特許第6870170号(P6870170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特許6870170車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法
<>
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000002
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000003
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000004
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000005
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000006
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000007
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000008
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000009
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000010
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000011
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000012
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000013
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000014
  • 特許6870170-車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870170
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20210426BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20210426BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20210426BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20210426BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B60N2/02
   B60N2/22
   A47C7/14 Z
   A47C27/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-99778(P2017-99778)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-192985(P2018-192985A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 大敬
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5412159(JP,B2)
【文献】 特開2009−213733(JP,A)
【文献】 米国特許第06088642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/14
A47C 27/10
B60N 2/02
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気ポンプを駆動してシートの内側に設けられた複数の空気袋に空気を圧送する圧送制御部と、
前記空気ポンプと前記各空気袋との間を接続する流路に設けられた吸気バルブの作動を制御することにより前記各空気袋に前記空気を充填する吸気制御部と、
前記吸気バルブよりも前記空気ポンプ側の前記流路に設けられた圧力センサを用いて前記各空気袋の内圧を検出する内圧検出部と、を備え、
前記吸気制御部は、前記圧力センサにより検出される前記内圧の検出値が予め設定された前記内圧の目標値に達した前記空気袋から順に前記空気の充填を完了することにより、前記各空気袋に対して同時に前記空気を充填するとともに、
前記圧送制御部は、前記空気の充填が完了していない充填中の前記空気袋の残数が減少するに従って、前記空気ポンプの出力を低減する車両シートの空気圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両シートの空気圧制御装置において、
前記圧送制御部は、前記充填中の前記空気袋の残数が所定数以下となった場合に、該残数の減少に従って前記空気ポンプの出力を低減すること、
を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【請求項3】
空気ポンプを駆動してシートの内側に設けられた複数の空気袋に空気を圧送する行程と、
前記空気ポンプと前記各空気袋との間を接続する流路に設けられた吸気バルブの作動を制御することにより前記各空気袋に前記空気を充填する行程と、
前記吸気バルブよりも前記空気ポンプ側の前記流路に設けられた圧力センサを用いて前記各空気袋の内圧を検出する行程と、を備え、
前記各空気袋に前記空気を充填する行程は、前記圧力センサにより検出される前記内圧の検出値が予め設定された前記内圧の目標値に達した前記空気袋から順に前記空気の充填を完了することにより、前記各空気袋に対して同時に前記空気を充填するものであって、
前記各空気袋に空気を圧送する行程は、前記空気の充填が完了していない充填中の前記空気袋の残数が減少するに従って、前記空気ポンプの出力を低減する行程を含む
車両シートの空気圧制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両シートの空気圧制御方法において、
前記空気ポンプの出力を低減する行程は、前記充填中の前記空気袋の残数が所定数以下となった場合に、前記空気ポンプの出力を低減すること、
を特徴とする車両シートの空気圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シートの空気圧制御装置及び車両シートの空気圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のシート装置には、シートの内側に設けられた空気袋(ブラダ)を拡縮させることにより、そのシートのサポート形状を変更可能なものがある。即ち、このようなシート装置は、空気ポンプを用いて空気を圧送することにより、その空気袋を拡張(展開)させる。また、多くの場合、空気ポンプと空気袋とを接続する空気の流路には、圧力センサが設けられている。そして、これにより検出される空気袋の内圧を予め設定された目標値に一致させるべく、その空気の流路に設けられたバルブ装置及び空気ポンプの作動を制御する構成が一般的になっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、その圧力センサを用いて検出される空気袋の内圧(検出値)が予め設定された目標値未満の所定値に到達するまで空気ポンプが連続動作し、その後、この空気袋の内圧が目標値に到達するまで、空気ポンプが間欠動作する構成が開示されている。そして、例えば、特許文献2には、第1及び第2の空気袋を同時に拡縮させる構成が開示されている。
【0004】
即ち、上記従来技術のように目標値付近で空気ポンプを間欠動作させることにより、より精度よく、その空気袋の内圧を制御することができる。そして、複数の空気袋に対して同時に空気袋を充填することにより、全体として、その拡張時間の短縮化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−235021号公報
【特許文献2】特許第5412159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、車両用のシート装置においては、一つの空気ポンプから多数の空気袋に対して空気が圧送される。また、各空気袋の拡張時、内圧の目標値は、その空気袋毎に設定される。そして、上記従来技術の構成は、必ずしも、このような同時に拡張する複数の空気袋の内圧を適切に制御する有効な手法であるとはいえないのが実情であることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、同時に拡張する複数の空気袋について、適切に、その内圧を制御することのできる車両シートの空気圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両シートの空気圧制御装置は、空気ポンプを駆動してシートの内側に設けられた複数の空気袋に空気を圧送する圧送制御部と、前記空気ポンプと前記各空気袋との間を接続する流路に設けられた吸気バルブの作動を制御することにより前記各空気袋に前記空気を充填する吸気制御部と、前記吸気バルブよりも前記空気ポンプ側の前記流路に設けられた圧力センサを用いて前記各空気袋の内圧を検出する内圧検出部と、を備え、前記吸気制御部は、前記圧力センサにより検出される前記内圧の検出値が予め設定された前記内圧の目標値に達した前記空気袋から順に前記空気の充填を完了することにより、前記各空気袋に対して同時に前記空気を充填するとともに、前記圧送制御部は、前記空気の充填が完了していない充填中の前記空気袋の残数が減少するに従って、前記空気ポンプの出力を低減する。
【0009】
即ち、複数の空気袋に対して同時に空気を圧送する場合、圧力センサによる内圧の検出値が目標値に到達した空気袋から順に、当該空気袋に対する空気の充填を完了することによって、各空気袋の内圧を異なる値に制御することができる。ところが、このような構成を採用した場合には、充填中の空気袋の残数が少なくなるに従って、その流路を移動する空気の流速が速くなる。そして、これにより生ずる圧力損失の増大によって、内圧の目標値が高い空気袋ほど、実際の内圧が目標値よりも低い状態で、この空気袋に対する空気の充填が完了してしまう可能性が生ずる。
【0010】
しかしながら、上記構成によれば、空気の充填が完了した空気袋に連通する流路(の支線)を閉状態とすることによる容量の減少に合わせて、その空気ポンプが圧送する空気の流量が低減される。その結果、空気の充填が完了していない空気袋の残数が減少した場合にも、その流路を移動する空気の流速が上昇しないようにすることができる。そして、これにより、同時に拡張する複数の空気袋について、適切に、その内圧を制御することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両シートの空気圧制御装置において、前記圧送制御部は、前記充填中の前記空気袋の残数が所定数以下となった場合に、該残数の減少に従って前記空気ポンプの出力を低減することが好ましい。
【0012】
即ち、空気の充填が完了していない空気袋の残数が十分に多い場合には、比較的、その空気の充填が完了した空気袋の発生に伴う容量減少の影響が小さい。従って、上記構成によれば、空気袋の内圧を適切に制御しつつ、その拡張時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
上記課題を解決する車両シートの空気圧制御方法は、空気ポンプを駆動してシートの内側に設けられた複数の空気袋に空気を圧送する行程と、前記空気ポンプと前記各空気袋との間を接続する流路に設けられた吸気バルブの作動を制御することにより前記各空気袋に前記空気を充填する行程と、前記吸気バルブよりも前記空気ポンプ側の前記流路に設けられた圧力センサを用いて前記各空気袋の内圧を検出する行程と、を備え、前記各空気袋に前記空気を充填する行程は、前記圧力センサにより検出される前記内圧の検出値が予め設定された前記内圧の目標値に達した前記空気袋から順に前記空気の充填を完了することにより、前記各空気袋に対して同時に前記空気を充填するものであって、前記各空気袋に空気を圧送する行程は、前記空気の充填が完了していない充填中の前記空気袋の残数が減少するに従って、前記空気ポンプの出力を低減する行程を含む。
【0014】
上記課題を解決する車両シートの空気圧制御方法において、前記空気ポンプの出力を低減する行程は、前記充填中の前記空気袋の残数が所定数以下となった場合に、前記空気ポンプの出力を低減することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同時に拡張する複数の空気袋について、適切に、その内圧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
図2】シート装置の概略構成図。
図3】シート装置の概略構成図。
図4】各空気袋を拡張させる際の処理手順を示すフローチャート。
図5】各空気袋に対する吸気制御の態様を示すタイムチャート。
図6】充填中の空気袋の残数に応じた空気ポンプの出力を設定する制御テーブルの説明図。
図7】吸気制御の処理手順を示すフローチャート。
図8】流路に生ずる圧力損失の説明図。
図9】各空気袋の内圧確認の態様を示すフローチャート。
図10】内圧確認の態様を示すタイムチャート。
図11】比較例の内圧確認の態様を示すタイムチャート。
図12】第2の実施形態におけるシート装置の概略構成図。
図13】第2の実施形態における内圧確認の態様を示すタイムチャート。
図14】別例の内圧確認の態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、空気圧式のシートサポート機能を有したシート装置及びその空気圧制御に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0019】
本実施形態のシート1において、シートバック3は、その両サイド部3a,3bが、それぞれ、前方に向かって膨出した形状を有している。更に、シートクッション2もまた、両サイド部2a,2bが、それぞれ、上方に向かって膨出した形状を有している。そして、本実施形態のシート1は、これにより、その乗員の良好な着座姿勢を確保し及びその着座姿勢を維持することが可能になっている。
【0020】
また、このシート1には、そのシートクッション2及びシートバック3の内側に複数の空気袋10(11〜16)が設けられている。具体的には、本実施形態のシート1において、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部(ショルダー)、腰部(ランバー)及び下端部(バックペルビス)、並びに両サイド部3a,3bに対応する位置に、それぞれ、独立した空気袋11(11a,11b),12(12a〜12c),13,14(14a,14b)が設けられている。更に、シートクッション2についてもまた、その着座面2sにおける後端部(クッションペルビス)の内側、及び両サイド部2a,2bの内側に、それぞれ、独立した空気袋15,16(16a,16b)が設けられている。そして、本実施形態のシート1においては、これにより、各空気袋10の拡縮に基づいて、そのシートサポート形状を変更可能なシート装置20が形成されている。
【0021】
詳述すると、図2に示すように、本実施形態のシート装置20は、各空気袋10に対して空気を圧送する空気ポンプ21と、この空気ポンプ21と各空気袋10との間に介在された吸排気バルブ装置22と、を備えている。本実施形態の空気ポンプ21には、モータ23を駆動源とする電動ポンプが用いられている。また、吸排気バルブ装置22は、可撓性を有する樹脂製のチューブ24を介して各空気袋10及び空気ポンプ21に接続されている。そして、本実施形態のシート装置20においては、これらのチューブ24及び吸排気バルブ装置22の内部通路によって、その空気ポンプ21と各空気袋10との間を接続する空気の流路Lが形成されている。
【0022】
具体的には、図3に示すように、本実施形態のシート装置20において、空気ポンプ21から延びる流路Lの本線Lmには、その空気の逆流を防ぐ逆止弁31が設けられている。また、空気ポンプ21が流路Lの上流に位置するとした場合、この逆止弁31よりも下流側の位置には、その流路Lの本線Lmから分岐した複数の支線Lbが形成されている。更に、これらの各支線Lbには、それぞれ一つずつ、吸気バルブ32又は排気バルブ33の何れかが設けられている。そして、本実施形態の吸排気バルブ装置22は、これら流路Lの途中に配置される逆止弁31、吸気バルブ32、及び排気バルブ33を一体化した構成となっている。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態のシート装置20において、その吸排気バルブ装置22に設けられた各吸気バルブ32及び排気バルブ33、並びに空気ポンプ21は、制御装置35によって、それぞれ独立に、その作動が制御されている。更に、本実施形態の各空気袋10(10〜16)は、その吸気バルブ32が設けられた各支線Lbの先端部分に対し、それぞれ一つずつ設けられている(図3参照)。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、その各空気袋10を、それぞれ独立して拡縮させることが可能になっている。
【0024】
即ち、図3に示すように、本実施形態のシート装置20は、各空気袋10を拡張させる際には、その対象となる空気袋10(例えば、第1の空気袋10a)に連通する流路Lの支線Lbに設けられた吸気バルブ32(例えば、第1の吸気バルブ32a)を開放するとともに排気バルブ33を閉塞した状態で空気ポンプ21を駆動する。そして、各空気袋10を収縮させる際には、空気ポンプ21を停止した状態で、その対象となる空気袋10に対応した吸気バルブ32、及び排気バルブ33を開放する構成になっている。
【0025】
さらに詳述すると、図2に示すように、本実施形態の制御装置35は、吸排気バルブ装置22に設けられた圧力センサ37の出力信号に基づいて、各空気袋10の内圧Pを検出する。本実施形態のシート装置20において、この圧力センサ37は、流路L(の本線Lm)における逆止弁31よりも下流側の位置に配置されている(図3参照)。また、制御装置35には、シート1に設けられた操作スイッチ38に対する操作入力信号Scや、イグニッション信号Sig、或いはドアロック信号Sdl等が入力される。そして、本実施形態の制御装置35は、これらの制御信号に基づいて、各空気袋10の拡縮制御を実行する。
【0026】
具体的には、本実施形態の各空気袋10には、それぞれ独立に、その内圧Pの目標値PT(PT1,PT2,…)が設定される。本実施形態の制御装置35は、これらの各空気袋10に設定された内圧Pの目標値PTを、その記憶領域(メモリ)35aに保持する。尚、これらの各目標値PTは、そのシート1に着座する乗員が、シート1に設けられた操作スイッチ38を用いて最適なサポート形状を設定することにより更新される。そして、本実施形態の制御装置35は、各空気袋10について、上記圧力センサ37を用いて検出する内圧Pの検出値Pdを、その内圧Pの目標値PTに一致させるべく、その各吸気バルブ32及び排気バルブ33、並びに空気ポンプ21の作動を制御する構成になっている。
【0027】
即ち、図4のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置35は、拡張させる空気袋10を決定(選択)すると(ステップ101)、これらの各空気袋10について、それぞれ、その内圧Pの目標値PTを読み出す(ステップ102)。そして、その目標値PTに基づき各空気袋10を拡張させるべく吸気制御を実行(ステップ103)した後、これらの各空気袋10について、その内圧Pを確認する(ステップ104)。
【0028】
例えば、本実施形態のシート装置20においては、車両停止後(IGオフ)、乗員が降車した状態となることにより、全ての空気袋10内の空気が排出される。このため、制御装置35は、次回の車両始動時には、再び、各空気袋10の内圧Pが、それぞれ、その目標値PTに一致した状態となるように、これら各空気袋10に対して空気を充填する。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、そのシート1に最適なサポート形状が形成される構成となっている。
【0029】
(吸気制御)
次に、本実施形態の制御装置35が実行する空気袋10の吸気制御(給気制御)について、その態様を説明する。
【0030】
図5に示すように、本実施形態の制御装置35は、吸気制御の実行時(図4参照、ステップ103)、拡張対象となる複数の空気袋10に対し、同時に空気を充填する。例えば、この図5に示す例においては、第1〜第4の空気袋10a〜10dが、その拡張対象として選択されている(図3参照)。そして、この場合、制御装置35は、これらの各空気袋10(10a〜10d)に対応する第1〜第4の吸気バルブ32a〜32dを同時に開放し、及び空気ポンプ21を駆動することにより、その各空気袋10に対する吸気制御を実行する。
【0031】
また、制御装置35は、各空気袋10に対する空気の充填にあわせ、その各吸気バルブ32(32a〜32d)よりも空気ポンプ21側の流路Lに設けられた圧力センサ37を用いて検出される内圧Pの検出値Pdを監視する。更に、制御装置35は、この圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdと各空気袋10(10a〜10d)に設定された内圧Pの目標値PT(PT1〜PT4)とを比較する。そして、その内圧Pの検出値Pdが目標値PTに到達した空気袋10(10a〜10d)から順次、その空気袋10に対応する吸気バルブ32(32a〜32d)を閉塞して当該空気袋10に連通する流路Lの支線Lb(Lb1〜Lb4)を介した空気の流通を遮断する。つまりは、その内圧Pが目標値PT(PT1〜PT4)に達した空気袋10に対する空気の充填を順次完了する構成になっている。
【0032】
更に、本実施形態の制御装置35は、このとき、空気の充填が完了していない充填中の空気袋10の残数nが減少するに従って、その空気ポンプ21の出力を低減する。そして、これにより、同時に拡張する複数の空気袋10(10a〜10d)について、適切に、その内圧Pを制御することが可能となっている。
【0033】
図6に示すように、本実施形態の制御装置35は、充填中の空気袋10の残数nと空気ポンプ21の出力とが関連付けられた制御テーブル40を、その記憶領域(メモリ)35aに保持する。具体的には、この制御テーブル40には、充填中の空気袋10の残数nが「4」〜「0」である場合について、その残数nに対応した空気ポンプ21の出力が、空気ポンプ21の駆動源であるモータ23のデューティD(D1〜D4、及び「0」)に表されている(オンデューティ比:%、D4>D3>D2>D2>D1)。そして、本実施形態の制御装置35は、吸気制御の実行時、この制御テーブル40を参照しつつ、その空気ポンプ21の作動を制御する。
【0034】
例えば、図5に示す例においては、時間t1において、その拡張対象として選択された第1〜第4の空気袋10a〜10dに対する空気の充填が同時に開始される。そして、その後、時間t2において、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdが第2の空気袋10bの目標値PT2に到達することにより、その第2の空気袋10bに対する空気の充填が完了する。
【0035】
即ち、本実施形態の制御装置35は、このとき、第2の吸気バルブ32bを閉塞し、第2の空気袋10bに連通する流路Lの支線Lb2を介した空気の流通を遮断して該空気の充填を完了することにより(図3参照)、その第2の空気袋10bの内圧Pを目標値PT2に維持する。また、これにより、充填中の空気袋10の残数nは、「4」から「3」に減少する。そして、本実施形態の制御装置35は、これに合わせ、充填中の空気袋10の残数n(=3)に対応した空気ポンプ21の出力としてデューティD3を設定することにより、その空気ポンプ21の出力を低減する。
【0036】
また、時間t3においては、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdが第3及び第4の空気袋10c,10dの各目標値PT3,PT4に到達することにより、これら第3及び第4の空気袋10c,10dに対する空気の充填が完了する。即ち、これにより、充填中の空気袋10の残数nは、「3」から「1」に減少する。そして、本実施形態の制御装置35は、これに合わせ、その残数n(=1)に対応した空気ポンプ21のポンプ出力としてデューティD1を設定することにより、その空気ポンプ21の出力を低減する。
【0037】
更に、時間t4において、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdが第1の空気袋10aの目標値PT1に到達することにより、その第1の空気袋10aに対する空気の充填が完了する。即ち、充填中の空気袋10の残数nが「0」となる。そして、本実施形態の制御装置35は、これに対応して、空気ポンプ21の出力を「0」に設定、つまりは、空気ポンプ21を停止させることにより、これら第1〜第4の空気袋10a〜10dに対する吸気制御を終了する。
【0038】
さらに詳述すると、図7のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置35は、拡張対象に選択した各空気袋10に対応する吸気バルブ32を全て開放して(ステップ201)、空気ポンプ21を駆動すると(ステップ202)、続いて、その圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdを取得する(ステップ203)。更に、制御装置35はこの内圧Pの検出値Pdに基づいて、上記ステップ201において拡張対象に選択された各空気袋10の内圧Pが、当該各空気袋10に設定された目標値PTに到達したか否かを判定する(内圧目標値到達判定、ステップ204)。そして、その内圧Pが目標値PTに到達した空気袋10がないと判定される場合(ステップ205:NO)には、再び、上記ステップ202〜ステップ205の各処理を実行する。
【0039】
また、制御装置35は、上記ステップ205において、その内圧Pが目標値PTに到達した空気袋10があると判定した場合(ステップ205:YES)、この空気袋10に対応した吸気バルブ32を閉塞することにより、その空気袋10に対する空気の充填を完了する(ステップ206)。更に、制御装置35は、空気の充填が完了していない充填中の空気袋10の残数nを取得し(ステップ207)、充填中の空気袋10の残数nが「0」になったか否か、即ち拡張対象に選択した各空気袋10に対する空気の充填が全て完了したか否かを判定する(ステップ208)。そして、まだ充填中の空気袋10がある場合(n>0、ステップ208:NO)には、その充填中の空気袋10の残数nに応じた空気ポンプ21の出力を設定して(ステップ209)、再び、上記ステップ202〜ステップ208の各処理を実行する。
【0040】
そして、本実施形態の制御装置35は、上記ステップ208において、充填中の空気袋10の残数nが「0」である、即ち各空気袋10に対する空気の充填が全て完了した場合(n=0、ステップ208:YES)に、空気ポンプ21を停止して、その吸気制御を終了する(ステップ210)。
【0041】
次に、本実施形態の制御装置35が実行する吸気制御の作用について説明する。
図3に示すように、空気ポンプ21と各空気袋10との間を接続する流路Lに圧力センサ37が設けられた構成において、例えば、その何れか一つの空気袋10(例えば、第1の空気袋10a)に対応する吸気バルブ32(例えば、第1の吸気バルブ32a)が開放状態にあるとする。そして、このとき、その流路Lが閉じた空間であり且つ流路L内の空気に移動がないとすれば、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdは、各空気袋10近傍の圧力値P1、つまりは、その空気袋10の実際の内圧Pと等しい値になる。
【0042】
しかしながら、図8に示すように、拡張対象となる空気袋10に対して空気ポンプ21から空気を圧送する吸気制御時には、流路L内を空気が移動することによる圧力損失が発生する。つまり、空気ポンプ21の出口近傍の圧力値、即ち圧送圧P0(図3参照)と空気袋10(10a)近傍の圧力値P1との間に差が生ずることにより、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdが空気袋10の実際の内圧Pから乖離した状態で、その吸気バルブ32の閉塞、及び空気ポンプ21の停止を実行してしまう可能性が生ずる。尚、図8は、圧力センサ37による検出値Pdが空気ポンプ21の圧送圧P0と略等しいと仮定した場合のイメージ図である。そして、この圧力損失は、その流路L内を移動する空気の流速が速いほど、より大きなものとなる。
【0043】
即ち、複数の空気袋10に対して同時に空気を圧送する場合、圧力センサ37による検出値Pdが目標値PTに到達した空気袋10から順に、当該空気袋10に対する空気の充填を完了することによって、これら各空気袋10の内圧Pを異なる値に制御することができる。ところが、このような構成を採用した場合には、充填中の空気袋10の残数nが少なくなるに従って、その流路Lを移動する空気の流速が速くなる。そして、これにより生ずる圧力損失の増大によって、内圧Pの目標値PTが高い空気袋10ほど、つまりは空気の充填に時間がかかる空気袋10ほど、その実際の内圧Pが目標値PTよりも低い状態で、この空気袋10に対する空気の充填が完了してしまう可能性が生ずる。
【0044】
この点を踏まえ、本実施形態の制御装置35は、上記のように、充填中の空気袋10の残数nが減少するに従って、その空気ポンプ21の出力を低減する。つまり、空気の充填が完了した空気袋10に連通する流路Lの支線Lbを閉状態とすることによる容量の減少に合わせて、その空気ポンプ21が圧送する空気の流量を低減する。そして、これにより、流路Lを移動する空気の流速が上昇しないようにすることで、その同時に拡張する複数の空気袋10について、適切に、その内圧Pを制御することが可能になっている。
【0045】
また、本実施形態の制御装置35は、充填中の空気袋10の残数nが「5」以上である場合については、空気ポンプ21の出力として、充填中の空気袋10の残数nが「4」である場合と同じデューティD4を設定する(図6参照)。そして、充填中の空気袋10の残数nが「3」以下となった場合に、その残数nの減少に従って空気ポンプ21の出力を低減する。
【0046】
即ち、充填中の空気袋10が十分に多い場合には、比較的、その空気の充填が完了した空気袋10の発生に伴う容量減少の影響が小さい。この点を踏まえ、本実施形態の制御装置35は、充填中の空気袋10の残数nが所定数以下(n≦3)となるまで、その空気ポンプ21の出力を最大(デューティD4)に維持する。そして、これにより、同時に空気を充填する各空気袋10について、その拡張時間の短縮化を図る構成になっている。
【0047】
(内圧確認)
次に、本実施形態の制御装置35が実行する空気袋10の内圧確認について、その態様を説明する。
【0048】
図9のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置35は、吸気制御の実行(図4参照、ステップ103)により拡張対象となる各空気袋10に対する空気の充填を完了すると(ステップ301:YES)、これらの各空気袋10について、その内圧Pの確認(チェック)を実行する(ステップ302,303、図4参照、ステップ104)。
【0049】
具体的には、制御装置35は、先ず、排気バルブ33(図3参照)を開放することにより、圧力センサ37が設けられた各空気袋10に連通する流路Lの共有区間Lc、即ち流路Lにおける逆止弁31よりも下流側の空気を排出する(ステップ302)。そして、その後、吸気バルブ32を制御して、その内圧Pの目標値PTの低い順に、拡張した各空気袋10を圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに対して個別に接続することにより、これらの各空気袋10の内圧Pを確認する(ステップ303)。
【0050】
例えば、図10に示す例の場合、制御装置35は、時間t5において、空気ポンプ21を停止し、その第1〜第4の空気袋10a〜10dに対する吸気制御を終了すると、先ず、排気バルブ33の開放により、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気を排気する(残圧排気)。
【0051】
また、この例においては、第1の空気袋10aの目標値PT1に、最も高い値が設定され、第2の空気袋10bの目標値PT2に、最も低い値が設定されている。尚、第3及び第4の空気袋10c,10dの各目標値PT3,PT4には、これら第1の空気袋10aの目標値PT1と第2の空気袋10bの目標値PT2との間の値(同値)が設定されている(PT1>PT3=PT4>PT2)。そして、本実施形態の制御装置35は、これらの各目標値PT1〜PT4の大小関係に従って、最も低い目標値PT2が設定された第2の空気袋10bから順に、一つずつ、これらの各空気袋10(10a〜10d)の内圧Pを確認する。
【0052】
具体的には、本実施形態の制御装置35は、時間t6において、排気バルブ33を閉塞して共有区間Lcの残圧排気を終了すると、先ず、最も低い内圧Pの目標値PT2が設定された第2の空気袋10bに対応する第2の吸気バルブ32bを開放して、この第2の空気袋10bの内圧Pを確認する。また、制御装置35は、時間t7において、第2の吸気バルブ32bを閉塞して第2の空気袋10bの内圧確認を終了すると、続いて、この第2の空気袋10bの目標値PT2の次に低い内圧Pの目標値PT3が設定された第3の空気袋10cに対応する第3の吸気バルブ32cを開放して、その第3の空気袋10cの内圧Pを確認する。更に、制御装置35は、時間t8において、第3の吸気バルブ32cを閉塞して第3の空気袋10cの内圧確認を終了すると、続いて、この第3の空気袋10cの目標値PT3と等しい内圧Pの目標値PT4が設定された第4の空気袋10dに対応する第4の吸気バルブ32dを開放して、その第4の空気袋10dの内圧Pを確認する。そして、本実施形態の制御装置35は、時間t9において、第4の吸気バルブ32dを閉塞して第4の空気袋10dの内圧確認を終了した後、最も高い内圧Pの目標値PT1が設定された第1の空気袋10aに対応する第1の吸気バルブ32aを開放して、この第1の空気袋10aの内圧Pを確認する。
【0053】
このように、本実施形態の制御装置35は、各空気袋10の内圧Pを確認する際、これらの各空気袋10に対応した吸気バルブ32を閉塞するタイミングで、その確認に用いる内圧Pの検出値Pdを確定させる。尚、図10中には、この検出値を確定させるタイミングにマークが付されている(時間t7〜時間t10)。また、本実施形態の制御装置35は、一つの空気袋10について内圧Pを確認した後、次の空気袋10について内圧Pを確認するまでの間に、その圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気の排出を実行しない。そして、これにより、各空気袋10の内圧確認に要する時間の短縮化を図る構成になっている。
【0054】
ここで、例えば、図11に示す比較例のように、互いに異なる目標値PTx,PTy,PTzが設定された3つの空気袋10x,10y,10zについて、これらの各空気袋10x〜10zに連通する流路Lの共有区間Lcに設けられた圧力センサ37を用いて当該各空気袋10x〜10zの内圧Pを確認するとする。尚、この比較例において、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcの残圧排気は行われない。そして、この比較例においては、各空気袋10x〜10zに対する吸気制御の完了後(時間t11)、図中の並び順に従って、上側から順次、その各空気袋10x〜10zの内圧確認が実行されている(時間t12〜時間t14)。
【0055】
しかしながら、この比較例に示されるような方法で内圧確認を行った場合には、その各空気袋10x〜10zの内圧Pを正しく確認できないおそれがある。具体的には、この比較例においては、最初に、最も高い目標値PTxが設定された空気袋10xの内圧確認が行われた後(時間t12)、これに続いて、最も低い目標値PTyが設定された空気袋10yの内圧確認が行われている(時間t13)。そして、これにより、低い目標値PTyが設定された空気袋10yの内圧Pを確認する際、その流路Lの共有区間Lcに設けられた圧力センサ37による検出値Pdが、実際の内圧Pから乖離する可能性がある。
【0056】
即ち、高い目標値PTxが設定された空気袋10xの内圧確認を行った後、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcには、その空気袋10xの高い内圧Pに相当する空気が封止されている。そのため、このままの状態で、低い目標値PTyが設定された空気袋10yの内圧確認が行った場合には、この流路Lの共有区間Lcに封止された空気の残圧分が、その圧力センサ37による検出値Pdに反映されてしまうという問題がある(図11中、誤差δ)。そして、この残圧の影響は、その連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差、つまりは内圧Pの目標値PT間の差が大きいほど、より顕著なものとなる。
【0057】
更に、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pdが安定するまでには時間がかかることから、車両においては、値の推移を監視することにより、短時間で、その内圧Pの検出値Pdを確定する構成が一般的となっている。このため、上記のように、連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差が大きい場合には、圧力センサ37による内圧Pの検出値Pd自体についてもまた、その検出誤差が大きくなりやすい傾向がある。
【0058】
この点を踏まえ、本実施形態の制御装置35は、上記のように、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気を当該共有区間Lcから排出した後、その内圧Pの目標値PTが低い順に、各空気袋10の内圧Pを確認する。即ち、各空気袋10について一連の内圧確認を開始する前に、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気を当該共有区間Lcから排出することで、その残圧の影響を最小化することができる。そして、その目標値PT順に各空気袋10の内圧確認を実行することにより、連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差を小さく抑える構成になっている。
【0059】
また、通常、空気袋10を含めた吸気バルブ32よりも下流側の容量(排気量)は、吸気バルブ32の上流側に形成される共有区間Lcの容量よりも大きい。このため、上記のように、目標値PTの低い順に各空気袋10の内圧確認を実行して、その内圧Pを確認する空気袋10側から圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lc側に空気が流入するようにした方が、その圧力センサ37の検出誤差を抑えやすい。そして、本実施形態の制御装置35は、これにより、高い精度を確保しつつ、迅速に、各空気袋10の内圧Pを確認することが可能になっている。
【0060】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)圧送制御部50aとしての制御装置35は、空気ポンプ21を駆動してシート1の内側に設けられた複数の空気袋10(10a〜10d)に空気を圧送する。また、吸気制御部50bとしての制御装置35は、空気ポンプ21と各空気袋10との間を接続する流路Lに設けられた吸気バルブ32(32a〜32d)の作動を制御することにより各空気袋10に空気を充填する。そして、内圧検出部50cとしての制御装置35は、吸気バルブ32よりも空気ポンプ21側の流路Lに設けられた圧力センサ37を用いて各空気袋10の内圧Pを検出する。更に、吸気制御部50bとしての制御装置35は、圧力センサ37により検出される内圧Pの検出値Pdが予め設定された内圧Pの目標値PTに達した空気袋10から順に空気の充填を完了することにより、各空気袋10に対して同時に空気を充填する。そして、圧送制御部50aとしての制御装置35は、空気の充填が完了していない充填中の空気袋10の残数nが減少するに従って、その空気ポンプ21の出力(デューティ)を低減する。
【0061】
即ち、複数の空気袋10に対して同時に空気を圧送する場合、圧力センサ37による検出値Pdが目標値PTに到達した空気袋10から順に、当該空気袋10に対する空気の充填を完了することによって、各空気袋10の内圧Pを異なる値に制御することができる。ところが、このような構成を採用した場合には、充填中の空気袋10の残数nが少なくなるに従って、その流路Lを移動する空気の流速が速くなる。そして、これにより生ずる圧力損失の増大によって、内圧Pの目標値PTが高い空気袋10ほど、実際の内圧Pが目標値PTよりも低い状態で、この空気袋10に対する空気の充填が完了してしまう可能性が生ずる。
【0062】
しかしながら、上記構成によれば、空気の充填が完了した空気袋10に連通する流路Lの支線Lbを閉状態とすることによる容量の減少に合わせて、その空気ポンプ21が圧送する空気の流量が低減される。その結果、空気の充填が完了していない空気袋10の残数nが減少した場合にも、その流路Lを移動する空気の流速が上昇しないようにすることができる。そして、これにより、同時に拡張する複数の空気袋10について、適切に、その内圧Pを制御することができる。
【0063】
(2)圧送制御部50aとしての制御装置35は、充填中の空気袋10の残数nが所定数以下となった場合に(n≦3)、その残数nの減少に従って空気ポンプ21の出力を低減する。
【0064】
即ち、空気の充填が完了していない空気袋10の残数nが十分に多い場合には、比較的、その空気の充填が完了した空気袋10の発生に伴う容量減少の影響が小さい。従って、上記構成によれば、空気袋10の内圧Pを適切に制御しつつ、その拡張時間の短縮化を図ることができる。
【0065】
(3)内圧確認部60としての制御装置35は、各空気袋10に連通する空気の流路Lに設けられた弁装置としての吸気バルブ32の作動を制御して各空気袋10を圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに対して個別に接続することにより各空気袋10の内圧Pを確認する。そして、制御装置35は、これら各空気袋10の内圧確認を、その空気袋10毎に設定された内圧Pの目標値PT順に実行する。
【0066】
上記構成によれば、連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差を小さく抑えることができる。その結果、一つの空気袋10について内圧Pを確認した後、次の空気袋10について内圧Pを確認するまでの間に、その圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気を排出しなくとも、高い精度で内圧Pを確認することができる。そして、これにより、迅速に、各空気袋10の内圧Pを確認することができる。
【0067】
(4)制御装置35は、流路Lの共有区間Lcに封止された空気を当該共有区間Lcから排出した後、その内圧Pの目標値PTが低い順に、各空気袋10の内圧確認を実行する。
【0068】
上記構成によれば、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気の残圧が及ぼす影響を最小化することができる。そして、この状態から内圧Pの目標値PTが低い順に、各空気袋10の内圧を確認することで、その連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差を小さく抑えることができる。
【0069】
[第2の実施形態]
以下、空気圧式のシートサポート機能を有したシート装置及びその空気圧制御に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0070】
図12に示すように、本実施形態のシート装置20は、独立に設けられた2つの吸排気バルブ装置22B(22Ba,22Bb)を備えている。そして、シート1に設けられた各空気袋10には、これら2つの吸排気バルブ装置22Bの何れかを介することにより、その一つの空気ポンプ21が圧送する空気が充填される構成になっている。
【0071】
具体的には、これらの吸排気バルブ装置22Bは、それぞれ、第1の実施形態における吸排気バルブ装置22と同様に、逆止弁31、吸気バルブ32、排気バルブ33、及び圧力センサ37を一体に備えた構成を有している。即ち、これらの各吸排気バルブ装置22Bは、それぞれ、当該吸排気バルブ装置22Bに接続された各空気袋10に連通する独立した流路Lの共有区間Lc(Lca,Lcb)を形成する。そして、制御装置35は、これらの各共有区間Lcに設けられた2つの独立した圧力センサ37(37a,37b)を用いることにより、その共有区間Lc(Lca,Lcb)を有する吸排気バルブ装置22B(22Ba,22Bb)毎に、当該各吸排気バルブ装置22Bを介して空気が充填された各空気袋10の内圧Pを確認する構成になっている。
【0072】
詳述すると、例えば、図13に示す例においては、第1の吸排気バルブ装置22Baに接続された第1及び第2の空気袋10aa,10ab、並びに第2の吸排気バルブ装置22Bbに接続された第3及び第4の空気袋10bc,10bdが、その拡張対象として選択されている。そして、本実施形態のシート装置20Bにおいてもまた、制御装置35は、これらの第1〜第4の空気袋10aa,10ab,10bc,10bdを同時に拡張させる。
【0073】
具体的には、時間t15において、その拡張対象に選択された各空気袋10に対する空気の充填が同時に開始される。また、この例においては、時間t16において、第2〜第4の空気袋10ab,10bc,10bdに対する空気の充填が完了し、時間t17において、第1の空気袋10aaに対する空気の充填が完了する。即ち、第2〜第4の空気袋10ab,10bc,10bdは、その内圧Pの目標値PT2〜PT4が等しい値に設定されている。そして、第1の空気袋10aaには、これらの目標値PT2〜PT4よりも高い値が、その内圧Pの目標値PT1として設定されている。
【0074】
また、制御装置35は、最も高い内圧Pの目標値PT1が設定された第1の空気袋10aに対する空気の充填が完了した後、各吸排気バルブ装置22Bに設けられた排気バルブ33を開放することにより、それぞれ、その流路Lの共有区間Lc(Lca,Lcb)に封止された空気を排出する。そして、時間t18において、この残圧排気が完了した後、その独立した各共有区間Lc(Lca,Lcb)に設けられた各圧力センサ37(37a,37b)を用いることにより、その吸排気バルブ装置22B毎に、並行して、これらの共有区間Lcを介して空気が充填された各空気袋10の内圧Pを確認する(時間t19〜時間t20)。
【0075】
即ち、この例では、第2の吸排気バルブ装置22Bbに接続された第3及び第4の空気袋10bc,10bdについては、時間t16において、その空気の充填が完了している。しかしながら、このとき、第1の吸排気バルブ装置22Baに接続された第1の空気袋10aaについては、まだ空気の充填が完了していない。このため、第2の吸排気バルブ装置22Bbにおいてもまた、その圧力センサ37bが設けられた流路Lの共有区間Lcbの内圧は、空気ポンプ21による空気の圧送圧P0に準じた値となっている。つまり、この状態では、正しく第3及び第4の空気袋10bc,10bdの内圧Pを確認できないことになる。
【0076】
この点を踏まえ、本実施形態のシート装置20Bにおいて、制御装置35は、各空気袋10に対する空気の充填が全て完了するまで、当該各空気袋10の内圧確認を実行しない。つまり、図13に示す例の場合、第3及び第4の空気袋10bc,10bdに対する空気の充填が完了した後、当該各第3及び第4の空気袋10bc,10bdが接続された第2の吸排気バルブ装置22Bb側に、待機時間Twを設定する。そして、本実施形態の制御装置35は、これにより、一つの空気ポンプ21が圧送する空気を独立した複数の吸排気バルブ装置22Bを介して各空気袋10に充填する構成においても、正しく、その各空気袋10の内圧Pを確認することが可能となっている。
【0077】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・シート1の内側に設けられる空気袋10の数、及び配置は任意に変更してもよい。
・上記各実施形態では、制御装置35は、充填中の空気袋10の残数nが「5」以上である場合についても、空気ポンプ21の出力を充填中の空気袋10の残数nが「4」である場合と同じ所定値(デューティD4)に設定する。そして、充填中の空気袋10の残数nが「3」以下となった場合に、その残数nの減少に従って空気ポンプ21の出力を低減することとした(図6参照)。しかし、これに限らず、充填中の空気袋10の残数減少に応じた空気ポンプ21の出力を開始する所定数については、任意に変更してもよい。更に、空気ポンプ21の出力低減方法についてもまた、所定の計算式を用いる等、任意に変更してもよい。そして、空気ポンプ21自体をオン/オフ(間欠動作)することにより、その出力を低減する構成であってもよい。
【0078】
・上記各実施形態では、内圧確認部60としての制御装置35は、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気を該共有区間Lcから排出した後、その内圧Pの目標値PTが低い順に、各空気袋10の内圧確認を実行することとした。しかし、これに限らず、内圧Pの目標値PTが高い順に、各空気袋10の内圧確認を実行する構成としてもよい。
【0079】
例えば、図14に示す例の場合、制御装置35は、時間t21において、各空気袋10(10a〜10d)に対する空気の充填が全て完了した後(図3参照)、圧力センサ37が設けられた流路Lの共有区間Lcに封止された空気の排出を行うことなく、続けて、最も高い内圧Pの目標値PT1が設定された第1の空気袋10aの内圧Pを確認する。また、制御装置35は、時間t22において、その第1の空気袋10aの内圧確認を終了すると、続いて、この第1の空気袋10aの目標値PT1の次に高い内圧Pの目標値PT3が設定された第3の空気袋10cの内圧Pを確認する。更に、制御装置35は、時間t23において、その第3の空気袋10cの内圧確認を終了すると、続いて、この第3の空気袋10cと同じ値に内圧Pの目標値PT4が設定された第4の空気袋10dの内圧Pを確認する。そして、制御装置35は、時間t24において、この第4の空気袋10dの内圧確認を終了した後、最も低い内圧Pの目標値PT2が設定された第2の空気袋10bの内圧Pを確認する(時間t25で終了)。
【0080】
このような構成を採用しても、その連続して内圧確認を行う2つの空気袋10間の圧力差を小さく抑えることができる。更に、各空気袋10について一連の内圧確認を開始する前の残圧排気を廃止することができる。そして、これにより、各空気袋10の内圧確認に要する時間を更に短縮することができる。
【0081】
・上記第2の実施形態では、一つの空気ポンプ21が圧送する空気を独立した2つの吸排気バルブ装置22B(22Ba,22Bb)の何れかを介して各空気袋10に充填する構成に具体化した。しかし、これに限らず、一つの空気ポンプ21と、3以上の吸排気バルブ装置22と、を備える構成に適用してもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、制御装置35が、圧送制御部50a、吸気制御部50b、内圧検出部50c、及び内圧確認部60として機能することとした。しかし、これに限らず、これらの機能制御部が複数の情報処理装置に分散された構成であってもよい。また、制御装置35は、吸排気バルブ装置22と一体に設けられた構成でもよく、別体であってもよい。更に、複数の吸排気バルブ装置22Bを備える構成では、これらの吸排気バルブ装置22B毎に制御装置35が設けられた構成であってもよい。そして、この場合、その複数の制御装置35が相互通信を行う等によって、その圧送制御部50a、吸気制御部50b、内圧検出部50c、及び内圧確認部60として機能するようにしてもよい。
【0083】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記各空気袋を前記圧力センサが設けられた前記流路の共有区間に対して個別に接続することにより前記各空気袋の内圧を確認する内圧確認部を備え、前記内圧確認部は、前記空気袋毎に設定された前記内圧の目標値順に、前記内圧の確認を実行すること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【0084】
上記構成によれば、連続して内圧確認を行う2つの空気袋間の圧力差を小さく抑えることができる。その結果、一つの空気袋について内圧を確認した後、次の空気袋について内圧を確認するまでの間に、その圧力センサが設けられた流路の共有区間に封止された空気を排出しなくとも、高い精度で内圧を確認することができる。そして、これにより、迅速に、各空気袋の内圧を確認することができる。
【0085】
(ロ)前記内圧確認部は、前記流路の共有区間に封止された前記空気を該共有区間から排出した後、前記内圧の目標値が低い順に、前記内圧の確認を実行すること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【0086】
上記構成によれば、圧力センサが設けられた流路の共有区間に封止された空気の残圧が及ぼす影響を最小化することができる。そして、この状態から内圧の目標値が低い順に各空気袋の内圧を確認することで、その連続して内圧確認を行う2つの空気袋間の圧力差を小さく抑えることができる。
【0087】
(ハ)前記各空気袋には、前記流路を介して一つの前記空気ポンプが圧送する空気が充填されるとともに、前記流路には、独立した前記圧力センサを有する複数の前記共有区間が設けられるものであって、前記内圧確認部は、前記各空気袋に対する前記空気の充填が全て完了した後、前記共有区間毎に、該共有区間を介して前記空気が充填された前記各空気袋の内圧を確認すること、を特徴とする車両シートの空気圧制御装置。
【0088】
上記構成によれば、圧力センサと、この圧力センサが設けられた流路の共有区間と、その共有区間に対して各空気袋を個別に接続可能な弁装置と、が一体化された吸排気装置を複数備え、これら各吸排気装置の何れかを介して一つの空気ポンプから各空気袋に空気を圧送する構成についても、精度よく、迅速に、各空気袋の内圧を確認することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…シート、10,10a〜10d,10x〜10z,10aa,10ab,10bc,10bd,11〜16…空気袋、20,20B…シート装置、21…空気ポンプ、22,22B(22Ba,22Bb)…排気バルブ装置、23…モータ、31…逆止弁、32,32a〜32d…吸気バルブ(弁装置)、33,33a,33b…排気バルブ(弁装置)、35…制御装置、35a…記憶領域、37,37a37b…圧力センサ、40…制御テーブル、50a…圧送制御部、50b…吸気制御部、50c…内圧検出部、60…内圧確認部、L…流路、Lc,Lca,Lcb…共有区間、Lm…本線、Lb,Lb1〜Lb4…支線、P…内圧、P0…圧送圧、P1…圧力値、Pd…検出値、δ…誤差、PT,PT1〜PT4,PTx〜PTz…目標値、n…残数、D(D1〜D4)…デューティ(出力)、t1〜t25…時間、Tw…待機時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14