(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
丸孔を有するダイと、前記ダイの丸孔内に配設された下パンチと、前記下パンチの上方において前記ダイの丸孔内に配設された上パンチと、前記ダイの丸孔内において前記下パンチの内側に配設されたセンターコアとを備えたサイジング用金型であって、
前記サイジング用金型によりサイジングされるワークの下面と当接する前記下パンチの上面で開口する空気路が当該下パンチに形成されており、前記空気路は圧縮空気源に接続されており、
前記ワークの下面に凹所が形成されており、前記空気路は、当該ワークが下パンチの上に配設されたときに、前記凹所内に開口するよう前記下パンチに形成されている、サイジング用金型。
【背景技術】
【0002】
鉄系粉末材料を成形及び焼結することで得られる焼結体に対し、例えば±20μm程度の比較的厳しい寸法精度が要求される場合、当該焼結体に対し、サイジング用金型を用いてサイジング処理が行われることがある。
【0003】
サイジング用金型は、例えば
図4に示されるように、丸孔30を有するダイ31と、前記ダイ31の丸孔30内に配設された下パンチ32と、前記下パンチ32の上方において前記ダイ31の丸孔30内に配設された上パンチ33と、前記ダイ31の丸孔30内において前記下パンチ32の内側に配設されたセンターコア34とを備えている。
図4に示される例は、キャップ形状のワーク(焼結体)W(
図5A及び
図5B参照)をサイジングするためのサイジング用金型であるので、当該ワークWの形状に対応して、上パンチ33は、径方向外側の第1上パンチ33aと、径方向内側の第2上パンチ33bとで構成されている。
【0004】
ワークWは、
図5A及び
図5Bに示されるように、キャップ形状を呈しており、中央に丸孔35を有する円盤状のベース部36と、このベース部36の周縁に立設された短円筒部37とを備えている。ベース部36の一方の面36a、すなわち短円筒部37が立設される側の面36bと反対側の面であって、サイジングされる際に下パンチ32の上面と当接する面には、凹所38が形成されている。なお、分かりやすくするために、
図5A及び
図5Bにおいて、凹所38の深さは誇張して描いている。
【0005】
ダイ31の上面には周辺部に複数の丸孔39が形成された円盤状のテーブルブッシュ40が配設されている。テーブルブッシュ40は回転自在であり、図示しない治具により丸孔39内に挿入されたワークWを下パンチ32の上方まで移動させる。サイジングが完了すると、テーブルブッシュ40は、当該サイジングが完了したワークWをワーク取り出し位置まで移動させる。このワーク取り出し位置では、ダイ31に開口が形成されており、この開口から下方に落下したワークWは当該開口の下方に配設されているベルトコンベアに搭載されて次工程に送られる。
【0006】
サイジングに際し、寸法を矯正するために、ワークWには潤滑油が塗布される。ワークWへの潤滑油の塗布は、通常、当該ワークWを潤滑油が収容された容器中に浸漬することで行われる。
【0007】
下パンチ32には、前記凹所38に潤滑油が溜まりワークWと下パンチ32とが油膜を介して密着するのを防止するために、当該凹所38に通じる油路41が形成されている。凹所38に溜まった潤滑油は油路41を介して外部に排出される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示が解決しようとする課題]
図4に示される従来のサイジング用金型では、油路41によってワークWと下パンチ32間の潤滑油を取り除こうとしているが、その効果は十分ではなく、ワークWを上パンチ33で加圧することで、ワークWと下パンチ32とが張り付いてしまい、ワークWを上方に移動させ、テーブルブッシュ40によって当該ワークWをワーク取り出し位置まで移動させようとしても、テーブルブッシュ40がワークWにあたって回転できないことがある。このことは、受け面積が大きい、分割型でない単一の下パンチ32を用いる場合に特に起こりやすい。
【0012】
テーブルブッシュ40には、事故防止のためトルクリミッターが内蔵されているが、ワークWと下パンチ32との付着力が大きいと、当該トルクリミッターが作動して、テーブルブッシュ40が停止してしまう。テーブルブッシュ40が停止すると連続作業に支障が生じ、生産効率は大きく低下する。
【0013】
そこで、ワークの離型性を向上させることができるサイジング用金型及びサイジング方法を提供することを目的としている。
【0014】
〔本開示の効果〕
本開示によれば、ワークの離型性を向上させることができる。
【0015】
〔本発明の実施形態の説明〕
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係るサイジング用金型(以下、単に「金型」ともいう)は、
(1)丸孔を有するダイと、前記ダイの丸孔内に配設された下パンチと、前記下パンチの上方において前記ダイの丸孔内に配設された上パンチと、前記ダイの丸孔内において前記下パンチの内側に配設されたセンターコアとを備えたサイジング用金型であって、
前記サイジング用金型によりサイジングされるワークの下面と当接する前記下パンチの上面で開口する空気路が当該下パンチに形成されており、前記空気路は圧縮空気源に接続されている。
【0016】
本態様に係る金型は、圧縮空気源に接続された空気路が下パンチに形成されており、この空気路は、サイジングされるワークの下面と当接する下パンチの上面で開口している。このため、ワークの下面と下パンチの上面との間に圧縮空気を供給することができ、当該ワークと下パンチとの間に形成された潤滑油の油膜を破るないしは破壊することができる。その結果、ワークを下パンチから剥がれ易くすることができる。換言すれば、ワークの離型性を向上させることができる。
【0017】
(2)上記(1)の金型において、前記ワークを前記下パンチの上面に配設する円盤状のテーブルブッシュが前記ダイの上面に配設されており、
前記テーブルブッシュの周辺部に前記ワークを収容可能な複数の貫通孔が形成されているものとすることができる。この場合、ワークを下パンチから剥がれ易くすることができるので、テーブルブッシュの回転が阻害されることがなくなる。その結果、連続作業に支障が生じるのを防止することができる。
【0018】
(3)上記(1)又は(2)の金型において、前記ワークの下面に凹所が形成されており、前記空気路は、当該ワークが下パンチの上に配設されたときに、前記凹所内に開口するよう前記下パンチに形成されていることが望ましい。この場合、凹所内に溜まった潤滑油を圧縮空気により除去することができ、ワークを下パンチから剥がれ易くすることができる。
【0019】
本発明の他の態様に係るサイジング方法は、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのサイジング用金型を用いてワークをサイジングする方法であって、
前記ワークを潤滑油中に浸漬する工程、及び
表面に潤滑油が塗布されたワークを前記サイジング用金型でサイジングする工程
を含んでおり、
前記ワークのサイジング工程が完了し前記下パンチを上昇させる際に前記圧縮空気源から前記空気路に圧縮空気を供給してワークと下パンチとの当接面の油膜の少なくとも一部を破壊する。
【0020】
本態様に係るサイジング方法は、圧縮空気源に接続された空気路が下パンチに形成されており、この空気路は、サイジングされるワークの下面と当接する下パンチの上面で開口している。このため、ワークの下面と下パンチの上面との間に圧縮空気を供給することで、当該ワークと下パンチと当接面の潤滑油の油膜を破るないしは破壊することができる。その結果、ワークを下パンチから剥がれ易くすることができる。換言すれば、ワークの離型性を向上させることができる。ことができる。
【0021】
〔本発明の実施形態の詳細〕
以下、本発明の金型及びサイジング方法を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る金型1の断面説明図である。金型1は、鉄系粉末材料を成形及び焼結することで得られる焼結体の寸法精度を向上させるために、当該焼結体にサイジング処理を施す際に用いられる金型であり、ダイ2と、下パンチ3と、上パンチ4と、センターコア5とを備えている。本実施形態に係る金型1は、ダイ2上でワークWを移動させるためのテーブルブッシュ6を備えている。
【0023】
ダイ2は、サイジング処理を行うための丸孔7を有しており、上方から見たときに当該丸孔7内に位置するように下パンチ3、上パンチ4及びセンターコア5が配設されている。センターコア5は、丸孔7の中心に配設されている。
【0024】
上パンチ4は、下パンチ3の上方に配設されており、本実施形態における上パンチ4は、ワークWの形状に対応して、径方向外側の第1上パンチ4aと、径方向内側の第2上パンチ4bとで構成されている。
【0025】
ワークWは、
図5A及び
図5Bに関連して説明したワークWと同じ構成であり、キャップ形状を呈している。ワークWは、中央に丸孔35を有する円盤状のベース部36と、このベース部36の周縁に立設された短円筒部37とを備えている。ベース部36の一方の面36a、すなわち短円筒部37が立設される側の面36bと反対側の面であって、サイジングされる際に下パンチ32の上面と当接する面には、凹所38が形成されている。
【0026】
テーブルブッシュ6は、
図2に示されるように、円盤形状を呈している。テーブルブッシュ6の周辺部には複数の丸孔6aが等間隔に形成されている。本実施形態では、8つの丸孔6aが形成されている。テーブルブッシュ6は回転自在であり、図示しない自動治具により丸孔6a内に挿入されたワークWを下パンチ3の上方まで移動させる。ワークWは、
図2において、例えばSで示される供給位置で丸孔6a内に挿入される。
【0027】
サイジングが完了すると、テーブルブッシュ6は、当該サイジングが完了したワークWをワーク取り出し位置Tまで移動させる。このワーク取り出し位置Tでは、ダイ2に開口が形成されており、この開口から下方に落下したワークWは当該開口の下方に配設されているベルトコンベアに搭載されて次工程に送られる。
【0028】
下パンチ3には空気路8が形成されている。この空気路8の一端は、下パンチ3の下部に形成された凹所9で開口している。一方、空気路8の他端は下パンチ3の上面3a、より詳細には、当該上面3aにおける、ワークWに形成された凹所38と対向する位置で開口している。この上面3aに、ワークWのベース部36の面36aが当接する。
【0029】
前記下パンチ3の凹所9にはコネクター10が装着されており、このコネクター10に圧縮空気源11からのエア配管12が接続されている。
図1に示される例では、分かりやすくするために1本の空気路8だけが描かれているが、本発明において、下パンチ3に形成される空気路8の数は、特に限定されず、例えば下パンチ3と当接するワークWの面36aに形成される凹所38の数に対応した数だけの空気路8を形成することができる。ワークWの面36aに2つの凹所38が形成されている場合、2本の空気路8を下パンチ3に形成することができる。複数の空気路8を下パンチ3に形成する場合、下パンチ3の外部でエア配管12を複数に分岐させ、分岐させたエア配管12を複数の空気路8にそれぞれ接続することができる。これにより、単一の圧縮空気源11からの圧縮空気を下パンチ3の複数の空気路8に供給することができる。
【0030】
図3A〜
図3Dは、前述した金型1を用いてサイジング処理を行う工程を示す断面説明図である。
サイジングに際し、寸法を矯正するために、ワークWには潤滑油が塗布される。ワークWへの潤滑油の塗布は、通常、当該ワークWを潤滑油が収容された容器中に浸漬されることで行われる。
【0031】
潤滑油が塗布されたワークWは、自動治具によってテーブルブッシュ6の供給位置Sに位置する丸孔6a内に挿入される。丸孔6a内に挿入されたワークWは、テーブルブッシュ6の回転により順次サイジング処理が行われる位置まで移動する。本実施形態では、ワークWは、ダイ2の上面2aを摺動して所定位置まで移動する。
【0032】
待機状態において、下パンチ3は、当該下パンチ3の上面3aがダイの上面2aとほぼ面一になる位置まで上昇している。一方、上パンチ4は上昇位置にある。この待機状態のときに、
図3Aに示されるように、テーブルブッシュ6の回転により丸孔6a内のワークWがサイジングのための所定位置、すなわち下パンチ3の上方まで移動する。このとき、ワークWの下面と下パンチ3の上面3aとは当接した状態にある。
【0033】
ついで、上パンチ4が下降してワークWと当接する。より詳細には、第1上パンチ4aの下面4a1がワークWの短円筒部37の上面37aと当接し、第2上パンチ4bの下面4b1がワークWのベース部36の上面36bと当接する。その後、上パンチ4はさらに下降し、当該下降に合わせて下パンチ3も下降する。上パンチ4及び下パンチ3は、
図3Bに示されるように、所定位置まで下降し、その状態で上パンチ4による加圧処理が行われ、ワークWの全面のサイジング処理が行われる。
【0034】
サイジング処理が完了すると、まず、
図3Cに示されるように、上パンチ4が上方の待機位置まで上昇する。このとき、ワークWは、サイジング処理の結果、ダイ2及びセンターコア5に保持された状態にあるので、上パンチ4が上昇するときに当該上パンチ4に付着して上昇することはない。
【0035】
ついで、
図3Dに示されるように、下パンチ3が、当該下パンチ3の上面3aがダイ2の上面2aとほぼ面一になる位置まで上昇する。下パンチ3の空気路8(
図1参照)には、圧縮空気源11からの圧縮空気が供給された状態にあるので、下パンチ3が上昇し、当該下パンチ3の上面3aがダイ2の上面2aとほぼ面一になると、差圧により、圧縮空気が下パンチ3の上面3aとワークWの下面との間のわずかな隙間から外部に開放される。その結果、下パンチ3の上面3aとワークWの下面との間に形成された油膜(ワークWの凹所38に溜まっていた潤滑油を含む)の少なくとも一部が破壊される。これにより、ワークWが下パンチ3から剥がれ易くなる。換言すれば、ワークWの離型性が向上する。
【0036】
圧縮空気源11から空気路8に供給される圧縮空気の空気圧は、本発明において、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜3.0kg/cm
2程度である。空気圧が0.5kg/cm
2よりも小さくなると、油膜を破壊することができない場合がある。一方、ワークWの重量にもよるが、空気圧が3.0kg/cm
2よりも大きくなると、ワークWが飛び上がって下パンチ3等と接触することで傷つく恐れがある。
【0037】
下パンチ3が所定位置まで上昇した後に、テーブルブッシュ6が回転し、サイジングが完了したワークWを下パンチ3の上から移動させるとともに、次のワークWを当該下パンチ3の上に移動させる。
前述した工程を繰り返すことで、ワークWのサイジング処理が連続的に行われる。本実施形態では、ワークWの離型性が向上しているので、テーブルブッシュ6の回転時に当該ワークWが下パンチ3に付着して、テーブルブッシュ6が停止することがない。その結果、連続作業が阻害されることがなく、生産性を向上させることができる。
【0038】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、ワークWをダイの上で移動させるためにテーブルブッシュを用いているが、かかるテーブルブッシュを用いることなくサイジングを行う場合にも本発明を適用することができる。
【0039】
また、前述した実施形態では、ワークWとして、鉄系粉末材料を成形及び焼結することで得られる焼結体を用いているが、潤滑油を塗布した後に金型を用いてサイジングをする部材であれば、焼結体以外の部材に対しても、本発明を適用することができる。