(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870177
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】薬剤学的製剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/426 20060101AFI20210426BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20210426BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20210426BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20210426BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20210426BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20210426BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20210426BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
A61K31/426
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/04
A61K9/28
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P13/00
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-520420(P2020-520420)
(86)(22)【出願日】2018年7月13日
(65)【公表番号】特表2020-525541(P2020-525541A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】KR2018007950
(87)【国際公開番号】WO2019013583
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0089900
(32)【優先日】2017年7月14日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0007928
(32)【優先日】2018年1月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】尹 載 喜
(72)【発明者】
【氏名】カン,ハン
【審査官】
高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/038690(WO,A1)
【文献】
特開2016−188181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/426
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分と前記活性成分の放出を調節する放出制御剤を含み、
結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤をさらに含み、
前記活性成分はミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つであり、
前記放出制御剤は、ヒドロゲル形成高分子のみからなり、
前記ヒドロゲル形成高分子は、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万であり、
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トレハロース、およびプルランの中から選ばれた少なくとも1つであり、
前記抗酸化剤は、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、およびエデト酸ナトリウムの中から選ばれた少なくとも1つであり、
前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、およびタルクの中から選ばれた少なくとも1つであり、
さらに、前記活性成分、前記放出制御剤、前記結合剤、前記抗酸化剤、および前記滑沢剤を含むコアの表面に形成されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、コーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散することにより前記コアにフィルムコートして形成されたものであり、
前記活性成分は5〜25重量%、前記放出制御剤は60〜90重量%、前記結合剤は1〜5重量%、前記抗酸化剤は0.1〜1重量%、前記滑沢剤は1〜6重量%であり、前記コーティング剤は1〜10重量%で含まれる、薬剤学的製剤。
【請求項2】
前記滑沢剤は、二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムからなり、前記薬剤学的製剤中の前記二酸化ケイ素は1〜3重量%であり、前記ステアリン酸マグネシウムは1〜3重量%で含まれる、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素は、コロイド性二酸化ケイ素である、請求項2に記載の薬剤学的製剤。
【請求項4】
前記コーティング剤は、フィルムコーティング剤である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項5】
不純物含有量は、0.2重量%以下である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項6】
前記ヒドロゲル形成高分子はポリエチレンオキシドであり、前記平均分子量は10万以上であり、100万未満である、請求項1に記載の薬剤学的製剤。
【請求項7】
前記ヒドロゲル形成高分子は、ポリエチレンオキシドであり、前記ポリエチレンオキシドは、平均分子量10万以上50万未満のポリエチレンオキシドと平均分子量50万以上100万未満のポリエチレンオキシドを含む、請求項6に記載の薬剤学的製剤。
【請求項8】
(A)結合剤と抗酸化剤を溶媒に分散または溶解させた後、活性成分と放出制御剤を混合した混合物と共に混合して顆粒を製造する段階;
(B)前記顆粒に滑沢剤を追加して打錠して錠剤を得る段階;および
(C)フィルムコーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散することにより前記錠剤にフィルムコーティングする段階;を含み、
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースであり、
前記抗酸化剤は、ブチルヒドロキシトルエンであり、
前記活性成分は、ミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つであり、
前記放出制御剤は、ヒドロゲル形成高分子のみからなり、前記ヒドロゲル形成高分子は、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万であり、
前記滑沢剤は二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムであり、
前記活性成分は5〜25重量%、前記放出制御剤は60〜90重量%、前記結合剤は1〜5重量%、前記抗酸化剤は0.1〜1重量%、前記滑沢剤は1〜6重量%であり、前記コーティング剤は1〜10重量%で含まれる、薬剤学的製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤学的製剤およびその製造方法に関し、より詳細にはミラベグロンまたはその薬学的に許容可能な塩の放出制御が容易でかつ安定性を確保した薬剤学的製剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドはアステラス社により開発されたものであり、インシュリン分泌促進作用とインシュリン感受性増強作用を共に有し、抗肥満作用および抗高脂血症作用を有し、糖尿病の治療に有用な化合物であることが報告されている(国際公開第WO1999/020607号参照)。
【0003】
また、同化合物は過敏性膀胱患者で発生し得る切迫尿、頻尿および/または切迫尿失禁症状の治療剤として有用であることが報告されている(国際公開第WO2004/041276号参照)。
【0004】
(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドは、通常ミラベグロン(Mirabegron)と称し、現在の過敏性膀胱患者の治療効果に対して許可を受け、製品名ベットミガ徐放錠として市販されている。
【0005】
国際公開第WO2010/038690号には、ミラベグロンの消失半減期は約18〜24時間で長く、血中濃度を保持するためには放出を調節する必要性が大きくないが、通常の速放製剤は食餌の影響を受けるため、そのような影響を避けるための製剤開発の必要性に対して記載されている。また、同文献には4時間以上持続的な薬物放出が可能な製剤が食餌の影響を減少させることができ、製剤の内部に水を侵入させるための添加剤およびヒドロゲルを形成する高分子物質を適用した製剤がそれに該当することが知られている(国際公開第WO2010/038690号参照)。
【0006】
本発明者らはこのようなミラベグロン製剤に関する研究を行う中で、改善の必要性を認知するようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO1999/020607号、明細書
【特許文献2】国際公開第WO2004/041276号、明細書
【特許文献3】国際公開第WO2010/038690号、明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、改善された薬剤学的製剤を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする課題は、改善された薬剤学的製剤を製造できる製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の課題は、前記に言及された課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはミラベグロン製剤に関する研究を行う中で、国際公開第WO2010/038690号に開示された放出制御医薬組成物のような場合、不純物が発生し得ることを知り、そのような問題を解決するために研究した結果、本発明の解決手段を提供するようになった。
【0011】
本発明の一実施例である薬剤学的製剤は、活性成分と前記活性成分の放出を調節する放出制御剤を含み、前記活性成分はミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つであり、前記放出制御剤はヒドロゲル形成高分子であり、前記ヒドロゲル形成高分子はポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万である。
【0012】
前記放出制御剤は、前記ヒドロゲル形成高分子のみからなる。
【0013】
また、前記放出制御剤は、製剤の内部に水を侵入させるための添加剤は含まない。
【0014】
前記製剤の内部に水を侵入させるための添加剤は、親水性基剤であり得る。
【0015】
前記親水性基剤は、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フラクトース、デキストラン、葡萄糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、クエン酸、タルタル酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リシンおよびメグルミンからなる群より選ばれた少なくとも一つであり得る。
【0016】
前記薬剤学的製剤は、結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤の中から選ばれた少なくとも一つをさらに含み得る。
【0017】
前記薬剤学的製剤は、前記活性成分、前記放出制御剤、前記結合剤、前記抗酸化剤、および前記滑沢剤を含むコアの表面にコーティング剤を含むコーティング層が形成され得る。
【0018】
前記コーティング層は、前記コーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散し、前記コアの表面にフィルムコートして形成されたものであり得る。
【0019】
前記揮発性溶媒は、エタノールであり得る。
【0020】
前記薬剤学的製剤中の前記活性成分は5〜25重量%、前記放出制御剤は60〜90重量%、前記結合剤は1〜5重量%、前記抗酸化剤は0.1〜1重量%、前記滑沢剤は1〜6重量%であり、前記コーティング剤は1〜10重量%で含まれ得る。
【0021】
前記滑沢剤は、二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムからなり、前記薬剤学的製剤中の前記二酸化ケイ素は1〜3重量%であり、前記ステアリン酸マグネシウムは1〜3重量%で含まれ得る。
【0022】
前記二酸化ケイ素は、コロイド性二酸化ケイ素であり得る。
【0023】
前記コーティング剤は、フィルムコーティング剤であり得る。
【0024】
前記薬剤学的製剤は、不純物含有量は0.2重量%以下であり得る。
【0025】
前記ヒドロゲル形成高分子はポリエチレンオキシドであり、前記平均分子量は10万以上であり、100万未満であり得る。
【0026】
前記ヒドロゲル形成高分子は、ポリエチレンオキシドであり、前記ポリエチレンオキシドは、平均分子量10万以上50万未満のポリエチレンオキシドと平均分子量50万以上100万未満のポリエチレンオキシドを含み得る。
【0027】
前記平均分子量10万以上50万未満のポリエチレンオキシド100重量部に対し、前記平均分子量50万以上100万未満のポリエチレンオキシドはこれに制限されるものではないが、例えば10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、より好ましくは100〜350重量部、さらにより好ましくは250〜350重量部であり得る。
【0028】
前記薬剤学的製剤は、経口用製剤であり得る。
【0029】
前記活性成分は、1〜500mgであり得る。
【0030】
前記薬剤学的製剤は、1日1回投与用であり得る。
【0031】
本発明の一実施例である薬剤学的製剤の製造方法は、(A)結合剤と抗酸化剤を溶媒に分散または溶解させた後、活性成分と放出制御剤を混合した混合物と共に混合して顆粒を製造する段階;および(B)前記顆粒に滑沢剤を追加して打錠して錠剤を得る段階を含み、前記結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであり、前記抗酸化剤はブチルヒドロキシトルエンであり、前記活性成分はミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つであり、前記放出制御剤はヒドロゲル形成高分子であり、前記ヒドロゲル形成高分子はポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万であり、前記滑沢剤は二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムである。
【0032】
前記薬剤学的製剤の製造方法は、(C)フィルムコーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散し、前記錠剤にフィルムコーティングする段階をさらに含み得る。
【0033】
前記揮発性溶媒は、エタノールであり得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、製剤中の不純物の生成は抑制し、ミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つの放出を効果的に制御することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施例である薬剤学的製剤の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】pH4.0溶出液において比較溶出試験結果を示すグラフである。
【
図3】pH6.8溶出液において比較溶出試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の利点および特徴並びにそれらを達成する方法は、添付する図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され得、本実施例は、単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は単に請求項によってのみ定義される。
【0037】
本発明の一実施例である薬剤学的製剤は、活性成分と前記活性成分の放出を調節する放出制御剤を含む。
【0038】
活性成分は、ミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つである。
【0039】
ミラベグロンの化合物名は、(R)−2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−4’−[2−[(2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)アミノ]エチル]酢酸アニリドであり、以下の構造式で表し得る。
【化1】
【0040】
ミラベグロンの薬学的に許容可能な塩はこれに制限されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、オキサル酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、タルタル酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸などとの酸付加塩の形態であり得る。
【0041】
活性成分の投与量は、症状、投与対象の年齢、性別などを考慮して個々の場合に応じて適切に決定されるが、通常経口投与の場合、成人1日当たり0.01mg/kg以上100mg/kg以下であり、これを1回で投与することができる。
【0042】
一実施例は、経口投与用であり得る。また、1日1回投与用であり得る。
【0043】
活性成分は、好ましくは薬剤学的製剤総重量の5〜28重量%、より好ましくは5〜25重量%で含まれ得る。このような範囲でより放出制御が容易であり得る。薬剤学的製剤は単位製剤であり、単位製剤当たり活性成分は好ましくは1〜500mg、より好ましくは10〜300mg含み得る。
【0044】
放出制御剤は、製剤中の活性成分の放出を遅延する放出遅延剤を含む意味である。放出制御剤はヒドロゲル形成高分子である。ヒドロゲル形成高分子は、水溶性媒質と接触時膨潤する性質を現わす高分子であり、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万であり、より好ましくは10万以上であり100万未満であり得る。好ましくはヒドロゲル形成高分子は、ポリエチレンオキシドであり得る。このようなポリエチレンオキシドは、平均分子量10万以上50万未満のポリエチレンオキシドと平均分子量50万以上100万未満のポリエチレンオキシドを含み得る。この時、平均分子量10万以上50万未満のポリエチレンオキシド100重量部に対し、平均分子量50万以上100万未満のポリエチレンオキシドはこれに制限されるものではないが、例えば10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、より好ましくは100〜350重量部、さらにより好ましくは250〜350重量部であり得る。このような高分子を適用することによって放出制御がより容易である。平均分子量は数平均分子量または重量平均分子量であり得る。すなわち、放出制御剤は前記ヒドロゲル形成高分子のみからなる。特に、放出制御剤は、製剤の内部に水を侵入させるための添加剤は含まない。製剤の内部に水を侵入させるための添加剤は親水性基剤であり得る。親水性基剤は、ミラベグロン製剤において一般的に使われるものと知られているものであり、この親水性基剤1gが溶解するのに必要な水の量が摂氏20±5度下で10mL以下、他の形態としては6mL以下、また他の形態としては5mL以下、また他の形態としては4mL以下のものであり得る。このような親水性基剤としては例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、乳糖、白糖、無水マルトース、D−フラクトース、デキストラン、葡萄糖、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、クエン酸、タルタル酸、グリシン、β−アラニン、塩酸リシンおよびメグルミンからなる群より選ばれた少なくとも一つであり得る。このような親水性基剤を適用しないことによって、以下で確認されるように、不純物の発生を抑制できると見られる。
【0045】
放出制御剤は、好ましくは薬剤学的製剤総重量の60〜90重量%で含まれ得る。このような範囲未満または超過では活性成分の放出制御が容易でない恐れがある。
【0046】
一実施例は、結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤の中から選ばれた少なくとも一つをさらに含み得る。
【0047】
結合剤はこれに制限されるものではないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トレハロース、およびフルランの中から選ばれた少なくとも一つであり得、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースであり得る。結合剤は薬剤学的製剤総重量の好ましくは1〜5重量%で含まれ得る。
【0048】
抗酸化剤はこれに限されるものではないが、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸およびエデト酸ナトリウムの中から選ばれた少なくとも一つであり得、好ましくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)であり得る。
抗酸化剤は、薬剤学的製剤総重量の好ましくは0.1〜1重量%で含まれ得る。
【0049】
滑沢剤は、これに限されるものではないが、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、およびタルクの中から選ばれた少なくとも一つであり得る。滑沢剤は、薬剤学的製剤総重量の好ましくは1〜6重量%、より好ましくは2〜6重量%で含まれ得る。滑沢剤は、好ましくは二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムからなる。薬剤学的製剤中の二酸化ケイ素は、好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%であり、ステアリン酸マグネシウムは好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%で含まれ得る。この時、二酸化ケイ素はコロイド性二酸化ケイ素であり得る。
【0051】
結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤をいずれも含む場合、一実施例は活性成分、放出制御剤、結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤を含んでなる錠剤形態であり得る。
【0052】
一実施例は薬剤学的製剤総重量の、活性成分は5〜28重量%、放出制御剤は60〜90重量%、結合剤は1〜5重量%、抗酸化剤は0.1〜1重量%、および滑沢剤は1〜6重量%で含まれ得る。このような範囲未満または超過の場合、活性成分の放出制御が容易でない恐れがある。
【0053】
また、一実施例は活性成分、放出制御剤、結合剤、抗酸化剤、および滑沢剤を含むコアの表面にコーティング剤を含むコーティング層が形成され得る。このようなコーティング層はコーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散し、コアの表面にフィルムコートして形成されたものあり得る。コーティング層は揮発性溶媒でフィルムコートして形成された結果、錠剤の安定性をより確保することができ、不純物の生成はより抑制することができると見られる。この時、揮発性溶媒はフィルムコーティング剤を溶解または分散させることができ、揮発性を有するものであれば、制限されないが、例えば、エタノールであり得る。この時、薬剤学的製剤の形態はコーティング錠形態であり得る。一実施例は薬剤学的製剤総重量の、活性成分は5〜25重量%、放出制御剤は60〜90重量%、結合剤は1〜5重量%、抗酸化剤は0.1〜1重量%、滑沢剤は1〜6重量%であり、コーティング剤は1〜10重量%で含まれ得る。このような範囲の未満または超過の場合、活性成分の放出制御が容易でない恐れがある。
【0054】
滑沢剤は、二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムからなり、薬剤学的製剤中の二酸化ケイ素は、好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%であり、ステアリン酸マグネシウムは好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜3重量%で含まれ得る。
【0055】
コーティング剤はフィルムコーティング剤であり得る。フィルムコーティング剤は薬剤学的製剤の表面をコーティングできるものであれば制限されないが、例えば、オパドライフィルムコーティング剤であり得る。
【0056】
オパドライ(登録商標)フィルムコーティング剤(カラコンインコーポレイティッドで市販中)は、1−段階フィルム−コーティングシステムであり、重合体、可塑剤および必要に応じて顔料を無水濃縮物として組み合わせてなる。
【0057】
一実施例において、不純物含有量は薬剤学的製剤総重量の0.2重量%以下であり得る。不純物はその他個々の類縁物質を意味する。その他個々の類縁物質は、総類縁物質中の(R)−2−((4−aminophenethyl)amino)−1−phenylethanol、2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2(phenethylamino)ethyl)phenyl)acetamide、(R)−2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2−((4−(2−((2−hydroxy−2−phenylethyl)amino)ethyl)phenyl)amino)−2−oxoethyl)thiazol−2−yl)acetamide、および(R)−2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2−(2−aminothiazol−4−yl)acetamido)phenethyl)−N−(2−hydroxy−2−phenylethyl)acetamideを除いた類縁物質を意味する。このように、一実施例は不純物の生成が0.2重量%以下で大幅に抑制され、安定性が確保された製剤であることがわかる。これは以下の実験例によっても確認される。国際公開第WO2010/038690号に開示された放出制御医薬組成物のように親水性基剤を使用した場合、不純物の生成が0.2重量%超を示す点からも本発明の優秀性が確認される。
【0058】
以下では
図1を参照して本発明の一実施例である薬剤学的製剤の製造方法についてより詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例である薬剤学的製剤の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0059】
本発明の一実施例である薬剤学的製剤の製造方法は、
図1に示すように、(A)顆粒製造段階および(B)打錠段階を含む。(A)段階は結合剤と抗酸化剤を溶媒に分散または溶解させた後、活性成分と放出制御剤を混合した混合物と共に混合して顆粒を製造する段階である。また(B)段階は顆粒に滑沢剤を追加して打錠して錠剤を得る段階である。この時、結合剤はヒドロキシプロピルセルロースであり、抗酸化剤はブチルヒドロキシトルエンであり、活性成分はミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つであり、放出制御剤はヒドロゲル形成高分子であり、ヒドロゲル形成高分子はポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選ばれた少なくとも一つであり、平均分子量は10万〜800万であり、滑沢剤は二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムである。このような過程を経て効果的に薬剤学的製剤を錠剤形態で得ることができる。
【0060】
本発明の一実施例は(C)フィルムコーティング剤を揮発性溶媒に溶解または分散し、錠剤にフィルムコーティングする段階をさらに含み得る。揮発性溶媒でフィルムコーティングする過程を経ることによって、錠剤の安定性をより確保することができ、不純物の生成はより抑制できると見られる。これは実験の結果からも確認される。国際公開第WO2010/038690号に開示された放出制御医薬組成物のように水を溶媒として適用する場合に比べて、揮発性溶媒を適用することによって製剤中の含水率を減少させることができ、類縁物質のような不純物の生成をより抑制すると見られる。揮発性溶媒は、フィルムコーティング剤を溶解または分散させることができ、揮発性を有するものであれば制限されないが、例えば、エタノールであり得る。
【0061】
その他にも当分野における適切な方法により一実施例は製剤化することができ、例えばRemington’s Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company,Easton PAを参照することができる。
【0062】
繰り返しを避けるために重複する内容は記載しないが、本発明の一実施例である薬剤学的製剤、薬剤学的製剤の製造方法それぞれで言及された事項は互いに矛盾しない限り、同一性範囲の内容がそれぞれに適用される。
【0063】
以下では実施例、比較例、および実験例により本発明についてより詳細に説明する。下記の実施例、比較例、および実験例で使用した物質は市中で入手可能な最上級のものを使用した。
【0065】
<実施例1>
ミラベグロン75gおよびポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR N−80,平均分子量20万)225gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(Nippon soda社製、商品名HPC−L、以下同一)およびブチルヒドロキシトルエン(Spectrum chemical社製、以下同一)が溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム(FACI社製、以下同一)7.5gとlight anhydrous silicic acid (Fuji silysia社製、商品名Aerosil 200,コロイド性二酸化ケイ素、以下同一)7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤{オパドライ;Opadry 03F220071_Yellow(HPMC 60P、黄色酸化鉄、PEG8000含有)、以下同一}のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0066】
<実施例2>
ミラベグロン75gおよびポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR−1105,平均分子量90万)225gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースおよびブチルヒドロキシトルエンが溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gとlight anhydrous silicic acid 7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0067】
<実施例3>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシドWSR N−80 112.5gおよびポリエチレンオキシドWSR−1105 112.5gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースおよびブチルヒドロキシトルエンが溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gとlight anhydrous silicic acid 7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0068】
<実施例4>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシドWSR N−80 101.25gおよびポリエチレンオキシドWSR−1105 123.75gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースおよびブチルヒドロキシトルエンが溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gとlight anhydrous silicic acid 7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0069】
<実施例5>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシドWSR N−80 56.25gおよびポリエチレンオキシドWSR−1105 168.75gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースおよびブチルヒドロキシトルエンが溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gとlight anhydrous silicic acid 7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0070】
実施例1〜5の各処方を表1に示す。
【表1】
【0071】
<比較例1〜5>コーティング錠
国際公開第WO2010/038690号と同様に、製剤の内部に水を侵入させるための添加剤とヒドロゲル形成高分子を共に適用して製造した製剤例を比較例1〜5として準備した。
【0072】
<比較例1>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR−301,平均分子量400万)38.79g、ポリエチレングリコール(Sanyo chemical社製、PEG 6000,以下同一)45g、ラクトースモノヒドレート(DFE pharma社製、以下同一)133.71g、ブチルヒドロキシトルエン0.15gおよびステアリン酸マグネシウム2.85gをよく混合してローラーコンパクターミニを用いて圧縮成形後整粒して顆粒を得た。得られた顆粒を微粉砕したProsolv HD90(JRS pharma社製、微細結晶セルロースとコロイド性二酸化ケイ素からなるケイ化された高密度微細結晶セルロース、以下同一)45gおよびステアリン酸マグネシウム7.5gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量232mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)の水分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量240mg)を得た。
【0073】
<比較例2>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR−301)44.925g、ポリエチレングリコール45g、ラクトースモノヒドレート127.575g、ブチルヒドロキシトルエン0.15gおよびステアリン酸マグネシウム2.85gをよく混合してローラーコンパクターミニを用いて圧縮成形後整粒して顆粒を得た。得られた顆粒を微粉砕したProsolv HD90 45gおよびステアリン酸マグネシウム7.5gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量232mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)の水分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量240mg)を得た。
【0074】
<比較例3>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR−301)44.925g、ポリエチレングリコール45g、ラクトースアンヒドラス(DFE pharma社製、以下同一)172.575g、ブチルヒドロキシトルエン0.15gおよびステアリン酸マグネシウム2.85gをよく混合してローラーコンパクターミニを用いて圧縮成形後整粒して顆粒を得た。得られた顆粒を微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量232mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)の水分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量240mg)を得た。
【0075】
<比較例4>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR−301)45g、ポリエチレングリコール45g、ラクトースモノヒドレート127.65g、Prosolv HD90 45g、ブチルヒドロキシトルエン1.5gおよびステアリン酸マグネシウム2.85gをよく混合してローラーコンパクターミニを用いて圧縮成形後整粒して顆粒を得た。得られた顆粒を微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量233mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量241mg)を得た。
【0076】
<比較例5>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR N−60K、平均分子量200万)135g、ポリエチレングリコール75g、ヒドロキシプロピルセルロース15g、ブチルヒドロキシトルエン1.5gおよびステアリン酸マグネシウム2.85gをよく混合してローラーコンパクターミニを用いて圧縮成形後整粒して顆粒を得た。得られた顆粒を微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量207.9mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量215.9mg)を得た。
【0077】
比較例1〜5の各処方を表2に示す。
【表2】
【0078】
<比較例6>
市販のミラベグロン製剤(ベットミガ徐放錠50mg,Lot番号:16C20/41,アステラス社)を準備した。
【0079】
<比較例7>
ミラベグロン75g、ポリエチレンオキシドWSR N−80 36.68g、ポリエチレンオキシドWSR−1105 110.05g、およびポリエチレングリコールPEG 6000 78.26gをよく混合して高速混合機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)7.5gおよびブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.5gが溶解されたエタノール溶液を追加した後、混合して造粒した。その結果、顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥、整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム7.5gとlight anhydrous silicic acid(Aerosil 200)7.5gを混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量216mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)のエタノール分散液を噴霧コートし、薬剤学的製剤(コーティング錠、1錠当たり重量224mg)を得た。
【0080】
<比較例8>
ミラベグロン50g、ポリエチレンオキシド(Dow chemical社製、商品名WSR N−60K、平均分子量200万)140g、ポリエチレングリコール(PEG 6000)289.2gを流動層造粒機(GPCG2,Glatt)に投入し、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液150gに造粒して顆粒を得た。得られた顆粒を整粒した後、微粉砕したステアリン酸マグネシウム5gおよびブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.8gと混合し、回転式打錠機で打錠し、錠剤(1錠当たり重量250mg)を得た。コーティング機を用いて、得られた錠剤にフィルムコーティング剤(オパドライ)の水分散液を噴霧コートし、コーティング錠(1錠当たり重量257.5mg)を得た。
【0081】
<実験例1>類縁物質試験
比較例1〜5と実施例1,実施例5に対して類縁物質、特にその他個々の類縁物質に対する分析により不純物の生成量を評価した。その他個々の類縁物質は、総類縁物質中の(R)−2−((4−aminophenethyl)amino)−1−phenylethanol{MIR−1}、2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2(phenethylamino)ethyl)phenyl)acetamide{MIR deshydroxy}、(R)−2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2−((4−(2−((2−hydroxy−2−phenylethyl)amino)ethyl)phenyl)amino)−2−oxoethyl)thiazol−2−yl)acetamide{Diamide−2}、および(R)−2−(2−aminothiazol−4−yl)−N−(4−(2−(2−aminothiazol−4−yl)acetamido)phenethyl)−N−(2−hydroxy−2−phenylethyl)acetamide{Diamide−1}を除いた類縁物質を意味する。評価法は大韓民国薬典一般試験法のうちの液体クロマトグラフィー法(HPLC)に従った。MIR−1は0.4%以下、MIR deshydroxyは0.4%以下、Diamide−2は0.4%以下、Diamide−1は0.4%以下、その他個々の類縁物質0.2%以下、総類縁物質1.8%以下である場合に適し、前記範囲を超える場合は適しない。
【0082】
具体的な試験方法は、下記のとおりである。
【0083】
(1)検液の調剤
比較例1〜5、実施例1および実施例5それぞれに対して検液を調剤した。錠剤5錠を取って200mL容量フラスコに入れ、水120mLを入れて錠剤が完全に崩解するまで攪拌した後アセトニトリル80mLを入れて20分間攪拌および10分間超音波抽出して常温冷却した後希釈液で標線を合わせた。この液を遠心分離した後、上澄み液15mLを正確に取って25mL容量フラスコに入れ、希釈液で標線を合わせた。この液の適当量を取ってメンブレンフィルタ{0.45μm}で濾過して最初の2mLは捨ててろ液をバイアルに入れて検液とした。希釈液は水とアセトニトリル混合液{水/アセトニトリル(3/2)}である。
【0084】
(2)標準液の調剤
ミラベグロン標準品約15.0mgを精密に測り100mL容量フラスコに入れ、希釈液40mLを入れて5分間超音波抽出して完全に溶かして常温冷却した後、希釈液を加えて標線を合わせた。この液1mLを正確に取って100mL容量フラスコに入れ、希釈液で標線を合わせた後メンブレンフィルタ{0.45μm}で濾過した液をバイアルに入れて標準液とした。希釈液は水とアセトニトリル混合液{水/アセトニトリル(3/2)}である。
【0085】
(3)運転条件
HPLCの具体的な運転条件は、次のとおりである。検液および標準液のピーク面積A
TとA
Sを有して類縁物質の含有量を計算した。
検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:240nm)
カラム:XTerra RP8(4.6mm×250mm、5μm)またはこれと等しいカラム
カラム温度:27℃
サンプル温度:10℃
注入量:10uL
移動相:移動相Aおよび移動相Bの混合比を次のように変化させて濃度勾配的に制御する。
移動相A:緩衝液(リン酸二水素ナトリウム二水和物1.56gと硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.34gを水1000mLに入れて溶かし、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7.2に調節した液)
移動相B:アセトニトリルと水混合液{アセトニトリル/水(3/2)}
【表3】
(4)計算式
W
S:ミラベグロン標準品を取った量(mg)
N:検体採取数
A
T:検液中の各類縁物質のピーク面積
A
S:標準液中のミラベグロンのピーク面積
D:1錠当たりミラベグロン表示量(mg)
P:ミラベグロン標準品の純度(%)
333/10000:希釈倍数
RRF:類縁物質の相対反応因子
【0086】
(5)相対保持時間および相対反応因子
【表4】
実施例の場合、MIR−1、MIR deshydroxy、Diamide−2、およびDiamide−1含有量はいずれも適すると評価され、その他個々の類縁物質に対する結果を表5に比較例と対比して示す。
【表5】
【0087】
表5で確認できるように、比較例1〜5においていずれもその他個々の類縁物質が0.2%を超えて適しなかった。比較例1〜5はいずれも放出制御剤として製剤の内部に水を侵入させるための親水性基剤を1種以上含んでいる製剤であり、その中で、比較例1〜3は国際公開第WO2010/038690号に開示された方法と同様に水分散液で噴霧コートして一例であり、比較例4はエタノール分散液で噴霧コートした例である。また、比較例5は他の製剤に比べて親水性基剤中のポリエチレングリコール含有量が顕著に高い例である。
【0088】
比較例1〜3は、比較例4と比較時、裸錠である時よりコーティング以後にその他個々の類縁物質が顕著に増加する傾向を示す。このような結果から、水分散液に比べてエタノール分散液でフィルムコーティング剤を噴霧コートする場合、不純物の生成がより抑制されることがわかる。
【0089】
比較例5の場合は、他の製剤に比べて親水性基剤中のポリエチレングリコール含有量が顕著に高く、裸錠からその他個々の類縁物質が高いことを確認することができた。これは国際公開第WO2010/038690号に開示された多数の実施例において親水性基剤として使用したポリエチレングリコールが製剤安定性に問題を引き起こし得ることも示す。
【0090】
放出制御剤として親水性基剤が適用された比較例とは異なり、ヒドロゲル形成高分子のみからなる放出制御剤を適用した実施例の場合、いずれも不純物の生成が大きく抑制され、安定性を確保したことがわかる。すなわち、本発明の薬剤学的製剤は、放出制御剤としてヒドロゲル形成高分子のみを適用し、親水性基剤は適用しなかったにもかかわらず、かえってより安定性に優れることがわかる。
【0091】
したがって、本発明はヒドロゲル形成高分子のみからなる放出制御剤の適用(および親水性基剤の未適用)、揮発性溶媒を用いて形成されたコーティング層などによって、不純物の生成などを抑制し得るので、より安定性が確保された製剤を提供できることがわかる。
【0092】
<実験例2>溶出試験
比較例と実施例に対してUSP溶出試験法(パドル法)に従って溶出試験を行った。試験液はpH4.0酢酸緩衝液およびpH6.8リン酸緩衝液900mLを使用した。回転数は50rpmで行った。それぞれの結果を表6と表7に示す。
【表6】
【表7】
前記表6、7から確認できるように、実施例はいずれも1時間に溶出率が20%未満であった。一方、比較例の組成物は全体的に高い溶出率を示した。
【0093】
<実験例3>比較溶出試験
また、実施例5、比較例6(ベットミガ徐放錠)に対しても実験例2と同様に溶出テストを行い、溶出パターンを比較した。結果を表8、9および
図2、
図3に示す。
【表8】
【表9】
【0094】
また、
図2はpH4.0溶出液において比較溶出試験結果を示すグラフであり、
図3はpH6.8溶出液において比較溶出試験結果を示すグラフである。
【0095】
表8、表9および
図2、
図3から確認できるように、実施例は市販の製剤と等しい水準の溶出パターンを示すことがわかる。
したがって、本発明の薬剤学的製剤は市販の製剤と等しい水準の溶出パターンを示し、その結果、等しい水準の薬物学的動態を示し、結局同等ないしそれ以上の薬効を奏することがわかる。
【0096】
<実験例4>比較例7〜8に対する類縁物質試験
比較例1〜5の代わりに比較例7〜8を使用したことを除いては、実験例1と同様の方式で類縁物質試験を追加で行った。その結果を表10に示す。
【表10】
【0097】
10から確認できるように、比較例7〜8においてもその他個々の類縁物質が0.2%を超えて適しなかった。比較例7は他の比較例とは異なり分子量が相異する2種のポリエチレンオキシドを適用した例であり、実施例3〜5に対応する例である。このような場合にも他の比較例と同様に不純物が一定基準以上発生することがわかる。このような結果は放出制御剤として親水性基剤の適用有無に応じて不純物の発生に差があることを裏付ける。また、比較例8は他の比較例に比べて国際公開第WO2010/038690号に開示された実施例とより一致するように製造された例である。このような場合にも他の比較例と同様に不純物が一定基準以上発生することがわかる。結局、このような結果は放出制御剤として親水性基剤を適用した場合、製剤安定性に問題を引き起こすことをよりよく裏付けるものである。したがって、比較例7〜8に対する類縁物質試験の結果によっても、本発明が不純物の生成などを抑制できることが再確認される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、製剤中の不純物の生成は抑制し、ミラベグロンおよびその薬学的に許容可能な塩の中から選ばれた少なくとも一つの放出を効果的に制御できるので、産業上利用可能である。