【課題を解決するための手段】
【0009】
レドックス電位は生体内のレドックス反応が平衡状態の時測定可能である。レドックス対の一つである水素ガスと水素イオンの平衡状態は
【0010】
【化2】
【0011】
である。標準水素電極は水素ガスを標準圧力P
0(101.3kPa )で吹き込んだ水素イオン活量1Mol/Lの溶液に浸した白金電極である。この時の標準電極電位E
0=0Vである。ネルンスト(Nernst)の式は電極反応
【0012】
【化3】
【0013】
(OxおよびRedは酸化還元系の酸化体と還元体、e-は電子、a, b, nは分子や電子の数)に対応する平衡電極電位E=E
0+(RT/nF)ln([Ox]
a/[Red]
b)である。すなわち、Nernstの式によるレドックス電位Eは温度が37℃(310K)ではE=0-(0.061/2)×(log[H
2]-2log[H
+])である。水素イオン活量[H
+]はその逆数の対数がpH=-log[H
+]である。水素ガスは標準圧力P
0で吹き込むことが可能であるが、標準圧力未満でもヘンリーの法則から水素ガスは水溶液中に溶存する。したがって、水素ガス活性[H
2]は水素ガス分圧/標準圧力P
0である。そこで、水素ガス活性[H
2]の逆数の対数である水素ガス指数pH
2=-log[H
2]を定義する。水素/水素イオンのレドックス電位EはE=-0.061×pH+0.031×pH
2(V)となる。レドックス電位はpHとpH
2に依存する。その電位変化の比率は0.061V/pHと0.031 V/pH
2である。
【0014】
本発明では終末呼気中の水素ガス分圧を測定し、水素ガス分圧/標準圧力の逆数の対数である水素ガス指数pH
2を器機で表示する。レドックス電位は体温37℃(310K)と生体のpHの正常値7.4、水素ガス指数pH
2を用い、レドックス電位Eを演算式E=-0.451+0.031×pH
2 (V) により計測する。
【0015】
本発明の生体内レドックス電位測定装置は呼気水素ガス分析により生体内レドックス電位を測定する機器であり、結果を電圧として表示するものであり、本発明の生体内レドックス電位測定方法は呼気水素ガス分析により生体内レドックス電位を測定して、結果を電圧として表示するものである。生体内の水素と水素イオンの比を用いて生体内のレドックス電位(V)を測定する。レドックス電位は電子の授受を伴う酸化還元反応の半反応の平衡状態における酸化型と還元型物質(レドックス対)の比率により定義される。そこで、平衡電極電位に関するネルンスト(Nernst)の式を用いて標準水素電極の電位を基準点0Vとして求める。
【0016】
水素ガス分析は大気圧下での終末呼気による肺胞内水素ガス分圧測定を行う装置を含む。水素ガス活量[H
2] は標準水素電極で標準圧力P
0の水素ガスを常時吹き付けた状態が1なので、水素ガス分圧(Pa)/101.3kPa に比例する。水素ガス分析の結果は水素ガス指数pH
2を[H
2]の逆数の対数(pH
2=-log[H
2])と定義し表示する。
【0017】
また、本発明の生体内レドックス電位検証方法は、上記本発明の生体内レドックス電位測定装置及び生体内レドックス電位測定方法で測定された生体内レドックス電位が実際の測定値ではなく、所定の演算式によるものであることから、ある意味で推定値に過ぎないので、この推定値が、実測したら得られたであろう実際の生体内レドックス電位に近似するものであることを検証するものである。
【0018】
本発明によれば、水素ガス指数pH
2は水素ガス分圧(Pa)/101.3kPa の逆数の対数(pH
2=-log[水素ガス分圧/101.3kPa])であると定義するとき、測定対象の人の被検体の水素ガス指数pH
2を測定する手段と、
所定の演算式を記憶している記憶手段と、
前記水素ガス指数を測定する手段で測定された水素ガス指数pH
2を用いて、前記記憶手段に記憶されている前記所定の演算式により、レドックス電位を演算する演算手段と、
前記演算手段により演算された前記レドックス電位を表示する表示手段とを、
有する、生体内レドックス電位測定装置が提供される。
【0019】
上記本発明の生体内レドックス電位測定装置において、前記演算式として、Eをレドックス電位、pH
2を前記水素ガス指数とするとき、E=-0.451+0.031×pH
2 (V)を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0020】
上記本発明の生体内レドックス電位測定装置において、前記演算式として、Eをレドックス電位、pH を前記被検体の水素イオン指数、pH
2を前記水素ガス指数とするとき、E=-0.061×pH+0.031×pH
2(V)を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0021】
上記本発明の生体内レドックス電位測定装置において、前記pHとして、7.3〜7.5の値を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0022】
上記本発明の生体内レドックス電位測定装置において、前記pHとして、7.4の値を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0023】
上記本発明の生体内レドックス電位測定装置において、前記表示手段が前記水素ガス指数を測定する手段で測定された水素ガス指数pH
2を表示するよう構成されていることは、好ましい実施の形態である。
【0024】
本発明によれば、水素ガス指数pH
2は水素ガス分圧(Pa)/101.3kPaの逆数の対数(pH
2=-log[水素ガス分圧/101.3kPa])であると定義するとき、測定対象の人の被検体の水素ガス指数pH
2を測定するステップと、
所定の記憶手段に記憶されている所定の演算式読み出すステップと、
前記水素ガス指数を測定する手段で測定された水素ガス指数pH
2を用いて、前記記憶手段から読み出された前記所定の演算式により、レドックス電位を演算する演算ステップと、
前記演算ステップにより演算された前記レドックス電位を表示する表示ステップとを、
有する、生体内レドックス電位測定方法が提供される。
【0025】
上記本発明の生体内レドックス電位測定方法において、前記演算式として、Eをレドックス電位、pH
2を前記水素ガス指数とするとき、E=-0.451+0.031×pH
2 (V)を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0026】
上記本発明の生体内レドックス電位測定方法において、前記演算式として、Eをレドックス電位、pH を前記被検体の水素イオン指数、pH
2を前記水素ガス指数とするとき、E=-0.061×pH+0.031×pH
2(V)を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0027】
上記本発明の生体内レドックス電位測定方法において、前記pHとして、7.3〜7.5の値を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0028】
上記本発明において、前記pHとして、7.4の値を用いることは、好ましい実施の形態である。
【0029】
上記本発明の生体内レドックス電位測定方法において、前記表示ステップが前記水素ガス指数を測定するステップで測定された水素ガス指数pH
2を表示するよう構成されていることは、好ましい実施の形態である。
【0030】
本発明によれば、水素ガス指数pH
2は水素ガス分圧(Pa)/101.3kPaの逆数の対数(pH
2=-log[水素ガス分圧/101.3kPa])であると定義するとき、測定された水素ガス指数pH
2と所定の演算式により求めた生体内レドックス電位が実際の生体内レドックス電位に近似していることを検証するための生体内レドックス電位検証方法であって、
バブリング装置を構成する容器にリン酸緩衝液を入れる第1ステップと、
前記容器内のリン酸緩衝液のpHと酸化還元電位ORPを測定する第2ステップと、
前記バブリング装置に医療用空気を第1の所定流量で第1の所定時間送気する第3ステップと、
前記所定時間の送気終了後に、前記容器内のリン酸緩衝液のpHと酸化還元電位ORPを再度測定する第4ステップと、
前記医療用空気を送気した後に測定された前記酸化還元電位ORPを、前記医療用空気を送気する前に測定された前記酸化還元電位ORPにより補正する第5ステップと
前記容器内のリン酸緩衝液を排出し、前記容器に新たなリン酸緩衝液を入れる第6ステップと、
前記容器内の前記新たなリン酸緩衝液のpHと酸化還元電位ORPを測定する第7ステップと、
前記バブリング装置に所定濃度の水素を含んだ標準ガスを第2の所定流量で第2の所定時間送気する第8ステップと、
前記第2の所定時間の送気終了後に、前記容器内の前記新たなリン酸緩衝液のpHと酸化還元電位ORPを再度測定する第9ステップと、
前記所定濃度の水素を含んだ標準ガスを送気した後に測定された前記酸化還元電位ORPを、前記所定濃度の水素を含んだ標準ガスを送気する前に測定された前記酸化還元電位ORPにより補正する第10ステップと、
前記2つの補正するステップで得られた補正後の2つの前記酸化還元電位ORPを用いて、前記医療用空気のときは、pH
2が6.2とし、前記所定濃度の水素を含んだ標準ガスのときは、pH
2が4として、pH
2の変化に対する前記酸化還元電位ORPの変化態様を把握する第11ステップとを、
有する生体内レドックス電位検証方法が提供される。
【0031】
上記本発明の生体内レドックス電位検証方法において,前記第1ステップから前記第5ステップを複数回繰り返し、複数回の測定結果の平均値を用い、同様に前記第6ステップから前記第10ステップを複数回繰り返し、複数回の測定結果の平均値を用いることは、好ましい実施の形態である。