【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術開発など(未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸部は、前記熱交換器の外表面に沿った方向における前記供給部の一方端部側および他方端部側にそれぞれ取り付けられ、前記供給部と共に前記軸方向に直線移動可能に構成された第3軸部および第4軸部を有し、
前記第3軸部および前記第4軸部をそれぞれ前記軸方向の一方方向および他方方向に移動させることにより、前記供給部を所定の傾斜方向に傾斜させることによって、前記供給部に前記溶液を汲み上げさせるとともに、前記第3軸部または前記第4軸部の少なくとも一方を移動させて前記供給部を前記熱交換器の外表面に沿った方向になるように配置することによって、一対の前記熱交換器のうちの一方の前記熱交換器の外表面に前記溶液を供給させるように構成されている、請求項2に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
まず、
図1〜
図8を参照して、本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。
【0028】
(吸収式ヒートポンプ装置の構成)
本発明の第1実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100では、冷媒としての水と、吸収液としての臭化リチウム(LiBr)水溶液とが用いられており、エンジン90を備えた乗用車およびバスなどの車両(図示せず)に搭載される。
【0029】
吸収式ヒートポンプ装置100は、
図1に示すように、再生器1(二点鎖線枠内)と、凝縮器2と、蒸発器3と、吸収器4と、空調用熱交換器5とを備える。再生器1は、吸収液から高温水蒸気(冷媒蒸気)を分離する役割を有する。凝縮器2は、冷房運転時に、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。蒸発器3は、冷房運転時に、凝縮して水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有する。吸収器4は、濃液状態で供給された吸収液に蒸発器3で気化した低温水蒸気(高温水蒸気よりも低温の水蒸気、冷媒蒸気)を吸収させる役割を有する。空調用熱交換器5は、蒸発器3において冷却された空調用水と外気とを熱交換させる役割を有する。
【0030】
再生器1は、吸収液を加熱する加熱部1aと、加熱された吸収液から高温水蒸気(冷媒蒸気)を分離する気液分離部1bとを含む。加熱部1aでは、排気管91を流通するエンジン90からの高温の排気ガスの一部と、低温の吸収液とが熱交換される。凝縮器2は、冷却水(熱交換流体の一例)が内部を流通する熱交換部2aを含む。凝縮器2では、熱交換部2a内を流通する低温の冷却水と気液分離部1bからの高温水蒸気とが熱交換される。これにより、高温水蒸気が凝縮されて液状の水(冷媒)になる。なお、蒸発器3および吸収器4の詳細な構造については後述する。
【0031】
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、吸収液循環流路80と、高温水蒸気流路81と、低温水蒸気流路82、冷媒流路83と、冷却水循環流路84と、空調用循環流路85とをさらに備える。
【0032】
吸収液循環流路80は、再生器1と吸収器4との間で吸収液を再生しながら循環させる役割を有している。吸収液循環流路80には、吸収液の流通を制御するためのポンプ80aおよび弁80bが設けられている。
【0033】
高温水蒸気流路81は、気液分離部1bから発生した高温水蒸気を凝縮器2に供給する役割を有している。低温水蒸気流路82は、蒸発器3から発生した低温水蒸気を吸収器4に供給する役割を有している。冷媒流路83は、凝縮器2で凝縮した水(冷媒)を蒸発器3に供給する役割を有している。冷媒流路83には、水(冷媒)の流通を制御するための弁83aが設けられている。
【0034】
冷却水循環流路84は、冷却水を循環させることによって、凝縮器2および吸収器4において、それぞれ、高温水蒸気および吸収液を冷却する役割を有している。冷却水循環流路84には、冷却水の流通を制御するためのポンプ84aが設けられている。また、冷却水循環流路84には、凝縮器2および吸収器4において暖められた冷却水を外気により冷却するラジエータ84bと、ラジエータ84bに外気を供給するためのファン84cとが設けられている。
【0035】
空調用循環流路85は、蒸発器3において冷却された空調用水を循環させる役割を有している。空調用循環流路85には、空調用水の流通を制御するためのポンプ85aが設けられている。また、空調用循環流路85には、空調用熱交換器5として、蒸発器3において冷却された空調用水により空気を冷却して冷風にするラジエータ5aと、ラジエータ5aに空気を供給することによって車両の車内の冷房を行うためのファン5bとが設けられている。
【0036】
ここで、第1実施形態では、低温水蒸気(冷媒蒸気)を吸収液(LiBr水溶液)に吸収させる吸収器4は、以下のように構成されている。
【0037】
(吸収器の構造)
吸収器4は、
図2に示すように、低圧状態に保たれた容器41と、容器41内に配置され、吸収液と冷却水とが熱交換を行う熱交換部42と、を含む。容器41の上下方向(Z軸方向)のZ1側(下方)には、吸収液が主に貯留される液溜まり部41aが形成されている。また、吸収器4では、低温水蒸気流路82からの低温水蒸気が、上下方向(Z軸方向)のZ2側(上方)から容器41内に流入するように構成されている。また、吸収器4では、吸収液循環流路80を介して再生器1から容器41内の液溜まり部41aに吸収液(濃液)が供給されるとともに、液溜まり部41aの吸収液(希液)が吸収液循環流路80を介して再生器1に供給されるように構成されている。
【0038】
容器41の上下方向と直交するX軸方向の一方側(X1側)には、後述する軸移動機構部50のモータ56、軸部51(第1軸52)のX1側の端部およびスライド機構部54が吸収液から隔離して配置される第1室41bが設けられている。また、容器41のX軸方向の他方側(X2側)には、軸部51(第2軸53)のX2側の端部およびスライド機構部55が吸収液から隔離して配置される第2室41cが設けられている。
【0039】
熱交換部42は、X軸方向に配列され、平円板状の複数(8個)の伝熱板43(熱交換器の一例)と、冷却水循環流路84を流通する冷却水を伝熱板43に供給する冷却水供給部44aと、伝熱板43から冷却水を回収して冷却水循環流路84に戻す冷却水回収部44bとを有する。
【0040】
複数(8個)の伝熱板43は、各々、X軸方向の両側にそれぞれ形成された外表面43aと、伝熱板43内に配置され、冷却水が内部を流通する冷却水流通管43bとを有する。外表面43aは、軸部51の延びるX軸方向と直交する方向に広がる平面状である。冷却水流通管43bは、冷却水と吸収液との熱交換が効率的に行われるように、伝熱板43内の全体に亘って蛇行して配置されている。これにより、複数(8個)の伝熱板43では、外表面43aに供給された吸収液と冷却水流通管43b内の冷却水との熱交換が行われる。冷却水供給部44aおよび冷却水回収部44bは、それぞれ、冷却水流通管43bの一方端および他方端に接続されている。
【0041】
また、伝熱板43は容器41に固定されている。また、円板状の伝熱板43の中心には、X軸方向から見て円形状を有し、軸部51が貫通する軸挿入孔43cが設けられている。
【0042】
熱交換部42は、軸部51を含む軸移動機構部50と、X軸方向に隣接する一対の伝熱板43間に挟み込まれるように配置された複数(7個)の回転供給体60(供給部および回転体の一例)とをさらに有する。
【0043】
軸移動機構部50は、複数の伝熱板43および複数の回転供給体60の配置領域の全域に亘ってX軸方向に延びる軸部51を含む。軸部51は、X軸方向に延びる回転軸線A上(同軸上)に配置され、回転軸線A回りにB方向に回転可能な第1軸52(第1軸部の一例)および第2軸53(第2軸部の一例)を有する。
【0044】
第1軸52は、中空状であり、内部に第2軸53がX軸方向に摺動可能に配置されている。また、第1軸52は、対応する回転供給体60のX1側の外表面60cに接着等により取り付けられる複数(7個)の鍔部52a(第1取付部の一例)と、X軸方向に延びる複数(28個)の長穴52bとを有する。鍔部52aは、X軸方向から見て円環状に形成されている。なお、鍔部52aの外径は、軸挿入孔43cの径よりも小さい。これにより、鍔部52aは、軸挿入孔43c内に配置可能である(
図5参照)。
【0045】
複数の長穴52bは、対応する回転供給体60のX2側の外表面60dをX軸方向に横切るようにX軸方向に延びている。また、複数の長穴52bは、X軸方向の所定の位置において、略等角度間隔で4個設けられている。複数の長穴52bは、後述する突出部53aが第1軸52から突出するために設けられている。
【0046】
第1軸52は、X1側の端部に設けられたスライド機構部54をさらに有する。スライド機構部54は、容器41に固定されたX1側のカム54aと、第1軸52のX1側の端部に固定されたカム54bとを有する。このスライド機構部54では、第1軸52の回転により、カム54aとカム54bとの当接面がX軸方向に移動することによって、回転する第1軸52がX軸方向に直線運動を行うように構成されている。なお、第1軸52が最もX1側に位置する状態から、第1軸52が180度回転する(半回転する)ことによって、第1軸52が最もX2側に位置する状態になるように、スライド機構部54は構成されている。
【0047】
第2軸53は、第1軸52の回転に伴って回転しつつ、第1軸52内をX軸方向に摺動可能に構成されている。第2軸53は、回転供給体60のX2側の外表面60dに接着等により取り付けられる、複数(28個)の突出部53a(第2取付部の一例)を有する。複数の突出部53aは、X軸方向の所定の位置において、略等角度間隔で4個設けられているとともに、4個の突出部53aは、対応する回転供給体60のX2側の外表面60dに各々取り付けられている。また、突出部53aは、対応する長穴52bから第1軸52の径方向外側に向かって突出するように形成されている。なお、
図2などでは、X軸方向の所定の位置において、長穴52bおよび突出部53aをZ軸方向の両側に設けるように図示しているものの、実際は、Z軸方向の両側だけでなく、Y軸方向(
図3参照)の両側にも長穴52bおよび突出部53aが設けられている。
【0048】
また、突出部53aは、第2軸53のX軸方向の相対的な直線移動に伴い、長穴52bに沿ってX軸方向に相対移動するように構成されている。また、突出部53aは、軸挿入孔43cの内周に接触しないように突出している。これにより、突出部53aは、軸挿入孔43c内に配置可能である(
図5参照)。
【0049】
第2軸53は、第1軸52と同様に、X2側の端部に設けられたスライド機構部55をさらに有する。スライド機構部55は、スライド機構部54と同様に、容器41に固定されたX2側のカム55aと、第2軸53のX2側の端部に固定されたカム55bとを有する。このスライド機構部55によって、回転する第2軸53が直線運動を行うように構成されている。なお、第2軸53が最もX2側に位置する状態から、第2軸53が180度回転する(半回転する)ことによって、第2軸53が最もX1側に位置する状態になるように、スライド機構部55は構成されている。また、第1軸52が最もX1側に位置する状態において、第2軸53が最もX2側に位置する状態になるように、軸移動機構部50は構成されている。
【0050】
軸移動機構部50は、軸部51を回転させるための回転駆動力を発生させるためのモータ56と、第1軸52のX1側の端部近傍に固定され、モータ56のギア56aに噛合するギア57とをさらに含む。
【0051】
回転供給体60は、延性の高い金属製の袋部材から構成されている。これにより、回転供給体60は、内部空間60a(
図5参照)に液溜まり部41aの吸収液を貯留することが可能に構成されている。具体的には、複数の回転供給体60は、
図3に示すように、各々、回転軸線Aの延びるX軸方向(軸方向の一例)に伸縮可能な蛇腹状の袋部材から構成されている。また、複数の回転供給体60は、容器41内に配置された状態で、Z1側の下部が液溜まり部41aに浸かっている。
【0052】
回転供給体60は、X軸方向から見て、円状に形成されているとともに、円の中心には、軸部51(第1軸52)が挿入される軸挿入孔60bが設けられている。回転供給体60は、軸部51(
図2参照)の回転に伴い、回転軸線A(
図2参照)回りにB方向に回転するように構成されている。
【0053】
また、複数の回転供給体60は、各々、X軸方向の両側にそれぞれ形成された外表面60cおよび60dを有する。外表面60cおよび60dは、
図2に示すように、伝熱板43の外表面43aと対向するように、軸部51の延びるX軸方向と直交する方向に広がる平面状である。
【0054】
図3および
図4に示すように、X軸方向の両側の外表面60cおよび60dには、各々、吸収液が内部空間60aに流入する複数の流入口61と、内部空間60aから吸収液が吐出される複数の吐出口62とが形成されている。なお、第1実施形態では、複数の流入口61および吐出口62は、等間隔(等角度間隔)で形成されているものの、複数の流入口61および吐出口62は、等間隔(等角度間隔)で形成されている必要はない。なお、
図4では、理解容易のため、流入口61および吐出口62を、それぞれ、太線および細線で図示している。
【0055】
複数の流入口61は、液溜まり部41a内に配置可能なように、外表面60cおよび60dの外縁部近傍に複数形成されている。なお、複数の流入口61は、回転供給体60の後述する吸収液流入期間の全期間において内部空間60aに吸収液が流入可能なように、約120度の角度範囲内に亘って複数形成されている。なお、複数の流入口61では、後述する吸収液吐出期間において吸収液が吐出される。
【0056】
複数の吐出口62は、液溜まり部41a内に配置されない位置に複数形成されている。吐出口62には、外表面60cまたは60dから回転供給体60の外側に向かって開放可能である一方、外表面60cまたは60dから回転供給体60の内部空間60aに向かって開放されない逆止弁62aが設けられている。これにより、逆止弁62aは、吐出口62から回転供給体60の内部に吸収液および容器41内の空気が流入するのを規制する役割を有する。この結果、複数の吐出口62は、吸収液流入期間において内部空間60aに吸収液および空気が流入するのが抑制されるとともに、吸収液吐出期間において吸収液が吐出される。
【0057】
また、回転供給体60では、
図2に示すように、第1軸52および第2軸53が相対的に直線移動することにより、X1側の外表面60c(第1供給部外表面の一例)に取り付けられた鍔部52aと、X2側の外表面60d(第2供給部外表面の一例)に取り付けられた4個の突出部53aとのX軸方向の距離が大きくなるかまたは小さくなる。これにより、回転供給体60は、X軸方向に伸長または収縮するように構成されている。具体的には、
図5に示すように、回転供給体60は、スライド機構部54により第1軸52がX1方向に直線移動するとともに、スライド機構部55により第2軸53がX2方向に直線移動することにより、鍔部52aと突出部53aとのX軸方向の距離が大きくなる。これにより、回転供給体60は、鍔部52aと突出部53aとにより広げられて、X軸方向に伸長するように構成されている。また、
図6に示すように、回転供給体60は、スライド機構部54により第1軸52がX2方向に直線移動するとともに、スライド機構部55により第2軸53がX1方向に直線移動することにより、鍔部52aと突出部53aとのX軸方向の距離が小さくなる。これにより、回転供給体60は、鍔部52aと突出部53aとにより縮められて、X軸方向に収縮するように構成されている。
【0058】
ここで、第1実施形態では、吸収器4では、軸移動機構部50により、軸部51を外表面43aと直交するX軸方向に直線移動させることによって、回転供給体60に、液溜まり部41aに貯留された吸収液を汲み上げさせるとともに伝熱板43の外表面43aに供給させるように構成されている。具体的には、
図5〜
図7に示すように、回転供給体60は、X軸方向に延びる回転軸線A回りに回転しながら、X軸方向への軸部51の直線移動に基づいてX軸方向に伸長することによって、吸収液を汲み上げつつ、吸収液を回転軸線A回りに回転しながら一対の伝熱板43の外表面43aに塗布するように構成されている。また、回転供給体60は、回転軸線A回りに回転しながら、X軸方向への軸部51の直線移動に基づいてX軸方向に収縮することによって、汲み上げた吸収液を塗布可能なように吐出するように構成されている。
【0059】
(吸収液の塗布動作について)
次に、
図5〜
図7を参照して、第1実施形態における、回転供給体60による吸収液の汲み上げ、吐出および伝熱板43の外表面43aへの塗布について具体的に説明する。
【0060】
図7に示すように、蛇腹状の袋部材から構成される回転供給体60は、軸部51と共に回転軸線A回りにB方向に360度回転する(1周する)毎に、伸長および収縮を1サイクル行うように構成されている。なお、以下の説明では、回転供給体60が最も収縮した状態を角度が0度(360度)であるとし、回転供給体60が最も伸長した状態を角度が180度であるとする。
【0061】
最も収縮した状態(0度の状態)から、回転供給体60がB方向に回転すると、鍔部52aと突出部53aとが互いに遠ざかることにより、回転供給体60の内部空間60aの体積が大きくなる。これにより、内部空間60a内が負圧になることによって、
図5および
図6に示すように、液溜まり部41a内に位置する複数の流入口61から内部空間60aに吸収液が流入する。なお、液溜まり部41a外に位置する吐出口62に形成された逆止弁62aにより、容器41内の空気が内部空間60aに流入するのが抑制される。そして、回転供給体60が最も収縮した状態(0度の状態)から回転供給体60が最も伸長した状態(180度の状態)になるまで、内部空間60aに吸収液が流入する(吸収液流入期間)。
【0062】
ここで、
図5に示すように、回転供給体60が最も伸長した状態(180度の状態)およびその近傍の状態において、回転供給体60の外表面60cおよび60dがX軸方向の両側の一対の伝熱板43の外表面43aにそれぞれ当接した状態で、回転供給体60が回転する。これにより、前回の吸収液吐出期間に吐出された回転供給体60の外表面60cおよび60d上の吸収液が、それぞれ、回転供給体60に対してX1側の伝熱板43におけるX2側の外表面43a、および、回転供給体60に対してX2側の伝熱板43におけるX1側の外表面43aに塗布される。
【0063】
最も伸長した状態(180度の状態)から、回転供給体60がさらにB方向に回転すると、
図5および
図7に示すように、鍔部52aと突出部53aとが互いに近づくことにより、回転供給体60がX軸方向に押しつぶされる。これにより、内部空間60a内の吸収液が複数の流入口61および吐出口62から回転供給体60の外表面60cおよび60dに吐出される。そして、回転供給体60が最も伸長した状態(180度の状態)から回転供給体60が最も収縮した状態(360度(0度)の状態)になるまで、内部空間60a内の吸収液が外表面60cおよび60dに吐出される(吸収液吐出期間)。そして、再度、吸収液流入期間となり、外表面60cおよび60dに吐出された吸収液が伝熱板43の外表面43aに塗布される。これらの動作が周期的に繰り返される。
【0064】
なお、最も伸長した状態(180度の状態)を除く期間において、回転供給体60の外表面60cおよび60dと、伝熱板43の外表面43aとのX軸方向の間には、隙間I(
図7参照)が形成される。特に、回転供給体60が最も収縮した状態においては、大きな隙間Iが形成される。これにより、伝熱板43の外表面43aに塗布され、冷却水により冷却された吸収液に、隙間Iを流れる低温水蒸気が効率的に吸収される。このように吸収器4は構成されている。
【0065】
(蒸発器の構造)
また、第1実施形態では、水(冷媒)を蒸発させて空調用水を冷却する蒸発器3は、吸収器4と同様の構成を有している。以下、蒸発器3の構造について説明する。なお、吸収器4と同様の構造に関しては、同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0066】
蒸発器3は、
図8に示すように、低圧状態に保たれた容器31と、容器31内に配置され、水と空調用水とが熱交換を行う熱交換部32と、を含む。容器31のZ1側(下方)には、水(冷媒)が貯留される液溜まり部31aが形成されている。また、蒸発器3は、水還流路3aと、水還流路3aに配置されたポンプ3bとを含んでいる。これにより、蒸発器3は、水還流路3aを介して、液溜まり部31aの水を、Z2側(上方)から容器31内に還流させることによって、水を容器31内で気化させるように構成されている。また、蒸発器3は、冷媒流路83を介して、凝縮器2の水が液溜まり部31aに供給されるように構成されている。また、蒸発器3では、空調用水との熱交換により水が蒸発することによって発生した低温水蒸気が、容器31のZ2側(上方)から、低温水蒸気流路82を介して吸収器4に供給されるように構成されている。
【0067】
容器31のX1側には、軸移動機構部50のモータ56、軸部51(第1軸52)のX1側の端部およびスライド機構部54が配置される第1室31bが設けられている。また、容器31のX2側には、軸部51(第2軸53)のX2側の端部およびスライド機構部55が配置される第2室31cが設けられている。
【0068】
熱交換部32は、X軸方向に配列され、平円板状の複数(8個)の伝熱板33(熱交換器の一例)と、伝熱板33に空調用水を供給する空調用水供給部34aと、伝熱板33から空調用水を回収する空調用水回収部34bとを有する。複数(8個)の伝熱板33は、各々、X軸方向の両側にそれぞれ形成された外表面33aと、伝熱板33内に配置され、空調用水が内部を流通する空調用水流通管33bとを有する。外表面33aは、軸部51の延びるX軸方向と直交する方向に広がる平面状である。空調用水供給部34aおよび空調用水回収部34bは、それぞれ、空調用水流通管33bの一方端および他方端に接続されている。
【0069】
また、伝熱板33は容器31に固定されている。円板状の伝熱板33の中心には、X軸方向から見て円形状を有し、軸部51が貫通する軸挿入孔33cが設けられている。
【0070】
熱交換部32は、さらに、軸部51を含む軸移動機構部50と、X軸方向に隣接する一対の伝熱板33間に挟み込まれるように配置された複数(7個)の回転供給体60とを有する。なお、回転供給体60は、内部空間60aに吸収液の代わりに水が貯留される点を除いて、吸収器4の回転供給体60と同様であるので説明を省略する。
【0071】
また、第1実施形態では、蒸発器3では、吸収器4と同様に、軸移動機構部50により、軸部51を外表面33aと直交するX軸方向に直線移動させることによって、回転供給体60に、液溜まり部31aに貯留された水を汲み上げさせるとともに伝熱板33の外表面33aに供給させるように構成されている。なお、水の塗布動作についは、吸収器4における吸収液の塗布動作と同様であるので説明を省略する。
【0072】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
第1実施形態では、吸収器4を、回転供給体60に取り付けられた軸部51を伝熱板43の外表面43aと直交するX軸方向に直線移動させることによって、回転供給体60に、液溜まり部41aに貯留された吸収液を汲み上げさせるとともに伝熱板43の外表面43aに供給させるように構成する。これにより、軸部51を外表面43aと直交する方向に直線移動させることにより、軸部51が取り付けられる回転供給体60を、伝熱板43の外表面43aから離れる方向または近づく方向に、軸部51と共に移動させることができる。この結果、回転供給体60を、伝熱板43の外表面43aに近づく方向に移動させることによって、伝熱板43の外表面43aに吸収液を供給(塗布)することができる。さらに、回転供給体60を、伝熱板43の外表面43aから離れる方向に移動させることによって、伝熱板43の外表面43aと回転供給体60との隙間Iを十分に確保することができるので、吸収器4に供給される低温水蒸気(冷媒蒸気)を、伝熱板43の外表面43aに供給された吸収液に効率よく吸収させることができる。
【0074】
また、第1実施形態では、蒸発器3を、回転供給体60に取り付けられた軸部51を外表面33aと直交するX軸方向に直線移動させることによって、回転供給体60に、液溜まり部31aに貯留された吸収液を汲み上げさせるとともに伝熱板33の外表面33aに供給させるように構成する。これにより、吸収器4と同様に、回転供給体60を、伝熱板33の外表面33aに近づく方向に移動させることによって、伝熱板33の外表面33aに水(冷媒)を供給(塗布)することができる。さらに、回転供給体60を、伝熱板33の外表面33aから離れる方向に移動させることによって、伝熱板33の外表面33aと回転供給体60との隙間Iを十分に確保することができるので、伝熱板33の外表面33aに供給された水(冷媒)を効率よく蒸発させて、空気を冷却することができる。
【0075】
また、第1実施形態では、複数の伝熱板43を、回転供給体60を伝熱板43の外表面43aと直交するX軸方向に挟み込むように設ける。そして、軸移動機構部50の軸部51を、一対の伝熱板43および回転供給体60の配置領域に亘って、伝熱板43の外表面43aと直交するX軸方向に延ばす。これにより、1個の回転供給体60により、一対の伝熱板43の外表面43aへの吸収液の供給と、一対の伝熱板43の外表面43aと回転供給体60との隙間Iの十分な確保とを行うことができる。この結果、伝熱板43毎に回転供給体60を個別に設ける場合と比べて、吸収式ヒートポンプ装置100の吸収器4の構成を簡素化することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、回転供給体60を、X軸方向に延びる回転軸線A回りに回転しながら、X軸方向への軸部51の直線移動に基づいてX軸方向に伸長することによって、吸収液を汲み上げつつ、吸収液を回転軸線A回りに回転しながら一対の伝熱板43の外表面43aに塗布するように構成する。これにより、回転供給体60がX軸方向に伸長することによって、回転供給体60を一対の伝熱板43の外表面43aに近づく方向に変形させることができるので、一対の伝熱板43の外表面43aに容易に吸収液を供給(塗布)することができる。さらに、回転供給体60が吸収液を回転軸線A回りに回転しながら一対の伝熱板43の外表面43aに塗布することによって、回転供給体60の回転を利用して、一対の伝熱板43の外表面43aの広範囲に確実に吸収液を供給することができる。
【0077】
また、第1実施形態では、回転供給体60を、回転軸線A回りに回転しながら、X軸方向への軸部51の直線移動に基づいてX軸方向に収縮することによって、汲み上げた吸収液を外表面43aに塗布可能なように吐出するように構成する。これにより、回転供給体60がX軸方向に収縮することによって、回転供給体60が一対の伝熱板43の外表面43aから離れる方向に変形させることができるので、一対の伝熱板43の外表面43aと回転供給体60との隙間Iを十分に確保することができる。また、汲み上げた吸収液が一対の伝熱板43の外表面43aに塗布可能なように吐出されることによって、汲み上げた吸収液を回転供給体60の外表面60cに位置させることができる。これにより、回転供給体60がX軸方向に伸長する方向に変形する際に、一対の伝熱板43の外表面43a近傍に位置することが可能な回転供給体60の外表面60cおよび60dから、一対の伝熱板43の外表面43aに確実に吸収液を供給(塗布)することができる。
【0078】
また、第1実施形態では、軸部51の第1軸52および第2軸53が相対的に直線移動することにより、回転供給体60のX1側の外表面60cに取り付けられた鍔部52aと、回転供給体60のX2側の外表面60dに取り付けられた突出部53aとの距離が大きくなるかまたは小さくなることによって、回転供給体60を、X軸方向に伸長または収縮するように構成する。これにより、第1軸52の鍔部52aと、第2軸53の突出部53aとの距離を変化させることにより、回転供給体60を容易にX軸方向に伸長または収縮させることができる。
【0079】
また、第1実施形態では、回転供給体60を、X軸方向に伸縮する蛇腹状の袋部材から構成する。そして、袋部材(回転供給体60)に、液溜まり部41a内に配置可能に構成され、X軸方向に伸長する際に内部(内部空間60a)に吸収液が流入する流入口61と、X軸方向に収縮する際に内部(内部空間60a)から吸収液が吐出される吐出口62と、を設ける。これにより、回転供給体60を容易に伸縮可能に構成することができる。さらに、袋部材がX軸方向に伸長することによって、袋部材の内部(内部空間60a)の体積が大きくなり袋部材の内部が負圧になるので、吸収液を流入口61から袋部材の内部に流入させやすくすることができる。また、袋部材がX軸方向に収縮することによって、袋部材の内部の吸収液を吐出口から袋部材の外部に吐出させやすくすることができる。
【0080】
また、第1実施形態では、吐出口62が、吐出口62から袋部材(回転供給体60)の内部(内部空間60a)に吸収液および容器41内の空気が流入するのを規制する逆止弁62aを有する。これにより、袋部材がX軸方向に伸長した際に、吸収液および容器41内の空気が袋部材の内部に流入するのが規制されるので、袋部材の内部に吸収液が流入しにくくなるのを抑制することができる。
【0081】
また、第1実施形態では、回転可能な軸部51に、軸部51の回転状態に伴ってX軸方向に直線移動するためのスライド機構部54および55を設けるとともに、回転供給体60を、軸部51の回転に伴って回転するように構成する。これにより、軸部51の回転を利用して、軸部51をX軸方向に直線移動させつつ、回転供給体60を回転させることができる。この結果、軸部51をX軸方向に直線移動させる駆動源および回転供給体60を回転させるための駆動源を別個に設ける必要がないので、吸収器4(吸収式ヒートポンプ装置100)の構造を簡素化することができる。
【0082】
また、第1実施形態では、回転供給体60は複数(7個)設けられており、伝熱板43は、複数の回転供給体60を伝熱板43の外表面43aと直交するX軸方向に挟み込むように複数(8個)設けられている。これにより、吸収液に低温水蒸気(冷媒蒸気)を吸収させるという吸収器4の機能を確実に向上させることができる。
【0083】
[第2実施形態]
図1および
図9〜
図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、吸収器204において、供給板260(供給部の一例)を傾斜させることによって、伝熱板243(熱交換器の一例)の外表面43aに吸収液を供給する例について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
【0084】
吸収式ヒートポンプ装置200は、
図1に示すように、吸収器204を備える。吸収器204は、
図9に示すように、直方体形状の容器241と、熱交換部242とを含む。容器241のX1側で、かつ、Z2側には、後述する軸移動機構部250のスライド駆動部256aおよび軸部251のX1側の端部が吸収液から隔離してそれぞれ配置される一対の第1室241bが設けられている。また、容器241のX1側で、かつ、Z1側には、軸移動機構部250の一対のスライド駆動部256bおよび一対の軸部252のX1側の端部が吸収液から隔離してそれぞれ配置される一対の第2室241cが設けられている。なお、図示していないものの、第1室241bおよび第2室241cは、各々、Z軸方向の略同じ位置において、Y軸方向(
図10参照)に並んで一対設けられている。
【0085】
熱交換部242は、
図9および
図10に示すように、X軸方向から見て矩形状の複数(8個)の伝熱板243と、冷却水供給部44aと、冷却水回収部44bとを有する。複数(8個)の伝熱板243は、外表面43aと、冷却水流通管43bとを有する。
【0086】
熱交換部242は、さらに、軸部251および252を含む軸移動機構部250と、X軸方向に隣接する一対の伝熱板243間に挟み込まれるように配置された複数(7個)の供給板260とを有する。
【0087】
軸移動機構部250は、複数の伝熱板243および複数の供給板260の配置領域の全域に亘ってX軸方向に延びる一対の軸部251(第3軸部の一例)および一対の軸部252(第4軸部の一例)を含む。一対の軸部251は、共にZ2側に配置されているとともに、Y軸方向の両側にそれぞれ配置されている。また、一対の軸部252は、共にZ1側に配置されているとともに、Y軸方向の両側にそれぞれ配置されている。なお、一対の軸部251および一対の軸部252は、回転可能には構成されていない。
【0088】
軸移動機構部250は、
図9に示すように、対応する軸部251をX軸方向に直線移動させる一対のスライド駆動部256aと、対応する軸部252をX軸方向に直線移動させる一対のスライド駆動部256bとをさらに含む。なお、図示していないものの、スライド駆動部256aおよび256bは、各々、Z軸方向の略同じ位置において、Y軸方向(
図10参照)に並んで一対設けられている。
【0089】
複数の供給板260は、各々、X軸方向から見て、矩形状に形成され、X軸方向の厚みの小さな平板から構成されている。なお、複数の供給板260の厚みは、伝熱板243のX軸方向の厚みよりも小さい方が好ましい。また、複数の供給板260は、容器241内に配置された状態で、Z1側の下部が液溜まり部41aに浸かっている。なお、
図10に示すように、X軸方向から見て、矩形状の供給板260は、伝熱板243の全体を覆うように、矩形状の伝熱板243よりも大きく形成されている。
【0090】
また、複数の供給板260は、各々、X軸方向の両側にそれぞれ形成された平面状の外表面260aを有する。外表面260aは、伝熱板243の外表面43aと対向している。
【0091】
供給板260のZ2側の一方端部における両隅の近傍には、それぞれ、軸部251が挿入される軸挿入孔260bが設けられているとともに、矩形の供給板260のZ1側の他端部における両隅の近傍には、それぞれ、軸部252が挿入される軸挿入孔260cが設けられている。また、軸挿入孔260bおよび260cには、ガスケット260dが各々嵌め込まれている。このガスケット260dは、軸部251または252が直線移動する際に、軸部251または252の移動に伴って供給板260の対応する隅が移動可能なように、軸部251または252と供給板260とを固定している。この結果、Z2側の一方端部側およびZ1側の他方端部にそれぞれ取り付けられた軸部251および252は、供給板260と共に、X軸方向に直線移動可能に構成されている。
【0092】
ここで、第2実施形態では、吸収器204は、軸部251および軸部252をそれぞれX軸方向の一方方向および他方方向(互いに逆方向)に移動させることにより、供給板260を所定の傾斜方向に傾斜させることによって、供給板260に吸収液を汲み上げさせる。そして、吸収器204は、軸部251を移動させて供給板260を外表面43aに沿った方向になるように配置することによって、供給板260を挟み込む一対の伝熱板243のうちの一方の伝熱板243の外表面43aに吸収液を供給させるように構成されている。この際、一対の軸部251は、同じタイミングで同じ方向に移動されるとともに、一対の軸部252は、同じタイミングで同じ方向に移動されるように構成されている。
【0093】
(吸収液の塗布動作について)
次に、
図9および
図11〜
図14を参照して、第2実施形態における、供給板260による吸収液の汲み上げおよび伝熱板243の外表面43aへの吸収液の塗布について具体的に説明する。
【0094】
たとえば、
図9の状態から、一対の軸部251をX1方向に直線移動させ、一対の軸部252をX2方向(一対の軸部251とは逆方向)に直線移動させる。これにより、
図11に示すように、供給板260は、Y軸方向から見て、X1側からX2側に向かって下方(Z1方向)(つまり、傾斜方向C1)に傾斜する。そして、供給板260に対してX1側の伝熱板243のZ2側の端部に、供給板260のX1側の外表面260aが当接するとともに、供給板260に対してX2側の伝熱板243のZ1側の端部に、供給板260のX2側の外表面260aが当接する。この際、傾斜する供給板260とX2側の伝熱板243との間において、液溜まり部41aの吸収液が汲み上げられる。
【0095】
そして、
図11の状態から、一対の軸部251をX2方向(一対の軸部252と同じ方向)に直線移動させて、供給板260のX2側の外表面260aをX2側の伝熱板243のX1側の外表面43aの全面と接触させる。これにより、
図12示すように、供給板260により汲み上げられた吸収液は、X2側の伝熱板243におけるX1側の外表面43aの全面に塗布される。この際、供給板260とX1側の伝熱板243とのX軸方向の間には、大きな隙間Iが形成される。これにより、X1側の伝熱板243におけるX2側の外表面43aにおいて、塗布および冷却された吸収液に隙間Iを流れる低温水蒸気が効率的に吸収される。
【0096】
その後、
図12の状態から、一対の軸部252をX1方向(一対の軸部251とは逆方向)に直線移動させる。これにより、
図13に示すように、供給板260は、Y軸方向から見て、X1側からX2側に向かって上方(Z2方向)(つまり、傾斜方向C1とは異なる傾斜方向C2)に傾斜する。そして、X2側の伝熱板243のZ2側の端部に、供給板260のX2側の外表面260aが当接するとともに、X1側の伝熱板243のZ1側の端部に、供給板260のX1側の外表面260aが当接する。この際、傾斜する供給板260とX1側の伝熱板243との間において、液溜まり部41aの吸収液が汲み上げられる。
【0097】
そして、
図13の状態から、一対の軸部251をX1方向(一対の軸部252と同じ方向)に直線移動させて、供給板260のX1側の外表面260aをX1側の伝熱板243のX2側の外表面43aの全面と接触させる。これにより、
図14に示すように、供給板260により汲み上げられた吸収液は、X1側の伝熱板243におけるX2側の外表面43aの全面に塗布される。この際、供給板260と、X2側の伝熱板243とのX軸方向の間には、大きな隙間Iが形成される。この結果、X2側の伝熱板243におけるX1側の外表面43aおいて、塗布および冷却された吸収液に、隙間Iを流れる低温水蒸気が効率的に吸収される。
【0098】
その後、一対の軸部252をX2方向(一対の軸部251とは逆方向)に直線移動させることによって、
図11の状態に戻る。これらの動作が周期的に繰り返されることによって、供給板260によって吸収液の汲み上げられ、供給板260を挟み込む一対の伝熱板243の外表面43aに吸収液が交互に塗布される。そして、塗布されていない側の伝熱板243と供給板260との間には、大きな隙間Iが形成される。
【0099】
なお、供給板260の外表面260aと伝熱板243の外表面43aとが全面で接触する時点を除く期間において、供給板260の外表面260aと、伝熱板243の外表面43aとのX軸方向の間には、隙間Iが形成される。したがって、供給板260の外表面260aと伝熱板243の外表面43aとが全面で接触する時点を除く期間においても、伝熱板243の外表面43aに塗布され、冷却水により冷却された吸収液に、隙間Iを流れる低温水蒸気が吸収される。
【0100】
なお、第2実施形態のその他の構造は、第1実施形態の構造と同様である。
【0101】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0102】
第2実施形態では、吸収器204を、供給板260に取り付けられた軸部251および252を伝熱板243の外表面43aと直交するX軸方向に直線移動させることによって、供給板260に、液溜まり部41aに貯留された吸収液を汲み上げさせるとともに伝熱板243の外表面43aに供給させるように構成する。これにより、第1実施形態と同様に、供給板260を、伝熱板243の外表面43aに近づく方向に移動させることによって、伝熱板243の外表面43aに吸収液を供給(塗布)することができるとともに、供給板260を、伝熱板243の外表面43aから離れる方向に移動させることによって、伝熱板243の外表面43aと供給板260との隙間を十分に確保することができる。
【0103】
また、第2実施形態では、軸部251が、伝熱板243の外表面43aに沿った方向における供給板260のZ2側の一方端部側およびZ1側の他方端部側にそれぞれ取り付けられ、供給板260と共にX軸方向に直線移動可能に構成された軸部251および252を有する。そして、軸部251および252をそれぞれX軸方向のX1方向およびX2方向に移動させることにより、供給板260を所定の傾斜方向C1に傾斜させることによって、供給板260に吸収液を汲み上げさせる。さらに、軸部251を移動させて供給板260を伝熱板243の外表面43aに沿った方向になるように配置することによって、一対の伝熱板243のうちのX2側の伝熱板243におけるX1側の外表面43aに吸収液を供給させるように、吸収器204を構成する。これにより、供給板260を伝熱板243の外表面43aに沿った方向になるように配置させた際に、一対の伝熱板243のうちのX1側の伝熱板243と供給板260との間の隙間Iを十分に確保することができる。また、供給板260を所定の傾斜方向C1に傾斜させることによって供給板260に吸収液を汲み上げさせた際には、供給板260が所定の傾斜方向C1に傾斜していることにより、一対の伝熱板243の双方において、伝熱板243の外表面43aの少なくとも一部と供給板260との隙間Iを十分に確保することができる。
【0104】
また、第2実施形態では、軸部251および軸部252をそれぞれX2方向およびX1方向に移動させることにより、供給板260を所定の傾斜方向C1とは異なる傾斜方向C2に傾斜させることによって、供給板260に吸収液を汲み上げさせる。そして、軸部251を移動させて供給板260を伝熱板243の外表面43aに沿った方向になるように配置することによって、一対の伝熱板243のうちのX1側の伝熱板243におけるX2側の外表面43aに吸収液を供給させるように、吸収器204を構成する。これにより、供給板260を伝熱板243の外表面43aに沿った方向になるように配置させた際に、一対の伝熱板243のうちのZ1側の伝熱板243と供給板260との間の隙間Iを十分に確保することができる。
【0105】
また、第2実施形態では、伝熱板243および供給板260を、共に、X軸方向から見て矩形状に構成することによって、伝熱板および供給板がX軸方向から見て円形状である場合と比べて、直方体形状の容器241内において、伝熱板243および供給板260が配置されない空間が大きくなるのを抑制することができる。これにより、容器241が大型化するのを抑制することができるので、吸収器204(吸収式ヒートポンプ装置200)を容易に小型化することができる。
【0106】
また、第2実施形態では、複数の供給板260を、各々、X軸方向の厚みの小さな平板から構成することによって、供給板260と伝熱板243との隙間Iを確保しつつ、X軸方向に吸収器204を容易に小型化することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0107】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0108】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の熱交換器を、供給部を外表面と直交する方向に挟み込むように設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1個の熱交換器を1個の供給部に対応するように設けてもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態では、蛇腹状の袋部材から構成される回転供給体60(供給部)の流入口61には逆止弁を設けずに、吐出口62に逆止弁62aを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、蛇腹状の袋部材から構成される供給部の流入口に逆止弁を設けてもよい。この際、逆止弁は、溶液を供給部の内部に流入させる一方、供給部の内部の溶液は吐出させないように構成するのが好ましい。また、供給部の吐出口に逆止弁を設けなくてもよい。
【0110】
また、上記第1実施形態の構成に加えて、蛇腹状の袋部材から構成される回転供給体60の外表面60cおよび60dに、伝熱板43の外表面43aに吸収液を塗布するためのブラシを設けてもよい。これにより、より確実に伝熱板43の外表面43aに吸収液を塗布することが可能である。この場合、回転供給体60の外表面60cおよび60dを伝熱板43の外表面43aに当接させる必要がないので、回転供給体60の寿命を長くすることが可能である。
【0111】
また、上記第1実施形態では、軸部51を直線移動するための軸移動機構部50が、スライド機構部54および55およびモータ56を含む例を示した。また、上記第2実施形態では、軸部251および252を直線移動するための軸移動機構部250が、スライド駆動部256aおよび256bを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、軸部を直線移動するための軸移動機構部として、ボールねじ、エアシリンダ、電磁石などを用いてもよい。
【0112】
また、上記第1実施形態では、軸部の回転状態に伴って軸方向に直線移動するためのスライド機構部54および55を、共に、一対のカムから構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スライド機構部は、軸部の回転状態に伴って軸方向に直線移動可能であれば、カム以外の構成を用いてもよい。
【0113】
また、上記第1実施形態では、軸方向に伸縮可能に構成された回転供給体60(回転体)を、蛇腹状の袋部材から構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸回りに回転可能で、かつ、軸方向に伸縮可能に構成されていれば、回転体を、蛇腹状の袋部材以外の構成としてもよい。たとえば、回転体を、軸方向に回転可能な、互いに対向する断面コの字の一対の筐体から構成してもよい。これにより、軸方向に一対の筐体同士を近づけることによって、一対の筐体に囲まれた空間が小さくなる(軸方向に収縮する)とともに、軸方向に一対の筐体同士を遠ざけることによって、一対の筐体に囲まれた空間が大きくなる(軸方向に伸長する)ように構成することが可能である。
【0114】
また、上記第1および第2実施形態では、熱交換部42(242)に伝熱板43(243)(熱交換器)を8個設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。熱交換部に、熱交換器を1個以上7個以下、または、9個以上設けてもよい。なお、熱交換器は、複数であるのが好ましい。
【0115】
また、上記第1実施形態では、熱交換部42に回転供給体60(供給部)を7個設け、上記第2実施形態では、熱交換部242に供給板260(供給部)を7個設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。熱交換部に供給部を1個以上6個以下、または、8個以上設けてもよい。なお、供給部は、熱交換器と同数であってもよいし、熱交換器未満であってもよい。
【0116】
また、上記第2実施形態では、Z2側の一方端部側に形成される軸部251を一対設けるとともに、Z1側の他方端部側に形成される軸部252を一対設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。一方端部側に形成される軸部は、1個または3個以上であってもよいし、他方端部側に形成される軸部は、1個または3個以上であってもよい。なお、安定的に供給板を傾斜させるためには、一方端部側に形成される軸部および他方端部側に形成される軸部は、複数であるのが好ましい。また、軸部を直線移動させるためのスライド駆動部の数を減少させるためには、一方端部側に形成される軸部および他方端部側に形成される軸部は、少ない方が好ましい。
【0117】
また、上記第1実施形態では、伝熱板43(熱交換器)および回転供給体60(供給部)が、X軸方向から見て(平面視において)共に円形状である例を示した。また、上記第2実施形態では、伝熱板243(熱交換器)および供給板260(供給部)が、X軸方向から見て(平面視において)共に矩形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱交換器および供給部の形状は特に限定されない。また、たとえば、熱交換器および供給部を平面視において、それぞれ、矩形状および円形状に形成してもよい。つまり、熱交換器および供給部の形状は互いに異なる形状であってもよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の構造を、吸収式ヒートポンプ装置100(200)の吸収器4(204)および蒸発器3に適用した例について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の構造を、吸収式ヒートポンプ装置の吸収器または蒸発器のいずれか一方のみに適用してもよいし、吸収器および蒸発器以外の構成に適用してもよい。また、上記第2実施形態の吸収器204の構造を、蒸発器に適用してもよい。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、乗用車やバスなどの空調システムに適用したが、本発明はこれに限られない。車両のみならず商業施設向け(据置型)の吸収式ヒートポンプ装置にも、本発明を適用することができる。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、排気ガスの熱を利用して吸収液を加熱したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハイブリッド自動車や電気自動車の空調用に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。また、吸収液の加熱熱源に電気自動車のバッテリやモータ排熱や燃料電池における発電時の排熱を利用して、燃料電池システムを備えた乗用車の空調に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。この際、吸収液の加熱熱源に電気ヒータなどを利用してもよい。
【0121】
また、上記第1および第2実施形態では、冷媒および吸収液として、水および臭化リチウム水溶液を用いたが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いて吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。