特許第6870167号(P6870167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870167
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及びアクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/20 20060101AFI20210426BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20210426BHJP
   F16D 23/12 20060101ALI20210426BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F16H1/20
   F16D11/10 A
   F16D23/12 E
   H02K7/116
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-20713(P2017-20713)
(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公開番号】特開2018-128058(P2018-128058A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信太郎
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−142035(JP,A)
【文献】 特開2012−087611(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103457410(CN,A)
【文献】 実開平03−074070(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0000902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/20
F16D 11/10
F16D 23/12
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の入力により回転する駆動入力部と、
出力軸及び該出力軸と一体に回転する出力ギヤという複数組の前記出力軸及び出力ギヤと、
前記出力ギヤに噛合することにより前記駆動入力部の回転を前記出力ギヤに伝達する伝達ギヤと、
回動可能に軸支された操作軸が回動操作されることにより前記伝達ギヤを軸方向移動させて該伝達ギヤを前記出力ギヤに対して噛合させることが可能である切替機構と、を備えるとともに、
前記駆動入力部、前記出力軸、前記出力ギヤ、前記伝達ギヤ、及び前記操作軸が同軸に配置された駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項に記載の駆動伝達装置において、
軸方向に並ぶ複数の前記出力ギヤに対して前記伝達ギヤが同時に噛合可能であること、
を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の駆動伝達装置において、
同心状に配置された複数の前記出力軸を備えること、を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置において、
前記出力ギヤは、環状をなす前記駆動入力部の径方向内側に配置されるとともに、
前記伝達ギヤは、前記出力ギヤの外歯に対して噛合可能な内歯を有して前記駆動入力部の内周にスプライン嵌合されること、を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置において、
前記切替機構は、
前記操作軸と一体に回動するとともに周面に螺旋状のカム溝を有したカム体と、
回転不能な状態で前記伝達ギヤを回転自在に支持するとともに前記カム溝に係合する係合突部を有して前記伝達ギヤと一体に軸方向移動可能に設けられた保持部材と、
を備えてなること、を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置において、
前記操作軸の回動操作に基づき軸方向に移動して前記伝達ギヤと噛合していない前記出力ギヤに係合することにより該出力ギヤを回転不能に保持する回り止め部を備えること、
を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置において、
前記伝達ギヤ及び前記出力ギヤの少なくとも一方は、噛合部の軸方向端面が面取りされていること、を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置において、
前記操作軸を回動させる操作力の伝達経路に設けられた弾性部材を備えること、
を特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の駆動伝達装置を介してモータの回転を出力するアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置及びアクチュエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のアクチュエータ装置には、例えば、特許文献1に示すように、電磁クラッチを介してモータの回転を出力するものがある。また、例えば、特許文献2に記載のアクチュエータ装置は、二組の遊星歯車機構をクラッチ機構に用いることにより、選択的に、そのモータの回転を第1及び第2の出力軸から出力可能な駆動伝達装置を備えている。更に、例えば、特許文献3には、駆動力の入力により回転する駆動体の軸方向両側に一対の従動体を設けるとともに、これら各従動体と駆動体との間に、それぞれ、一方向の回転のみを伝達するワンウェイクラッチが設けられた駆動伝達装置が開示されている。そして、この駆動伝達装置は、これら2つのワンウェイクラッチに設定された互いに相反する回転伝達特性に基づいて、その2つの従動体の何れか一方側から回転出力を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3867534号公報
【特許文献2】特開2015−86524号公報
【特許文献3】特開2010−216565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来技術では、その駆動伝達装置の構造が複雑になる。そして、上記特許文献3に記載の従来技術では、小型化可能な構成ではあるものの、その出力部となる各従動体を逆回転させることができないという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、回転出力の切替自由度を確保しつつ、構成の簡素化及び小型化を図ることのできる駆動伝達装置及びアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、駆動力の入力により回転する駆動入力部と、出力軸及び該出力軸と一体に回転する出力ギヤという複数組の前記出力軸及び出力ギヤと、前記出力ギヤに噛合することにより前記駆動入力部の回転を前記出力ギヤに伝達する伝達ギヤと、回動可能に軸支された操作軸が回動操作されることにより前記伝達ギヤを軸方向移動させて該伝達ギヤを前記出力ギヤに対して噛合させることが可能である切替機構と、を備えるとともに、前記駆動入力部、前記出力軸、前記出力ギヤ、前記伝達ギヤ、及び前記操作軸が同軸に配置されることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、伝達ギヤを出力ギヤに噛合させることにより、この出力ギヤと一体に設けられた出力軸から、その駆動入力部に入力された駆動力に基づく回転を出力することができる。また、駆動入力部に入力される駆動力に基づいて、その出力軸の回転方向を切り替えることができる。更に、伝達ギヤを出力ギヤから脱離させることで、その回転伝達経路を切断することも可能になる。そして、その主たる構成要素となる駆動入力部、出力軸、出力ギヤ、伝達ギヤ、及び操作軸を同軸に配置することで、このような回転出力の切替自由度を確保しつつ、構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0009】
上記構成によれば、複数の出力軸間で、その駆動入力部に入力された駆動力に基づく回転出力を切り替えることができる。そして、これにより、より高い回転出力の切替自由度を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、軸方向に並ぶ複数の前記出力ギヤに対して前記伝達ギヤが同時に噛合可能であることが好ましい。
上記構成によれば、複数の出力軸から同時に、その駆動入力部に入力された駆動力に基づく回転を出力することができる。そして、これにより、より高い回転出力の切替自由度を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、同心状に配置された複数の前記出力軸を備えることが好ましい。
上記構成によれば、複数の出力軸が同一方向に延びるように各出力軸を配置することができる。そして、これにより、そのレイアウト自由度を高めることができる。
【0012】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、前記出力ギヤは、環状をなす前記駆動入力部の径方向内側に配置されるとともに、前記伝達ギヤは、前記出力ギヤの外歯に対して噛合可能な内歯を有して前記駆動入力部の内周にスプライン嵌合されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、回転伝達可能且つ軸方向移動可能な状態で、その駆動入力部に対して伝達ギヤを同軸に連結することができる。そして、この伝達ギヤとともに出力ギヤを駆動入力部の径方向内側に配置することで、その軸方向サイズの小型化を図ることができる。
【0014】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、前記切替機構は、前記操作軸と一体に回動するとともに周面に螺旋状のカム溝を有したカム体と、回転不能な状態で前記伝達ギヤを回転自在に支持するとともに前記カム溝に係合する係合突部を有して前記伝達ギヤと一体に軸方向移動可能に設けられた保持部材と、を備えてなることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、操作軸と一体にカム体が回動することにより、見かけ上、そのカム溝に係合する係合突部が、このカム溝内を移動する。更に、このカム溝に対する係合突部の係合位置に基づいて、その係合突部を有した保持部材が伝達ギヤとともに軸方向に移動する。そして、これにより、その伝達ギヤと出力ギヤとの間の噛合状態を切り替えることができる。
【0016】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、前記操作軸の回動操作に基づき軸方向に移動して前記伝達ギヤと噛合していない前記出力ギヤに係合することにより該出力ギヤを回転不能に保持する回り止め部を備えることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、伝達ギヤと噛合していない出力ギヤと一体に設けられた出力軸の回転位置を保持することができる。そして、これにより、その出力軸の回転により駆動される駆動対象の動作位置を保持することができる。
【0018】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、前記伝達ギヤ及び前記出力ギヤの少なくとも一方は、噛合部の軸方向端面が面取りされていることが好ましい。
上記構成によれば、軸方向に移動する伝達ギヤが、出力ギヤに対して円滑に係脱することができる。
【0019】
上記課題を解決する駆動伝達装置は、前記操作軸を回動させる操作力の伝達経路に設けられた弾性部材を備えることが好ましい。
上記構成によれば、伝達ギヤと出力ギヤとの間の噛合状態を切り替える際、これらの噛み合い位置が合わない場合に、弾性部材が弾性変形することで、その操作軸を回動させる力を一時的に蓄えることができる。そして、これにより、より円滑に、その伝達ギヤと出力ギヤとの噛合状態を切り替えることができる。
【0020】
上記課題を解決するアクチュエータ装置は、上記何れかの駆動伝達装置を介してモータの回転を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回転出力の切替自由度を確保しつつ、構成の簡素化及び小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】アクチュエータ装置の斜視図。
図2】アクチュエータ装置の側面図。
図3】アクチュエータ装置の平面図。
図4】アクチュエータ装置の分解斜視図。
図5】アクチュエータ装置の断面図(図3におけるV-V断面)。
図6】アクチュエータ装置の断面図(図3におけるVI-VI断面)。
図7】駆動伝達装置の断面図(第1の出力ギヤ噛合状態)。
図8】(a)〜(c)は、駆動伝達装置の断面図(図7におけるVIIIa-VIIIa断面,VIIIb-VIIIb断面,VIIIc-VIIIc断面)。
図9】駆動伝達装置の断面図(第2の出力ギヤ噛合状態)。
図10】(a)〜(c)は、駆動伝達装置の断面図(図9におけるXa-Xa断面,Xb-Xb断面,Xc-Xc断面)。
図11】駆動伝達装置の断面図(切断状態)。
図12】(a)〜(c)は、駆動伝達装置の断面図(図11におけるXIIa-XIIa断面,XIIb-XIIb断面,XIIc-XIIc断面)。
図13】(a)は、第1の出力ギヤの外歯を示す斜視図、(b)は、第2の出力ギヤの外歯を示す斜視図、(c)は、伝達ギヤの外歯及び内歯を示す斜視図。
図14】(a)(b)は、駆動伝達装置の別例を示す断面図(a:接続状態、b:切断状態)。
図15】駆動伝達装置の別例を示す断面図。
図16】アクチュエータ装置の別例を示す断面図。
図17】(a)〜(d)は、駆動伝達装置の別例を示す断面図(a:第1の出力ギヤ噛合状態、b:第2の出力ギヤ噛合状態、c:第1及び第2の出力ギヤ噛合状態、d:切断状態)。
図18】駆動伝達装置の別例を示す断面図。
図19】(a)(b)は、駆動伝達装置の別例を示す断面図(図18におけるXIXa-XIXa断面,XIXb-XIXb断面)。
図20】アクチュエータ装置の別例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、駆動伝達装置及びアクチュエータ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1図4に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、駆動源となるモータ2と、扁平箱状を成す収容ケース3の内側に収容された駆動伝達装置10と、を備えている。また、このアクチュエータ装置1は、回転可能な状態で、その収容ケース3の底部3aから突出する出力軸20を備えている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、その駆動伝達装置10に入力したモータ2の回転を、この出力軸20から出力する構成になっている。
【0024】
詳述すると、本実施形態の収容ケース3は、有底略円筒状のギヤ収容部23を有した第1のケース部材25と、そのギヤ収容部23の開口端を閉塞する第2のケース部材26と、を備えている。また、本実施形態のモータ2は、図示しないモータ軸を、そのギヤ収容部23内に挿入する態様で第1のケース部材25に固定されている。そして、本実施形態の駆動伝達装置10は、このギヤ収容部23内に収容された複数のギヤ部材30と、これら各ギヤ部材30の噛合状態を切り替える切替機構31と、を備えて構成されている。
【0025】
図4図6に示すように、本実施形態の駆動伝達装置10は、扁平略円筒状の外形を有するホイールギヤ32を備えている。本実施形態のアクチュエータ装置1において、このホイールギヤ32は、回転可能な状態で、その底面23sに摺接しつつ、第1のケース部材25のギヤ収容部23内に収容されている。更に、このホイールギヤ32は、その外周に設けられた外歯33が、ギヤ収容部23内に突出するモータ軸に固定されたウォームギヤ(図示略)に対して噛合する。そして、本実施形態の駆動伝達装置10は、これにより、その駆動入力部となるホイールギヤ32が、モータ2の駆動力に基づき回転する構成になっている。
【0026】
また、本実施形態の収容ケース3は、このホイールギヤ32と同軸となる位置(各図中、軸線L上)に、その第1のケース部材25を厚み方向に貫通してギヤ収容部23の底面23sに開口する孔部34を備えている。そして、本実施形態の駆動伝達装置10は、この孔部34に挿通される第1及び第2の出力軸41,42を備えている。
【0027】
具体的には、本実施形態の駆動伝達装置10において、第1の出力軸41は、ホイールギヤ32と同軸位置において回転可能に軸支されている。また、第2の出力軸42は、中空軸状に形成されることにより第1の出力軸41に外嵌する状態で当該第1の出力軸41と同心状に配置されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これら第1及び第2の出力軸41,42が、その出力軸20として、収容ケース3の底部3aから突出する構成になっている。
【0028】
尚、本実施形態では、収容ケース3の底部3aから突出した第2の出力軸42の先端部分には、その回転出力を取り出すためのギヤ部42aが設けられている(図1図3参照)。そして、この第2の出力軸42の先端部分から突出した第1の出力軸41の先端部分にも、その回転出力を取り出すためのギヤ部41aが設けられている。
【0029】
また、本実施形態の駆動伝達装置10は、その第1の出力軸41と一体に回転する第1の出力ギヤ43、及び第2の出力軸42と一体に回転する第2の出力ギヤ44を備えている。本実施形態のアクチュエータ装置1において、第2の出力ギヤ44は、ギヤ収容部23の底面23sとの間に上記ホイールギヤ32(の摺接部)を挟む軸方向位置において、その第2の出力軸42の径方向外側に延びるフランジ状の外形を有して当該第2の出力軸42と一体に形成されている。更に、第1の出力軸41は、ギヤ収容部23の内側において、その軸方向端部41bが第2の出力軸42の軸方向端部42bから突出する状態となっている。そして、第1の出力ギヤ43は、この第1の出力軸41の軸方向端部41bに固定されている。
【0030】
更に、本実施形態の駆動伝達装置10は、その軸方向に隣り合う第1及び第2の出力ギヤ43,44間に配置されることにより、これら第1及び第2の出力ギヤ43,44を軸方向に離間させるスペーサ45を備えている。本実施形態のアクチュエータ装置1において、このスペーサ45は、中心部分に第1の出力軸41の軸方向端部41bが挿通される孔部46を備えた円板形状をなしている。また、このスペーサ45の両平面部には、それぞれ、その孔部46を中心として軸方向に突出する円環突部47が設けられている。そして、本実施形態の各出力ギヤ50(43,44)は、それぞれ、このスペーサ45に設けられた円環突部47に摺接する状態で、その一体に設けられた出力軸20(41,42)とともに、互いに独立して回転することが可能になっている。
【0031】
さらに詳述すると、本実施形態の駆動伝達装置10において、その駆動入力部を構成するホイールギヤ32の内周には、軸方向に延びる複数の溝部51が設けられている。また、本実施形態の駆動伝達装置10は、これらの溝部51に噛合する外歯52を有したリング状の伝達ギヤ53を備えている。更に、本実施形態の駆動伝達装置10において、第1及び第2の出力ギヤ43,44は、略同一の直径を有して環状をなすホイールギヤ32の径方向内側に配置されている。そして、伝達ギヤ53の内周には、これらの各出力ギヤ50(43,44)の外歯54(55,56)に対して噛合可能な内歯57が設けられている。
【0032】
即ち、本実施形態の伝達ギヤ53は、ホイールギヤ32の内周にスプライン嵌合することにより、軸方向移動可能且つ回転伝達可能な状態で、このホイールギヤ32に連結されている。また、本実施形態の駆動伝達装置10は、その出力軸20(41,42)と同軸位置において回動可能に軸支された操作軸60を備えている。更に、本実施形態の切替機構31は、この操作軸60が回動操作されることにより、その伝達ギヤ53を軸方向に移動させる。そして、本実施形態の駆動伝達装置10は、この伝達ギヤ53が出力ギヤ50(43,44)に噛合することにより、その出力ギヤ50と一体に設けられた出力軸20(41,42)から、モータ2の駆動力に基づく回転を出力する構成になっている。
【0033】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置1において、操作軸60は、その軸方向一端側(各図中、下側の端部)が、第1の出力軸41の軸方向端部41b、詳しくは、その軸端面に設けられた凹部61に挿入される状態で、この第1の出力軸41と同軸に配置されている。また、この第1の出力軸41の軸方向端部41b側に開口したギヤ収容部23を閉塞する第2のケース部材26には、その操作軸60の軸方向他端側が挿通される孔部62が設けられている。そして、この孔部62を介して収容ケース3の蓋部3bから突出した操作軸60の先端部分には、その操作軸60を回動操作するための操作レバー63が固定されている(図1図3参照)。
【0034】
一方、本実施形態の切替機構31は、この操作軸60と同軸に一体に回動するとともに周面に螺旋状のカム溝64aを有したカム体64を備えている。尚、本実施形態のアクチュエータ装置1において、このカム体64は、略円柱状の外形を有して操作軸60と一体に形成されている。そして、本実施形態の操作軸60は、このカム体64の軸端面が第1の出力軸41の軸端面に摺接する状態で回動可能に軸支されている。
【0035】
また、本実施形態の切替機構31は、伝達ギヤ53を回転自在に支持しつつ、回転不能、且つ、その保持する伝達ギヤ53とともに軸方向移動な状態で、収容ケース3に支持されたスリーブ65を備えている。そして、このスリーブ65には、その操作軸60と一体に回動するカム体64のカム溝64aに係合する係合突部として係合ピン66が設けられている。
【0036】
詳述すると、本実施形態のスリーブ65は、操作軸60に設けられたカム体64を内側に配置する孔部67を有した扁平円柱状の外形を有している。また、このスリーブ65の外周には、その全周に亘って延びる環状溝68が形成されている。尚、本実施形態のスリーブ65は、この環状溝68が形成された軸方向位置において、その孔部67内に突出する一対の係合ピン66を備えている。更に、本実施形態の切替機構31は、このスリーブ65に設けられた環状溝68に対して摺動可能に係合するリング部69aと、このリング部69aから軸方向に延びる複数の脚部69bと、を備えたギヤホルダ69を有している。そして、本実施形態の伝達ギヤ53は、このギヤホルダ69の脚部69bに固定されることにより、当該ギヤホルダ69と一体に回転可能な状態で、その保持部材としてのスリーブ65に支持されている。
【0037】
また、本実施形態のアクチュエータ装置1は、収容ケース3の蓋部3bに固定されることにより当該蓋部3bに設けられた孔部70を介してギヤ収容部23内に挿入される複数のガイド部71を有した支持部材72を備えている。尚、本実施形態のアクチュエータ装置1において、この支持部材72は、金属からなる板材を折り曲げ加工することにより形成されている。更に、本実施形態のスリーブ65は、当該スリーブ65を軸方向に貫通する複数の孔部73を有している。そして、本実施形態のスリーブ65は、これらの各孔部73に対して支持部材72の各ガイド部71が挿通されることにより、回転不能且つ軸方向移動な状態で収容ケース3に支持されている。
【0038】
即ち、本実施形態のアクチュエータ装置1は、収容ケース3の蓋部3b側に設けられた操作レバー63を回動操作することにより、その操作軸60が回動する。また、本実施形態の切替機構31は、この操作軸60と一体にカム体64が回動することにより、見かけ上、そのカム溝64aに係合する係合ピン66が、このカム溝64a内を移動する。更に、このカム溝64aに対する係合ピン66の係合位置に基づいて、その係合ピン66を支持するスリーブ65が伝達ギヤ53とともに軸方向に移動する。そして、本実施形態の切替機構31は、これにより、この伝達ギヤ53と出力ギヤ50(43,44)との間の噛合状態を切り替える構成になっている。
【0039】
具体的には、図7及び図8(a)〜(c)に示すように、本実施形態の駆動伝達装置10は、操作レバー63を介して操作軸60が第1方向に回動操作され(図3参照、同図中、時計回り方向)、その伝達ギヤ53が、図7中、軸方向上側(図6参照、収容ケース3の蓋部3b側)に移動することで、当該伝達ギヤ53が第1の出力ギヤ43に噛合する。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、そのホイールギヤ32の回転が、この第1の出力ギヤ43と一体に設けられた第1の出力軸41から出力される。
【0040】
また、図9及び図10(a)〜(c)に示すように、本実施形態の駆動伝達装置10は、操作レバー63を介して操作軸60が第2方向に回動操作され(図3参照、同図中、反時計回り方向)、その伝達ギヤ53が、図9中、軸方向下側(図6参照、収容ケース3の底部3a側)に移動することで、当該伝達ギヤ53が第2の出力ギヤ44に噛合する。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、そのホイールギヤ32に入力されたモータ2の駆動力に基づく回転が、この第2の出力ギヤ44と一体に設けられた第2の出力軸42から出力される。
【0041】
更に、図11及び図12(a)〜(c)に示すように、本実施形態の駆動伝達装置10は、その伝達ギヤ53が、第1及び第2の出力ギヤ43,44を軸方向に離間させるスペーサ45に対応する軸方向位置に移動することで、これら第1及び第2の出力ギヤ43,44の何れにも噛合しない状態となる。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、その回転伝達経路が切断された状態となる。
【0042】
尚、図3に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、その収容ケース3の蓋部3bに操作レバー63の回動量を規定するストッパ部材75,76を備えている。そして、本実施形態の切替機構31は、操作レバー63が、これら両ストッパ部材75,76の中間位置に操作された場合に、その伝達ギヤ53が、図11及び図12に示すようなスペーサ45に対応する軸方向位置に移動する構成になっている。
【0043】
また、図13(a)〜(c)に示すように、本実施形態の駆動伝達装置10において、第1及び第2の出力ギヤ43,44の噛合部となる各外歯54(55,56)は、それぞれ、これらの各出力ギヤ50(43,44)の外周から径方向外側に突出する軸形状を有している。同様に、伝達ギヤ53の噛合部となる各内歯57もまた、その内周から径方向内側に突出する軸形状を有している。更に、これら第1及び第2の出力ギヤ43,44の各外歯55,56及び伝達ギヤ53の各内歯57は、それぞれ、その軸方向端面が面取りされている。そして、本実施形態の駆動伝達装置10は、これにより、その軸方向に移動する伝達ギヤ53が、円滑に、各出力ギヤ50(43,44)に対して係脱することが可能になっている。
【0044】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)駆動伝達装置10は、駆動力の入力により回転する駆動入力部としてのホイールギヤ32と、出力軸20と一体に回転する出力ギヤ50と、この出力ギヤ50に噛合することによりホイールギヤ32の回転を出力ギヤ50に伝達する伝達ギヤ53と、を備える。また、この駆動伝達装置10は、回動可能に軸支された操作軸60が回動操作されることにより伝達ギヤ53を軸方向移動させて出力ギヤ50に噛合させる切替機構31を備える。そして、この駆動伝達装置10は、そのホイールギヤ32、出力軸20、出力ギヤ50、伝達ギヤ53、及び操作軸60が同軸(軸線L上)に配置される。
【0045】
上記構成によれば、伝達ギヤ53を出力ギヤ50に噛合させることにより、この出力ギヤ50と一体に設けられた出力軸20から、そのホイールギヤ32に入力された駆動力に基づく回転を出力することができる。また、ホイールギヤ32に入力される駆動力に基づいて、その出力軸20の回転方向を切り替えることができる。更に、伝達ギヤ53を出力ギヤ50から脱離させることで、その回転伝達経路を切断することも可能になる。そして、その主たる構成要素となるホイールギヤ32、出力軸20、出力ギヤ50、伝達ギヤ53、及び操作軸60を同軸に配置することで、このような回転出力の切替自由度を確保しつつ、構成の簡素化及び小型化を図ることができる。更に、モータ軸と駆動伝達装置10の軸線Lとが直交するように構成することで、アクチュエータ装置1を小型化することができる。
【0046】
(2)駆動伝達装置10は、第1の出力軸41と一体に回転する第1の出力ギヤ43、及び第2の出力軸42と一体に回転する第2の出力ギヤ44を備える。そして、切替機構31は、伝達ギヤ53を軸方向移動させることにより、この伝達ギヤ53が第1の出力ギヤ43に噛合する状態と、当該伝達ギヤ53が第2の出力ギヤ44に噛合する状態と、を切替可能に構成される。
【0047】
上記構成によれば、第1及び第2の出力軸41,42間で、そのホイールギヤ32に入力された駆動力に基づく回転出力を切り替えることができる。そして、これにより、より高い回転出力の切替自由度を確保することができる。
【0048】
(3)第2の出力軸42は、中空軸状に形成されることにより第1の出力軸41に外嵌する状態で当該第1の出力軸41と同心状に配置される。このような構成を採用することで、これら第1及び第2の出力軸41,42が同一方向に延びるように当該各出力軸20(41,42)を配置することができる。そして、これにより、そのレイアウト自由度を高めることができる。
【0049】
(4)出力ギヤ50(43,44)は、環状(扁平略円筒状)をなすホイールギヤ32の径方向内側に配置される。また、伝達ギヤ53は、出力ギヤ50の外歯54(55,56)に対して噛合可能な内歯57を有する。そして、この伝達ギヤ53は、ホイールギヤ32の内周にスプライン嵌合される。
【0050】
上記構成によれば、回転伝達可能且つ軸方向移動可能な状態で、その駆動入力部を構成するホイールギヤ32に対して伝達ギヤ53を同軸に連結することができる。そして、この伝達ギヤ53とともに出力ギヤ50(43,44)をホイールギヤ32の径方向内側に配置することで、その軸方向サイズの小型化を図ることができる。
【0051】
(5)切替機構31は、操作軸60と一体に回動するとともに周面に螺旋状のカム溝64aを有したカム体64と、回転不能な状態で伝達ギヤ53を回転自在に支持するとともにカム溝64aに係合する係合突部としての係合ピン66を有して伝達ギヤ53と一体に軸方向移動可能に設けられた保持部材としてのスリーブ65と、を備える。
【0052】
上記構成によれば、操作軸60と一体にカム体64が回動することにより、見かけ上、そのカム溝64aに係合する係合ピン66が、このカム溝64a内を移動する。更に、このカム溝64aに対する係合ピン66の係合位置に基づいて、その係合ピン66を支持するスリーブ65が伝達ギヤ53とともに軸方向に移動する。そして、これにより、その伝達ギヤ53と出力ギヤ50(43,44)との間の噛合状態を切り替えることができる。
【0053】
(6)出力ギヤ50(43,44)側の噛合部となる各外歯54(55,56)、及び伝達ギヤ53側の噛合部となる各内歯57は、それぞれ、その軸方向端面が面取りされる。これにより、その軸方向に移動する伝達ギヤ53が、円滑に、各出力ギヤ50(43,44)に対して係脱することができる。
【0054】
(7)駆動伝達装置10は、軸方向に隣り合う第1及び第2の出力ギヤ43,44間に配置されることにより、これら両出力ギヤ50(43,44)を軸方向に離間させるスペーサ45を備える。
【0055】
上記構成によれば、第1及び第2の出力ギヤ43,44が互いに干渉しないようにすることができる。そして、このスペーサ45を軸受に用いることで、より円滑に、これら第1及び第2の出力ギヤ43,44を回転させることができる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、モータ2を駆動源とするアクチュエータ装置1に具体化したが、その駆動伝達装置10が単独で設けられる構成に適用してもよい。そして、その駆動源は、必ずしもモータでなくともよい。
【0057】
・また、上記実施形態では、モータ軸に設けられたウォームギヤ(図示略)に噛合するホイールギヤ32を駆動伝達装置10の駆動入力部としたが、例えば、プーリー等を駆動入力部に用いる構成であってもよい。
【0058】
・更に、上記実施形態では、第1及び第2の出力軸41,42の先端部分には、それぞれ、その回転出力を取り出すためのギヤ部41a,42aが設けられることとしたが、プーリーやレバー等を設ける構成としてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、伝達ギヤ53は、ホイールギヤ32の内周に形成された溝部51に噛合する外歯52、及び出力ギヤ50(43,44)の外歯54(55,56)に噛合する内歯57を備えることとした。しかし、これに限らず、これら各ギヤ部材30間の噛合部となる内歯及び外歯の関係を逆転させた構成であってもよい。
【0060】
・上記実施形態では、操作軸60と一体回動するカム体64に設けられた螺旋状のカム溝64aと伝達ギヤ53を回転自在に支持するスリーブ65に設けられた係合突部としての係合ピン66との係合関係に基づいて、その操作軸60の回動操作により伝達ギヤ53を軸方向移動させることとした。しかし、これに限らず、例えば、螺子軸及びナットを用いる等、その他、螺子対偶を利用する構成であってもよい。
【0061】
・上記実施形態では、駆動伝達装置10は、第1の出力軸41と一体に回転する第1の出力ギヤ43、及び第2の出力軸42と一体に回転する第2の出力ギヤ44を備えることとした。しかし、これに限らず、一組の出力軸20及び出力ギヤ50を備える構成であってもよい。そして、3組以上の複数組の出力軸20及び出力ギヤ50を備える構成であってもよい。
【0062】
即ち、図14(a)(b)に示すように、一組の出力軸20及び出力ギヤ50を備える場合、この駆動伝達装置10Bは、軸方向移動する伝達ギヤ53が出力ギヤ50に対して係脱することにより、その回転伝達経路を接断(接続及び切断)可能なクラッチ機構として機能する。
【0063】
また、図15に例示する駆動伝達装置10Cは、第1〜第3の出力軸77a〜77cと、これら第1〜第3の出力軸77a〜77cと一体に回転する第1〜第3の出力ギヤ78a〜78cと、を備える。具体的には、第2の出力軸77bは、中空軸状に形成されることにより第1の出力軸77aに外嵌する状態で当該第1の出力軸77aと同心状に配置される。更に、第3の出力軸77cもまた、中空軸状に形成されることにより第2の出力軸77bに外嵌する状態で当該第2の出力軸77bと同心状に配置される。また、その軸方向に並ぶ第1及び第2の出力ギヤ78a,78bの間、並びに第2及び第3の出力ギヤ78b,78cの間には、それぞれ、スペーサ45が設けられている。そして、この駆動伝達装置10Cは、これにより、その軸方向移動する伝達ギヤ53が、これら第1〜第3の出力軸77a〜77cと一体に設けられた第1〜第3の出力ギヤ78a〜78cに対して、それぞれ、独立に噛合することが可能な構成となっている。
【0064】
・更に、複数組の出力軸20及び出力ギヤ50を備える構成においても、各出力軸20は、必ずしも同心状に配置しなくともよい。
例えば、図16に示すアクチュエータ装置1Dは、その操作軸60Dが中空軸状に形成されている。更に、このアクチュエータ装置1Dにおいて、その駆動伝達装置10Dを構成する第1の出力軸41Dは、この操作軸60Dの内側に挿通されている。そして、これにより、その第1の出力軸41Dの先端部分に設けられたギヤ部41cを収容ケース3の蓋部3bに配置する構成になっている。
【0065】
尚、このアクチュエータ装置1Dにおいて、第1の出力軸41Dは、その軸方向端部41dが、第2の出力軸42Dの軸方向端部42b、詳しくは、その軸端面に設けられた凹部79に挿入されている。そして、これにより、回転可能な状態で、この第2の出力軸42Dと同軸に配置されている。
【0066】
・また、図17(a)〜(d)に例示する駆動伝達装置10Eのように、第1及び第2の出力ギヤ43E,44E間にスペーサが介在されない構成としてもよい。更に、図17(c)に示すように、この駆動伝達装置10Eにおいては、その軸方向に並ぶ第1及び第2の出力ギヤ43E,44Eに対して伝達ギヤ53が同時に噛合することが可能になっている。そして、これにより、第1及び第2の出力軸41,42の両方から同時に、その駆動入力部を構成するホイールギヤ32に入力された駆動力に基づく回転を出力することが可能になっている。
【0067】
更に、図17(d)に示すように、この駆動伝達装置10Eは、その伝達ギヤ53が、同図中、軸方向下側に移動することで、その第1及び第2の出力ギヤ43,44の何れにも噛合しない状態となる。そして、これにより、その回転伝達経路が切断される構成になっている。
【0068】
尚、上記実施形態と同様、その軸方向に並ぶ出力ギヤ50(43,44)間にスペーサ45が配置された構成においても、伝達ギヤ53の厚みを大きくすることで、この伝達ギヤ53を、複数の出力ギヤ50に対して同時に噛合させることができる。
【0069】
・また、図18及び図19(a)(b)に例示する駆動伝達装置10Fのように、操作軸60の回動操作に基づき軸方向に移動して、その伝達ギヤ53と噛合していない出力ギヤ50(43)に係合して当該出力ギヤ50(43)を回転不能に保持する回り止め部80を備える構成としてもよい。
【0070】
詳述すると、この駆動伝達装置10Fにおいて、回り止め部80は、その切替機構31を構成するスリーブ65Fに設けられている。具体的には、この回り止め部80は、そのスリーブ65Fに支持された伝達ギヤ53が第2の出力ギヤ44に噛合する状態において、その第1の出力ギヤ43に噛合する櫛歯形状を有している。即ち、この状態においては、そのホイールギヤ32に入力された駆動力に基づき第2の出力ギヤ44が回転する一方、その第1の出力ギヤ43の回転が規制される。そして、この駆動伝達装置10Fは、これにより、第2の出力ギヤ44と一体に設けられた第2の出力軸42から回転出力を行う際、その伝達ギヤ53と噛合していない第1の出力ギヤ43と一体に設けられた第1の出力軸41の回転位置を保持することが可能な構成になっている。
【0071】
尚、伝達ギヤ53と噛合していない出力ギヤ50に係合して当該出力ギヤ50を回転不能に保持することが可能であれば、その回り止め部80の形状は、任意に変更してもよい。そして、その回り止め部80が、スリーブ65Fとは、独立に設けられる構成であってもよい。
【0072】
図20に例示するアクチュエータ装置1Gのように、その操作軸60Gと操作レバー63Gとの間に、例えば、トーションバーや捩りコイルバネのような弾性部材81を介在させる構成としてもよい。
【0073】
即ち、このような構成を採用することで、駆動伝達装置10を構成する伝達ギヤ53と出力ギヤ50(43,44)との間の噛合状態を切り替える際、これらの噛み合い位置が合わない場合に、弾性部材81が弾性変形することで、その操作レバー63Gに入力された操作力、つまり操作軸60Gを回動させる力を一時的に蓄えることができる。尚、操作軸60Gを回動させる操作力の伝達経路に弾性部材81が設けられる構成であれば、例えば、その操作力に基づき操作レバー63Gが撓む構成にする等、その弾性部材81の配置や形状等は、任意に変更してもよい。そして、これにより、より円滑に、その伝達ギヤ53と出力ギヤ50(43,44)と噛合状態を切り替えることができる。
【0074】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)軸方向に隣り合う前記出力ギヤ間に配置されることにより該両出力ギヤを軸方向に離間させるスペーサを備えること、を特徴とする駆動伝達装置。
【0075】
上記構成によれば、軸方向に隣り合う2つの出力ギヤが互いに干渉しないようにすることができる。そして、このスペーサを軸受に用いることで、より円滑に、これら2つの出力ギヤを回転させることができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1D,1G…アクチュエータ装置、2…モータ、3…収容ケース、3a…底部、3b…蓋部、10,10B,10C,10D,10E,10F…駆動伝達装置、20…出力軸、23…ギヤ収容部、23s…底面、25…第1のケース部材、26…第2のケース部材、30…ギヤ部材、31…切替機構、32…ホイールギヤ(駆動入力部)、33…外歯、34…孔部、41,41D…第1の出力軸、41a,41c…ギヤ部、41b…軸方向端部、42,42D…第2の出力軸、42a…ギヤ部、42b…軸方向端部、43,43E…第1の出力ギヤ、44,44E…第2の出力ギヤ、45…スペーサ、46…孔部、47…円環突部、50…出力ギヤ、51…溝部、52…外歯、53…伝達ギヤ、54(55,56)…外歯、57…内歯、60,60D,60G…操作軸、61…凹部、62…孔部、63,63G…操作レバー、64…カム体、64a…カム溝、65,65F…スリーブ(保持部材)、66…係合ピン(係合突部)、67…孔部、68…環状溝、69…ギヤホルダ、69a…リング部、69b…脚部、70…孔部、71…ガイド部、72…支持部材、73…孔部、75,76…ストッパ部材、77a〜77c…第3の出力軸、78a〜78c…第1〜第3の出力ギヤ、79…凹部、80…周り止め部、81…弾性部材、L…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図20