(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状の基材の表面側に表層面部材が被覆配設され、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を前記基材の端縁部に嵌め合せることにより、前記表層面部材が前記基材に一体化される表層付き部品の製造装置であって、
前記表層面部材を前記基材に重ね合わせた状態で載置する製造品載置台と、
前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を、前記基材の端縁部から離反して開放された位置状態から前記基材の端縁部に嵌め合せる方向に押動する嵌合押動装置と、を備え、
前記嵌合押動装置は、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を押動する押動部位を備えており、前記押動部位は押動方向前面に弾性材質の部材が設置されており、当該押動部位は前記巻き込み形成部に押し当てて掃くように押動する構成となっている、表層付き部品の製造装置。
【背景技術】
【0002】
表層付き部品として、例えば、自動車等車両の内装部品がある。自動車等車両の内装部品は、板状の基材の表面側に表層面部材を被覆配設して形成される。そして、自動車等車両の内装部品としては、自動車の室内に装備されるアームレストがある。アームレストを形成する板状の基材の断面形状は、表層面部材側に凸形状として形成されており、通常PP樹脂で剛性体として形成されている。表層面部材は基材の表面側に基材の表面形状に沿って配設される。表層面部材は、通常、伸縮可能なオレフィン系エラストマーで形成されており、基材の表面側に被覆する形状の形態として形成されている。
【0003】
図9は基材12と表層面部材20とを分解して示す斜視図である。
図10は基材12に表層面部材20が被覆されて一体化された状態を示す。
図10に示すように、表層面部材20の基材12への被覆の一体化は、基材12の端縁部16を包むように、表層面部材20の端縁部22には巻き込み形成部24が形成されており、この巻き込み形成部24を基材12の端縁部16に嵌め込むことにより行われている。
【0004】
なお、
図10の左側に示す、表層面部材20の巻き込み形成部24が配設される位置には、基材12の端縁部16に鉤爪18が設置されており、これに対応して表層面部材20の巻き込み形成部24には係合孔26が形成されている。そして、表層面部材20の係合孔26が鉤爪18に引っ掛けられて係止されることにより、基材12と表層面部材20との位置決めが確実に行われる。
【0005】
ところで、上述した基材12の端縁部16への表層面部材20の巻き込み形成部24の嵌め込み作業は、従来は手作業により行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、基材12の端縁部16への表層面部材20の巻き込み形成部24の嵌め込み作業を手作業で行う場合には、作業者の力作業となるため、作業工数を要し、生産性が悪い。また、量産品としての品質にばらつきが生じ易い。
【0008】
特に、巻き込み形成部24に形成された係合孔26に、鉤爪18を引っ掛けて係止する作業を手作業で行う場合には、引っ掛け作業の作業強度が強く、作業者の手や指への負担が高くなり、作業工数がより多くなるという問題がある。
【0009】
而して、本発明は上述した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、基材の端縁部への表層面部材の巻き込み形成部の嵌め込み作業を機械化して行うことにより、表層付き部品の製造における生産性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る表層付き部品の製造装置及びその製造方法は、次の手段をとる。
【0011】
本発明の第1の発明は、板状の基材の表面側に表層面部材が被覆配設され、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を前記基材の端縁部に嵌め合せることにより、前記表層面部材が前記基材に一体化される表層付き部品の製造装置であって、前記表層面部材を前記基材の下部に重ね合わせた状態で載置する製造品載置台と、
前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を、前記基材の端縁部から離反して開放された位置状態から前記基材の端縁部に嵌め合せる方向に押動する嵌合押動装置と、を備えた表層付き部品の製造装置である。
【0012】
本発明の第2の発明は、上述した第1の発明の表層付き部品の製造装置であって、前記嵌合押動装置は、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を押動する押動部位を備えており、当該押動部位のベース部材は剛体であり、当該剛体のベース部材の押動方向前面に弾性材質の部材が設置されている、表層付き部品の製造装置である。
【0013】
本発明の第3の発明は、上述した第2の発明の表層付き部品の製造装置であって、前記剛体のベース部材の押動方向前面に設置される弾性材質の部材は、前記ベース部材の端部より延出して設置されている、表層付き部品の製造装置である。
【0014】
本発明の第4の発明は、上述した第2の発明又は第3の発明の表層付き部品の製造装置であって、前記嵌合押動装置における前記押動部位の作動方向は、前記表層面部材の端縁部に形成される巻き込み形成部が嵌め合わされる前記基材の端縁部の面方向とされている、表層付き部品の製造装置である。
【0015】
本発明の第5の発明は、上述した第1の発明〜第4の発明におけるいずれかの表層付き部品の製造装置を用いて、表層付き部品を製造する製造方法であって、前記製造品載置台に、前記表層面部材を前記基材の下部に重ね合わせた状態で、且つ、前記基材の端縁部に対して、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を、前記基材の端縁部から離反して開放された位置状態で載置する第1工程と、前記嵌合押動装置を作動させて、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部を前記基材の端縁部に嵌め込んで、前記表層面部材を前記基材に一体化する第2工程と、を備える表層付き部品の製造方法である。
【0016】
本発明の第6の発明は、上述した第5の発明の表層付き部品の製造方法であって、前記基材の端縁部には鉤爪が設置されており、前記表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部には当該鉤爪と係合する係合孔が設けられており、前記表層面部材の巻き込み形成部が前記基材の端縁部に嵌め込まれた際に前記係合孔が前記鉤爪に係合する、表層付き部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明の手段によれば、基材の端縁部への表層面部材の巻き込み形成部の嵌め込み作業を機械化して行うことにより、表層付き部品の製造における生産性の向上を図ることができる。また、量産品における品質のばらつきをなくして、安定した品質とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる表層付き部品の製造装置及び製造方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態における表層付き部品は、自動車のアームレストの場合である。したがって、本実施形態ではアームレストを製造する製造装置及び製造方法について説明する。なお、各図の説明における上下、左右等の方向は、各図における方向を示す。但し、個別に特に示した場合は、当該表示による。
【0020】
先ず、本実施形態の製造装置及び製造方法が対象とするアームレスト10について説明する。本実施形態のアームレスト10の完成品形状は、従来の構成として示した
図10に示される構造と同じであるので、再度、
図9及び
図10によりアームレスト10の詳細構成を説明する。
【0021】
(アームレスト10の構成)
図9はアームレスト10の一端部の構成を分解して示す斜視図である。
図9に示すように、アームレスト10は基材12と表層面部材20とから構成される。基材12はアームレスト10の基本形態を形成するものであり、通常、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)で板状の剛性体として形成される。表層面部材20は基材12の表面側14に配設されて、基材12を被覆して配設される。表層面部材20は、通常、オレフィン系エラストマーで形成されており、材質の特性として多少の伸縮が可能とされている。そして、基材12に被覆される構成上、基材12の所定の形状に対応した所定の形状に形成される。
【0022】
(巻き込み形成部24)
図10に示すように、本実施形態のアームレスト10の形状は、基材12の表面側14に凸形状とされた形状とされている。そして、凸形状とされた基材12の表面側14に表層面部材20が被覆されている。この表層面部材20の端縁部22には、基材12の端縁部16を巻き込むように形成される巻き込み形成部24が形成されて、基材12の端縁部16に嵌め込まれている。表層面部材20の両端縁部22の巻き込み形成部24が、基材12の両端縁部16に巻き込まれた状態として嵌め込まれることにより、表層面部材20は基材12の表面側14に被覆される。
【0023】
(鉤爪18と係合孔26)
なお、本実施形態の場合、
図10の右側の巻き込み形成部24に示されるように、基材12の端縁部16には鉤爪18が設置されており、表層面部材20の巻き込み形成部24には係合孔26が形成されている。そして、巻き込み形成部24に形成される係合孔26が鉤爪18に引っ掛けられて係合することにより、表層面部材20が基材12に確実に取付けられる。
【0024】
図2及び
図3は鉤片18Aによる係合孔26への係合構成の拡大図を示す。本実施形態の場合は、鉤爪18の鉤片18Aは、巻き込み形成部24が基材12の端縁部16に嵌め込まれる方向に向いて形成されている。すなわち、
図3で見て、左右方向に形成されて配置されている。これにより、巻き込み形成部24の係合孔26が鉤片18Aを越えないと係合することができない。したがって、係合した場合には確実に係止することができる。
【0025】
図4は鉤爪18における鉤片18Aの配置形態の変形例を示す。この変形例は、鉤片18Aの形成方向を巻き込み形成部24の嵌め込み方向に対して直角方向としたものである。この構成は巻き込み形成部24の嵌め込み移動量を、
図4の図示状態以上に取ることができない場合に採用される構成である。このように巻き込み形成部24の嵌め込み移動量が制限される場合には、巻き込み形成部24を横方向(
図4で見て左右方向)にずらして嵌め込むようにしたものである。
【0026】
なお、表層面部材20の端縁部22に形成される巻き込み形成部24の、基材12の端縁部16への巻き込み深さは、鉤爪18が設置される位置の巻き込み深さは、鉤爪18が設置されない位置の巻き込み深さより短く形成されている。これにより、鉤爪18と係合孔26の設置を容易としている。
【0027】
<製造装置30>
次に、
図1に基づいて、本実施形態の製造装置30について説明する。
図1は製造装置30の基本形態の概略構成を模式的に示す。製造装置30は、製造品載置台32、嵌合押動装置34、クランプ装置36を備える。製造品載置台32は製造品のアームレスト10を載置する。クランプ装置36は製造品のアームレスト10を製造品載置台32に固定する。嵌合押動装置34はアームレスト10の基材12に表層面部材20の巻き込み形成部24を被覆作動する。
【0028】
(製造品載置台32)
製造品載置台32は、製造装置30のベース体38上に設置される。製造品載置台32の載置面40の表面形状は、アームレスト10の凸形状の外形形状を載置する凹形状に形成されている。この製造品載置台32の載置面40は、樹脂の剛性体で形成されている。そして、この製造品載置台32の載置面40には、表層面部材20を基材12の下部に重ね合わされた状態で載置される。なお、この状態では、
図1の右側に示される巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16から離反して開放された状態となっている。すなわち、
図1で右側に図示された巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16に嵌め込まれない状態で載置されている。
【0029】
なお、
図1における左側に図示された巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16に嵌め込まれた状態で載置されている。この状態とするための作業は、基材12と表層面部材20とを製造品載置台32に載置する際に、ロボット等の機械装置により行うことができる。また、左側の巻き込み形成部24には、右側の巻き込み形成部24のように、鉤爪18が設置されていないので、右側の巻き込み形成部24が開放された状態では、巻き込み形成部24の端縁部16への嵌め込み作業は容易であることから、手作業で行うこともできる。
【0030】
(クランプ装置36)
図8はクランプ装置36の具体的構成を示す。クランプ装置36は、製造品載置台32の載置面40に重ね合わされて載置された基材12と表層面部材20とを、載置面40に固定するものである。そのため、クランプ装置36の作動機構の先端部にはクランプ部46を備えており、このクランプ部46で
図1に示すように基材12を裏面側から製造品載置台32の載置面40方向に固定する。なお、クランプ装置36は、不図示の動力作動シリンダで作動する機構となっている。
【0031】
(嵌合押動装置34)
次に、嵌合押動装置34について説明する。
図1に示すように、嵌合押動装置34は、表層面部材20の巻き込み形成部24を基材12の端縁部16に嵌め込むための装置である。本実施形態では、
図1で見て、右側の巻き込み形成部24を嵌め込む装置として配置されている。
【0032】
図1では、嵌合押動装置34は概略構成として、押動部位54の作動構成のみが図示されている。嵌合押動装置34は表層面部材20の端縁部22に形成された巻き込み形成部24を押動する押動部位54を備えている。押動部位54は作動部材56によりX矢印方向に作動するように配設されており、実線で示す位置から2点鎖線で示す位置方向に作動する。この作動方向は、表層面部材20の端縁部22に形成される巻き込み形成部24が嵌め合わされる基材12の端縁部16の面方向とされている。
【0033】
押動部位54のベース部材58は剛体であり、このベース部材58の押動方向前面に弾性材質の部材60が設置されている。弾性材質の部材60は例えばゴムである。そして、この弾性材質の部材60は、剛体のベース部材58の下端部より延出して設置されている。すなわち、押動部位54の下端部においては、弾性材質の部材60のみで、巻き込み形成部24の表皮に押し当てて全面に沿うように、すなわち、掃くように押動する構成となっている。
【0034】
嵌合押動装置34は、作動部材56をX方向に作動させることにより、押動部位54が、表層面部材20の巻き込み形成部24を、
図1に示す実線状態から2点鎖線状態に移動する。この移動の過程において、巻き込み形成部24に形成された係合孔26が、基材12の端縁部16に設置された鉤爪18に引っ掛けられて係止し、表層面部材20の巻き込み形成部24が基材12の端縁部16に嵌め込まれる。
【0035】
上記における押動部位54の移動における、巻き込み形成部24の基材12の端縁部16への嵌め込み操作は、基本的には剛体のベース部材58により行われる。そして、補助的に、ベース部材58から下方に延出して配設された弾性材質の部材60が、表層面部材20の表面を掃くように移動することにより行われる。この弾性材質の部材60による掃くような移動操作により、表層面部材20の表面と密着してより確実に鉤爪18に係止可能であり、表層面部材20を傷つけることなく嵌め込み操作することができる。
【0036】
図5及び
図6は嵌合押動装置34の押動部位54個所の具体的構成を示す。
図5は当該箇所を押動方向の後方側から見た斜視図であり、
図6は当該箇所を押動方向の前方側から見た斜視図である。なお、嵌合押動装置34は、図示された押動部位54が不図示の2個のエアーシリンダにより作動される機構として構成されている。
【0037】
図7は、
図5及び
図6に示す嵌合押動装置34に備えられる押動部位54を拡大して示す。押動部位54は連結部材68を介して
図1に示す作動部材56に相当する作動本体構成に設置される。連結部材68と作動部材56に相当する作動本体構成とはボルト70により連結され、連結部材68と押動部位54のベース部材58とはボルト72により連結される。ベース部材58の作動方向前面には弾性材質の部材60が設置されており、この弾性材質の部材60はベース部材58の下端から延出して配設されている。
【0038】
図7に仮想線(2点鎖線)で示すように、押動部位54が表層面部材20の巻き込み形成部24を押す時は、ベース部材58が弾性材質の部材60を介して押す。そのため、巻き込み形成部24は、ベース部材58より下方に延出した弾性材質の部材60により、掃くようにして押される。すなわち、柔らかく押すことになるので、巻き込み形成部24に傷が付きにくい。また、押す際の作動音も小さく、作業音の軽減を図ることもできる。
【0039】
<製造方法>
次に、上記製造装置30を用いた本実施形態の製造方法を説明する。
【0040】
(予備工程)
先ず、予め、基材12と、表層面部材20を所定形状に製作する。製造装置でも説明したように、基材12はポリプロピレン樹脂(PP樹脂)の剛性体で形成される。表層面部材20はオレフィン系エラストマ―で形成され、材質の特性として多少の伸縮が可能とされている。
【0041】
(第1工程)
次に、第1工程について説明する。予備工程で製作した所定形状の基材12と表層面部材20を、
図1に示すように、製造装置30における製造品載置台32の載置面40上に重ね合わせた状態で載置する。載置面40への重ね合わせ配置は、先ず、載置面40上に表層面部材20が載置され、その上に基材12が載置される。製造品載置台32に重ね合わされて載置された表層面部材20と基材12は、クランプ装置36のクランプ部46で押されて位置固定される。
【0042】
なお、この第1工程では、
図1の右側に示される巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16から離反して開放された状態とされている。すなわち、
図1で右側に図示された巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16に嵌め込まれない状態で載置されている。
【0043】
なお、本実施形態の第1工程では、
図1における左側に図示される巻き込み形成部24は、予め、基材12の端縁部16に嵌め込まれた状態として載置されている。この状態にするための作業は、製造装置30のところで説明したように、ロボット等の機械装置により行うか、又は、手作業により行われる。
【0044】
(第2工程)
次に、第2工程について説明する。第2工程は
図1に示す右側の巻き込み形成部24を嵌合押動装置34により基材12に嵌め込む工程である。この第2工程を
図1により説明すると、嵌合押動装置34を作動させて、
図1で右側に図示された巻き込み形成部24を基材12の端縁部16に嵌め込んで、表層面部材20を基材12に一体化する。
【0045】
嵌合押動装置34による巻き込み形成部24の嵌め込み作動は、押動部位54の押動操作により行われる。この押動操作は、押動部位54のベース部材58の下端部より延出して設置されている弾性材質の部材60により、巻き込み形成部24の表面を掃くようにして行われる。これによりスムースな嵌め込み操作が行われる。
【0046】
なお、
図1の右側の巻き込み形成部24は、鉤爪18と係合孔26の係合により係止される構成となっている。したがって、上記における押動部位54により、巻き込み形成部24の表面を掃くようにして行われる際、巻き込み形成部24の係合孔26が鉤爪18の鉤片18Aに係合して係止される。この鉤片18Aへの係止は、
図1で見て左方向に突設して形成された鉤片18Aに対して、巻き込み形成部24はその材質の弾性作用により右方向の戻し作用が働くことから、その係合が外れにくい係止となっている。したがって、巻き込み形成部24は基材12から外れることなく係止される。
【0047】
また、本実施形態では、嵌合押動装置34における押動部位54の作動方向は、表層面部材20の端縁部22に形成される巻き込み形成部24が嵌め合わされる基材12の端縁部16の面方向となっている。これにより、押動部位54による巻き込み形成部24の押動操作をよりスムースに行うことができる。
【0048】
<後工程>
上記の各工程により製作された製造品としてのアームレスト10は、クランプ装置36のクランプ部46による固定を外して、アームレスト10をロボット装置等により製造装置30から取り出す。これにより、製造工程が終了する。
【0049】
<本実施形態の作用効果>
上述した本実施形態のアームレスト10の製造装置及び製造方法によれば、表層面部材20の巻き込み形成部24は、基材12の端縁部16に機械的に嵌め込まれる。したがって、手作業で嵌め込む場合に比較して、生産性を向上させることができる。なお、製造品が量産品の場合には、品質のばらつきを安定化させることができる。
【0050】
なお、表層面部材20の巻き込み形成部24を基材12の端縁部16に嵌め込む場合に、基材12に形成した鉤爪18を巻き込み形成部24に形成した係合孔26に係止する構成の場合には、確実に表層面部材20を基材12に一体化することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、その他各種の形態でも実施できる。
【0052】
例えば、上記実施形態の表層付き部品は、自動車のアームレストであった。本発明は、基材に表層面部材を取付けるに当たって、表層面部材に形成した巻き込み形成部を基材の端縁部に嵌め合わせる構成をとる表層付き部品には広く適用することができる。例えば、家具(イスの肘掛け)や化粧箱の外装として適用することができる。
【0053】
また、上記実施形態のアームレスト10の形状は、基材12の表面側14に凸形状とされた形状であったが、表層付き部品の形状は、逆の形状であってもよい。すなわち、基材12の表面側14に凹形状とされた形状であってもよい。また、アームレスト10以外の表層付き部品にあっては、その断面L字状の形状であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、表層面部材20に形成した巻き込み形成部24に係合孔26を設け、この係合孔26を基材12の端縁部16に設置した鉤爪18に引っ掛ける構成であった。しかし、鉤爪18と係合孔26を形成しなく、単に、表層面部材20の巻き込み形成部24を基材12の端縁部22に嵌め込む構成であってもよい。すなわち、
図1の左側に示す巻き込み形成部24を基材12の端縁部22に嵌め込みを、嵌合押動装置34により機械的に行ってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、基材12の材質はポリプロピレン樹脂(PP樹脂)として示したが、PP樹脂以外にも、表層面部材20よりも剛性の高い各種の熱熱可塑性樹脂や鋼板のプレス品でもよい。
【0056】
また、表層面部材20としては、軟質ポリ塩化ビニルやスチレン系、オレフィン系、ポリエステル系等の各種の熱可塑性樹脂だけでなく、伸縮性のある織布や不織布、編布、合成皮革、皮革、軟質フィルムなど、種々の表皮材料を採用できる。
【0057】
また、弾性材質の部材60としては、例示としてゴムを示したが、エラストマー、ステンレスなどの金属製薄板等でもよい。
【0058】
<「課題を解決するための手段」に記載した各発明の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0059】
先ず、第1の発明に係る表層付き部品の製造装置によれば、製造品載置台に表層面部材を基材の下部に重ね合わせた状態で載置して、この載置状態では表層面部材の端縁部に形成された巻き込み形成部が、基材の端縁部から離反して開放された位置状態にあるのを、嵌合押動装置により巻き込み形成部を基材の端縁部に嵌め合せる方向に押動して嵌め合わせる。このように巻き込み形成部基材の端縁部への嵌め合わせが機械的に行われるので、表層付き部品の製造における生産性の向上を図ることができる。また、量産品においては、品質の安定化を図ることができる。
【0060】
次に、第2の発明によれば、嵌合押動装置は、巻き込み形成部を押動する押動部位を備えており、当該押動部位のベース部材は剛体であり、当該剛体のベース部材の押動方向前面に弾性材質の部材が設置されている。これにより、嵌合押動装置により表層面部材の巻き込み形成部が基材の端縁部に嵌め込み作用が行われる際、弾性材質の部材と接触した状態で行われるので、表層面部材の損傷の防止ないし抑制を図ることができる。
【0061】
次に、第3の発明によれば、剛体のベース部材の押動方向前面に設置される弾性材質の部材は、ベース部材の下端部より延出して設置される。これにより、延出して設置された部位の弾性材質の部材により、表層面部材の巻き込み形成部を掃くように押しながら基材の端縁部に嵌め込む作用をなす。このためスムースな嵌め込み作用としてすることができる。
【0062】
次に、第4の発明によれば、嵌合押動装置における押動部位の作動方向は、巻き込み形成部が嵌め合わされる基材の端縁部の面方向とされている。これにより、基材の端縁部への表層面部材の巻き込み形成部の嵌め込み作用を効率よく行うことができる。
【0063】
次に、第5の発明の表層付き部品を製造する製造方法によれば、上述した第1の発明〜第4の発明の製造装置を用いて製造されるので、上述した第1の発明〜第4の発明の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
次に、第6の発明によれば、基材の端縁部には鉤爪が設置され、表層面部材の巻き込み形成部には当該鉤爪と係合する係合孔が設けられている。この鉤爪と係合孔の係合により、基材と表層面部材との位置決めが確実に行われる。
【解決手段】板状の基材12の表面側14に表層面部材20が被覆配設され、表層面部材20の端縁部22に形成された巻き込み形成部24を基材12の端縁部22に嵌め合せることにより、表層面部材20が基材12に一体化される表層付き部品の製造装置30であって、
表層面部材20の端縁部22に形成された巻き込み形成部24を、基材12の端縁部16から離反して開放された位置状態から基材12の端縁部16に嵌め合せる方向に押動する嵌合押動装置34と、を備える。