(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、樹脂層を構成する樹脂に占めるバイオマス由来の樹脂の割合は最大でも80重量%である(特許文献1[表1]の実施例3参照)が、環境問題により対応するためには、樹脂層を構成する樹脂に占めるバイオマス由来の樹脂の割合を更に高めることが好ましい。
【0008】
また、資源問題により対応するためには、樹脂層の厚みを低減して極薄のフィルムとすることが好ましい。これにより、樹脂層の形成に必要な樹脂量を低減することができる。
【0009】
そこで、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂からなる樹脂組成物を用いて極薄フィルムの製造を検討したところ、当該樹脂組成物は、石油等の化石資源由来の樹脂からなる樹脂組成物とは異なり、溶融薄膜加工が困難であることが判明した。具体的には、バイオマス由来の樹脂からなる樹脂組成物を押出機からTダイを介して溶融押出してフィルムとする際に大きなネックインが発生することが判明した。バイオマス由来の樹脂の溶融時の溶融張力が低いことが原因と思われる。
【0010】
ネックインの発生により、フィルムの幅が減少するので、幅広のフィルムの製造が困難となるだけでなく、フィルム端部の厚みが顕著に増加するので、当該端部をトリミングして除去する必要が生じ、製品歩留まりが低下する。更に、これらの問題に加えて、端部の厚み増大の影響を受けて、端部以外のフィルムの厚みも増大してしまい、極薄のフィルムを製造することができない。
【0011】
また、含まれる樹脂が生分解性樹脂からなる樹脂組成物についても、上記の樹脂組成物と同様に溶融薄膜加工時に大きなネックインが発生し、当該ネックインによる上記の問題が生じることが判明した。
【0012】
一方、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂に化石資源由来の樹脂を比較的多量(例えば、樹脂組成物に含まれる樹脂の5重量%以上)に配合する場合は上記のネックイン並びにこれに付随するフィルム厚増大の問題は生じないので、当該問題は含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されている樹脂組成物を使用する場合に特有である。
【0013】
本発明は、上記の環境問題及び資源問題により対応するために、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されている樹脂組成物からなる極薄の樹脂層を備える、当該樹脂層と紙基材との積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
鋭意検討の結果、本発明者らは、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されている樹脂組成物を使用しても、30μm未満の厚みを有する極薄のフィルムを製造することが可能であり、当該フィルムを紙基材と積層一体化可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明は、
紙基材、並びに、
バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層
を備える積層体であって、
前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であり、且つ、
前記樹脂層の厚みが30μm未満であることを特徴とする。
【0016】
前記樹脂層の厚みが25μm未満であることが好ましい。
【0017】
前記樹脂層の厚みが20μm未満であることがより好ましい。
【0018】
前記バイオマス由来の樹脂は、バイオマス由来の、ポリオレフィン又はポリエステルであってよい。
【0019】
前記ポリオレフィンはポリエチレンであることが好ましい。
【0020】
前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0021】
前記生分解性樹脂はバイオマス由来であることが好ましい。
【0022】
前記生分解性樹脂がポリ乳酸であることが好ましい。
【0023】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂のみからなることが好ましい。
【0024】
前記紙基材の厚みは30μm〜1000μm未満であってよい。
【0025】
前記紙基材及び前記樹脂層は直接一体化されてよい。
【0026】
前記樹脂層は単層であることが好ましい。
【0027】
前記樹脂層は押出コーティング層であることが好ましい。
【0028】
本発明は、上記のいずれかの積層体からなる包装用シート、並びに、当該包装用シートを備える包装体にも関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の積層体は、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されている樹脂組成物を使用しても、30μm未満の厚みを有する極薄の樹脂層を備えることができる。
【0030】
本発明の積層体に含まれる樹脂層中の樹脂はバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されているので、樹脂層が燃焼しても大気中の二酸化炭素量は全体としてほぼ増大せず、及び/又は、環境中で樹脂層は微生物の作用によりほぼ分解する。よって、本発明の積層体は、大気中の二酸化炭素増大による地球温暖化、環境中に残存する樹脂による環境汚染等の環境問題により対応することができる。
【0031】
また、本発明の積層体に含まれる樹脂層は極薄であるために、当該樹脂層を形成するために必要な樹脂量を抑制することができる。よって、本発明の積層体は、資源の有効活用が可能であり、資源問題により対応することができる。
【0032】
更に、本発明の積層体に含まれる紙基材は、もともと、植物に由来する有機物であり、カーボンニュートラルな再生可能な資源である紙に基づくので、環境に負荷を与えない。
【0033】
したがって、本発明の積層体は環境に優しいものであり、同様に、当該積層体からなる本発明の包装用シートも環境に優しいものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[積層体]
本発明は、
紙基材、並びに、
バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層
を備える積層体であって、
前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であり、且つ、
前記樹脂層の厚みが30μm未満である積層体である。
【0036】
本発明の積層体は紙基材の少なくとも一方の表面に前記樹脂層を備える。したがって、本発明の積層体は紙基材の一方の表面にのみ前記樹脂層を備えてもよく、或いは、紙基材の両方の表面に前記樹脂層を備えてもよい。
【0037】
紙基材及び樹脂層を備える本発明の積層体の厚みは特には限定されるものではないが、1000μm未満が好ましく、800μm未満がより好ましく、600μm未満が更により好ましい。また、本発明の積層体の厚みは、30μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上が更により好ましい。したがって、本発明の積層体の厚みは、30μm〜1000μm未満が好ましく、100μm〜800μm未満がより好ましく、200μm〜600μm未満が更により好ましい。
【0038】
{紙基材}
本発明の積層体は、紙基材を備える。紙基材は複数あってもよいが、全体の層厚の抑制のためには紙基材は1つであることが好ましい。
【0039】
紙基材は紙からなる基材であり、シート形状を備えており、その厚みは、1000μm未満が好ましく、800μm未満がより好ましく、600μm未満が更により好ましい。また、紙基材の厚みは、30μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上が更により好ましい。したがって、紙基材の厚みは、30μm〜1000μm未満が好ましく、100μm〜800μm未満がより好ましく、200μm〜600μm未満が更により好ましい。
【0040】
紙基材の原料としては、特に限定されるものではなく、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプが挙げられる。なお、木材パルプにレーヨン繊維、ポリエチレン繊維、コットン繊維等の非セルロース繊維を少量混合してもよい。
【0041】
紙基材の種類も、特に限定されるものではなく、印刷用紙、情報用紙、包装用紙、雑種紙等の様々な種類の紙を使用することができる。
【0042】
また、紙基材の坪量も特に限定されるものではなく、例えば、15〜100g/m
2未満、20〜90g/m
2、あるいは、21〜75g/m
2未満のものを使用することができる。
【0043】
紙基材は後述する樹脂層に対向する。紙基材と樹脂層の間には接着層等の他の層が介在してもよい。しかし、全体の層厚の抑制等のためには、紙基材と樹脂層の間には他の層が介在しない方が好ましい。すなわち、紙基材と樹脂層は直接接触する方が好ましい。
【0044】
{樹脂層}
本発明の積層体は、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える。樹脂層は複数あってもよいが、全体の層厚の抑制、樹脂使用量の抑制等のためには樹脂層は1つであることが好ましい。すなわち、樹脂層は単層であることが好ましい。
【0045】
本発明の積層体における樹脂層の厚みの上限は30μm未満であり、25μm未満が好ましく、20μm未満がより好ましい。なお、樹脂層の厚みの下限は特に限定されるものではないが、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更により好ましい。
【0046】
樹脂層の厚みは均一であることが好ましいが、厚みが不均一である場合は樹脂層の最大厚みが30μm未満であり、25μm未満が好ましく、20μm未満がより好ましい。なお、樹脂層の最小厚みは1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更により好ましい。
【0047】
本発明の積層体に含まれる樹脂層はこのように極薄であるので、当該樹脂層を形成するために必要な樹脂量を抑制することができる。したがって、本発明の積層体は、資源の有効活用が可能であり、資源問題により対応することができる。
【0048】
(樹脂組成物)
本発明の積層体では、前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂である。すなわち、本発明の積層体では、前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超(樹脂の総重量に基づく)が、バイオマス由来の樹脂又は生分解性樹脂、或いは、バイオマス由来の樹脂及び生分解性樹脂の混合物である。
【0049】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂中のバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂の配合割合は96重量%超(樹脂の総重量に基づく。以下、同様)が好ましく、97重量%超がより好ましく、98重量%超が更により好ましく、99重量%超が更により好ましく、100重量%であることが特に好ましい。すなわち、前記樹脂組成物に含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂のみからなることが特に好ましい。このように、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂の配合割合を高めることにより、本発明の積層体における石油由来の樹脂の使用を低減乃至回避することができ、環境問題により対応することができる。
【0050】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂中にバイオマス由来の樹脂又は生分解性樹脂以外のその他の樹脂が含まれる場合、当該その他の樹脂は石油、石炭、天然ガス等の化石資源由来である。ここで化石資源由来の樹脂とは当該樹脂を構成するモノマーが全て化石資源由来であることを意味する。したがって、前記その他の樹脂は当該樹脂を構成するモノマーが全て化石資源由来である。前記樹脂組成物に含まれる樹脂中にバイオマス由来の樹脂又は生分解性樹脂以外のその他の樹脂が含まれる場合、当該その他の樹脂の配合割合は5重量%未満(樹脂の総重量に基づく。以下、同様)であり、4重量%未満が好ましく、3重量%未満がより好ましく、2重量%未満が更により好ましく、1重量%未満が更により好ましい。前記樹脂組成物に含まれる樹脂中にはバイオマス由来の樹脂又は生分解性樹脂以外のその他の樹脂が含まれないことが特に好ましい。
【0051】
(バイオマス由来の樹脂)
前記バイオマス由来の樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種の熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、バイオマス由来の、ポリオレフィン、ポリエステル又はこれらの混合物であってよい。
【0052】
既述のとおり、バイオマスとは、動植物に由来する有機物である資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭(化石資源)を除く)である。特に、植物由来のものが好ましい。前記植物としては、特には限定されるものではないが、例えば、トウモロコシ、サトウキビ等が挙げられる。バイオマスとしては、具体的には、例えば、これらの植物から取り出される糖類が挙げられる。
【0053】
前記バイオマス由来の樹脂の分子量は1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が更により好ましい。
【0054】
ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン等のオレフィンの重合体又は共重合体である(以下、(共)重合体と称することがある)。そして、本発明におけるバイオマス由来のポリオレフィンはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーの(共)重合体である。
【0055】
バイオマス由来のエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。以下、バイオマス由来のエチレンの製造方法の一例を説明する。
【0056】
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造することができる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。
【0057】
バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物より得られる糖類等の炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、または膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0058】
そして、バイオマス由来のエタノールを脱水することにより、エチレンを製造することができる。エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、γ―アルミナ等の従来公知の触媒を用いることができる。
【0059】
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことによりエチレン、水及び少量の未反応エタノールの混合物が得られるが、常温において約5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合物から気液分離により水及びエタノールを除きエチレンを得ることができる。気液分離は公知の方法で行うことができる。
【0060】
本発明におけるバイオマス由来のポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの(共)重合により得ることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のエチレンを用いているため、重合されてなるポリオレフィンはバイオマス由来となる。バイオマス由来のエチレンには、上記のエタノールの脱水反応により得られたものを用いることが好ましい。
【0061】
バイオマス由来のポリオレフィンの原料であるモノマーは、石油等の化石資源由来のエチレン及び/又はプロピレン等のα−オレフィンを少量含んでもよいし、バイオマス由来のα−オレフィンを更に含んでもよい。
【0062】
α−オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、通常、炭素数3〜20のものを用いることができ、ブチレン、ヘキセン、オクテンが好ましい。ブチレン、ヘキセン、オクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが可能となるからである。また、このようなα−オレフィンを含むことで、重合されてなるポリオレフィンはアルキル基を分岐構造として有するため、単純な直鎖状のものよりも柔軟性に富むものとすることができる。
【0063】
バイオマス由来のポリオレフィンはポリエチレンであることが好ましく、バイオマス由来のエチレンを用いて製造されることがより好ましく、バイオマス由来のエチレンのみから製造されることが更により好ましい。バイオマス由来の原料であるエチレンを用いることで、100%バイオマス由来の成分によりポリエチレンを製造することが可能となる。
【0064】
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。
【0065】
バイオマス由来のポリオレフィンは市販されているので、市販のものを使用してもよい。例えば、バイオマス由来のポリエチレンとして、ブラスケム社から販売されているバイオポリエチレンであるSBC818を好適に使用することができる。
【0066】
ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位との重縮合反応により得られる重合体である。そして、本発明におけるバイオマス由来のポリエステルでは、当該ポリエステルを形成するジオール単位及びジカルボン酸単位のいずれか一方又は両方がバイオマス由来のものを含む。したがって、バイオマス由来のポリエステルは、バイオマス由来のジオールを含むジオール単位及び化石資源由来のジカルボン酸を含むジカルボン酸単位から形成されるか、化石資源由来のジオールを含むジオール単位及びバイオマス由来のジカルボン酸を含むジカルボン酸単位から形成されるか、或いは、バイオマス由来のジオールを含むジオール単位及びバイオマス由来のジカルボン酸を含むジカルボン酸単位から形成される。
【0067】
前記ジオール単位としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール等のグリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0068】
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものが好ましい。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、脱水してエチレンとし、エチレンを酸化して得られるエチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により得ることができる。
【0069】
一方、ジカルボン酸単位としてのジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び、それらの誘導体が挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0071】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の、通常炭素数が2以上40以下の鎖状又は脂環式ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の低級アルキルエステル、無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸又はこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸およびコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物がより好ましい。
【0072】
バイオマス由来のジカルボン酸は、バイオマスを原料として製造されたテレフタル酸が好ましい。バイオマス由来のテレフタル酸は、例えば、バイオマスを原料として微生物発酵により得られるバイオイソブタノールを、従来公知の方法により、脱水してイソブテンとし、イソブテンを二量化してパラキシレンに変換し、更に、パラキシレンを酸化してテレフタル酸に誘導する方法等により得ることができる。
【0073】
バイオマス由来のポリエステルは、上記したジオール単位及びジカルボン酸単位を重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジオール単位及びジカルボン酸単位のエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行う工程を含む溶融重合の一般的な方法、或いは、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法等によって製造することができる。
【0074】
バイオマス由来のポリエステルを製造する際に用いるジオール単位の使用量は、ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
【0075】
重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
【0076】
重合触媒としては、一般的に、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも一種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩、β−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更にはこれらの金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びに、それらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融または溶解した状態であると重合速度が高くなるため、重合時に液状であるか、またはエステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
【0077】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなる。使用する触媒量が少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程、生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるため、使用する触媒量を低減させることが好ましい。
【0078】
ジカルボン酸単位及びジオール単位のエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常、150〜260℃の範囲である。反応雰囲気は、通常窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaである。反応時間は、通常、1時間〜10時間である。
【0079】
バイオマス由来のポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。PETは、エチレングリコール及びテレフタル酸の重縮合反応により得ることができる。バイオマス由来のPETはその合成に使用されるエチレングリコール及びテレフタル酸のいずれか一方又は両方がバイオマス由来のものを含む。したがって、バイオマス由来のPETは、バイオマス由来のものを含むエチレングリコール及び化石資源由来のものを含むテレフタル酸から形成されるか、化石資源由来のものを含むエチレングリコール及びバイオマス由来のものを含むテレフタル酸から形成されるか、或いは、バイオマス由来のものを含むエチレングリコール及びバイオマス由来のものを含むテレフタル酸から形成される。
【0080】
100%バイオマス由来の原料から形成可能とするために、バイオマス由来のエチレングリコールのみとバイオマス由来のテレフタル酸のみとからなるPETを使用することがより好ましい。
【0081】
バイオマス由来のポリエステルは市販されているので、市販のものを使用してもよい。例えば、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートとして、FENC社から販売されているバイオポリエチレンテレフタレートであるCB602ABを好適に使用することができる。
【0082】
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂は、自然界において、少なくとも分解の一過程で、生物、特に微生物が関与して低分子化合物に分解される樹脂である。
【0083】
本発明で使用される生分解性樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種の熱可塑性樹脂を使用することができる。前記生分解性樹脂は化石資源由来のものでもよいが、バイオマス由来であることが好ましい。
【0084】
前記生分解性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸等が挙げられる。前記生分解性樹脂としてはポリ乳酸が好ましい。
【0085】
ここでのポリ乳酸は、乳酸が主成分であるモノマー、すなわち、50モル%超、好ましくは60モル%超、より好ましくは70モル%超が乳酸であるモノマーを重合したものである。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、又は、これらの混合物を使用することができる。したがって、ここでのポリ乳酸は、例えば、構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸であるポリDL−乳酸、並びに、これらの混合体を主成分とする重合体である。
【0086】
ポリ乳酸の構成は特に限定されるものではないが、例えば、モル比として、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15或いは0:100〜15:85とすることができる。
【0087】
ポリ乳酸は、乳酸及び他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であってもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでもよい。他のヒドロキシカルボン酸単位としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸類、及び、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような他のヒドロキシカルボン酸単位は、全モノマー中15モル%未満で使用するのが好ましい。
【0088】
ポリ乳酸の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法等の従来公知の方法を採用することができる。例えば、縮合重合法では、L−乳酸若しくはD−乳酸、又は、これらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。なお、ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、D−乳酸及びL−乳酸の2量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合し、重合することによって任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。
【0089】
ポリ乳酸は市販されているので、市販のものを使用してもよい。例えば、ポリ乳酸として、ユニチカ社から販売されているテラマックT
E2000C、ネイチャーワークス社から販売されている2003Dを好適に使用することができる。
【0090】
前記樹脂組成物は前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂を含む樹脂を含むが、当該樹脂の他に、所望により当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、充填剤等を本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。一方、前記樹脂組成物は添加剤を含まなくてもよい。この場合、前記樹脂層はバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂のみからなり、本発明の積層体はバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂のみからなる樹脂層を備えることができる。
【0091】
{追加層}
本発明の積層体が紙基材の一方の表面にのみ前記樹脂層を備える場合は、当該積層体は、紙基材の前記樹脂層に面しない表面に前記樹脂層以外の追加層を更に備えてもよい。追加層は複数あってもよいが、全体の層厚の抑制のためには追加層は1つであることが好ましい。
【0092】
前記追加層は、板紙、不織布、布等の任意の材質からなる層であってよく、既述した上記樹脂層の組成とは異なる組成を有する樹脂層であってもよい。追加層としての樹脂層は熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
【0093】
前記追加層が既述した上記樹脂層の組成とは異なる組成を有する樹脂層の場合、当該追加層としての樹脂層は、例えば、当該樹脂層を構成する樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%以下(樹脂の総重量に基づく。以下、同様)、90重量%以下、或いは、85重量%以下が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であってもよい。
【0094】
前記追加層の厚みは特には限定されるものではなく、例えば、30μm未満が好ましく、25μm未満がより好ましく、20μm未満が更により好ましい。また、追加層の厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更により好ましい。したがって、追加層の厚みは、5μm〜30μm未満が好ましく、10μm〜25μm未満がより好ましく、15μm〜20μm未満が更により好ましい。
【0095】
追加層を設けることによって、紙基材の両面を保護することができる。また、追加層として樹脂層を形成する場合は、本発明の積層体の紙基材による吸水を防止乃至低減して防水性を付与することができる。また、紙基材の強度が低いために本発明の積層体の自立性が無く、容易に屈曲する等して取り扱い性の点で改善の余地が有る場合に、板紙等の比較的強度の高い材質からなる追加層を設けることによって、本発明の積層体の強度を向上させて、取り扱い性を改善することができる。
【0096】
本発明の積層体が追加層を備える場合、紙基材と追加層との間には接着層等の他の層が介在してもよい。しかし、紙基材と追加層との間には他の層が介在しない方が好ましい。すなわち、紙基材と追加層は直接接触する方が好ましい。
【0097】
{配置}
図1は、本発明の積層体の第一の態様を示す概略断面図である。この態様では、積層体1を構成する紙基材11の一方の表面上にバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層(樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂)12が存在しており、紙基材11の他方の表面(
図1の上側)には層は存在せず、当該他方の表面は開放されている。
【0098】
図2は、本発明の積層体の第二の態様を示す概略断面図である。この態様では、積層体2を構成する紙基材21の一方の表面上に樹脂層22が存在しており、紙基材21の他方の表面上に追加層23が更に存在している。追加層23は樹脂層22とは異なる。
【0099】
{用途}
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではないが、例えば、食品等の各種物品の包装に使用される包装用シートとして好適に使用することができる。更に、本発明は、前記包装用シートを備える包装体にも関する。前記包装体としては、例えば、食品等の各種物品を前記積層体により包装したものが挙げられる。
【0100】
本発明の積層体は、カーボンニュートラルな材質である紙からなる基材、並びに、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成されている樹脂層を備えるので、樹脂層が燃焼しても大気中の二酸化炭素量は全体としてほぼ増大せず、及び/又は、環境中で樹脂層は微生物の作用によりほぼ分解する。したがって、本発明の積層体は、大気中の二酸化炭素増大による地球温暖化、環境中に残存する樹脂による環境汚染等の環境問題により対応することができる。
【0101】
したがって、本発明の積層体は環境に優しいものであり、同様に、当該積層体からなる本発明の包装シート及び包装体も環境に優しいものである。
【0102】
[本発明の積層体の製造方法]
本発明の積層体は、
スパイラル状の主フライト及び副フライトの2つのフライトを有するダブルフライトスクリューを備える押出機で前記樹脂組成物を溶融して溶融樹脂組成物を得る工程、
前記溶融樹脂組成物をTダイを介して押出して前記樹脂層を形成する工程、及び、
前記樹脂層を前記紙基材と積層する工程
を含む、製造方法により製造することができる。
【0103】
前記樹脂組成物、前記紙基材及び前記樹脂層については、本発明の積層体についての上記説明が当てはまる。
【0104】
上記製造方法は、前記樹脂組成物を溶融するにあたり、スパイラル状の主フライト及び副フライトの2つのフライトを有するダブルフライトスクリューを備える押出機を使用することを特徴とする。
【0105】
図3は、上記製造方法に使用される押出機中のスクリューの一態様の概略全体図である。
【0106】
前記押出機は、図示を省略するシリンダ(バレルとも称される)中にスクリュー3を備えており、シリンダの供給口からシリンダ内に投入された樹脂組成物は図示しないモータ等の回転機構によるスクリュー3の回転により前方に送られる(
図3の右側方向)。
【0107】
シリンダの周囲には、シリンダ内の樹脂組成物を加熱するために、長手方向に沿って、例えば2〜10に分割されて配置された、ヒーターが設けられている。したがって、シリンダ内の樹脂組成物は前方に送られていく過程で加熱されて溶融する。そして、溶融された樹脂組成物はシリンダの前端部から吐出される。
【0108】
図3に示されるスクリュー3はスクリュー軸及びスクリュー軸の周囲にスパイラル状(螺旋状)に配置された主フライト31及び副フライト32を備える所謂ダブルフライトスクリューである。このようにダブルフライトスクリューを備える押出機を使用することにより、樹脂組成物の良好な溶融及び混合・混練、並びに、溶融した樹脂組成物の安定した押出が可能となり、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成される樹脂組成物を用いても極薄の樹脂層を形成することができる。特に、副フライトを押出機の少なくとも圧縮部(樹脂組成物を圧縮しながら溶融及び混合・混練するゾーン)に対応するスクリュー軸上に設けることにより、樹脂組成物の溶融及び混合・混練を更により良好に行うことができる。
【0109】
図3に示す例では、主フライト31はスクリュー3の長手方向全体に亘って存在する一方で、副フライト32はスクリュー3の長手方向に沿って離隔して複数存在する。副フライトの数は特には限定されないが、2〜4が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更により好ましい。このように、複数の副フライトを備えるスクリューを備える押出機を使用することにより、樹脂組成物の溶融及び混合・混練を更により良好に行うことができる。特に、副フライトを押出機の少なくとも圧縮部及び計量化部(溶融樹脂組成物を計量して押出量を安定化するゾーン)に対応するスクリュー上に設けることにより、樹脂組成物の溶融及び混合・混練並びに定量押出を更により良好に行うことができる。
【0110】
主フライト31と副フライト32は異なるリード角を有することが好ましい。これにより、樹脂組成物の溶融及び混合・混練を更により良好に行うことができる。
【0111】
上記製造方法で使用する押出機は1つのスクリューを備える単軸押出機でもよいが、2つのスクリューを備える2軸押出機であることが好ましい。これにより、溶融樹脂組成物のより安定した押出が可能となる。
【0112】
上記製造方法で使用する押出機が備えるスクリューの径は小さい方が好ましく、例えば、100〜80mmとすることができ、90mmが好ましい。スクリューの径を小さくすることでスクリューの回転数を高め、樹脂組成物のより良好な溶融及び混合・混練、並びに、溶融した樹脂組成物のより安定した押出を行うことができる。
【0113】
上記製造方法において、前記溶融樹脂組成物をTダイを介して押出して前記樹脂層を形成する工程では、押出機から吐出される溶融樹脂組成物をTダイを介して押出してフィルムを形成する。ダブルフライトスクリューを備える押出機から供給される溶融樹脂組成物を使用することにより、極薄の樹脂層(フィルム)を形成することができる。
【0114】
上記製造方法では、ダブルフライトスクリューを備える押出機から供給される溶融樹脂組成物を使用することにより、含まれる樹脂がバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂からほぼ構成される樹脂組成物を用いても、予想外に、Tダイから押出されるフィルムのネックインが抑制され、フィルム端部の厚み増大が抑制され、また、端部以外のフィルムの厚み増大も抑制される。したがって、極薄の樹脂層(フィルム)を形成することができる。
【0115】
上記製造方法では、このようにして形成された樹脂層を紙基材と積層する。積層の方法は特には限定されないが、紙基材と樹脂層を直接接触させて一体化することが好ましい。そして、紙基材を樹脂層により押出コーティングすることにより直接一体化することがより好ましい。すなわち、樹脂層は押出コーティング層であることがより好ましい。
【0116】
このようにして得られた積層体は冷却ロールによって冷却されて、樹脂層(フィルム)が固化して紙基材と一体化することが好ましい。
【0117】
なお、必要であれば、前記樹脂層(フィルム)は、紙基材との接触前に、冷却ドラム上にキャストされて、所定温度に冷却されてもよい。
【0118】
上記製造方法では、含まれる樹脂がほぼバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂から構成されている樹脂組成物を使用しても、30μm未満、好ましくは25μm未満、より好ましくは20μm未満の厚みを有する極薄の樹脂層を備えることができる。
【0119】
したがって、上記製造方法により、
紙基材、並びに、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層を備え、
前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であり、且つ、
前記樹脂層の厚みが30μm未満、好ましくは25μm未満、より好ましくは20μm未満である積層体を製造することができる。なお、既述のとおり、前記樹脂組成物は添加剤を含まなくてもよく、樹脂のみから構成されてもよい。この場合、前記樹脂層はバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂のみからなり、前記積層体はバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂のみからなる樹脂層を備えてもよい。
【実施例】
【0123】
[実施例1]
紙基材として、市販の東海クラフトA(新東海製紙株式会社製、坪量75g/m
2)を使用し、樹脂組成物として、ブラスケム社から販売されているバイオポリエチレンであるSBC818を使用した。樹脂組成物中の樹脂は全てバイオポリエチレンであった。
スクリュー軸径90mmの
図3に示すダブルフライトスクリューを備えた押出機(住友重機械モダン株式会社製E−90EXT)を使用して、上記樹脂組成物を溶融混練して、樹脂温度315℃及び引張速度200m/分で、幅1230mmのフィルムとしてTダイから押出して、紙基材上に積層したところ、Tダイから押出された際のネックインが抑制されており、15μm厚の樹脂層を紙基材上に形成することができた。
【0124】
[実施例2]
紙基材として、市販の雷鳥純白(中越パルプ工業株式会社製 坪量65g/m
2を使用し、樹脂組成物として、FENC社から販売されているバイオポリエチレンテレフタレートであるCB602ABを使用した。樹脂組成物中の樹脂は全てバイオポリエチレンテレフタレートであった。
スクリュー軸径90mmの
図3に示すダブルフライトスクリューを備えた押出機(住友重機械モダン株式会社製E−90EXT)を使用して、上記樹脂組成物を溶融混練して、樹脂温度300℃及び引張速度80m/分で、幅1600mmのフィルムとしてTダイから押出して、紙基材上に積層したところ、Tダイから押出された際のネックインが抑制されており、20μm厚の樹脂層を紙基材上に形成することができた。
【0125】
[実施例3]
紙基材として、市販の金鯱(大王製紙株式会社製 坪量30g/m
2)を使用し、樹脂組成物として、ユニチカ社から販売されているポリ乳酸であるテラマックT
E2000Cを使用した。樹脂組成物中の樹脂は全てポリ乳酸であった。
スクリュー軸径90mmの
図3に示すダブルフライトスクリューを備えた押出機(住友重機械モダン株式会社製E−90EXT)を使用して、上記樹脂組成物を溶融混練して、樹脂温度230℃及び引張速度100m/分で、幅1460mmのフィルムとしてTダイから押出して、紙基材上に積層したところ、Tダイから押出された際のネックインが抑制されており、15μm厚の樹脂層を紙基材上に形成することができた。
【0126】
[比較例1]
図3に示すダブルフライトスクリューに代えて副フライトを欠くシングルフライトスクリューを使用する以外は実施例1と同一の樹脂組成物を実施例1と同様にTダイから押出して樹脂層として、紙基材上に積層したが、Tダイから押出された際のネックインが大きく、また、樹脂層の厚みは30μmであった。
【0127】
[比較例2]
図3に示すダブルフライトスクリューに代えて副フライトを欠くシングルフライトスクリューを使用する以外は実施例2と同一の樹脂組成物を実施例2と同様にTダイから押出して樹脂層として、紙基材上に積層したが、Tダイから押出された際のネックインが大きく、また、樹脂層の厚みは30μmであった。
【0128】
[比較例3]
図3に示すダブルフライトスクリューに代えて副フライトを欠くシングルフライトスクリューを使用する以外は実施例3と同一の樹脂組成物を実施例3と同様にTダイから押出して樹脂層として、紙基材上に積層したが、Tダイから押出された際のネックインが大きく、また、樹脂層の厚みは30μmであった。
【課題】環境問題及び資源問題により対応するために、含まれる樹脂がほぼバイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂から構成されている樹脂組成物からなる極薄の樹脂層を備える、当該樹脂層と紙基材との積層体を提供すること。
【解決手段】紙基材、並びに、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂層を備える積層体であって、前記樹脂組成物に含まれる樹脂の95重量%超が前記バイオマス由来の樹脂及び/又は前記生分解性樹脂であり、且つ、前記樹脂層の厚みが30μm未満である、積層体。