(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870150
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
H04R19/04
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-509431(P2020-509431)
(86)(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公表番号】特表2020-530732(P2020-530732A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(86)【国際出願番号】CN2018093033
(87)【国際公開番号】WO2019033854
(87)【国際公開日】20190221
【審査請求日】2020年4月15日
(31)【優先権主張番号】201710692246.3
(32)【優先日】2017年8月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520052260
【氏名又は名称】蘇州敏芯微電子技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MEMSENSING MICROSYSTEMS (SUZHOU,CHINA) CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲かい▼
(72)【発明者】
【氏名】栄 根蘭
(72)【発明者】
【氏名】胡 維
(72)【発明者】
【氏名】李 剛
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−005439(JP,A)
【文献】
特開2010−103637(JP,A)
【文献】
特開2008−259061(JP,A)
【文献】
特開2008−252854(JP,A)
【文献】
特開2007−067483(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0239352(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0189444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00−19/04
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレートと、
前記バックプレートの第1表面に絶縁支持され、前記バックプレートと共に第1可変容量を構成する第1振動膜と、
前記バックプレートの第2表面に絶縁支持され、前記バックプレートと共に第2可変容量を構成する第2振動膜と、を備える二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクであって、
前記バックプレートが少なくとも1つの接続孔を有し、
前記第2振動膜がバックプレートの方向に凹んだ凹部を有し、前記凹部が前記接続孔を通って第1振動膜に絶縁接続されることを特徴とする二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項2】
前記接続孔の数が1つであって、バックプレートの中心位置に位置することを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項3】
前記接続孔の数が2つ以上であって、バックプレートの中心の周りに均一且つ対称的に配置されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項4】
前記凹部と前記第1振動膜との接続箇所には前記凹部と前記第1振動膜とを貫通する空気抜け構造が開設されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項5】
前記第1振動膜及び/又は第2振動膜が全体膜構造であることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項6】
前記第1振動膜は、エッジに位置する第1固定部と、前記第1固定部により取り囲まれている第1振動部とを備え、前記第1振動部が少なくとも1つの第1弾性ビームを含み、前記第1固定部と第1振動部との間が前記第1弾性ビームにより接続されるか、又は前記第1固定部と第1振動部との間が完全に切断されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項7】
前記第1弾性ビームと前記バックプレートとを絶縁接続することにより、前記第1振動部は前記バックプレートの第1表面から宙吊りになることを特徴とする請求項6に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項8】
前記第2振動膜は、エッジに位置する第2固定部と、前記第2固定部により取り囲まれている第2振動部とを備え、前記第2振動部が少なくとも1つの第2弾性ビームを備え、前記第2固定部と第2振動部との間が前記第2弾性ビームにより接続されるか、又は前記第2固定部と第2振動部との間が完全に切断されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項9】
前記第2弾性ビームと前記バックプレートとを絶縁接続することにより、前記第2振動部は前記バックプレートの第2表面から宙吊りになることを特徴とする請求項8に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項10】
前記バックプレートには更に音孔が開設され、且つ前記バックプレートの表面には突起点が設置されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【請求項11】
前記第1振動膜及び第2振動膜にはいずれも解放孔及び空気抜け構造が開設されることを特徴とする請求項1に記載の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンマイクの技術分野に関し、特に、二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro−Electro−Mechanical System、マイクロエレクトロメカニカルシステム)技術は、近年高速で発展している先端技術であり、先進的な半導体製造プロセスを用いて、センサ、ドライバ等のデバイスの量産を実現しており、対応する従来のデバイスに比べて、MEMSデバイスは体積、消費電力、重量及び価格の面で明らかな優位性を有する。市場において、MEMSデバイスの主な応用例としては、圧力センサ、加速度計及びシリコンマイク等が含まれる。
【0003】
MEMS技術で製造されたシリコンマイクは小型化、性能、信頼性、環境耐性、コスト及び量産の面でECMよりも優位性を有するため、携帯電話、PDA、MP3及び補聴器等の電子製品の消費市場を迅速に占有している。MEMS技術で製造されたシリコンマイクは、一般的に、固体バックプレートに平行に配置される移動可能なダイヤフラムを有し、ダイヤフラムとバックプレートとが可変コンデンサを形成する。可変容量を変化するよう、ダイヤフラムは入射された音エネルギーに応答して移動し、これにより、入射された音エネルギーを示すための電気信号を生成する。
【0004】
コンデンサ型マイクロシリコンマイクの技術の発展に伴い、シリコンマイクの寸法がより小さく、コストがより低く、信頼性がより高いことが要求されるが、シリコンマイクの寸法が小さくなると、感度が低下し、信号対雑音比が低下してしまう。どのようにシリコンマイクの信号対雑音比を更に向上させるかは、現在の早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする技術的問題は、シリコンマイクの信号対雑音比を向上させる二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクを提供し、バックプレートと、前記バックプレートの第1表面に絶縁支持され、前記バックプレートと共に第1可変容量を構成する第1振動膜と、前記バックプレートの第2表面に絶縁支持され、前記バックプレートと共に第2可変容量を構成する第2振動膜と、を備える二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクであって、前記バックプレートが少なくとも1つの接続孔を有し、前記第2振動膜がバックプレートの方向に凹んだ凹部を有し、前記凹部が前記接続孔を通って第1振動膜に絶縁接続されることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記接続孔の数が1つであって、バックプレートの中心位置に位置する。
【0008】
好ましくは、前記接続孔の数が2つ以上であって、バックプレートの中心の周りに均一且つ対称的に配置される。
【0009】
好ましくは、前記凹部と前記第1振動膜との接続箇所には前記凹部と前記第1振動膜とを貫通する空気抜け構造が開設される。
【0010】
好ましくは、前記第1振動膜及び/又は第2振動膜が全体膜構造である。
【0011】
好ましくは、前記第1振動膜は、エッジに位置する第1固定部と、前記第1固定部により取り囲まれている第1振動部とを備え、前記第1振動部が少なくとも1つの第1弾性ビームを含み、前記第1固定部と第1振動部との間が前記第1弾性ビームにより接続されるか、又は前記第1固定部と第1振動部との間が完全に切断される。
【0012】
好ましくは、前記第1弾性ビームと前記バックプレートとを絶縁接続することにより、前記第1振動部は前記バックプレートの第1表面から宙吊りになる。
【0013】
好ましくは、前記第2振動膜は、エッジに位置する第2固定部と、前記第2固定部により取り囲まれている第2振動部とを備え、前記第2振動部が少なくとも1つの第2弾性ビームを備え、前記第2固定部と第2振動部との間が前記第2弾性ビームにより接続されるか、又は前記第2固定部と第2振動部との間が完全に切断される。
【0014】
好ましくは、前記第2弾性ビームと前記バックプレートとを絶縁接続することにより、前記第2振動部は前記バックプレートの第2表面から宙吊りになる。
【0015】
好ましくは、前記バックプレートには更に音孔が開設され、且つ前記バックプレートの表面には突起点が設置される。
【0016】
好ましくは、前記第1振動膜及び第2振動膜にはいずれも解放孔及び空気抜け構造が開設される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る振動膜を有する差動コンデンサ型マイクは、第1振動膜とバックプレートとが第1容量を形成し、バックプレートと第2振動膜とが第2容量を形成し、前記第1容量と第2容量とが差動コンデンサを構成し、動作過程において、差動信号を出力し、感度を向上させ、マイクの信号対雑音比を向上させることができる。且つ、第2振動膜の凹部が第1振動膜に絶縁接続されることにより、前記第2振動膜が第1振動膜とともに同じ方向に振動することができ、信号の精度を向上させる。且つ、第2振動膜の凹部が第2振動膜の一部として、支持の役割を果たすだけでなく、第2振動膜の内部応力の解放に役立つとともに、二次応力の導入も回避し、それにより第2振動膜の順応性が一致するように維持し、前記凹部が第2振動膜の他の部分との間で裂け目等の問題が容易に発生しないようにして、デバイスの信頼性向上に役立つ。
【0018】
前記第1振動膜と第2振動膜とが複数の構造形態を有してもよく、それぞれが完全固定支持膜、部分固定支持屈曲ビーム膜又は完全固定支持屈曲ビーム膜等の構造のうちのいずれか1つであってもよい。一方、前記第2振動膜と第1振動膜との接続箇所に空気抜け構造を開設することにより、空気抜け構造の空気抜け効率を効果的に向上させ、マイクの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面斜視図である。
【
図2】本発明の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面図である。
【
図3】本発明の具体的な実施形態の第1振動膜の平面俯瞰図である。
【
図4】本発明の具体的な実施形態の第2振動膜の平面俯瞰図である。
【
図5】本発明の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面斜視図である。
【
図6】本発明の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面図である。
【
図7】本発明の具体的な実施形態の第1振動膜の平面俯瞰図である。
【
図8】本発明の具体的な実施形態の第2振動膜の平面俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明に係る二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの具体的な実施形態を詳しく説明する。
【0021】
図1及び
図2を参照すると、本発明の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面図である。
【0022】
前記二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクは、バックチャンバ101を有する基板100と、前記基板100の表面に絶縁支持され、前記基板100のバックチャンバ101の上方に宙吊りされる第1振動膜200と、前記第1振動膜200の表面に絶縁支持され、第1振動膜200とともに第1可変容量を構成する、前記第1振動膜200の上方に位置するバックプレート300と、前記バックプレート300の表面に絶縁支持され、前記バックプレート300とともに第2可変容量を構成する、前記バックプレート300の上方に位置する第2振動膜400と、を備える。
【0023】
前記第1振動膜200のエッジが第1絶縁層110により基板100の表面に支持されることにより、前記第1振動膜200をバックチャンバ101の上方に宙吊りさせ、前記第1絶縁層110が前記コンデンサ型マイクを形成する際に犠牲層を解放した後の犠牲層の残存部分であってもよい。前記第1振動膜200は導電材料であり、第1可変容量の下部電極とされる。具体的な実施形態では、前記第1振動膜200の材料が多結晶シリコンである。前記第1振動膜200の厚さが薄く、音波の作用下で上下に振動でき、それにより前記第1振動膜200とバックプレート300とからなる第1可変容量の容量値を変化させる。第1振動膜200の厚さを調節することにより前記第1振動膜200の剛性を調節して、感度を調整することができる。
【0024】
前記第1振動膜200には更に解放孔201及び空気抜け構造202が開設される。マイクの形成過程において、犠牲層を解放して空きキャビティを形成する必要があり、前記解放孔201は犠牲層の解放過程において腐食液を輸送することに用いられる。解放経路及び時間分布に基づいて前記解放孔201の位置分布を合理的に設定することができる。前記空気抜け構造302はマイクキャビティ内の気圧のバランスを取ることに用いられ、マイクパッケージ過程において、環境が変化する際にマイクキャビティ内の気圧が大きすぎ又は小さすぎるため、マイクの動作性能に影響を与えることを回避する。前記空気抜け構造302は一般的に前記第1振動膜に均一且つ対称的に配置され、それによりキャビティ内の気圧を均一に調節することができる。前記解放孔201が気圧調節の役割を果たすこともできる。
【0025】
図3は当該具体的な実施形態の第1振動膜200の俯瞰図である。
【0026】
前記第1振動膜に複数の解放孔301が開設され、前記解放孔301が円形であり、円周方式で前記第1振動膜200に均一且つ対称的に配置される。前記解放孔301の寸法は一般的に小さく設定され、マイクは動作過程において、解放孔301の寸法が比較的大きいため、第1振動膜200の音波に対する抵抗が小さすぎて感度が低下することを回避する。本発明の他の具体的な実施形態では、前記解放孔301の形状は更に四角形、三角形、多角形又は細長い細溝形状等であってもよく、設計された犠牲層の解放経路及び時間分布に基づいて解放孔301の位置分布を設定してもよい。
【0027】
当該具体的な実施形態では、前記空気抜け構造202はU字型の細溝であり、複数の空気抜け構造202は第1振動膜の外側に対称的に配置され、マイクキャビティ内の各位置箇所の気圧のバランスを取ることに役立つ。この具体的な実施形態では、前記複数の空気抜け構造202は解放孔301の周囲に配置される。本発明の他の具体的な実施形態では、前記空気抜け構造202は更に長尺状、交差する長尺状溝、円形又は多角形孔等の他の形状であってもよい。前記空気抜け構造202の寸法は一般的に小さく、第1振動膜200の音波に対する抵抗を低減することを回避する。
【0028】
当該具体的な実施形態では、前記第1振動膜200は全体膜構造であり、分離構造がなく、エッジの周囲を基板100の表面に完全に固定支持することにより、完全膜固定支持構造を形成し、信頼性がより高く、断裂・破損等の問題が容易に発生せず、第1振動膜200の薄膜の厚さ及び内部応力によって前記第1振動膜200の剛性を調節することができる。本発明の他の具体的な実施形態では、前記第1振動膜200のエッジ部分のみを支持してもよい。
【0029】
図1及び
図2に示すように、前記バックプレート300のエッジが第2絶縁層120により第1振動膜200の表面に支持されることにより、前記バックプレート300を第1振動膜200の上方に宙吊りさせ、前記バックプレート300と第1振動膜200とが第1可変容量を構成する。前記第2絶縁層120は前記コンデンサ型マイクの形成過程において犠牲層を解放した後の犠牲層の残存部分であってもよい。前記バックプレート300が導電性を有し、前記第1可変容量の上部電極とされる。前記バックプレート300は独立した導電層であってもよいし、絶縁層と導電層とからなる複合構造であってもよく、バックプレート300の硬度を向上させ、変形の発生を回避する。当該具体的な実施形態では、前記バックプレート300は窒化シリコン層301と、前記窒化シリコン層301の表面に位置する多結晶シリコン層302とを備える。前記窒化シリコン層301が比較的高い硬度を有するため、前記バックプレート300が固定電極として変形しにくく、それによりマイクの信頼性を向上させる。
【0030】
前記バックプレート300に更に音孔303が開設されてもよく、音波が第1振動膜200を振動させた後、第1可変容量内の気圧変化が前記音孔303を介して第2可変容量に伝達されることに役立ち、且つ、第1振動膜200を通った音波がある場合、前記音孔303を継続通過して第2振動膜400に作用させ、それによりマイクの有効信号を強化することもできる。
【0031】
前記バックプレート300は更に接続孔304を有し、当該具体的な実施形態では、バックプレート300の沈降部305がバックプレート300の他の領域より低く、第1振動膜200に接続されるため、該沈降部305の上方に接続孔304を形成し、前記接続孔304は主に第1振動膜200及び第2振動膜400に接続通路を提供する。当該具体的な実施形態では、前記バックプレート300は1つの接続孔304を有し、且つ該接続孔304がバックプレートの中心位置に位置し、それにより第2振動膜400と第1振動膜200とを中心位置で接続させ、第2振動膜400と第1振動膜200とが振動するとき、各位置の変形が対称的に分布される。この具体的な実施形態では、前記接続孔304の形状は円形であり、第2振動膜400の凹部が通ることに役立つ。本発明の他の具体的な実施形態では、前記接続孔304は更に他の形状、例えば多角形、正方形等であってもよく、バックプレートの中心の周りに均一且つ対称的に配置される2つ以上の接続孔を有してもよい。
【0032】
当該具体的な実施形態では、前記バックプレート300の表面に更に突起点306が設置される。この具体的な実施形態では、バックプレート300の第1振動膜200に向かう側の表面に前記突起点306が設置され、第1振動膜200がバックプレート300へ変形する場合、前記突起点306は第1振動膜200がバックプレート300に接着されることを回避することができる。本発明の他の具体的な実施形態では、バックプレート300の上下表面にいずれも前記突起点306を設置してもよく、第1振動膜200と第2振動膜400とがバックプレート300で接着することを回避する。
【0033】
前記第2振動膜400のエッジが第3絶縁層130により前記バックプレート300の表面に支持されることにより、前記第2振動膜400をバックプレート300の上方に宙吊りさせ、前記第3絶縁層130が前記コンデンサ型マイクの形成過程において犠牲層を解放した後の犠牲層の残存部分であってもよい。前記第2振動膜400が導電材料であって、第2可変容量の上部電極として前記バックプレート300の上方に宙吊りされ、前記第3絶縁層130が前記コンデンサ型マイクの形成過程において犠牲層を解放して第2可変容量とされる下部電極であってもよい。本具体的な実施形態では、前記第2振動膜400の材料が多結晶シリコンである。前記第2振動膜400は厚さが薄く、音波の作用下で上下に振動でき、それにより前記第2振動膜400とバックプレート300とからなる第2可変容量の容量値を変化させる。第2振動膜400の厚さを調節することにより前記第2振動膜400の剛性を調節して、感度を調整することができる。
【0034】
前記第2振動膜400はバックプレート300の方向に凹んだ凹部401を有し、前記凹部401が前記バックプレート300の接続孔304を通って前記第1振動膜200に絶縁接続される。当該具体的な実施形態では、前記凹部401と第1振動膜200との間がバックプレート300の沈降部305であり、この具体的な実施形態では、前記バックプレート300は窒化シリコン層301と、窒化シリコン層301の表面に位置する多結晶シリコン層302とを備え、従って前記凹部401と第1振動膜200とを絶縁させる。本発明の他の具体的な実施形態では、前記バックプレート300に前記沈降部305を形成せず、前記凹部401と第1振動膜200とが追加形成された絶縁層により接続される。前記第2振動膜400が第1振動膜200に接続され、それにより前記第2振動膜400と第1振動膜200とが音波に対して同じ方向の振動フィードバックを有することができる。且つ、前記第2振動膜400と第1振動膜200との接続箇所も第2振動膜400に対して支持の役割を果たし、それにより第2振動膜400の宙吊り状態をより安定化させ、信頼性を更に向上させる。更に、前記第2振動膜400の凹部401は第2振動膜400の一部とされ、材料が同じで、構造が連続し、第2振動膜400の内部応力を解放することと二次応力の導入を回避することとに役立ち、第2振動膜400の順応性が一致するように維持させ、それにより音波の作用下で第2振動膜400に生じた電気信号の精度を向上させ、且つ前記凹部401が第2振動膜400の他の部分との間で裂け目等の欠点を容易に発生しないようにして、デバイスの信頼性を向上させる。前記凹部401と第1振動膜200との接続は二次応力を導入して第2振動膜400の順応性に影響を与えることがないため、前記凹部401の数及び位置を柔軟に設定し、マイクの性能要件に応じて調整することができ、プロセスの面でより高い柔軟性を有する。
【0035】
本発明の他の具体的な実施形態では、前記第2振動膜400は平らな薄膜であり、第1振動膜200はバックプレート300の方向に凹んだ凹部を有し、前記凹部がバックプレート300の接続孔304を通って第2振動膜400に絶縁接続されてもよい。
【0036】
当該具体的な実施形態では、前記凹部401と前記第1振動膜200との接続箇所には前記凹部401と前記第1振動膜200とを貫通する空気抜け構造402が開設され、前記空気抜け構造402は細溝又は孔等の貫通構造であってもよい。本発明の他の具体的な実施形態では、前記凹部401と前記第1振動膜200との接続箇所の周りの第1振動膜200及び第2振動膜400のみに空気抜け構造を空気抜け通路として開設してもよい。接続箇所の周りに空気抜け構造を開設することと比べて、接続箇所に形成された空気抜け構造402は前記バックチャンバ101及び第2振動膜400の上方に直接連通するため、前記空気抜け構造402の空気抜けストロークが短く、マイクをパッケージし又はマイクが大幅に振動するため内外気圧のバランスを取る必要がある場合、バックチャンバ101及び第2振動膜400の両側の気圧は前記空気抜け構造402によって迅速にバランスを取ることができ、より効果的である。且つ、第1振動膜200と第2振動膜400とが振動する際に、前記空気抜け構造402は更に振動抵抗を低減することができる。前記第2振動膜400の他の位置には更に円周に配置される均圧・空気抜けのための空気抜け構造403が開設される。
【0037】
図4に示すように、
図4は前記第2振動膜400の俯瞰図である。前記第2振動膜400はエッジに位置する第2固定部410と、前記第2固定部410により取り囲まれる第2振動部420とを備える。前記第2振動部420が少なくとも1つの第2弾性ビーム421を備え、前記第2固定部410と前記第2振動部420との間に前記第2振動膜400を通る溝430を有し、前記溝430が空気抜けのための空気抜け構造とされてもよいし、犠牲層の解放過程において、腐食液体を輸送する解放溝とされてもよい。
【0038】
当該具体的な実施形態では、前記第2振動部420における前記第2弾性ビーム421以外の本体部分はバックチャンバ101の形状に対応し、円形である。本発明の他の具体的な実施形態では、マイクの性能要件に応じて、前記第2振動部420の本体を他の形状に設計してもよい。この具体的な実施形態では、前記第2振動部420は第2振動部420の本体の円周に沿って均一に配置される4つの第2弾性ビーム421を備え、それにより前記第2振動部420の本体応力を均一に分布させる。前記第2弾性ビーム421は第2振動膜400の内部応力の解放に役立ち、前記第2振動部420の振動過程における振動の一致性を更に向上させる。前記第2弾性ビーム421の数、厚さ及び第2振動部420の本体の厚さを調整することにより、前記第2振動膜400の剛性を調整することができる。
【0039】
当該具体的な実施形態では、前記第2弾性ビーム421は折り畳みビーム構造であり、他の具体的な実施形態では、片持ビーム、U字型ビーム等の他のビーム構造を用いてもよい。この具体的な実施形態では、前記第2振動膜400は完全固定支持屈曲ビーム膜であり、前記溝430は前記第2振動部420の本体と第2固定部410とを切断し、前記第2振動部420の本体は前記第2弾性ビーム421を介して前記第2固定部410に接続され、第3絶縁層130が前記第2固定部410を支持することにより、前記第2振動部420を宙吊りさせる。そして、この具体的な実施形態では、第2振動部420の中心に位置する凹部401が第1振動膜200に接続され、同様に前記第2振動部420に対する支持役割を果たしている。
【0040】
当該具体的な実施形態では、前記第2振動膜400に更に解放孔422が開設され、具体的には前記第2振動部420に開設される。前記解放孔422は円形であり、前記第2振動膜400の中心を円心として、円周方式で前記第2振動部420に均一且つ対称的に配置される。前記解放孔422の寸法は一般的に小さく設定され、マイクの動作過程において、解放孔422の寸法が比較的大きいため第2振動膜400の音波に対する抵抗が小さすぎて感度が低下することを回避する。本発明の他の具体的な実施形態では、前記解放孔422の形状は更に四角形、三角形、多角形又は細長い細溝形状等であってもよく、設計された犠牲層の解放経路及び時間分布に基づいて解放孔422の位置分布を設定してもよい。前記空気抜け構造403が解放孔422の周囲に位置する。
【0041】
本発明の他の具体的な実施形態では、前記第2振動膜400は一体となった完全固定支持膜であってもよく、エッジの周囲全体がバックプレートの表面に完全に固定支持されるか、又は前記第2振動膜400のエッジ部分のみを支持することにより、このような場合、第2振動膜400の薄膜の厚さ及び内部応力によって前記第2振動膜400の剛性を調節することができる。
【0042】
図5及び
図6は本発明の他の具体的な実施形態の二層振動膜を有する差動コンデンサ型マイクの断面図である。
【0043】
当該具体的な実施形態では、前記マイクの第1振動膜500はエッジに位置する第1固定部510と、前記第1固定部により取り囲まれる第1振動部520とを備え、前記第1振動部520が少なくとも1つの第1弾性ビーム521を備える。前記第1固定部510と前記第1振動部520との間に前記第1振動膜500を通る溝530を有し、前記溝530が空気抜けのための空気抜け構造とされてもよいし、犠牲層の解放過程において、腐食液体を輸送する解放溝とされてもよい。
【0044】
図7に示すように、
図7は前記第1振動膜500の俯瞰構造図である。前記第1振動膜500の第1振動部520における前記第1弾性ビーム521以外の本体部分はバックチャンバ101の形状に対応し、円形である。本発明の他の具体的な実施形態では、マイクの性能要件に応じて、前記第1振動部520の本体を他の形状に設計してもよい。この具体的な実施形態では、前記第1振動部520は第1振動部520の本体の円周に沿って均一に配置される4つの第1弾性ビーム521を備え、前記第1弾性ビーム521は第1振動膜500の内部応力を解放することに役立ち、前記第1振動部520の振動過程における振動の一致性を更に向上させる。前記第1弾性ビーム521の数、厚さ及び第1振動部520の本体の厚さを調整することにより、前記第1振動膜500の剛性を調整することができる。
【0045】
当該具体的な実施形態では、前記第1弾性ビーム521は折り畳みビーム構造であり、他の具体的な実施形態では、片持ビーム、U字型ビーム等の他のビーム構造を用いてもよい。この具体的な実施形態では、前記第1振動膜500は部分固定支持屈曲ビーム膜であり、前記溝530は前記第1振動部520と第1固定部510とを完全に切断し、前記第1振動部520と第1固定部510とを完全に分離させる。前記第1固定部510は第1絶縁層110によって基板100の表面に支持される。前記第1弾性ビーム521は吊りビーム521aとアンカー521bとを備え、前記アンカー521bの上方が絶縁層121を介してバックプレート600に接続され、前記第1振動部520を前記バックプレート600に懸架させ、バックチャンバ101の上方に宙吊りさせる。第1弾性ビーム521の数を増加させることにより、前記第1振動部520とバックプレート600との接続信頼性を向上させることができる。更に前記アンカー521bの下方を絶縁層によって基板100の表面に支持させることができる。
【0046】
本発明の他の具体的な実施形態では、前記第1振動膜500は更に完全固定支持屈曲ビーム膜であってもよく、前記溝530は前記第1振動部520の本体と第1固定部510とを切断し、前記第1振動部520の本体が前記第1弾性ビーム521によって前記第1固定部510に接続されてもよく、第1絶縁層110によって前記第1固定部510を支持して、前記第1振動部520を宙吊りさせる。
【0047】
当該具体的な実施形態では、前記第1振動膜500に更に解放孔522a及び解放溝522bが開設され、具体的に、解放孔522a及び解放溝522bがいずれも前記第1振動部520に開設される。前記解放孔522aが円形であり、円周方式で前記第1振動部520の中心の周りに均一且つ対称的に配置され、前記解放溝522bが円弧状溝であり、前記解放孔522aの周囲に対称的に配置され、マイクの形成過程において犠牲層を解放する効率及び均一性を向上させることができる。前記解放孔522a及び解放溝522bはマイクを形成した後に空気抜け構造とされてもよい。
【0048】
前記バックプレート600のエッジが第2絶縁層120によって第1振動膜500の表面に支持されることにより、前記バックプレート600を第1振動膜500の上方に宙吊りさせ、前記バックプレート600と第1振動膜500とが第1可変容量を構成し、前記バックプレート600が上部電極とされ、第1振動膜500が下部電極とされる。前記バックプレート600は独立した導電層であってもよいし、絶縁層と導電層とからなる複合構造であってもよく、バックプレート600の硬度を向上させ、変形の発生を回避する。この具体的な実施形態では、前記バックプレート600は窒化シリコン層601と、前記窒化シリコン層601の表面に位置する多結晶シリコン層602とを備える。
【0049】
前記バックプレート600に音孔603が開設され、音波が第1振動膜500を振動させた後、第1可変容量内の気圧変化が前記音孔603を介して第2可変容量に伝達されることに役立ち、且つ、第1振動膜500を通る音波がある場合、前記音孔603を継続通過して第2振動膜700に作用させ、それによりマイクの有効信号を強化することもできる。
【0050】
前記バックプレート600に更に複数の接続孔604が開設され、この具体的な実施形態では、4つの接続孔604が開設され、それらは前記バックプレート600の中心を円心としてバックプレート600に対称的且つ均一に配置され、第1振動部520の上方に位置する。本発明の他の具体的な実施形態では、バックプレート600の中心の周囲に2つ、3つ、5つ又は他の数の複数の接続孔を設置してもよい。
【0051】
図8に示すように、前記第2振動膜700はエッジに位置する第2固定部710と、前記第2固定部710により取り囲まれる第2振動部720とを備える。前記第2振動部720が少なくとも1つの第2弾性ビーム721を備え、前記第2固定部710と前記第2振動部720との間に前記第2振動膜700を貫通する溝730を有し、前記溝730が空気抜けのための空気抜け構造とされてもよいし、犠牲層の解放過程において、腐食液体を輸送する解放溝とされてもよい。
【0052】
当該具体的な実施形態では、前記第2振動部720は第2振動部720の本体の円周に沿って均一に配置される4つの第2弾性ビーム721を備える。前記第2弾性ビーム721は折り畳みビーム構造であり、他の具体的な実施形態では、片持ビーム、U字型ビーム等の他のビーム構造を用いてもよい。この具体的な実施形態では、前記第2振動膜700は部分固定支持屈曲ビーム膜であり、前記溝730は前記第2振動部720と第2固定部710とを完全に切断し、前記第2振動部720と第2固定部710とを完全に分離させる。前記第2固定部710は第3絶縁層130によってバックプレート600の表面に支持される。前記第2弾性ビーム721は吊りビーム721aとアンカー721bとを備え、前記アンカー721bが下方の絶縁層131を介してバックプレート600に接続されることにより、前記第2振動部720を前記バックプレート600の上方に支持宙吊りさせ、前記第2振動膜700と前記バックプレート600とが第2可変容量を構成し、前記バックプレート600が第2可変容量の下部電極とされ、前記第2振動膜700が第2可変容量の上部電極とされる。
【0053】
前記第2振動膜700はバックプレート600の方向に凹んだ凹部701を有し、前記凹部701の数及び位置がバックプレート600における接続孔604の数及び位置に対応し、前記凹部701が前記バックプレート600の接続孔604を通って前記第1振動膜500に絶縁接続される。前記凹部701の数、位置がバックプレート600の接続孔604に対応する。前記凹部701と前記第1振動膜200との間がバックプレート600の沈降部605によって接続され、前記バックプレート600は窒化シリコン層601と、窒化シリコン層601の表面に位置する多結晶シリコン層602とを備え、従って前記凹部701と第1振動膜500とを絶縁接続させる。本発明の他の具体的な実施形態では、前記バックプレート600に前記沈降部605が形成されず、前記凹部701と第1振動膜500との間が更に追加形成された絶縁層によって接続されてもよい。前記第2振動膜700が第1振動膜500に接続されることにより、前記第2振動膜700及び第1振動膜500が音波に対して同じ方向の振動フィードバックを有することができる。且つ前記第2振動膜700と第1振動膜500との接続箇所も第2振動膜700に対して支持の役割を果たし、それにより第2振動膜700の宙吊り状態をより安定化させ、信頼性を更に向上させる。さらに、前記第2振動膜700の凹部701が第1振動膜500に接続されることにより、第2応力の導入を回避することができ、且つ第2振動膜700の内部応力を解放し、デバイスの信頼性及びセンシング精度を向上させることに役立つ。
【0054】
当該具体的な実施形態では、前記凹部701と前記第1振動膜500との接続箇所には前記凹部701と前記第1振動膜500とを貫通する空気抜け構造702が開設される。本発明の他の具体的な実施形態では、前記凹部701と前記第1振動膜500との接続箇所の周りの第1振動膜500及び第2振動膜700のみに空気抜け構造を空気抜け通路として開設してもよい。接続箇所の周りに空気抜け構造を開設することと比べて、接続箇所に形成された空気抜け構造702の空気抜けストロークが短いため、空気抜けがより迅速で、効果的である。
【0055】
上記具体的な実施形態では、前記マイクの第1振動膜とバックプレートとが第1容量を形成し、バックプレートと第2振動膜が第2容量を形成し、前記第1容量と第2容量とが差動コンデンサを構成し、動作過程において差動信号を出力することにより、感度を向上させ、マイクの信号対雑音比を向上させることができる。且つ、第1振動膜が第2振動膜に接続されることにより、前記第2振動膜が第1振動膜とともに同じ方向に振動することができ、信号の精度を向上させる。
【0056】
前記第1振動膜及び第2振動膜は複数の構造形態を有してもよく、それぞれが完全固定支持膜、部分固定支持屈曲ビーム膜又は完全固定支持屈曲ビーム膜等の構造のうちのいずれか1つであってもよい。一方、前記第2振動膜と第1振動膜との接続箇所に空気抜け構造を開設することにより、空気抜け構造の空気抜け効率を効果的に向上させ、マイクの信頼性を向上させることができる。
【0057】
以上の説明は単に本発明の好適な実施形態であり、指摘すべきことは、当業者であれば、本発明の原理を逸脱せずに種々の改良や修飾を行うことができ、これらの改良や修飾も本発明の保護範囲に属すると見なされるべきである。