特許第6870235号(P6870235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870235
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】容器の製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20210426BHJP
   B65B 61/24 20060101ALI20210426BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   B65B61/24
   C12M3/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-153701(P2016-153701)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-19652(P2018-19652A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 郷史
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−116150(JP,A)
【文献】 特開2006−055069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0027301(US,A1)
【文献】 特表2003−500265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
B65B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された載置台に袋状フィルム容器を載置する工程と、
載置された前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する工程と、
前記載置台と、前記載置台に載置された前記袋状フィルム容器と対向する押圧部材との少なくとも一方を加熱しながら、載置された前記袋状フィルム容器を前記押圧部材で1又は複数の窪みが表面に形成されるように加圧する工程と、
を含むことを特徴とする細胞培養容器の製造方法。
【請求項2】
前記袋状フィルム容器の周辺を拘束部材で拘束しつつ、前記載置台に載置された前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する請求項1に記載の細胞培養容器の製造方法。
【請求項3】
前記載置台のうち前記拘束部材と対向する部位には断熱領域が形成されている請求項2に記載の細胞培養容器の製造方法。
【請求項4】
前記押圧部材を前記載置台から所定距離だけ離間しつつ前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入することで、天面が張り出した膨出形状を前記袋状フィルム容器に形成する請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養容器の製造方法。
【請求項5】
前記載置台に載置された前記袋状フィルム容器の内部に前記流体が導入されたとき、前記載置台に形成された前記凹部を介して吸引する工程を更に有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞培養容器の製造方法。
【請求項6】
前記袋状フィルム容器が加熱された後に、前記載置台及び前記押圧部材の少なくとも一方を冷却する工程を更に有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養容器の製造方法。
【請求項7】
1又は複数の窪みを袋状フィルム容器に形成するため前記袋状フィルム容器を載置する載置面に1又は複数の凹部が形成された載置台と、
前記載置面に載置された前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する流体導入装置と、
前記載置面に対して進退可能に配置されて、前記流体が導入された前記袋状フィルム容器を加圧する押圧部材と、
前記載置台と前記押圧部材の少なくとも一方を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする細胞培養容器の製造装置。
【請求項8】
前記載置面に対向して配置されて、当該載置面に載置された前記袋状フィルム容器の周辺を拘束する拘束部材をさらに備え、
前記拘束部材で前記袋状フィルム容器の周辺部を拘束しながら、前記流体導入装置で前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する請求項7に記載の細胞培養容器の製造装置。
【請求項9】
前記載置台に載置された前記袋状フィルム容器の内部に前記流体が導入されたとき、前記載置台に形成された前記凹部を介して吸引する吸引装置をさらに備える請求項7又は8に記載の細胞培養容器の製造装置。
【請求項10】
前記加熱装置による加熱の後に、前記載置台と前記押圧部材の少なくとも一方を冷却する冷却装置をさらに備える請求項7〜9のいずれか一項に記載の細胞培養容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の液体などを貯蔵可能な容器の製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療や再生医療に代表される近代医療分野では、目的とする細胞(組織、微生物、ウイルスなどを含む)を人工的な環境下で培養・分化誘導することが行われている。そして近年では特に、上述した細胞を人工的な環境下で効率良く大量に培養・分化誘導することが求められている。
【0003】
ここで細胞の培養・分化誘導に際しては、増殖する細胞に必要な培地成分の供給を行う観点から、培地中の細胞密度を適正な範囲に維持することが重要となる。細胞の増殖に伴って培地中の細胞密度が高くなると培地成分の枯渇や細胞自身の代謝産物の蓄積などによって細胞の増殖が阻害されるからである。一方で、細胞の効率的な増殖にはある程度の細胞の凝集塊を形成することが重要であるという知見もあり、培地中の細胞密度が低すぎても細胞を効率良く増殖・分化誘導させることができない。
このような背景から、培地中の細胞密度が適性に維持されるように継代培養を繰り返し行うという手法が従来から用いられている。
【0004】
かような継代培養の手法として、ウェルプレートやフラスコなどが培養容器として用いられることがある。
例えば特許文献1では、適度の細胞密度となるようにウェルプレートを用いて培地とともに細胞を個々のウェルに加えて培養を開始する技術が開示されている(段落[0027]など参照)。この特許文献1では、ウェル内で細胞を十分に増殖させてからフラスコに移し替えて新たな培地を加え、一定量に増殖した時点で更に容量の大きいフラスコに移し替えて同様の処理を行うことで、細胞を大量に培養することが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、直方体などの多面体形状に形成されたフラスコタイプの培養容器の一側の面に複数の窪みを形成する技術が開示されている。この特許文献2では、まず上記した複数の窪みで細胞の凝集塊を形成し、次いでこれを容器内の対面に形成された幅広の培養面に移してより大きな凝集塊となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−241159号公報
【特許文献2】特開2006−055069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようにして継代培養を行うにあたっては、ウェルプレートの個々のウェルに細胞を配置する際やウェルプレートからフラスコに細胞を移し替える際に、ピペッティング操作を何回も繰り返す必要があり煩雑な作業を強いられる。また、継代のたびに新たなフラスコなどの培養容器に細胞を移さなければならないので、作業が煩雑になるに留まらず、意図しない細菌やウイルスなどのコンタミネーションのリスクも高くなってしまう。
【0008】
また、特許文献2のようなフラスコタイプの培養容器では、開口部を閉塞する蓋を外して、開口部を開放したときにしかガス交換が行われない。このため、培養中の細胞に十分な量の酸素を供給できないだけでなく、ガス交換に際してもコンタミネーションのリスクが避けられない。さらに、実験室レベルでない規模で細胞を大量に培養するには、容量が限られているフラスコタイプの培養容器を用いることは非現実的である。
【0009】
本発明は上記した課題を一例として解決することを鑑み、培養時の細胞密度を適性に維持しながら、コンタミネーションのリスクを低減しつつ、同一の容器内で効率良く細胞を培養・分化誘導することが可能な細胞培養容器の製造方法およびその製造装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明における細胞培養容器の製造方法は、凹部が形成された載置台に袋状フィルム容器を載置する工程と、載置された前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する工程と、前記載置台と、前記載置台に載置された前記袋状フィルム容器と対向する押圧部材との少なくとも一方を加熱しながら、載置された前記袋状フィルム容器を前記押圧部材で1又は複数の窪みが表面に形成されるように加圧する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明における細胞培養容器の製造装置は、1又は複数の窪みを袋状フィルム容器に形成するため前記袋状フィルム容器を載置する載置面に1又は複数の凹部が形成された載置台と、前記載置面に載置された前記袋状フィルム容器の内部に流体を導入する流体導入装置と、前記載置面に対して進退可能に配置されて、前記流体が導入された前記袋状フィルム容器を加圧する押圧部材と、前記載置台と前記押圧部材の少なくとも一方を加熱する加熱装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1又は複数の窪みが表面に形成された容器を効率的に製造することが可能となる。そして特に細胞培養の用途に適用した場合においては、培養時の細胞密度が適性に維持されて増殖に必要な培地成分の枯渇が抑制可能であって異物などのコンタミネーションリスクも抑制された容器を効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る細胞培養容器1の概略を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図2】第1実施形態における細胞培養容器の製造装置20の概略構成を示す模式図である。
図3】第1実施形態における細胞培養容器の製造装置20のうち載置台22と押圧部材21の構造を説明する模式図である。
図4】第1実施形態における細胞培養容器の製造装置20の状態遷移図である。
図5】第1実施形態における細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態における細胞培養容器の製造装置30の概略構成を示す模式図である。
図7】第2実施形態における細胞培養容器の製造装置30の状態遷移図である。
図8】第2実施形態における細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
図9】第3実施形態における細胞培養容器の製造装置40の概略構成を示す模式図である。
図10】第4実施形態における細胞培養容器の製造装置50の概略構成を示す模式図である。
図11】第4実施形態における細胞培養容器の製造装置50のうち押圧部材21と拘束部材29との位置関係を説明する模式図である。
図12】第4実施形態における細胞培養容器の製造装置50の状態遷移図である。
図13】第4実施形態における細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
図14】変形例1における細胞培養容器の製造装置60の概略構成を示す模式図である。
図15】変形例2における加熱装置24と拘束部材29を説明する模式図である。
図16】変形例3における載置台22を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、細胞培養の用途に適用した場合における本発明の容器の製造方法および容器の製造装置について具体的に説明する。なお、説明の便宜上、以下の記載においてX方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ規定したが、本発明の権利範囲を意図的に限定又は減縮するものでない。
【0015】
≪第1実施形態≫
[細胞培養容器]
図1に示す細胞培養容器1は、底面に窪みが複数設けられた細胞培養容器であって、ガス透過性を有する公知のプラスチックフィルムからなる容器本体2と、培地や細胞などが流通可能な管状の部材からなる注入出用ポート3とを備えている。
【0016】
容器本体2は、周辺部がシールされ、その天面2a側が台地状に膨出した膨出形状を有しており、平坦面とされた天面2aの縁が傾斜して周辺部に連なるように形成されている。これとともに、容器本体2の底面2bには、細胞培養部となる窪み4が設けられている。なお、本実施形態では窪み4は複数設けられているが、少なくとも1つ設けられていればよい。また、容器本体2の大きさは特に限定されないが、例えば縦20〜1000mm、横20〜1000mmとするのが好ましい。
また、容器本体2を形成するプラスチックフィルムのガス透過性は、JIS K 7126のガス透過度試験方法に準拠して、試験温度37℃で測定した酸素の透過度が、5000mL/(m2・day・atm)以上であるのが好ましい。
【0017】
かような容器本体2を形成するプラスチックフィルムに用いる材料としては、所望のガス透過性を有していれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単層で用いても、同種又は異種の材料を積層して用いてもよいが、周辺部をシールする際の熱融着性を考慮すると、シーラント層として機能する層を有しているのが好ましい。
また、当該プラスチックフィルムは、細胞培養の進行状況や細胞の状態などを確認できるように、一部又は全部が透明性を有しているのが好ましい。
【0018】
容器本体2の底面2aに設ける窪み4は、容器本体2内における細胞の移動を抑止しつつ培養中の細胞が一つの窪み4に留まることが可能な程度の開口径(直径)であるのが好ましい。なお窪み4の開口径は、全ての窪み4で同一としてもよく、例えば、底面2bを複数の領域に分割して、それぞれの領域ごとに窪み4の開口径を異ならせるなどして、底面2aに設ける窪み4が、開口径が異なる二種以上の凹部を含んでいてもよい。また、図1に示す細胞培養容器1では、窪み4の底部に細胞が集まり易くなるように、窪み4の形状を球冠状としているが、窪み4の形状は、これに限定されない。
【0019】
また、底面2bに占める窪み4の占有面積は、底面2bの窪み4以外の部分に細胞が滞留してしまうのを避けるために、成形性が損なわれない範囲でできるだけ大きくするのが好ましく、具体的には、底面2bの面積に対して30〜90%であるのが好ましい。窪み4の配列は、図示するような千鳥状として、底面2bに占める窪み4の占有面積ができるだけ大きくなるようにするのが好ましいが、必要に応じて格子状に配列してもよい。
【0020】
注入出用ポート3は、培地や細胞などが流通可能な管状の部材からなるのは前述した通りであるが、注入出用ポート3を形成する管状の部材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン系エラストマー、FEPなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形、押出成形などにより、所定の形状に成形することができる。
【0021】
以上のごとき細胞培養容器1を用いて細胞培養を行うには、注入出用ポート3に接続された液送チューブを介して閉鎖系を維持しつつ、培地とともに培養対象の細胞を容器本体2に注入する。そして、容器本体2に注入された細胞は、培地中を沈降して各窪み4の底部に集められる。
【0022】
[細胞培養容器の製造装置]
次に、図2及び図3を用いて本実施形態における細胞培養容器の製造装置20について説明する。
図2に示すとおり、細胞培養容器の製造装置20は、押圧部材21、載置台T、加熱装置24、および流体導入装置26を含んで構成されている。
【0023】
押圧部材21は、載置台Tの載置面に載置された袋状フィルム容器を加圧する機能を備えている。なお、袋状フィルム容器とは、後に細胞培養容器1となるベースであって、未だ窪み4や膨出形状が形成されていない容器をいう。この押圧部材21は、例えばアルミニウムや鉄などの金属やプラスチックなどの樹脂で形成されている。図3に示すとおり、押圧部材21の外形は、例えば矩形状であり、例えば上記載置面に載置された袋状フィルム容器の外形よりも若干大きくなるように設定されている。なお、押圧部材21のうちXY平面方向の大きさは、最低限として上記した膨出形状のうち平坦な頂面を押圧できる程度の面積があればよく、例えば第4実施形態で説明する拘束部材29がある場合などはその内側までに制限される。
【0024】
そして押圧部材21は駆動機構25と接続されており、この駆動機構25を介して載置面に対して進退可能に配置されている。後述する細胞培養容器の製造時には、押圧部材21は、載置面に載置されて流体が導入された袋状フィルム容器を加圧する。なお、駆動機構25については特に制限はなく、流体圧シリンダ機構やボールネジ機構あるいは電動モータ機構など公知の駆動機構を適用することができる。
【0025】
載置台Tは、袋状フィルム容器を載置する載置面に凹部が形成された支持台であり、この袋状フィルム容器を支持する機能を備えている。なお、本実施形態の載置台Tは、上記した細胞培養容器1の窪み4に対応して複数の凹部が形成されているが、細胞培養容器1の窪み4が1つであれば凹部も1つとなる。すなわち、本実施形態の載置台Tには、1又は複数の凹部が形成されている。
本実施形態の載置台Tは、載置台本体部22と容器支持部23の2つの材料から構成されている。
載置台本体部22は、容器支持部23よりも熱伝導率の低い材料で形成されている。そして図2及び図3に示すとおり、載置台本体部22の上面には凹部が設けられ、この凹部内に容器支持部23が収容されている。また、載置台本体部22は、載置台Tに袋状フィルム容器が載置された際に当該袋状フィルム容器の周辺を支持する機能も備えている。換言すれば、載置台本体部22は、袋状フィルム容器の周辺を支持する載置面としての機能を担っている。
【0026】
容器支持部23は、載置台本体部22よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。本実施形態では、容器支持部23はアルミニウムが用いられるとともに、載置台本体部22は鋳鉄が用いられている。なお、後述する図16に示す例などのように、載置台本体部22と容器支持部23は、同じ材料で形成されていてもよく、必ずしも熱伝導率が異なることを要しない。
【0027】
図3に示すように、容器支持部23の上面(袋状フィルム容器を載置する載置面)には複数の凹部23aが形成されている。この凹部23aは、上記した細胞培養容器1の窪み4と対応している。したがって、凹部23aの開口径は、全ての凹部23aで同一としてもよい。あるいは容器支持部23の載置面を複数の領域に分割し、それぞれの領域ごとに凹部23aの開口径を異ならせるなどして、開口径が異なる二種以上の凹部23aを含んでいてもよい。
【0028】
また、凹部23aの形状を球冠状としているが、凹部23aの形状はこれに限定されず柱状などでもよい。
さらに、凹部23aの配列についても、図示するような千鳥状として凹部23aの占有面積ができるだけ大きくなるようにするのが好ましいが、必要に応じて格子状に配列してもよい。
【0029】
加熱装置24は、載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を加熱する機能を備えている。本実施形態の加熱装置24は、例えばニクロム線などの抵抗加熱装置が例示でき、押圧部材21や載置台本体部22もしくは容器支持部23に埋設することができる。
より具体的には、本実施形態の加熱装置24は、載置台本体部22の内部に埋設される(図2参照)とともに、押圧部材21のうち押圧側となる底面側に埋設される(図3参照)。
【0030】
このうち、載置台本体部22に埋設される加熱装置24は、細胞培養容器1の底面2aに対応するように載置台本体部22の表面全体に渡って配置されている。これにより、底面2aに設けられる複数の窪み4に漏れなく熱を伝えることが可能となっている。
一方で、押圧部材21に埋設される加熱装置24は、押圧部材21の底面に広く配置されるわけではなく、上記した細胞培養容器1の天面2aの縁となる位置に対応して配置されている。これにより、無駄な加熱を省いて必要な箇所に効率的に加熱を行うことが可能となっている。
【0031】
流体導入装置26は、載置台Tの載置面に載置された袋状フィルム容器の内部に流体を導入する機能を備えている。本実施形態における流体導入装置26は、上記した注入出用ポート3を介して袋状フィルム容器の内部に流体を導入する。なお、流体導入装置26によって導入される流体は、液体または気体が例示できる。このうち流体としては純水などが具体的に適用され、一方で気体としては清浄化された空気(クリーンエアー)や窒素などの不活性ガスが適用される。このうち、取り扱いや処理の容易性の観点から、本実施形態ではクリーンエアーが適用されている。
また、本実施形態の流体導入装置26は、袋状フィルム容器の内部に導入する流体の供給圧を調整する機能も備えている。これにより、押圧部材21によって袋状フィルム容器が加圧される前後で、上記した供給圧を一定とし又は可変したりすることが可能となっている。
【0032】
なお、流体導入装置26は、上記した流体の供給圧を調整する機能に代えて、流体の供給流量を制御する機能を備えていてもよい。これにより、袋状フィルム容器の内部に供給する流体の流量を制御することによって、上記した容器本体2の膨出形状における張り出し量の制御を容易に行うことが可能となる。より具体的には、例えば張り出し量が小さい膨出形状を容器本体2に形成する場合(換言すれば薄い液厚(少液量)向けの容器)では、流体導入装置26は、袋状フィルム容器内に供給する流体の供給流量を少なくするよう制御してもよい。一方で、張り出し量が大きい膨出形状を容器本体2に形成する場合(換言すれば厚い液厚(大液量)向けの容器)では、流体導入装置26は、袋状フィルム容器内に供給する流体の供給流量を多くするよう制御してもよい。
【0033】
また、本実施形態の細胞培養容器の製造装置20は、さらに制御装置CPを含んでいてもよい。この制御装置CPは、上記した加熱装置24、駆動機構25および流体導入装置26の動作を制御する機能を備えている。具体的に制御装置CPとしては、不図示のメモリやCPUを備えたコンピューターが例示できる。なお、細胞培養容器の製造装置20は必ずしも制御装置CPを具備する必要はなく、LANなどのネットワークを介して離れた場所から遠隔操作されてもよい。
【0034】
[細胞培養容器の製造方法]
次に、図4及び図5を用いて本実施形態における細胞培養容器の製造方法について説明する。図4は本実施形態における細胞培養容器の製造装置20の状態遷移図であり、図5図4の状態遷移図にも対応した細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
【0035】
まず図4(a)および図5のステップ1に示すとおり、複数の凹部23aが形成された載置台Tに袋状フィルム容器1´を載置する。このとき、袋状フィルム容器1´の周辺が載置台本体22で支持されるように載置することが好ましい。
ステップ1で袋状フィルム容器1´が載置された後は、図4(b)および図5のステップ2に示すとおり、袋状フィルム容器1´の内部に流体を導入する。このとき、本実施形態では、流体導入装置26は、上述したとおり清浄化されたクリーンエアーを供給圧fで供給する。なお上述のとおり、流体導入装置26は、供給圧に代えて供給流量に基づいてクリーンエアーの供給動作を行ってもよい。
【0036】
次いで、図4(c)並びに図5のステップ3及びステップ4に示すとおり、載置台Tと、この載置台Tに載置された袋状フィルム容器1´と対向する押圧部材21との少なくとも一方を加熱しながら、載置された袋状フィルム容器1´を押圧部材21で加圧する。換言すれば、袋状フィルム容器1´の内部に流体を導入された後で、押圧部材21を載置台Tに近接させて袋状フィルム容器1´を加圧する。
なお、このときの加熱温度に関しては、袋状フィルム容器1´が溶融せずに軟化する程度の温度が好ましく、例えば80℃程度に設定してもよい。
また、ステップ3とステップ4とはこの順でなくともよく、例えば押圧部材21で袋状フィルム容器1´を加圧した後で、加熱装置24によって載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を加熱してもよい。このとき、本実施形態では、流体導入装置26は、上述したとおり清浄化されたクリーンエアーを供給圧fで供給する。
【0037】
本実施形態では、加熱装置24は、押圧部材21と載置台Tの双方に設置されている。これにより、袋状フィルム容器1´のうち後に窪み4となる領域に対しては載置台Tに設置された加熱装置24で加熱することができ、更に後に膨出形状となる領域に対しては押圧部材21に設置された加熱装置24で効率良く加熱することが可能となる。
【0038】
ステップ3およびステップ4で袋状フィルム容器1´に対して加熱および加圧が開始された後は、図5のステップ5に示すとおり、所定の時間t1が経過したか否かが判定される。
この所定の時間t1としては、上記した窪み4や膨出形状が形成される限りにおいて特に制限はないが、例えば数秒〜数分程度であってもよい。
このように本実施形態では、押圧部材21を載置台Tから所定距離だけ離間しつつ袋状フィルム容器1´の内部に流体を導入することで、天面が張り出した膨出形状を袋状フィルム容器1´に形成することが可能となっている。
【0039】
なお、このステップ3〜5においては、流体導入装置26は、押圧部材21の上記加圧の前後で流体の供給圧を調整してもよい。すなわち、袋状フィルム容器1´への押圧部材21の加圧によって容器内部の圧力が高まるが、流体導入装置26が流体の供給圧を調整することで容器内部の圧力が過度に変化してしまうことを抑制できる。換言すれば、流体導入装置26は、制御装置CPの制御の下で、押圧部材21による加圧力の付与に応じて袋状フィルム容器1´の内圧が一定となるように流体の供給圧を一定の値(f=fとする)にしてもよい。なお、流体導入装置26は、制御装置CPの制御の下で、押圧部材21による加圧力の付与に応じて袋状フィルム容器1´の内圧が変化(増加または減少)するように流体の供給圧を可変(f≠fとする)してもよい。
【0040】
そしてステップ5で所定の時間t1が経過したと判定された場合には、図4(d)および図5のステップ6に示すように、駆動機構25を介して押圧部材21を退避させた後に、袋状フィルム容器1´を取出すことで完了となる。取り出された袋状フィルム容器1´には上述した複数の窪み4や膨出形状が形成されており、以上をもって本実施形態の細胞培養容器1が製造されたことになる。
【0041】
≪第2実施形態≫
次に本発明の第2実施形態について、図6〜8を参照して説明する。
ここで、第2実施形態における細胞培養容器の製造装置30が第1実施形態と異なる点は、容器支持部23に吸引流路23bが設けられる点、吸引装置27を備える点、さらに温調装置28を備える点などが挙げられる。
よって以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、第1実施形態と同じ構成あるいは同じ機能を有する要素については第1実施形態と同じ符号を付してその説明を適宜省略する(後述する他の実施形態や変形例についても同じ)。
なお、本実施形態では吸引装置27と温調装置28の双方を備える構成として説明するが、この形態に限られず少なくとも一方を具備していればよい。
【0042】
図6に示すとおり、細胞培養容器の製造装置30は、吸引装置27をさらに含み、加熱装置24の代替として温調装置28を有して構成されている。
吸引装置27は、載置台Tに載置された袋状フィルム容器1´の内部に流体が導入されたとき、この載置台Tに形成された複数の凹部23aを介して吸引する機能を備えている。また、本実施形態の容器支持部23には、凹部23aと連続する流路23bが形成されており、この流路23bは載置台本体22の一部を貫通して吸引装置27と接続されている。
【0043】
そして吸引装置27は、不図示の負圧源と接続されており、制御装置CPの制御の下で流路23bを介して吸引動作を行うことが可能となっている。これにより、袋状フィルム容器1´が載置されている際には凹部23aの内部は負圧状態となることから、袋状フィルム容器1´の底面(容器支持部23に載置されている面)が吸引されることになる。
したがって本実施形態の吸引装置27によれば、袋状フィルム容器1´の底面に上記した窪み4を形成するときのアシストを行うことが可能となっている。
【0044】
温調装置28は、第1実施形態で説明した加熱装置24の機能に加え、載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を冷却する冷却装置の機能をさらに備えている。この温調装置28の具体例として、種々の公知の装置が適用可能であるが、例えばペルチェ素子などが例示できる。なお、温調装置28は、加熱機能と冷却機能を兼備した単一の素子を適用してもよいし、例えばニクロム線などの加熱装置とファンなどの冷却装置とを個別に備える形態としてもよい。
【0045】
[細胞培養容器の製造方法]
次に、図7及び図8を用いて第2実施形態における細胞培養容器の製造方法について説明する。図7は本実施形態における細胞培養容器の製造装置30の状態遷移図であり、図8図7の状態遷移図にも対応した細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
【0046】
まず図7(a)および図8のステップ1に示すとおり、複数の凹部23aが形成された載置台Tに袋状フィルム容器1´を載置する。このとき、袋状フィルム容器1´の周辺が載置台本体22で支持されるように載置することが好ましい。
ステップ1で袋状フィルム容器1´が載置された後は、図7(b)および図8のステップ2に示すとおり、袋状フィルム容器1´の内部に流体を導入する。このとき、流体導入装置26は、清浄化されたクリーンエアーを供給圧fで供給する。
【0047】
次いで、図7(c)並びに図8のステップ3〜ステップ5に示すとおり、載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を加熱し、押圧部材21で袋状フィルム容器1´を加圧し、さらに載置台Tの凹部23aを介して吸引する。
このとき、温調装置28(加熱装置)による加熱温度としては、袋状フィルム容器1´が溶融せずに軟化する程度の温度が好ましく、例えば80℃程度に設定してもよい。
また、押圧部材21は加圧力Fの大きさで袋状フィルム容器1´を加圧しており、吸引装置27は吸引力fの大きさで吸引を行っている。すなわち本実施形態では、載置台Tに載置された袋状フィルム容器1´の内部に流体が導入されたとき、載置台Tに形成された複数の凹部23aを介して吸引する動作が行われる。
【0048】
このように、袋状フィルム容器1´には押圧部材21による加圧力Fと吸引装置27による吸引力fが加わるが、制御装置CPは、袋状フィルム容器1´の内圧が若干上がるように流体導入装置26による供給圧を調整する(この場合には、f<fの関係が成立している)制御を行う。これによっても、袋状フィルム容器1´の内部に過度な圧力が加わってしまうことが抑制される。なお、第1実施形態と同様に、制御装置CPは、流体導入装置26による供給圧を一定の値(すなわちf=f)とし、又は減少させる制御を行ってもよい。
また、ステップ3〜ステップ5は必ずしもこの順でなくともよく、これらのステップが少なくとも一時期において並行されていれば、同時に行ってもよいし順番を適宜異ならせてもよい。
【0049】
ステップ3〜ステップ5が開始された後は、図8のステップ6に示すとおり、所定の時間t1が経過したか否かが判定される。
この所定の時間t1としては、上記した窪み4や膨出形状が形成される限りにおいて特に制限はないが、例えば数秒〜数分程度であってもよい。
【0050】
そしてステップ5で所定の時間t1が経過したと判定された場合には、図7(d)および図8のステップ7に示すように、載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を冷却する。より具体的には、温調装置28が冷却装置として機能し、上記した加熱装置として加熱した領域に対して冷却する動作が実行される。また、温調装置28による冷却温度については特に制限はないが、成形中に軟化していたフィルムが固化する程度の温度が望ましく、加熱を80℃程度まで行ったとすれば例えば50℃程度まで冷却することが例示される。
なお、温調装置28が上記した冷却動作を行っているとき、並行して押圧部材21による加圧動作、流体導入装置26による流体の導入動作、および吸引装置27による吸引動作が実行される。
これにより、袋状フィルム容器1´において後に窪み4や膨出形状となる部位が、成形時のまま冷却固化されることになる。従って本実施形態によれば、成形が完了して離型する際に容器形状の崩れを防ぐことができ、より確実に窪み4や膨出形状が細胞培養容器1に形成することが可能となる。
【0051】
ステップ7が開始された後は、図8のステップ8に示すとおり、所定の時間t2が経過したか否かが判定される。
なお、このステップ8における判定は、袋状フィルム容器1´の温度が固化温度に達したかどうかという基準で行われる。従ってこの所定の時間t2は、一例として上記した固化温度に到達するまでの時間に対して若干の余裕を加えた時間で決定することができ、上記した窪み4や膨出形状が形成される限りにおいて特に制限はないが、例えば数秒〜数分程度であってもよい。
【0052】
そしてステップ8で所定の時間t2が経過したと判定された場合には、図7(e)および図8のステップ9に示すように、駆動機構25を介して押圧部材21を退避させた後に、袋状フィルム容器1´を取出すことで完了となる。取り出された袋状フィルム容器1´には上述した複数の窪み4や膨出形状が形成されており、以上をもって本実施形態の細胞培養容器1が製造されたことになる。
【0053】
≪第3実施形態≫
次に本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。
ここで、第3実施形態における細胞培養容器の製造装置40が第1実施形態と異なる点は、容器支持部23を搭載しない載置台本体22が載置台Tである点、この載置台Tに形成される凹部が貫通された孔となっている点などが挙げられる。なお、本実施形態において、載置台Tに形成される孔は、必ずしも貫通孔でなくともよい。
【0054】
すなわち、図9に示す細胞培養容器の製造装置40は、貫通孔22aが複数形成された載置台本体22を含んで構成されている。このうち貫通孔22aは、第1実施形態における凹部23aに対応するものであるが、載置台本体22の載置面(袋状フィルム容器1´が載置される面)から反対側の底面にかけて貫通した形状となっている。このように、本発明においては、袋状フィルム容器1´を載置する載置面に形成される凹部は、下方へ貫通されてない形状に限られず、本実施形態のごとき貫通された孔として存在していてもよい。
【0055】
≪第4実施形態≫
次に本発明の第4実施形態について、図10〜13を参照して説明する。
ここで、第4実施形態における細胞培養容器の製造装置50が第1実施形態と異なる点は、拘束部材29を有し、拘束部材29で袋状フィルム容器1´の周辺を拘束しながら、流体導入装置26で袋状フィルム容器1´の内部に流体を導入する点などが挙げられる。
また、第4実施形態における細胞培養容器1は、窪み4が形成される底面が平面状となっている一方で、天面が張り出された膨出形状を備えている点にも特徴がある。なお本実施形態における「平面状」とは、X方向およびY方向において平面であることをいい、XY平面と平行な単一の面をいう。
【0056】
すなわち、図10に示すとおり、本実施形態における細胞培養容器の製造装置50は、袋状フィルム容器1´の周辺を拘束する拘束部材29を含んで構成されている。この拘束部材29は、載置面に対向して配置されて、当該載置面に載置された袋状フィルム容器1´の周辺を拘束する機能を備えている。また、拘束部材29は、駆動機構25によって、押圧部材21とは独立して載置台Tへ向けて降下することが可能となっている。
【0057】
なお、拘束部材29と押圧部材21とは必ずしも独立して降下する必要はなく、例えばバネを介して拘束部材29が駆動機構25と接続されて押圧部材21と共に降下するようになっていてもよい。
また、載置台本体22のうち拘束部材29と対向する領域に凹部を形成し、この凹部内にロックウールやウレタン樹脂などの断熱材料を配置してもよい。
【0058】
図11に示すとおり、本実施形態の拘束部材29は、袋状フィルム容器1´の周辺と対向するように、押圧部材21の周囲に設けられている。拘束部材29は、本実施形態では4つに分離されており、そのうちの1つ(図11における左端の拘束部材)は注入出用ポート3の外形に対応する形状を有している。これにより、分離した拘束部材29のそれぞれが、袋状フィルム容器1´の周辺を拘束することが可能となっている。
なお拘束部材29の材質に制限はないが、例えばアルミや鉄などの金属材料が例示できる。また、拘束部材29は、押圧部材21から熱がなるべく伝わらないように、押圧部材21よりも熱伝導率の低い材料で構成されていることが望ましい。また、拘束部材29は、必ずしも4つに分離されていなくてもよく、例えば図15を用いて後述するように全周繋いだ一体構造としてもよいし、4つのうちのいくつかが繋がった構造としてもよい。
【0059】
[細胞培養容器の製造方法]
次に、図12及び図13を用いて第4実施形態における細胞培養容器の製造方法について説明する。図12は本実施形態における細胞培養容器の製造装置50の状態遷移図であり、図13図12の状態遷移図にも対応した細胞培養容器の製造方法を説明するフローチャートである。
【0060】
まず図12(a)および図13のステップ1に示すとおり、複数の凹部23aが形成された載置台Tに袋状フィルム容器1´を載置する。このとき、袋状フィルム容器1´の周辺が載置台本体22で支持されるように載置することが好ましい。
ステップ1で袋状フィルム容器1´が載置された後は、図12(b)および図13のステップ2に示すとおり、拘束部材29が載置台Tへ向けて降下し、袋状フィルム容器1´の周辺を拘束する。
【0061】
次いで、図12(c)および図13のステップ3に示すとおり、袋状フィルム容器1´の内部に流体導入装置26によって流体を導入する。このとき、袋状フィルム容器1´の周辺を拘束部材29で拘束しつつ、載置台Tに載置された袋状フィルム容器1´の内部に流体が導入される。本実施形態においても、流体導入装置26は、清浄化されたクリーンエアーを供給圧fで供給する。
【0062】
次いで、図12(d)並びに図13のステップ4〜ステップ6に示すとおり、載置台Tと押圧部材21の少なくとも一方を加熱し、押圧部材21で袋状フィルム容器1´を加圧し、さらに載置台Tの凹部23aを介して吸引する。
このとき、加熱装置24による加熱温度としては、袋状フィルム容器1´が溶融せずに軟化する程度の温度が好ましく、例えば80℃程度に設定してもよい。
また、押圧部材21は加圧力Fの大きさで袋状フィルム容器1´を加圧しており、吸引装置27は吸引力fの大きさで吸引を行っている。
【0063】
このように、袋状フィルム容器1´には押圧部材21による加圧力Fと吸引装置27による吸引力fが加わるが、制御装置CPは、袋状フィルム容器1´の内圧を若干下げるように流体導入装置26による供給圧がfからfに変化するように制御する(この場合には、f>fの関係が成立している)。これによっても、袋状フィルム容器1´の内部に過度な圧力が加わってしまうことが抑制される。なお、制御装置CPは、袋状フィルム容器1´の内圧を一定(すなわちf=f)とし、又は若干上げるように流体導入装置26による供給圧を制御してもよい。
また、ステップ4〜ステップ6は必ずしもこの順でなくともよく、これらのステップが少なくとも一時期において並行されていれば、同時に行ってもよいし順番を適宜異ならせてもよい。
【0064】
ステップ4〜ステップ6が開始された後は、図13のステップ7に示すとおり、所定の時間t1が経過したか否かが判定される。
この所定の時間t1としては、上記した窪み4や膨出形状が形成される限りにおいて特に制限はないが、例えば数秒〜数分程度であってもよい。
【0065】
そしてステップ7で所定の時間t1が経過したと判定された場合には、図12(e)および図13のステップ8に示すように、駆動機構25を介して押圧部材21を退避させた後に、袋状フィルム容器1´を取出すことで完了となる。取り出された袋状フィルム容器1´には平面状の底面に複数の窪み4が形成されるとともに天面が張り出した膨出形状も形成されており、これにより本実施形態の細胞培養容器1が完成されたことになる。
【0066】
上記した実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、上記した実施形態に適宜適用が可能な変形例について説明する。
<変形例1>
図14は、変形例1にかかる細胞培養容器の製造装置60の概略構成を示す模式図である。
上記で説明した各実施形態の加熱装置24または温調装置28は、押圧部材21と載置台Tの双方に設置されていた。しかしながら本発明は当該形態に限定されず、加熱装置24(または温調装置28)は、押圧部材21と載置台Tの少なくとも一方に設置されていてもよい。
【0067】
すなわち図14に示すとおり、細胞培養容器の製造装置60は、押圧部材21に加熱装置24は埋設されておらず、容器支持部23に加熱装置24が埋設される形態となっている。もちろん、本変形例1においては、押圧部材21に加熱装置24が埋設されており、容器支持部23には加熱装置24が埋設されない形態となっていてもよい。
【0068】
<変形例2>
図15は、変形例2にかかる拘束部材29と加熱装置24の概略構成を示す模式図である。上記図11で説明した実施形態では、拘束部材29は複数に分離された形態となっており、押圧部材21に埋設された加熱装置24も複数に分離された形態となっていた。
しかしながら本発明はこの態様に限定されず、図15に示すとおり、拘束部材29は、押圧部材21の周囲を囲むように連続した形状となっていてもよい。
また、押圧部材21に埋設される加熱装置24についても、袋状フィルム容器1´のうち細胞培養容器1の天面2aの縁となる位置に対応してリング状(環状)の形態となっていてもよい。
【0069】
なお、同図に示すとおり、拘束部材29と押圧部材21の隙間は出来る限り狭いほうが好ましい。この隙間が大きいと、袋状フィルム容器1´の内部に流体(空気など)が注入された際にその隙間部分でフィルムが伸びてしまうからである。従って、かような観点からは、押圧部材21が挿入可能な拘束部材29の内穴の径は、できる限り押圧部材21の外縁(すなわち袋状フィルム容器1´の境界)に近づけ、且つ角部も押圧部材21の角部と同様にR状となっていることが望ましい。
【0070】
<変形例3>
図16は、変形例3にかかる載置台Tの概略構成を示す模式図である。
上記で説明した第1、第2および第4実施形態では、載置台本体22と容器支持部23とで載置台Tが構成されていた。しかしながら本発明はこの態様に限定されず、例えば載置台本体22の上面に、上記した凹部23aに対応する凹部22bを形成するとともに、断熱溝22aを形成してもよい。
すなわち、載置台Tは、載置台本体22から構成されていてもよい。なお断熱溝22aの幅や深さは特に制限はないが、例えば幅を1〜5mmとし、深さを5〜10mm程度としてもよい。
【0071】
そして細胞培養容器1の製造に際しては、例えば断熱溝22aよりも外側の領域に袋状フィルム容器1´の周辺が載置され、さらに断熱溝22aの内側の領域に袋状フィルム容器1´の残部(後に窪み4が形成される領域)が載置されるようにしてもよい。
これにより凹部22b側の領域で発生した熱が、断熱溝22aにより遮られて袋状フィルム容器1´の周辺に到達することが抑制される。
なお、例えば袋状フィルム容器1´の周辺に対して熱的な影響をさほど考慮する必要がない場合には、断熱溝22aは必須ではなく適宜これを省略してもよい。
【0072】
<その他の変形例>
上記した各実施形態や各変形例においては、載置台Tに設けられる凹部23a(または凹部22a)の配列を千鳥状あるいは格子状とする例を説明したが、これに限定されない。
すなわち、最終的に製造された細胞培養容器1における複数の窪み4が規則的に配列されて所定の模様(装飾絵柄や幾何学模様、あるいは文字・図形・記号など)が形成されるように、複数の凹部が載置台Tに形成されていてもよい。
【0073】
また、各実施形態や各変形例においては、細胞を培養する容器として袋状フィルム容器1´を用いたが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明の袋状フィルム容器1´から製造される窪み付き容器は、例えば食品や薬品を保存する容器など他の用途にも使用することができる。そしてこの窪みが上述した所定の模様を呈していれば、意匠的に高い価値を持つ容器を実現することが可能となる。
【0074】
さらに、各実施形態や各変形例において、細胞培養容器の製造装置は、袋状フィルム容器1´の窪みが形成されたか否かを観察するカメラ(撮像素子)などの観察装置(不図示)を含んでいてもよい。例えば、第3実施形態における載置台Tに設けられた複数の孔にCCD素子などを配置し、押圧部材21で袋状フィルム容器1´が加圧されたときの様子を観察することができる。このとき、載置台Tの少なくとも1つの孔にCCD素子が配置されればよく、必ずしもすべての孔に設置することを要しない。
【0075】
このように、上記した観察装置による観察結果に基づいて、押圧部材21や流体導入装置26の動作を制御することができる。これにより押圧部材21によって過不足なく袋状フィルム容器1´を加圧することができる。または、これにより、流体導入装置26によって過不足なく適正な供給圧で袋状フィルム容器1´内に流体を導入することができる。さらには、上記した観察装置の観察結果に基づいて、袋状フィルム容器1´に形成される窪みの大きさも調節することができる。
【0076】
なお、観察装置は必ずしも載置台T側に配置する必要はなく、例えば押圧部材21をガラスや耐熱性プラスチックなどの透明材料で形成すれば押圧部材21側に設置してもよい。さらには載置台Tを上記した透明材料で形成すれば、載置台Tの外側から当該載置台Tの内部(凹部の様子)を観察可能となるため、上述した観察装置を載置台Tや押圧部材21の側方や斜方に配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、種々の細胞を効率良く培養する技術や、保存性がよく意匠的に高い価値を持つ容器を製造する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 細胞培養容器
2 容器本体
3 注入出ポート
4 窪み
10 細胞培養容器
21 押圧部材
22 載置台本体
23 容器支持部
24 加熱装置
25 駆動機構
26 流体導入装置
27 吸引装置
28 温調装置
29 拘束部材
CP 制御装置
T 載置台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16