(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870055
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20210426BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/02 A
F16H25/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-190803(P2019-190803)
(22)【出願日】2019年10月18日
(65)【公開番号】特開2021-67285(P2021-67285A)
(43)【公開日】2021年4月30日
【審査請求日】2020年8月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505201397
【氏名又は名称】株式会社アクシス
(73)【特許権者】
【識別番号】519375136
【氏名又は名称】株式会社ティイソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆
(72)【発明者】
【氏名】金 潤石
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−096389(JP,A)
【文献】
特開2017−145956(JP,A)
【文献】
吉武 謙二, 他7名,慣性質量ダンパーを用いた同調型橋梁制震機構の開発,[online],アーバンインフラ・テクノロジー推進会議,2015年11月10日,[令和2年9月28日検索],インターネット,URL,<URL:https://www.uit.gr.jp/members/thesis/pdf/honb/473/473.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
E04H 9/00− 9/16
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物の振動に伴って振動する振動部材と、前記振動部材の振動から変換された回転力により回転する回転部材と、前記回転部材の回転力により回転する回転錘とを備えており、
前記回転錘から前記制振対象物に加えられる反力により、前記制振対象物に制振効果を与える構成となっている制振装置であって、
さらに、制振錘と弾性部材とダンパとを備えており、
前記制振錘は、前記弾性部材及び前記ダンパを介して、前記制振対象物に、相対的に振動可能なように取り付けられており、
前記回転錘は、前記振動部材の振動により回転しつつ、前記制振錘と同期して振動するようになっており、これによって、前記制振錘及び前記回転錘の固有周期を前記制振対象物の固有周期に近づけて制振効果を得る構成となっている
制振装置。
【請求項2】
前記振動部材は、ボールナットを有しており、
前記回転部材は、前記ボールナットに螺合されたねじ軸であり、
前記ボールナットは、前記制振対象物に取り付けられて、前記制振対象物の振動に伴って振動するように構成されている
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記回転部材は、前記制振対象物によって回転自在なように支持されている
請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記制振錘により支持されることにより、前記制振錘と同期して振動する構成となっている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項5】
さらに、駆動機構を備えており、
前記駆動機構は、前記制振対象物の振動に応じて前記回転部材を前記振動部材に対して相対的に振動させ、これによって前記回転部材を回転させる構成となっている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項6】
さらに、前記回転部材から前記回転錘への前記回転力の伝達を一時的に遮断するクラッチを備えている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項7】
さらに、前記回転部材から前記回転錘へ伝達される前記回転力を増速又は減速する変速機を備えている
請求項1〜6のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項8】
さらに、前記回転部材から前記回転錘へ伝達される前記回転力の軸線方向を変換するギヤ機構を備えている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の振動を抑制するための制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リニアモータから可動マスに加えられる力の反力を用いたアクティブ型の制振装置(AMD)が記載されている。このタイプの制振装置においては、得られる反力は可動マスの質量に依存する。つまり、大きな制振効果を得るには可動マスの質量を増加させる必要がある。
【0003】
しかしながら、可動マスを大型化することは、設置作業を難しくするだけでなく、装置の高コスト化を招くという問題を生じる。
【0004】
また、下記特許文献2及び3には、回転質量を用いることで可動マスの小型化を目指す技術が記載されている。
【0005】
しかしながら、下記特許文献2の技術では、ボールねじと一緒に振動する回転質量の反力を制振対象物に有効に伝えることができず、十分な制震効果が期待できない点で、改善の余地があると考えられる。
【0006】
また、下記特許文献3の技術は、二つの構造物間の相対的な振動に対する制振が意図されており、一つの制振対象物への制振については考慮されていない。
【0007】
さらに、下記特許文献4には、円盤の回転慣性モーメントを用いた上下免震装置が記載されている。しかしながら、この技術は、免震対象構造物の振動が地震の揺れに追随することを防ぐという免震を意図して、免震対象構造物の振動固有周期を長周期化するものである。つまり、この技術は、制振対象物の振動自体を抑制するという制振を行う技術ではない。また、この技術では、免震構造対象物(床など)と、その下方の支持構造物(建物の梁など)との間に円盤を配置することで免震作用を行う構成となっている。
【0008】
また、下記特許文献5には、円盤の回転慣性モーメントを用いた防振機構が記載されている(
図1及び
図7)。しかしながら、この技術においては、振動体あるいは可動質量体と地盤との間に回転質量を配置する必要があるという制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−190572号公報
【特許文献2】特開2000−145879号公報
【特許文献3】特開2010−19347号公報
【特許文献4】特開2007−71399号公報
【特許文献5】特開2009−85362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、制振装置についての研究を進めた結果、軽量かつ小型でありながら高い制振効果を発揮可能な制振機構についての知見を得た。
【0011】
本発明は、前記した知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。
【0013】
(項目1)
制振対象物の振動に伴って振動する振動部材と、前記振動部材の振動から変換された回転力により回転する回転部材と、前記回転部材の回転力により回転する回転錘とを備えており、
前記回転錘から前記制振対象物に加えられる反力により、前記制振対象物に制振効果を与える構成となっている
制振装置。
【0014】
(項目2)
前記振動部材は、ボールナットを有しており、
前記回転部材は、前記ボールナットに螺合されたねじ軸であり、
前記ボールナットは、前記制振対象物に取り付けられて、前記制振対象物の振動に伴って振動するように構成されている
項目1に記載の制振装置。
【0015】
(項目3)
前記回転部材は、前記制振対象物によって回転自在なように支持されている
項目1又は2に記載の制振装置。
【0016】
(項目4)
さらに、制振錘と弾性部材とダンパとを備えており、
前記制振錘は、前記弾性部材及びダンパを介して、前記制振対象物に、相対的に振動可能なように取り付けられており、
前記回転部材は、前記制振錘により支持されることにより、前記制振錘と同期して振動する構成となっている
項目1〜3のいずれか1項に記載の制振装置。
【0017】
(項目5)
さらに、駆動機構を備えており、
前記駆動機構は、前記制振対象物の振動に応じて前記回転部材を前記振動部材に対して相対的に振動させ、これによって前記回転部材を回転させる構成となっている
項目1〜3のいずれか1項に記載の制振装置。
【0018】
(項目6)
さらに、前記回転部材から前記回転錘への前記回転力の伝達を一時的に遮断するクラッチを備えている
項目1〜5のいずれか1項に記載の制振装置。
【0019】
(項目7)
さらに、前記回転部材から前記回転錘へ伝達される前記回転力を増速又は減速する変速機を備えている
項目1〜6のいずれか1項に記載の制振装置。
【0020】
(項目8)
さらに、前記回転部材から前記回転錘へ伝達される前記回転力の軸線方向を変換するギヤ機構を備えている
項目1〜7のいずれか1項に記載の制振装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の制振装置によれば、軽量かつ小型でありながら、高い制振効果を発揮することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る制振装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図4】
図1のC方向から見た回転錘の拡大図である。
【
図5】比較例としての制振装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る制振装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る制振装置の概略的な構成を示す説明図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る制振装置の概略的な構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態に係る制振装置(以下単に「装置」と称することがある)を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
この装置は、制振対象物1の振動に伴って振動する振動部材2と、振動部材2の振動から変換された回転力により回転する回転部材3と、回転部材3の回転力により回転する回転錘4とを基本的な構成要素として備えている(
図1参照)。さらに、本実施形態の制振装置は、制振錘6と弾性部材7とダンパ8とを追加的に備えている。第1実施形態の制振装置は、いわゆるTMD(チューンドマスダンパ)として動作するものである。
【0025】
(制振対象物)
制振対象物1は、本実施形態の制振装置による制振の対象となる物体である。この制振対象物1は、何らかの構造物5により、振動可能なように(つまり弾性的に)支持されている。この状態をモデル化すると、
図1に示すように、制振対象物1は、弾性部材51を介して構造物5により支持されていることになる。
【0026】
制振対象物1は、例えば、両端が地盤により支持された橋である。この場合、地盤が構造物5の具体例に相当する。ただし、これは単なる一例であり、これには制約されない。例えば、制振対象物1が橋の一部(例えば橋桁)であってもよく、この場合、構造物5は、この一部を支持する部材となる。要するに、制振対象物1としては、構造物5に対して振動する物体であって、制振の対象となるものであればよい。
【0027】
(振動部材)
振動部材2は、制振対象物1に取り付けられている。本実施形態における振動部材2は、ボールナット21を有している(
図3参照)。ボールナット21の側面は、制振対象物1に固定されている。これにより、振動部材2(つまりボールナット21)は、制振対象物1の振動に伴って振動するようになっている。
【0028】
(回転部材)
回転部材3としては、振動部材2のボールナット21に螺合されたねじ軸が用いられている。この構成により、本実施形態の回転部材3は、制振対象物1によって回転自在なように支持されたものとなっている。
【0029】
回転部材3は、制振錘6(後述)により支持されることにより、制振錘6と同期して振動する構成となっている。
【0030】
(回転錘)
回転錘4は、
図2及び
図4に示されるように、薄い円柱状、すなわち円盤状に形成されている。回転錘4は、この例では、回転部材3の上端に、相対移動しないように取り付けられており、これによって、回転部材3の回転に伴って同じ方向に回転するようになっている。ただし、回転錘4の取り付け位置は、特に制約されない。例えば、回転錘4を回転部材3の中間位置に取り付けることも可能である。
【0031】
(制振錘)
制振錘6は、弾性部材(例えばばね)7及びダンパ8を介して、制振対象物1に、相対的に振動可能なように取り付けられている。より具体的には、制振錘6は、延出部61と軸受62とを有している(
図2参照)。軸受62には回転部材3が取り付けられている。軸受62は、回転部材3を、自転可能でかつ軸方向には移動しないように支持するものとなっている。
【0032】
(本実施形態の動作)
次に、前記のように構成された本実施形態の制振装置の動作について説明する。まず、制振対象物1に振動が加えられたとする。例えば、制振対象物1が橋であるとすると、車両の通行、強風、地震など、何らかの原因により、制振対象物1が構造物5(例えば地面)に対して振動したとする。
【0033】
すると、制振対象物1に弾性部材7及びダンパ8を介して取り付けられた制振錘6は、構造物5及び制振対象物1に対して相対的に振動する。制振対象物1に対する制振錘6の相対的な振動の周期及び振幅は、弾性部材7及びダンパ8の特性を調整することにより設定可能である。
【0034】
制振対象物1に対して制振錘6が相対的に振動すると、制振錘6に取り付けられた回転部材3も、制振錘6に同期して、制振対象物1に対して相対的に振動する。一方、回転部材3は、制振対象物1に取り付けられた振動部材2のボールナット21に螺合されているので、回転部材3は、振動部材2の作用により自転する。ここで、本実施形態の回転部材3は、軸受62を介して制振錘6に支持されているので、正逆方向に自由に回転できる。
【0035】
これにより、本実施形態では、回転部材3に取り付けられた回転錘4を回転させることができる。回転錘4が回転すると、その
慣性モーメントにより、回転錘4の見かけの重さが増加する。これにより、回転錘4の、鉛直方向における(つまり回転軸線方向における)固有の振動周期(以下単に「固有周期」と称することがある)を長くすることができる。本例では、回転錘4と制振錘6とが同期して振動するので、制振錘6の固有周期も長くなる。すると、本実施形態では、制振錘6として軽量のものを用いた場合であっても、制振錘6の固有周期を長くすることができる。すなわち、制振錘6と回転錘4の固有周期を制振対象物1の固有周期に近づけることができる。すなわち回転錘4の回転により増大した質量(付加質量)を利用して、制振対象物1の振動の振幅を効率的に小さくすることができる。
【0036】
ここで、本実施形態では、回転錘4が制振対象物1に対して振動する(つまり制振錘6と同期して振動する)ので、前記した制振効果を有効に発揮することができる。仮に、回転錘4が制振対象物1に同期して振動する場合(つまり回転錘4が制振錘6に対して相対的に振動する場合)は、前記した意味での制振効果は低下する。
【0037】
なお、回転錘4の重さや大きさを変化させることによって制振錘6の固有周期の長期化の程度を簡単に調整できることは言うまでもない。
【0038】
(計算例)
以下、回転錘4の回転による見かけの質量(付加質量)の増大効果についての計算例を説明する。まず、比較のため、回転錘4の無い構成を比較例として
図5に示す。説明を簡素化するため、この
図5の比較例において、前記した第1実施形態と共通する各要素については同一符号を用いる。
【0039】
図5の比較例では、弾性部材7を介して制振対象物1に制振錘6が取り付けられている。この例では、説明を簡素化するため、ダンパ8を省略している。この例における制振錘6の固有周期T
0は下記のように表せる。
【0041】
ここで、
M:制振錘6の質量;
K:弾性部材7のばね定数
である。
【0042】
これに対して、第1実施形態における回転錘4の回転による見かけの質量(付加質量)をΔMとすると、本実施形態の制振錘6の固有周期T
1は下記のように表せる。
【0044】
ただし、本実施形態の計算においても、前記と同様、説明簡素化のためダンパ8については考慮していない。また、回転部材3などの付属部材の質量も、説明簡素化のため、ここでは考慮しない。
【0045】
ここで、T
0=2(秒)のとき、T
1=3(秒)とするための質量ΔMの条件について考察する。
【0047】
M+ΔM=1.5
2×M (4)
より
ΔM=1.25M (5)
となる。例えば、M=4000kgのとき、ΔM=5000kgとなる。
【0050】
ここで
l
e:ねじ軸(ボールねじ)のリード
J:回転錘の慣性モーメント(kg/m
2)
である。
【0051】
回転錘4の慣性モーメントJは以下のように書ける。
J=πρLD
4/32
【0052】
ここで
ρ:回転錘の密度(kg/m
3)
L:回転錘の高さ(軸線方向の長さ)
D:回転錘の直径
である。ここで回転錘4は円柱状であることを想定している。円柱状でない場合はその形状に応じて
慣性モーメントJを計算可能である。
【0053】
以下では、ρ=8.000kg/m
2として計算する。なお、この値はステンレス鋼や炭素鋼の密度に近い値である。
【0054】
ΔM=5000kgのとき、前記の式(6)から、
となる。
【0055】
例えばl
e=0.02とすると、
J=0.02
2×(5000/39.5)=0.05 (8)
となる。
【0056】
ここでたとえば
D=0.2m
L=0.01m
とすれば、
J=πρLD
4/32=0.01256
となる。
【0057】
この結果を用いると
4J≒0.05
なので、4枚の回転錘4を用いることにより、ΔM=5000kgとすることができ、所望の固有周期を実現できる。
【0058】
例えば、
図1に示す振動部材2及び回転部材3を左右対称に設け、2枚の回転錘4を左右の回転部材3に取り付けることによって、前記の固有周期を達成することも可能である。
【0059】
式(2)からわかるように、本実施形態では、見かけの質量ΔMを増加させることにより、制振錘6の質量Mを小さくすることができる。理想的には、質量Mをほぼゼロにすることも可能と考えられる。したがって、本明細書においては、制振錘6とは、いわゆる「錘」でなくてもよく、要するに、何らかの質量を有する部材であればよい。例えば回転部材3を支持する何らかの機構を制振錘6と観念することもできる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本実施形態の第2実施形態に係る制振装置を、
図6をさらに参照しながら説明する。なお、この第2実施形態の説明においては、前記した第1実施形態の制振装置と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の重複を防ぐ。
【0061】
この第2実施形態の装置は、第1実施形態における弾性部材7及びダンパ8に代えて、駆動機構9を備えたものとなっている。つまり、第2実施形態の制振装置は、いわゆるAMD(アクティブマスダンパ)となっている。
【0062】
駆動機構9は、制振対象物1の振動に応じて回転部材3を振動部材2に対して相対的に振動させ、これによって回転部材3を回転させる構成となっている。具体的には、本実施形態の駆動機構9は、アクチュエータ91と可動部材92とを有している。アクチュエータ91は、制振対象物1の振動を検出するセンサ(図示せず)と、センサからの検出値に応じてアクチュエータ91の動作制御を行う制御部(図示せず)とを備えており、制振対象物1の振動に対応して可動部材92を振動させる構成となっている。可動部材92の振動方向は、制振対象物1の振動方向と同じとされている。これにより、前記した第1実施形態の場合と同様に、回転錘4を振動させ、かつ、回転させることができる。このアクチュエータ91は、第1実施形態における弾性部材7及びダンパ8の機能を発揮するように制御される。
【0063】
前記した第1実施形態では、制振対象物1の振動により受動的に回転錘4を回転させることにより、付加的な質量ΔMを生成していた。これに対して、第2実施形態の制振装置では、駆動機構9を用いて能動的に回転錘4を回転させることにより、適切な値の付加質量ΔMを適切なタイミングで生成することができる。したがって、この第2実施形態によれば、制振錘6を一層軽量化することが可能になるだけでなく、より高い制振効果を期待することができるという利点がある。
【0064】
第2実施形態の制振装置における他の構成及び利点は、前記した第1実施形態と基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本実施形態の第3実施形態に係る制振装置を、
図7をさらに参照しながら説明する。なお、この第3実施形態の説明においては、前記した第1実施形態の制振装置と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の重複を防ぐ。
【0066】
この第3実施形態においては、第1実施形態における制振装置を横方向の振動に対して用いるものとなっている。つまり、第3実施形態の装置は、水平方向の振動に対する制振を行うものとなっている。
【0067】
具体的には、第3実施形態の制振装置においては、
図7に示されるように、制振対象物1が構造物5に対して水平方向に振動可能となっている。そして、制振錘6が制振対象物1と同じ方向に振動可能となっており、回転部材3がこの振動方向と平行な方向に配置されている。
【0068】
第3実施形態の制振装置においては、回転部材3は、回転錘4と共に、水平方向に振動するようになっている。また、第1実施形態と同様に、回転錘4は、回転部材3と振動部材2との間の相対的な振動に伴い回転する。これにより、この装置では、水平方向での制振を行うことができる。
【0069】
第3実施形態の制振装置における他の構成及び利点は、前記した第1実施形態と基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本実施形態の第4実施形態に係る制振装置を、
図8をさらに参照しながら説明する。なお、この第4実施形態の説明においては、前記した第2実施形態の制振装置と基本的に共通する要素については、同一符号を付すことにより、説明の重複を防ぐ。
【0071】
この第4実施形態においては、第2実施形態における制振装置を横方向の振動に対して用いるものとなっている。つまり、第4実施形態の装置は、水平方向の振動に対する制振を行うものとなっている。
【0072】
第4実施形態の制振装置によれば、AMDとして水平方向での制振を行うことができる。
【0073】
第4実施形態の制振装置における他の構成及び利点は、前記した第1実施形態と基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0074】
なお、本発明の内容は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、具体的な構成に対して種々の変更を加えうるものである。
【0075】
例えば、回転部材3から回転錘4への回転力の伝達を一時的に遮断するクラッチ(図示せず)を追加的に備えることができる。このようにすれば、制振作用のオン/オフを制御することができる。
【0076】
また、回転部材3から回転錘4へ伝達される回転力を増速又は減速する変速機を備えることができる。このようにすると、実質的に
慣性モーメントを可変にできるので、回転錘4の振動の固有周期を必要に応じて制御することができる。
【0077】
さらに、回転部材3から回転錘4へ伝達される回転力の軸線方向を変換するギヤ機構(例えばべベルギヤ)を備えることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 制振対象物
2 振動部材
21 ボールナット
3 回転部材
4 回転錘
5 構造物
51 弾性部材
6 制振錘
61 延出部
62 軸受
7 弾性部材
8 ダンパ
9 駆動機構
91 アクチュエータ
92 可動部材