特許第6870120号(P6870120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6870120-入力装置 図000002
  • 特許6870120-入力装置 図000003
  • 特許6870120-入力装置 図000004
  • 特許6870120-入力装置 図000005
  • 特許6870120-入力装置 図000006
  • 特許6870120-入力装置 図000007
  • 特許6870120-入力装置 図000008
  • 特許6870120-入力装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870120
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20210426BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20210426BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G06F3/041 650
   G06F3/041 640
   G06F3/041 430
   B32B9/00 A
   B32B27/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-567944(P2019-567944)
(86)(22)【出願日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2018048208
(87)【国際公開番号】WO2019146372
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2020年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2018-11570(P2018-11570)
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】笹川 英人
(72)【発明者】
【氏名】朝川 隆司
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/033684(WO,A1)
【文献】 特開2017−151575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03
G06F3/041−3/047
B32B9/00
B32B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムセンサと、
凸面を有するカバー部材と、
を備えた入力装置であって、
前記フィルムセンサは、
フィルム状の本体部と、前記本体部の端部から外方に延出する延出部と、を有する支持基材と、
前記本体部の面上に設けられた複数の電極部と、
前記複数の電極部のそれぞれに導通し、前記本体部から前記延出部へと延在する引き出しパターンと、を有し、
前記本体部の前記複数の電極部が位置する側の面が接着層を介して前記凸面に取り付けられ、
前記接着層における前記延出部側に位置する端部接着領域の接着性が、前記接着層における前記凸面の中央部側に位置する中央部接着領域の接着性よりも低く、
前記本体部における前記延出部側に位置する接続領域は、前記本体部の端部に近づくほど前記凸面から離れるように位置する、入力装置。
【請求項2】
前記端部接着領域の単位面積当たりの接着面積は、前記中央部接着領域の単位面積当たりの接着面積よりも小さい、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記接着層における前記端部接着領域は、前記フィルムセンサと前記凸面との離間距離が増えるとともに接着性が低下する接着性漸減領域を有する、請求項1または請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記接着性漸減領域では、前記フィルムセンサと前記凸面との離間距離が増えるとともに前記接着層を構成する接着剤の量が少なくなる、請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記接着性漸減領域では、前記フィルムセンサと前記凸面との離間距離が増えるとともに前記凸面の法線方向から見て、前記フィルムセンサと前記凸面との双方に接触する前記接着層の面積が低下する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項6】
前記接着性漸減領域では、前記凸面の法線方向から見て、前記接着層の端部が非直線部を有する、請求項3に記載の入力装置。
【請求項7】
前記接着層は、前記複数の電極部が設けられる電極領域の全体に付着する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力装置に関し、特に指などが接近した位置を検知するフィルムセンサを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力装置として多く利用されるフィルムセンサは、検知領域に指などが接近(以下、接近には接触を含むものとする。)した位置を検出するセンサを備えている。例えば、相互容量方式のフィルムセンサにおいては、駆動側の電極と出力側の電極とが設けられており、駆動側の電極にドライブパルスを与え、指などの接近による容量変化を出力側の電極で検知している。
【0003】
このような入力装置において、凸面を有するカバー部材にフィルムセンサが貼り付けられたものがある。凸面にフィルムセンサを貼り付ける場合、OCA(Optical Clear Adhesive)などの透明接着層が用いられる。
【0004】
フィルムセンサの貼り付けについて、特許文献1には、立体形状を有する電子機器に合わせて立体的に容易に設置できるタッチセンサが開示される。このタッチセンサでは、PETフィルムの右側電極領域および左側電極領域に切欠きが形成されており、折り曲げの際に電極や信号線へ集中する応力を分散させている。
【0005】
特許文献2には、曲面に貼る貼着具とその貼付方法が開示される。この貼着具は、被貼着体の曲面に貼り付けられる貼着材と、その裏面に付加された粘着剤と、この粘着剤の裏面に付加された離型紙とを有する。貼着具の一端部から他端部へ延びる相対向する2辺には、しわ防止用のスリットが形成されている。
【0006】
特許文献3には、三次曲面を有する被貼着体にフレキシブルプリント基板を貼着する際にしわが生じるのを防止できるフレキシブルプリント基板、フレキシブル基板の貼着方法および電子機器が開示される。このフレキシブルプリント基板では、フレキシブルプリント基板の周縁部、特に貼着時に歪み応力が集中しやすい部位に、略円弧状の切欠部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−035754号公報
【特許文献2】特開平11−230484号公報
【特許文献3】特開2012−119410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルムセンサを曲面に貼り付けた際、フィルムセンサの基材において曲面との接着部分から離れる部分(例えば、基材の延出部)には曲げ応力が集中しやすい。この曲げ応力の集中する位置がセンサの電極や引き出し配線上にかかると、電極や引き出し配線へのクラックの発生および断線の原因となる。特に曲面にフィルムセンサを貼り付ける場合には平面に貼り付ける場合に比べて強固に接着する必要がある。このため、強固な接着力を有する接着層の部分と、接着層が設けられていない部分との境界付近、すなわち基材における接着層の端部近傍では、接着層の端部でのエッジ効果(エッジでの応力集中)によって曲げ半径が小さくなりやすく、特に応力集中が発生しやすい。
【0009】
本発明は、凸面へのフィルムセンサの貼り付けにおいて、接着層の端面のエッジ効果を減少させて電極へのダメージを抑制できる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、フィルムセンサと、凸面を有するカバー部材と、を備えた入力装置である。入力装置において、フィルムセンサは、フィルム状の本体部と、本体部の縁から外方に延出する延出部と、を有する支持基材と、本体部の面上に設けられた複数の電極部と、複数の電極部のそれぞれに導通し、本体部から延出部へと延在する引き出しパターンと、を有する。本体部の複数の電極部が位置する側の面は接着層を介して凸面に取り付けられる。接着層における延出部側に位置する端部接着領域の接着性は、接着層における凸面の中央部側に位置する中央部接着領域の接着性よりも低い。
【0011】
このような構成によれば、接着層における端部接着領域の接着性が中央部接着領域の接着性よりも低いため、支持基材において接着層で接着される部分と接着されない部分との境界での接着力の急峻な変化を抑制することができる。これにより、凸面を有するカバー部材にフィルムセンサを貼り付ける際、湾曲する支持基材の接着層端部でのエッジ効果を減少させることができる。
【0012】
上記入力装置において、端部接着領域の単位面積当たりの接着面積は、中央部接着領域の単位面積当たりの接着面積よりも小さくなっていてもよい。これにより、中央部接着領域から端部接着領域にかけての接着力の急峻な変化が抑制される。
【0013】
上記入力装置において、本体部における延出部側に位置する接続領域は、本体部の端部に近づくほど凸面から離れるように位置してもよい。これにより、本体部における接続領域での曲がりの急激な変化が抑制される。
【0014】
上記入力装置において、接着層における端部接着領域は、フィルムセンサと凸面との離間距離が増えるとともに接着性が低下する接着性漸減領域を有していてもよい。これにより、本体部の延出部側に向けての接着層による接着性が徐々に低下して、接着力の急峻な変化が抑制される。
【0015】
上記入力装置において、接着性漸減領域では、フィルムセンサと凸面との離間距離が増えるとともに接着層を構成する接着剤の量が少なくなるように設けられていてもよい。これにより、本体部の延出部側に向けての接着層による接着性が徐々に低下して、接着力の急峻な変化が抑制される。
【0016】
上記入力装置において、接着性漸減領域では、フィルムセンサと凸面との離間距離が増えるとともに凸面の法線方向から見て、フィルムセンサと凸面との双方に接触する接着層の面積が低下するよう設けられていてもよい。これにより、本体部の延出部側に向けての接着層による接着性が徐々に低下して、接着力の急峻な変化が抑制される。
【0017】
上記入力装置において、接着性漸減領域では、凸面の法線方向から見て、接着層の端部が非直線部を有していてもよい。これにより、接着層の端部が直線になっている場合に比べて支持部材の曲げによる接着層端部での応力集中が緩和される。
【0018】
上記入力装置において、接着層は、複数の電極部が設けられる電極領域の全体に付着するよう設けられていてもよい。これにより、本体部の複数の電極部が設けられた面での強固な貼り付けを行うことができるとともに、上記端部接着領域によって本体部の延出部側に向けての接着力の急峻な変化も抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、凸面へのフィルムセンサの貼り付けにおいて、接着層の端部のエッジ効果を減少させて電極へのダメージを抑制できる入力装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る入力装置の適用例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る入力装置を例示する斜視図である。
図3】電極部および接着層の一部を拡大した模式平面図である。
図4】(a)および(b)は、本実施形態に係る入力装置の模式断面図である。
図5】(a)および(b)は、参考例を例示する模式図である。
図6】(a)および(b)は、他の端部接着領域の例を示す模式図である。
図7】(a)および(b)は、他の端部接着領域の例を示す模式図である。
図8】(a)および(b)は、他の端部接着領域の例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0022】
(入力装置の構成)
図1は、本実施形態に係る入力装置の適用例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る入力装置を例示する斜視図である。
図3は、電極部および接着層の一部を拡大した模式平面図である。
図4(a)および(b)は、本実施形態に係る入力装置の模式断面図である。図4(a)には長さ方向にみた断面図が示され、図4(b)には接続領域の部分拡大断面図が示される。
【0023】
本実施形態に係る入力装置1は指などが検知領域に接近した位置を検出するタッチ式の検知装置である。入力装置1は、フィルムセンサ10と、凸面20aを有するカバー部材20とを備える。入力装置1は、例えば、図1に示すような自動車等の移動体Vにおいて、表示装置100やスイッチ103が設けられるインストルメントパネルPや、フロアコンソールCなどのパネルの裏面側に設けられる。本実施形態では、指などを使った所定の操作を受け付ける部分に入力装置1が設けられる。
【0024】
インストルメントパネルPやフロアコンソールCにはカバー部材20が設けられる。このカバー部材20には、指を接触させるための凹面20bが設けられている。凹面20bは、指の腹を接触させつつなぞりやすいように直線状に設けられていてもよいし、1本または複数本の指を接触させつつ面上になぞりやすいように所定の幅と長さを持った領域に設けられていてもよい。
【0025】
カバー部材20の凹面20bの裏面側(反対側)は凸面20aになっている。凸面20aは、円弧が面状に伸びた形状を有する。本実施形態では、凸面20aにおける円弧の伸びる方向を長さ方向、円弧に沿った方向を幅方向と言うことにする。
【0026】
フィルムセンサ10は、この凸面20aに沿って取り付けられる。フィルムセンサ10は、例えば静電容量式のタッチセンサであり、凹面20bに指などが接近した場合の静電容量の変化を凸面20a側で読み取って位置検出を行う。このように、カバー部材20の凹面20b側が表面となって操作者には見え、カバー部材20の凸面20a側は裏面となって入力装置1は操作者には見えないように配置される。
【0027】
図2に示すように、フィルムセンサ10は、支持基材110と、複数の電極部120と、引き出しパターン121とを有する。支持基材110は、PET(Polyethylene Terephthalate)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(環状オレフィンコポリマー)などの可撓性フィルムによって形成される。支持基材110は、透光性を有していてもよい。
【0028】
図2に示すように、支持基材110は、フィルム状の本体部111と、本体部111の端部111bから外方Eに延在する延出部112とを有する。本体部111はカバー部材20の凸面20aの形状に対応して設けられている。すなわち、本体部111は、凹面20bにおける幅方向および長さ方向に対応して指の接近した位置を検知するための検知領域を構成する大きさとなっている。
【0029】
延出部112は、例えば本体部111の端部111bの一部から所定の長さで延出する部分である。図2に示す例では本体部111の端部111bの中央部分の一部から延出部112が延在している。なお、延出部112は、端部111bの中央部分以外の一部から延出していてもよいし、端部111bの全体から延出していてもよい。
【0030】
複数の電極部120は、本体部111における凸面20a側の面111a(図4参照)に設けられる。本実施形態では、島状に形成された複数の電極部120が面111aに沿って縦横に配置されている。これにより、指などの接近によって生じる静電容量変化を検知して、指などが接近した位置を検知する。なお、電極部120のパターン形状や位置検知方式はこれに限定されない。
【0031】
カバー部材20の裏面側から表示部や光源からの光を表側に透過させる場合、複数の電極部120は透光性導電材料によって形成される。また、複数の電極部120は凸面20aに沿って曲げられるため、透光性導電材料のうち比較的可撓性の高い材料が用いられる。したがって、複数の電極部120としては、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO、ZnOなどの透光導電性酸化物が好適である。
【0032】
引き出しパターン121は、複数の電極部120のそれぞれに導通し、本体部111から延出部112へと引き出されたパターンである。本体部111の面111aに沿って所定範囲に配置される複数の電極部120との導通を得るため、引き出しパターン121は複数の電極部120のそれぞれと導通した状態で面111aに沿って引き出され、延出部112へと寄せ集められる。延出部112の先端には、各引き出しパターン121と導通する図示しないパッドやコネクタが設けられ、外部の機器や回路との接続が行われる。
【0033】
このようなフィルムセンサ10は、本体部111の複数の電極部120が位置する側の面111aにおいて接着層30を介してカバー部材20の凸面20aに取り付けられる。接着層30としては、OCA(Optical Clear Adhesive)など透光性接着剤が用いられる。ただし、透光性を有していなくてもよい場合には、着色された接着剤を用いてもよい。
【0034】
接着層30は、複数の電極部120が設けられる電極領域の全体に付着するよう設けられていることが好ましい。これにより、本体部111の複数の電極部120が設けられた面111aでの強固な貼り付けを行うことができる。
【0035】
図3および図4に示すように、接着層30は、延出部112側に位置する端部接着領域31と、凸面20aの中央部側に位置する中央部接着領域32とを有する。接着層30の面積にもよるが、端部接着領域31は、電極部120における延出部112側の最も端から所定幅領域を接着する領域である。端部接着領域31は、電極部120の端に接続された引き出しパターン121の一部にかかる場合もある。一方、中央部接着領域32は、端部接着領域31よりも中央部寄り(延出部112とは反対側)に位置する所定幅領域を接着する領域である。端部接着領域31以外の接着領域を中央部接着領域32としてもよい。
【0036】
本実施形態に係る入力装置1では、この端部接着領域31の接着性が、中央部接着領域32の接着性よりも低く設定されている。これにより、支持基材110において接着層30で凸面20aに接着される部分と接着されない部分との境界での接着力の急峻な変化が抑制される。したがって、凸面20aを有するカバー部材20にフィルムセンサ10を貼り付ける際、湾曲する支持基材110の接着層30の端部30aでのエッジ効果(エッジでの応力集中)を減少させることができる。
【0037】
図3に示すように、端部接着領域31には接着性漸減領域31aが設けられていてもよい。接着性漸減領域31aは、フィルムセンサ10と凸面20aとの離間距離が増えるとともに接着性が低下する領域である。この接着性漸減領域31aによって、本体部111の延出部112側に向けての接着層30による接着性が外方Eに向けて徐々に低下し、接着力の急峻な変化が抑制される。
【0038】
図3に示す例では、接着層30の端部30aが直線状ではなく凹凸形状となっている。端部30aの凹凸形状として、凸部分が外方Eに半円状に突出している。この凸部分が所定の間隔で複数設けられる。隣り合う凸部分の間は凹部分であり、凹部分の底は直線状となっている。接着層30の端部30aがこのような形状になっていることで、外方Eに向けて単位面積当たりの接着材料の量が徐々に低下し、接着力を漸減させることができる。
【0039】
図4(a)に示すように、凸面20aに接着層30を介してフィルムセンサ10が貼り付けられる際、支持基材110の本体部111は凸面20aに沿って湾曲する。本体部111の湾曲に伴い、本体部111における複数の電極部120が形成される面111aは凸面20aに沿って凹型に湾曲することになる。一方、支持基材110において接着層30によって接着されていない部分(延出部112や本体部111の端部111b)は、凸面20a側に引っ張られることはない。支持基材110における接着層30によって接着されていない部分は延出部112の取り回し方向に従い湾曲可能となる。
【0040】
本実施形態に係る入力装置1のように、端部接着領域31の接着性が、中央部接着領域32の接着性よりも低く設定されていることで、支持基材110における接着層30で接着されていない部分が湾曲する際、接着層30の端部30aでの急激な折れ曲がりが抑制される。
【0041】
例えば、図4(b)の拡大断面図に示すように、支持基材110は本体部111と延出部112とを有し、本体部111の端部111bから延出部112が外方Eに延出している。この本体部111と凸面20aとの間には接着層30が介在している。そして、本体部111における延出部112側に位置する接続領域111cは、本体部111の端部111bに近づくほど凸面20aから離間するように設けられる。すなわち、端部接着領域31の接着性が中央部接着領域32の接着性よりも低いことで、本体部111の面111aと凸面20aとの間隔dは、外方Eに向かうほど(端部111bに近づくほど)広くなる。
【0042】
間隔dが外方Eへ向かうほど広くなることで、接続領域111cから延出部112にかけての支持基材110の急峻な折れ曲がりが抑制され、この部分での折れ曲がりによる応力集中が緩和される。これにより、この位置に設けられる電極部120や引き出しパターン121の急激な折れ曲がりが抑制され、電極部120や引き出しパターン121の折れ曲がりによるクラック発生や断線が防止される。
【0043】
図5は、参考例を例示する模式図である。図5(a)には電極部120および接着層30の部分拡大平面図が示され、図5(b)にはカバー部材20の長さ方向に見た入力装置2の断面図が示される。
参考例にかかる入力装置2の接着層30においては、延出部112側の端部30aが長さ方向に直線状に設けられている。
【0044】
この場合、支持基材110は接着層30によって均一な接着力で凸面20aに貼り付けられる。したがって、支持基材110において凸面20aに貼り付けられている領域は強固かつ均一な接着力で凸面20aに沿って取り付けられる。一方、支持基材110において接着層30の端部30aから延出部112側の部分(接着されていない部分)では接着力が全く働かないため、端部30aを境界として接着力の急激な変化が生じる。
【0045】
本体部111に対して延出部112を湾曲させる場合、接着層30の直線的な端部30aを支点して支持基材110が曲げられることになる。この際、支持基材110は、凸面20aに沿って湾曲して貼り付けられた部分と、接着層30がない部分との境界(接着層30の端部30a)で急激に折れ曲がりやすくなる。支持基材110が急激に折れ曲がることで、電極部120や引き出しパターン121の折れ曲がり部分に応力が集中し(エッジ効果)、クラック発生や断線が生じやすくなる。
【0046】
本実施形態では、端部接着領域31の接着性が中央部接着領域32の接着性よりも低いことで、接着層30の端部30aでの急激な接着力の変化が発生せず、参考例に比べて緩やかに支持基材110が曲がるようになる。このため、電極部120や引き出しパターン121の折れ曲がりによるクラック発生や断線が効果的に防止される。
【0047】
(他の端部接着領域の例)
図6(a)から図8(b)は、他の端部接着領域の例を示す模式図である。
図6(a)に示す接着層30の端部接着領域31では、端部30aが波形の凹凸形状に設けられている。端部30aの凹凸形状としては、滑らかな曲線で凸部分および凹部分が連続する形状となっている。接着層30の端部30aがこのような形状になっていることで、外方Eに向けて単位面積当たりの接着面積が徐々に低下し、接着力を漸減させる接着性漸減領域31aを構成することができる。
【0048】
図6(b)に示す接着層30の端部接着領域31では、端部30aの凹凸形状として、滑らかな曲線となる凸部分と、直線的な凸部分とが繰り返される形状となっている。このような形状であっても外方Eに接着力が徐々に低下する接着性漸減領域31aが構成される。この例では、接着性漸減領域31aの接着力を、直線的な凸部分の長さで調整することができる。
【0049】
図7(a)に示す接着層30の端部接着領域31では、凸面20aの法線方向に見て端部30aが大きな曲線形状(非直線形状)に設けられている。すなわち、端部30aが大きな曲線形状(非直線形状)になっていることで、端部接着領域31に接着性漸減領域31aが構成される。
【0050】
図7(b)に示す接着層30の端部接着領域31では、端部30aが矩形状の凹凸形状に設けられている。端部30aが矩形状の凹凸形状になっていることで凹部での接着力が発生せず、端部接着領域31の接着力を、中央部接着領域32の接着力よりも低下させることができる。この例では、端部接着領域31の接着力を、端部30aの凹凸形状の大きさやピッチで調整することができる。
【0051】
図8(a)に示す接着層30の端部接着領域31では、長さ方向にドット状の接着領域311が設けられている。図示する例ではドット状の接着領域311の形状が円形であるが、円形以外の形状であってもよい。このようなドット状の接着領域311によって、端部接着領域31では、中央部接着領域32に比べて単位面積当たりの接着材料の量が少なくなり、端部接着領域31の接着力を、中央部接着領域32の接着力よりも低下させることができる。この例では、接着性漸減領域31aの接着力を、ドット状の接着領域311の大きさやピッチによって調整することができる。
【0052】
図8(b)に示す接着層30の端部接着領域31では、中央部接着領域32の接着力に比べて端部接着領域31の接着力が低下した接着材料を用いている。なお、端部接着領域31の接着材料および中央部接着領域32の接着材料が互いに同じであっても、端部接着領域31のみ接着力を低下させる処理(例えば、電子線照射)を施してもよい。
【0053】
このように、接着層30の端部接着領域31の接着力を、中央部接着領域32の接着力よりも低下させることで、接着層30の端部30aでの急激な接着力の変化(エッジ効果)が抑制され、端部接着領域31での支持基材110の曲がりを緩やかにして、電極部120や引き出しパターン121の折れ曲がりによる応力集中を緩和し、クラック発生や断線を防止することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、カバー部材20の凸面20aへのフィルムセンサ10の貼り付けにおいて、接着層30の端部30aのエッジ効果を減少させて、支持基材110の曲げによる電極部120や引き出しパターン121のクラックや断線といったダメージを抑制できる入力装置1を提供することが可能になる。また、端部30aの形状を非直線にするだけで端部接着領域31を構成でき、複雑な製造工程を経ることなくエッジ効果を減少させることが可能となる。
【0055】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1,2…入力装置
10…フィルムセンサ
20…カバー部材
20a…凸面
20b…凹面
30…接着層
30a…端部
31…端部接着領域
31a…接着性漸減領域
32…中央部接着領域
100…表示装置
103…スイッチ
110…支持基材
111…本体部
111a…面
111b…端部
111c…接続領域
112…延出部
120…電極部
121…引き出しパターン
311…接着領域
C…フロアコンソール
d…間隔
E…外方
P…インストルメントパネル
V…移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8