。この用語は、それが抗原に反応する生物によって産生されるという点において天然に生成される免疫グロブリン、および合成的に生成されるかまたは操作される免疫グロブリンを包含する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、任意のヒトクラス:IgG、IgM、IgAおよびIgDを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。当技術分野において理解されている典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体を含むことが公知である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖ペアから構成され、各ペアは、1本の「軽」鎖(およそ25kD)および1本の「重」鎖(およそ50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を定義する。用語「可変軽鎖」(VL)および「可変重鎖」(VH)は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。各可変領域はさらに、超可変(HV)領域およびフレームワーク(FR)領域に細分される。超可変領域は、ベータシート構造を形成し、HV領域を適所に保持する足場として働く4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR2およびFR4)で分断された、相補性決定領域と称される超可変性配列の3つの区域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む。各重鎖および各軽鎖のC末端は、軽鎖の場合は1つのドメイン(CL)および重鎖の場合は3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる定常領域を定義する。いくつかの実施形態では、用語「全長」は、抗体に関しては、天然に生成された抗体で生じているような、場合によりジスルフィド結合によって会合される2本の重鎖および2本の軽鎖を含むことを意味するために使用される。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞によって産生される。いくつかの実施形態では、抗体は、化学合成によって生成される。いくつかの実施形態では、抗体は、哺乳動物に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、動物(例えば、限定されないが、マウス、ラット、ウマ、ブタまたはヤギである)に由来する。いくつかの実施形態では、抗体は、組換え細胞培養系を使用して生成される。いくつかの実施形態では、抗体は、精製された抗体であり得る(例えば、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって)。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体(そのタンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体改変体に対する類似度を高めるために改変された、非ヒト種由来の抗体)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体(非ヒト供給源、例えば、マウス、ラット、ウマまたはブタ由来の遺伝物質をヒト由来の遺伝物質と組み合わせることによって生成される抗体)であり得る。
【0057】
抗体剤:本明細書で使用される用語「抗体剤」は、特定の抗原に特異的に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、特異的結合をもたらすのに十分な免疫グロブリン構造要素を有する任意のポリペプチドを包含する。適切な抗体剤としては、限定されないが、ヒト抗体、霊長類化(primatized)抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、結合体化抗体(すなわち、他のタンパク質、放射標識、細胞毒に結合体化または融合された抗体)、小モジュール免疫薬剤(「SMIP(商標)」)、一本鎖抗体、ラクダ科(cameloid)抗体および抗体断片が挙げられる。本明細書で使用される用語「抗体剤」は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片))、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片(それが所望の生物学的活性を示す限り)も含む。いくつかの実施形態では、この用語は、ステープルドペプチドを包含する。いくつかの実施形態では、この用語は、1つまたはそれを超える抗体様結合ペプチド模倣物を包含する。いくつかの実施形態では、この用語は、1つまたはそれを超える抗体様結合足場タンパク質を包含する。いくつかの(come)実施形態では、この用語は、モノボディまたはアドネクチンを包含する。多くの実施形態では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が当業者が相補性決定領域(CDR)として認識する1つまたはそれを超える構造要素を含むポリペプチドであるかまたはそれを含む;いくつかの実施形態では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が参照抗体に見られるCDRと実質的に同一の少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDRおよび/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、配列が同一であるかまたは参照CDRと比べて1〜5個のアミノ酸置換を含むという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、それが、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示すという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、それが、参照CDRと少なくとも96%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を示すという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、その含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失、付加または置換されているが、その含まれるCDRが、他では参照CDRのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、その含まれるCDR内の1〜5個のアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失、付加または置換されているが、その含まれるCDRが、他では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、その含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比べて置換されているが、その含まれるCDRが、他では参照CDRのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、その含まれるCDR内の1〜5個のアミノ酸が、参照CDRと比べて欠失、付加または置換されているが、その含まれるCDRが、他では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有するという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、抗体剤は、そのアミノ酸配列が当業者によって免疫グロブリンの可変ドメインとして認識される構造要素を含むポリペプチドであるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体剤は、免疫グロブリン結合ドメインと相同であるかまたは大部分は相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。
【0058】
およそ:本明細書で使用される用語「およそ」および「約」はそれぞれ、関連の文脈に適切であると当業者が理解するであろう通常の統計的変動を包含することを意図する。ある特定の実施形態では、特に記載がない限り、またはそうでなければ文脈上明白(例えば、このような数字が、可能な値の100%を超える場合)ではない限り、用語「およそ」または「約」はそれぞれ、言及された値のどちらかの方向(よりも大きいまたはよりも小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満に収まる値の範囲を指す。
【0059】
に関連する:2つの事象または実体は、一方の存在、レベルおよび/または形態が他方のものと相関する場合には、その用語が本明細書で使用されるように互いに「関連」する。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド)は、その存在、レベルおよび/または形態が、(例えば、関連する集団にわたり)特定の疾患、障害または状態の発生数および/または感受性と相関する場合には、その疾患、障害または状態に関連すると考えられる。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを超える実体は、それらが互いに物理的に近い状態でありその状態を維持するように、それらが直接的または間接的に相互作用する場合には、互いに物理的に「関連」する。いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連する2つまたはそれを超える実体は、互いに共有結合的に連結される;いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連する2つまたはそれを超える実体は、互いに共有結合的に連結されないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気およびそれらの組み合わせによって非共有結合的に連結される。
【0060】
併用療法:本明細書で使用される用語「併用療法」は、被験体が、2つまたはそれを超える治療レジメン(例えば、2つまたはそれを超える治療剤)に同時に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを超える薬剤が同時投与され得る;いくつかの実施形態では、このような薬剤は、逐次投与され得る;いくつかの実施形態では、このような薬剤は、重複する投薬レジメンで投与される。
【0061】
同程度の:本明細書で使用される用語「同程度の」は、互いに同一ではなくてもよいが、観察される差異または類似性に基づいて合理的に結論を出すことができるように、それらの間の比較を可能にする程度に十分類似する2つまたはそれを超える薬剤、実体、状況、条件セットなどを指す。いくつかの実施形態では、条件、環境、個体または集団の同程度のセットは、複数の実質的に同一の特徴、および1つまたは少数の異なる特徴を特徴とする。当業者であれば、同程度であると考えられる2つまたはそれを超えるこのような薬剤、実体、状況、条件セットなどに関する任意の所定の環境において、どの程度の同一性が必要であるかを文脈に応じて理解するであろう。例えば、当業者であれば、環境、個体または集団の異なるセットの下で、または前記セットを用いて得られた結果または観察された現象の差異が、変化する特徴の変動によって引き起こされるか、または前記変動の指標であるという妥当な結論を保証するのに十分な数および種類の実質的に同一の特徴を特徴とする場合に、環境、個体または集団のセットは互いに同程度であると認識するであろう。
【0062】
組成物:本発明の「組成物」または「医薬組成物」は、同時投与または同じレジメンの一部として投与するための、本明細書に記載される2つまたはそれを超える薬剤の組み合わせを指す。すべての実施形態において、薬剤の組み合わせは、物理的な混合をもたらす必要はない(すなわち、それぞれの組成物の構成要素を別個の共薬剤(co−agent)としての投与が可能である);しかしながら、当技術分野の多くの患者または実務者であれば、薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤中の成分の2つまたはそれよりも多くの混合物である組成物であって、組み合わせの構成要素成分を同時に投与することを可能にする組成物を調製することが有利であることを見出し得る。
【0063】
含む:1つまたはそれを超える指定の要素または工程を「含む」と本明細書に記載される組成物または方法はオープンエンドであり、その指定の要素または工程が必須であるが、その組成物または方法の範囲内で他の要素または工程が追加され得ることを意味する。冗長になるのを避けるために、1つまたはそれを超える指定の要素または工程を「含む(comprising)」(または「含む(comprises)」)と本明細書に記載される任意の組成物または方法は、同じ指定の要素または工程「から本質的になる(consisting essentially of)」(または「から本質的になる(consists essentially of)」)対応するより限定的な組成物または方法も表し、その組成物または方法は指定の必須要素または工程を含み、その組成物または方法の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素または工程も含み得ることを意味するとも理解される。1つまたはそれを超える指定の要素または工程を「含む」かまたはそれら「から本質的になる」と本明細書に記載される任意の組成物または方法は、指定されていないいかなる他の要素または工程も除外して、その指定の要素または工程「からなる(consisting of)」(または「からなる(consists of)」)対応するより限定的なクローズドエンドの組成物または方法も表すとも理解される。本明細書に開示される任意の組成物または方法において、任意の指定の必須要素または工程の公知のまたは開示される等価物をその要素または工程に置き換え得る。
【0064】
決定する:本明細書に記載される多くの方法は、「決定する」工程を含む。本明細書を読んだ当業者であれば、このような「決定」は、当業者に利用可能な様々な技術(例えば、本明細書で明示的に参照される特定の技術を含む)のいずれかを利用し得るか、またはこれらの使用によって達成され得ることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、決定は、身体サンプルの操作を含む。いくつかの実施形態では、決定は、例えば、関連分析の実施に適合されたコンピュータまたは他の処理装置を利用して、データまたは情報の検討および/または操作を含む。いくつかの実施形態では、決定は、ソースからの関連情報および/または材料を受け取ることを含む。いくつかの実施形態では、決定は、サンプルまたは実体の1つまたはそれを超える特徴を同程度の参照と比較することを含む。
【0065】
剤形:本明細書で使用される用語「剤形」は、被験体に投与するための活性剤(例えば、治療剤または診断剤)の物理的に別個の単位を指す。各単位は、所定量の活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、このような量は、(すなわち、治療投薬レジメンで)関連集団に投与した場合に、所望のまたは有益な転帰と相関すると決定された投薬レジメンにしたがって投与するのに適切な単位投薬量(またはその全割合)である。当業者であれば、特定の被験体に投与される治療組成物または薬剤の総量は、1人またはそれを超える主治医によって決定され、複数の剤形の投与を含み得ることを認識する。
【0066】
投薬レジメン:本明細書で使用される用語「投薬レジメン」は、典型的には期間によって隔てられた、被験体に個別に投与される単位用量(典型的には1を超える)のセットを指す。いくつかの実施形態では、所定の治療剤は、1回またはそれを超える投薬を含み得る推奨投薬レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数回の投薬を含み、そのそれぞれは、同じ長さの期間だけ互いに隔てられる;いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数回の投薬、および個々の投薬を隔てる少なくとも2つの異なる期間を含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内のすべての投薬が、同じ単位用量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメン内の異なる投薬は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の用量での第1の投薬と、それに続いて、第1の用量とは異なる第2の用量での1回またはそれを超えるさらなる投薬とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の用量での第1の投薬と、それに続いて、第1の用量と同じ第2の用量での1回またはそれを超えるさらなる投薬とを含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、関連集団にわたり投与した場合に、所望のまたは有益な転帰と相関する(すなわち、治療投薬レジメンである)。
【0067】
メトロノーム療法(metronomic therapy):本明細書で使用される用語「メトロノーム療法」または「メトロノーム化学療法」は、最大許容用量(MTD)よりも有意に少ない用量で治療剤を頻繁に(例えば、毎日)投与することを指す。例えば、3週間にわたる600mg/m〜750mg/mの代表的なMTD用量と比較して低用量(例えば、50mg/日)のシクロホスファミドのメトロノーム投与は、広範囲の癌で有望な結果を示している。N.Penelら、Critical Reviews in Oncology/Hematology,82:40−50(2012)。
【0068】
モジュレーター:用語「モジュレーター」は、目的の活性を観察する系におけるその存在またはレベルが、そのモジュレーターが存在しなければ他は同程度の条件下で観察されるものと比較した、その活性のレベルおよび/または性質の変化と相関する実体を指すのに使用される。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、そのモジュレーターが存在しなければ他は同程度の条件下で観察されるものと比較して、その存在下では活性が増加する点において、アクチベーターである。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、そのモジュレーターが存在しなければ他は同程度の条件と比較して、その存在下では活性が減少する点において、アンタゴニストまたは阻害剤である。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、その活性が目的のものである標的実体と直接的に相互作用する。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、その活性が目的のものである標的実体と間接的に(すなわち、標的実体と相互作用する中間作用物質と直接的に)相互作用する。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、目的の標的実体のレベルに影響を与える;あるいはまたは加えて、いくつかの実施形態では、モジュレーターは、標的実体のレベルに影響を与えずに、目的の標的実体の活性に影響を与える。いくつかの実施形態では、モジュレーターは、目的の標的実体のレベルおよび活性の両方に影響を与え、その結果、活性について観察される差異は、レベルについて観察される差異によって完全に説明されないか、または前記差異と比例しない。
【0069】
患者:本明細書で使用される用語「患者」または「被験体」は、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療目的で投与されるか、または投与され得る任意の生物を指す。典型的な患者としては、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなど)が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、患者は、1つまたはそれを超える障害または状態を患っているか、またはこれらに感受性である。いくつかの実施形態では、患者は、障害または状態の1つまたはそれを超える症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は、1つまたはそれを超える障害または状態と診断されたことがある。いくつかの実施形態では、障害または状態は、癌もしくは1つもしくはそれを超える腫瘍の存在であるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、このような癌または腫瘍は、前立腺の癌もしくは前立腺の腫瘍であるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、障害または状態は、転移癌である。
【0070】
薬学的に許容され得る:本明細書に開示される組成物を製剤化するのに使用される担体、希釈剤または賦形剤に適用される、本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る」は、その担体、希釈剤または賦形剤が、その組成物の他の成分と適合性でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0071】
薬学的に許容され得る塩:本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る塩」は、従来の手段によって調製される塩を意味し、当業者に周知である。適切な薬学的に許容され得る塩としては、限定されないが、薬学的に許容され得る無機酸(限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸が挙げられる)の塩、または薬学的に許容され得る有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム(tetaalkylammonium)および吉草酸など)の塩が挙げられる。薬学的に許容され得る塩の種類およびそれらの形成に関する一般的な情報は、当業者に公知であり、“Handbook of Pharmaceutical Salts”P.H.Stahl,C.G.Wermuth,1st edition,2002,Wiley−VCHなどの一般的な教科書に記載されている。
【0072】
医薬組成物:本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、1つまたはそれを超える薬学的に許容され得る担体と一緒に製剤化された活性剤を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は、関連集団に投与した場合に、所定の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適切な単位用量で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、以下に適合されたものを含む固体または液体の形態で投与するために特別に製剤化され得る:経口投与、例えば、水薬(drench)(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、頬側、舌下および全身性の吸収に標的化された錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト;例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液または徐放製剤としての、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、非経口投与;例えば、クリーム、軟膏もしくは放出制御パッチ、または皮膚、肺もしくは口腔に適用されるスプレーとしての、局所的適用;例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとしての、膣内または直腸内;舌下;眼;経皮的;または経鼻的、肺および他の粘膜表面。
【0073】
参照:用語「参照」は、本明細書では、目的の薬剤または値と比較される標準または対照の薬剤または値を説明するのに使用されることが多い。いくつかの実施形態では、目的の薬剤または値の試験または決定と実質的に同時に、参照薬剤を試験し、および/または参照値を決定する。いくつかの実施形態では、参照薬剤または参照値は、有形的媒体で場合により具体化される歴史的参照である。典型的には、当業者によって理解されるように、参照薬剤または参照値は、目的の薬剤または値を決定または特徴付けするのに利用されるものと同程度の条件下で決定また特徴付けされる。
【0074】
不応性:本明細書で使用される用語「不応性」は、提供される組成物の投与後に、現場の医療関係者が通常観察するような、予想される臨床的有効性で応答しない任意の被験体または状態を指す。
【0075】
応答:本明細書で使用される処置に対する応答は、処置の結果として起こる、または処置と相関する被験体の状態の任意の有益な変化を指し得る。このような変化としては、状態の安定化(例えば、処置の非存在下で起こったはずである悪化の防止)、状態の症状の改善および/または状態の治癒についての展望の改善などを挙げることができる。これは、被験体の応答または腫瘍の応答を指し得る。腫瘍または被験体の応答は、臨床基準および客観的基準を含めた多種多様な基準によって測定され得る。応答を評価するための技術としては、限定されないが、臨床検査、ポジトロン放出断層撮影、胸部X線CTスキャン、MRI、超音波、内視鏡検査、腹腔鏡検査、被験体から得られるサンプル中の腫瘍マーカーの存在もしくはレベル、細胞学、および/または組織学が挙げられる。これらの技術の多くは、腫瘍サイズを決定しようとするものであるか、またはさもなければ総腫瘍量を決定しようとするものである。処置に対する応答を評価するための方法およびガイダンスは、Therasseら、“New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors”,European Organization for Research and Treatment of Cancer,National Cancer Institute of the United States,National Cancer Institute of Canada,J.Natl.Cancer Inst.,2000,92(3):205−216に論じられている。正確な応答基準は、任意の適切な様式で選択することができ、ただし、腫瘍および/または患者の群を比較するとき、比較されるべき群は、応答率を決定するための同じまたは同等の基準に基づいて評価される。当業者は、適切な基準を選択することができるであろう。
【0076】
小分子:本明細書で使用される用語「小分子」は、低分子量の有機化合物および/または無機化合物を意味する。一般に、「小分子」は、約5キロダルトン(kD)未満のサイズの分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、約4kD、3kD、約2kDまたは約1kD未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800ダルトン(D)、約600D、約500D、約400D、約300D、約200Dまたは約100D未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満または約500g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリマーではない。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリマー部分を含まない。いくつかの実施形態では、小分子は、タンパク質またはポリペプチドではない(例えば、オリゴペプチドまたはペプチドではない)。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリヌクレオチドではない(例えば、オリゴヌクレオチドはない)。いくつかの実施形態では、小分子は、多糖ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、多糖を含まない(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン、糖脂質などではない)。いくつかの実施形態では、小分子は、脂質ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、調節剤である。いくつかの実施形態では、小分子は、生物学的に活性である。いくつかの実施形態では、小分子は、検出可能である(例えば、少なくとも1つの検出可能な部分を含む)。いくつかの実施形態では、小分子は、治療薬である。
【0077】
固体形態:当技術分野で公知であるように、多くの化学実体(特に、多くの有機分子および/または多くの小分子)は、様々な異なる固体形態、例えば非晶質形態および/または結晶形態(例えば、多形体、水和物、溶媒和物など)などをとり得る。いくつかの実施形態では、このような実体は、任意の固体形態を含む任意の形態で利用され得る。いくつかの実施形態では、このような実体は、特定の形態、例えば特定の固体形態で利用される。
【0078】
癌の病期:本明細書で使用される用語「癌の病期」は、癌の進行レベルの定性的評価または定量的評価を指す。癌の病期を判定するのに使用される基準としては、限定されないが、腫瘍のサイズ、および転移の程度(例えば、局在的または遠位)が挙げられる。
【0079】
実質的に:本明細書で使用される用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の全体またはほぼ全体の範囲または程度を示す定性的な条件を指す。生物学の分野の当業者は、生物学的および化学的な現象が、完了まで進むことおよび/もしくは完全なところまで進むこと、または決定的な結果に到達することもしくは決定的な結果を回避することがあったとしてもごくまれであることを理解するだろう。したがって、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性を潜在的に欠くことを捉えるために本明細書で使用される。
【0080】
に感受性である:疾患、障害または状態(例えば、インフルエンザ)に「感受性の」個体は、その疾患、障害または状態を発症するリスクがある。いくつかの実施形態では、疾患、障害または状態に感受性の個体は、その疾患、障害または状態のいかなる症状も示さない。いくつかの実施形態では、疾患、障害または状態に感受性の個体は、その疾患、障害および/または状態と診断されたことがない。いくつかの実施形態では、疾患、障害または状態に感受性の個体は、その疾患、障害または状態の発症に関連する条件に曝露されたことがある個体である。いくつかの実施形態では、疾患、障害および/または状態を発症するリスクは、集団ベースのリスクである(例えば、その疾患、障害または状態を患っている個体の家族構成員)。
【0081】
症状が軽減する:本発明によれば、特定の疾患、障害または状態の1つまたはそれを超える症状の大きさ(例えば、強度、重症度など)および/または頻度が低下するとき、「症状は軽減する」。明確にする目的で、特定の症状の発生の遅延は、その症状の頻度の低下の1つの形態とみなされる。腫瘍がより小さい多くの癌患者は、症状を有しない。本発明は、症状が排除される場合のみに限定されるものではない。本発明は、完全に排除されなくても、1つまたはそれを超える症状が減少する(およびそれによって、被験体の状態が「改善される」)ような処置を明確に企図する。
【0082】
治療剤:本明細書で使用される語句「治療剤」は、生物に投与した場合に、所望の薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、それが適切な集団にわたって統計学的に有意な効果を示す場合に、治療剤であるとみなされる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、様々な基準(例えば、ある特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床的状態など)によって定義され得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害および/または状態の1つまたはそれを超える症状または特徴を軽減する、回復させる、緩和する、阻害する、予防する、その発生を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生数を低下させるために使用され得る任意の物質である。
【0083】
治療有効量:本明細書で使用され、本発明にしたがって使用するために任意の個々の薬剤に適用される用語「治療有効量」は、本発明の治療との関連で必要とする個体に投与した場合に、前記個体において生じる癌支援プロセスを遮断、減衰もしくは反転するか、または前記個体における癌抑制プロセスを増強もしくは増加する量を意味する。癌処置との関連では、「治療有効量」は、癌と診断された個体に投与した場合に、前記個体における癌のさらなる発達を予防、阻害または軽減する量である。本明細書に記載される組成物の特に好ましい「治療有効量」は、膵臓癌腫などの悪性疾患の発達を(治療的処置において)反転させるか、または悪性疾患の寛解を達成もしくは延長するのに役立つ。個体における癌を処置するためにその個体に投与される治療有効量は、寛解を促進するか、または転移を阻害するために投与される治療有効量と同じでもよいし、または異なっていてもよい。ほとんどの癌治療と同様に、本明細書に記載される治療方法は、癌の「治癒」に制限または別様に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、前記処置方法は、癌を「処置」するための(すなわち、癌を有する個体の健康に望ましいまたは有益な変化をもたらすための)記載される組成物の使用を対象とする。このような利益は、腫瘍学分野における熟練の医療従事者によって認識され、限定されないが、腫瘍サイズの減少(腫瘍退縮)、生体機能の改善(例えば、癌性組織または癌性器官の機能改善)、さらなる転移の減少または阻害、日和見感染の減少、生存性の増加、疼痛の減少、運動機能の改善、認知機能の改善、エネルギー感覚の改善(活力、倦怠感の減少)、幸福感の改善、正常な食欲の回復、健康的な体重増加の回復、およびそれらの組み合わせが挙げられる。加えて、(例えば、本明細書に記載される処置の結果としての)個体における特定の腫瘍の退縮はまた、(例えば、処置過程にわたって)膵臓腺癌腫などの腫瘍の部位から癌細胞サンプルを採取し、代謝マーカーおよびシグナリングマーカーのレベルについて、癌細胞を試験し、癌細胞の状態をモニタリングして、より低悪性度の表現型への癌細胞の退縮を分子レベルで確認することによって評価され得る。例えば、本発明の方法を用いることによって誘導される腫瘍退縮は、上記血管新生促進マーカーのいずれかの減少、本明細書に記載される抗血管新生マーカーの増加、癌と診断された個体で異常な活性を示す代謝経路、細胞間シグナリング経路または細胞内シグナリング経路の正常化(すなわち、癌を患っていない正常な個体において見られる状態への変化)を発見することによって示される。用語「処置」はまた、癌の軽減、安定化、退縮、排除、より具体的には上皮細胞の異常成長に関係する上皮細胞関連癌の軽減、安定化、退縮、排除を含み得る。用語「処置」はまた、本明細書に記載される処置レジメンを処方された個体の1つまたはそれを超える器官または系における細胞健康の促進を含み得る。
【0084】
治療指数:当技術分野で公知のように、用語「治療指数」は、特定の指数に関する許容し得ない危険な用量と有効な用量との比を指す。具体的には、治療指数(therapeutix index)は、TD50(関連集団の50%において毒性応答を引き起こす用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)の比である。
【0085】
治療レジメン:「治療レジメン」は、その用語が本明細書で使用される場合、関連集団全体にわたるその投与が、所望のまたは有益な治療結果と相関する投薬レジメンを指す。
【0086】
処置:本明細書で使用される用語「処置」(また、「処置する(treat)」または「処置する(treating)」)は、特定の疾患、障害および/または状態(例えば、癌)の1つまたはそれを超える症状、特徴および/または原因を部分的または完全に軽減する、回復させる、緩和する(relive)、阻害する、その発生を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生数を低下させる物質(例えば、抗受容体チロシンキナーゼ抗体または受容体チロシンキナーゼアンタゴニスト)の任意の投与を指す。このような処置は、関連する疾患、障害および/もしくは状態の徴候を示さない被験体ならびに/またはその疾患、障害および/もしくは状態の初期徴候だけを示す被験体の処置であり得る。あるいはまたは加えて、このような処置は、関連する疾患、障害および/または状態の1つまたはそれを超える確立された徴候を示す被験体の処置であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、関連する疾患、障害および/または状態を患っていると診断された被験体の処置であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、関連する疾患、障害および/または状態を発症する高リスクと統計的に相関する1つまたはそれを超える感受性因子を有すると知られている被験体の処置であり得る。
【0087】
単位用量:本明細書で使用される表現「単位用量」は、医薬組成物の単回用量としておよび/または物理的に分離した単位で投与される量を指す。多くの実施形態では、単位用量は、所定量の活性剤を含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、薬剤の全単回用量を含む。いくつかの実施形態では、複数の単位用量が、総単回用量を達成するために投与される。いくつかの実施形態では、意図される効果を達成するために、複数の単位用量の投与が、必要とされるかまたは必要とされると予想される。単位用量は、例えば、所定量の1つまたはそれを超える治療剤を含むある体積の液体(例えば、許容され得る担体)、所定量の1つまたはそれを超える固体形態の治療剤、所定量の1つまたはそれを超える治療剤を含む徐放製剤または薬物送達デバイスなどであり得る。単位用量は、治療剤に加えて様々な任意の構成要素を含む製剤中に存在し得ることが認識されるだろう。例えば、下に記載されるような、許容され得る担体(例えば、薬学的に許容され得る担体)、希釈剤、安定剤、緩衝剤、保存剤などが含められ得る。多くの実施形態では、特定の治療剤の適切な総1日投薬量は、単位用量の一部または複数を含み得、それは、例えば、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが当業者によって認識されるだろう。いくつかの実施形態では、任意の特定の被験体または生物に対する具体的な有効量のレベルは、処置される障害およびその障害の重症度;使用される特定の活性な化合物の活性;使用される特定の組成物;被験体の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される特定の活性な化合物の投与時間および排出速度;処置の期間;使用される特定の化合物と併用してもしくは同時に使用される薬物および/またはさらなる治療、ならびに医学分野において周知の類似の因子を含む様々な因子に依存し得る。
【0088】
血管模倣:当業者であれば、用語「血管模倣」は、当技術分野では、腫瘍幹細胞活性を指すのに使用されることが多いことを理解するであろう。血管模倣は、非常に侵襲的で遺伝的に調節不全な腫瘍細胞による流体伝導チャネルの形成であって、内皮細胞が関与せず、血管新生とは無関係のものを表す。2つの異なる種類が同定されている:管状型およびパターン化されたマトリックス型。血管模倣の根本にある誘導は、この血管系を作り出すことができる腫瘍細胞の可塑性表現型を促進し得る低酸素状態に関係すると思われる。
【0089】
ある特定の実施形態の詳細な説明
以下の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を提供し、特定の実施例の開示は、本発明の範囲、適用性または構成を限定するものではない。この詳細な説明によって提供されるガイダンスは、熟練の実務者が、過度の実験を伴わずに、本明細書に記載され添付の特許請求の範囲によってカバーされる本発明のすべての実施形態を使用することを許可し、可能にする。特許請求の範囲の記載または範囲から逸脱せずに、要素または化合物の特定の組み合わせおよび/または配置(arrangement)に対して、様々な変更を行い得ると理解されよう。本明細書に開示される公知の等価物または特定の等価物を、例えば、本出願に記載される医薬組成物または治療レジメンの任意の指定構成要素に置き換えることは、本発明の分野の実務者の技術の範囲内である。
【0090】
一般に、本発明は、癌を患っている個体では、個体における多くのプロセスまたは経路が、癌を患っていない正常な個体においてそれらが機能するのと同じプロセスまたは経路と比較して変化しているという認識を包含する。癌によって影響される経路としては、代謝経路(例えば、グルコース代謝、ホルモンの放出および取り込みなどのレギュレーション)、細胞間シグナリング経路(例えば、サイトカインおよび成長因子のレギュレーションの機能としての、細胞増殖、遊走、循環のレギュレーション)および細胞内シグナリング経路(例えば、差次的遺伝子発現、細胞周期摂動または停止、変異など)が挙げられる。
【0091】
表8は、癌と診断された患者において変化していることが見出された経路に関与すると報告された様々な作用因子のリストを含有する。
【0092】
【表8-1】
【0093】
【表8-2】
【0094】
例えば、列挙されている作用因子は、腫瘍細胞の成長を駆動する細胞内シグナル伝達経路に関与し、ならびに/または血管新生、正常組織および細胞外マトリックスへの腫瘍浸潤、および/またはリンパ管および血流を介した他の組織および器官への腫瘍細胞転移を促進する細胞内シグナリング経路に関与する。いくつかの例では、ある特定のシグナリング経路間の確立された「クロストーク」または相互作用は非常に広範囲であると考えられるため、それは、さらなる別個の経路として含まれる。
【0095】
とりわけ、ある特定の経路の相対的な重要性は、少なくともある程度は患者ごとに異なり得るため、表8に示されているリストは重要度の順ではない。腫瘍細胞の個別化したまたは「個人化した」ゲノム、分子またはプロテオミクス分析のみが、任意の1患者における発癌および腫瘍進行への寄与の点で、どの経路が比較的より強力であるかということについての洞察を提供することができるであろう。いくつかの実施形態では、このような個人化したアプローチは、例えば、治療の影響を選択および/またはモニタリングするための、ならびに場合により個別化した処置および/または投薬の最適化方針を提供するためのシグナリングタンパク質の周期的および/または定期的な試験によって、本発明にしたがって使用するための特定のレジメンを選択するのに利用され得る。
【0096】
一般に、正常な代謝経路、細胞間シグナリング経路および細胞内シグナリング経路の破壊が癌の特徴であるが、影響を受ける経路の範囲およびその程度は、典型的には、癌の種類および/または患者ごとによって変化する。それにもかかわらず、本明細書で開発された処置の原理は、一般に適用可能である;本明細書で提供される教示にしたがって、当業者であれば、特定の腫瘍および/または患者の処置のための特定の実施形態を容易に開発および実施し得る。
【0097】
本明細書に記載されるように、本発明は、併用療法を使用することによって癌に関与する複数の経路に対処するための技術を提供する。多くの実施形態では、治療剤の組み合わせは、完全な組み合わせを使用することによって各標的化経路が少なくとも2回、好ましくは3回対処されるように選択される。「対処される」は、組成物構成要素の1つまたはそれよりも多くの投与によって、正常な個体、または処置される癌を患っていない個体におけるそのプロセスまたは経路が正常へと(すなわち、特徴的な機能へと)変化されることを意味する。表8に列挙されている経路の正常なまたは異常な機能の検出は、当技術分野の実務者の技術の範囲内である。
【0098】
従来の治療の失敗
とりわけ、本発明は、全症例の約50%が、局所的な浸潤または転移が起こった後に診断されており(表9)、この状況では、特に、初回診断時に遠隔転移が存在する場合には、長期生存率が低いという認識を包含する。
【0099】
【表9】
【0100】
特に、血液悪性疾患、リンパ腫および一部の転移性固形腫瘍に関して、癌処置において顕著な進歩がなされてきたが、本発明は、ほとんどの転移性固形腫瘍の処置が提供する利益が非常に限定的であり、極めて高価であるという認識を包含する。例えば、過去7年間にわたる固形腫瘍に関する25件の新たなUS FDA抗癌薬承認のうち、承認に基づく試験における全生存期間および/または無増悪生存期間の平均増加は、3.4カ月であった(US FDAウェブサイト)。加えて、新たな抗癌薬の質調整生存年(QALY)当たりの平均費用は、200,000ドル〜300,000ドルである。医療費は、次の10年以内に国民総生産の20%に達すると予想されており、癌処置に関するバリュー・エクイティおよび費用効果の検討が問題になっている(例えば、Brock Oncologist 15 Suppl 1:36,2010 PubMed PMID:20237216;Schnipperら、Clin Cancer Res 16(24):6004,2010 Dec 15 PubMed PMID:21169254を参照のこと)。
【0101】
本発明は、過去50年間にわたって、癌を引き起こす遺伝的変化のほとんどではないにしても多くを科学者が同定したことを認識する。3,000を超える個々の腫瘍の配列決定の結果として、約300,000のユニークな変異が発見されている。一般的な固形腫瘍は、それらのタンパク質産物を変化させると予想される平均33〜66の遺伝子変異を含有するが、「ドライバー」遺伝子変異と称されるごく一部のパーセンテージのものが、悪性表現型の発生および維持に直接寄与する。ドライバーとしては、細胞増殖の刺激に関与する遺伝子(癌遺伝子)(これは、変異により活性化または過剰発現される)、および不適切な細胞増殖を防止する遺伝子(抑制遺伝子)(これは、変異により不活性化または欠失される)が挙げられる。平均して、固形腫瘍細胞は、少なくとも3〜10のこれらの「ドライバー」変異を含有する。血液悪性疾患(白血病およびリンパ腫)は平均してドライバー遺伝子が有意に少ないため、それらの多くは処置容易である(Vogelsteinら、Science 339(6127):1546, 2013 Mar 29;PubMed PMID 23539594)。
【0102】
本発明は、これらの知見の整理統合により、癌は、8つの重要な特徴または細胞経路の調節解除(deregulation)に起因するという概念が導かれたという認識を包含する(Hanahanら、Cell 100(1):57,2000 Jan 7,PubMed PMID:10647931;Hanahanら、Cell.144(5):646,2011 Mar 4,PubMed PMID:21376230)。これらの経路は、増殖刺激および抑制(癌遺伝子および抑制遺伝子)、浸潤および転移、複製的死亡、血管新生、プログラム細胞死またはアポトーシス、細胞代謝およびエネルギー論、ゲノム安定性および免疫監視を含む。
【0103】
本発明によれば、転移性病変における腫瘍細胞の生存に最も重要であり、したがって最も治療上関連する経路は、1)血管新生、2)アポトーシス、3)細胞代謝およびエネルギー論、ならびに4)免疫監視である(表10):
【0104】
【表10】
【0105】
また、本発明は、他の経路のいずれかまたはすべての標的化が、関連時間枠内での腫瘍細胞死または細胞死に必ずしもつながらないと認識する。例えば、本発明は、現在の治療によって治癒ができない多くの患者が、初回診断時に転移性疾患を既に有するため、浸潤または転移を予防する治療は、その後の拡散を遅らせ得るが、根治的なものとはなり得ないと認識する。加えて、本発明は、患者における固形腫瘍の平均倍加時間が100〜400日間であり、個々の腫瘍細胞が数日以内に分裂し得るため、任意の1時点において、腫瘍内の多くの細胞は、分裂状態でないまたは休眠状態のいずれかである可能性があることに注目する。したがって、増殖経路を標的化する薬物は、あらゆる腫瘍細胞を殺傷すると予想され得ない。さらに、本発明は、癌に関連するゲノム不安定性および複製的不死性が、癌の発達において最も重要であり、および/または治療的にアクセス不可能な時間スケールで作用すると認識する。
【0106】
最新のまたは「標的化」抗癌薬の発見は、癌遺伝子産物の機能を妨げる小分子または生物製剤(主に抗体)の発見に主に集中している。これらのタンパク質は、一般に、治療薬によって阻害され得る酵素活性を有し、「投薬可能な」標的と称されている。本発明は、このようなアプローチに伴う様々な問題の原因を特定する。
【0107】
例えば、本発明は、上記のように、癌遺伝子標的化治療薬は、非分裂状態または休眠状態の腫瘍細胞を殺傷する際に効率的であり得ないと認識する。加えて、138個の同定されている癌によって引き起こされるドライバー遺伝子のうち、64個が癌遺伝子であるが、これらの31個が「投薬可能な」酵素活性を有するに過ぎない。また、138個のドライバーのうちの74個は、変異が遺伝子産物の機能喪失をもたらす抑制遺伝子である。このような変化は、小分子または抗体治療によって直接修復または回復され得ない。したがって、138個の現在同定されている癌を引き起こす遺伝子のうちの31個+74個すなわち105個(76%)は、投薬不能なカテゴリまたは容易に投薬可能でないカテゴリに該当する(Vogelsteinら、Science 339(6127):1546,.2013 Mar 29,PubMed PMID:235395943)。
【0108】
また、可能な138個のうちのどの組み合わせ(典型的には、約3〜10個)のドライバー遺伝子が変異しているかについて、異なる種類の癌間において、および異なる患者から単離された同じ組織型の腫瘍間において、有意な不均一性がある。したがって、本発明は、ある患者では、癌遺伝子の変異の結果として、特定の経路が調節解除され得るが、別の患者では、上流または下流の投薬不能な抑制遺伝子の変異によって、同じ経路が調節解除され得ることに注目する。ある腫瘍では、細胞経路間の重複も変異をわたっての冗長性につながり得る。このシナリオでは、例えば、別の既存の変異によって相殺される場合、単一の癌遺伝子の標的化阻害が無効であり得る(Vogelsteinら、Science 339(6127):1546,.2013 Mar 29,PubMed PMID:235395943;Hanahan&Weinberg Cell 100(1):57,2000 Jan 7,PubMed PMID:10647931;Hanahan&Weinberg Cell 144(5):646,2011 Mar 4,PubMed PMID:21376230)。本発明は、これらの事実が、多くの従来の化学療法処置戦略に伴う問題の原因であると認識する。
【0109】
本発明はさらに、癌に関する従来の化学療法処置戦略に伴う問題の別の原因を認識する:用量間における、または毒性化合物による処置の中止後における腫瘍または血管新生のリバウンド。本発明は、これらの問題が、慢性的に(すなわち、長期間)投与され得る有効な治療(特に、組み合わせ)の必要性を強調しているという特異的な洞察を提供する。
【0110】
本発明はさらに、腫瘍のゲノム不安定性に起因する多くの伝統的な化学療法処置戦略に伴う問題の原因に関する認識を包含する。すなわち、腫瘍は、処置開始後にさらなる変異および選択を受け、その結果、増強された薬物流出、代謝または相殺的なドライバー変異による薬物耐性が生じる。本発明は、癌遺伝子標的化療法および伝統的な細胞傷害性療法の組み合わせを使用する場合であっても、現在の創薬パラダイム(特に、固形腫瘍の処置に焦点を当てているもの)は、1種類または数種類の癌に対してのみ有効であり、1種類の癌を有する一部の患者においてのみ有効であり、および/または平均でさらに3カ月間の寿命を提供するに過ぎない薬物を生産する傾向があると認識する。
【0111】
さらに、本発明は、臨床試験における予想外の組み合わせまたは相乗毒性(非致命的な疾患を含む)を回避するために主に設計された現在の規制環境が、特に、長期的な時間枠(典型的には、10〜14年間)および困難な価格と相まって、併用療法の開発を妨げると認識する(それぞれの新たな抗癌薬の発見および開発には平均で数百万ドルであり、見積額は、1つの薬物当たり4300万ドル〜20億ドル超で変化する。Adams&Brantner Health Aff(Millwood)25(2):420,2006 Mar−Apr,PubMed PMID:16522582、DiMasiら、J
Health Econ 22(2):151,2003 Mar,PubMed PMID:12606142)。単独で有効であると予想されない薬剤を利用する併用療法アプローチの開発が、特に妨げられる。
【0112】
実際、本発明は、様々なさらなる科学的、資源的およびビジネス的な制約が、腫瘍学における併用療法の開発に対する合理的または効率的なアプローチを妨げていると認識する(Humphreyら、J Natl Cancer Inst 103(16):1222,2011 Aug 17,PubMed PMID:21765011、Levinson Science 38(5975):137,2010 Apr 9,PubMed PMID:20378778、Woodcockら、N Engl J Med
364(11):985,2011 Mar 17,PubMed PMID:21323535)。最新のまたは標的化治療薬は最も活性であり、典型的には、それらの最大許容用量(MTD)で個々に使用されるため、これらの制約としては、2つの従来の化学療法剤を組み合わせた場合の許容し得ない毒性の可能性が挙げられる。換言すれば、それらは、狭い治療指数(TI)を有する。加えて、第II相の組み合わせデータによる第III相の成功予測可能性は歴史的に低く、患者の募集に関する問題があり(臨床試験の癌患者志願者のうちわずか3%)、会社は、自社が専売する治験化合物を別の会社のものと組み合わせることに抵抗がある(Maitlandら、Clin Cancer Res
16(21):5296,2010 Nov 1,PubMed PMID:20837695)。本発明は、これらの制約が、癌治療に対するある特定のアプローチの開発を制限しており、特に、本発明が明確に望ましいと定義する特定の戦略(本明細書に記載される複数の治療上関連する特徴的な経路(例えば、血管新生、アポトーシス、細胞代謝およびエネルギー論および免疫監視の組み合わせ)の標的化)から開発を遠ざけているという認識を包含する。
【0113】
したがって、本発明は、過去40年間にかなりの進歩がなされてきたが、最大許容用量の化学療法によって導かれる現在の治療は、長期的な時間枠での疾患進行およびより後期の疾患の排除に関して、大きな制限を示していると認識する。また、複数の標的化薬剤のカスタマイズされたカクテルの使用、または多重標的化能を有する単一の薬物の発見が当技術分野で議論されているが、それは、十分に定義または調査されていないアプローチである。本発明は、複数の経路を標的化するための特異的な戦略を提供し、さらに、具体的な例証を用いて、癌を処置するために有効に一緒に使用され得る薬剤のクラスを定義する。
【0114】
複数の経路を標的化すること
上記のように、本発明は、有効な癌治療が、複数の特徴的な癌経路を一緒に標的化する薬剤の組み合わせを利用するという教示を提供する。ある特定の実施形態では、利用される組み合わせは、各標的化経路に一緒に少なくとも2回対処する薬剤のコレクションを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのこのような経路は、利用される組み合わせによって少なくとも3回標的化される。いくつかの実施形態では、それぞれのこのような経路は、利用される組み合わせによって少なくとも2回または少なくとも3回標的化される。
【0115】
本開示、および標的化すべき経路のその同定、ならびに複数の経路を標的化することと、いくつかの実施形態では個々の経路を1回より多く標的化することとの両方を行う薬剤のコレクションを組み立てることに関するその教示を読んだ当業者であれば、本発明にしたがって併用するための適切な薬剤を容易に選択することができるであろう。特定の経路を標的化するための様々な戦略は、当技術分野で公知であり、および/または本明細書に記載されている。
【0116】
以下、本発明にしたがって標的化するための特に関心のある経路をさらに詳細に説明する。これらの経路のそれぞれを標的化するための代表的な戦略は、例えば、図1に示されている。
【0117】
血管新生
「血管新生」は、組織または器官への新たな血管の発生を指す。通常の生理学的条件下では、ヒトまたは動物は、非常に特異的に制限された状況下で血管新生を受ける。例えば、血管新生は、通常、創傷治癒、胎児および胚発生、ならびに黄体、子宮内膜および胎盤の形成において観察される。血管新生の内因性制御は、血管新生刺激因子および阻害因子の高度にレギュレートされたシステムである。ある特定の疾患状態では、血管新生の制御が変化していることが見出されており、多くの場合、疾患に関連する病理学的損傷は、無制御な血管新生に関係する。
【0118】
ヒトまたは動物の体内の血管新生レギュレーターは、一般に、2つの主なグループに分けられ得る:(1)毛細血管および血管の成長を直接的または間接的に刺激する血管新生促進レギュレーター、および(2)血管新生を遅らせる抗血管新生レギュレーターまたは内因性阻害因子。血管新生促進レギュレーターの例としては、例えば、腫瘍壊死因子(TNF−α)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)および血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。抗血管新生レギュレーターの例としては、例えば、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、トロンボスポンジン−1、エンドスタチンおよびアンギオスタチンが挙げられる。
【0119】
多くの疾患、特に癌において、血管新生は、疾患を支援する重要なプロセスであるため、血管新生それ自体のプロセスが治療的介入の標的となる。最近の医学研究では、血管新生が疾患の支援において果たす重要な役割が実証されている。血管新生は、無血管性良性腫瘍が致命的な悪性腫瘍に転換する癌における極めて重要なプロセスとして特に十分に証明されている。
【0120】
制御的な血管新生および無制御的な血管新生は両方とも、同様に進行すると考えられる。基底膜により囲まれる内皮細胞および周皮細胞は、毛細血管を形成する。血管新生は、内皮細胞および白血球により放出される酵素による基底膜の侵食により開始する。次いで、血管の管腔に並ぶ内皮細胞が、基底膜を通して突き出る。血管新生刺激物質(血管新生促進レギュレーター)は、内皮細胞が侵食基底膜を通って遊走するよう誘導する。遊走細胞は親血管から離れて「新芽」を形成し、そこで内皮細胞は有糸分裂を行って増殖する。内皮の新芽は互いに融合して毛細血管ループを形成し、新たな血管を作り出す。この疾患状態では、血管新生の防止は、新たな微小血管系の侵入によって引き起こされる損傷を回避することができる。
【0121】
腫瘍の転移、内皮細胞による異常成長を含む多くの疾患状態において、持続的および非調節的な血管新生が起こり、血管新生は、これらの状態で認められる病理学的損傷を支援する。非調節的な血管新生により作り出される多様な病理学的状態が、血管新生依存性疾患または血管新生関連疾患として一緒に分類されている。血管新生プロセスの制御を対象とする治療は、これらの疾患の発達、維持および/または拡大を無効化または軽減しようとするものである。血管新生は、癌の成長および転移に必要な決定的な事象の1つであるという認識で、癌処置の重要な標的となっている。腫瘍が発達するにつれて、そのサイズは、既存の血管からの代謝産物の拡散によって制限される。癌性腫瘍が成長および広がり続けるためには、腫瘍血管新生が必須である。
【0122】
腫瘍が成長するにつれて、中心の細胞が酸素欠乏状態になって、ある範囲の血管新生因子の発現をアップレギュレートする転写因子(低酸素誘導因子−1(HIF−1))の発現が誘導される。成長因子のシグナリングはまた、酸素ホメオスタシスを維持するために、細胞成長の必要性を先取りして、HIF−1活性を開始する。その結果、HIF−1それ自体は、癌の治療標的として単離された。
【0123】
120個の承認されている抗癌薬のうちの約9個は、主に血管内皮成長因子(VEGF)経路の阻害を介して、血管新生を標的化する。初期応答にもかかわらず、内因性耐性または獲得耐性が原因で、さらにおそらくはリバウンド機構が原因で、無増悪生存期間または全生存期間の点で得られる臨床利益は、予想よりも控えめであった。加えて、臨床では、抗血管新生療法と癌遺伝子標的化療法または細胞傷害性療法との組み合わせアプローチは、相乗的な応答をもたらさなかった。メトロノーム抗血管新生療法と称されるより最近のアプローチは、シクロホスファミドなどのある特定の細胞傷害性抗腫瘍薬が、非毒性低用量で毎日投与する場合には抗血管新生的であるという発見を利用する(25〜41)。本発明は、このアプローチが、リバウンド血管新生の可能性を減少させ、組み合わせの場面における相乗作用の可能性を高め得るという認識を包含する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、本発明は、他の特徴的な経路の標的化と組み合わせて、メトロノーム抗血管新生療法を利用する。いくつかの特定の実施形態では、本発明は、別の経路も標的化する薬剤と共に、メトロノーム抗血管新生療法を利用する。ほんの一例であるが、いくつかの実施形態では、本発明は、メトロノームシクロホスファミドを利用する;メトロノームシクロホスファミドは、その抗血管新生効果に加えて、抗腫瘍免疫応答を増強し得る。
【0125】
アポトーシス
正常な哺乳動物細胞は、細胞が損傷した場合、または細胞が最適ではない条件に曝露された場合に、細胞の自殺またはアポトーシスを誘導するように設計された様々なプログラム細胞死経路を有する。アポトーシス細胞死は、望ましくない変異の蓄積を防止し、壊死性細胞死とは異なり、局所的な組織損傷を引き起こさずに細胞を排除する。腫瘍がアポトーシス経路の関与を回避する方法の多くは十分に理解されており、アポトーシス阻害タンパク質の過剰発現を伴うことが多い(42〜43)。
【0126】
細胞増殖および血管新生に関与する酵素よりも標的化するのが困難であるが、多数の薬物がこの領域で開発中である。本発明は、このアプローチ(特に、アポトーシス促進剤と既存の抗増殖剤を組み合わせる理解可能(understandinble)な動機)における潜在的な危険性を認識する。すなわち、本発明は、アポトーシスを阻害するタンパク質の過剰発現は、腫瘍細胞が変異を蓄積して無制御に分裂し続けることを可能にすると認識する。この増大するアポトーシス非感受性を反転するための薬学的アプローチは、腫瘍細胞をプログラム細胞死経路に対してより感受性にするはずである。さらなる利益のために薬剤を組み合わせる癌治療の傾向を考慮すると、細胞傷害性アポトーシス誘導剤で患者を処置することも論理的と思われる。しかしながら、本発明は、逆説的に、これらの細胞傷害性薬剤は、高用量で、細胞周期の進行の遅延を引き起こすと認識する。したがって、細胞傷害性損傷を生き延びる細胞は、一時的に非増殖性であり、アポトーシス誘導刺激に対して低感受性である可能性が高い。したがって、本発明によれば、ある特定のアポトーシス促進薬は、休眠細胞または非分裂細胞に対してではなく、腫瘍細胞が活発に分裂しようとする条件下で最も良好に作用する可能性がある。本発明のいくつかの特定の実施形態では、抗増殖剤は、アポトーシス促進剤と組み合わせて利用されない。いくつかの実施形態では、アポトーシス促進剤は、細胞増殖を促進または支援する1つまたはそれを超える薬剤と組み合わせて使用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、患者は、抗増殖剤およびアポトーシス促進剤の両方で処置される。
【0127】
免疫監視
抗腫瘍免疫応答(免疫監視)の誘導の可能性は、100年以上認識されているが、腫瘍が免疫破壊を回避する基本的な機構は、最近解明されたに過ぎない。腫瘍は、先天性免疫応答または炎症性免疫応答のバランスを抗腫瘍形成性から腫瘍形成促進性にシフトさせる因子を発現および分泌することが現在では明らかである。これは、抗腫瘍ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の機能を抑制し、腫瘍成長および腫瘍血管新生を刺激する一般的な炎症促進応答を増強することによって達成される。加えて、腫瘍は平均で33〜66個の変異体タンパク質(これらのいくつかは、外来抗原として認識可能である)を発現するという事実にもかかわらず、腫瘍は、抗原提示ならびに適応免疫応答の誘導および成熟を遮断する(44)。
【0128】
これらの免疫監視機構の解明は、抗腫瘍免疫応答を直接的に刺激する少なくとも1つの治療薬(イピリムマブ)の開発および承認をもたらした。この化合物は、一部の悪性黒色腫患者では長期的な応答をもたらしたが、正常組織における自己免疫応答の活性化による有意な毒性も伴う(45)。
【0129】
したがって、本発明は、癌患者において免疫監視を回復させることが可能であると認識する。本発明はさらに、関連の免疫応答機構および他の経路を攻撃する薬剤の組み合わせは、応答率を有意に増加させると認識する。
【0130】
代謝およびエネルギー論
エネルギー産生に関係する代謝異常は、腫瘍が通常よりも速い好気的解糖速度を有することを観察したOtto Warburgによって、ほぼ90年前に腫瘍細胞で最初に説明された。この理由は、ごく最近明らかになった(46〜50)。ほとんどの正常上皮細胞は、活発に分裂していない。正常組織中の非分裂細胞は、異化中間体に関する最小限の要件を有し、豊富な酸素供給を有するので、解糖およびトリカルボン酸サイクル(TCA)を介してグルコースを完全に酸化する余裕があり得、次いで生成されたNADHおよびFADHを使用して酸化的リン酸化によってATPを作る。この戦略は、ATP産生に関しては解糖よりも効率的であるが、解糖およびTCAの中間体(そうでなければこれらは、ヌクレオチドのリボース糖、脂質、およびタンパク質のアミノ酸を作るために、同化経路で使用され得る)の減少をもたらす。酸化的リン酸化によるATP産生はまた、解糖主導のATP産生よりも100倍遅い。加えて、酸化的リン酸化は、細胞構成成分を損傷してアポトーシスをもたらし得る反応性酸素種(ROS)を生成する。
【0131】
正常細胞は、いくつかの抗酸化機構を有し、大量のDNA、RNA、脂質またはタンパク質を継続的に作る必要はなく、比較的ゆっくりとATPを作る余裕があり得る。一方、腫瘍細胞は、正常細胞よりも頻繁に分裂し、DNA、RNA、脂質およびタンパク質の前駆体の有意により大きなプールを必要とする。かなりの量の乳酸およびわずか2個の正味のATPが解糖を介して生成されるが、迅速なターンオーバーが細胞のエネルギー要求を満たすことができ、肝臓では乳酸がグルコースにリサイクルされ得る。解糖経路を代謝に使用することにより、腫瘍細胞は、無制御な細胞増殖に必要な大量の前駆体を産生することができる。また、酸化的リン酸化に重きを置かない(de−emphasizing)ことによって、腫瘍細胞は、ROSの産生を減少させ得る。腫瘍細胞は、正常細胞ほど容易に非特異的な酸化損傷から修復および回復することができないので、ROSの減少は、腫瘍細胞にとって重要である。最後に、腫瘍は、成長するにつれて低酸素(低い酸素)条件に継続的に曝露されるので、必死で新たな血管の形成を誘導しようとする。この状況では、酸素依存性酸化的リン酸化へのそれらの依存度を減少させると、さらなる生存上の利点を腫瘍細胞に与えることになる。
【0132】
過去十年間の間に、腫瘍細胞における酸化的リン酸化ベースのエネルギー産生から好気的解糖ベースのアプローチへのシフトは、複数の経路(細胞増殖、アポトーシスおよび血管新生に関与するものを含む)における多くの一次的および二次的な変化を必要とすることが見出された。例えば、とりわけ、ある特定の癌遺伝子の変異による活性化は、十分なグルコースを蓄積して嫌気的解糖を作動させるのに必要なグルコース輸送タンパク質の発現の増加につながる(51)。癌遺伝子およびグルコース輸送体は、タンパク質生合成、細胞成長、細胞周期進行、エネルギー代謝、血管新生およびアポトーシスを制御するシグナルを統合するラパマイシン(mTOR)シグナリング経路の哺乳類標的の構成要素である(52〜54)。この経路は、グルコースの利用および産生を含むエネルギー代謝に主として関与するので、それが2型糖尿病の病因および処置においても役割を果たすことは驚くべきことではない。
【0133】
本発明は、本明細書に記載されるように、特に他の経路を標的化しながら、腫瘍細胞における代謝および/またはエネルギー論経路を標的化することによって、癌を処置することが望ましいという認識を包含する。本発明は、メトホルミン(2型糖尿病におけるグルコース産生を抑制するのに使用される耐容性良好な第一選択薬)は、腫瘍細胞の異常な代謝特徴のいくつかを反転させることも見出されたことに特に注目する(55〜67)。
【0134】
本発明の治療レジメンに使用するための薬剤
本明細書に記載されるように、特徴的な癌経路は、大都市の地下鉄マップのように互いに重複および協調することが明らかになっている。何百もの「システム内ステーション」のうちの3〜10個の非常に特異的な変異または欠陥は、正常細胞を癌細胞に変化させるのに十分であり得る。1つまたはおそらくはさらに2つの欠陥が標的化治療薬によって修正されると、薬物耐性および/または新たな癌を引き起こす変異につながる冗長性およびゲノム不安定性は迅速に補い得る。一方、正常細胞は、ゲノム不安定性の利益を除いて、同じ経路のすべてを必要とし、使用するので、任意の2つまたはそれを超える経路への介入は、腫瘍細胞の選択的な殺傷よりも、正常細胞における系の許容し得ない破壊を引き起こす可能性が統計的に非常に高い。
【0135】
これらの現実を考慮して、本発明は、癌処置戦略の開発および/または実行に対する従来のアプローチに伴う問題の原因を特定する。本明細書に記載されるように、増殖の刺激および抑制(癌遺伝子および抑制遺伝子)、浸潤および転移、複製的死亡、血管新生、プログラム細胞死またはアポトーシス、細胞代謝およびエネルギー論、ゲノム安定性および免疫監視を個々に標的化するアプローチは、特定の癌細胞(例えば、休眠状態にあり得る細胞、または後期(例えば、転移性)癌で生じる細胞を含む)に対して効果がない場合がある。「投薬可能」へのこれまでの集中が、選択肢を著しく制限している。また、その最大許容用量でまたはその最大許容用量付近で通常使用される狭い治療指数の薬剤への典型的な依存は、従来の戦略による有効な併用療法の開発を複雑にするか、またはこれを妨げる。
【0136】
本発明は、癌治療を開発および/または実行するための新たな改善された戦略を提供する。とりわけ、本発明は、複数の経路を標的化することの利益を認識し、特定の目的の組み合わせは、複数の経路を標的化することと、複数の方法で個々の経路を標的化することとの両方を行うとさらに認識する。
【0137】
また、本発明は、ある特定の実施形態では、従来の化学療法剤について一般的に観察されるものよりも広い治療指数を有する薬剤(および/または投薬レジメン)を利用することが望ましいという認識を包含する。このような従来の薬剤は、典型的には、約2〜約5の範囲内の治療指数を特徴とする。いくつかの実施形態では、本発明は、その治療指数が約10〜約100の範囲内である1つまたはそれを超える薬剤を利用する。
【0138】
本発明は、ある特定の非致命的な状態(特に、慢性状態)の処置のために開発され、および/または前記処置に有効な治療剤は、本明細書に記載されるように特徴的な癌経路である1つまたはそれを超える経路を標的化し得、本明細書に記載される併用療法に有用であり得るという特定の洞察を包含する。このような薬剤は、典型的には、特に長期治療のために開発された場合に広い安全域を示す。実際、非致命的な疾患、障害または状態の長期治療のために承認された薬剤は、典型的には、厳格な規制リスク便益要件を満たさなければならなかった。処置される状態に伴う罹病率が低いほど、その治療の許容され得るリスクが低い。本発明のある特定の実施形態によれば、低罹病率の慢性病の処置のために開発された薬剤であって、本明細書に記載される1つまたはそれを超える特徴的な癌経路を標的化する薬剤は、癌処置のための本発明の治療レジメンに特に有用である。
【0139】
さらに、本発明は、補完代替医療(complementary and alternative medicine)(CAM)を含むある特定の伝統的および/または栄養補助的な医学アプローチは、本明細書に記載される関連経路を標的化する耐容性良好な薬剤を同定および/または利用するという認識を包含する。多くの実施形態では、このような薬剤は、精製されたまたは部分的に精製された天然の産物または抽出物であり得るか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、数十年またはさらに数世紀の観察的試行錯誤の結果として、このような産物が同定および/または特徴付けされている。典型的には、伝統的な薬剤および/または栄養補助剤は耐容性良好であり(すなわち、最小限の毒性を伴う)、高い治療指数(例えば、典型的には10をはるかに上回り、多くの場合には本明細書に記載される少なくとも10〜少なくとも100の範囲内であり、時としてはさらにそれ以上である)を示す。
【0140】
したがって、とりわけ、本発明は、高い治療指数を示し、および/または複数の特徴的な(allmark)癌経路を一緒に(好ましくは、複数の方法で)標的化する薬剤の組み合わせを利用する癌治療を提供する。
【0141】
いくつかの実施形態では、「栄養補助食品」、「自然医薬品」または「植物医薬品(Phytomedicine)」と称される天然化合物およびサプリメントは、本発明の併用療法に使用するのに適切である。本明細書に記載されるように、このような栄養補助食品は、ヒト癌患者において臨床的な抗腫瘍活性の信頼できる証拠を示すか、または本明細書に記載される1つもしくはそれを超える腫瘍形成および血管新生シグナリング経路に影響を与え、ならびに/もしくは腫瘍細胞の増殖のために、血管新生の発達のために、および腫瘍進行のために必須の経路間で認められる「クロストーク」を妨げるそれらの能力を実証する前臨床試験または臨床試験の質および数に基づいて選択され得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、本発明の併用療法は、代謝経路またはシグナリング経路に対するそれらの所望の効果のために、1つまたはそれを超える栄養補助化合物に加えて、多数の非化学療法薬または化学療法薬のいずれかを含み得る。このような非化学療法薬または化学療法薬は、本発明の組成物の栄養補助構成要素と同じ経路に対処し得るか、または栄養補助構成要素の投与によって適切に変化されない経路に対処し得る。これらの構成要素は薬物であるため規制の対象となるので、それらは、通常、医師または有資格認定医療関係者の命令のみによって含められ得る。例示的な非化学療法薬としては、限定されないが、メトホルミン、シクロホスファミド、ナルトレキソン、メラトニンなどが挙げられる。当業者であれば、いくつかの実施形態では、これらの薬剤の一部または全部は、それらの承認された薬物レジメンまたはプロトコールにしたがって利用され得ると認識するであろう。あるいはまたは加えて、いくつかの実施形態では、これらの薬剤は、それらが承認されているものとは異なる用量で、および/または異なるレジメンもしくはプロトコールにしたがって利用されるか、または利用され得る。いくつかの実施形態では、このような用量および/またはレジメンもしくはプロトコールは公知であり、および/または当技術分野で確立されている。いくつかの実施形態では、医師または有資格認定医療関係者の命令は、このような投与に必要とされない場合がある。例えば、当業者であれば、メラトニンは、様々な十分に確立された用途(本明細書に記載される以外のものを含む)を有するが、それらの全部ではなく一部が正式な規制承認の対象となっていると認識するであろう。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを超える非化学療法薬は、より具体的には上皮細胞関連癌の処置のために、癌に関与する重要なシグナリング経路を抑制または破壊するそれらの能力を実証する研究に基づいて、本明細書に記載される方法および組成物の有意な構成要素として選択される。それらの抗癌効果を裏付ける証拠は薬剤によって異なるが、ほぼすべての場合において、抗癌活性に関する確かな公開された証拠であり、いくつかの場合では、抗血管新生活性に関するものである。
【0143】
臨床試験は、再度、わずか1つのマーカー(またはいくつかの場合では数個のマーカー)を標的化し得る標的化治療の第I相試験または第II相試験へのアクセスを主に提供する。現在承認されている癌治療は、典型的には、癌細胞成長に対して直接的な影響を及ぼすことが見出された単一の化学療法剤を選択すること、および致命的な毒性を伴わずに患者が耐容可能な限り多くのその薬剤を投与することを含む。本発明によって具現化される1つの概念は、化学療法薬を用いてわずか1つの経路に対処することによって、いくつかの他の癌支援経路を抑制されていないままにし、または癌抑制経路を増強されていないままにし、それにより、血管新生、成長または遊走の癌代替経路を残し得ることである。対照的に、本明細書に記載される本発明の治療プロトコールでは、任意の1つの標的に対する特定の個々の薬剤(例えば、天然化合物および/または非化学療法薬)の効力は、合理的に設計された医薬品のものよりも低い場合があるが、複数の薬剤の組み合わせ(特に、複数の天然化合物[例えば、栄養補助食品]および/または非化学療法医薬品)(好ましくは、個々の標的経路に対する複数の薬剤を含む)は、倍数的な薬理学的効力で複数の経路に対処する可能性を有する。
【0144】
いくつかの実施形態では、提供される本発明の治療レジメンは、栄養補助剤(nuctraceutical agent)、ならびに/または非癌状態のために開発および/もしくは承認された薬剤(例えば、非化学療法剤)のみを利用する。いくつかの実施形態では、提供される本発明の治療レジメンは、1つまたはそれを超える癌の処置のために承認された少なくとも1つの薬剤を利用する;いくつかのこのような実施形態では、このような薬剤は、承認された癌処置レジメンと異なる投薬レジメンにしたがって、本発明にしたがって利用される。いくつかの実施形態では、このような異なるレジメンは、同じ薬剤を利用する参照(例えば、承認された)癌治療レジメンと比較して少ない個別用量および/または少ない総曝露を一定期間にわたって投与することを含む。
【0145】
癌処置のための本発明の併用療法レジメンのある特定の実施形態において含めるのに有用な例示的な薬剤を以下で個別に説明する。それらの多くについて、当業者に公知の多数の等価な薬剤がある。
【0146】
栄養補助剤および/または非化学療法剤
アルファリポ酸
アルファリポ酸は、グルコースをエネルギーに変換するために体内で産生される脂肪酸である。それはまた、疾患の発症に寄与する有害な化学物質と闘うのに有益な抗酸化特性を有することが公知である。それはまた、以下の名称で称される:酢酸交換因子(Acetate Replacing Factor)、A−リポ酸(A−Lipoic Acid)、アルファリポ酸(Acide Alpha−Lipoique)、アルファリポ酸 R(Acide Alpha−Lipoique R)、DL−アルファリポ酸(Acide DL−Alpha−Lipoique)、リポ酸(Acide Lipoique)、チオクト酸(Acide Thioctique)、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸(Acide 1,2−dithiolane−3−pentanoique)、1,2−ジチオラン−3−吉草酸(Acide 1,2−dithiolane−3−valerique)、5(1,2−ジチオラン−3−イル)吉草酸(Acide 5
Valerique(1,2−dithiolan−3−yl))、6,8−ジチオクタン酸(Acide 6,8−dithiooctanoique)、6,8−チオクト酸(Acide 6,8−Thioctique)、アルファリポ酸(Acido Alfa Lipoico)、アルファリポ酸抽出物(Alpha−Lipoic Acid
Extract)、ALA、ビレタン(Biletan)、dアルファリポ酸抽出物(Extrait d’acide Alpha−Lipoique)、リポ酸(Lipoic Acid)、リポイシン(Lipoicin)、R−ALA、R−アルファリポ酸
R(R−Alpha−Lipoic Acid R)、S−アルファリポ酸(S−Alpha Lipoic Acid)、(R)−リポ酸((R)−Lipoic Acid)、R−リポ酸(R−Lipoic Acid)、RS−アルファリポ酸チオクト酸(RS−Alpha−Lipoic Acid Thioctacid)、チオクタン(Thioctan)、チオクト酸(Thioctic Acid)、1,2−ジチオラン−3−ペンタン酸(1,2−dithiolane−3−pentanoic acid)、1,2−ジチオラン−3−吉草酸(1,2−dithiolane−3−valeric
acid)、6,8−ジチオクタン酸(6,8−dithiooctanoic acid)、6,8−チオクト酸(6,8−thioctic acid)、5−(1,2−ジチオラン−3−イル)吉草酸(5−(1,2−dithiolan−3−yl)valeric acid)。
【0147】
体内で製造され、ほうれん草、ブロッコリー、エンドウ豆、ビール酵母、芽キャベツ、米、ふすま、ジャガイモおよび内臓肉(腎臓、心臓、肝臓)などの食品に微量で見られるが、最高の抗酸化効果を提供するのは、サプリメントに見られる濃縮量のアルファリポ酸である。植物またはヒトで内因的に産生される場合、それは、タンパク質と複合体化されている。しかしながら、サプリメントの形態で摂取した場合、それはタンパク質に結合しておらず、おそらくは、通常の食事を介して得られ得るよりも1000倍多い量である。
【0148】
アルファリポ酸は、酸化ストレスによって引き起こされる炎症につながる最初の工程である内皮活性化および単球接着につながるTNF−α誘導性NF−カッパB経路の活性化を阻害することが公知である。アルファリポ酸は、遊離金属イオンのキレート化を介して銅および鉄によって媒介される酸化的損傷および蓄積を阻害することが見出されている。このプロセスは、反応性フリーラジカルを生成する反応によって引き起こされる誘導性酸化的損傷を抑制する。培養細胞へのアルファリポ酸の追加は、PKB/Akt依存性シグナリングを活性化して、ニューロンの生存の増加をもたらすことが示されている。
【0149】
現在のところ、いくつかのアルファリポ酸サプリメントが製造されている。アルファリポ酸は、不斉炭素を含有する(これは、互いの鏡像である2つの可能な光学異性体(R−およびS−異性体)が存在することを意味する)ことに留意することが重要である。ほとんどのサプリメントは、各R−アルファリポ酸およびS−アルファリポ酸の50:50ラセミ混合物を含有し得る。R−異性体のみを含有するサプリメントが利用可能であるが、純度のレベルは不明確であり得る。食事と共にアルファリポ酸を摂取するとそのバイオアベイラビリティが低下するため、空腹状態で(食事の1時間前または2時間後に)それを摂取することが一般に推奨される。
【0150】
ALAの商業的な供給業者としては、Source Naturals Alpha Lipoic Acid、Swanson Ultra Alpha Lipoic Acid、NOW Foods Alpha Lipoic Acid、Bluebonnet Alpha Lipoic Acid、Country Life R−Lipoic Acid、Solgar Alpha Lipoic Acidが挙げられる。
【0151】
クルクミン
香辛料ウコン中の有効成分は、植物curcuma longa Linnの根茎から抽出されるクルクミンである。クルクミンは、このような抽出物に見られる主なクルクミノイドまたはポリフェノール化合物であり、他のものとしては、デメトキシクルクミンおよびビスデメトキシクルクミンが挙げられる。
【0152】
ウコンはまた、Curcuma、Curcuma aromatica、Curcuma domestica、Curcumae longa、Curcumae Longae Rhizoma、Curcumin、Curcumine、Curcuminoid、Curcuminoide、Curcuminoides、Curcuminoids、Halada、Haldi、Haridra、Indian Saffron、Nisha、Pian Jiang Huang、Racine de Curcuma、Radix Curcumae、Rajani、Rhizoma Cucurmae Longae、Safran Bourbon、Safran de Batallita、Safran des Indes、Turmeric Root、Yu Jinとしても公知である。
【0153】
クルクミンの作用機構は、いくつかの細胞シグナリング経路の阻害、シクロオキシゲナーゼなどの細胞酵素に対する効果、ならびに血管新生および細胞間接着に対する効果を含む。クルクミンはまた、遺伝子の転写に影響を与えてアポトーシスを誘導する。
【0154】
クルクミンは、PI3K/Akt、MAPKおよびNF−κB活性化のシグナル伝達経路、ならびにソニックヘッジホッグ(Shh)シグナリング経路を、Shhタンパク質をダウンレギュレートすることによって阻害するのに有効である。次に、β−カテニン、AktおよびNF−κBの活性化型/リン酸化型の減少は、アポトーシスを誘発する。
【0155】
クルクミンによって阻害される発癌経路は、上皮成長因子受容体(EGFRおよびerbB2)、インスリン様成長因子1型受容体(IFG−1R)、ソニックヘッジホッグ(SHH)/GLI)およびWnt/b−カテニンおよびPARP、IKK、EGFR、JNK、MAPKおよび5−LOXのダウンレギュレーションを含む。加えて、クルクミンは、下流シグナリング要素、例えばシグナル伝達因子および転写のアクチベーター(STAT)、PI3K/Akt、核因子カッパB(NF−κB)およびその標的化遺伝子(IL−6、COX−2およびMMPを含む)を抑制する。
【0156】
クルクミンは、リポソーム形態で摂取する場合に最も有益である。最も生物学的に利用可能なサプリメントは、Life ExtensionのSuper Bio Curcumin(登録商標)であり、従来の95%クルクミン抽出物よりも最大7倍良好に血流に吸収される。あるいはまたは加えて、別の生物学的に利用可能性の高い形態のクルクミンは、Euromedica CuraPro BCM−95(登録商標)またはProgressive Labs Curcumin BCM−95(登録商標)である。他のクルクミンサプリメントは、それらの製品中のクルクミンの吸収を増強するために、ピペリン(コショウ)を追加する。しかしながら、ピペリンと多くの医薬との相互作用は、高用量で摂取した場合に問題(毒性を含む)を引き起こし得る。クルクミンは、1,3−ジケトおよびエノール形態を含む互変異性体で存在し得る。最も安定な形態のクルクミンは、その平面エノール形態である。加えて、Biomar(商標)クルクミンが市販されている。
【0157】
Super Bio−Curcuminおよび/またはEuromedica BCM−95(登録商標)の代替物としては、Jarrow Formulas Curcumin 95、NOW Foods Curcumin、Genceutic Naturals Curcumin BCM−95などを含むすべての95%クルクミンサプリメントが挙げられる。
【0158】
ウコン抽出物は、実際には2〜6%のクルクミンを提供するに過ぎず、より高レベルでクルクミンを摂取することが重要であり得る。95%未満のクルクミンのサプリメントはいずれも有効ではない。(Super Bio Curcumin(登録商標)の96%の吸収とは対照的に)約50〜60%しか吸収されない。加えて、バイオペリンなど他のサプリメントによる希釈はバイオアベイラビリティを低下させ、前述のように、ピペリンは、他の医薬と否定的に相互作用し得る。石油由来の合成クルクミンサプリメントは、天然サプリメントに見られる重要なクルクミノイドのわずか1つまたは2つを含有し得る。レスベラトロールは代替物ではない。クルクミンおよび他の重要な抗酸化物質を含有するが、他のサプリメントの質にもバイオアベイラビリティにも及ばない「究極の抗酸化物質」がある(例えば、Natural Factors(登録商標)Ultimate Antioxidantは、全クルクミノイドが95%であると主張するが、これらを特定しておらず、有益であるか有益で有り得ない13個の他の因子を有する)。
【0159】
いくつかの実施形態では、クルクミンを投与する場合、望ましくは、投与物質を吸収する患者の能力に影響を及ぼす要因を考慮し得る。例えば、患者が患者の消化管の一部の損傷(例えば、手術による摘出を含む;実施例を参照のこと)に苦しんでいる場合、そうでなければ望ましいかまたは適切なクルクミン用量である1つまたはそれを超えるクルクミンを減少または排除することが望ましいかまたは必要であり得る(if may be desirable or necessary)。あるいはまたは加えて、より口当たりの良いまたは生物学的に利用可能な形態で(例えば、液体として)クルクミンをある特定の患者に投与することが望ましい場合がある。
【0160】
ゲニステイン
ゲニステインは、発酵大豆から抽出されたイソフラボンである。それは、担子菌多糖、発酵ゲニステイン、発酵イソフラボン、GCP、ゲニステイン多糖、ゲニステイン複合多糖(Genisteine du Polysaccharide Combine)、イソフラボン複合多糖、ゲニステイン複合多糖(Polysacaridos Combinados de Genisteina)および大豆イソフラボン多糖とも称される。
【0161】
ゲニステインは、乳癌および前立腺癌の発生数の低下において重要な役割を果たす。ゲニステインは、NF−カッパBおよびAktシグナリング経路(これらは両方とも、細胞生存とアポトーシスとの間の恒常性バランスを維持することが公知である)の活性化を阻害することが示されている。さらに、ゲニステインは、抗酸化特性を有することが見出されており、血管新生および転移の強力な阻害剤であることが示されている。加えて、ゲニステインは、酸化促進物質シグナリングおよびその結果として生じる細胞死につながる内因性銅を標的化するように作用する。
【0162】
ゲニステインはまた、IGF−1/IGF−1Rシグナリング経路をダウンレギュレートし、ホルモン不応性PC−3前立腺癌細胞における細胞成長を阻害することが示されている。ゲニステインによる処置は、IGF−1刺激による細胞成長の有意な阻害をもたらした。ゲニステインによる処置はまた、IGF−1誘導性β−カテニンシグナリング(これは、PC−3細胞におけるE−カドヘリンレベルの増加およびサイクリンD1レベルの減少と相関した)を強く減衰した。加えて、ゲニステインは、T細胞因子/リンパ球エンハンサー因子(TCF/LEF)依存性転写活性を阻害した。
【0163】
ゲニステインはまた、抗血管新生活性をもたらすPTK活性およびMAPK活性化を減少させることによって、VEGF誘導性内皮細胞の活性化を阻害することが示されている。ゲニステインへの曝露はまた、VEGFによって誘導されるERK−1/2ではなくJNKおよびp38の活性化を減少させた。それはまた、MMPの活性を阻害した。
【0164】
ゲニステインは、容易に生物学的に利用可能である。最も純粋な形態は、LC Labs、Enzo Life Sciences、BioVisionを含む研究室から99%の純度で市販されている。しかしながら、すべての形態が人による消費に適切なわけではない。あまり好ましくない供給源は、低濃度でゲニステインを含有する大豆イソフラボンサプリメントである。
【0165】
メラトニン
メラトニンは、松果体によって分泌されるホルモンであり、体内で天然に見られる。メラトニンはまた、医療用途のために実験室で合成的に生産される。それは、MEL、メラトニナ(melatonina)、メラトニン(Melatonine)、MLT、N−アセチル−5−メトキシトリプタミン(N−acetyl−5−methoxytryptamine)、N−アセチル−5−メトキシトリプタミン(N−Acetyl−5−Methoxytryptamine)および松果体ホルモンとも称される。
【0166】
メラトニンは、公知の強力な抗酸化特性、抗炎症特性および抗腫瘍特性を有するが、それはまた、mTOR(これは、膵臓癌において役割を果たす)を含む発癌経路に影響を及ぼす。メラトニンは、膵臓癌細胞においてアポトーシス促進シグナリングを誘導し;ミトコンドリア機能を修復し、次にこれが膵臓癌細胞のアポトーシスを修復し;カペシタビン(XELODA)に対する患者の応答を増強する。Leja−Szpakら、J Pineal Res.,49(3):248−55(2010);Gonzalezら、J Pineal Res.,Epub 2010;Ruiz−Rabeloら、Pancreas,Epub 2010。
【0167】
メラトニンは、低酸素状態の下でHIF−1α安定化を阻害してVEGF発現の減少をもたらすことによって、腫瘍血管新生を抑制することが公知である。メラトニンはまた、HUVECの細胞増殖および遊走を阻害し、さらには膵臓癌腫細胞によって分泌されるVEGFタンパク質および産生されるタンパク質の両方を減少させる。加えて、VEGF mRNA発現は、メラトニンによってダウンレギュレートされることが公知である。メラトニンはまた、COX−2/PGE2、p300/NF−κBおよびPI3K/Akt/シグナリングを抑制すると同時に、Apaf−1/カスパーゼ依存性アポトーシス経路を活性化することによって、細胞増殖を阻害し、インビトロで癌細胞のアポトーシスを誘導することが示されている。
【0168】
メラトニンの最も有益な形態は、99%またはそれを超える純度を有する医薬品グレードの(「天然」、動物およびウシのものではない)サプリメントである。メラトニンのバイオアベイラビリティは大きく異なる。生物学的に利用可能な供給源は、Thorne Research Melatonin−5(商標)である。メラトニンは、メラトニン受容体に結合するが、最終的には異なる機能を有するいくつかの臨床類似体を有する(最も一般的には、睡眠補助薬のみまたは抗うつ薬のみとして)。これらとしては、S20242、アゴメラチン(agomelatine)および2−ブロモメラトニンが挙げられる。メラトニン、ラメルテオン(ramelteon)、タシメルテオン(tasimelteon)、PD−6735およびアゴメラチンを比較すると、アゴメラチンは、大鬱病の処置に最も可能性を示す類似体である。メラトニンとは異なり、アゴメラチンは、ヒトおよびブタのセロトニン(5−HT2C)受容体およびヒト5−HT2B受容体の競合アンタゴニストである。
【0169】
あるいはまたは加えて、不純物および低レベルのメラトニンを含む医薬、例えば不眠症に使用されるCircadinがある。メラトニンは、合成(人工)形態でのみ摂取すべきである。すり潰されたウシ松果体から抽出された代替物は、疾患を広め得るのでほとんど使用されていない。
【0170】
メラトニンは、様々な疾患、障害および状態の処置に有用であると報告されており、推奨投薬レジメンは、例えば、以下のものを含む:
加齢黄斑変性症(加齢に伴う視力喪失)の場合、3ミリグラムのメラトニンを6カ月間にわたって就寝時に毎晩経口摂取した。
【0171】
高齢者における体温調節を改善するために、1.5ミリグラムのメラトニンを2週間にわたって毎晩経口摂取した。
【0172】
アルツハイマー病または認知機能低下の場合、メラトニンを1〜10ミリグラムの用量で10日間〜最大35カ月間にわたって毎日経口摂取した。
【0173】
炎症の場合、メラトニンを10ミリグラムの用量で6カ月間にわたって毎晩経口摂取するか、または5ミリグラムを手術前夜および手術1時間前に経口摂取した。
【0174】
喘息の場合、3ミリグラムのメラトニンを4週間にわたって経口摂取した。
【0175】
ベンゾジアゼピン(抗不安剤)からの離脱の場合、1〜5ミリグラムの用量を数週間〜最大1年間にわたって毎日経口摂取した。
【0176】
癌の場合、メラトニンを1〜40ミリグラム(20ミリグラムが最も一般的である)の用量で数週間〜数カ月間にわたって毎日経口摂取した。
【0177】
メラトニンは、皮膚に塗布される。
【0178】
慢性疲労症候群の場合、5ミリグラムのメラトニンを3カ月間にわたって就寝5時間前に経口摂取した。
【0179】
COPD(呼吸困難を引き起こす慢性肺障害)の場合、3ミリグラムのメラトニンを3カ月間にわたって就寝2時間前に毎晩経口摂取した。
【0180】
視力に問題がある人々および視力に問題がない人々における概日リズム睡眠障害の場合、メラトニンを就寝前に0.5〜5ミリグラムの単回用量として、または1日用量として1〜3カ月間にわたって経口摂取した。
【0181】
遅延睡眠期症候群(delayed sleep phase syndrome)の場合、メラトニンを0.3〜6ミリグラム(5ミリグラムが最も一般的である)の用量で2週間〜3カ月間にわたって就寝前に毎日経口摂取した。
【0182】
せん妄の場合、0.5ミリグラムのメラトニンを最大14日間にわたって毎晩経口摂取した。
【0183】
鬱病の場合、6ミリグラムの徐放性メラトニンを4週間にわたって就寝時に経口摂取した。
【0184】
運動能力の場合、5〜6ミリグラムのメラトニンを運動1時間前または就寝前に経口摂取した。
【0185】
受胎能の場合、3ミリグラムのメラトニンをホルモン注射(ヒト絨毛性ゴナドトロピン、HCG)まで月経周期の3〜5日目に毎晩経口摂取するか、またはホルモン注射の日に経口摂取した。
【0186】
線維筋痛症の場合、3〜5ミリグラムのメラトニンを4週間〜60日間にわたって毎晩経口摂取した。
【0187】
胃腸障害の場合、3〜10ミリグラムのメラトニンを2〜12週間にわたって毎晩経口摂取した。
【0188】
頭痛の場合、2〜10ミリグラムのメラトニンを14日間〜8週間にわたって毎晩経口摂取した。
【0189】
肝臓の炎症の場合、5ミリグラムのメラトニンを12週間にわたって1日2回経口摂取した。
【0190】
高血圧の場合、メラトニンを1〜5ミリグラムの用量で1〜3カ月間にわたって単回用量として日中もしくは就寝前に経口摂取するか、または毎日経口摂取した。
【0191】
高コレステロールの場合、5ミリグラムのメラトニンを2カ月間にわたって毎日経口摂取した。
【0192】
高齢者における不眠症の場合、メラトニンを0.1〜5ミリグラムの用量で最大数カ月間にわたって就寝時または就寝2時間前に、メラトニンが豊富なナイトミルク(night milk)または徐放性Circadin(登録商標)の形態で経口摂取した。0.5ミリグラムの用量を4晩にわたって頬に置く。
【0193】
時差ぼけの場合、0.1〜8ミリグラムのメラトニンを移動日に(目的地における予定就寝近くに)経口摂取し、次いで、標準的なメラトニンまたは徐放性メラトニン(Circadin(登録商標))の形態で数日間にわたって毎日経口摂取した。
【0194】
記憶の場合、3ミリグラムのメラトニンを試験前に経口摂取した。
【0195】
閉経の場合、3ミリグラムのメラトニンを3〜6カ月間にわたって就寝時に毎晩経口摂取した。
【0196】
パーキンソン病の場合、3〜50ミリグラムの用量を2〜10週間にわたって就寝前に毎晩経口摂取した。(高用量3〜6.6グラムのメラトニンも毎日経口摂取した;しかしながら、これらの用量は過去の1972年の研究で使用されたが、もはや使用されていない)。
【0197】
周期性四肢運動障害の場合、3ミリグラムのメラトニンを6週間にわたって毎晩経口摂取した。
【0198】
レム睡眠行動障害の場合、3〜12ミリグラムのメラトニンを4週間にわたって毎日経口摂取した。
【0199】
下肢静止不能症候群の場合、単回用量3ミリグラムのメラトニンを経口摂取した。
【0200】
サルコイドーシス(広範囲の慢性炎症)の場合、20ミリグラムのメラトニンを1年間にわたって毎日経口摂取し、次いで、2年目には10ミリグラムに減少させる。
【0201】
統合失調症を有する人々において筋運動に問題がある場合、2〜10ミリグラムのメラトニンを毎日経口摂取した。
【0202】
季節性感情障害(SAD)の場合、2ミリグラムの徐放性メラトニンを3週間にわたって毎晩1〜2時間経口摂取した。用量0.5ミリグラムのメラトニンを6日間にわたって舌下摂取した。
【0203】
発作性障害の場合、経口摂取したメラトニンの用量は、2〜4週間から3カ月間にわたって毎日3〜10ミリグラムであった。
【0204】
(一般的な)睡眠の場合、経口摂取したメラトニンの用量は、0.3〜10ミリグラムであった。
【0205】
行動障害、発達障害または精神障害を有する人々における睡眠障害の場合、0.1〜10ミリグラムのメラトニンを最大1年間にわたって毎日経口摂取した。
【0206】
アルツハイマー病における睡眠の乱れの場合、1.5〜10ミリグラムのメラトニンを10日間〜35カ月間にわたって、光曝露と共にまたはカプセルの形態で毎晩経口摂取した。
【0207】
喘息を有する者における睡眠の乱れの場合、3ミリグラムのメラトニンを4週間にわたって経口摂取した。
【0208】
自閉症を有する者における睡眠の乱れの場合、0.75〜10ミリグラムのメラトニンを2週間〜6カ月間にわたって就寝前に毎晩摂取した。
【0209】
COPDを有する者における睡眠の乱れの場合、3ミリグラムのメラトニンを毎晩経口摂取した。
【0210】
嚢胞性線維症を有する者における睡眠の乱れの場合、3ミリグラムのメラトニンを21日間にわたって就寝時に毎晩経口摂取した。
【0211】
鬱病を有する者における睡眠の乱れの場合、通常の治療に加えて、0.5〜10ミリグラムのメラトニンを3〜4週間にわたって経口摂取した。
【0212】
健康な人々における睡眠の乱れの場合、0.1〜80ミリグラムのメラトニンを一般には1日または数日間〜最大26週間にわたって就寝前に毎晩経口摂取した。50ミリグラムの用量を静脈に注射した。
【0213】
血液透析を受けている人々における睡眠の乱れの場合、3ミリグラムのメラトニンを6週間にわたって経口摂取した。
【0214】
入院中の病人における睡眠の乱れの場合、3〜5.4ミリグラムのメラトニンを毎晩経口摂取した。
【0215】
学習障害を有する人々における睡眠の乱れの場合、0.5〜9ミリグラムのメラトニンを32〜73日間にわたって経口摂取した。
【0216】
パーキンソン病を有する人々における睡眠の乱れの場合、3〜50ミリグラムのメラトニンを2〜4週間にわたって就寝時に経口摂取した。
【0217】
手術後の睡眠の乱れの場合、5ミリグラムのメラトニンを3晩にわたって経口摂取した。
【0218】
精神障害を有する人々における睡眠の乱れの場合、2〜12ミリグラムのメラトニンを最大12週間にわたって休息前に毎日経口摂取した。
【0219】
外傷性脳損傷を有する人々における睡眠の乱れの場合、5ミリグラムのメラトニンを1カ月間にわたって経口摂取した。
【0220】
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex)(脳および他の器官における腫瘍成長を引き起こす遺伝性障害)を有する人々における睡眠の乱れの場合、5ミリグラムのメラトニンを2週間にわたって就寝20分前に経口摂取した。
【0221】
喫煙の場合、0.3ミリグラムのメラトニンをニコチン離脱3.5時間後に経口摂取した。
【0222】
手術の場合、3〜15ミリグラムのメラトニンを経口摂取したかまたは舌下に置き、典型的には手術90分前に、または手術前夜および手術90分前に、1キログラム当たり0.05〜0.2ミリグラムを単独でまたは他の鎮静剤と組み合わせて舌下に置いた。
【0223】
手術前の不安または鎮静の場合、1キログラム当たり3〜10ミリグラムおよび/または0.05〜0.5ミリグラムのメラトニンを単独でまたは他の鎮静剤と組み合わせて手術前に静脈に注射した。
【0224】
遅発性ジスキネジー(無制御な反復動作)の場合、2〜20ミリグラムのメラトニンを4〜12週間にわたって経口摂取した。
【0225】
低血小板の場合、20ミリグラムのメラトニンを2カ月間にわたって毎晩経口摂取した。
【0226】
耳鳴りの場合、3ミリグラムのメラトニンを最大80日間にわたって毎日経口摂取した。
【0227】
潰瘍の場合、5ミリグラムのメラトニンを他の医薬と共に21日間にわたって1日2回経口摂取した。
【0228】
夜間放尿の場合、2ミリグラムのメラトニンを4週間にわたって毎日経口摂取した。
【0229】
交代勤務睡眠障害の場合、1.8〜10ミリグラムのメラトニンを最大6日間にわたって夜勤後の日中睡眠前に最大1日3回経口摂取した。
【0230】
皮膚の日光による損傷の場合、メラトニンをゲルの形態(20〜100ミリグラムのメラトニンの70%エタノール溶液。ゲル0.12ミリリットル中の濃度は0.05〜0.5%)で皮膚に塗布した;1平方メートル当たり0.6ミリグラムを日光暴露の15分前〜240分後に単独で、またはビタミンCおよびEと共に;エタノール、プロピレングリコールおよび水中の5%メラトニン;ならびに1.2〜5%メラトニンを含有する5.85マイクロリットルの溶液を単独で、またはビタミンCおよびEと共に。
【0231】
メラトニンは、それを摂取する時刻に応じて概日リズムに異なって影響を及ぼし得るため、通常、メラトニンを投薬するタイミングに注意を払う。
【0232】
本発明の実施形態によれば、メラトニンの適切な量は、1日当たり0.3〜75mg、好ましくは1.0〜50mg、より好ましくは1.0〜20mg、より好ましくは1.0〜10mg、より好ましくは2.0〜10mgであろう。最も好ましくは、投薬量は、0.3mg〜5.0mg、1.0mg〜5.0mg、または3.0mg〜6.0mgの範囲であり、この用量の全部または一部が夜/就寝時に投与される。特に好ましい投薬量は、毎晩3.0〜6.0mgまたは重症例では毎晩10〜50mgであろう。
【0233】
メトホルミン
メトホルミンは、糖尿病に最初に適応された医薬化合物であり、以下のブランド名を有する:Glucophage、Riomet(登録商標)、Fortamet、Glumetza。糖尿病患者の承認された投薬レジメンは個別に調整され、最大推奨1日投薬量は、成人の場合には2550mgに設定されるか、または小児患者の場合には2000mgに設定される。典型的には、1500mg未満/日の用量では、臨床的に有意な応答が見られない。しかしながら、典型的には、より低い開始用量(例えば、500mgを1日1回もしくは2回または85mg/日)で治療を開始し、その後の用量を徐々に増加させる(例えば、増加分は500mg/週または850mg/2週である)。
【0234】
メトホルミンは、mTOR経路をモジュレートして、パクリタキセルによる処置中に抗増殖効果を発揮する。
【0235】
メトホルミンはまた、培養ウシ顆粒膜細胞におけるAMPK依存性機構を介してIGF1に応じて、細胞増殖、タンパク質合成、MAPK3/1およびP90RSKリン酸化の減少において機能する。加えて、メトホルミンは、HUVECの増殖、遊走ならびにMMP−2および−9発現を部分的にはAMPK依存的に強く阻害した。メトホルミンはまた、miRNAの再発現およびCSC特異的遺伝子の発現減少を介して細胞の増殖、遊走および浸潤を阻害するが、これは、メトホルミンが、癌細胞(例えば、膵臓癌細胞または他の上皮細胞癌の細胞を含む)の治療耐性を克服するのに有用であり得ることを示唆している。
【0236】
本発明は、メトホルミンの主な標的が腫瘍形成中の不死化工程であることを示唆する少なくとも2つの主な証拠を認識する。第1に、メトホルミンは、細胞内DNA損傷応答のチェックポイントを活性化する。第2に、メトホルミンは、CSCの自己再生および増殖に必要なATP生成解糖代謝型の抗老化効果(すなわち、ワールブルク効果)を減衰する。メトホルミン治療は、ストレス誘導性老化の閾値を低下させることによって、腫瘍形成に対する固有の障壁を提供する場合、本発明は、メトホルミン治療戦略が癌の治療的介入に極めて重要でありうることを教示する。
【0237】
メトホルミンの供給源としては、メトホルミン塩酸塩(これは、Riomet(類似物のブランド名Apo−Metformin、Fortamet、Gen−Metformin、Glucophage、Glucophage XR、Glycon、Metformin HCL、Novo−Metformin、Nu−Metformin)中に存在するメトホルミンの誘導体である)が挙げられる。組み合わせ製品のブランド名としては、Actoplus Met(メトホルミンおよびピオグリタゾン)、Avandamet(メトホルミンおよびロシグリタゾン)、Glucovance(メトホルミンおよびグリブリド)、Janumet(メトホルミンおよびシタグリプチン)、Kombiglyze(メトホルミンおよびサクサグリプチン)、Metaglip(メトホルミンおよびグリピジド)、PrandiMet(メトホルミンおよびレパグリニド)(これらはすべて、異なる臨床的意義を有する)が挙げられる。
【0238】
低用量のメトホルミンは、癌に対する複数の経路効果を示している。癌治療におけるその最も重要な潜在的な役割は、インスリン感受性を改善するメトホルミンの能力(これは、インスリンレベルの減少、ならびに膵臓癌における悪性成長の決定的なドライバーであるインスリン成長因子−1(IGF−1)の量および活性の顕著な減少をもたらす)である。(Baoら、Biochem Biophys Acta.,Epub(2010))。UCLAの研究者らは、膵臓癌の成長の鍵として、インスリン/IGF−1およびGPCRシグナリング系間のクロストークを同定したところ、メトホルミンはこのクロストークを遮断することが示されたので、研究者らは、膵臓癌の予防および処置の有望な候補としてメトホルミンを提案している。Rozengurtら、Clin Cancer Res.,16(9):2505−11(2010)。好気的解糖(「ワールブルク効果」)からグルコース酸化へのシフト(これは、正常なミトコンドリア機能の回復をもたらし、次にこれが、アポトーシスを受ける能力の回復を誘発する)をメトホルミンが支援するという証拠もある。Martinez−Outschoornら、Cell Cycle,9(16):3256−76(2010)。
【0239】
本発明の実施形態では、メトホルミン投薬量レジメンは、特定の患者について疾患に関与する特定の代謝経路に対処するように担当医によって設計されるが、当然のことながら、任意の特定の症例における適切な投薬量を選択する際には、患者の体重、一般健康、年齢、および薬物に対する応答に影響を与え得る他の要因を考慮しなければならないことに留意する。一般に、上皮起源の癌の癌(cancers of epithelial origin cancer)を処置するための本発明の組成物では、投薬量範囲は、50〜2000mg/日、好ましくは500〜1000mg/日であろう。あるいは、100mg、250mg、500mg、625mg、750mg、850mgまたは1000mgの用量が、1日1〜4回または類似の投薬レジメンで投与され得る。
【0240】
N−アセチルシステイン
有効成分N−アセチルシステイン(NAC)は、アミノ酸L−システインに由来する。それは、サプリメントとして摂取可能なより安定な形態のシステインである。システインは、グルタチオン(フリーラジカルファイター)の産生に必要な必須アミノ酸である。
【0241】
NACは、アセチルシステイン(Acetyl Cysteine)、アセチルシステイン(Acetyl Cysteine)、アセチルシステイン(Acetylcysteine)、アセチルシステイン(Acetylcysteine)、システイン塩酸塩(Chlorhydrate de Cysteine)、システイン(Cysteine)、システイン(Cysteine)、システイン塩酸塩(Cysteine Hydrochloride)、システイン(Cystine)、システイン塩酸塩(Hydrochlorure de Cysteine)、L−システイン(L−Cysteine)、L−システイン(L−Cysteine)、L−システインHCl(L−Cysteine HCl)、L−システインHCl(L−Cysteine HCl)、NAC、N−アセチルシステイン(N−Acetil Cisteina)、N−アセチル−B−システイン(N−Acetyl−B−Cysteine)、N−アセチルシステイン(N−Acetyl Cysteine)、N−アセチル−L−システイン(N−Acetyl−L−Cysteine)、N−アセチル−L−システイン(N−Acetyl−L−Cysteine)、N−アセチルシステイン(N−Acetylcysteine)およびN−アセチルシステイン(N−Acetylcysteine)とも称される。
【0242】
NACは、保存的な抗酸化剤レベルを反映する酸化ストレスの減少、およびより低いインターロイキンレベルを反映するより低い炎症に関連していた。NACはまた、ビタミンCおよびEをそれらの還元状態に維持して、それらの効果(次にこれが、産生されたグルタチオンをより有効にする)を増強するのに有効である。それはまた、NFκBおよびJNK経路の逆調節、および細胞分化の誘導を介してアポトーシスを防止することが公知である。NF−カッパB経路を抑制することによって、それはまた、好中球性炎症を制御するための処置の魅力的な治療標的を表す。NACによるある特定の癌腫の処置は、アポトーシスを誘導するCOX−2タンパク質の発現をモニタリングする。これは、化学療法耐性の予測因子として有効であり得ること、およびCOX−2の状態の評価は、NAC投与から利益を受け得る子宮頸癌患者を同定するのに有利であり得ることが予測される。NACはまた、COX−2の発現およびNF−カッパBの核移行の両方を阻害することが示されているが、次にこれが、NACが炎症プロセスを阻害し得ることを示唆している。
【0243】
NACは、リポソーム形態で投与された場合に最も有益(生物学的に利用可能)である。医薬品グレードのNAC(例えば、Swanson Ultra Pharmaceutical Grade Ajupure(登録商標)N−アセチルL−システイン)を使用することが重要である。
【0244】
NACに代えてまたは加えて、いくつかの研究では、ニンニク、セレン、アルファリポ酸および/またはL−システインもまた、効果的ではないにしても、グルタチオンの細胞レベルを高め得ることを示唆している。Life Extensionは、グルタチオン、システインおよびビタミンCから構成されるサプリメントを生産している。グルタチオン分子は大きいため、腸系を横断して血流に到達することが困難であり得る。しかしながら、より容易に吸収される「グルタチオン前駆体」がある。グルタチオンが豊富であることが公知の食品としては、野菜および果物、例えばほうれん草、ブロッコリー、芽キャベツ、パセリ、アボカド、アスパラガス、グレープフルーツ、いちご、オオアザミ、乳清タンパク質などが挙げられる。加えて、NACおよび他の重要な抗酸化物質を含有するが、これらのサプリメントの潜在性の質にもバイオアベイラビリティにも及ばない「究極の抗酸化物質」がある(例えば、Natural Factors(登録商標)Ultimate Antioxidantは、100mgの特定されていないのNACおよび13種の他の成分を含有する)。オオアザミ(肝臓の健康に有益な別のサプリメント)は、異なる機構の下で機能する。(さらなる情報については、上記オオアザミサプリメントを参照のこと)。
【0245】
肺病変(pulmonary involvement)がある場合には、NACが非常に望ましくおよび/または有効であると証明し得る。
【0246】
ナルトレキソン
ナルトレキソン塩酸塩は、アルコールおよびオピオイド(opiod)薬の快感効果を軽減して、それにより欲求を軽減するための処置として処方されるオピオイド受容体アンタゴニストである。それはまた、癌処置に影響を与える。
【0247】
非選択性オピオイド受容体アンタゴニスト・ナルトレキソンによるオピオイド成長因子(OGF)およびOGFrの遮断は、OGFおよびOGFrの発現をアップレギュレートすることが示されている。低投薬量のナルトレキソン(LDN)の投与は、短時間にわたってオピオイド受容体からの内因性オピオイドを遮断することが示されている。癌における作用機構は、腫瘍細胞増殖および血管新生を標的化し、かつ阻害する。LDNは、それらのオピエート受容体との間接的な相互作用を介して、免疫細胞に対して刺激効果を及ぼすのに対して、高用量のナルトレキソンは阻害効果を有する。
【0248】
ナルトレキソンは、Depade、VivitrolおよびReViaを含むブランド名で見られる有効成分である。ナルトレキソンは、最も好ましくは、ReVia(以前は、Trexanと称される)においてピルの形態で利用可能である。Vivitrolは、月1回筋肉内投与される。
【0249】
ナルトレキソンの承認された投薬レジメンとしては、以下のものが挙げられる:
【0250】
【表11】
【0251】
癌患者、従来の癌治療を受けていない患者の間でさえ、就寝前に与えられた低用量のナルトレキソンは、臨床改善およびいくらかの寛解に関連することが実証されている。Bihari,B.,2009,Low−Dose Naltrexone for Cancer,online publication at:www.lowdosenaltrexone.org/ldn_and_cancer.htm.ジャーナル誌のIntegrative Cancer Therapiesにおける一連の公開された事例では、進行性膵臓癌を有する4人の患者であって、静脈内高用量の抗酸化物質アルファリポ酸を1日低用量の経口ナルトレキソンと組み合わせた患者の完全寛解が証明された。Berkson and Berkson,Integr.Cancer Ther.,5(1):83−9(2006);Berksonら、Integr.Caner Ther.8(4):416−22(2009),erratum in Integr.Cancer Ther.,9(2):247(2010)。
【0252】
本発明の多くの実施形態にしたがって使用するためのナルトレキソンの適切な量は、0.1〜10mg、好ましくは1.0〜10mg、より好ましくは1.5〜4.5mgである。本明細書の目的のために、好ましい用量は3.0mgおよび4.5mgであり、いくつかの実施形態では迅速な放出である。(S)−N−メチルナルトレキソンおよびナルメフェンなどの関連化合物もまた、同等のナルトレキソン用量で、ナルトレキソンの代わりに使用され得る。
【0253】
いくつかの実施形態では、特に、ナルトレキソンが干渉し得るかまたは干渉するであろう鎮痛薬に依拠している患者の場合には、ナルトレキソンの包含および/または投薬は、減少または除外され得る。ナルトレキソンは、免疫系の応答を高めるのに非常に望ましくおよび/または有効であると証明し得るが、時として望ましくない効果によりある特定の鎮痛薬の有効性を減少させ得る。
【0254】
オピオイド成長因子
オピオイド成長因子(OGF)[Met(5)]−エンケファリンは、抗腫瘍活性および抗血管新生活性を有する内因性ペンタペプチドエンドルフィンである。OGFは、ある特定の腫瘍細胞および血管細胞上に見られるオピオイド成長因子受容体(OGFr)に結合し、腫瘍細胞の増殖および血管新生を阻害することによって作用する。OGFは、発生、癌、細胞再生、創傷治癒および血管新生中の細胞増殖において役割を果たす。
【0255】
いくつかのシグナリング経路は、オピオイドによって影響を受ける。成長促進効果は、AktおよびErkのシグナリングカスケードを介して媒介されることが見出された。死促進効果は、核因子Bの阻害、Fas発現の増加、p53の安定化、サイトカインおよびケモカインの放出、ならびに一酸化窒素シンターゼ、p38およびc−Jun−N末端キナーゼの活性化によって開始される。これらは、オピオイド受容体の活性化およびタンパク質シグナリングによって媒介される。
【0256】
OGFによる腫瘍細胞の処置は、細胞複製を用量依存的に非細胞傷害性的な方法で遅らせる。オピオイド成長因子[Met(5)]−エンケファリンは、週1回または2回の30分間の静脈内注入において最大用量250μg/kgで耐容性である。1日2回の皮下注射による50μg/kgのメトロノーム投薬は、毒性を示さない。OGFおよびその受容体OGFrは、細胞増殖のレギュレーションのための主要な内因性オピオイド軸(opioid axis)と考えられる。
【0257】
化学療法とは異なり、OGFは癌細胞を直接破壊せず、細胞傷害性ではない。オピオイド成長因子の代替物は、低用量ナルトレキソンであり得るか、またはオピオイド遮断機構を使用する他の治療であり得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、特に、鎮痛薬に依拠している患者の場合には、OGHの包含および/または投薬は、減少または除外され得る。OGHは、免疫系の応答を高めるのに非常に望ましくおよび/または有効であると証明し得るが、時として望ましくない効果によりある特定の鎮痛薬の有効性を減少させ得る。
【0259】
スクアラミン
スクアラミンは抗菌剤であり、固形腫瘍内の血管の成長を阻害することも示されている。スクアラミンは、ツノザメ(Squalus acanthias)の内臓に由来し得るが、合成的に生産もされている。スクアラミンの一般名は、スクアラミン乳酸塩である。それは、Aiguillat、Escualamina、Spiny Dogfish
Shark、Squalene、Squalene、Squalus acanthias、Squalamax(商標)およびEvizonとも称される。スクアラミンは、アブラツノザメ、シュモクザメおよび他のサメ種の軟骨から調製されるサメ軟骨と混同すべきではない。
【0260】
スクアラミンは、抗血管新生特性を示すことが示されており、癌、加齢性黄斑変性症および細菌感染症の処置として研究されている。スクアラミンは、標準的な抗生物質と組み合わせて使用した場合に、殺細菌効果および殺真菌効果(bacterial and fungicidal effect)を増強する。血管新生の事象では、スクアラミンは、VEGF、PDGFおよびbFGFを含む複数の成長因子を阻害する。その抗血管新生機構に加えて、スクアラミンはまた、細胞膜中のナトリウム−プロトンアンチポーターポンプシステムを阻害する。膜に結合することによって、それは、細胞内pHを変化させ、血管新生シグナリングを破壊し、標準的な治癒化学療法剤が侵入してアポトーシスを誘導することを可能にし、それにより、このような化学療法薬の細胞傷害性を増強する。スクアラミンはまた、血管床内の内皮細胞の体積を減少させて血管を狭くすることによって、血流を減少させることが示されている。スクアラミンは、VEGFおよびMAPKを含むいくつかの疾患経路を遮断して、血管新生、遊走および増殖を阻害する。
【0261】
スクアラミンの主な天然供給源は、主にツノザメの肝臓、胆嚢、脾臓、精巣、胃、えらおよび腸の組織(油ではない)内にあり、ならびに/またはウミヤツメの循環白血球である。あるいはまたは加えて、スクアラミンは、合成的に作出されている。Nu−Gen Nutritionは、濃縮スクアラミンであるSqualamax食事性サプリメントを販売している。スクアラミンは、経口バイオアベイラビリティが高くない。スクアラミンは、硝子体内(intravitrial)注射形態、経口サプリメント、局所点眼薬および鼻スプレーで利用可能である。推奨される最大許容用量(MTD)は、300mg/m2/日であることが見出されている。
【0262】
スクアラミンは、Squalamaxのようなサプリメントを介して高濃度で天然に得ることもできるし、またはEvizonを介して合成的に得ることもできる。Evizonは、特許を取得した最初の合成スクアラミンサプリメントである。スクアレンおよびサメ軟骨はスクアラミンの代用品ではないが、両方とも、潜在的な抗ウイルス能力、抗菌能力および抗血管新生能力を有することが実証されている。
【0263】
承認された化学療法薬および/または非化学療法薬
シクロホスファミド
シクロホスファミド(CTX)は、癌および自己免疫障害を処置するのに使用される合成窒素マスタードアルキル化剤である。肝臓では、それは、活性型のアルドホスファミドおよびホスホルアミドマスタード(これらは、DNAに結合すると化学療法活性を有し、DNA複製を阻害して細胞死を開始させる)に変換される。
【0264】
最大許容用量(MTD)で与えられたシクロホスファミドは、細胞傷害性および免疫抑制を増加させ、増殖中の腫瘍細胞を主に標的化する。あるいは、サプレッサーT細胞に対する毒性はヘルパーTリンパ球よりも大きいため、およびNK細胞の刺激のため、休止期間なしに一定間隔で投与されるより低いメトロノーム投薬濃度は免疫刺激性である。加えて、メトロノームシクロホスファミドは、腫瘍の成長している血管系の内皮細胞活性を優先的に阻害することによって、抗血管新生特性を有する。
【0265】
メトロノームシクロホスファミドの投与は、内因性阻害因子トロンボスポンジン−1(TSP−1)の発現を主に誘導する。メトロノームシクロホスファミドで処置した場合、TSP−1は、腫瘍成長の抑制に寄与する。高いTSP−1レベルを発現する腫瘍は、この処置による腫瘍抑制に対してより感受性である。
【0266】
細胞外調節キナーゼ1および2(ERK1/2)ならびに上流MEK1/2タンパク質の抑制は、シクロホスファミドの主な機能である。この機構は、MEK1/2およびERK1/2タンパク質の発現およびリン酸化のレベルを低くするように作用し、癌細胞の増殖を阻害する。シクロホスファミドはまた、PI3K/Akt経路(生存を促進する細胞内シグナリング経路)を活性化する。
【0267】
シクロホスファミドは、50mgまたはそれ未満のメトロノーム投薬量の処方によってのみ利用可能である。商品名としては、Cytoxan、Neosar、Clafen、Endoavan、Procytox、Revimmune、Carlovan、Cicloval、Cycloblastin、Cyclobastine、CYCLO−cell、Cyclostin、Cyclostine、Cytophophan、Endoxana、Enduxan、Fosfaseron、Genoxal、Ledoxine、ProcytoxおよびSendoxanが挙げられる。シクロホスファミドの化学構造も、サイトホスファン(cytophosphane)、シクロホスファミダ(ciclofosfamida)、シクロホスファミド(ciclofosfamide)、クラフェン(claphene)、cp一水和物(cp monohydrate)、CPM、シクロホスファム(cyclophspham)、シクロホスファミド一水和物(Cyclophosphamid monohydrate)、シクロホスファミダム(cyclophosphamidum)、シクロホスファン(cyclophosphan)、シクロホスファナム(cyclophosphanum)、ミトキサン(mitoxan)、シクロホスファミド(syklofosfamid)、ザイトキサン(zytoxan)として公知である。
【0268】
シクロホスファミドの承認された投薬レジメンとしては、以下のものが挙げられる:
【0269】
【表12】
【0270】
本発明の多くの実施形態では、シクロホスファミドは、メトロノーム投薬レジメンにしたがって投与される。ある特定の実施形態では、このようなメトロノーム投薬レジメンは50mg/日の用量であるか、または50mg/日の用量を含む。
【0271】
他の薬剤
当業者であれば、あるいはまたは加えて、本明細書の「栄養補助剤および/または非化学療法剤」という表題のセクションに記載される様々な薬剤は、「承認された化学療法薬および/または非化学療法薬」を取り扱う本セクションにおいて扱われ得ると認識するであろう。このような特徴付けは、限定ではなく便宜上のものであると具体的に認識されよう。
【0272】
特に、当業者であれば、メトホルミンおよび/またはナルトレキソンなどの上記薬剤は、栄養補助化合物のカテゴリまたは承認薬のカテゴリのいずれかで合理的に検討され得ると具体的に認識するであろう。
【0273】
治療のモニタリングおよび/または調整
いくつかの実施形態では、本発明の治療プロトコールの構成要素は、例えば、癌と診断された個体の血液プロファイルに基づいて、所定の個別化したプログラムで処方され得る。最初の期間の後、このような血液試験を繰り返すことができ、構成要素の化合物およびそれらの投薬レジメン(例えば、タイミングおよび/または量)の両方について、レジメンの調整を行う。いくつかの実施形態では、本発明の組み合わせレジメンは、患者の血液で検出された特定の欠乏に対処するように特に組み合わされ(blend)、したがって、例えば、患者の体重、年齢、性別、および/または栄養補助食品によって対処しようとする不均衡もしくは欠乏の重症度に基づいて正確に投薬される。当業者(例えば、患者の癌専門医またはプライマリケア医)であれば、例えば、罹患患者由来の血液サンプルの分析後に、栄養補助食品の正確な組み合わせおよび各化合物の適切な投薬量を決定することができるであろう。
【0274】
投与
一般に、本発明の併用療法に含まれる薬剤は、患者の状態に応じて、薬学的に許容され得る担体または賦形剤中に製剤化された任意の形態で(好ましくは錠剤、粉末または液体として)投与され得る。いくつかの実施形態では、特注の投薬量を提供することにより、事前に製剤化されたカプセルおよび錠剤の必要性を排除する。加えて、結合剤、充填剤、コーティング剤、保存剤、着色剤、矯味矯臭剤および他の添加剤などの当技術分野で周知の非有効成分が、投与される1つまたはそれを超える薬剤と共に場合により製剤化され得るか、または患者に対する否定的な副作用のリスク(例えば、腸の炎症、または特定の化合物の吸収への干渉のリスク増加)がある場合には完全に省略され得る。
【0275】
いくつかの実施形態では、本発明の治療レジメンに含まれる1つまたはそれを超える薬剤は、メトロノームレジメンにしたがって投与される。
【0276】
いくつかの実施形態では、本発明の治療レジメンは、化学療法のプログラムに追加される。このようないくつかの実施形態では、化学療法薬によって対処されないさらなるプロセスおよび経路であって、エネルギー、抑制されていない増殖および遊走のために、患者の癌細胞が依拠し得るさらなるプロセスおよび経路が制御も正常化もされない場合、本発明の組成物は、このようなプロセスおよび経路に対処することによって、化学療法の作用を補完する。多くの実施形態では、癌の処置、より具体的には上皮細胞関連癌の処置に使用される任意の適切な化学療法薬の有効性は、本発明の組成物および併用療法を追加することによって改善されるであろう。
【0277】

本開示を読んだ当業者であれば、本発明の治療戦略の特定の利点の1つは、広範囲の癌にわたるそれらの広い適用可能性であると認識するであろう。
【0278】
当業者であれば、本開示は、後期癌の処置に特に有用な方法および/または組成物を提供すると特に認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、提供される方法および/または組成物は、II期癌、III期癌および/またはIV期癌を処置するのに利用される。いくつかの実施形態では、提供される方法および/または組成物は、転移した癌を処置するのに利用される。いくつかの実施形態では、提供される方法および/または組成物は、別の治療モダリティによる処置後に再発した癌を処置するのに利用される。いくつかの実施形態では、提供される方法および/または組成物は、複数の他の治療モダリティによる処置後に再発した癌を処置するのに利用される。
【0279】
いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、固形腫瘍の処置に特に有用である。いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、上皮起源の腫瘍の処置に特に有用である。
【0280】
いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、特定の承認された治療が存在しない癌の処置に特に有用である。
【0281】
いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、I期から末期の任意の癌(上皮細胞癌、肉腫および/または血液癌(白血病またはリンパ腫)を含む)の処置に利用され得る。いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、上皮細胞癌または肉腫からなる群より選択される癌の処置に特に有用である。本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、上皮細胞癌の処置に特に有用である。
【0282】
いくつかの実施形態(embbodiments)では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、後期癌(例えば、II期癌、III期癌またはIV期癌)の処置に特に有用である。本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、末期癌の処置に特に有用である。
【0283】
いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、転移癌の処置に特に有用である。
【0284】
本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、例えば、従来の化学療法戦略(例えば、いくつかの実施形態では、中断が散在した投薬サイクルにしたがって、化学療法剤をその最大許容用量でまたはその最大許容用量付近で利用する治療)を含む従来の治療で処置された、処置されている、および/または処置される予定の癌の処置に特に有用である。
【0285】
いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、乳癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌などからなる群より選択される癌の処置に特に有用である。いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、腺癌腫の処置に特に有用である。いくつかの実施形態では、本発明にしたがって提供される方法および/または組成物は、平滑筋肉腫の処置に特に有用である。
【実施例】
【0286】
実施例1:例示的な7構成要素レジメン
例えば、癌患者における上皮起源の癌の処置に有用な特に好ましい補助レジメンとしては、以下の薬剤の組み合わせが挙げられる
【0287】
【表13-1】
【0288】
実際の癌患者およびバックグラウンドデータを参照して、この組み合わせを特別に設計したが、癌では調節不全であるが、栄養補助食品、化学療法薬および/または非化学療法薬の組み合わせの投与によって正常状態へと戻り得る重要な経路およびプロセス(特に、血管新生ならびに他の代謝経路およびシグナリング経路)に対処するアプローチが抗癌効果をもたらすことを理解した。この理解を広範囲の併用治療を設計するのに適用したが、それらは、血管新生/血管形成、腫瘍抑制の調節不全、細胞周期の停止(アポトーシス障害および細胞増殖)および代謝障害(例えば、ワーグブルグ効果、嫌気的解糖、酸化ストレス)のうちの少なくとも3つの異常活性化されたかまたは調節不全の経路に対処する限りは有効であろう。本発明の組成物および方法は、少なくとも3つの内因性プロセスに対処する一定範囲の薬剤および/または治療モダリティを組み合わせるように設計される(例えば、図1の説明を参照のこと)。
【0289】
実施例2:3つの非化学療法薬を含む例示的な本発明の治療レジメン
化学療法薬
本実施例では、本発明にしたがって使用するための組成物であって、3つの非化学療法薬を利用する組成物を具体的に説明する。組み合わせたこれら3つ(すなわち、メトホルミン、シクロホスファミドおよびナルトレキソン)は、いくつかの実施形態では膵臓癌の処置に特に有用な新規組成物を提供する。このような組成物は、癌の発達における重要なプロセスに対処するため、本明細書で教示される処置に対する治療アプローチに有用な組成物を提供する。
【0290】
特に化学療法の補助として、これら3つの薬物を組み合わせて癌処置に使用することは、上皮起源の癌および他の癌では調節不全である最も重要な代謝経路、細胞間シグナリング経路および細胞内シグナリング経路のいくつかに効果をもたらす新規組み合わせである。特に、これらとしては、血管新生促進プロセス、腫瘍抑制、およびワーグブルグ効果/嫌気的解凍/酸化ストレスが挙げられる。したがって、メトホルミン、シクロホスファミドおよびナルトレキソンを含む組成物は、本発明の特に有望な実施形態である。
【0291】
実施例3:例示的な本発明の調整された治療レジメン
本実施例では、本発明の組成物および/または治療レジメンのある特定の実施形態を説明する。
【0292】
特に、以下の表1〜6は、例えば、上皮起源の癌を処置するための本発明の方法および組成物に使用するための栄養補助化合物および/または非化学療法薬もしくは化学療法薬のリストを提供する。各表には、特定のカテゴリの癌によって影響を受ける代謝経路、細胞間シグナリング経路または細胞内シグナリング経路に有用な化合物が列挙されており、したがって、本発明の組成物は、典型的には、少なくとも最初の4つの表(表1〜4)から選択される化合物の組み合わせから構成される。
【0293】
ある特定の実施形態では、例えば膵臓癌を患っている患者由来の血液サンプルの慎重な分析を行うことにより、1つまたは複数の化合物を(血液試験の結果に応じて)各表から選択して、患者に投与するための栄養補助食品/非化学療法薬/化学療法薬の「カクテル」を作る。本明細書で開示される教示にしたがって、当業者(例えば、患者の癌専門医またはプライマリケア医)であれば、化合物の最も有益な組み合わせ、およびそれぞれの最適な投薬量を選択することができるであろう。いくつかの化合物が本明細書の複数の表に列挙されているように、例えば、表2からクルクミンを選択する場合には、本発明の組成物の調製についてクルクミンが記載されているいかなる他の表からもクルクミンを選択しないことを当業者は理解するであろう。
【0294】
【表13-2】
【0295】
癌と診断された患者を処置するための(より具体的には、上皮細胞関連癌を処置するための)特に好ましい組み合わせまたはサプリメントを、好ましい投薬量レジメンと一緒に表14に記載する:
【0296】
【表14】
【0297】
実施例4:例示的な本発明の4構成要素治療レジメン
本実施例では、本発明にしたがって使用するための特定の4構成要素組成物を説明する。
【0298】
当然のことながら、本明細書で提供される開示に基づいて多くのバリエーションが可能であるが、癌の化学療法処置レジメンと共に使用するための(より具体的には、上皮細胞関連癌を処置するための)本発明の提案される実施形態は、
1)シクロホスファミド−50mg/日
2)メトホルミン−500mg/日;
3)ナルトレキソン−4.5mg(就寝時);
4)メラトニン−10mg/日
を含む。
【0299】
本開示によれば、特定の効果のために、1つまたはそれを超える栄養補助化合物を上記成分に追加し得る。
【0300】
実施例5:治療レジメンの設計
実施例1に記載されているように、および本開示全体を通して、本発明は、本明細書に記載される4つの重要な特徴的な癌経路のいずれかを標的化し得る様々な処方薬および/または伝統的な薬剤または栄養補助剤を開発したと認識する。本発明によれば、(例えば、高い治療指数を示す)耐容性良好なこのような薬剤は、併用癌療法に含めるのに特に有用である。組み合わせた場合に、本明細書で議論される経路の枠組み内で相乗的相互作用を示し得、および/または示す薬剤について特に検討する。
【0301】
また、本発明によれば、(本明細書で議論されるように、癌の発達に関与する機構は、転移性腫瘍において重要な治療上関連する機構と必ずしも重複しないため)本発明の治療戦略に含めるための薬剤の選択は、予防データ、および発癌リスクの減少を実証するデータのみに依拠しない。
【0302】
さらに、いくつかの実施形態では、非生理学的な薬物濃度または治療上無関係な薬物濃度を用いて作成されたインビトロデータは、インビボ腫瘍モデルまたは臨床試験で作成された有効性または機構に基づくデータによって裏付けられない限り、本発明の組み合わせレジメンの設計において軽視または無視される。
【0303】
実施例1に記載されている特定の治療は、このアプローチの代表的なものであり、以下の特定の利益を有する:
・浸潤性癌および転移性癌に最も関係する4つの重要な癌経路を同時に標的化する。少なくとも3つの異なる化合物を使用する少なくとも3つの別個のアプローチを用いて、各経路を標的化する(表15)。各化合物は、標的化経路における介入の可能性を科学的に裏付ける広範囲のインビトロプロファイル、インビボプロファイルおよびいくつかの場合には臨床プロファイルを有する。加えて、現在、それぞれが、腫瘍学の第II相または第III相臨床試験で試験されている。設計は、各経路においておよび経路をわたり治療的相乗効果を提供して、無増悪生存期間および全生存期間を有意に延長することを意図する;および
・長期治療中の質の高い生活を作るために、慢性的に経口投与し得る非毒性用量の各化合物を利用する。これら化合物のすべてを用いた既存の前臨床安全性データおよび広範な臨床上の経験は、進行性悪性疾患の慢性処置において、この組み合わせが耐容性良好であることを示唆している。
【0304】
【表15-1】
【0305】
【表15-2】
【0306】
腫瘍の生存および成長に必要な4つの重要な経路を同時に標的化する、経口で生物学的に利用可能であり非毒性な化合物を使用することによって、この治療レジメンは、質の高い生活を伴う無増悪生存期間および全生存期間を有意に延長する可能性がある。
【0307】
実施例6:肺原発性腺癌腫を有する患者の処置
本実施例では、肺原発性腺癌腫と診断された67歳の女性患者の処置を説明する。
【0308】
当初、患者は、深刻な息切れおよび呼吸困難を示していた。持続性の咳のために、鼻腔用スプレー、咳用医薬(cough medicine)、抗生物質およびステロイドが処方されたが、改善は認められなかった。このような治療の数週間後、患者は、継続的な息切れのために緊急治療室(ER)に収容された。X線およびCTスキャンを実施したところ、肺の結節が検出された。その後の気管支鏡検査およびPETスキャンにより、肺、肝臓および腰部の骨において癌の存在が確認された。また、検査では、触知可能な結節が頸部/肩部において検知された。
【0309】
診断後1週間に始めて、5FU、オキサリプラチン(oxiliplatinum)およびロイコボリンを用いる伝統的な化学療法で患者を処置した。具体的には、患者は、以下の2日間ラウンドを2回受けた:
【0310】
【表15-3】
【0311】
ラウンドを2週間隔で行った。また、患者は酸素を毎日使用した。CTおよびPETスキャンを診断測定として利用した。
【0312】
診断後2週間未満に始めて(すなわち、2ラウンドの伝統的な化学療法の間に)、患者は、以下の本発明の治療プロトコールを受け始めた:
【0313】
【表15-4】
【0314】
患者はまた、カロリー摂取量を増加させるためのタンパク質粉末、ならびにビタミンD3およびn−アセチルシステイン(NAC)を摂取した。酸素も継続した。
【0315】
本発明の治療プロトコールの2週間後、本発明の治療後で2ラウンド目の化学療法前における患者のCTスキャンでは、肺転移の50%の減少が示された。しかしながら、患者は、呼吸困難を経験し続けた。
【0316】
本発明の治療プロトコールによる処置を1カ月未満後に終了した際、患者は、極度の呼吸困難および血液を含む粘液を吐いたことにより入院した。患者に挿管し、人工呼吸器につないだ。広いスペクトルの抗生物質、抗ウイルス薬およびモルヒネで患者を処置した。患者は、サイトメガロウイルス(CMV)による感染症を有すると決定された。気管支液細胞診(bronchial fluid cytology)は、癌の存在を示している。発熱が持続した。酸素飽和度は不安定であった。患者は、その後直ぐに死亡した。
【0317】
実施例7:乳房平滑筋肉腫(LMS)を有する患者の処置
本実施例では、乳房平滑筋肉腫(LMS)と診断された64歳の女性患者であって、良性管内乳頭腫およびその後低分化肉腫と以前に誤診された女性患者の処置を説明する。患者は、肉腫専門センターおよび肉腫手術を利用不可能な地域社会に居住している。
【0318】
本発明の治療の開始前に、患者は様々な治療手順を受けており、いずれの場合にも再発していた。例えば、彼女は、乳房扇状部分切除術(breast quadrantectomy)と、それに続いて定型的乳房切断術および予防的リンパ節除去とを受けたが、わずか数週間後に再発した。腫瘍は、3週間で1.5cmから4cmに成長したと報告された。次いで、彼女は、腫瘍、瘢痕組織および胸筋(pectoraliz muscle)を除去するための手術を受け、その2カ月後、2回目の再発が検出された際に32回のさらなる放射線治療セッションを受けた。6週間後、彼女は、隣接する肋骨および筋肉組織と一緒に、3回目の腫瘍切除を受けた。骨髄は、悪性癌細胞を含有していた。本発明の治療の開始前に、彼女は、約1カ月間の休息を取った。
【0319】
患者は、以下の本発明の治療プロトコールを受けた:
【0320】
【表16】
【0321】
患者はまた、オメガ3、ニュートリライトデイリーマルチビタミン(nutrilite daily multivitamine)、濃縮マンネンタケ属キノコおよび他の植物抽出物(タンポポ、ヤマゴボウ(petiveria)およびイエロープイ(yellow poui)(タベブイア(tabebuia))を含む)を定期的に摂取した。患者はまた、高血圧症を処置するためのメトプロロール、ロサルタン、ヒドロクロロチアジド、およびアムロジピン、ならびに甲状腺ホルモンであるレボチロキシンを含む処方薬を毎日摂取した。患者は、無糖食を維持している。
【0322】
患者が本発明の治療を受けると、腫瘍成長は明らかに有意に遅延した。145日後に再発が検出された時点では、検出された腫瘍は3.8cm×4cm×5cm(これは、以前の治療で3週間で成長したものと同様のサイズである)であると言われた。
【0323】
患者は、本発明の治療が耐容性良好であり、活動性疾患の存在にもかかわらず、全体的な健康状態および幸福感に対して非常に肯定的な影響を及ぼすと報告している。
【0324】
実施例8:起源不明の卵巣癌を有する患者の処置
本実施例では、本発明の治療を開始する6年前にIIIC期卵巣癌と初回診断された63歳の女性患者の処置を説明する。
【0325】
初回診断以来、患者は、以下のものを含む治療手順を受けた:大きな卵巣腫瘍を除去するための子宮全摘出術と結腸切除;尿管ステント;腹腔内ポート;胸部ポート;6フィートの小腸および1フィートの結腸と一緒に主な腸閉塞の除去;感染創傷部位の処置;胆嚢の除去;心嚢開窓開胸術(pericardial window thoracotomy);ならびに、合併症に対処するための複数の他の手術。患者はまた、酸素補給の定期的な使用を必要とした。さらに、患者は、9ラウンドの化学療法(腹腔内化学療法、カルボプラチン、タキソール、ジェムザール、リピドックス、タキソテール、アバスチン、サイトキシン、ドキシル、ナベルビン)および1回のサイバーナイフ放射線処置を受けた。
【0326】
ほぼ6年間のこのような従来の処置の後、患者は、彼女の癌専門医から推定余命2〜4週間と宣告された。患者は、病院からホスピスケアに退院した。
【0327】
本発明の治療を受けることの検討について、患者に提示した。その時点において、患者は、肺内部のかなりの流体に苦しんでおり、これを2〜3日ごとに定期的に排出していた。息切れは、酸素補給を継続的に必要としていた。患者は食欲がなく、一貫して体重が減少し、顕著な脱力感を覚えており、1日の大半は寝たきりであった。患者のCA−125は3カ月間超にわたって着実に上昇し、治療開始約3.5カ月前および治療開始約3週間後に行った試験間でほぼ4倍になった(559から2901に上昇)。治療開始8週間後までに、この傾向は逆転した;測定したCA−125は833であった。
【0328】
患者は、以下の本発明の治療を受けた:
【0329】
【表17】
【0330】
本発明の治療プロトコールの最初の3週間において、患者は、体重が減少し続けた(98lbから85lbへ)。タンパク質粉末を使用して、カロリー摂取量を増加させようとした。この期間中、患者はまた、ジクロロ酢酸(DCA)、レスベラトロール、ビタミンD3、L−グルタミン、マグネシウム油および必要に応じて疼痛/制吐薬(ゾフラン(Zofran)、バイコディン(Vicodin)、オキシトシン(Oxytocin)、ジラウジッド(Delaudid)およびアチバン(Ativan)を含む)を摂取していた。
【0331】
本発明の治療プロトコールの3週間後、患者による酸素補給の使用は有意に減少し、彼女の腹部膨満は解消し、彼女の食欲は増加し、彼女の体重は92ポンドに増加し始めた。上記のように、本発明の治療プロトコール開始の約8週間後、CA−125は833に低下した。患者の夫は、肺ドレインによって引き起こされるいくらかの吐き気および背部痛にもかかわらず、患者は食欲が増加し、活力が増加したと報告した。
【0332】
3カ月後、患者は本発明の治療の服用を終了した。2週間後、測定した彼女のCA−125は3432であった。その測定の3週間後に、彼女は死亡した。
【0333】
患者は最終的には治療を終了し、癌との闘いに敗北したが、彼女は、彼女の癌専門医およびホスピス看護師の予測よりも約16〜18週間長く生存した。
【0334】
実施例9:進行性IV期平滑筋肉腫(複数の転移を含む)を有する患者の処置
本実施例では、肺、肝臓および脊椎への転移を伴う後腹膜平滑筋肉腫(retroperitenial leiomyosarcoma)と診断された46歳の女性患者の処置における本発明の治療プロトコールの使用を説明する。
【0335】
プレゼンテーション時において、腫瘍が他方の腎臓の尿管を圧迫しているので、患者は、78%で機能する1個の腎臓のみを有していた。本発明の治療の開始前に、患者は、いかなる化学療法も手術も放射線も受けていなかった。実際、腫瘍の位置および疾患の程度を考慮すると、患者は、手術の候補であるとは考えられなかった。
【0336】
診断後4カ月に始めて、患者は、以下の本発明の治療プロトコールを受けた:
【0337】
【表18】
【0338】
加えて、患者は、ビタミンD3、ベータグルカナーゼ、有機コーヒー浣腸、DHA、DCA、消化酵素、ペプチダーゼ酵素、セラチオペプチダーゼ(serratiopeptidase)酵素、ヘミセルラーゼ酵素(Hemicaellulase enzyme)、グルコアミラーゼ酵素、アルファガラクトシダーゼ酵素(Apha Galactosidase enzyme)、肝臓−ND、オオアザミ、チアミン、リボフラビン、ビタミンB6およびB12、葉酸、ビオチン、パントテン酸、PABA、イノシトール、改変シトラスペクチン、エルダーベリーフルーツ(elderberry fruit)、発酵大豆、モクレン樹皮(magnolia bark)、アカツメクサ、ヤドリギ、ワサビノキおよび薬用キノコ(霊芝キノコ、チャーガ(chaga)キノコ、カワラタケ(coriolus)キノコ、マイタケ(maitake)キノコおよび冬虫夏草(cordycep)キノコを含む)を定期的に摂取した。また、患者は、必要に応じて、疼痛用のジラウジッド、ドロフィン(Dolophine)、およびヒドロコドン、炎症用のデキサメタゾン、不安症用のクロノピン(Klonopin)および睡眠用のレメロン(Remeron)を含む様々な処方薬を摂取した。
【0339】
本発明の治療を受けている間、患者は、無グルテン食、無肉食、無乳製品食および無糖食を維持した;彼女は、可能な限り多くのホールフード(whole food)およびジュースのみを消費した。
【0340】
本発明の治療の最初の2〜3週間の間に、患者は、末期の腫瘍の場合に予想されるように、特に脊椎において重大な疼痛を感じ続けた。本発明の治療の7週間後、脊椎痛が有意に軽減した;いくらかの疼痛が残ったが、肋骨下右側(重大な疾患が存在することが知られている)では減少した。
【0341】
癌専門医が死期の予測を伝えたにもかかわらず、患者はより活力的であり、食欲がより向上し、見通しがより明るいと報告した。具体的には、患者は、本発明の治療中の全体的な印象および見通しが、衰弱および落胆の印象から生活の質および強い生存欲求の印象に変化したと報告している。本発明の治療の7週目以内に、患者は、このような体調の良さを診断以前には感じていないと報告した。
【0342】
実施例10:後腹膜平滑筋肉腫を有する患者の処置
本実施例では、「右腰筋の血腫」と最初に誤診された65歳の女性患者(腫瘍出血であると後に決定された)の処置における本発明の治療プロトコールの使用を説明する。1年後、患者は、今度はメッケル憩室炎または嚢腫と再び誤診された。最終的には、患者は、術後に正確に診断された。正確な診断は、2b期後腹膜平滑筋肉腫(LMS)であった。急成長して拡散する可能性が高いことを示す悪性度3の診断(高悪性度)が、LMS細胞に下された。測定した有糸分裂指数は23であった。患者は、患者の尿管付近を覆うLMS腫瘍(3.5cm×3cm×3cmの大きさである)を有しており、彼女の盲腸、彼女の下大静脈および腰筋に繊維形成していた。
【0343】
LMSと適切に診断した後、例えば、一次病変の腹腔鏡下切除;2サイクルの化学療法(ドキソルビシン/ダカルバジン);肝病変の化学塞栓術;肝臓用のRFA(ラジオ高周波アブレーション)および冷凍アブレーション(cryoablation)で患者を処置した。加えて、診断以来、インターバルスキャンにより以下の状態が確認された:肺および腹部における小結節;両方の肺で検出された「複数の」新たな肺結節;背部、後部の胸壁の上部領域および右腰筋におけるさらなる転移。
【0344】
患者の癌は発達し続け、3年以内に、肝臓および肺への病変を伴うIV期転移性疾患に進行した。本発明の治療を受けることを患者に紹介するまでに(診断後4年を超えている)、彼女の疾患はより侵襲性になったことが明らかになった(センチメートル規模に迫る4つの新たな異なる転移領域が同定された)。
【0345】
患者は、以下の本発明の治療を受けた:
【0346】
【表19】
【0347】
加えて、本発明の治療を受けている間の様々な時点において、患者は、ロラゼパム、アルプラゾラム、エフェクサー(Effexo)、バラシクロビル(Valacyclovier)、β1,3Dグルカン、ヤモア(Yamoa)、ニッケイおよび/またはゾメタ(Zometa)(骨強化のために毎月の注入)を受けた。
【0348】
本発明の治療の数日以内に、患者は幸福感を報告した。活力および睡眠パターンは劇的に改善した。本発明の治療を開始した2週間後、患者は右肩の瘤(これは、3月に検出された新たな転移領域の1つであると同定された)を触知することができた。最終的には、それを切除して、LMSであると決定した。
【0349】
本発明の治療の6カ月までに、スキャンにより、胸部CTにおいて幅1.7cmよりも大きな単一結節はなく、新たな結節は検出されなかったことが示された。本発明の治療の開始以来、以前に右腰筋で検出された「何か」は依然として変化しておらず、新たな肝病変はなかった。
【0350】
NED治療の8カ月まで、患者の複数の肺結節および肝病変は、サイズが依然として変化していなかった。
【0351】
本発明のプロトコールの9カ月後、患者は糖尿病と診断された。同時に、MRIイメージングにより、右上腕骨における骨髄充填病変、ならびに筋肉および骨格全体にわたって広範囲に播種した疾患が明らかになった。患者の肉腫専門家、地元の癌専門医および担当放射線科医の一致した一般的な意見によれば、小円鋸歯状(crenulated)の端部を伴う右上腕骨病変のサイズおよび性質は、古い疾患を示すものである。
【0352】
本発明の治療前後のCTスキャンの比較は、本発明の治療の開始以来、イメージングした領域において新たな転移が発達しておらず、患者の既知の病変が安定していたことを示唆している。患者の肉腫専門家は、「無痛性」疾患のために、彼女が「現在のレジメン」(NED治療)を継続するように助言した。
【0353】
本発明の治療中、患者は、有害な副作用を報告しなかった。患者は高い活力があり、年齢よりも20歳若く感じ、生活の質が「素晴しい」と述べている。
【0354】
【化1】
【0355】
【化2】
【0356】
【化3】
【0357】
【化4】
【0358】
【化5】
【0359】
【化6】
【0360】
【化7】
【0361】
【化8】
【0362】
【化9】
【0363】
【化10】
【0364】
【化11】
【0365】
【化12】
【0366】
【化13】
【0367】
【化14】
【0368】
【化15】
【0369】
【化16】
【0370】
【化17】
【0371】
【化18】
【0372】
【化19】
【0373】
【化20】
【0374】
上記文章で引用されたすべての特許、出願および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0375】
均等物
本明細書に記載される本発明の他のバリエーションおよび実施形態は、本発明の開示または以下の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく当業者には明らかであろう。
図1