特許第6870089号(P6870089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870089
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】遠心機
(51)【国際特許分類】
   B04B 13/00 20060101AFI20210426BHJP
   B04B 7/06 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B04B13/00
   B04B7/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-529058(P2019-529058)
(86)(22)【出願日】2018年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2018024850
(87)【国際公開番号】WO2019013021
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-135198(P2017-135198)
(32)【優先日】2017年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 久延
(72)【発明者】
【氏名】高橋 廣之
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−135994(JP,A)
【文献】 特開2012−152718(JP,A)
【文献】 特開2015−116541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0199379(US,A1)
【文献】 特開2007−130609(JP,A)
【文献】 特開2010−042350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を支持するロータを収容するロータ室と、
前記ロータ室を開閉するドアと、
前記ロータ室に前記ロータが収容されているか否かを検出する有無検出部と、
前記ドアを開くことを禁止するロック状態と、前記ドアを開くことを許容するアンロック状態とを切り替え可能なロック機構と、
前記ロック機構を前記アンロック状態にするための操作が行われ、かつ、パスコードが入力されると前記ロック機構をアンロック状態にする制御部と、
を有する遠心機であって、
前記制御部は、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われた際に前記パスコードの入力を要求するか否かを選択可能である、遠心機。
【請求項2】
前記制御部は、前記ロータ室に前記ロータが収容されていない際に、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われると、前記パスコードの入力を要求せずに前記ロック機構をアンロック状態にする、請求項1記載の遠心機。
【請求項3】
前記ロータ室に収容された前記ロータが停止しているか否かを検出して信号を出力する停止検出部が設けられ、
前記制御部は、前記停止検出部から出力される信号によって前記ロータ室に収容されている前記ロータが停止していると判断し、かつ、前記パスコードの入力を要求することを選択している際に、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われ、かつ、前記パスコードが入力されると前記ロック機構をアンロック状態にする、請求項1または2記載の遠心機。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロータ室に前記ロータが収容され、かつ、前記ドアを閉じた際に、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われた際に入力する前記パスコードの設定をするか否かを選択可能である、請求項1乃至3の何れか1項記載の遠心機。
【請求項5】
前記制御部は、前記パスコードの設定をしないことが選択されている際に、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われると、前記パスコードの入力を要求せずに前記ロック機構をアンロック状態にする、請求項記載の遠心機。
【請求項6】
前記制御部は、前記パスコードの設定をすることが選択されている際に、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われ、かつ、前記パスコードが入力されると、前記ロック機構をアンロック状態にし、かつ、前記パスコードをクリアする、請求項4または5記載の遠心機。
【請求項7】
前記パスコードの入力履歴を記憶する記憶部が設けられている、請求項1乃至6の何れか1項記載の遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と固体との混合物、液体同士の混合物を試料とし、試料を遠心力により沈殿分離、精製、濃縮等の種々の遠心処理を行うための遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
医学、薬学および遺伝子工学等の分野においては、液体と固体との混合物、液体同士の混合物を試料とし、試料を沈殿分離等の処理を行うために遠心分離機、つまり遠心機が使用されている。遠心機の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された遠心機は、ロータを収容するチャンバと、チャンバの開口部を開閉するドアと、ドアの閉状態をロック及びアンロックに切り替えるドアソレノイドと、ソレノイドに接続された制御部と、ロータを回転及び停止する駆動装置と、を有する。
【0003】
駆動装置はモータを有し、モータ及びロータの回転数を検出する回転検出器が設けられている。制御部は操作パネルに接続されている。回転検出器の検出信号は制御部に入力される。制御部にはパーソナルコンピュータが接続されている。パーソナルコンピュータは、記憶装置を有し、記憶装置には、制御部を動作させるプログラムが格納されている。パーソナルコンピュータには非接触式カードリーダが接続されている。
【0004】
使用者が操作パネルを操作して使用者識別コードを入力すると、制御部は使用者識別コードを記憶する。遠心機が停止した後は、ドアソレノイドがドアをロックしたままであるため、チャンバから試料を取り出すことができない。使用者識別コードが書き込まれている非接触式ICカードを携帯している使用者が、試料がセットされたロータを持ち、非接触式カードリーダの通信可能範囲に入ると、予め記憶されている使用者識別コードと、非接触式ICカードに書き込まれている使用者識別コードとが照合される。両者が一致すると、遠心機の操作が許可されるとともに、ドアソレノイドによるドアのロックが解除されて、ドアを開いてチャンバ内から試料を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−130609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている遠心機は、ロータ室にロータが無い場合について、ドアロック機構の機能が考慮されておらず、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、ユーザの操作性を向上することの可能な遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の遠心機は、試料を支持するロータを収容するロータ室と、前記ロータ室を開閉するドアと、前記ロータ室に前記ロータが収容されているか否かを検出する有無検出部と、前記ドアを開くことを禁止するロック状態と、前記ドアを開くことを許容するアンロック状態とを切り替え可能なロック機構と、記ロック機構を前記アンロック状態にするための操作が行われ、かつ、パスコードが入力されると前記ロック機構をアンロック状態にする制御部と、を有する遠心機であって、前記制御部は、前記ロック機構を前記アンロック状態にするための前記操作が行われた際に前記パスコードの入力を要求するか否かを選択可能である
【発明の効果】
【0009】
一実施形態の遠心機は、ロータがロータ室に収容されている際に、ロック機構をアンロック状態にする操作が行われ、かつ、アンロック用パスコードが入力されると、ロック機構がアンロック状態になる。したがって、ユーザの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の遠心機の実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の遠心機の実施形態を示す斜視図である。
図3】遠心機の操作表示部に表示される通常画面A1を示す模式図である。
図4】遠心機の操作表示部に表示される通常画面B1を示す模式図である。
図5】遠心機の操作表示部に表示される通常画面C1を示す模式図である。
図6A】遠心機の操作表示部に表示される通常画面D1を示す模式図である。
図6B】遠心機の操作表示部に表示される管理者画面D2を示す模式図である。
図6C】遠心機の操作表示部に表示される管理者画面D3を示す模式図である。
図7】遠心機の操作表示部に表示されるサブ画面E1を示す模式図である。
図8】遠心機の操作表示部に表示されるサブ画面E2を示す模式図である。
図9】遠心機の制御例を示すフローチャートである。
図10】遠心機の制御例を示すタイムチャートである。
図11】遠心機の他の制御例を示すタイムチャートである。
図12】遠心機の操作表示部に表示される履歴画面G1を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る遠心機の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1に示す遠心機10は、本体11、ドア12、収納容器13、ロータ14、電動モータ15、ドアロック機構16、冷却装置17及び真空ポンプ18を有する。本体11は、金属及び合成樹脂等の材料により箱形に形成されている。ドア12は、本体11にヒンジ20を介して取り付けられており、ドア12は、ヒンジ20を支点として所定角度の範囲内で動作可能である。ドア12は、ユーザが手動で動作させる構造、または、アクチュエータにより動作させる構造の何れでもよい。アクチュエータは、電動モータ、ソレノイドを含む。
【0013】
収納容器13は本体11の内部F1に設けられている。収納容器13は金属製であり、収納容器13は、筒部21及び底部22を有する。収納容器13の内部にロータ室23が形成されている。収納容器13は、ロータ室23の開口部24が鉛直方向で上に向くように配置されている。軸孔25が底部22を貫通して設けられている。ドア12がヒンジ20を支点として動作されると、ドア12は開口部24を開閉する。
【0014】
開口部24を囲むようにシール部材が設けられている。シール部材は、本体11または収納容器13の何れに設けられていてもよい。ドア12が実線のように開口部24を閉じると、シール部材がドア12の表面に接触してシール面を形成する。つまり、ロータ室23は密封される。ドア12が二点鎖線のように開口部24を開くと、シール部材がドア12の表面から離れる。つまり、ロータ室23は開かれ、ユーザはロータ14をロータ室23に出し入れする作業を行える。
【0015】
ロータ14は、試料を支持、具体的には収容する。ロータ14は、金属製、合成樹脂製、ガラス製等の何れでもよい。ロータ14は、遠心処理の種類、試料の種類等に応じて複数種類が用意されており、それぞれのロータ14毎に識別子が設けられている。試料は、液体と固体との混合物、または液体同士の混合物を含む。電動モータ15は本体11の内部F1に設けられ、電動モータ15の回転軸26は、軸孔25を介してロータ室23に配置されている。回転軸26はロータ14に接続されており、回転軸26及びロータ14は一体回転する。
【0016】
冷却装置17は本体11の内部F1に設けられている。冷却装置17は、冷却配管27、第1配管28、第2配管29、第3配管30、凝縮器31及び圧縮機32を有する。冷却配管27は、収納容器13の筒部21の外周に巻き付けられている。第1配管28は、冷却配管27と凝縮器31とを接続する。第3配管30は、冷却配管27と圧縮機32とを接続する。第2配管29は、圧縮機32と凝縮器31とを接続する。圧縮機32は、気体の状態で冷媒を圧縮する。圧縮機32で圧縮された冷媒は第2配管29を介して凝縮器31に送られる。凝縮器31は、冷媒を冷却して液化する熱交換器である。凝縮器31から出た液状の冷媒は、第1配管28を介して冷却配管27に送られ、ロータ室23の熱が収納容器13および冷却配管27を介して冷媒に伝達され、冷却配管27内の冷媒の温度が上昇して気化する。気化した冷媒は、第3配管30を経由して圧縮機32に送られる。
【0017】
このように、冷却装置17は、冷媒が循環する冷凍サイクルを形成し、ロータ室23の温度上昇を抑制する。冷却装置17は、インバータまたは流量調整弁のいずれか一方、または両方と、電動モータと、を有する。インバータを制御して電動モータの回転速度を制御、または、流量調整弁を制御することで、冷媒の圧縮圧力や供給量を制御し、ロータ室23の温度を調整可能である。流量調整弁を制御することで、冷媒の供給量を制御し、ロータ室23の温度を調整可能である。
【0018】
真空ポンプ18は、本体11の内部F1に設けられている。真空ポンプ18の吸入口は、吸気管33を介してロータ室23に接続されている。真空ポンプ18が駆動すると、ロータ室23内が減圧される。
【0019】
ドアロック機構16は、ドア12に取り付けられた係合部34と、本体11の内部F1に設けられたソレノイド35と、を有する。係合部34は、突起、フックを含む。突起は、孔または凹部を有する。ソレノイド35は本体11に固定されており、ソレノイド35はプランジャ36を有する。プランジャ36は、軸方向に動作可能である。ソレノイド35への通電と非通電とを切り替えると、プランジャ36が軸方向に動作する。プランジャ36が軸方向に動作すると、プランジャ36が係合部34に係合または解放される。ドアロック機構16は、プランジャ36が係合部34に係合してロック状態になると、ドア12が開くことを禁止する。ドアロック機構16は、プランジャ36が係合部34から解放されてアンロック状態になると、ドア12が開くことを許容する。
【0020】
図2に示すように、操作表示部37が本体11に設けられている。操作表示部37は、ユーザが操作可能であり、かつ、ユーザが目視可能である。操作表示部37は、例えば、図3の通常画面A1、図4の通常画面B1、図5の通常画面C1、図6Aの通常画面D1、図7のサブ画面E1、図8のサブ画面E2等を表示可能である。通常画面A1,B1,C1には、回転速度表示部38、運転時間表示部39、温度表示部40、スタートボタン41、オープンボタン42等を表示する。
【0021】
さらに、図1に示すように、温度センサ43、ロータ判別センサ44、ドアセンサ45及び回転速度センサ46が設けられている。温度センサ43は、ロータ室23内の温度を検出して信号を出力する。ロータ判別センサ44は、識別子を検出してロータ14の有無を検出し、かつ、ロータ14の種類を判別して信号を出力する。ドアセンサ45は、ドア12が閉じられているか開いているかを検出して信号を出力する。回転速度センサ46は、回転軸26の回転速度、つまり、ロータ14の回転速度を検出して信号を出力する。
【0022】
本体11の内部F1に制御部47が設けられている。制御部47は、入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理装置、記憶装置等を有するマイクロコンピュータである。制御部47は操作表示部37との間で信号の授受可能であり、温度センサ43、ロータ判別センサ44、ドアセンサ45及び回転速度センサ46から出力される信号は、制御部47に入力される。制御部47は、電動モータ15を回転または停止する信号、電動モータ15の回転速度を制御する信号、ソレノイド35への通電及び非通電を制御する信号、圧縮機32を制御する信号を出力する。
【0023】
ユーザは、図3に示す回転速度表示部38を操作してロータ14の回転速度を設定でき、ユーザは、運転時間表示部39を操作して運転時間を設定でき、ユーザは、温度表示部40を操作してロータ室23内の温度を設定できる。制御部47で、ロータ判別センサ44の信号に基づいて、ロータ14の回転速度及び目標処理時間を、自動的に設定するようにしてもよい。また、ユーザは、図3に示す通常画面A1のプログラムボタン48を操作して、ロータ14の種類毎に、異なる処理工程を選択可能である。異なる処理工程は、例えば、遠心処理の目標処理時間、ロータ14の回転速度、ロータ14の回転及び停止の回数、等の条件のうち、少なくとも1つが異なる。
【0024】
ユーザが、図3に示す通常画面A1でメニュータブ49を操作すると、図6Aの通常画面D1が表示される。ユーザは、通常画面D1の管理者ボタン50を操作することにより、遠心機10の使用を許可するログインユーザの登録及び削除、ドアロックセキュリティ機能の有効と無効との切替え等を行うことが可能である。ユーザが管理者ボタン50を操作すると、図6Bに示す管理者画面D2が表示される。ユーザが、管理者画面D2のドアロックセキュリティボタン53を操作すると、図6Cに示す管理者画面D3が表示される。管理者画面D3は、有効ボタン54及び無効ボタン55を有する。ユーザが、有効ボタン54を操作すると、ドアロックセキュリティ機能が有効になる。ユーザが、無効ボタン55を操作すると、ドアロックセキュリティ機能が無効になる。ドアロックセキュリティ機能が有効であると、ロック状態にあるドアロック機構16をアンロック状態に切り替える際に、パスコードの入力が必要である。ドアロックセキュリティ機能が無効であると、ロック状態にあるドアロック機構16をアンロック状態に切り替える際に、パスコードの入力は不要である。
【0025】
次に、遠心機10の制御例を、図9のフローチャートを参照して説明する。制御部47は、図3の通常画面A1が表示されている際に、ステップS1でドアが閉じられたか否かを判断する。制御部47は、ステップS1でNOと判断すると、ステップS1の判断を継続する。制御部47は、ステップS1でYESと判断すると、ステップS2に進み、ドアロック機構16をロック状態にする。制御部47は、ステップS3でロータ14が有るか否かを判断し、ステップS3でYESと判断すると、ステップS4において、ドアロックセキュリティ機能が有効か否かを判断する。
【0026】
制御部47は、ステップS4でYESと判断すると、ステップS5に進み、図7のサブ画面E1を表示する。ユーザは、サブ画面E1を操作して“ドアロック機能を解除する際に用いるパスコードを設定するか否か”を選択する。制御部47は、ステップS6において、パスコードを入力する操作が行われたか否かを判断する。パスコードは、例えば、4桁の数字を入力可能である。制御部47は、ステップS6でYESと判断すると、ステップS7でサブ画面E2を表示する。また、制御部47は、ユーザがサブ画面E2でパスコードを設定すると、図5の通常画面C1を表示する。
【0027】
制御部47は、ステップS8において、ユーザが通常画面C1のスタートボタン41を操作したか否かを判断する。制御部47はステップS8でYESと判断すると、ステップS9で図4の通常画面B1を表示し、かつ、電動モータ15を回転させる。ロータ14は、電動モータ15と共に回転し、ロータ14内で試料の遠心分離処理が行われる。遠心分離処理は、試料の沈殿分離、精製、濃縮等を含む。
【0028】
制御部47は、ステップS10で試料の遠心分離が完了したか否かを判断する。試料の遠心分離が完了したか否かは、例えば、ロータ14が回転を開始してからの経過時間が、試料の設定運転時間に到達したか否かで判断可能である。設定運転時間は、ユーザが図3の運転時間表示部39を操作して設定した値、制御部47がロータ14の種類に応じて自動的に設定した値、ユーザが図3の通常画面A1のプログラムボタン48を操作して設定した値の何れでもよい。
【0029】
制御部47はステップS10でNOと判断すると、ステップS9に進む。制御部47はステップS10でYESと判断すると、ユーザが図4の通常画面B1のストップボタン51を操作してロータ14の回転速度が低下し、ついで、ロータ14が停止したか否かを判断する。制御部47は、ステップS11でNOと判断するとステップS11の判断を継続する。
【0030】
制御部47は、ステップS11でYESと判断すると、図5の通常画面C1を表示し、ステップS12において、ユーザが通常画面C1のオープンボタン42を操作したか否かを判断する。通常画面C1のオープンボタン42は、キーのマークも表示する。このため、ユーザは、ドアロックセキュリティ機能が有効であることを認識可能である。
【0031】
制御部47はステップS12でNOと判断すると、ステップS12の判断を継続する。制御部47はステップS12でYESと判断すると、ステップS13において、パスコードが設定されているか否かを判断する。
【0032】
制御部47はステップS13でYESと判断すると、ステップS14で図8のサブ画面E2を表示し、ユーザはサブ画面E2でパスコードを入力する。制御部47は、ステップS15において、ユーザがステップS14で入力したパスコードが正しいか否かを判断する。制御部47は、ステップS7で設定されたパスコードと、ステップS14で入力されたパスコードとが不一致であると、ステップS15でNOと判断し、ステップS14に進む。
【0033】
制御部47は、ステップS7で設定されたパスコードと、ステップS14で入力されたパスコードとが一致していると、ステップS15でYESと判断し、ステップS16に進み、記憶しているパスコード、つまり、ステップS7で設定したパスコードをクリア、つまり、無効とする。また、制御部47は、ステップS17でドアロック機構16をアンロック状態とし、かつ、図3の通常画面A1を表示し、図9の制御例を終了する。
【0034】
制御部47は、ステップS13でNOと判断するとステップS17に進む。制御部47は、ステップS8でNOと判断するとステップS12に進む。制御部47は、ステップS3でNOと判断した場合、または、ステップS4でNOと判断した場合、または、ステップS6でNOと判断した場合は、ステップS18で“パスコードの設定は無し”とする処理を行い、ステップS8に進む。
【0035】
図9の制御例には示されていないが、制御部47は、遠心機10の使用履歴を記憶する。遠心機10の使用履歴は、ドア12が開かれた日時、ロータ14がロータ室23から取り出された日時、ユーザがステップS7で行ったパスコードの設定日時、ユーザがステップS14で行ったパスコードの入力履歴、つまり、日時を含む。制御部47は、ロータ判別センサ44の信号を処理して、ロータ14がロータ室23から取り出されたことを検出可能である。そして、ユーザが図6Aの通常画面D1の運転履歴ボタン52を操作すると、制御部47は、記憶している遠心機10の使用履歴を操作表示部37に表示する。
【0036】
図12は、ドアロックセキュリティ機能の履歴を示す履歴画面G1の一例である。履歴画面G1には、パスコードの登録日時、入力されたパスコードの正・誤の入力日時が表示される。履歴画面G1のうち、“OK”は、正しいパスコードが入力されたことを意味し、“NG”は、誤ったパスコードが入力されたことを意味する。ユーザは履歴画面G1を閲覧することで、遠心機10のドア12の開閉履歴を把握することができる。すなわち、ユーザは、所定のタイミング、所定のユーザがドア12の開閉を実施したか否か、を確認できることで、遠心機10のセキュリティ性が向上する。
【0037】
図10は、遠心機10の処理工程を示すタイムチャートである。図10に示す処理工程は、ロータ14の回転及び停止を1回ずつ行って遠心分離を完了する例である。ドアは時刻t1よりも前の時点で開いており、ドアロック機構はアンロック状態であり、ロータは停止している。ドアが時刻t1で閉じられると、ドアロック機構はロック状態に制御される。パスコードが時刻t2で入力され、スタートボタンが時刻t3で操作され、ロータが回転する。
【0038】
ロータの回転速度は、時刻t4以降で一定に制御されている。ユーザがストップボタンを時刻t5で操作すると、ロータの回転速度が低下する。ロータは時刻t6で停止されている。ユーザが時刻t7でオープンボタンを操作し、ユーザが時刻t8でパスコードを入力すると、ドアロック機構はアンロック状態に制御される。ユーザは、ドアを時刻t9で開いている。
【0039】
このように、制御部47は、ロータ室23に収容されているロータ14が停止している際に、ドアロック機構16をアンロック状態にする予備操作として、ユーザがオープンボタン42を操作したことをステップS12で検出する。そして、制御部47は、ステップS14でパスコードが入力されると、ドアロック機構16をアンロック状態にする。また、制御部47は、ステップS3でNOと判断し、ステップS18を経由してステップS12に進んでオープンボタン42が操作されたことを検出すると、ステップS13でNOと判断してステップS17に進み、ドアロック機構16をアンロック状態にする。したがって、ロータ14がロータ室23に無い状態でパスコードの入力を行わずにドア12を開くことができ、ユーザの操作性が向上する。
【0040】
また、制御部47がステップS6でNOと判断し、ステップS18を経由してステップS13でNOと判断した場合も、パスコードの入力を行わずにドア12を開くことができ、ユーザの操作性が向上する。
【0041】
さらに、ロータ14が停止している場合でも、ステップS7で入力したパスコードと、ステップS14入力したパスコードとが一致しない場合、制御部47は、ドアロック機構16をロック状態に保持する。したがって、ロータ14がロータ室23に収容されている際に、パスコードを知らない人がドア12を開くことを防止できる。すなわち、遠心処理するロータ内の試料について盗難や異物混入に対するセキュリティ性が向上する。加えて、ソフトウェアだけでロータ14のセキュリティ性が向上でき、ハードウェア機器の追加によるコストの増加を抑制できる。
【0042】
図11は、遠心機の他の処理工程に相当するタイムチャートである。図11に示す処理工程は、ロータ14の回転及び停止をそれぞれ複数回繰り返す、具体的には3回ずつ行って遠心分離を完了する、プログラム運転の例である。図11において、(1)は、図9のステップS7で行うパスコードの入力を表し、(2)は、スタートボタンの操作を表し、(3)は、ストップボタンの操作を表し、(4)は、オープンボタンの操作を表し、(5)は、図9のステップS14で行うパスコードの入力を表す。
【0043】
ドアが時刻t1で閉じられ、パスコードが時刻t2で入力されると、ドアロック機構がロック状態になる。スタートボタンが時刻t3で操作され、ロータの第1回目の回転が開始す。ストップボタンが時刻t4で操作されてロータが第1回目の停止となっている。オープンボタンが時刻t5で操作され、パスコードが時刻t6で入力され、ドアロック機構がアンロック状態になる。
【0044】
その後、ユーザがドアを開き、かつ、ドアが時刻t7で閉じられると、ドアロック機構はロック状態になる。パスコードが時刻t8で入力される。時刻t8で入力するパスコードは、時刻t2で入力するパスコードと同じでもよいし、異なっていてもよい。時刻t8で入力するパスコードが、時刻t2で入力したパスコードとは異なる場合、時刻t8で入力するパスコードが有効となり、時刻t2で入力したパスコードは無効となる。
【0045】
スタートボタンが時刻t9で操作されると、ロータの第2回目の回転が開始される。ストップボタンが時刻t10で操作されてロータが第2回目の停止となっている。オープンボタンが時刻t11で操作され、パスコードが時刻t12で入力されると、ドアロック機構がアンロック状態になる。
【0046】
さらに、ユーザがドアを開き、かつ、ドアが時刻t13で閉じられると、ドアロック機構はロック状態になる。パスコードが時刻t14で入力される。時刻t14で入力するパスコードは、時刻t8で入力したパスコードと同じでもよいし、異なっていてもよい。時刻t14で入力するパスコードが、時刻t8で入力したパスコードとは異なる場合、時刻t14で入力するパスコードが有効となり、時刻t8で入力したパスコードは無効となる。
【0047】
スタートボタンが時刻t15で操作されると、ロータの第3回目の回転が開始される。ストップボタンが時刻t16で操作されてロータが第3回目の停止となっている。オープンボタンが時刻t17で操作され、パスコードが時刻t18で入力されると、ドアロック機構がアンロック状態になる。また、時刻t18以前に入力されたパスコードは、全て無効となる。
【0048】
図11に示す処理工程の例は、ロータ14の回転及び停止をそれぞれ3回ずつ行って遠心分離を完了する。このため、時刻t2から時刻t18の間に入力されたパスワードのうち、最新のパスワードは有効である。
【0049】
さらに、制御部47は、図11の時刻t4で第1回目のストップボタンの操作が行われた場合、または、時刻t10で第2回目のストップボタンの操作が行われた場合でも、図9のステップS11においてNOと判断し、図9に破線で示すルーチンでステップS1に進む。そして、制御部47は、時刻t16で第3回目のストップボタンの操作を検出し、かつ、ロータ14が停止したことを検出すると、図9のステップS11でYESと判断する。
【0050】
図9図10は、ユーザがストップボタン51を操作して、ロータ14の回転速度が低下する例である。また、図11は、制御部47が、設定運転時間が経過すると遠心分離完了と判断し、かつ、ロータ14の回転速度を自動的に低下させる例である。
【0051】
実施形態で説明した事項の意味を説明する。ロータ判別センサ44及び制御部47は、有無検出部の一例であり、回転速度センサ46及び制御部47は、停止検出部の一例である。オープンボタンの操作が、ロック機構をアンロック状態にする操作の一例である。ユーザがステップS7で入力するパスコードが、ロック用パスコードの一例である。ユーザがステップS14で入力するパスコードが、アンロック用パスコードの一例である。制御部47は、第1制御部、第2制御部、第3制御部、第4制御部及び記憶部の一例である。
【0052】
遠心機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、プログラム運転は、ロータの回転及び停止をそれぞれ2回ずつ行って遠心分離を完了する処理工程、ロータの回転及び停止をそれぞれ4回以上ずつ行って遠心分離を完了する処理工程でもよい。
【0053】
ユーザが入力するパスコードは、4桁の数字の他、5桁以上の数字でもよい。パスコードは、数字の他、文字、記号でもよい。また、パスコードは、数字、文字及び記号の少なくとも2種類の組み合わせでもよい。
【0054】
また、パスコードの入力及び解除形式は、ユーザが操作表示部を操作する第1の入力形式の他、非接触式の媒体を用いた第2の入力形式でもよい。第2の入力形式は、遠心機の本体に受信部を設け、受信部が、読み書き可能なICカードを認識するものである。第2の入力形式の場合、パスコードの入力及び解除を行う毎に、ICカード内のパスコード情報を書き換えるとよい。
【0055】
図1に示す遠心機は、本体に制御部及び操作表示部が設けられ、操作表示部と制御部との間で信号の授受が行われる。これに対して、遠心機は、本体とは別に設けた外部機器を有していてもよい。外部機器は、有線または無線により本体の制御部との間で信号の授受が可能である。ユーザは、外部機器を操作して、パスコードの入力、スタートボタンの操作、オープンボタンの操作、ストップボタンの操作等を行う。外部機器は、ユーザが携帯して運搬可能なスマートフォン、タブレットの他、テーブルに設置して使用されるパーソナルコンピュータを含む。
【符号の説明】
【0056】
10…遠心機、12…ドア、14…ロータ、16…ドアロック機構、23…ロータ室、44…ロータ判別センサ、46…回転速度センサ、47…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12