(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870181
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】機械可読酸化乾燥磁性凹版インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20210426BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20210426BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20210426BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/03
B41M3/14
B41M1/10
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-535158(P2018-535158)
(86)(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公表番号】特表2019-506485(P2019-506485A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2017051624
(87)【国際公開番号】WO2017129666
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2019年12月27日
(31)【優先権主張番号】16153347.6
(32)【優先日】2016年1月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー, ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】パスキエ, セシル
(72)【発明者】
【氏名】マグニン, パトリック
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−523470(JP,A)
【文献】
特開2013−151644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/037
B41M 1/10
B41M 3/14
C09D 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材への凹版印刷のための酸化乾燥磁性インクであって、40℃及び1000s
−1で約3〜約60Pa sの範囲の粘度を有し、a)少なくとも1種の酸化乾燥ワニス、b)磁性コアと銀で構成された外層とを備える複数のコア−シェル顔料粒子、及び、c)式(I):
【化1】
[式中、
R
1〜R
4は、同じであっても異なっていてもよく、水素、直鎖C
1〜C
4アルキル、分岐C
3〜C
4アルキル、C
1〜C
4直鎖ハロアルキル、及び分岐C
3〜C
4ハロアルキルからなる群から独立に選択される]
を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤を含む、酸化乾燥磁性インク。
【請求項2】
R1〜R4が、同じであっても異なっていてもよく、水素、直鎖C1〜C2アルキル、及びC1〜C2直鎖ハロアルキルからなる群から独立に選択される、請求項1に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項3】
コア−シェル顔料粒子が、
1種若しくは複数の無機材料で構成された第1層と、銀で構成された外層とによって囲まれた磁性コア、又は
1種若しくは複数の有機材料で構成された第1層と、銀で構成された外層とによって囲まれた磁性コア
を備える、請求項1又は2に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項4】
磁性コアが、鉄、Fe2O3及びFe3O4、並びにこれらの混合物又は組合せからなる群から選択される1種又は複数の材料で構成されている、並びに/又は、1種若しくは複数の無機材料が、銀、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金、パラジウム、銅、金、ロジウム、亜鉛、イリジウム及びこれらの合金からなる群から選択される金属;金属酸化物並びに金属硫化物からなる群から選択される、並びに/又は、1種若しくは複数の有機材料が、ポリアクリレート、ポリスチレン、パリレン、アルコキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項5】
コア−シェル顔料粒子が、約3〜約70wt%の量で存在し、重量パーセントは酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項6】
1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物が、約0.1〜約20wt%の量で存在し、重量パーセントは酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項7】
さらに、1種又は複数のワックスを、約0.1〜約15wt%の量で含み、重量パーセントは酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項8】
さらに、1種又は複数の乾燥剤を、約0.01〜約10wt%の量で含み、重量パーセントは酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インク。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インクを製造するための方法であって、少なくとも1種の酸化乾燥ワニスを、磁性コア及び銀で構成された外層を備える複数のコア−シェル顔料粒子、並びに式(I)を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤と、分散、混合及び/又はミリングするステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インクで構成された層又はコーティングを備える、セキュリティ特徴部。
【請求項11】
基材と、請求項10に記載の1つ又は複数のセキュリティ特徴部とを備える、セキュリティ文書。
【請求項12】
セキュリティ文書を製造するための方法であって、ステップa)凹版印刷法によって、基材上に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化乾燥磁性インクを塗布するステップを含む、方法。
【請求項13】
ステップb)空気の存在下で酸化乾燥磁性インクを乾燥して、基材上に層又はコーティングを形成するステップをさらに含み、前記乾燥ステップが、ステップa)の後で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の凹版印刷のための酸化乾燥磁性インクにおける、安定剤としての、請求項1又は2に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[001]本発明は、偽物及び違法複製に対するセキュリティ文書の保護の分野に関する。特に、本発明は、セキュリティ文書の凹版印刷に適する機械可読酸化乾燥磁性インクの分野に関する。
【0002】
[002]磁性インクは、セキュリティ文書に、補足的な隠されたセキュリティ特徴部を付与するために、セキュリティ文書の分野において、特に銀行券の印刷のために、広く用いられている。隠されたセキュリティ特徴部によって与えられる、偽物及び違法複製に対するセキュリティ文書の保護は、このような特徴部を検出するには通常は専門の装置と知識を必要とするという考えに頼っている。磁気は電子工学的手段によって容易に感知できることを考えれば、磁性インクで印刷されたセキュリティ特徴部はその磁気特性により機械認証され得る。銀行券への磁気特性の使用の例は、米国特許第3599153号、及び米国特許第3618765号に開示されている。しかし、セキュリティインクに一般的に使用される磁性材料は、暗い光学的外観を有し、暗い又は黒色のセキュリティ特徴部の生成に対してだけ使用され得る。したがって、セキュリティインクに一般的に使用される磁性材料は、磁性材料の固有の暗い色の結果として、純色、特に明るい色合いを生み出せる可能性がなく、このため、セキュリティ文書のデザインのための色の範囲は限定される。
【0003】
[003]磁性セキュリティ特徴部は、凹版印刷法(当技術分野では、彫刻銅板印刷及び彫刻スチールダイ印刷とも呼ばれる)によりなされ得るが、これは、磁性材料が検出及び感知されるように、十分に多くの量の磁性材料を基材に付けることができる。
【0004】
[004]凹版印刷法は、特にセキュリティ文書の分野において使用される印刷法を表す。凹版印刷法は、しだいに細くなる細い線を生成するための、最も安定した高い特質の印刷法であることが知られており、そのため、セキュリティ文書、特に銀行券及び切手の分野における細かい図柄のために一般に好まれる印刷技術である。特に、凹版印刷法を際立たせる特徴の1つは、基材に転写されるインクの層の厚さが、凹版印刷用具で、相応して浅い又は深い彫刻を用いることによって、数ミクロンから数十ミクロンまで変えられることである。上記のように、こうして、凹版印刷によるセキュリティ特徴部の層の厚さにより、基材には、その検出及び感知のための十分に多くの量の材料がある。
【0005】
[005]一般的に使用される機械可読磁性インク及びそれらのインクで構成されたセキュリティ特徴部の暗い光学的外観を克服するために、国際公開第2010/115986号は、凹版法によって磁性層を形成するための磁性多層顔料粒子を含む機械可読磁性凹版インクを開示し、ここで、この磁性層は、自動機械装置によって検出及び感知でき(機械可読性)、暗い外観の欠点を有さない。しかし、銀で構成された外層を有する磁性顔料粒子を含む凹版インクは、限界のある安定性を欠点として有し得る。
【0006】
[006]酸化乾燥インクは、凹版印刷法で一般的に使用され、これらのインクは、酸素存在下で、特に大気の酸素の存在下で、酸化によって乾燥するインクを表す。乾燥過程の間に、酸素は、インクビヒクルの1種又は複数の成分と化合し、インクを半固体又は固体状態に変換する。この過程は、当技術分野において触媒、乾燥剤(siccative agent、desiccative又はdessicator)とも呼ばれる乾燥剤(Drier)、例えば、金属塩の使用によって、及び/又は、熱処理の適用によって、加速され得る。
【0007】
[007]酸化乾燥凹版インクは、積み重ねられた、1枚の印刷されたシートから、続いて次に印刷されたシートの裏側への、又は、連続したシートウェブの裏面への、インクの転写である、いわゆる「裏移り」問題の欠点を有し得る。これは、凹版印刷法のような如何なる工業的印刷法でも直面し得る問題であるが、凹版印刷法では、印刷法による顕著な凸部が裏移りの問題を深刻化させ得る。酸化で乾燥する凹版インクの現況技術により、裏移りの問題は、インク配合の最適化により軽減された;しかし、深い彫刻による画線部は、望ましくない裏移りを、依然として生じ得る。
【0008】
[008]インクの保存期間を向上させるための良好な貯蔵安定性、凹版印刷されたセキュリティ特徴部の良好な安定性、さらには、裏移りの問題を避けるための良好な乾燥性能を併せ持つ、凹版印刷法のための機械可読酸化乾燥磁性インクが求められている。
【0009】
[概要]
[009]それゆえに、上で論じられた、先行技術の欠点を克服することが、本発明の目的である。これは、基材への凹版印刷のための酸化乾燥磁性インクにおいて、式(I)を有する1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物を利用するという対策によって達成され、ここで、上記の酸化乾燥磁性インクは、40℃及び1000s
−1で約3〜約60Pa sの範囲の粘度を有し、a)少なくとも1種の酸化乾燥ワニス、b)磁性コアと銀で構成された外層とを備える複数のコア−シェル顔料粒子、を含む。
【0010】
[010]基材への凹版印刷のための酸化乾燥磁性インクであって、40℃及び1000s
−1で約3〜約60Pa sの範囲の粘度を有し、a)少なくとも1種の酸化乾燥ワニス、b)磁性コアと銀で構成された外層とを備える複数のコア−シェル顔料粒子、及び、c)式(I):
【化1】
[式中、
R
1〜R
4は、同じであっても異なっていてもよく、水素、直鎖C
1〜C
4アルキル、分岐C
3〜C
4アルキル、C
1〜C
4直鎖ハロアルキル、及び分岐C
3〜C
4ハロアルキルからなる群から独立に選択される]
を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤を含む、酸化乾燥磁性インクが、本明細書に記載される。
【0011】
[011]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを製造するための方法であって、本明細書に記載の少なくとも1種の酸化乾燥ワニスを、本明細書に記載の複数のコア−シェル顔料粒子、及び本明細書に記載の式(I)を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤と、分散、混合及び/又はミリングするステップを含む方法が、本明細書に記載される。
【0012】
[012]基材への凹版印刷のための、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクにおける安定剤としての、本明細書に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物の使用が、本明細書に記載される。
【0013】
[013]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成された層又はコーティングを備えるセキュリティ特徴部が、本明細書に記載される。
【0014】
[014]本明細書に記載のセキュリティ特徴部を生成するための方法、及びそれにより得られるセキュリティ特徴部が本明細書に記載され、この方法は、凹版印刷法によって、本明細書に記載のもののような基材上に本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを塗布するステップを含む。
【0015】
[015]偽造又はまやかし物(fraud)に対してセキュリティ文書を保護するための、本明細書に記載のセキュリティ特徴部の使用、及び、本明細書に記載のセキュリティ特徴部のうち1つ又は複数を備えるセキュリティ文書が、本明細書に記載される。
【0016】
[016]本明細書に記載の1つ又は複数のセキュリティ特徴部を備えるセキュリティ文書が、本明細書に記載される。
【0017】
[017]本明細書に記載のセキュリティ文書を製造するための方法、及びそれにより得られるセキュリティ文書が本明細書に記載され、この方法は、ステップa)凹版印刷法によって、本明細書に記載のもののような基材上に、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを塗布するステップを含む。
【0018】
[詳細な説明]
[018]次の定義が、説明において論じられ、また請求項において挙げられる用語の意味を解釈するために用いられるべきである。
【0019】
[019]本明細書で用いられる場合、数の限定のない名詞は、単数に加えて、複数も示し、その指示名詞を単数に限定するとは限らない。
【0020】
[020]本明細書で用いられる場合、用語「約」は、当該の量又は値が、明示された値であるか、又は、ほぼ同じの別のある値でもあり得ることを意味する。これらの句は、指示された値の±5%の範囲内の類似の値は、本発明による等価な結果又は効果を問題なく生じることを伝えようとするものである。
【0021】
[021]本明細書で用いられる場合、用語「及び/又は」或いは「又は/及び」は、その群の要素の全て又は1つだけのいずれかが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aだけ、又はBだけ、又はAとBの両方」を意味するであろう。
【0022】
[022]本明細書で用いられる場合、用語「少なくとも」は、1つ又は2つ以上を、例えば、1つ又は2つ又は3つを規定しようとするものである。
【0023】
[023]用語「セキュリティ特徴部」は、認証の目的で使用できる、画像、パターン又はグラフィック要素を表すために使用される。
【0024】
[024]用語「セキュリティ文書」は、通常、少なくとも1つのセキュリティ特徴部によって、偽物又はまやかし物に対して保護された文書を表す。セキュリティ文書の例には、限定ではないが、有価文書及び有価商用製品(value commercial goods)が含まれる。
【0025】
[025]本発明は、凹版印刷法、特にセキュリティ文書にセキュリティ特徴部を生成するための凹版印刷法に適する、酸化乾燥磁性インクを提供する。本明細書に記載の凹版印刷法のための酸化乾燥磁性インクは、40℃及び1000s
−1で、約3〜約60Pa sの範囲の粘度を有し、粘度は、Haake Roto−Visco RV1で、コーンプレート1を用いて測定される。本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、本明細書に記載のもののような少なくとも1種の酸化乾燥ワニス、磁性コアと銀で構成された外層とを備える、本明細書に記載のもののような複数のコア−シェル顔料粒子、本明細書に記載のもののような1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物、及び、任意選択で、本明細書に記載のもののような、化合物、添加剤及び/又は成分からの1種又は複数を含む。
【0026】
[026]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、磁性コアと銀で構成された外層とを備える複数のコア−シェル顔料粒子を含む。「外層」によって、この層が周囲環境に面している、すなわち、コアーシェル顔料粒子が分散されている酸化乾燥磁性インクに面していることを意味する。
【0027】
[027]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、本明細書に記載のコア−シェル顔料粒子を、好ましくは約3〜約70、より好ましくは約5〜約50wt%、より一層好ましくは約10〜約30wt%の量で含み、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0028】
[028]本明細書に記載のコア−シェル顔料の粒径は、好ましくは約0.1〜約30ミクロンの間、好ましくは約0.5〜約15ミクロンの間である。
【0029】
[029]本明細書に記載の磁性コアは、軟磁性、半硬(12.5〜125Oe)又は硬磁性型(理想的には2〜5000Oeであるが、これに限らない)材料からの1種又は複数からなる。本明細書に記載の磁性コアは、好ましくは、磁性金属(特に、鉄、コバルト及びニッケル);磁性金属酸化物(特に、Fe
2O
3、Fe
3O
4、CrO
2、ヘキサフェライト、例えばバリウムヘキサフェライト及びストロンチウムヘキサフェライト、ペロフスカイト、並びに、A
3B
5O
12ガーネット、式中、Aは、3価の希土類イオンであり、Bは、Al
3+、Cr
3+、Fe
3+、Ga
3+、又は、Bi
3+である);磁性金属合金(特に、鉄合金、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金、ニッケル−コバルト合金、鉄−ニッケル合金窒化物、及び、鉄−ニッケル−コバルト合金窒化物)及びこれらの混合物又は組合せ;からなる群から選択される1種又は複数の磁性材料を含む。より好ましくは、本明細書に記載の磁性コアは、鉄、Fe
2O
3及びFe
3O
4、並びにこれらの混合物又は組合せからなる群から選択される1種又は複数の磁性材料を含む。
【0030】
[030]一実施形態によれば、本明細書に記載のコア−シェル顔料粒子は、好ましくは、本明細書に記載のもののような磁性コア、1種又は複数の無機材料で構成された第1層(中間層)、及び、銀で構成された第2層(周囲環境に面する外層)を備え、ここで、1種又は複数の無機材料は、好ましくは、銀、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金、パラジウム、銅、金、ロジウム、亜鉛、イリジウム及びこれらの合金からなる群から選択される金属;金属酸化物(好ましくは、MgO、ZnO、Al
2O
3、Y
2O
3、Ln
2O
3(式中、Lnは、ランタニドである)、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、CeO
2、及びこれらの混合物)、並びに金属硫化物(好ましくは、ZnS、CaS及びこれらの混合物からなる群から選択される)からなる群から選択される。好ましくは、本明細書に記載のコア−シェル顔料粒子は、好ましくは、磁性コア、1種又は複数の無機材料で構成された第1層(中間層)、及び、銀で構成された外層を備え、ここで、1種又は複数の無機材料は、上記のもののような金属酸化物であり、好ましくは、SiO
2、TiO
2及びY
2O
3からなる群から選択される。
【0031】
[031]別の実施形態によれば、本明細書に記載のコア−シェル顔料粒子は、好ましくは、磁性コア、1種又は複数の有機材料で構成された第1層(中間層)、及び、銀で構成された第2層(周囲環境に面する外層)を備え、ここで、1種又は複数の有機材料は、好ましくは、ポリアクリレート(好ましくはポリ(メチルメタクリレート)、PMMA)、ポリスチレン、パリレン、アルコキシシラン(好ましくは、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、TMP)、及びこれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、1種又は複数の有機材料は、ポリ(メチルメタクリレート)及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される。
【0032】
[032]全ての適切な堆積法(物理的及び/又は化学的)が、本明細書に記載の磁性コア上に、銀の層、有機層及び無機層を形成するために使用できる。堆積法又はコーティング法の典型的な例には、限定ではないが、化学気相蒸着(CVD)及び湿式化学コーティングが含まれる。有機材料の層を形成する場合には、これらのコア−シェル顔料粒子は、本明細書に記載の磁性コアを液相に分散させ、乳化重合によって粒子上に有機層が形成されることからなる方法(液相重合法)によって、又は、有機層が蒸気相において形成される方法(CVD若しくはPVD)によって、又は、当業者により知られているさらに別の方法により、調製され得る。
【0033】
[033]特に好ましい実施形態において、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、本明細書に記載のコア−シェル顔料粒子を含み、これらの粒子は、CIELAB(1976)スケールによる60より大きく、好ましくは75より大きく、最も好ましくは80より大きい、バルクの明度L
*を有する。
【0034】
[034]本発明の好ましい実施形態において、インクは、50%より大きく、好ましくは60%より大きい、800〜1000nmの間の赤外線(IR)拡散反射率を有する。
【0035】
[035]本明細書に記載の酸化乾燥インクは、式(I):
【化2】
[式中、
R
1〜R
4は、同じであっても異なっていてもよく、
水素、
直鎖C
1〜C
4アルキル、
分岐C
3〜C
4アルキル、
C
1〜C
4直鎖ハロアルキル(ここで、ハロ原子は、好ましくは、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から独立に選択され、より好ましくはフッ素である)、及び
分岐C
3〜C
4ハロアルキル(ここで、ハロ原子は、好ましくは、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から独立に選択され、より好ましくはフッ素である)
からなる群から独立に選択される]
を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤を含む。
【0036】
[036]本明細書で用いられる場合、用語「直鎖C
1〜C
4アルキル」は、1から4個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、すなわち、メチル、エチル、プロピル及びブチル基を表す。
【0037】
[037]本明細書で用いられる場合、用語「分岐C
3〜C
4アルキル」は、3又は4個の炭素原子を有する分岐アルキル基、すなわち、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル基を表す。
【0038】
[038]本明細書で用いられる場合、用語「C
1〜C
4直鎖ハロアルキル」は、1個又は複数の水素原子がハロ原子により置き換えられた、1から4個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表す。
【0039】
[039]本明細書で用いられる場合、用語「分岐C
3〜C
4ハロアルキル」は、1個又は複数の水素原子がハロ原子により置き換えられた、3又は4個の炭素原子を有する分岐アルキル基を表す。
【0040】
[040]本発明は、また、原子のうち1個又は複数が、同位体種によって置き換えられた化合物にも及ぶことが、さらに認識されるべきであり、例えば、1個又は複数の水素原子が、
2H又は
3Hによって置き換えられていてもよい、及び/又は、1個又は複数の炭素原子が
14C又は
13Cによって置き換えられていてもよい。
【0041】
[041]好ましくは、本明細書に記載の酸化乾燥インクは、式(I):
【化3】
を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤を含み、
式中、
R
1〜R
4は、同じであっても異なっていてもよく、
水素、
直鎖C
1〜C
2アルキル、及び
C
1〜C
2直鎖ハロアルキル、ここで、ハロ原子は、好ましくは、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から独立に選択され、より好ましくはフッ素である、
からなる群から独立に選択される。
【0042】
[042]より好ましくは、本明細書に記載の酸化乾燥インクは、式(I):
【化4】
を有するベンゾトリアゾール化合物から選択される1種又は複数の安定剤を含み、
式中、
R
1〜R
4は、同じであっても異なっていてもよく、
水素、
C
1アルキル(すなわちメチル基)、及び
C
1ハロアルキル(すなわち、ハロメチル基)(ここで、ハロ原子は、好ましくは、フッ素、塩素、及び臭素からなる群から独立に選択され、より好ましくはフッ素である)
からなる群から独立に選択される。
【0043】
[043]一実施形態によれば、本明細書に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物は、R
1〜R
4を含み、ここでR
1〜R
4は水素である。
【0044】
[044]別の実施形態によれば、本明細書に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物は、R
1〜R
4を含み、ここでR
1〜R
4のうちの3つの基は水素であり、1つの基はメチル又はエチル基、好ましくはメチル基である。
【0045】
[045]別の実施形態によれば、本明細書に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物は、R
1〜R
4を含み、ここでR
1〜R
4のうちの3つの基は水素であり、1つの基はハロメチル基、好ましくはトリハロメチル基、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0046】
[046]凹版法によって基材に印刷するための、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクのための安定剤としての、本明細書に記載の式(I)を有する1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物の使用も、本明細書に記載される。
【0047】
[047]記載の酸化乾燥磁性インクは、好ましくは、本明細書に記載の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物を、約0.1〜約20wt%、好ましくは約0.5〜約10、より一層好ましくは約1〜約5wt%の量で含み、重量パーセントは、酸化乾燥インクの全重量に対するものである。
【0048】
[048]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、少なくとも1種の酸化乾燥ワニスを含む。用語「ワニス」は、また、当技術分野において、樹脂、バインダー又はインクビヒクルとも呼ばれる。少なくとも1種の酸化乾燥ワニスは、好ましくは、本明細書に記載の酸化乾燥インクに、約10〜約90wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0049】
[049]本明細書に記載の酸化乾燥インクのための酸化乾燥ワニスは、乾燥するワニス、すなわち、酸素の、例えば空気からの酸素の、作用の下で硬化する(「空気乾燥」)ワニスである。代わりに、また乾燥過程を加速する目的で、乾燥過程は、高温空気、赤外線源、又は高温空気と赤外線源の何らかの組合せの下で行われてもよい。
【0050】
[050]酸化乾燥ワニスは、当技術分野において周知のように、通常、不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基又はこれらの混合物を含むポリマーである。本明細書に記載の酸化乾燥ワニスは、空気乾燥特性を保証するために、不飽和脂肪酸残基を含むことが好ましい。特に好ましい酸化乾燥ワニスは、不飽和酸性基を含む樹脂であり、より一層好ましいのは、不飽和カルボン酸性基を含む樹脂である。しかし、樹脂は、また、飽和脂肪酸残基も含み得る。本明細書に記載の酸化乾燥ワニスは酸性基を含むことが好ましい、すなわち、酸化乾燥ワニスは酸変性樹脂の中から選択される。本明細書に記載の酸化乾燥ワニスは、アルキド樹脂、ビニルポリマー、ポリウレタン樹脂、超分岐樹脂、ロジン−変性マレイン酸樹脂、ロジン−変性フェノール樹脂、ロジンエステル、石油樹脂−変性ロジンエステル、石油樹脂−変性アルキド樹脂、アルキド樹脂−変性ロジン/フェノール樹脂、アルキド樹脂−変性ロジンエステル、アクリル−変性ロジン/フェノール樹脂、アクリル−変性ロジンエステル、ウレタン−変性ロジン/フェノール樹脂、ウレタン−変性ロジンエステル、ウレタン−変性アルキド樹脂、エポキシ−変性ロジン/フェノール樹脂、エポキシ−変性アルキド樹脂、テルペン樹脂 ニトロセルロース樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂及びこれらの組合せ又は混合物からなる群から選択され得る。ポリマー及び樹脂は、本明細書では、交換可能であるように使用されている。
【0051】
[051]飽和及び不飽和脂肪酸化合物は、天然及び/又は人工の原料から得ることができる。天然原料には、動物原料及び/又は植物原料が含まれる。動物原料には、動物脂肪、バター脂肪、魚油、ラード、肝臓脂肪、マグロ魚油、マッコウクジラ油及び/又は獣脂油並びにワックスが含まれ得る。植物原料には、ワックス及び/又はオイル、例えば、植物油及び/又は非植物油が含まれ得る。植物油の例には、限定ではないが、ニガウリ、ルリジサ、キンセンカ、カノラ、ヒマ、桐(china wood)、ココナッツ、針葉樹の実、トウモロコシ、綿実、脱水ヒマ、アマ種子(flaxseed)、葡萄種子、キリモドキ(Jacaranda mimosifolia)種子、亜麻仁(linseed)油、ヤシ、ヤシ核、ピーナッツ、ザクロ種子、菜種、ベニバナ、ヘビウリ、大豆(豆)、ヒマワリ、トール(tall)、アブラギリ(tung)及びコムギ麦芽が含まれる。人工原料には、合成ワックス(例えば、マイクロクリスタリン及び/又はパラフィンワックス)、蒸留テールオイル及び/又は化学的若しくは生化学的合成方法が含まれる。適切な脂肪酸には、また、(Z)−ヘキサダン(hexadan)−9−エン[パルミトレイン]酸(C
16H
30O
2)、(Z)−オクタデカン−9−エン[オレイン]酸(C
18H
34O
2)、(9Z,11E,13E)−オクタデカ−9,11,13−トリエン[α−エレオステアリン]酸(C
18H
30O
2)、リカン酸、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン[リノエン(linoeic)]酸(C
18H
32O
2)、(5Z,8Z,11Z,14Z)−エイコサ−5,8,11,14−テトラエン[アラキドン]酸(C
20H
32O
2)、12−ヒドロキシ−(9Z)−オクタデカ−9−エン[リシノール]酸(C
18H
34O
3)、(Z)−ドコサン−13−エン[エルカ]酸(C
22H
42O
3)、(Z)−エイコサン−9−エン[ガドレイン]酸(C
20H
38O
2)、(7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサ−7,10,13,16,19−ペンタエン[クルパノドン]酸、及びこれらの混合物が含まれる。
【0052】
[052]適切な脂肪酸は、エチレン性不飽和共役又は非共役C
2〜C
24カルボン酸、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、クルパノドン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、リカン酸、ニシン酸及びエレオステアリン酸又はこれらの混合物である。これらの脂肪酸は、通常、天然又は合成オイルに由来する、脂肪酸の混合物の状態で使用される。
【0053】
[053]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、酸化過程をスピードアップするために、好ましくは、1種又は複数の乾燥剤(当技術分野において、触媒、乾燥剤(siccative agent、desiccative又はdessicator)とも呼ばれる)を含む。乾燥剤の例には、無機又は有機の金属(複数可)塩、有機酸の金属石鹸、金属錯体及び金属錯体塩が含まれる。適切な乾燥剤には、限定ではないが、カチオン(複数可)として、コバルト、カルシウム、銅、亜鉛、鉄、ジルコニウム、マンガン、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、リチウム、バナジウム及びカリウム;並びに、アニオン(複数可)として、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、例えば、酢酸イオン、エチルヘキサン酸イオン、オクタン酸イオン及びナフテン酸イオン又はアセト酢酸イオン;を含む多価塩が含まれる。存在する場合、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクに使用される1種又は複数の乾燥剤は、好ましくは約0.01〜約10wt%の量で、より好ましくは約0.1〜約5wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0054】
[054]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、1種又は複数の界面活性剤、特に、欧州特許第0340163号に記載のもののような親水性高分子界面活性剤を、さらに含んでいてもよい。任意選択の界面活性剤の役割は、印刷シリンダーに存在する余分なインクを、その印刷シリンダーを基材に接触させる直前に、拭き取る(wipe off)ことを助けることである。余分なインクの拭取りのこの過程は、高速のどの工業的凹版印刷法でも、その一部であり、ティシュー又は紙ロール(「キャリコ」)又はポリマー拭いシリンダー及び水系洗浄液(拭い液)を用いて行われる。この場合、任意選択の界面活性剤は、洗浄液中の余分なインクを乳化するために使用される。上記界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、さらには両性のものであってもよい。親水性高分子界面活性剤の場合、機能性の基は、例えば、カルボン酸又はスルホン酸基、ヒドロキシル基、エーテル基、又は第1級、第2級、第3級若しくは第4級アミノ基である。酸性基は、アミン、アルカノールアミン、若しくは、好ましくは無機塩基、又はこれらの組合せにより中性化され得る。第1級、第2級若しくは第3級アミノ基は、無機若しくは有機酸、例えば、スルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などにより中性化され得る。特に好ましいのは、アニオン高分子界面活性剤(AMS)、例えば、欧州特許出願公開第2014729号に記載のものである。
【0055】
[055]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、色無変化(color constant)インク、又は、光学的変化(optically variable)インクであり得る。
【0056】
[056]本発明の一態様によれば、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、また、a)1種若しくは複数の染料、並びに/又はb)無機顔料、有機顔料若しくはこれらの混合物を好ましくは含む、色無変化組成物インクである。インクに適する染料は、当技術分野において知られており、好ましくは、反応性染料、直接染料、アニオン染料、カチオン染料、酸性染料、塩基性染料、食用染料、金属錯体染料、溶剤染料及びこれらの混合物を含む群から選択される。適切な染料の典型的な例には、限定ではないが、クマリン、シアニン、オキサジン、ウラニン、フタロシアニン、インドリノシアニン、トリフェニルメタン、ナフタロシアニン、インドナナフタロ−金属染料、アントラキノン、アントラピリドン、アゾ染料、ローダミン、スクアリリウム染料、クロコニウム染料が含まれる。本発明に適する染料の典型的な例には、限定ではないが、C.I.アシッドイエロー1、3、5、7、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、54、59、61、70、72、73、75、76、78、79、98、99、110、111、121、127、131、135、142、157、162、164、165、194、204、236、245;C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、106、107、110、132、142、144;C.I.ベーシックイエロー13、28、65;C.I.リアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42;C.I.食用イエロー3、4;C.I.アシッドオレンジ1、3、7、10、20、76、142、144;C.I.ベーシックオレンジ1、2、59;C.I.食用オレンジ2;C.I.オレンジB;C.I.アシッドレッド1、4、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、73、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、221、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、357、359;C.I.ベーシックレッド1、2、14、28;C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、253;C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、108、180;C.I.食用レッド1、7、9、14;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、20、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、193、199、203、204、205、229、234、236、249、254、285;C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、8、9、11、55、81;C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249;C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、77;C.I.食用ブルー1、2;C.I.アシッドグリーン1、3、5、16、26、104;C.I.ベーシックグリーン1、4;C.I.食用グリーン3;C.I.アシッドバイオレット9、17、90、102、121;C.I.ベーシックバイオレット2、3、10、11、21;C.I.アシッドブラウン101、103、165、266、268、355、357、365、384;C.I.ベーシックブラウン1;C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、48、50、51、52、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、122、131、132、139、140、155、156、157、158、159、191、194;C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、39、51、56、62、71、74、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133、146、154、168;C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14、18、31;C.I.食用ブラック2;C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントオレンジ45、C.I.ソルベントレッド8、C.I.ソルベントグリーン7、C.I.ソルベントブルー7、C.I.ソルベントブラック7;C.I.ディスパースイエロー3、C.I.ディスパースレッド4、60、C.I.ディスパースブルー3、及び、米国特許第5074914号、米国特許第5997622号、米国特許第6001161号、特開平02−080470号公報、特開昭62−190272号公報、特開昭63−218766号公報に開示された金属アゾ染料が含まれる。本発明に適する染料は、赤外吸収染料又はルミネセンス染料であってもよい。存在する場合、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクに使用される1種又は複数の染料は、好ましくは、約1〜約20wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0057】
[057]有機及び無機顔料の典型的な例には、限定ではないが、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー93、109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド67、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントブラウン6、C.I.ピグメントブラウン7、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック11、C.I.ピグメントホワイト4、C.I.ピグメントホワイト6、C.I.ピグメントホワイト7、C.I.ピグメントホワイト21、C.I.ピグメントホワイト22、アンチモンイエロー、クロム酸鉛、硫酸鉛クロメート、モリブデン酸鉛、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、マンガンブルー、クロムオキサイドグリーン、水和クロムオキサイドグリーン、コバルトグリーン、硫化セリウム、硫化カドミウム、硫セレン化カドミウム、亜鉛フェライト、バナジン酸ビスマス、プルシアンブルー、混合金属酸化物、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン及びキノフタロン顔料が含まれる。存在する場合、本明細書に記載の、無機顔料、有機顔料又はこれらの混合物は、好ましくは約0.1〜約45wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥インクの全重量に対するものである。
【0058】
[058]本発明の一態様によれば、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、光学的変化インクであり、光学的変化顔料、又は様々な光学的変化顔料の混合物を含む。光学的変化インクは、1種又は複数の色無変化顔料を、さらに含んでいてもよい。光学的変化インクは、好ましくは、光学的変化顔料、又は様々な光学的変化顔料の混合物を含み、ここで、光学的変化顔料は、好ましくは、薄膜干渉顔料、干渉コート(interference coated)顔料、コレステリック液晶顔料、及びこれらの混合物からなる群から選択される。存在する場合、光学的変化顔料は、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクに、好ましくは約5〜約40wt%の間の量で、より好ましくは約10〜約35wt%の間の量で含まれ、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0059】
[059]光学的変化特性を示す適切な薄膜干渉顔料は、当業者に知られており、米国特許第4705300号、米国特許第4705356号、米国特許第4721271号、米国特許第5084351号、米国特許第5214530号、米国特許第5281480号、米国特許第5383995号、米国特許第5569535号、米国特許第5571624号及びそれらに関係する文書に開示されている。光学的変化顔料の少なくとも一部が、薄膜干渉顔料からなるとき、薄膜干渉顔料は、ファブリ−ペロ反射体/誘電体/吸収体の多層構造を、より好ましくは、ファブリ−ペロ吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造を、備えることが好ましく、ここで、吸収体層は、入射光を、部分的に透過し、部分的に反射し、誘電体層は透過し、反射体層は反射する。反射体層は、金属、金属合金及びこれらの組合せからなる群から選択されることが好ましく、好ましくは、反射性金属、反射性金属合金及びこれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びこれらの混合物からなる群から選択され、より一層好ましくは、アルミニウム(Al)である。誘電体層は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)及びこれらの混合物からなる群から独立に選択されることが好ましく、より好ましくは、フッ化マグネシウム(MgF
2)である。吸収体層は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金属合金及びこれらの混合物からなる群から独立に選択されることが好ましく、より好ましくは、クロム(Cr)である。光学的変化顔料の少なくとも一部が、薄膜干渉顔料からなる場合、薄膜干渉顔料は、Cr/MgF
2/Al/MgF
2/Crの多層構造からなるファブリ−ペロ吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造を備えることが特に好ましい。
【0060】
[060]本明細書に記載の薄膜干渉顔料は、ウェブ上への、必要とされる様々な層の真空蒸着によって、通常、製造される。望まれる数の層の蒸着後、層の積み重なったものは、適切な溶媒中で剥離層を溶かすことによって、又は、ウェブから材料を取り去ることによって、ウェブから取り外される。そうして得られた材料は、次いで、フレークに砕かれ、これらは、グラインディング、ミリング又は適切な何らかの方法によって、さらに処理されなければならない。得られる生成物は、破壊端部、不揃いの形状及び様々なアスペクト比を有する平らなフレークからなる。
【0061】
[061]適切な干渉コート顔料には、限定ではないが、金属酸化物からなる1つ又は複数の層でコートされた、チタン、銀、アルミニウム、銅、クロム、鉄、ゲルマニウム、モリブデン、タンタル又はニッケルのような金属コアからなる群から選択される基材からなる構造体、さらには、金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄、及び酸化/水酸化鉄)からなる1つ又は複数の層でコートされた、合成若しくは天然雲母、他の層状ケイ酸塩(例えば、タルク、カオリン及びセリサイト)、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化/水酸化アルミニウム(ベーム石)、酸化チタン(TiO
2)、グラファイト及びこれらの混合物からなるコアからなる構造体が含まれる。上記構造体は、例えば、Chem. Rev. 99(1999), G. Pfaff and P. Reynders, 1963〜1981頁、及び国際公開第2008/083894号に開示されている。これらの干渉コート顔料の典型的な例には、限定ではないが、酸化チタン、酸化スズ及び/若しくは酸化鉄からなる1つ又は複数の層でコートされた酸化ケイ素コア;酸化チタン、酸化ケイ素及び/若しくは/酸化鉄からなる1つ又は複数の層でコートされた天然若しくは合成雲母コア、特に、酸化ケイ素と酸化チタンからなる交互層によりコートされた雲母コア;酸化チタン、酸化ケイ素及び/又は酸化スズからなる1つ又は複数の層によりコートされたホウケイ酸塩コア;並びに、酸化鉄、酸化/水酸化鉄、酸化クロム、酸化銅、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、バナジン酸ビスマス、チタン酸ニッケル、チタン酸コバルト及び/又はアンチモンドープ、フッ素ドープ若しくはインジウム−ドープ酸化スズからなる1つ又は複数の層によりコートされた酸化チタンコア;酸化チタン及び/又は酸化鉄からなる1つ又は複数の層によりコートされた酸化アルミニウムコア;が含まれる。
【0062】
[062]コレステリック相の液晶は、その分子の長軸に垂直な螺旋超構造の状態の分子秩序を示す。螺旋超構造は、液晶材料の全体を通しての周期的屈折率変調の起源であり、これが、転じて、決まった波長の光の選択的透過/反射(干渉フィルター効果)を生じる。コレステリック液晶ポリマーは、キラル相を有する1種又は複数の架橋性物質(ネマチック化合物)を、配列させ、配向させることによって得ることができる。特定の状態の螺旋分子配置は、決まった波長範囲内の円偏光成分を反射する特性を示すコレステリック液晶材料になる。ピッチは、特に、温度及び溶媒濃度を含めて、選択可能な要因を変えることによって、キラル成分(複数可)の特質、及びネマチックとキラル化合物の比率を変えることによって、調整できる。UV放射の作用の下での架橋は、望まれる螺旋形態を固定することによって、予め決められた状態にピッチを凍結し、その結果、得られるコレステリック液晶材料の色は、温度のような外部要因に、もはや依存していない。さらにまた、コレステリック液晶材料は、次にポリマーを望みの粒径に細かく砕くことによって、コレステリック液晶顔料へと形作られ得る。コレステリック液晶材料から製造される膜及び顔料並びにそれらの調製の例は、米国特許第5211877号、米国特許第5362315号及び米国特許第6423246号、並びに欧州特許出願公開第1213338号、欧州特許出願公開第1046692号及び欧州特許出願公開第0601483号に開示されており、これらの個々の開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0063】
[063]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、炭素繊維、タルク、雲母(例えば、白雲母)、珪灰石、焼成クレー、チャイナクレー、カオリン、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウムナトリウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム)、硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム)、チタン酸塩(例えば、チタン酸カリウム)、アルミナ水和物、シリカ、フュームドシリカ、モンモリロナイト、グラファイト、アナターゼ、ルチル、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛白、硫化亜鉛、木粉、石英粉末、天然繊維、合成繊維及びこれらの組合せからなる群から好ましくは選択される1種又は複数のフィラー及び/又は体質顔料(extender)を、さらに、含んでいてもよい。存在する場合、1種又は複数のフィラー又は体質顔料は、好ましくは約0.1〜約40wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥磁性インクの全重量に対するものである。
【0064】
[064]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、合成ワックス、石油ワックス及び天然ワックスからなる群から好ましくは選択される1種又は複数のワックスをさらに含み得る。1種又は複数のワックスは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、シリコーン流体、ビーズワックス、カンデリラワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。存在する場合、1種又は複数のワックスは、好ましくは約0.1〜約15wt%の量で存在し、重量パーセントは、酸化乾燥インクの全重量に対するものである。
【0065】
[065]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、1種又は複数のフォレンジック(forensic)マーカー及び/或いは1種又は複数のタガントをさらに含んでいてもよい。
【0066】
[066]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、限定ではないが、組成物の物理的、レオロジー的及び化学的パラメータ、例えば、粘度(例えば、溶媒、希釈剤及び界面活性剤)、稠度(例えば、沈降防止剤、フィラー及び可塑剤)、起泡特性(例えば、起泡防止剤)、UV安定剤(光安定剤)並びに接着特性などを調節するために使用される化合物及び材料を含めて、1種又は複数の添加剤を、さらに含み得る。本明細書に記載の添加剤は、粒子の少なくとも1つの寸法が、1〜1000nmの範囲にある、いわゆるナノ材料の形態を含めて、当業者に知られた量及び形態で、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクに存在し得る。
【0067】
[067]本発明は、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを製造するための方法、及びそれらより得られる酸化乾燥磁性インクを、さらに提供する。本発明の方法は、少なくとも1種の本明細書に記載の酸化乾燥ワニス、コア−シェル顔料粒子、1種又は複数の安定剤、及び、存在する場合、1種又は複数の添加剤を、分散、混合及び/又はミリングして、ペースト状組成物を生成するステップを含む。
【0068】
[068]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、凹版印刷法によって基材に塗布されるのに特に適しており、特に、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、セキュリティ特徴部を生成するために、凹版印刷法によって基材に塗布されるのに特に適している。
【0069】
[069]本発明に適する基材には、限定ではないが、セルロース、紙含有材料のような紙若しくは他の繊維材料、プラスチック又はポリマー基材、複合材料、金属又は金属で被覆された材料、ガラス、セラミック及びこれらの組合せが含まれる。プラスチック又はポリマー基材の典型的な例は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基材である。複合材料の典型的な例には、限定ではないが、紙と上記のもののような少なくとも1種のプラスチック若しくはポリマー材料との多層構造体又は積層体、さらには、上記のもののような紙に似た若しくは繊維性の材料に組み入れられたプラスチック及び/又はポリマー繊維が含まれる。セキュリティ文書のセキュリティレベル並びに偽造及び違法複製に対する抵抗力をさらに向上させる目的で、基材は、透かし模様、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット(planchette)、ルミネセンス化合物、ウィンドウ(window)、箔、デカル(decal)、コーティング及びこれらの組合せを含み得る。
【0070】
[070]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成されたセキュリティ特徴部、及びそれらのセキュリティ特徴部のうち1つ又は複数を備えるセキュリティ文書も、本明細書に記載される。まやかし物又は違法複製に対するセキュリティ文書の保護のための、本明細書に記載のセキュリティ特徴部の使用も、本明細書に記載される。
【0071】
[071]セキュリティ特徴部を生成するための方法、及びそれにより得られるセキュリティ特徴部も、本明細書に記載される。本明細書に記載の方法は、ステップa)凹版印刷法によって、本明細書に記載のもののような基材上に、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを塗布するステップを含む。この方法は、好ましくは、ステップb)空気の存在下で本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを乾燥して、基材上に層又はコーティングを形成するステップをさらに含み、乾燥ステップは、ステップa)の後で行われる。記載の酸化乾燥磁性インクを乾燥するステップb)は、上記インクの乾燥時間を減らすために、高温空気の下で、赤外線源により、又は高温空気と赤外線源の何らかの組合せで、行われ得る。
【0072】
[072]凹版印刷は、特にセキュリティ文書を印刷する分野において使用される印刷方法を表す。工業的凹版印刷法では、印刷されるパターン又は画像が彫刻されたプレートを保持する、回転するスチールシリンダーに、選択的インク付けシリンダー(複数可)(又は、シャブロンシリンダー)の1つによって、又は複数によって、インクが供給され、それぞれの選択的インク付けシリンダーは、画線部に対応する少なくとも1つの色がインク付けされる。インク付けステップに続いて、凹版印刷法は、凹版印刷用具の表面に存在する余分なインクがあれば、それを拭き取るステップを伴い、このステップは、紙又はティシュー(「キャリコ」)又はポリマーロール(「拭取りシリンダー」)を用いて行われる。次に、プレートが、シート状又はウェブ状の、本明細書に記載のもののような基材と接触し、インクが、印刷される基材上に、凹版印刷用具の彫刻から、加圧下で転写され、厚いセキュリティ特徴部が基材に形成される。
【0073】
[073]凹版印刷法によって、本明細書に記載のもののような基材上に、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクを塗布するステップは、様々なレベルの磁性シグナルの印刷ゾーンを有するセキュリティ特徴部を生じるように、通常、様々な彫刻深さのゾーンを有する凹版プレートで行われる。
【0074】
[074]本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成されたセキュリティ特徴部も、本明細書に記載される。まやかし物又は違法複製に対するセキュリティ文書の保護のための、本明細書に記載のセキュリティ特徴部の使用も、本明細書に記載される。
【0075】
[075]一実施形態によれば、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクは、セキュリティスレッド又はストライプのための磁性コードの形のセキュリティ特徴部を生成するために使用され得るが、ここで、この磁性コードは、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成された、隣接していない複数の磁性領域と、そのインクのない領域とを備え、どちらの領域も、セキュリティスレッド又はストライプの長手方向に沿って延びる、予め決められた方向に沿って配列される。磁性コードは、偽造又は違法複製に対して保護され、また認証されるセキュリティ文書内に、又はその上に組み入れられるセキュリティ要素として使用され得る。一実施形態において、磁性領域は、ストライプ又はスレッドに交差して延びる帯(band)として配列され、セキュリティスレッド又はストライプの長手方向では、間隔を置いて配置され、間隔は、酸化乾燥磁性インクのない帯をなす。磁性コードの磁性領域は、セキュリティスレッド又はストライプの磁性の変動を検出する装置による自動読取り、復号(decoding)又は認識のための情報を蓄積するのに使うことができる。
【0076】
[076]やはり本明細書に記載されているのは、本明細書に記載のもののような、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成された1つ又は複数のセキュリティ特徴部を備える、セキュリティ文書である。
【0077】
[077]用語「セキュリティ文書」は、それを、偽造又は違法複製が潜在的に試みられがちであるようにする価値を有し、1つ又は複数のセキュリティ特徴部によって偽物又はまやかし物に対して、通常、保護されている文書を表す。セキュリティ文書の例には、限定ではないが、有価文書及び有価商用製品が含まれる。有価文書の典型的な例には、限定ではないが、銀行券、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙及びタックスラベル、契約書など、身分証明文書、例えば、パスポート、身分証明カード、ビザ、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス文書、セキュリティバッジ、入場チケット、乗物チケット、又は権限証書(title)などが含まれる。
【0078】
[078]用語「有価商用製品」は、梱包の内容物が、例えば本物の薬剤のように、本物であることを保証するための1つ又は複数のセキュリティ特徴部を備え得る、特に医薬、化粧品、電子又は食品業界のための梱包用材料を表す。これらの梱包用材料の例には、限定ではないが、ラベル、例えば、認証ブランドラベル、タックスバンデロール(banderole)、タンパー証明ラベル及びシールが含まれる。
【0079】
[079]本明細書に記載のセキュリティ文書は、本明細書に記載の酸化乾燥磁性インクで構成されたセキュリティ特徴部の下か又は上面のいずれかに、1つ又は複数のさらなる層又はコーティングをさらに備え得る。もしも基材と本明細書に記載のセキュリティ特徴部との間の接着が、例えば、基材材料、表面の凹凸又は表面の不均一性によって不十分であれば、基材とセキュリティ特徴部との間のさらなる層、コーティング又はプライマーが、当業者に知られているように適用され得る。
【0080】
[080]汚れ又は化学薬品に対する抵抗力による耐久性及び清潔さを、従ってまたセキュリティ文書の流通寿命を、増す目的で、1つ又は複数の保護層が、本明細書に記載の1つ又は複数のセキュリティ特徴部の上面に適用されてもよい。存在する場合、1つ又は複数の保護層は、通常、保護ワニスからなり、これらは、透明又は僅かに着色又は薄く着色されていてもよく、多かれ少なかれ光沢があり得る。保護ワニスは、放射線硬化組成物、熱乾燥組成物又はこれらの何らかの組合せであり得る。1つ又は複数の保護層は、放射線硬化、より好ましくはUV−Vis硬化組成物からなることが好ましい。
【実施例】
【0081】
[081]本発明を以下、非限定的例実施例を参照してより詳細に説明する。以下の実施例は、凹版印刷用の酸化乾燥磁性インクのための安定剤としての、本明細書に記載の式(I)の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物の使用についての一層の詳細を(実施例E1〜E3)、様々な安定剤を含む(C1〜C4)、又は安定剤を含まない(C0a、C0b及びC0c)インクと比較して、提供する。
【0082】
[082]安定剤の量、コア−シェル顔料粒子、着色顔料、乾燥剤及びフィラーは、全ての実験データで一定に保たれた。
【0083】
酸化乾燥磁性凹版インク(表1a、1b及び1c)
[083]酸化乾燥磁性凹版インク(E1a、E1b、E1c、E2、E3、C0a、C0b、C0c、C1、C2及びC3)は、コア−シェル顔料粒子を含み、このコア−シェル顔料粒子は、2ステッププロセスによって調製された。
1)TiO2コーティング
TiO
2でコートされた鉄は、80gの鉄粒子(カルボニル鉄から合成、d
50 1〜10μm)を、1.2mLの0.4M ルテンゾール(Lutensol)(登録商標)ON 50(BASF)を含む2Lの無水エタノール溶液に分散させることによって、調製した。約15分間の激しい撹拌の後、2.4mLのチタンイソプロポキシド(TTIP、Sigma Aldrich)を加えた。反応物を、窒素下に室温で約2時間撹拌し、空気中、室温で一夜撹拌した。
2)
銀コーティング
第1ステップの間に得られた70gのTiO
2コート鉄粒子を、280mLの蒸留水に分散させた。1000mLの硝酸銀溶液(280mLの28wt%水酸化アンモニウム、及び720mLの硝酸銀(8.7wt%、Fisher))を、70℃で、激しい撹拌下に、滴下して加えた。70℃でのさらに1時間の撹拌後に、280mLのD−グルコース溶液(28wt%、Acros)を加えた。こうして得られた黄色の沈殿を、撹拌下に、室温まで冷まし、濾過し、蒸留水で洗い、80℃で約16時間乾燥し、球状で、1〜12μmのd
50値を有する、銀コート鉄粒子を得た。
【0084】
[084]酸化乾燥磁性凹版インク(E1a、E1b、E1c、E2、E3、C0a、C0b、C0c、C1、C2及びC3)は、表1a、1b、及び1cに、それぞれ列挙された化合物を、スパチュラを用い、手によって、目で見て均一になるまで、十分に混合することによって調製した。得られたペースト状インクは、個別に、3本ロールミル(Buhler 200 SDV)で、2回通し(6barでの1回目通し、及び12barでの2回目通し)で、グラインディングした。
【0085】
[085]こうして得られた酸化乾燥磁性凹版インクの粘度は、Haake Roto Visco 1回転式レオメーターで測定した(40℃及び1000s
−1、C20−0.5°、20mmのプレートコーン、25μmで先端切断)。粘度の値は、表1a、1及び1cに記載されている。
ドローダウン(drawdown)試料の調製
凹版印刷層をシミュレートする目的で、約0.2gの、表1a、1b及び1cに記載の酸化乾燥磁性凹版インクの1滴を、1枚の14.7cm×10.5cmの標準的オフセット用紙(120μm厚、供給業者:Jeco Print Sarl)にのせた。表1a、1b及び1cに記載された酸化乾燥磁性凹版インクの各々を、軽い手の圧力で、広幅ブレードのドローダウンナイフを用い、引き延ばして、長さが約8cm、幅が2cm、厚さが40〜60μmのインク層を形成した。
【0086】
自然エージング
[086]ドローダウン試料を、暗所で7日間放置乾燥し、次いで、上記の1枚の標準的オフセット用紙上のインク層について、L
*a
*b
*値(CIELAB 1976)及びNIR反射率を測定した。次に、ドローダウン試料を、自然の大気中、標準条件(22℃、30%rH)下に、暗所で10週間保存した。エージング後の各ドローダウン試料について、L
*a
*b
*値(CIELAB 1976)及びNIR反射率の測定を行い、これらのデータを得た。「エージング後」のデータは、「エージング前」のデータと比較され、自然エージングによる変化を、ΔE
*(CIELAB 1976)及びNIR反射率差ΔRとして表した。
【0087】
加速エージング
[087]ドローダウン試料を、暗所で7日間放置乾燥し、次いで、L
*a
*b
*値(CIELAB 1976)及びNIR反射率を測定した。次いで、ドローダウン試料を、デシケータ内で、飽和硫化ナトリウム溶液(28.7wt%のNa
2S、Fluka 71975、Sigma Aldrich)の上方で、暗所に室温(22℃、50〜60%RH)で7日間保存した。加速エージング後の各ドローダウン試料について、L
*a
*b
*値及びNIR反射率の測定を行い、これらのデータを得た。「エージング後」のデータは、「エージング前」のデータと比較され、加速エージングによる変化を、ΔE
*(CIELAB 1976)及びNIR反射率差ΔRとして表した。
【0088】
凹版印刷試料の作製
[088]表1a、1b及び1cに記載の酸化乾燥磁性凹版インクを、個別に、Ormag凹版検討刷りプレスを用いる印刷プロセスによって塗布した。酸化乾燥磁性凹版インクを、個別に、ポリマー製ハンドローラーで凹版プレート上に塗布し、余分なインクがあれば、紙により、手で拭き取った。印刷は、銀行券用途に使用される標準的コットン紙(Louisenthal)基材に、印刷プレート(65℃の温度)を用いて行った。実施例を印刷するために使用された凹版プレートは、様々な深さ(約20μm〜約100μm)及び幅(約60μm〜約500μm)の1組の彫刻からなっており、銀行券の凹版印刷画像をシミュレートするために、「U」形に彫刻されていた。
【0089】
[089]各試料について、画像試料を、上記方法に従って印刷した。印刷された基材の積み重ねをシミュレートするために、試料を、22℃、50%rHで、3kgの圧力下に24時間保った。次に、同じ基材の1枚のブランクを、画像試料に重ねて置き、こうして形成されたアセンブリに、同じORMAG凹版検討刷りプレスにより、80℃で、3.4barの逆圧(counterpressure)を加えた。画像試料及びブランク片を引き離し、下記の乾燥性能を評価するために、インクの転写について、ブランク片を調べた。
【0090】
酸化乾燥磁性凹版インクの結果(表1a、1b及び1c)
A)可視光学特性の安定性:ΔE*値(CIELAB 1976)
[090]表1a、1b、及び1cに記載の酸化乾燥磁性凹版インクのドローダウン試料の、本明細書に記載の方法によるエージングの前と後の間の可視色差が、ΔE
*CIELAB(1976)として表されている。CIELAB(1976)値は、Datacolorによる分光光度計によるDC45(測定の構成:45/0°;スペクトル分析器:独占権のあるデュアルチャネルホログラフィック回折格子。256個のフォトダイオードのリニアアレイを、基準と試料チャネルの両方に使用;光源:全帯域LED照明)により測定した。
【0091】
[091]エージング前後の各ドローダウン試料のΔE
*値は、次の式:
ΔE
*=[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2=
[(L
*(エージング後の試料)−L
*(エージング前の試料))
2+(a
*(エージング後の試料)−a
*(エージング前の試料))
2+(b
*(エージング後の試料)−b
*(エージング前の試料))
2]
1/2
に従って計算され、式中、
ΔL
*は明度差であり、
Δa
*は赤/緑色の差であり、
Δb
*は青/黄色の差である。
【0092】
[092]各試料で、3つの別個のスポットを、エージングの前後で測定した。表1a、1b及び1cに示されたΔE
*値は、3つの測定の平均値にあたる。
【0093】
[093]より大きいΔE
*値は、エージング前とエージング後の試料の色の間の、より強い違いを示す。
【0094】
B)NIR反射率の安定性:850nmでのΔR
[094]NIR反射率は、DatacolorによるDC45を用い、850nmで、上記の1枚の標準的オフセット用紙で測定した。表1a、1b及び1cに記載の酸化乾燥磁性凹版インクのドローダウン試料の、エージング前とエージング後の間の反射率の差が、ΔRとして求められた。100%反射率は、装置の内部標準を用い、測定した。
【0095】
[095]各試料について、エージング前後に、3つの個別のスポットを測定した。表1a、1b及び1cに示されたΔR値は、3つの測定の平均値にあたる。
【0096】
C)乾燥性能(C0a/C0b/C0cとの比較)
[096]表1a、1b及び1cに記載の酸化乾燥磁性凹版インクの乾燥性能は、上記のOrmag凹版検討刷りプレスで印刷された試料で行った。
【0097】
[097]各試料について、上記の方法に従って準備されたブランク片のスキャンを、Epson 7680 Proカラースキャナーを用い、RGBモード(8ビット/カラーチャネル)において、600dpiの解像度で、
*.tif 非圧縮ファイルを生じるように、行った。各スキャンは、Photoshop(登録商標)CS 6で開いた。
【0098】
[098]ブランク片に画像試料から転写されたピクセルの数を、次の方法を用い、求めた:マジックワンド(設定:ポイント試料、アンチエイリアスはオフ、コンティギュアス(contiguous)はオフ)を、32%の許容度に設定し、インクの転移が全く起こっていない箇所を選択した(ほぼ完全な白色に対応する)。次いで、転写されたピクセルだけを含む選択を生成するように「選択(Select)」及び「反転(inverse)」を適用した。最後に、転写されたピクセルの数を、ヒストグラムを用い、求めた。
【0099】
[099]それぞれのスキャンで、一連の操作を、ブランク片の異なる箇所(完全な白)からランダムに開始して、3回繰り返し、転写されたピクセルの平均値を計算した(最終の精度:±5%)。実施例E1、E2、E3、E4、C1、C2、及びC3の各々について転写されたピクセルの平均数を、基準(C0a、C0b及びC0c)の転写ピクセルの平均数と比較し、表1a、1b及び1cに、差の%(Δ%)として記載した。これにより、表1a、1b及び1cの酸化乾燥磁性凹版インクの各々の乾燥性能が、基準(C0a、C0b及びC0c)と比較することによって示された。基準に比べて差の%が大きいほど、インクの乾燥性能は悪い。
【0100】
D)乾燥性能(C0c乾燥試料との比較)
[0100]上で測定された転写ピクセルの平均数が、完全に乾燥した試料(乾燥条件:室温で1週間)のピクセル数と比較された。この試料は、上記の印刷方法を用い、C0c(表1c)と同じインクを用いて印刷し、上記の方法を用いてスキャンした。試料C0a、C0b、C0c、E1、E2、E3、E4、C1、C2、及びC3の各々について、次の式:
【数1】
を用い、転写されたピクセルの平均数を、完全に乾燥した試料のピクセル数と比べた。
【0101】
[0101]これにより、表1a、1b及び1cの酸化乾燥磁性凹版インクの各々の絶対的乾燥性能が示された。完全に乾燥した試料に比べた%値が大きいほど、インクの乾燥性能は良好である。性能は、%値が95%を超えたとき、「優秀」と判断され、%値が90%〜95%の間であるとき、「良好」と判断され、%値が85%〜90%の間であるとき、「十分」と判断された。85%未満の全ての値は、「不十分」と判断された。
【表1a】
【0102】
[0102]表1aに見られるように、式(I)の1種又は複数のベンゾトリアゾール化合物を安定剤として含む酸化磁性凹版インク(E1a、E2)は、これらの化合物を含まない酸化磁性凹版インク(C0a)に比べて、10週間の自然エージング後だけでなく、Na
2S雰囲気における1週間の加速エージング後にもまた、可視光学特性の安定性(ΔE
*)の向上を示した。式(I)とは異なる安定剤を含む比較の酸化磁性凹版インク(C1)は、安定剤を含まないインク(C0a)に比べて、安定性の顕著な向上を示さなかった。
【0103】
[0103]E1a及びE2は、十分〜良好の乾燥性能を示すと同時に、可視及びNIRにおいて光学特性が向上した酸化磁性凹版インクからなる。
【表1b】
【0104】
[0104]表1bに見られるように、式(I)のさらなるベンゾトリアゾール化合物を安定剤として含む酸化磁性凹版インク(E1b、E3)は、これらの化合物を含まない酸化磁性凹版インク(C0b)に比べて、10週間の自然エージング後だけでなく、Na
2S雰囲気における1週間の加速エージング後にもまた、可視光学特性の安定性(ΔE
*)の向上を示した。式(I)とは異なる安定剤を含む比較の酸化磁性凹版インク(C2)は、安定剤を含まないインク(C0b)に比べて、安定性の向上を示さなかった。
【0105】
[0105]E1b及びE3は、良好〜優秀の乾燥性能を示すと同時に、可視及びNIRにおいて光学特性が向上した酸化磁性凹版インクからなる。
【表1c】
【0106】
[0106]表1cに見られるように、式(I)のさらなるベンゾトリアゾール化合物を含む酸化磁性凹版インク(E1c)は、これらの化合物を含まない酸化磁性凹版インク(C0c)に比べて、10週間の自然エージング後だけでなく、Na
2S雰囲気における1週間の加速エージング後にもまた、可視光学特性の安定性(ΔE
*)の向上を示した。式(I)とは異なる安定剤を含む比較の酸化磁性凹版インク(C3及びC4)は、安定剤を含まないインク(C0c)に比べて、安定性の顕著な向上を示さなかった。
【0107】
[0107]E1cは、良好な乾燥性能を示すと同時に、可視及びNIRにおいて光学特性が向上した酸化磁性凹版インクからなる。
【表2】