特許第6870193号(P6870193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870193ガス中の硫黄溶解度を測定するための方法及びシステム
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  • 特許6870193-ガス中の硫黄溶解度を測定するための方法及びシステム 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870193
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ガス中の硫黄溶解度を測定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/00 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   G01N33/00 C
【請求項の数】24
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-529592(P2018-529592)
(86)(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公表番号】特表2019-501381(P2019-501381A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】US2017012140
(87)【国際公開番号】WO2017120199
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】14/989,660
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(74)【代理人】
【識別番号】100178445
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194892
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 麻美
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】シェリク,アブデルモウナム
(72)【発明者】
【氏名】トライディア,アブデルラザク
(72)【発明者】
【氏名】ラシード,アブドゥルジャリル
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,アーノルド
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−197306(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105004644(CN,A)
【文献】 特開平03−242530(JP,A)
【文献】 E. Brunner et al.,Solubility of Sulfur in Hydrogen Sulfide and Sour Gases,Society of Petroleum Engineers Journal,1980年,Vol.20, No.5,pp.377-384
【文献】 C.Y.Sun et al.,Experimental modeling studies on sulfur solubility in sour gas,Fluid Phase Equilibria,2003年,Vol.214,pp.187-195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室装置内の試験温度及び試験圧力で試験ガスの硫黄溶解度を測定するための方法であって、
前記試験ガスを水で飽和させることと、
前記試験ガスを第1の導管内に流すことであって、前記第1の導管は、元素硫黄で充填され、前記試験温度で前記試験ガス中の元素硫黄の自然平衡溶解レベルを超えた前記試験ガスによる元素硫黄の摂取をもたらすために十分であるような、第1の温度に維持される、前記流すことと、
元素硫黄を含有する前記試験ガスを第2の導管内に導入することであって、前記第2の導管は、前記第1の導管と流体連通し、前記試験ガスの前記温度を前記試験温度に等しい温度まで下げるために十分であるような、第2の温度に維持され、それによって、前記試験ガス中の元素硫黄の量は、前記試験温度で前記試験ガス中の自然平衡溶解レベルまで減らされる、前記導入することと、
前記試験ガスを前記第2の導管と流体連通する第3の導管内に流すことであって、前記第3の導管の少なくとも一部は、前記第3の導管の一部の中に前記試験ガスからの前記元素硫黄の堆積をもたらすために十分な第3の温度に維持される、前記流すことと、
前記第3の導管内に堆積された前記元素硫黄の量に基づいて、前記試験ガスの前記硫黄溶解度を計算することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記実験室装置は、前記試験ガスを含有するガス取扱装置との直接的接触がない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験ガスは、CHを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験ガスは、CO及びHSをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記硫黄溶解度を前記計算するステップは、
選択実行時間中に前記第3の導管内に堆積された前記硫黄を計量することと、
前記選択実行時間中に前記第3の導管を通過する前記試験ガスの体積を測定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の導管は、U型管を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の温度は、最大95℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試験温度は、前記第1の温度よりも10〜15℃低い、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の温度は、約0℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
試験温度で試験ガスの硫黄溶解度を測定するためのシステムであって、
前記試験ガスの源と、
前記試験ガスの前記源と流体連通する第1のステーションであって、前記第1のステーションは、元素硫黄で充填される第1の導管を備え、前記第1の導管は、前記試験ガスが前記第1の導管を通って流れるとき、前記試験ガスによる前記元素硫黄の摂取をもたらす第1の温度に維持され、前記元素硫黄の摂取は、前記試験温度で前記試験ガス中の前記元素硫黄の自然平衡溶解レベルを超える、前記第1のステーションと、
前記第1の導管と流体連通する第2の導管を備える第2のステーションであって、前記第2の導管は、前記試験ガスの前記温度を前記試験温度まで下げる第2の温度に維持され、それによって、前記試験ガス中の前記元素硫黄の量は、前記試験温度で前記試験ガス中の自然平衡溶解レベルまで減らされる、前記第2のステーションと、
前記第2の導管と流体連通する第3の導管を備える第3のステーションであって、前記第3の導管は、前記試験ガスからの前記元素硫黄の堆積を生じさせる第3の温度に維持され、前記第3の導管は、前記堆積された元素硫黄が前記システムを通った前記試験ガスの測定された流量に基づいて前記試験ガスの前記硫黄溶解度を計算するために集められかつ計量されることができるように構成される、前記第3のステーションと、
前記試験ガスの前記源と液体連通し前記第1の導管の上流にある第4の導管であって、前記第4の導管において、前記試験ガスは、前記第1のステーションに入る前に前記第4の導管を通って流れるとき、水で飽和している、前記第4の導管と、
を備える、前記システム。
【請求項11】
前記システムは、連続流動ループシステムである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のステーションは、前記第1の導管を通って流れる前記試験ガスの温度を上昇させるための第1の媒体を含み、前記第2のステーションは、前記試験ガスの前記温度を前記試験温度まで減少させるための第2の媒体を含み、前記第3のステーションは、前記試験ガスの前記温度を減少させることによって、硫黄飽和試験ガスを急冷するための第3の媒体を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1、第2、及び第3の媒体は、それぞれの第1、第2、及び第3の溶液槽内部に含有される水を含み、前記第1、第2、及び第3の導管は、それぞれ、前記第1、第2、及び第3の媒体によって包囲される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第4の導管は、前記第2のステーション内部に位置する、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の導管は、直列に配列され、かつ前記試験ガスの前記温度を上昇させるために加熱される第1の媒体内部に含有される、複数の第1の管を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の第1の管は、蛇行配列で構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2の導管は、直列に配列され、かつ前記試験ガスの前記温度を前記試験温度まで減少するために冷却される第2の媒体内部に含有される、複数の第2の管を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の第2の管は、蛇行配列で構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第3の導管は、前記試験ガスを前記試験温度に維持するための流入区分と、前記堆積された硫黄を集めるための捕捉区分と、前記試験ガスを前記第3のステーションから搬送するための、前記捕捉区分の下流にある流出区分とを備え、前記流入区分及び前記流出区分は、前記捕捉区分の上方の高い位置にある、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
前記捕捉区分は、U型管を備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記システムを通る前記試験ガスの流量を計算するための流量計をさらに含み、これによって、所与の実験実行に関する試験ガスの合計体積を計算することを可能にする、請求項10に記載のシステム。
【請求項22】
前記試験ガスが前記第1、第2、及び第3のステーションのそれぞれを通って流れるとき、所定の範囲内で前記試験ガスの圧力を維持するための圧力調整器をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項23】
前記試験ガスの前記温度を監視するための及び前記試験ガスの前記温度を調節するための、温度調節器をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項24】
前記試験ガスの源は、着目するガス田から集められた酸性ガスのタンクを備える、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硫黄堆積問題が予期される典型的な石油生産環境またはガス流と、石油及びガス以外の産業とで見られるガス中に含有されるppmレベルの元素硫黄(または、水銀等の他の微量元素)から堆積される少量(下位mgレベル)の元素硫黄(または、水銀等の他の微量元素)を集めるための方法及び装置を対象とする。集められた硫黄量を判定するための好適な分析化学技術が使用され、この結果から、固定温度、固定圧力、及び固定ガス組成でのガス中の硫黄の溶解度を計算することができる。
【背景技術】
【0002】
硫黄の管理について、酸性ガス及び天然ガスの操作に関する未解決問題が継続している。多くの酸性ガス操作では、ガス中の元素硫黄蒸気は、多数の問題を生じる酸性ガスシステムに沿った種々の場所に凝縮及び堆積する可能性がある。例えば、ガスパイプライン及び再処理施設内の硫黄堆積は、パイプ内の腐蝕速度を増加させ、ガスラインの正常の操作を遮断する漏出または閉塞を生じさせる可能性がある。そのとき、後で行われる硫黄堆積の除去及び廃棄は、安全及び環境に関する懸念を生じさせる可能性がある。硫黄堆積の除去と関連付けられる問題に起因して、ガスラインの構造物(例えば、パイプライン、圧力容器等)内部で、後で発生する硫黄堆積の場所を正確に予測し、また堆積する可能性がある硫黄の最大量を予測する方法が必要である。
【0003】
石油及びガス生産技術の専門家は、概して、元素硫黄が多くの場合、貯留ガス中の飽和レベルまたは有意レベルのいずれかで見られる事実を十分に認知している。また、専門家は、概して、ガスの圧力減少または温度減少がガスから発生する硫黄の沈殿及び堆積をもたらす可能性がある事実を認知している。代替として、専門家が知ることが非常に困難なものとして、専門家が堆積硫黄を発見することを予想し得る施設内の場所であり、その場所では、硫黄の量がどれくらい堆積しているか予想され得る。知識不足のために、石油及びガス生産の技術者は、その施設内の可能性のある硫黄堆積及び生じる可能性がある後発の問題をどのように管理するかを判定することが困難になる。必要事項及び現行技術で不足している事項は、石油及びガス生産の人員によって使用されるために開発された硫黄堆積予測モデルが挙げられる。油田ガス操作のために調整された、そのようなモデルを作るために、以下の3種類のデータが必要である。
1.ガスの組成、圧力、及び温度に応じて、ガス取扱施設に入るガス中で分解された硫黄の量
2.温度低下に応じて、ガス中で分解された硫黄の量
3.圧力低下に応じて、ガス中で分解された硫黄の量
【0004】
現行技術を使用して、ガス取扱施設に入るガス中の硫黄の量を判定することは困難である。しかしながら、温度低下または圧力低下に応じて、ガス中で分解された硫黄の量を判定することは、現行技術では費用効率が高くなく、または、かなり実現可能ではない。以下の段落では、この詳細が説明される。
【0005】
より具体的には、現行技術では、ガス中の硫黄の正確な判定のための手段を提供することを試みる、利用可能である研究室ベースの技術が存在する。全ての現行技術の研究室ベースの技術は、ガスの体積が要求温度で制御された固定体積の平衡セルまたは加圧滅菌器の内側の要求圧力まで加圧されるクローズドシステムを利用する。任意の油田ガス環境をシミュレーションすることは十分に可能であるが、固定体積のクローズドシステムは、ガス中の硫黄の正確な判定のための手段を提供することは不可能である。現行技術の研究室ベースの技術による欠陥は、固定体積のクローズドシステムに直接起因する。例及び説明は、この点を明らかにするであろう。
【0006】
本例については、研究者が典型的な石油及びガス生産環境で見られる100%のメタンガス流に関する硫黄堆積予測モデルを作ろうとしていることが想定される。したがって、ガス生産施設で典型的に見られる圧力及び温度でメタンガス中の元素硫黄の正確な判定は、モデルを作るために必要である。メタンを含有するガス生産施設における典型的な状態の1つの設定は、メタンが300psiaの圧力及び45°Cの温度でのものである。その試験を行うために、研究スタッフは、典型的な現行技術、すなわち、固定体積の閉鎖オートクレーブ容器を使用するであろう。その利点をもたらすために、研究スタッフは、その容器の体積が大きいほど、その試験結果がより改善するであろうことを認識している。したがって、研究スタッフは、10リットルの体積の非常に大型の固体体積容器を使用することを決定することがある。300psiaの圧力及び45°Cの温度の状態の下、メタンガスは、典型的には、0.01ポンド/百万立方フィートの元素硫黄のガスを含有し得る。現行技術の分析化学技術は、正確及び精密な判定のために、最小の約0.1ミリグラムの堆積された元素硫黄を必要とする。したがって、これらの圧力及び温度の状態の下、0.1ミリグラムの元素硫黄を集めるために必要とするメタンガスの体積は、標準気圧(1atm)で約625リットルであろう。300psiaの圧力では、これは、約31リットルのガスである。試験容器が10リットルの体積であることを考慮すると、分析技術の要求を満たすために、31リットルのガスを10リットルの容器から取り出すことが不可能であることは明白である。これは、研究スタッフが、本例で、典型的な石油及びガス生産環境で見られるメタンガスに関する硫黄堆積予測モデルを開発することを不可能にする。大型のオートクレーブ容器を使用し得ることを討論する場合がある。これは真実である場合があるが、大型の圧力容器を使用するコスト及び複雑性は、驚異的な速さで高くなる。しかしながら、現行の実験室技術の欠陥を示す別の微小な点がある。ガス中の硫黄の量を正確かつ精密に判定するためには、分析的化学分析用の適切な硫黄を集めるために、ガスの十分な体積をサンプリングする必要がある。上記の例では、これは、約31リットルであった。サンプルガスの体積が1ミリリットルまたは31リットルであるかどうかに関わらず、固定体積容器からガスの物理的取り出しを表すものである。1ミリリットルのガスが固定体積容器から取り出される場合、同じ体積を占めるガスがより少なくなり、容器内側の圧力は減少するはずである。ガス中に含有される元素硫黄の飽和レベルがガスの圧力に正比例することが確立されている。したがって、ガスを現行技術の固定体積容器から取り出すとき、容器内側の圧力が降下し、ひいては、ガス中に含有される硫黄の量も減少するであろう。この問題は、現行技術の研究室ベースの固定体積容器によって、克服されることができない。
【0007】
前述の例が本来は例示であり、従来技術の欠陥を例証するために提示されることが認識されるであろう。
【0008】
また、当技術分野では、石油及びガス生産エンジニアに利用可能である現場可能技術が存在し、この技術は、ガス中の硫黄の正確な判定のための手段を実現可能に提供することができる。この現場ベースの試験の状況では、大量のガスが正常に利用可能であるために、正確になる可能性のある結果を取得することができ、上記に説明された実験室ベースの測定の制限を克服する。しかしながら、これらの方法は、それら自体によって、1つの特定の場所でガス中の硫黄の量を把握することにより、エンジニアに非常に限れた知識を提供するために、一般的には使用されない。エンジニアは、測定場所から上流でガス中の硫黄の量を把握せず、硫黄が測定場所から下流にある施設内で沈殿及び堆積し得るかどうか、または、そこに、どれくらい硫黄が沈殿及び堆積するかを予測する能力を有しないであろう。理論的には、エンジニアリングスタッフは、スタッフ自身の硫黄堆積予測モデルを作る目的で、圧力及び温度を変動させる複数の場所で、ガス流中の硫黄の量を判定し得る。しかしながら、それを行うコスト、時間、安全性問題、及び複雑性について、完全に実行不可能な点に対して扱いにくいであろう。
【0009】
要約すれば、必要事項及び現行技術で不足している事項は、石油及びガス生産の人員によって使用されるために開発された硫黄堆積予測モデルが挙げられる。油田ガス操作のために調整された、そのようなモデルを作るために、以下の3種類のデータが必要である。
【0010】
1.ガスの組成、圧力、及び温度に応じて、ガス取扱施設に入るガス中で分解された硫黄の量
2.温度低下に応じて、ガス中で分解された硫黄の量
3.圧力低下に応じて、ガス中で分解された硫黄の量
【0011】
それは、連続ガス流動能力を用いて、これらの3つのデータを正確かつ精密に生成することが、本発明の表現された意図であり、本発明は、石油及びガス生産の人員による使用のために開発された硫黄堆積予測モデルを作るための手段を提供するであろう。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、硫黄堆積に関する可能性に関する、ガス田及びガス施設の評価に関し、より具体的には、新しい探索フィールドからのガス等の、着目ガスの硫黄溶解度を測定するための連続ガス流動システム及びプロセスに関する。
【0013】
本発明は、実験室タイプ装置内の選択された試験温度及び試験圧力で試験ガスの硫黄溶解度を測定するための方法及びシステムを対象とする。着目ガス(「試験ガス」)の硫黄溶解度を判定するための1つの例示的方法は、試験ガスを、本システムの第1のステーションに位置することができる第1の導管内に流すステップを含む。第1の導管は、元素硫黄で充填され、試験ガスが第1の導管を通って流れるときに、試験ガスによる元素硫黄の摂取をもたらすために十分であるような、少なくとも第1の温度に維持される。試験ガスによる元素硫黄の摂取は、試験温度で試験ガス中の元素硫黄の自然平衡溶解レベルを超えるようになる。
【0014】
本方法は、試験ガスを第2の導管に導入するステップをさらに含む。第2の導管は、第1の導管と流体連通し、試験ガスの温度を試験温度に等しい温度まで下げるために十分であるような、少なくとも第2の温度に維持され、それにより、試験ガス中の元素硫黄の量は、試験温度で試験ガス中の自然平衡溶解レベルまで減らされる。続いて、飽和試験ガスは、第2の導管と流体連通する第3の導管内に流れる。第3の導管の少なくとも一部は、第3の導管の一部の中に飽和試験ガスからの元素硫黄の堆積をもたらすために十分な第3の温度に維持される。試験ガスの硫黄溶解度は、第3の導管内に堆積された元素硫黄の量及び所与の実験実行で本システムを通過する試験ガスの体積に基づいて計算される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示のさらなる態様は、添付の図面と併せて解釈されるとき、下記に説明されるその種々の実施形態の詳細な説明を精査して、より容易に理解される。
図1】本願の1つ以上の実施形態による、ガス中の硫黄溶解度を測定するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、実験室タイプ環境または他の試験場所/実験的設定におけるガス流中の硫黄溶解度を判定するためのシステム及び方法を詳述する。従来の実験室方法は、ガスの既知の体積が平衡セルまたは加圧滅菌器の内側で特定の圧力まで加圧されるクローズドシステム(すなわち、気体が流れない)を利用する一方で、本発明のシステム及び方法は、連続ガス流動システム(すなわち、機器を通る連続ガス流動)を利用する。連続ガス流動の使用により、本発明において、正確かつ精密な測定のために十分な硫黄を集めることが可能になるが、閉鎖容器または密封容器は使用されない。より具体的には、長期間(例えば、数時間、数日間、数週間)、試験圧力及び試験温度で、ガスを連続的に流す能力は、ガス中の硫黄摂取が極めて低いと予想される低圧力及び低温でのガスでさえも、ガスの硫黄溶解度のかなり正確な分析を可能にする。本発明の別の利点として、ガスが自然に流れる実際のガスラインの状態をより良好にシミュレーションするその能力が挙げられる。さらに、本発明は、広範囲のパラメータ(例えば、ガス組成、温度、圧力)下で任意のガスの硫黄溶解度及び堆積の予測に関する数値計算モデルを開発することを補助することができる。
【0017】
本願の実験室システム及び方法は、特定のガス流に関する元素硫黄の堆積及び溶解度(例えば、100万分の1[ppm]レベル)を測定するために使用されることができる。1つ以上の実施形態では、着目ガス流は第1の導管に入り、そのガス流は、高レベルの硫黄で十分に満たされる。着目ガス流は、例えば、硫黄関連問題をもたらす、新しいガス田またはオペレータに既知の任意の他のガス流からの標的ガスを含み得る。そのとき、高レベルの元素硫黄を含有するガス流は、試験温度が第1の導管の温度よりも低くなる(ただし、同じ圧力で)第2の導管まで流れる。この第2の導管内の温度の降下は、第1の導管からの過剰硫黄を堆積させる。第2の導管から出るガスは、試験温度及び試験圧力において硫黄で飽和する。第2の導管から出た後で、硫黄飽和ガス流は第3の導管内に流れ、その状態では、ガス流中の硫黄を凝縮させ、かつ堆積場所に沈殿させるためには十分なものある。そのとき、ガス流の硫黄溶解度を計算するために、本システムを通過した堆積硫黄の重さ及び試験ガスの合計体積を判定することができる。
【0018】
本願のシステム及び方法は、低温度及び/または低圧を含む、変動温度及び変動圧力で乾性ガス及び湿性ガスの両方の元素硫黄の溶解度の判定を可能にする。特に、本発明のシステム及び方法は、連続ガス流動システム(すなわち、機器を通る連続ガス流動)を利用する。連続ガス流動の使用により、本発明において、正確かつ精密な測定のために十分な硫黄を集めることが可能になるが、従来の実験室の方法(閉鎖容器または密封容器)は使用されない。
【0019】
より具体的には、従来の実験室の方法は、かなり小さなサイズ(典型的には、1リットル以下の体積)の密封圧力容器(連続ガス流動ではない)を利用する。試験が行われる環境は、圧力容器の内側で再現される。ある程度の時間後、容器からのガスの小さなサンプルを取り出し、それに含有する硫黄に関して分析する。従来の方法の1つの問題は、その真の自然平衡レベル下での、このガス中に含有する硫黄量が驚くほど小さい(例えば、低ppm(100万分の1))が挙げられる。したがって、これらの従来の方法によって集められた硫黄量は、非常に小さいので、集められた量を判定することさえも、まして、自信を持って硫黄を検出することに関する膨大な分析的課題をもたらす。
【0020】
本願のシステムは、固定レベルの圧力、温度、及びガス組成でガス中の自然平衡レベルの元素硫黄を達成する能力を有する。本システムはまた、典型的には、油田環境(硫化水素を含有するものを含む)で見られる任意のガス組成と、他の種類のガス組成とにより機能する能力を有する。
【0021】
本発明の別の利点として、ガスが自然に流れる実際のガスライン機器の状態をより良好にシミュレーションするその能力が挙げられる。先行技術を上回る本システムのさらなる別の利点として、水飽和ガス流を使用できることが挙げられる。より具体的には、少なくとも1つの実施形態では、本システムは、試験圧力及び試験温度でガスを水で飽和することができる。油田環境で典型的に見られるガス組成の元素硫黄の主要な源は、石油及びガスを含有する地下の地盤形成物内で自然に発生する硫黄からもたらせたものである。水はまた、正常に、石油及びガスを含有する地下の地盤形成物内に存在し、したがって、地下の地盤形成物から生産されたガスは、正常に、水及び硫黄の両方で飽和される。ガス中の水飽和は、ガス中の硫黄の溶解レベルに大きな影響をもたらし得る。このように、湿性ガス及び乾性ガスの両方の硫黄溶解度を判定する能力は、既存技術の改善されたものである。ここで、実験室タイプ環境のガス流中の硫黄溶解度を測定するための参照システム及び参照方法は、本システム及び本方法の1つ以上の例示の実施形態及び/または配列が示される添付の図面を参照してより完全に説明される。本システム及び本方法は、下記に説明される例示の実施形態及び/または配列が単なる例示のシステム及び方法にすぎないため、いずれかの方法で、例示の実施形態及び/または配列に限定されず、当業者によって理解されるように、種々の形態で具体化されることができる。したがって、本明細書に開示される任意の構造及び機能の詳細は、本システム及び本方法を限定するものとして解釈されるべきではないが、むしろ、本システム及び本方法を実施するために、1つ以上の方法で、当業者に教示するための代表的実施形態及び/または配列として提供されたものであることを理解されたい。
【0022】
図1は、実験室タイプ環境または他の試験場所/実験的設定における、選択された(標的)ガス流の硫黄溶解度を判定するための例示システム100を例示する。図1はまた、例示的流動スキームを例示する。システム100は、システム100用の着目試験ガス(試験ガス)を含有する容器102(例えば、コンテナまたはタンク)等のガス源を含む。試験ガスは、限定ではないが、硫黄(または、水銀等の他の微量元素)の堆積問題が予期される典型的な石油生産環境またはガス流中に見られる任意のガス、ならびに、石油及びガス以外の産業における類似するガス等の、CH、CO、及びHS(または、それらの任意の組み合わせ)、または硫黄堆積が懸念となる任意の他のガス組成を含む、1つ以上の様々なガスを含む可能性がある。
【0023】
1つ以上の実施形態では、システム100の流体の流量は、1つ以上のデジタル質量流量計、圧力調整器、弁、ゲージ、及び/または圧力安全要素(例えば、破裂板)を含む流動制御システムによって制御される。システム100の流動制御システム(図1参照)(下記の例示セクションに説明されるようなもの)は、特定の方法で構成されるが、弁、調整器、ゲージ等に関する任意の数の構成は、システム100内部の指定された流体の流量を達成するために、流動制御システムのために使用されることができる。
【0024】
システム100の試験ガスは、実際のガスライン機器のガス流を模倣したものであり、または既存のガスライン機器からサンプリングされることができるが、システム100自体がガスライン構造から遠隔にあり、かつそれに直接接続されないように設計されていることを留意されたい。したがって、システム100は、動作中のガス取扱システムから分離され及び遠隔にある実験室(試験)システムである。
【0025】
再度、図1を参照すると、試験ガスは、容器102から、第1の流体チャネル104(例えば、パイプ、管)を通って、システム100の残りの部分まで流れる。1つ以上の実施形態では、システム100はまた、窒素(N)ガス容器106(タンクまたはコンテナ)を含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、容器106内のNガスは、第2の流体導管108及び第3の流体導管110のそれぞれを通して、システム100の残りの部分までポンプで送られ、着目試験ガスの試験実行の開始前に、いずれかの酸素のシステム100をパージすることができる。しかしながら、少なくとも1つの実施態様では、本システムは、酸素をガス流中に導入することを可能にし得る。図に示されるように、本明細書に説明される導管は、窒素ガス及び試験ガスの両方の流れを制御する、弁、調整器等の従来の機器を含むことができる。示されるように、第1の導管104及び第2の導管108は、それぞれのガスをシステム100の下流試験機器まで送達する第3の導管110(例えば、パイプまたは管)にも接続される弁機構まで流れる。
【0026】
試験ガスの試験実行を開始するために、試験ガスは、容器102から第1の導管104及び第3の導管110を通って流れ、システム100の第1のステーション(区分)101まで送達される。システム100の第1のステーション101は、そのような活動を促進する規定の選択された状態下で、ガス流を、高レベル(必ずしも、飽和レベルではない)の元素硫黄で満たすように設計されている。システム100の第1のステーション101は、第3の導管110と流体連通する第4の導管112(請求項の第1の導管)を含む。結果として、第4の導管112は、元素硫黄で充填され、第4の導管112の状態は、試験ガスが第4の導管112を出る前に高レベルの元素硫黄で満たされるようになる。1つ以上の実施態様では、第4の導管112内の元素硫黄は粉末形状であり、第4の導管112の選択部分(長さ)に沿って、第4の導管112内部に配置される。
【0027】
第4の導管112を通る試験ガスの流動中に、試験ガスが高レベルの元素硫黄で十分に満たされるように(これは、試験ガスが元素硫黄中を通って流れることから結果として生じる)、試験ガスは元素硫黄を「取得する」。試験ガスの元素硫黄取得のレベルは、第4の導管112の特定の試験ガス組成、その内部の圧力及び温度、ならびに第4の導管112の内側の試験ガスの常駐時間に応じたものである。常駐時間は、ガスが第2の水槽に入る前に、ガス流による、十分に高レベルの硫黄の摂取を確実にするために十分に長い必要がある。1つ以上の実施態様では、試験ガスは、第4の導管112から出るとき、導管116内に存在する、より低い試験温度(試験温度)で試験ガス中の自然平衡溶解レベルの元素硫黄を超える元素硫黄の量を含有する。第4の導管112内の適切な常駐時間は、最も正確な測定を提供することに重要であり得る。したがって、1つ以上の実施形態では、試験ガスのガス流量は、第4の導管112内での適切な常駐時間を確実にするために低い値に設定されることができる。例えば、1つ以上の実施形態では、第4の導管112内の試験ガスのガス流量は、約50ml/minである。第4の導管112内に及びそれを通る試験ガスのガス流量はまた、第4の導管112の物理的構造(例えば、第4の導管112のループ数及び寸法)によって影響を受け得る。
【0028】
1つ以上の実施態様では、第4の導管112内の試験ガスの温度が高くなり、試験ガスによって十分に高レベルの硫黄摂取をもたらすために十分になるように、第4の導管112の温度を上昇させる。十分に高レベルの硫黄取得に要求される第4の導管112の温度は、例えば、試験ガスの成分及び第4の導管112の寸法に応じて、変動し得る。1つ以上の実施態様では、第4の導管112の温度は、95℃未満またはそれに等しい。1つ以上の実施形態では、第4の導管112の温度は、試験ガスの既知の成分及び第4の導管112の寸法に基づいて、事前判定されることができる。第4の導管112に関する標的温度を選択する際に、他の要因を考慮する可能性があることが理解されるであろう。
【0029】
当業者に既知である種々の方法で、第4の導管112の温度を制御することができる。少なくとも1つの実施形態(図1に示されるような)では、第4の導管112は、加熱媒体に露出されることができ、特に、第4の導管112は、水槽114内部に位置することができる。本実施形態では、第4の導管112の温度と、結果的に、第4の導管112を通って流れる試験ガスの温度とを変化させるために、水槽114の温度を操作することができる。このように、第4の導管112は、水に浸かり、またはそうでなければ、溶液槽114内の水等の媒体と接触し得る。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、第4の導管112は、単一のパイプまたは管であり得る。1つ以上の実施形態では、第4の導管112はまた、直列に配列される相互接続されたパイプまたは管の群であり得る。例えば、図1に示されるように、第4の導管112は、第4の導管112を包囲及び加熱する媒体(例えば、水)に対する表面積及びガスの露出を増加させるために、蛇行様式で配列された直列の相互接続された管であり得る。1つ以上の実施形態では、直列の相互接続された管は、大きい直径(例えば、0.5インチ)を有する。相互接続された管の大きい直径は、試験ガスと硫黄粉末との間のより長い接触時間を可能にし、これは、試験ガスが第4の導管112を出る前に高レベルの元素硫黄で十分に満たすことを確実にする。1つ以上の実施形態では、第4の導管112内の試験ガスの常駐時間は、少なくとも2時間である。上昇温度で連動する比較的長い常駐時間により、試験ガスが、第4の導管112から出るとき、導管116内に存在する、より低い試験温度で試験ガス中の自然平衡溶解レベルの元素硫黄を超える元素硫黄の量を含有することを可能にする。また、本発明のシステムの容器及び/または導管は、当技術分野で既知であるような金属または金属の混合物から作製されることができることを留意されたい。1つ以上の実施形態では、本発明のシステムの容器及び/または導管は、1つ以上の耐食合金から作製されることができる。
【0031】
本発明の第1のステーションまたはステージ101の試験ガスによる十分に高レベルの硫黄摂取に続いて、ここで、硫黄充填試験ガスは、第1のステーションまたはステージから、システム100の第2のステーションまたは段階115まで流れる。より具体的には、硫黄充填試験ガスは、第1のステーション101と関連付けられる第4の導管112から、第2のステーション/ステージ115と関連付けられる第5の導管116(請求項の第2の導管)まで流れる。第2のステーション115は、試験ガスの温度を規定の温度(範囲)まで減少するように構成されている。特に、第2のステーション115の状態は、第5の導管116内で、硫黄取得が予期される、試験ガスがガス流を処理または移送するためのシステム内に存在する温度(すなわち、試験温度)をシミュレーションした温度まで、試験ガスを下げるようになる。言い換えれば、第5の導管116(第2のステーション内)の温度は、第5の導管116から出る前に、試験ガスの温度を、選択された試験温度に実質的に同等の温度まで変化させる。試験温度は、例えば、試験ガスの成分及び第5の導管116の寸法に基づいて変動し得る。1つ以上の実施形態では、試験温度は、第4の導管112の温度よりも10〜15℃低い。
【0032】
さらに、オペレータが硫黄溶解度を判定することを試みた工業工程状態に基づいて、第5の導管116の温度及びその中に流れるガスの圧力(すなわち、試験温度及び試験圧力)が事前判定される点において、第2のステージ115内のガス流動状態を入念に調整する。上記に説明されたように、試験ガスは、昇温で第5の導管116に入り、第5の導管116の試験温度でガスに関する溶解限度を超える硫黄を含有する。したがって、試験ガスが第5の導管116に入るとき、その状態(例えば、試験温度及び試験圧力)で、試験ガスにより第5の導管116の壁上で過剰硫黄を堆積するようになる。第5の導管116内の試験ガスの常駐時間は、試験ガスが特定の試験温度及び試験圧力での硫黄に関するその自然平衡溶解レベルに達することを確実にするのに十分である。したがって、試験ガスが第5の導管116から出るとき、試験温度及び試験圧力において硫黄で飽和される。
【0033】
第4の導管112と同様に、当業者に既知である種々の方法で、第5の導管116の温度を制御することができる。少なくとも1つの実施形態(図1に示されるような)では、第5の導管116は、冷却剤、この場合、水槽118内部に配置されることができる。本実施形態では、第5の導管116の温度と、結果的に、その中を流れる硫黄飽和試験ガスの温度とを変化させる(例えば、下げる)ために、水槽118の温度を操作することができる。
【0034】
第5の導管116の内側の硫黄飽和試験ガスの常駐時間は、試験ガスが所望温度(すなわち、試験温度に実質的に等しい)で第5の導管116から出ることを確実にするのに十分に長い必要がある。概して、第5の導管116内の試験ガスの常駐時間は、第4の導管112内の試験ガスの常駐時間よりも短い。したがって、1つ以上の実施形態では、第5の導管116内の適切な常駐時間を確実にするために、(例えば、質量流量調節器によって)第5の導管116内の硫黄飽和試験ガスのガス流量を変化させることができる。試験ガスのガス流量は、概して、試験実行の開始時に計算かつ設定される。第5の導管116内の硫黄飽和試験ガスのガス流量はまた、第5の導管116の寸法によって影響を受け得る。例えば、第5の導管116は、1/8インチの外径等を有する単一のコイル管であり得る。1つ以上の実施形態では、第5の導管116はまた、直列に配列される相互接続されたパイプまたは管の群であり得る。図1に示されるように、例えば、第5の導管116は、表面積を増加させ、その導管内に流れるガスを冷却剤に曝すことを可能にするために、蛇行様式で配列された直列の相互接続された管またはパイプであり得る。
【0035】
第5の導管116内で硫黄飽和試験ガスの温度が下がった後に、硫黄飽和試験ガスは、システム100の第3のステーション内またはステージ119内に流れる。本明細書に説明されるように、第3のステーション/ステージ119は、元素硫黄がある制御様式で試験ガスから沈殿するように集められるものである。第3のステーション/ステージ119は、第2のステーション115の第5の導管116に流体接続される第6の導管120(請求項の第3の導管)を含む。本明細書に説明されるように、ガスは第6の導管120内部を流れ、元素硫黄を入念に集め、測定し、及び分析すること可能にする様式で、試験ガスからの元素硫黄の堆積を生じさせる状態に曝される。
【0036】
1つ以上の実施態様では、試験ガス中の全ての硫黄は、集合ゾーンの第6の導管120内に堆積する。
【0037】
1つ以上の実施形態(図1に示されるような)では、第6の導管120は、3つの区分(すなわち、流入区分122、捕捉区分124、及び流出区分126)を備える。1つ以上の実施態様では、流入区分122は、導管116に流体接続される、連続的に加熱される管またはパイプである。流入区分122の状態(例えば、温度、圧力)は、(第5の導管116からの)硫黄飽和試験ガスの温度が、流入区分122内部で元素硫黄のいずれかの堆積を回避するために十分に高い状態のままであることを確実にする。
【0038】
続けて図1を参照すると、硫黄飽和試験ガスが、流入区分122から捕捉区分124まで流れる。捕捉区分124の状態では、硫黄飽和試験ガスが捕捉区分124内で硫黄を沈殿(堆積)させるようになる。具体的には、1つ以上の実施形態では、捕捉区分124に入るとすぐに、飽和試験ガス中で分解された硫黄の合計量の即時の凝縮及び堆積をもたらすような、かなり低温度になるまで、硫黄飽和試験ガス混合物を「急冷」(急速に冷却)する。捕捉区分124内における元素硫黄の堆積後に、堆積硫黄の重さは、従来の分析技術及び機器を使用して判定される。
【0039】
1つの実施形態では、捕捉区分124は、その中に流れる試験ガスの温度に応じて作動するが、ガスの圧力に応じて作動しないことを留意されたい。試験ガスの圧力に応じて作動するシステムが、圧力減少デバイスの場所での沈殿、ひいては、不正確な測定に関する可能性の増加をもたらすために、ガスの圧力のいずれかの変化を制限または防止することが望ましい。1つ以上の実施形態(図1に示されるような)では、捕捉区分124は、U型管であり得る。U型管は、堆積硫黄が「U」の底部に集合することを可能にし、これは、沈殿ガスがU型区分の下流に流れないため、より容易な堆積硫黄の集合及び事後測定を可能にする。U型管はまた、堆積硫黄がガス流動によって押されない、及び下流に位置する洗浄タンクまで上がらないこと(これは、測定された溶解度値に影響を及ぼすであろう)を確実にする。少なくとも1つの実施形態では、捕捉区分124は、重力に起因して、あるゾーン内に集まる沈殿硫黄をもたらす、V字型であり、または別の構成を有することができる。
【0040】
システム100の他の区分と同様に、種々の方法で、捕捉区分124の温度を制御することができる。例えば、少なくとも1つの実施形態(図1に示されるような)では、捕捉区分124は、冷却剤/急冷剤、この場合、水槽128内部に位置することができる。本実施形態では、捕捉区分124に入るとすぐに、硫黄飽和試験ガスの温度を急に下げるために、水槽128の温度を操作することができる。加えて、捕捉区分124が冷却温度を有するガス等の他の冷却剤の内部に配置され得る、またはそうでなければ、それに接触し得ることが理解されるだろう。
【0041】
上記に言及されたように、捕捉区分124内における硫黄の堆積に続いて、堆積硫黄の重さを判定する。例えば、捕捉区分124は、他の区分122、126から除去されることができ、その次に、集められた硫黄は、既知の有機溶媒中で分解され、その重さに関する従来の分析技術を使用して分析的に分析される。少なくとも1つの実施形態では、着脱容易コネクタ等のコネクタは、捕捉区分124を他の区分122、126に接続するために使用されることができる。加えて、ここで、不飽和試験ガスが捕捉区分124から出て、流出区分126に入り、試験期間中、システム100を通過した試験ガスの混合物の合計体積は、従来の機器(例えば、流量計、質量流量調節器)を使用して測定された。そのとき、試験実行中にシステム100を通過した堆積硫黄の重さ及び試験ガス混合物の合計体積は、試験ガス混合物の硫黄溶解度を判定するために使用される。下記の例示セクションにさらに詳細に示されるように、温度及び圧力の正常状態または標準状態のいずれかで、硫黄溶解度を計算することができる。
【0042】
上記に説明されるシステム100は、試験ガスの成分と、本システムの異なる部分の形状及び寸法とを含む、本システムに関連する種々の要因に応じて、種々の温度及び/または圧力で実行することができる。例示的実施形態で、システム100は、約100psia〜約1000psiaの圧力で実行し、システム全体にわたって一定である。第1のステーション及び第2のステーションの温度は、約5℃〜95℃であり得る一方で、冷却/急冷媒体(例えば、水槽128)の温度は、約0.0℃以下である。
【0043】
上記に説明された方法及びシステムは、試験ガスとして、乾性ガスを利用することができる。1つ以上の代替実施形態では、湿性ガスもまた、試験ガスとして使用されることができる。試験ガスが湿性ガスである実施形態では、試験ガスは、硫黄で飽和される前に、水で最初に飽和される。例えば、少なくとも1つの実施形態では、試験ガスが、最初にガス容器102から、導管104及び110を通って、容器130内に流れる。容器130内では、試験ガスは、水で飽和される。容器130内の水飽和に続いて、ここで、「湿性」試験ガスは、導管112内に流れ、十分に高レベルの元素硫黄を摂取する。水飽和ガスに関する残りのプロセスは、本方法の上記の説明で説明されたものと同じ方式で継続する。1つ以上の実施形態で、容器130は、独立型容器である。少なくとも1つの実施形態では、図1に示されるように、容器130は、試験温度水槽118内部に位置することができる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明の実施形態をより良好に例証するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものとして、それらの実施例を解釈するべきではない。
【0045】
これらの実施例では、5つの試験実行が行われ、試験実行毎に使用された試験ガスは、メタン(CH)であった。テーブル1(下記)に示されるように、試験温度は30℃〜70℃で変動し、試験圧力は、5つの試験実行に関して、300psia〜1000psiaで変動した。高温水槽(第1のステーション)は85℃に設定される一方で、試験温度水槽(第2のステーション)は、所望の試験温度に設定された(各実行の試験温度については、テーブル1参照)。本システムの圧力はまた、所望試験圧力に設定された(各実行の試験圧力については、テーブル1参照)。
【0046】
各試験実行は、以下の手順(図1参照)を使用して行われた。
【0047】
最初に、管加熱器(加熱調節器)をオンにした。次に、全ての3つの水槽内の水レベルが正確であることを確実にするために、3つの水槽を評価した。高温ガス飽和水槽をオンにし85℃に設定した。試験温度水槽をオンにし、試験実行のために所望の飽和温度に設定した。低温槽の循環及び冷却のスイッチをオンにした。水槽の正確な設定点の温度まで平衡状態にするために、数時間、水槽を放置した。試験ガスシリンダの主弁を閉鎖し、試験ガスシリンダ調整器(REG−2)をその最低圧力設定値になるように調節した。その次に、V−1を開放試験ガス位置にした(弁ハンドルは、弁位置を示すラベルに向いていた)。
【0048】
次に、V−2を開放し、V−4をガスバイパスまで開放し、V−3を閉鎖し、及びV−5を閉鎖した。その次に、試験ガスシリンダの主弁を開放した。その次に、圧力計が正確な所望の試験圧力を指示するまで、試験ガスシリンダ調整器(REG−2)をゆっくり調節した。次に、所望の試験ガス圧力に等しいことを確実にするために、システム圧力計(P−2)上に指示された圧力を検証した。その次に、調節器(REG−3)は30〜60psigに調節したが、質量流量調節器(MFC−1)の最大入口圧力を超えないようにした。本発明の場合、デジタル質量流量計は、最大入口圧力150psigで、0〜200mL/min(Nに同等)の範囲で動作した。
【0049】
次に、特定のガス混成物に対応するガス補正率(GCF)の値を調節した。また、所望流量(mL/min)の値及びデータ保存の頻度も調節した。その次に、所望の流量及び所望の圧力での試験ガスは、本システムのガスバイパス部を通って流れ、オペレータが全ての3つの水槽が正確な設定点温度に達したことを検証した。
【0050】
その次に、硫黄を集めるための位置にV−4を開放した(試験温度水槽内に位置する弁)。その次に、試験ガス組成、試験ガス圧力、試験ガス流量、及び3つの水槽の温度と一緒に、硫黄堆積がサンプル捕集管(U型管)内で開始した日付及び時間を記録した。硫黄堆積を終わらせるために、ガスバイパス位置にV−4(試験温度溶液槽内に位置する弁)を開放した。その次に、サンプル捕集管内の硫黄堆積が止まった日付及び時間を記録した。硫黄堆積が終了した後に、管加熱をオフにし、昇温及び試験温度水槽をオフにした。次に、試験ガスシリンダの主弁を閉鎖し、それに続いて、V−2、V−5、及びV−6を閉鎖した。その次に、本システム内の高圧ガスを放出するために、V−3をゆっくり開放した。全ての圧力ゲージがゼロ圧力を示すまで、圧力ゲージを観察した。
【0051】
各試験実行の終了時に、以下の方程式を使用して、試験ガスの硫黄溶解度を計算した。
【数1】
式中、SNCは、正常状態(0°C[273.15K]及び1atm)での硫黄溶解度であり、m[mg]は堆積硫黄の実測重量であり、Q[ml/mn]は、質量流量計によって制御されるガスの流量であり(流量計は、25°C[298.15K]及び周囲圧力で流量計の下流のガス流動を制御することを留意されたい)、Δt[日数]は合計試験期間である。標準状態(60°F[288.7K]及び1atm)の溶解度に関して、変換係数は、以下のように導入される。
【数2】
試験実行毎の結果は、テーブル1に示される。
テーブル1.実施例1〜5の硫黄溶解度
【表1】
【0052】
上記の説明で使用された専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、本発明を限定することを意図していない。本明細書に使用されるような、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で他に明確に示さない限り、同様に、複数形を含むことが意図される。さらに、用語「including(含む)」、「comprising(備える)」、「having(有する)」、「containing(含有する)」、「involving(伴う)」、及び本明細書のそれらの変形例は、本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはそれらの群の存在または追加を除外するわけではない。
【0053】
「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、請求要素を修正する請求項では、それらの用語自体によって、いかなる優先事項、先行事項、または別のものと比較した一方の請求要素の順序、もしくは方法の作動が行われる時間的順序を含意するわけではないが、単に、ある名称を有する1つの請求要素を、同じ名称を有する別の要素(ただし、序数用語の使用のためのもの)と区別し、請求要素を区別するために、分類するものとして使用されることを留意されたい。また、本明細書に使用される表現及び専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものとして見なすべきではない。
【0054】
本発明のシステムは複数のステーションを含有するものとして説明されるが、全てのステーション及び機器は、単一の筐体内または同等物内(すなわち、同じ設置場所の下)に含有されることが理解されるだろう。本発明は、例示のみの目的のためにステーションの観点から説明され、かつ、本システムの分離部分で発生する異なる動作を検討するために説明される。加えて、本明細書に説明される2つ以上の導管は、物理的に単一の管であり得、異なる導管の説明は、導管の部分を本明細書に説明されるステーションの1つに関連付けるための単なる例示目的のためである。
【0055】
本発明は特定の実施形態を使用して上記に説明されるが、当業者に明白である多くの変形例及び修正が存在する。したがって、説明される実施形態は、制限的ではなく、例証のみとして、全ての事項において考慮するべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によるものよりはむしろ、添付の請求項によって示される。請求項の同等の意味及び範囲内に生じる全ての変更は、その範囲内に包含される。
図1