(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整部材は、前記ノーズ部に対して回動可能に取り付けられた部材であって、少なくとも二箇所において回動中心から周面までの距離が異なるように形成され、当該周面に前記コンタクト部材を係合させることで前記コンタクト部材の上死点を決定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の打ち込み工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の打ち込み工具では、コンタクト部材を奥まで押し込んだときの上死点は、ノーズ部の先端と同じか、ノーズ部の先端よりもやや突出する程度に設定されている。このように設定することで、コンタクト部材を平らな被打ち込み材に押し付けたときにコンタクト部材を上死点まで移動させることができ、トリガ操作を有効とするためのサインを確実にオンとすることができる。言い換えると、コンタクト部材の押しつけ不足によって不完全なサインが発生することを防止できる。
【0005】
しかしながら、上記したような従来の打ち込み工具では、工具を斜めにして止具を発射しようとすると(いわゆる斜め打ちをしようとすると)、コンタクト部材を被打ち込み材に押し付けて上死点まで移動させたときに、ノーズ部の先端と被打ち込み材との間に隙間が生じ、止具を深く打ち込むことができないという問題があった。
【0006】
また、従来の打ち込み工具では、打ち込み工具が先端側から落下すると、コンタクト部材が落下時の衝撃をすべて負担するので、コンタクト部材の破損につながるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、斜め打ちをした場合でも止具を深く打ち込むことができ、また、コンタクト部材の破損を防止することができる打ち込み工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明は、射出口から発射した止具を被打ち込み材に打ち込む打ち込み工具であって、打ち込み動作を実行させるためのトリガと、前記射出口を形成したノーズ部と、前記ノーズ部に対して摺動可能に設けられて被打ち込み材に押し付け可能なコンタクト部材と、前記コンタクト部材が被打ち込み材に押し付けられたことを検知するコンタクト検知部と、を備え、前記コンタクト検知部が押し付けを検知し、かつ、前記トリガが操作されたときに打ち込み動作を実行するように形成され、前記コンタクト部材は、先端部が前記ノーズ部の先端よりも反先端側に摺動可能であ
り、前記コンタクト部材の可動範囲を調整するための調整部材を備え、前記調整部材は、前記コンタクト部材の先端が前記ノーズ部の先端よりも反先端側に摺動可能とする第1の状態と、前記コンタクト部材の先端が前記ノーズ部の先端よりも反先端側に摺動できないように規制する第2の状態と、を取り得ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、前記コンタクト検知部は、前記コンタクト部材の摺動方向に対して直交する方向に押下可能なボタンを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、前記コンタクト部材の先端幅は、前記ノーズ部の先端幅よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
【0013】
請求項
4に記載の発明は、上記した請求項
1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、前記調整部材は、前記ノーズ部に対して回動可能に取り付けられた部材であって、少なくとも二箇所において回動中心から周面までの距離が異なるように形成され、当該周面に前記コンタクト部材を係合させることで前記コンタクト部材の上死点を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項
5に記載の発明は、上記した請求項
1〜4のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、前記調整部材は、前記打ち込み工具の前面側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
6に記載の発明は、上記した請求項
1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記調整部材は、前記コンタクト検知部が押し付けを検知する位置まで前記コンタクト部材が摺動しないように規制可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、コンタクト部材をノーズ部の先端よりも反先端側に摺動可能とした。このような構成によれば、コンタクト部材を斜めに被打ち込み材に押し付けて上死点まで移動させたときに、コンタクト部材をノーズ部の先端よりも奥まで押し込むことができる。このため、ノーズ部の先端を被打ち込み材に接近させることができるので、斜め打ちをした場合でも止具を深く打ち込むことができる。また、コンタクト部材を被打ち込み材にまっすぐ押し付けた場合(いわゆる平打ちの場合)でも、ノーズ部の先端を被打ち込み材に密着させることができるので、止具を深く打ち込むことができる。
【0017】
また、打ち込み工具が先端側から落下したときにもコンタクト部材が破損しにくい。すなわち、コンタクト部材が摺動することでノーズ部が地面に当たり、コンタクト部材とノーズ部(工具本体)とに衝撃が分散されるので、落下時のコンタクト部材の破損を防止することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、コンタクト検知部は、コンタクト部材の摺動方向に対して直交する方向に押下可能なボタンを備える。このような構成によれば、コンタクト部材を上死点まで移動させなくても、コンタクト部材が摺動する範囲の途中でボタンが押下されるように、コンタクト検知部を配置できる。よって、平打ち時にコンタクト部材が上死点まで移動しなくても、トリガ操作を有効とするためのサインをオンにすることができ、平打ち時のサイン不良が生じない。また、摺動の途中でボタンが押下されるようにコンタクト検知部を配置しても、コンタクト検知部がコンタクト部材の摺動を妨げることがないので、コンタクト部材の可動範囲を自由に設定することができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、コンタクト部材の先端幅を、ノーズ部の先端幅よりも大きく形成した。このような構成によれば、コンタクト部材の側端部を被打ち込み材に押し付けて斜め打ちするときに、ノーズ部の側方から突出したコンタクト部材の側端部を被打ち込み材に係合させることができる。よって、コンタクト部材の押し付け動作を行うときにノーズ部が被打ち込み材の上を滑ることを防止し、打ち込み時の姿勢を安定させることができる。
【0020】
また、請求項
1に記載の発明は上記の通りであり、前記コンタクト部材の可動範囲を調整するための調整部材を備え、前記調整部材は、前記コンタクト部材の先端が前記ノーズ部の先端よりも反先端側に摺動可能とする第1の状態と、前記コンタクト部材の先端が前記ノーズ部の先端よりも反先端側に摺動できないように規制する第2の状態と、を取り得る。このような構成によれば、使用状況に合わせてコンタクト部材の可動範囲を調整することができる。例えば、斜め打ちのときには調整部材を第1の状態に設定し、平打ちのときには調整部材を第2の状態に設定する、といった調整が可能となる。
【0021】
また、請求項
4に記載の発明は上記の通りであり、前記調整部材は、前記ノーズ部に対して回動可能に取り付けられる部材であって、少なくとも二箇所において回動中心から周面までの距離が異なるように形成され、当該周面に前記コンタクト部材を係合させることで前記コンタクト部材の上死点を決定する。このような構成によれば、調整部材を回転させるだけでコンタクト部材の摺動範囲を調整できるので、操作性が良い。
【0022】
また、調整部材が直接コンタクト部材に係合するので、最小限の部品点数で打ち込み深さの調整が可能となる。また、中間部材を使用しないので、調整部材とコンタクト部材の公差のみを考慮すればよく、精度の良い調整機構を提供することができる。
【0023】
また、回動中心から周面までの距離を段階的に変更できるようにすれば、多段階で打ち込み深さを調整できる調整機構を提供することができる。また、調整部材の周面をカム状に形成すれば、シームレスに無段階で打ち込み深さを調整できる調整機構を提供することができる。
【0024】
また、請求項
5に記載の発明は上記の通りであり、前記調整部材は、前記打ち込み工具の前面側に配置されている。このような構成によれば、打ち込み工具の側部の視認性を損なわないので、打ち込み位置を側方から見ながら打ち込み作業を行うことができる。
【0025】
また、請求項
6に記載の発明は上記の通りであり、前記調整部材は、コンタクト検知部が押し付けを検知する位置までコンタクト部材が摺動しないように規制可能である。このような構成によれば、打ち込み深さを調整する調整部材によって、打ち込みができないようにロックすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態にかかる打ち込み工具10は、射出口10aからネジや釘などの止具を発射し、この止具を被打ち込み材50に打ち込むように構成されている。打ち込み工具10は、所定の動力源によって上下に駆動するドライバによって止具を打ち込む。本実施形態においては、工具本体11に対して着脱可能に設けられた電池パック40を動力源として打ち込み動作を行う。なお、打ち込み工具10の動力源は電池パック40に限らず、例えば、圧縮空気を利用して打ち込み動作を行ったり、可燃ガスの燃焼圧力を利用して打ち込み動作を行ったりするものであってもよい。
【0029】
この打ち込み工具10の工具本体11は、
図1に示すように、打ち込み動作を行うための作動機構等を内蔵した出力部12と、出力部12に対して略直角に連設されたグリップ部13と、グリップ部13に設けられたトリガ15と、出力部12の軸方向先端側(止具の打ち込み方向)に一体的に固定されたノーズ部17と、ノーズ部17の後方に連設されたマガジン14と、を備える。
【0030】
トリガ15は、打ち込み動作を実行させるための操作部であり、グリップ部13を把持したときに人差し指で操作可能な位置に設けられている。後述するコンタクト検知部22のサインがオンの状態でこのトリガ15が引き操作されると、出力部12に内蔵された作動機構が作動し、打ち込み動作が実行される。
【0031】
マガジン14は、射出口10aから射出される止具を収容するものであり、連結された止具を収容している。このマガジン14に収容された止具がノーズ部17の方向へ順次案内されて打ち込みに使用される。
【0032】
ノーズ部17は、止具を射出する射出口10aを形成した部位であり、工具本体11の先端に突出して形成されている。このノーズ部17の内部には、止具を打ち出すためのドライバ(図示せず)が摺動可能に収容されている。なお、ノーズ部17の後方には止具供給機構が設けられている。この止具供給機構は、打込み動作に連動して送り動作を実行する。この送り動作によって、マガジン14に収容された止具がノーズ部17へと順番に送られる。
【0033】
このノーズ部17の前面には、被打ち込み材50に押し付けられるコンタクト部材20がノーズ部17に対して摺動可能に取り付けられている。
【0034】
本実施形態に係るコンタクト部材20は、ピン等の固定具21によってノーズ部17に摺動可能に取り付けられている。このコンタクト部材20には、固定具21を挿入するための長孔20bが貫通形成されている。長孔20bは、コンタクト部材20の摺動方向に延びているため、コンタクト部材20は長孔20bに沿って上下に摺動可能となっている。
【0035】
このコンタクト部材20は、被打ち込み材50に押し付けたときにノーズ部17に対して上方に摺動するようになっており、このようにコンタクト部材20が上方に摺動することで打ち込み動作の安全機構が作動するようになっている。安全機構が作動することで、トリガ15の操作が有効となり、止具の打ち込みが可能となる。
【0036】
具体的には、この安全機構は、
図2及び
図3に示すようにマガジン14の内部に収容されており、コンタクト検知部22と、スイッチ押下部材23と、摺動支持軸24と、を備える。
【0037】
コンタクト検知部22は、コンタクト部材20が被打ち込み材50に押し付けられたことを検知するためのスイッチである。このコンタクト検知部22がオンの状態でトリガ15が操作されたときに打ち込み動作が実行される。このコンタクト検知部22は、部品を内蔵したスイッチボックス22aと、スイッチボックス22aから突出して設けられたボタン22bと、ボタン22bを覆うように取り付けられた揺動部材22cと、を備える。
【0038】
ボタン22bは、ノーズ部17の裏面に臨むように突出しており、コンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向(
図5における左方向)に押下可能となっている。なお、ボタン22bは、コンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向に押下可能であればよく、必ずしもコンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向に突出している必要はない。例えば、コンタクト部材20の摺動方向に対して斜めに突出していてもよい。ただし、コンタクト部材20の摺動を妨げないようにスイッチボックス22aを配置しつつ、コンタクト部材20によってボタン22bが確実に押下されるようにするためには、スイッチボックス22aの表面がコンタクト部材20の摺動方向に対して平行であることが望ましく、ボタン22bがコンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向に突出していることが望ましい。このボタン22bが押下されると、コンタクト検知部22から検知信号が送信される。この検知信号が出力されている状態でトリガ15の操作信号が検知されたときに、打ち込み動作が実行される。
【0039】
揺動部材22cは、スイッチボックス22aに揺動可能に取り付けられており、ボタン22bの前面を覆っている。この揺動部材22cは、後述するスイッチ押下部材23のスイッチ押下部23cに対向するように傾斜して取り付けられており、スイッチ押下部材23が上動したときにスイッチ押下部23cによって押され、揺動してボタン22bを押下するようになっている。この揺動部材22cを設けることで、コンタクト部材20が上死点まで移動しなくてもボタン22bが押下されるようになっている。
【0040】
スイッチ押下部材23は、コンタクト部材20と一体的に上下動してコンタクト検知部22を作動させるためのものである。このスイッチ押下部材23は、
図3に示すような金具であり、前方に突出した突出片23aと、下部に形成されたバネ受部23bと、後方に突出したスイッチ押下部23cと、を備える。
【0041】
突出片23aは、コンタクト部材20に係合させるための部位であり、
図2に示すように、コンタクト部材20に形成された差込孔20cに係合する。これにより、コンタクト部材20が上下動したときに、スイッチ押下部材23もコンタクト部材20と一体的に上下動するようになっている。
【0042】
バネ受部23bは、後述する摺動支持軸24の復帰バネ25の付勢力を受けるための部位である。このバネ受部23bが復帰バネ25の付勢力を受けることで、スイッチ押下部材23は常に下方へと付勢されている。これにより、スイッチ押下部材23が意図せず上方へ移動することを防止し、コンタクト検知部22の誤検知を防止している。
【0043】
スイッチ押下部23cは、コンタクト部材20が上動したときにボタン22bを押下するための部位であり、上述した揺動部材22cに対向するように配置されている。コンタクト部材20が上動してスイッチ押下部材23が一体的に上動すると、スイッチ押下部23cによって揺動部材22cが揺動し、ボタン22bが押下されるようになっている。
【0044】
摺動支持軸24は、スイッチ押下部材23の上下動を案内するための部材である。この摺動支持軸24には、スイッチ押下部材23を下方に付勢するための復帰バネ25が取り付けられている。
【0045】
なお、コンタクト部材20は、付勢手段30によって常に突出方向へと付勢されており、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、被打ち込み材50に押し付けられていない状態ではノーズ部17の先端から突出した状態となっている。
【0046】
コンタクト部材20を付勢する付勢手段30は、
図9(b)に示すように、ノーズ部17に固定された筒部31と、筒部31から出没可能に設けられた軸部32と、筒部31に内蔵されて軸部32を突出方向に付勢するバネ(図示せず)と、を備える。軸部32の先端は、コンタクト部材20の反先端側に形成された凹部20aに係合しており、コンタクト部材20を先端方向に付勢している。
【0047】
コンタクト部材20を被打ち込み材50に押し付けると、付勢手段30の付勢力に抗してコンタクト部材20が反突出方向へと摺動する。すなわち、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、コンタクト部材20が上方へ移動する。このとき、コンタクト部材20は、コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端よりも反先端側となる位置まで摺動可能である。このため、
図8に示すように、打ち込み工具10を被打ち込み材50に対して傾けて打ち込みを行う、いわゆる斜め打ちをする場合でも、ノーズ部17の先端を被打ち込み材50に接近させることができる。ノーズ部17の先端が被打ち込み材50に接近することで、斜め打ちをした場合でも止具を深く打ち込むことができる。
【0048】
なお、従来の打ち込み工具10では、
図13に示すように、コンタクト部材20は、ノーズ部17の先端と同じ位置までしか摺動できなかった。このため、斜め打ちをすると、ノーズ部17の先端と被打ち込み材50との間に隙間ができて止具を深く打ち込むことができなかった。本実施形態に係る打ち込み工具10であればこのような問題は発生しない。
【0049】
ところで、このようにコンタクト部材20の上死点位置を高くした場合、コンタクト部材20を被打ち込み材50にまっすぐ押し付けて打ち込みを行う、いわゆる平打ちをする場合に、コンタクト部材20が上死点位置まで移動しないこととなる(
図6及び
図7参照)。このため、従来のようにコンタクト部材20が上死点位置まで移動したときにコンタクト部材20の押し付けを検知する構成では、平打ち時にコンタクト部材20の押し付けが検知できず、止具の打ち込みが行えないという問題が生じる。この点、本実施形態に係るコンタクト検知部22は、コンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向に押下されるボタン22bを備え、このボタン22bを揺動部材22cによって押下する構成であるので、コンタクト部材20が上死点位置まで移動しなくてもコンタクト部材20の押し付けを検知することができる(
図7(b)参照)。このように、ボタン22bを揺動部材22cによって押下することで、上死点位置以外でコンタクト部材20の押し付けを検知可能に構成できる。このような構成により、コンタクト部材20がノーズ部17の先端よりも突出した位置でコンタクト部材20の押し付けを検知し、かつ、コンタクト部材20の押し付けを検知したままノーズ部17の先端よりも反先端側へコンタクト部材20を摺動させることも可能となっている。
【0050】
なお、このコンタクト部材20の先端幅W1は、
図9(b)に示すように、ノーズ部17の先端幅W2よりも大きく形成されている。このように形成することで、
図9(a)に示すように、コンタクト部材20の側端部を被打ち込み材50に押し付けて斜め打ちするときに、ノーズ部17の側方から突出したコンタクト部材20の側端部を被打ち込み材50に係合させることができる。よって、コンタクト部材20の押し付け動作を行うときにノーズ部17が被打ち込み材50の上を滑ることを防止し、また、打ち込み時の姿勢を安定させることができる。なお、コンタクト部材20と被打ち込み材50との係合を確実とするためには、ノーズ部17の側方から突出したコンタクト部材20の側端部を、先端方向に向けて刃状に尖った形状としてもよい。コンタクト部材20の側端部を刃状に尖った形状とすれば、この尖った側端部を被打ち込み材50に食い込ませて姿勢を安定させることができる。また、コンタクト部材20の先端幅をノーズ部17と同等以下にし、ノーズ部17よりも幅方向に突出する突起を設けても同じ効果が得られる。
【0051】
また、コンタクト部材20の可動範囲を調整するための調整部材28を設けてもよい。本実施形態に係る調整部材28は、
図9(b)に示すように、ボルト28aによってノーズ部17に対して回動可能に取り付けられており、打ち込み工具10の前面側に配置されている。
【0052】
なお、調整部材28をノーズ部17に取り付けるボルト28aは、ノーズ部17を工具本体11(出力部12の先端)に取り付けるためのものでもある。このように、ノーズ部17を取り付けるボルト28aによって調整部材28を取り付けることで、部品点数を削減している。また、ボルト28aを外すことで、調整部材28の着脱も容易であるので、例えば調整部材28の有無を切り替えたり、調整部材28の種類を交換したりといった作業も容易である。
【0053】
この調整部材28は、少なくとも二箇所において回動中心から周面までの距離が異なるように形成されている。具体的には、周方向に突出した突出部28bと、それ以外の外周部28dとで、回動中心から周面までの距離が異なるように形成されている。この回動中心からの距離が異なる周面に、コンタクト部材20の後端に形成された突き当て部20dを係合させることで、コンタクト部材20の上死点を決定するようになっている。すなわち、突き当て部20dに突出部28bを係合させればコンタクト部材20の上死点を低く設定でき、突き当て部20dに外周部28dを係合させればコンタクト部材20の上死点を高く設定できるようになっている。
【0054】
調整部材28を回動させて
図4に示すような第1の状態とすると、コンタクト部材20の後端に形成された突き当て部20dに対して、外周部28dが臨むようになる。この状態では、突き当て部20dが外周部28dに突き当たるまでコンタクト部材20が摺動可能となる。このとき、コンタクト部材20の先端は、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、ノーズ部17の先端よりも反先端側まで摺動可能となっている。このように調整部材28を第1の状態とすれば、斜め打ちに最適となるようにコンタクト部材20の上死点を設定できる。
【0055】
また、調整部材28を回動させて
図6に示すような第2の状態とすると、コンタクト部材20の後端に形成された突き当て部20dに対して、突出部28bが臨むようになる。この状態では、突き当て部20dが突出部28bに突き当たるまでコンタクト部材20が摺動可能となる。このとき、コンタクト部材20の先端は、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、ノーズ部17の先端と同じ位置まで摺動可能となっている(コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端よりも反先端側まで摺動できないように規制されている)。このように調整部材28を第2の状態とすれば、平打ち時の打込み深さが適正となるようにコンタクト部材20の上死点を設定できる。なお、本実施形態においては、調整部材28が第2の状態のときに、コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端と同じ位置まで摺動可能としたが、これに限らず、調整部材28が第2の状態のときに、コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端付近の所定位置まで摺動可能としてもよい。
なお、調整部材28は、上記したような形態に限らない。
【0056】
例えば、
図10に示すように、複数の突出部28bを設け、段階的に打ち込み深さを調整できるようにしてもよい。
図10に示す調整部材28では、大小2種類の突出部28bを設けている。
図10(a)及び(b)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して外周部28dが臨み、打ち込み深さを最大にすることができる。また、
図10(c)及び(d)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して大きな突出部28bが臨み、打ち込み深さを最小にすることができる。また、
図10(e)及び(f)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して小さな突出部28bが臨み、打ち込み深さを中間にすることができる。
【0057】
また、
図11に示すような調整部材28を使用してもよい。この調整部材28は、突出部28bから徐々に傾斜したカム状の周面である傾斜部28cを備えている。この傾斜部28cのどの位置でコンタクト部材20の突き当て部20dを受けるかで、シームレスに無段階で打ち込み深さを調整できるようになっている。すなわち、
図11(a)及び(b)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して傾斜部28cの最低部が臨み、打ち込み深さを最大にすることができる。また、
図11(c)及び(d)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して突出部28bが臨み、打ち込み深さを最小にすることができる。また、
図11(e)及び(f)に示すような状態に調整部材28を設定すれば、コンタクト部材20の突き当て部20dに対して傾斜部28cの中間部が臨み、打ち込み深さを中間にすることができる。
【0058】
また、調整部材28は、コンタクト検知部22がオンとなる位置までコンタクト部材20が摺動しないように規制可能なものであってもよい。すなわち、
図12に示すように、コンタクト部材20が突出した状態において、コンタクト部材20の突き当て部20dにほぼ接触するように突出した突出部28bを備えるようにすれば、コンタクト部材20がほとんど移動できないので、コンタクト検知部22がオンとなる位置までコンタクト部材20を摺動させることができない。このように調整部材28によってコンタクト部材20をロックすれば、打ち込みが実行できない状態となるので安全性を確保できる。なお、打ち込みを行う場合には、調整部材28を回動させれば簡単にロックを解除することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンタクト部材20をノーズ部17の先端よりも反先端側に摺動可能とした。このような構成によれば、コンタクト部材20を斜めに被打ち込み材50に押し付けて上死点まで移動させたときに、コンタクト部材20をノーズ部17の先端よりも奥まで押し込むことができる。このため、ノーズ部17の先端を被打ち込み材50に接近させることができるので、斜め打ちをした場合でも止具を深く打ち込むことができる。また、コンタクト部材20を被打ち込み材50にまっすぐ押し付けた場合(いわゆる平打ちの場合)でも、ノーズ部17の先端を被打ち込み材50に密着させることができるので、止具を深く打ち込むことができる。
【0060】
また、打ち込み工具10が先端側から落下したときにもコンタクト部材20が破損しにくい。すなわち、従来の打ち込み工具10では、打ち込み工具10が先端側から落下すると、コンタクト部材20が落下時の衝撃をすべて負担することになり、コンタクト部材20の破損につながっていた。この点、本実施形態によれば、コンタクト部材20が摺動することでノーズ部17が地面に当たり、コンタクト部材20とノーズ部17(工具本体11)とに衝撃が分散される。よって、落下時のコンタクト部材20の破損を防止することができる。
【0061】
また、コンタクト検知部22は、コンタクト部材20の摺動方向に対して直交する方向に押下されるボタン22bを備える。このような構成によれば、コンタクト部材20がある程度まで移動させられるとボタン22bが押下される。言い換えると、コンタクト部材20を上死点まで移動させなくても、トリガ15操作を有効とするためのサインがオンとなる。よって、本実施形態のようにコンタクト部材20の上死点をノーズ部17の先端よりも反先端側に設けた場合に、コンタクト部材20を上死点まで移動させなくてもトリガ15操作が有効となる。よって、平打ち時において、コンタクト部材20が上死点まで移動できない場合でも、サイン不良が生じない。また、斜め打ち時にコンタクト部材20を上死点まで移動させたいときにも、コンタクト検知部22がコンタクト部材20の摺動を妨げることがないので、コンタクト部材20を上死点までストロークさせることができる。
【0062】
また、コンタクト部材20の先端幅W1を、ノーズ部17の先端幅W2よりも大きく形成した。このような構成によれば、コンタクト部材20の側端部を被打ち込み材50に押し付けて斜め打ちするときに、ノーズ部17の側方から突出したコンタクト部材20の側端部を被打ち込み材50に係合させることができる。よって、コンタクト部材20の押し付け動作を行うときにノーズ部17が被打ち込み材50の上を滑ることを防止し、打ち込み時の姿勢を安定させることができる。
【0063】
また、コンタクト部材20の可動範囲を調整するための調整部材28を備え、調整部材28は、コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端よりも反先端側に摺動可能とする第1の状態と、コンタクト部材20の先端がノーズ部17の先端よりも反先端側に摺動できないように規制する第2の状態と、を取り得る。このような構成によれば、使用状況に合わせてコンタクト部材20の可動範囲を調整することができる。例えば、斜め打ちのときには調整部材28を第1の状態に設定し、平打ちのときには調整部材28を第2の状態に設定する、といった調整が可能となる。
【0064】
また、調整部材28は、ノーズ部17に対して回動可能に取り付けられる部材であって、少なくとも二箇所において回動中心から周面までの距離が異なるように形成され、当該周面にコンタクト部材20を係合させることでコンタクト部材20の上死点を決定する。このような構成によれば、調整部材28を回転させるだけでコンタクト部材20の摺動範囲を調整できるので、操作性が良い。
【0065】
また、調整部材28が直接コンタクト部材20に係合するので、最小限の部品点数で打ち込み深さの調整が可能となる。また、中間部材を使用しないので、調整部材28とコンタクト部材20の公差のみを考慮すればよく、精度の良い調整機構を提供することができる。
【0066】
また、回動中心から周面までの距離を段階的に変更できるようにすれば、多段階で打ち込み深さを調整できる調整機構を提供することができる。また、調整部材28の周面をカム状に形成すれば、シームレスに無段階で打ち込み深さを調整できる調整機構を提供することができる。
【0067】
また、調整部材28は、打ち込み工具10の前面側に配置されている。このような構成によれば、打ち込み工具10の側部の視認性を損なわないので、打ち込み位置を側方から見ながら打ち込み作業を行うことができる。また、調整部材28の状態を目視しやすいので、打込み深さの設定確認が容易であり、確実な打込み作業を行うことができる。
【0068】
また、調整部材28は、コンタクト検知部22が押し付けを検知する位置までコンタクト部材20が摺動しないように規制可能としてもよい。このような構成によれば、打ち込み深さを調整する調整部材28によって、打ち込みができないようにロックすることが可能となる。
【0069】
なお、上記した実施形態においては、コンタクト検知部22をスイッチで形成したが、コンタクト検知部22は、コンタクト部材20が被打ち込み材50に押し付けられたことを検知できるものであればよく、他の態様であってもよい。例えば、電気的なスイッチを使用せずに、機械的に作動する部材によってコンタクト検知部22を構成してもよい。なお、電気的なスイッチを使用せずにコンタクト検知部22を構成した場合には、公知の手段によりコンタクト検知部22がトリガ15の操作を機械的にロックまたは無効化するようにすればよい。