【実施例】
【0024】
次に、本発明を下記の実施例に基づいて更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0025】
<簡易電池Aによる起電力測定>
実施例1〜3
図1に示したように、正極2の50mm角、厚さ0.1mmの銅板の上に、正極電解質を2ml塗工して、正極電解質層7を形成した。正極電解質には、粘土鉱物のスメクトン−SA(商品名:クニミネ工業社製)の水分散液を用いた。この水分散液はスメクトン−SAの層間にナトリウムイオンを含むため、電解液となる。その後、その上に50mm角、厚さが70μmの半紙(セルロース)製の多孔質フィルムからなるセパレータ5を配した。さらに、セパレータ5の上に上記正極電解質層7と同様のスメクトン−SA水分散液を塗布して負極電解質層6を形成した。言い換えれば、負極電解質層6は粘土鉱物であるスメクトン−SAが添加されたものである。スメクトン−SAの水分散液の詳細は後述する。さらに負極電解質層6の上に50mm角、厚さ0.1mmのアルミニウム箔の負極3を配して、アルミニウム電池1の簡易電池Aを作製した。
【0026】
図2に示したように、簡易電池Aの起電力、すなわち正極2と負極3との電位差を、ポテンショスタット21:型番HA−151(北斗電工社製)を用いて測定した。
【0027】
実施例1は、上記簡易電池Aの作製方法において、負極電解質層6を、湿潤したスメクトン−SAとして水分を10.16質量%含んだ状態のスメクトン−SAを99.44mlの水に0.56gを分散させた。そして負極電解質層6を、スメクトン−SA水分散液に対するスメクトン−SAの割合が0.5質量%となるように作製した。
実施例2は、スメクトン−SA水分散液に対するスメクトン−SAの割合が2.0質量%となるように負極電解質層6を作製した以外、実施例1と同様にして作製した。
実施例3は、スメクトン−SA水分散液に対するスメクトン−SAの割合が5.0質量%となるように負極電解質層6を作製した以外、実施例1と同様にして作製した。
また、比較例1は、スメクトン−SA水分散液の代わりに蒸留水を用いた以外、実施例1と同様にして作製した。
上記実施例1〜3では、スメクトン−SAが負極電解質層6中に分散された状態となって、負極3に接触している。
【0028】
実施例1〜3の起電力の測定結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示したように、実施例1〜3は、0.70V以上の十分な起電力が得られた。一方、比較例1は起電力が低かった。
【0031】
<簡易電池Bによる起電力測定>
実施例4〜5
図3に示したように、負極3のアルミニウム箔の上に、直径5mmの円形の穴8を開けたポリエステルフィルム製の厚さ0.07mmのシール9を張り付けた。そして湿潤したスメクトン−SAとして水分を10.16質量%含んだ状態のスメクトン−SAを94.44mlの水に5.56g分散させた。このようにして、電解質層4を、スメクトン−SA水分散液に対するスメクトン−SAの割合が5.0質量%となるように作製した。言い換えれば、電解質層4は粘土鉱物であるスメクトン−SAが添加されたものである。このスメクトン−SA水分散液を穴8の中に0.2ml塗布して電解質層4を形成した。塗布後、スメクトン−SA水分散液の水分を下記の各方法により乾燥させてから、銅箔の正極2を設置して、アルミニウム電池1の簡易電池Bを作製した。
その後、下記の乾燥工程を経てから、アルミニウム電池1の簡易電池Bの起電力(電圧)を、ポテンショスタット21:型番HA−151(北斗電工社製)を用いて測定した。
【0032】
実施例4は、上記簡易電池Bの作製方法で簡易電池Bを作製した後、スメクトン−SA水分散液の水分を5分間ドライヤーにて乾燥させて作製した。ドライヤーには、松下電器産業社製のZIGZAG(商品名)を、出力450Wに設定し、風量Lowに設定して用いた。
実施例5は、上記簡易電池Bの作製方法で作製した後、スメクトン−SA水分散液の水分を、室温25℃、相対湿度40%の雰囲気中に24時間放置して自然乾燥させて作製した。
比較例2は、上記簡易電池Bの製造方法において、スメクトン−SA水分散液の水分を実施例4および5の試料をさらに19.8℃のドライルームにて4時間30分乾燥させて作製した。
上記実施例4〜5は、スメクトン−SAが電解質層4中に含まれた状態となって、負極3に接触している。
【0033】
実施例4、5の起電力の測定結果を表2に示した。実施例4は、n=10個の簡易電池Bを作製して、その起電力を測定した結果である。また、実施例5および比較例2は、それぞれn=20個の簡易電池Bを作製して、それぞれのアルミニウム電池1の起電力を測定した結果である。
【0034】
【表2】
【0035】
表2から明らかなように、実施例4および5は、0.6V以上の十分な起電力が得られた。また、電解液に粘土鉱物を添加することで、アルミニウム電池1の起電力が上昇することが確認できた。一方、水分がほぼ完全にない状態の比較例2では起電力が得られなかった。
【0036】
<簡易電池Cによる起電力測定>
実施例6
前記
図1に示したように、正極2の100mm角、厚さ0.1mmの銅板の上に、正極電解質を2ml塗工して、正極電解質層7を形成した。正極電解質には、粘土鉱物のスメクトン−SA(商品名:クニミネ工業社製)の水分散液を用いた。この水分散液はスメクトン−SAの層間にナトリウムイオンを含むため、電解液となる。正極電解質層7は、スメクトン−SA水分散液に対するスメクトン−SAの割合が2.0質量%となるように作製した。その後、その上に50mm角、厚さが0.07mmの半紙(セルロース)製の多孔質フィルムからなるセパレータ5を配した。
さらに、セパレータ5の上に上記正極電解質と同様のスメクトン−SA水分散液の負極電解質を塗布して負極電解質層6形成した。この負極電解質層6は、湿潤したスメクトン−SAとして水分を10.16質量%含んだ状態のスメクトン−SAを97.78mlの水に2.22gを分散させて作製した。このようにして、負極電解質層6を、スメクトン−SAの水分散液に対するスメクトン−SAの割合が2.0質量%となるように調整した。さらに負極電解質層6上に100mm角、厚さ0.1mmのアルミニウム箔の負極3を配して、アルミニウム電池1の簡易電池C(
図4参照)を作製した。
そして上記構成の簡易電池Cを2個作製して、
図4に示したように、2個の簡易電池Cを直列に繋いだ。
【0037】
直列接続した簡易電池Cの起電力を、ポテンショスタット21:型番HA−151(北斗電工社製)を用いて測定した。また、直列に繋いだ簡易電池Cに消費電力が70mWのLED(Light Emitting Diode)31を直列につないで、LED31の発光の可否も確認した。
【0038】
また、比較例3は、上記簡易電池Cの作製方法において、負極電解質層6および正極電解質層7の代わりに温度25℃の飽和食塩水を用いたこと以外は、実施例6と同様にして作製したものである。
【0039】
実施例6の起電力の測定結果およびLEDの点
灯の有無を表3に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
表3から明らかなように、実施例6は、起電力が十分な起電力が得られており、粘土鉱物の分散液を電解液として使用することで、飽和食塩水を用いた比較例3より高い起電力(電圧)が得られ、LED31が発光されることが確認できた。
一方、比較例3は、起電力が低いため、すなわち正極と負極との間の起電力が低いためにLED31を発光させることができなかった。
【0042】
<修飾電極を使用したアルミニウム電池の開回路電圧の測定>
実施例11〜26(試料No.4〜7、11〜14、18〜21、25〜28)
図5に示すように、負極3には、大きさが1mm×20mm、厚さが0.1mmのアルミニウム箔41を用いた。溶媒として、溶媒に対する粘土鉱物の割合が2.0質量%となるように粘土鉱物であるスメクトン−SA、スメクトン−STもしくはスメクトン−SWFを水分散させたものを作製した。または溶媒に対する粘土鉱物の割合が4.0質量%となるように粘土鉱物であるクニフィルD−36をトルエンに分散したものを作製した。その溶媒をアルミニウム箔41の一端辺から10mmの長さまで1mmの厚さに塗工した。その後、塗工した粘土鉱物の質量変化がなくなるまで乾燥させて、表面に粘土鉱物の層42が形成されたアルミニウム電極の負極3を作製した。表4に示したように、粘土鉱物には、クニフィルD−36、スメクトン−SA、スメクトン−ST、スメクトン−SWF(いずれも、商品名:クニミネ工業社製)のいずれかを用いた。クニフィルD−36は4級アンモニウム型のスメクタイトであり、スメクトン−SA、ST、SWFはナトリウム型のスメクタイトである。
正極2は以下のように作製した。まず直径2mm、長さ35mmの銀線を紙やすりで研磨して清浄な金属面を露出させた後、その表面を3M硝酸で前処理して水洗した。この前処理をした銀線の端部から20mmを塩酸溶液中に浸漬して、電流密度0.8mA/cm
2になる電流を15分間通電した。その結果、
図5に示したように、その銀線51表面に塩化銀層52を20μmの厚さに析出させ、銀−塩化銀電極(AgCl|Ag)の正極2を作製した。
【0043】
ビーカー11には飽和塩化カリウム水溶液11Aを入れ、ビーカー12には飽和硝酸カリウム水溶液12Aを入れた。さらにビーカー13には飽和硝酸カリウム水溶液13Aを入れた。飽和塩化カリウム水溶液11Aには銀−塩化銀電極の正極2の塩化銀層52の部分を10mm浸漬した。飽和塩化カリウム水溶液11Aと飽和硝酸カリウム水溶液12Aとを塩橋14で接続し、飽和塩化カリウム水溶液12Aと飽和硝酸カリウム水溶液13Aとを塩橋15で接続した。そして、アルミニウム電極の負極3の粘土鉱物の層42を飽和硝酸カリウム水溶液13Aに10mm浸漬した。このようにして、アルミニウム電池1(1D)を作製した。
【0044】
実施例11は、上記アルミニウム電池1Dの作製方法において、負極3のアルミニウム電極にクニフィルD−36を用いてコーティングして粘土鉱物の層42を作製した。
実施例12は、負極3のアルミニウム電極にクニフィルD−36の代わりにスメクトン−SAを用いた以外、実施例11と同様にして得た。
実施例13は、負極3のアルミニウム電極にクニフィルD−36の代わりにスメクトン−STを用いた以外、実施例11と同様にして得た。
実施例14は、負極3のアルミニウム電極にクニフィルD−36の代わりにスメクトン−SWFを用いた以外、実施例11と同様にして得た。
【0045】
実施例15〜18は、負極3側の飽和硝酸カリウム水溶液13Aの代わりに飽和硝酸亜鉛水溶液を用いた以外、それぞれ、上記実施例11〜14と同様にして得た。
実施例19〜22は、負極3側の飽和硝酸カリウム水溶液13Aの代わりに飽和硝酸リチウム水溶液を用いた以外、それぞれ、上記実施例11〜14と同様にして得た。
実施例23〜26は、負極3側の飽和硝酸カリウム水溶液13Aの代わりに飽和硝酸アンモニウム水溶液を用いた以外、それぞれ、上記実施例11〜14と同様にして得た。
なお、実施例11〜26では、粘土鉱物の層42を塗工した粘土鉱物の質量変化がなくなるまで乾燥させているが、粘土鉱物層42が各水溶液に浸漬されるため、アルミニウム電池1の状態では、粘土鉱物の層42は湿潤したものとなる。
【0046】
比較例11〜13は、クニフィルD−36に代えて、それぞれ、Cu型クニピア、Zn型クニピア、Al型クニピア(いずれも商品名:クニミネ工業社製)をコーティングしたものを用いた以外、それぞれ、上記実施例11と同様にして得た。比較例14〜16は、クニフィルD−36に代えて、それぞれ、Cu型クニピア、Zn型クニピア、Al型クニピアをコーティングしたものを用いた以外、それぞれ、上記実施例15と同様にして得た。また比較例17〜19は、クニフィルD−36に代えて、それぞれ、Cu型クニピア、Zn型クニピア、Al型クニピアをコーティングしたものを用いた以外、それぞれ、上記実施例19と同様にして得た。さらに比較例20〜22は、クニフィルD−36に代えて、それぞれ、Cu型クニピア、Zn型クニピア、Al型クニピアをコーティングしたものを用いた以外、それぞれ、上記実施例23と同様にして得た。
【0047】
また比較例23は、飽和塩化カリウム水溶液中に銀からなる正極とアルミニウムからなる負極を浸漬してアルミニウム電池を得た。さらに比較例24は、飽和塩化カリウム水溶液と飽和硝酸カリウム水溶液とを塩橋で接続し、飽和塩化カリウム水溶液に銀の正極を浸漬し、飽和硝酸カリウム水溶液にアルミニウムの負極を浸漬して、アルミニウム電池を得た。
【0048】
上記各アルミニウム電池1Dの起電力(正負極間の電位)を室温25℃の雰囲気で測定した。起電力の測定には、上記と同様に、ポテンショスタットを用いた。実施例11〜26の起電力の測定結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4から明らかなように、試料No.29、30の比較例23、24のアルミニウム電池の起電力は、アルミニウム単体の銀塩化銀電極に対する電位を示しており、その電位は−0.67Vであった。それに対し、層間イオンがナトリウムイオンである粘土鉱物スメクトン−SAでアルミニウム箔の負極表面を塗工した試料No.5、12、19、26、(実施例12、16、20、24)の電位が試料No.29の比較例の電位より低い電位となった。また粘土鉱物スメクトン−STでアルミニウム箔の負極表面を塗工した試料No.6、13、20、27(実施例13、17、21、25)の電位も試料No.29の比較例23のマイナス電位より低い電位となった。さらにスメクトン−SWNでアルミニウム箔の負極表面を塗工した試料No.7、14、21、28(実施例14、18、22、26)の電位も試料No.29の比較例23のマイナス電位より低い電位となった。すなわち、いずれの実施例も比較例23よりも大きな起電力が得られた。同様に層間イオンを4級アンモニウムイオンとした試料No.4、11、18、25(実施例11、15、19、23)であっても電位が比較例23より低くなることが確認できた。すなわち、実施例11、15、19、23も比較例23よりも大きな起電力が得られた。
したがって、ベントナイトおよびスメクタイトの層間イオンがナトリウムイオンもしくは4級アンモニウムイオンであることが、起電力を高めることに有効である。
さらに、硝酸カリウム水溶液、硝酸リチウム水溶液、硝酸亜鉛水溶液、硝酸アンモニウム水溶液でも同様の効果が発現できることが確認できた。
一方、Cu型クニピア、Zn型クニピア、Al型クニピアをアルミニウム電池にコーティングした比較例11〜22のアルミニウム電池では、十分な起電力を得ることができなかった。