(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ハウジングイン方式で製造された表示装置の構成を示す模式分解斜視図である。貼り合された上下基板100、それを支持および収納するケース部101および表示部分が開口されたハウジング102を含むユニットを表示モジュール103と呼ぶ。上下基板100は、例えばカラーフィルタ(CF(Color Filter))基板と薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))基板からなる液晶表示パネルである。ケース部101は、例えば、バックライトユニットである。ハウジング102は、例えば、金属ベゼルである。
【0016】
表示モジュール103の表示部に、透明な樹脂であるOCR104を介して前面パネル106を全面的に貼り合せた表示装置がある(
図1参照)。前面パネル106は、例えば、投影型静電容量式タッチパネルPCAP(Projected Capacitive Touch panel)または強化ガラスである。
【0017】
このような表示装置を製造するに当たって、硬化する前のOCR104が表示モジュール103内部に漏れ出さないよう、ハウジング102と上下基板100との隙間に樹脂製のシール材をあらかじめ形成しておく手法がある。便宜上、このシール材を設けることをダム形成、使用する樹脂をダム材、形成されたシール部分を樹脂ダム(樹脂部材)105と呼ぶ。
【0018】
ハウジングアウト方式の基本的な製造プロセスは、特許文献1に公開されている。ハウジングイン方式の基本的な製造プロセスは、特許文献2に公開されている。どちらの製造プロセス(および製品構造)を選択するかは、製品の仕様、開発コストおよび事業方針等による。本願発明においては、ハウジングイン方式での課題解決を目指している。
【0019】
比較例であるハウジングアウト方式の製造プロセスの概略を
図2に示す。ハウジングイン方式の製造プロセスの概略を
図3に示す。ハウジングアウト方式で製造された表示装置の構成を
図4に示す。ハウジングイン方式で製造された表示装置の構成を先にあげた
図1に示す。
【0020】
図2を使用して、ハウジングアウト方式の製造プロセスの概略を説明する。
図2Aに示すように、ワークである上下基板100を水平な状態に配置して、以後の工程の準備を行う。
図2Bに示すように、ディスペンス装置300を用いて上下基板100の縁に沿って一筆書きによりダム材を塗布する。この際、塗布を開始する形成開始端502(
図11参照)と、塗布を終了する形成終了端503(
図11参照)とが重なる樹脂ダム接合部504(
図11参照)も形成される。なお、ダム材の塗布を2回以上に分けて行っても良い。このようにする場合には、樹脂ダム接合部504も複数形成される。紫外線ランプ301を用いてUV照射を行い、ダム材を硬化させて樹脂ダム105を形成する。
【0021】
図2Cに示すように、樹脂ダム105の内側にOCR104を塗布する。OCR104は、複数のノズルを有するディスペンス装置300を用いて、一様な厚さに塗布することが望ましい。
図2Dに示すように、前面パネル106をかぶせることにより、上下基板100と前面パネル106との間にOCR104を挟む。この際、上下基板100の下面を保持しながら、前面パネル106の上面に荷重を加える(
図9B参照)。
【0022】
図2Eに示すように、紫外線ランプ301を用いて弱いUV照射を行い、OCR104を仮硬化させる。
図2Fに示すように、強力紫外線ランプ302を用いて強いUV照射を行い、OCR104を完全硬化させる。その後、前面パネル106が固定された上下基板100を、ケース部101とハウジング102との間に組み込む。
【0023】
図3を使用して、ハウジングイン方式の製造プロセスの概略を説明する。ハウジングアウト方式と同様の部分については、説明を省略する。
図3Aに示すように、ワークである表示モジュール103を水平な状態に配置して、以後の工程の準備を行う。
図3Bに示すように、ディスペンス装置300を用いてハウジング102の開口端部に沿って一筆書きによりダム材を塗布する。紫外線ランプ301を用いてUV照射を行い、ダム材を硬化させて樹脂ダム105を形成する。
【0024】
図3Cに示すように、樹脂ダム105の内側にOCR104を塗布する。
図3Dに示すように、前面パネル106をかぶせることにより、表示モジュール103と前面パネル106との間にOCR104を挟む。この際、ケース部101の下面を保持しながら、前面パネル106の上面に荷重を加える(
図9A参照)。
【0025】
図3Eに示すように、紫外線ランプ301を用いて弱いUV照射を行い、OCR104を仮硬化させる。
図3Fに示すように、強力紫外線ランプ302を用いて強いUV照射を行い、OCR104を完全硬化させる。以上により、表示モジュール103と前面パネル106とが固定される。
【0026】
図5は、樹脂ダム105の形状がハウジング102の開口端部に沿って変化する場合の例を示す模式拡大斜視図である。
図5は、ハウジングイン方式の場合を示す。ディスペンス装置300からのダム材の吐出量の変動等により、ハウジング102の開口端部に沿って、
図5に示すように樹脂ダム105の太さ、形状および位置等が変動する場合がある。なお、ディスペンス装置300は、このような変動をできるだけ抑制するように、設定される。
【0027】
以下の説明において、
図5中に示す切断線で切断した模式断面図を使用する場合がある。模式断面図の図番と、
図5中の切断位置との関係は、切断線の両端に示す符号により示す。
【0028】
ハウジングイン方式とハウジングアウト方式のそれぞれの表示装置の断面構造(
図1のVI−VI断面と、
図4のVI−VI断面)の比較を
図6に示す。ハウジングイン方式(
図3参照)が、ハウジングアウト方式(
図2参照)と異なる点は、以下の通りである。準備するワークが、上下基板100から表示モジュール103であること。樹脂ダム105を配置する場所が、上下基板100の外周ではなくハウジング102の開口端部であること。前面パネル106の接着後に組込作業が不要なこと。
【0029】
ハウジングアウト方式とハウジングイン方式とでは、製造順序が異なるため、部材配置と形状に違いが生じる。
図6に示す通り、ハウジングアウト方式(
図6B参照)では、貼り合される上下基板100と前面パネル106の間には、接着剤であるOCR104とOCR104の漏れを抑制する樹脂ダム105しか存在しない。ハウジングイン方式(
図6A参照)では、上下基板100と前面パネル106との間にハウジング102も存在する。したがって、ハウジングイン方式の場合には、貼り合せ時の上下基板100の保持構造と、OCR104およびダム105材へのUV照射手順とに制限が加わる。
【0030】
図7から
図11は、課題を説明する図である。
図7において、「OK」はOCR104または樹脂ダム105にUV照射を行えることを示している。
図7において、「NG」は、ハウジング102等の非透光性の部材に遮られて、OCR104または樹脂ダム105にUV照射を行えないことを示している。ハウジングアウト方式(
図7B参照)の場合は、UV照射方向に制限は有るものの、UV照射が不可能な領域は存在しない。したがって樹脂ダム105を越えてOCR104が漏れ出すということについて注意する必要はない。
【0031】
一方、ハウジングイン方式(
図7A参照)の場合は、上下基板100とハウジング102に挟まれた空間に、UV照射が不可能な領域(UV照射不能域)501が存在する。ハウジングイン方式の場合には、UV照射不能域501を解消することはできない。したがって、樹脂が漏れ出さないように対策を施すか、あらかじめUV照射不能域501を何らかの方法で埋めておくかの対策が必要である。しかし、ハウジングイン方式において、上下基板100とハウジング102の間に物を挟むことは、表示異常を誘発する恐れがある上、材料コスト増の原因にもなる。そのため、UV照射不能域501に樹脂ダム105材およびOCR104等の樹脂を漏れ出させないための対策を講じる必要がある。
【0032】
ハウジングイン方式でのダム形成位置には、大まかに二通りがある。一つは、ハウジング102に接触している(
図8A参照)場合、もう一つは、非接触(
図8B参照)の場合である。非接触の場合には、もしOCR104が樹脂ダム105を越えて漏れ出した場合には、OCR104がUV照射不能域501へ浸入する。UV照射不能域501へ浸入したOCR104をUV硬化させることはできない。硬化させることができなかったOCR104は、後々表示面内へ染み出し表示異常を誘発するおそれがある。
【0033】
ハウジング102に樹脂ダム105が接触していれば(
図8A参照)、OCR104が樹脂ダム105を越えて漏れ出した場合でも、OCR104をUV硬化させることができる。よってハウジングイン方式での樹脂ダム105は、ハウジング102に接触していることが望ましい。このとき、樹脂ダム105は、OCR104のはみ出しを抑制する役割と、はみ出したOCR104がUV照射不能域501へ浸入することを防止する役割との二つの役割を有する。
【0034】
ハウジングイン方式でのワークである上下基板100はケース部101の周囲辺でのみ保持されている。そのため、前面パネル106に荷重が加わった場合には、上下基板100の中央部が沈み込んでたわむ(
図9A参照)。このようなたわみ現象は、ハウジングアウト方式(
図9B参照)では発生しない。
【0035】
ハウジング102は0.4〜1.0ミリメートル程度の厚みである。したがって、樹脂ダム105とハウジング102の開口端部との間の接着面積は小さい。そのため、
図9Aを使用して説明した上下基板100がたわむ現象により、荷重に耐えきれずに、樹脂ダム105がハウジング102の開口端部から乖離する場合がある。乖離が生じた場合には、硬化前のOCR104が、樹脂ダム105を越えてUV照射不能域501に漏れ出してしまう(
図10参照)。
【0036】
このような現象に対する対策として、ハウジング102と乖離し難いダム材を選択する方法も考えられる。しかし、下記の理由により、その方法の採用は困難である。まず、前面パネル106付きの表示装置としての用途を考えた場合には、ダム材には以下のような様々な特性が要求される。表示装置として視認の邪魔にならない透明性を有すること。OCR104との相性が良いこと。UV硬化後に、表示異常(押圧ムラや波紋状のムラ)を起こさない程度の柔らかさ(硬度)を有すること。OCR104のはみ出しを抑制する強靱性を有すること。硬化前のディスペンス精度および作業性に影響する粘度が、適正な値であること。ハウジング102から乖離し難い接着性を備えること。ダム材およびOCR104の物性については、特許文献3にも開示されている。しかし、特許文献3においては、ダム材とハウジング102との接着性について考慮されていない。それ故に、構造や形状での工夫が必要になる。
【0037】
ダム材の形状の工夫として、特許文献2には、樹脂ダム105をハウジング102の開口端を覆うように形成する技術が開示されている(実施例3)。しかしながら、OCR104として上下基板(表示パネル)100側に第1接着剤、前面パネル(透光性基板)106側に第2接着剤を形成して、貼り合せを行うため、製造工程が複雑になる。
【0038】
さらに、未硬化のダム材がUV照射不能域501に流れ込まないようにするため、ダム材を素早く硬化させる必要がある。これにより、ダム材の形成開始端502と形成終了端503との接合部である樹脂ダム接合部504が膨らむという問題を生じる(
図11参照)。表示パネルのように貼り合わされた上下基板100をワークとする場合には、この樹脂ダム接合部504の膨らみ508が製品として許容される範囲は狭い。局所的な膨らみ508がある場合には、その場所を基点として、表示異常(押圧ムラや波紋状のムラ)が発生するおそれがあるからである。したがって、ディスペンス装置300を用いて樹脂ダム105を塗布する際に、適正な範囲に条件を制御することが困難な場合がある。
【0039】
膨らみ508の適合性について、
図12を用いて説明する。樹脂ダム105の形成開始端502と終了端503との接合部である樹脂ダム接合部504の膨らみ508が、周囲の樹脂ダムの高さ507より低いこと、および樹脂ダム接合部504の凹みがUV照射不能域501へ通じていないことの両方が必要である。
【0040】
図12Aから
図12Eは、膨らみ508の形状の異なる5種類の例を示す。
図12の各図の上側は、
図11に示す斜視図を図中上側から見た上面図である。
図12の各図の下側は、
図11に示す斜視図を図中右側から見た側面図である。
図12Aおよび
図12Bは、膨らみ508が周囲より高いため、不適合である。
図12Cおよび
図12Dは、膨らみ508が周囲より低く、凹みが照射不能域501へ通じていないため、適合である。
図12Eは凹みがUV照射不能域501へ通じているため不適合である。
【0041】
前述の通り、ハウジング102は、厚みが0.4〜1.0ミリメートル程度である。そのため、ディスペンス装置300の形成条件(ノズル幅、塗付位置、吐出開始および終了のタイミング、吐出圧力、吐出速度、サックバック圧力など)の調整を行い、
図12Cまたは
図12Dの形状を安定的に作製することは困難である。
【0042】
まず最初に、本願発明に係る表示装置の全体の構成について説明する。表示モジュール103は、貼合された上下基板100、上下基板100を収納するケース部101および表示部が開口しているハウジング102を含む。表示装置は、表示モジュール103と、上下基板100の表面にOCR104およびOCR104の漏えいを抑制する樹脂部材105を介して貼り付けられた前面パネル106を有する(
図1参照)。
【0043】
表示モジュール103のハウジング102は、上下基板100と前面パネル106の間に挟まれる位置に配置されている。ハウジング102の開口端部には、樹脂部材105が接触している。樹脂部材105は、単純にハウジング102に接触しているだけでなく、ハウジング102と樹脂部材105との乖離防止のため、ハウジング102の上面(前面パネル106側の面)に端掛けされるように設けられている(
図6A参照)。
【0044】
このような構造にすることにより、OCR104のはみ出しを抑制することが可能である。さらにOCR104がはみ出した場合であっても、またはみ出したOCR104が表示モジュール103の内部へ浸入することを防止することができる。
【0045】
樹脂部材105の形状および高さの変動を吸収するために、樹脂部材105が端掛けされているハウジング102の開口端部に、部分的にコーナー処理が施されている。具体的には、樹脂部材105の接合部である樹脂ダム接合部504に対応する位置に、部分的なコーナー処理(斜面、L字面、凹曲面、凸曲面等の加工面500)を施す。コーナー処理により樹脂部材105の膨らみ508を抑えて、表示異常の発生を防止する。
【0046】
製造設備および製造条件の調整により、樹脂ダム接合部504の膨らみ508を解消できない場合がある。例をあげると、選択したダム材が硬く、樹脂ダム接合部504の膨らみ508の影響をダイレクトにワークへ伝えてしまう場合、または樹脂ダム接合部504に残る少しの膨らみ508によっても、過敏に表示異常が起こるワークである場合である。このような場合であっても、樹脂ダム接合部504に位置するハウジング102の開口端部の一部分にコーナー処理を施して加工面500(
図14参照)を設けておくことで、表示異常を軽減できる。加工面500は、具体的には斜面、L字面、凹曲面、凸曲面の少なくともいずれかである。実現可能なコーナー処理の形状、深さ、面積は、ハウジング102の厚みおよび材質に依存する。
【0047】
コーナー処理を施すことにより、加工面500の深さ分だけ樹脂ダム接合部504の膨らみ508を低くすることができる。そのため、表示異常を発生させず、ハウジング102から乖離しない樹脂ダム105の形成が容易となる。このため、表示装置の表示品質および製造歩留を向上できる。またダム材および使用する設備の選択肢を広げることも可能になる。
【0048】
ハウジング102は、前面パネル106との貼り合せが不要な表示モジュール製品との共用が可能であるので、開発コストを抑制できる。前面パネル106を後からハウジングイン方式で貼り合せることを見越して、設計および開発を進めておくことにより、追加開発費用も不要となる。
【0049】
以下では、タッチパネル付き液晶表示装置を例に説明を行うが、これに限定されるものでは無い。押圧によって表示異常を起こす上下基板100が、ハウジング102とケース部101との間に組み込まれた表示モジュール103の表示面に、前面パネル106を貼り合せる表示装置すべてに同様の効果が期待できる。上下基板100は、例えばプラズパネル、有機ELパネルおよび電子ペーパーパネル等である。前面パネル106は、例えばタッチパネルまたは補強ガラス等である。
【0050】
構造上、貼り合わされた上下基板100と前面パネル106との間にハウジング102が挟まれており、ダム材がハウジング102の上面端部(前面パネル106側の表面端部)に端掛けされていることが必要である。ハウジング102の材質には特に制約は無いが、一般的に金属板金または樹脂成型が用いられる。以下の説明では金属ベゼルを例に取り上げる。
【0051】
図13は、ハウジング102の基本断面形状を示す図である。上下基板100と接触する可能性のあるハウジング102の裏面は、表示異常(押圧ムラや波紋状のムラ)を誘発しない程度に平滑面であることが望ましい。ハウジング102の裏面は、表示異常を誘発しなければ、どのような状態や形状でも構わない。上下基板100の厚みを調整するための形状(
図13参照)や電気的な導通を目的とした金属片など、付属品の有無は特に問わない。
【0052】
以下の説明は余計な形状や付属物の無い平滑面形状(
図13A参照)を使用して行う。ハウジング102の開口端部の前面パネル106側の表面基準線505と側面基準線506とが交わる稜線の部分に、以下に説明するコーナー処理を施す。
【0053】
図14は、
図13との組み合わせで展開できるハウジング102の開口端部のコーナー処理の加工面500の形状を示す模式断面図である。
図14Aは斜面、
図14BはL字面、
図14Cは凹曲面、
図14Dは凸曲面の加工面500を示す。コーナー処理された後のハウジング102の開口端部が、表面基準線505および側面基準線506からはみ出さずに内側に後退しており、両基準線の交点o(コーナー処理を実施しない場合のハウジング102の稜線)に達していなければ、任意のコーナー処理形状を採用することができる。コーナー処理形状は、それぞれの複合形状であっても良い。複合形状の具体例については後述する。
【0054】
効果が期待できる順に並べると、
図14B>
図14C>
図14A>
図14Dである。寸法的にはa≧0.5ミリメートル且つb≧0.1ミリメートルが望ましい。ハウジング102の材質および加工方法によって、製作可能なコーナー処理部の形状は異なる。以下の説明は
図14Aおよび
図14Bに示す形状で行う。
【0055】
図15は、ハウジング102の開口端部のコーナー処理による加工面500の配置位置と幅(ハウジング102の開口端部に沿う長さ)とを示す部分断面図である。コーナー処理が施される位置は、
図15に示すように、樹脂ダム接合部504に対応する位置である。コーナー処理が施される部分の幅は、少なくとも樹脂ダム接合部504の樹脂が膨らんでいる部分を含む長さとする。
【0056】
図16は上記の樹脂ダム接合部504に対応する位置に加え、さらにハウジング102の開口端部全周にも加工面500が設けられる場合を示している。
図16Aおよび
図16Bは、加工面500の形状のバリエーションを示す。
図16Aおよび
図16Bの下側の図は、樹脂ダム接合部504に対応する部分近傍のハウジング102の拡大斜視図を示す。
図16Aおよび
図16Bの上側の図は、樹脂ダム接合部504に対応する部分で切断した、ハウジング102の断面図を示す。
図16に示す形状の詳細については、後述する。
【0057】
図17は、ハウジング102の開口端部のコーナー処理の形状の例を示す説明図である。なお、
図17においては、代表的な形状の例を記載する。
【0060】
それぞれの形状の場合に使用する、UV硬化型等のエネルギー線硬化型のダム材およびOCR104について、物性的な制約は無い。さらには、湿気硬化型、熱硬化型、二液硬化型、これらの硬化方式が複合した複合硬化型の樹脂等の、エネルギー線硬化型に比べて硬化に時間を要する樹脂を採用する場合であっても、UV硬化樹脂と同様の効果を得ることができる。いずれの樹脂材料を使用する場合であっても、ハウジング102の開口端部に端掛けを行った状態で樹脂ダム105を形成することにより、耐荷重を増す効果を得ることができる。
【0061】
[実施の形態1]
次に、具体的な実施の形態について説明する。
【0062】
図1は実施の形態1の表示装置の構成を示す図である。一般的な表示モジュール103は、上下基板(液晶表示パネル)100がケース部(バックライト)101とハウジング(金属ベゼル)102との間に組み込まれた構成である。表示モジュール103の表示面をワークとして、ハウジング102の開口端部に沿って全周に、UV硬化型の樹脂材料製の樹脂ダム105により隙間なくシールが施されている。樹脂ダム105で囲まれた表示面に、OCR104が均一の厚さで塗布されている。OCR104を介して上下基板100の表示面と前面パネル(タッチパネル)106とが貼り合わされている。ハウジング102の厚みは、10.4型以下の表示装置であれば0.4ミリメートル程度、19型以上の表示装置であれば1ミリメートル程度である。
【0063】
図18は、表示装置の模式断面図を示す。表示装置の断面を見た場合、ハウジング102と液晶表示パネル100との間には、0.2ミリメートル程度の隙間が空いている。ハウジング102の開口端部の上面(前面パネル106側の表面)に幅0.5ミリメートル、高さ0.3ミリメートル程度の樹脂ダム105材が液晶表示パネル100の表示面との間で端掛けされ、ハウジング102と樹脂ダム105とが乖離しないよう形成されている。
【0064】
図19は、斜面によるコーナー処理を、ハウジング102の樹脂ダム接合部504に対応する部分に施した例を示す模式部分拡大斜視図である。
図20は、L字面によるコーナー処理を、ハウジング102の樹脂ダム接合部504に対応する部分に施した例を示す模式部分拡大斜視図である。
図19および
図20に示すように、樹脂ダム接合部504に対応する部分のハウジング102にコーナー処理を施すことにより、膨らみ508を抑えることができる。そのため、膨らみ508に起因する表示異常の発生を抑制できる。
【0065】
図21は、
図19および
図20に示す形状における樹脂ダム接合部504の脹らみ508の適合性を説明する図である。
図21Aから
図21Eは、膨らみ508の形状の異なる5種類の例を示す。
図21の各図の上側は、
図19および
図20に示す斜視図を図中上側から見た上面図である。
図21の各図の下側は、
図19および
図20に示す斜視図を図中右側から見た側面図である。
【0066】
図21Aは、膨らみ508が周囲より高いため不適合である。
図21B、
図21Cおよび
図21Dは膨らみ508が周囲よりも低く、凹みが照射不能域501へ通じていないため、適合である。
図21Eは、凹みが照射不能域501へ通じているため不適合である。
【0067】
図19および
図20に示すように、ハウジング102の樹脂ダム接合部504に対応しる部分に部分的にコーナー処理を施すことで、樹脂ダム105の膨らみ508の高さを低減することができる。例えば、不適合である
図12Bと同程度の樹脂ダム105の膨らみ508の高さを、
図21Bに示す程度にまで軽減することにより、適合の状態にすることが可能になる。その結果、表示パネル100の表示異常の発生を抑制することができる。
【0068】
本実施の形態によると、樹脂ダム接合部504の膨らみ508を小さくすることができる。そのため、樹脂ダム接合部504の膨らみ508に起因する上下基板100の表示異常の発生を防止することができる。
【0069】
本実施の形態のハウジング102は、前面パネル106の貼り合せが不要な表示モジュール製品との共用も可能であるので、開発費用と開発期間を圧縮できる。
【0070】
なお、本願発明者らの実験によると、ハウジング102開口端部に樹脂ダム105を接触させただけの形状(
図8A参照)と比較して、ハウジング102上面に樹脂ダム105を端掛けした形状(
図18参照)では、2倍以上の強度が得られることが確認された。したがって、ハウジングイン方式で表示モジュール103と前面パネル106とを樹脂ダム105材およびOCR104を用いて貼り合せる場合には、樹脂ダム105は、
図18に示すような端掛け構造であることが望ましい。さらに表示異常の誘発を防止するために、樹脂ダム105はハウジング102の開口端部に凹凸少なく形成されていることが望ましい。
【0071】
前述した通り、ハウジングイン方式の場合にはUV照射不能域501が存在する。したがって、UV照射不能域501へ通じるパスが樹脂ダム105に有ってはならない。UV照射不能域501へ通じるパスが存在する不適合な樹脂ダム105の形状の例を示す模式断面図を、
図22に示す。
図22Aに示す例では、樹脂ダム105と上下基板100の間にパスが有る。
図22Bに示す例では、樹脂ダム105とハウジング102の間にパスが有る。
図22Cに示す例では、樹脂ダム105の間にパスが有る。
【0072】
[実施の形態2]
図10に示すように、樹脂ダム105をハウジング102開口端部に接触させるだけの場合には、必要最小限の量のOCR104を使用して製造することが可能である。しかし
図18に示すように、ハウジング102上面に樹脂ダム105を端掛けする場合は、樹脂ダム105の高さが0.3ミリメートル(20〜30パーセント)程度高くなる。そのため、製造に必要なOCR104の量が増えて、製造コストが上がってしまう。本実施の形態は、このような課題を緩和または解消することが可能な、ハウジング102の開口端部の形状に関する。実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0073】
図16は、本実施の形態のハウジング102の形状を示す図である。本実施の形態は、ハウジング102が厚い場合(0.6ミリメートル程度以上)に適している。ハウジング102の樹脂ダム接合部504に対応する位置に部分的にコーナー処理を施した上で、さらにハウジング102の開口端部の全周にわたって複合してコーナー処理を施している。
【0074】
本実施の形態によると、樹脂ダム接合部504の膨らみ508を抑制することによる表示品質の改善が可能である。また、樹脂ダム105の高さを低くすることによってダム材およびOCR104の使用量を削減することによる、製造コストの低減も可能である。
【0075】
図16Aは、斜面による全周のコーナー処理(
図14A参照)を施した上で、さらに樹脂ダム接合部504に対応する位置に斜面による部分的なコーナー処理(
図14A参照)を施したハウジング102の例を示す。
図16Bは、L字面による全周のコーナー処理(
図14B参照)を施した上で、さらに樹脂ダム接合部504に対応する位置にL字面による部分的なコーナー処理(
図14B参照)を施した例を示す。
【0076】
なお、全周のコーナー処理の形状と樹脂ダム接合部504に対応した部分的なコーナー処理の形状とを、一致させる必要は無い。ハウジング102の材質、形状、厚み等に応じて、
図14Aから
図14Dに示す形状等を種々組み合わせて選択することが可能である。
【0077】
[実施の形態3]
実施の形態1および実施の形態2では、表示モジュール103と前面パネル106とをOCR104を介して貼り合せるオプティカルボンディングの場合について説明した。本実施の形態は、表示モジュール103と前面パネル106とを空気層107を介して貼り合せるエアギャップボンディング構造の表示装置に関する。実施の形態1と共通する部分については説明を省略する。
【0078】
図23は実施の形態3の表示装置の構成を示す模式分解斜視図である。
図24は、実施の形態3の表示装置の模式断面図である。表示モジュール103と前面パネル106との間に、空気層107が存在する。ハウジング102と前面パネル106とは、両面テープ108により貼り合わされている。樹脂ダム105は空気層107へ異物が侵入することを防止するために設けられている。
【0079】
本実施の形態においては、実施の形態1および実施の形態2と同様に、樹脂ダム接合部504の膨らみ508を低くすることにより表示異常を防止することができる。また、樹脂ダム105をハウジング102の開口端部に端掛けるように構成することにより、ハウジング102から乖離しにくい樹脂ダム105を作製することができる。これにより、表示面内への異物侵入による表示品質の低下を防止することができる。
【0080】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。