(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1中実部は、前記流入口を間に挟んで対向する、前記第1厚肉部から前記蓋に向かって形成された第1側壁及び第2側壁を含んでおり、前記第1側壁と前記第2側壁との間隔が前記第2固定部から離れるにつれて小さくなっている、
請求項1に記載の半導体装置。
前記流入口と前記流出口とに挟まれて、前記流入口から流入された前記冷媒が前記流出口に流通する方向と平行に複数のフィンを具備する放熱フィン部が前記筐体部に収納されている、
請求項6に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。
まず、半導体装置及び半導体装置の製造について、
図1並びに
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態の半導体装置の製造工程を説明するための図である。
【0012】
図2は、実施の形態の半導体装置の側面図である。
半導体装置1は、
図1及び
図2に示されるように、半導体モジュール2と、半導体モジュール2が図示を省略するはんだを介して搭載された冷却装置3とを有する。
【0013】
半導体モジュール2は、パワー半導体素子21a,21bと、積層基板22とを有している。
パワー半導体素子21a,21bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等である。パワー半導体素子21a,21bは、2つに限らず、必要に応じた数が設けられる。
【0014】
積層基板22は、絶縁板22aと、絶縁板22aのおもて面に形成された回路板22bと、絶縁板22aの裏面に形成された金属板22cとを有している。
絶縁板22aは、電気的に絶縁性を有する材料により構成されている。このような材料として、例えば、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等により構成されている。
【0015】
回路板22bは、導電性に優れた銅等の金属等により構成されており、複数の回路パターン(図示を省略)を有している。
金属板22cは、絶縁板22aの裏面全面に配置されており、熱伝導率が高いアルミニウム、鉄、銀、銅、または、これらを含む合金等により構成されている。
【0016】
半導体モジュール2は、パワー半導体素子21a,21b及び積層基板22を収容するケース、パワー半導体素子21a,21bを回路パターンに接続する配線や、パワー半導体素子21a,21b、回路板22b及び配線を封止する封止材を含んでよい。半導体モジュール2は、トランスファ成形法により封止されてもよい。
【0017】
冷却装置3は、半導体モジュール2が搭載されており、上蓋32と、下部収納部33とを有している。冷却装置3は、さらに、放熱フィン部31を有してもよい。なお、
図2では、冷却装置3の各構成の図示は省略している。
【0018】
以下、冷却装置3の各構成及び冷却装置3について、
図3〜
図6(並びに
図1)を用いて説明する。
図3は、実施の形態の放熱フィン部の斜視図である。
【0019】
図4は、実施の形態の上蓋の斜視図である。
図5は、実施の形態の下部収納部の斜視図(おもて面側)である。
図6は、実施の形態の下部収納部の斜視図(裏面側)である。
【0020】
放熱フィン部31は、
図3に示されるように、複数のフィンを平行に具備している。放熱フィン部31は押出加工またはプレス加工によって形成される。放熱フィン部31は、熱伝導性に優れたアルミニウム等により構成されている。
【0021】
上蓋32は、
図4に示されるように、おもて面32fとおもて面32fに対向する裏面32bを有する矩形状の板である。上蓋32は四隅にねじ孔321a〜321dがそれぞれ形成されている。上蓋32は、プレス加工によって形成される。上蓋32は、熱伝導性に優れたアルミニウム等により構成されている。
【0022】
下部収納部33は、溶融したアルミニウム系の合金を鋳型に流し込んで冷却した後、鋳型から取り出すことで得られる鋳造(ダイカスト(die casting))により形成される。なお、ダイカスト材であるアルミニウム合金は、その熱伝導率は、150W/(mK)以上、その液相線温度が600℃以上の特性を有している。熱伝導率は、150W/(mK)以上、200W/(mK)以下、液相線温度は、600℃以上、660℃以下のアルミニウム合金が鋳造性の観点から好ましい。このような合金として、例えば、AC4D(アルミニウム−シリコン−銅−マグネシウム合金)、日本軽金属株式会社製のDX17(アルミニウム−7シリコン−マグネシウム−鉄合金)、DX26(アルミニウム−2ニッケル−鉄合金)が挙げられる。
【0023】
このようにして形成される下部収納部33は、
図5及び
図6に示されるように、底面331bを有する筐体状の箱形の容器である。下部収納部33は筐体部331、第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dを備える。
【0024】
図示する例では筐体部331は略直方体の形状である。筐体部331は、一端に流入口332aが、流路331pを間に挟んだ反対側の他端に流出口332bが設けられている。流入口332a及び流出口332bはそれぞれ筐体部331の底面331bに設けられてよい。上蓋32と筐体部331の底面331bとの間には冷媒が流れ得る流路331pが設けられる。流入口332a及び流出口332bには冷媒の循環系を接続でき、流入口332a、流路331p及び流出口332bの経路で冷媒が循環し得る。
【0025】
第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dは外部の被設置領域に固定され得る。筐体部331及び第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dは一体成形されている。
【0026】
流入口332aと流出口332bとは、筐体部331の長手方向の中心線(
図5の一点鎖線)上に対向してそれぞれ形成されている。また、流入口332aの周囲には第1厚肉部333aが、流出口332bの周囲には第2厚肉部333bがそれぞれ形成されている。第1厚肉部333a及び第2厚肉部333bは筐体部331の底面331から上蓋32に向かって階段(テラス)状になるように形成される。第1厚肉部333a及び第2厚肉部333bは筐体部331の底面331bよりも厚く形成されている。流入口332a及び流出口332bはそれぞれテラスに開口している。
【0027】
流入口332aの(短手方向の)両側には第1固定部334a,334bが筐体部331に一体的に形成されており、筐体部331と第1固定部334a,334bとの繋ぎ目には窪み335a,335bが構成されている。流入口332aの当該両側は筐体部331の側壁が第1固定部334a,334b(曲線a1,a2)に沿って角度を有して形成されており、当該側壁の高さは第1固定部334a,334bと同様の厚さである。
【0028】
流出口332bの(短手方向の)両側にも第2固定部334c,334dが筐体部331に一体的に形成されており、筐体部331と第2固定部334c,334dとの繋ぎ目には窪み335c,335dが構成されている。流出口332bの当該両側は筐体部331の側壁が第2固定部334a,334b(曲線a3,a4)に沿って角度を有して形成されており、当該側壁の高さは固定部334c,334dと同様の厚さである。
【0029】
第1固定部334a,334bは、中実な中実部334as,334bsを含む。第2固定部334c,334dは、中実な中実部334cs,334dsを含む。中実部334as,334bs及び中実部334cs,334dsは、第1厚肉部333a及び第2厚肉部333bより厚く、鍛造法により筐体部331と一体成形される。第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dは、中実部334as,334bs及び中実部334cs,334dsに加えて、それぞれおもて面から裏面へ貫通する孔を有してよい。これらの貫通孔は上蓋32のねじ孔321a〜321dとそれぞれ同軸に設けられてよい。
【0030】
第1固定部334a,334bの中実部334as,334bsは、流入口332aを間に挟んで対向する、第1側壁334aw及び第2側壁334bwを含む。第1側壁334aw及び第2側壁334bwは、第1厚肉部333aから上蓋32に向かって形成されている。第1側壁334aw及び第2側壁334bwは、平行でなく、曲線a1,a2で示すように角度を有しており、両者の間隔は第2固定部334c,334dから離れるにつれて小さくなっている。
【0031】
同様に、第2固定部334c,334dの中実部334cs,334dsは、流入口332bを間に挟んで対向する、第3側壁334cw及び第4側壁334dwを含む。第3側壁334cw及び第4側壁334dwは、第2厚肉部333bから上蓋32に向かって形成されている。第3側壁334cw及び第4側壁334dwは、平行でなく曲線a3,a4で示すように角度を有しており、両者の間隔は第1固定部334a,334bから離れるにつれて小さくなっている。
【0032】
なお、下部収納部33の裏面336は、
図6に示されるように、筐体部331と固定部334a〜334dとが平面的に形成されており、平らになっている。
また、このような下部収納部33の底面331bの最小肉厚は1mm程度であり、第1厚肉部333a及び第2厚肉部333bの厚さは、4mm程度である。さらに、下部収納部33の流入口332a及び流出口332bの両側を包囲する側壁(第1側壁334aw、第2側壁334bw、第3側壁334cw及び第4側壁334dw)の高さは、10mm程度である。
【0033】
次に、冷却装置3の組み立て構成について
図7〜
図9(並びに
図1)を用いて説明する。
図7は、実施の形態の放熱フィン部が収納された筐体部の斜視図(おもて面側)である。
【0034】
図8は、実施の形態の冷却装置の斜視図である。
図9は、実施の形態の下部収納部と下部収納部にロウ付けされた上蓋との要部断面図である。
【0035】
まず、下部収納部33の筐体部331内に、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等のロウ材を塗り、
図7に示されるように、筐体部331内に放熱フィン部31を配置する。ロウ材として好ましくはアルミニウム及びシリコンを主要成分とするアルミニウムろうが用いられる。アルミニウムろうは、銅、マグネシウムや亜鉛等の添加成分を含んでよい。
【0036】
なお、流入口332aと流出口332bは、このようにして配置された放熱フィン部31を挟んで各フィンの一方側と他方側の筐体部331の底面331bに、放熱フィン部31の中心線(
図7中破線)上に形成されている。このため、流入口332aから筐体部331内に流入された冷媒は、放熱フィン部31の各フィンの間を流通して、流出口332bから流出する。このようにして筐体部331内には、上蓋32と筐体部331の底面331bとの間に、放熱フィン部31を含む冷媒の流路331pが設けられる。
【0037】
次いで、このような下部収納部33に対して、
図8に示されるように、裏面32bにロウ材が塗られた上蓋32を筐体部331の開口に配置する。上蓋32として、ロウ材を予め層状に接合したクラッド材を用いてもよい。なお、この際、上蓋32のねじ孔321a〜321dと、固定部334a〜334dとがそれぞれ位置合わせされている。
【0038】
そして、575℃以上、600℃未満のロウ付け温度で、上蓋32を下部収納部33側に押圧してロウ付けを行う。これにより、上蓋32が放熱フィン部31の上端部と、筐体部331の縁と、固定部334a〜334dとにそれぞれロウ付けされ、また、放熱フィン部31の下端部が筐体部331の底面331bにロウ付けされる。
【0039】
この際、下部収納部33の液相線温度はロウ材の液相線温度よりも高い600℃以上であるために、ロウ付けにより下部収納部33が溶けることなく、放熱フィン部31と、上蓋32と、下部収納部33とを一体的に確実にロウ付けすることができる。
【0040】
なお、下部収納部33の筐体部331の縁は、
図9に示されるように、外側に
反った形状をなしている。このため、上蓋32を下部収納部33の筐体部331の縁に確実にロウ付けすることができるようになる。
【0041】
このような冷却装置3の上蓋32上にはんだを介して、半導体モジュール2が設置されることで半導体装置1が構成される。
なお、冷却装置3に対して、流入口332aに冷媒を流入して、流出口332bから流出した冷媒を循環させるポンプと循環する冷媒の熱を外部に放熱する放熱装置(ラジエータ)とが備えられてもよい。
【0042】
半導体装置1では、半導体モジュール2のパワー半導体素子21a,21bが動作するに伴って発生した熱は、積層基板22を経由して冷却装置3に伝導する。冷却装置3では、上蓋32を経由して放熱フィン部31に伝導した熱が放熱フィン部31で冷媒に伝導して、冷媒が循環することで外部に放熱される。
【0043】
また、冷却装置3の断面図について、
図10を用いて説明する。
図10は、実施の形態の冷却装置の断面図である。
なお、
図10は、
図8の冷却装置3の一点鎖線Y−Yにおける断面図である。
【0044】
冷却装置3では、下部収納部33の筐体部331に収納された放熱フィン部31は、その下端部が筐体部331の底面331bに、その上端部が上蓋32の裏面32bにそれぞれロウ付けされている。
【0045】
冷却装置3の上蓋32上に配置された半導体モジュール2が発熱すると、上蓋32は熱応力が発生して反りが発生する。しかしながら、放熱フィン部31の上端と下端とが上蓋32と筐体部331の底面とにそれぞれロウ付けされていることから、上蓋32の反りが抑制される。これにより、冷却装置3が破損してしまうことが防止されて、冷却装置3の信頼性の低下を抑制することができる。
【0046】
次に、冷却装置3において、配管部が接合された下部収納部について、
図11を用いて説明する。
図11は、実施の形態の配管部が接合された下部収納部の斜視図(裏面側)である。
【0047】
下部収納部33aは、上記の筐体部331の流入口332aと流出口332bとに裏面336側から配管部337a,337bがそれぞれ一体的に設けられたものであり、他の構成は、下部収納部33と同様の構成をなしている。
【0048】
このような下部収納部33aでは、下部収納部33の形成で利用した鋳型に対して新たに配管部337a,337bに対する型が形成されている鋳型が利用される。このような鋳型に対して、下部収納部33の場合と同様にダイカストを行うことで、筐体部331と、固定部334a〜334dと、配管部337a,337bとが一体的に形成された下部収納部33aが形成される。
【0049】
ここで、参考例としての冷却装置について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、参考例の半導体装置の製造工程を説明するための図である。
図13は、参考例の半導体装置の斜視図である。
【0050】
参考例の半導体装置(図示を省略)は、
図12及び
図13に示されるように、実施の形態と同様の半導体モジュール2と、半導体モジュール2が図示を省略するはんだを介して搭載された冷却装置4とを有する。
【0051】
半導体モジュール2は、
図2で説明したように、パワー半導体素子21a,21bと、積層基板22とを有する。このため、パワー半導体素子21a,21bと積層基板22との詳細な説明は省略する。
【0052】
冷却装置4は、半導体モジュール2が搭載されるものであり、放熱フィン部41と、上蓋42と、筐体部43と、配管部44a,44bと、フランジ(図示を省略)と、固定部45a〜45dとを有している。
【0053】
以下、冷却装置4の各構成及び冷却装置4について、
図14〜
図16(並びに
図12及び
図13)を用いて説明する。
なお、放熱フィン部41は、上記で説明した放熱フィン部31と同様の構成をなしているために、説明を省略する。
【0054】
図14は、参考例の上蓋の斜視図である。
図15は、参考例の筐体部の斜視図(おもて面側)である。
図16は、参考例の配管部の斜視図である。
【0055】
上蓋42は、
図14に示されるように、矩形状をなしており、四隅にねじ孔421a〜421dがそれぞれ形成されている。上蓋42は、プレス加工によって形成される。上蓋42は、熱伝導性に優れたアルミニウム等により構成されている。
【0056】
筐体部43は、
図15に示されるように、例えば、上面視で八角形の容器型の形状をなしており、対向する一対の側壁には冷媒の流入口431a及び冷媒の流出口431bがそれぞれ形成されている。筐体部43は、プレス加工によって形成される。筐体部43は、熱伝導性に優れたアルミニウム等により構成されている。
【0057】
配管部44a,44bは、
図16に示されるように、例えば、円筒状をなしており、後述するように、筐体部43の流入口431aと流出口431bとに接合される端部にはフランジ(図示を省略)が形成されている。配管部44a,44bは、金型に配管形状の素材をセット後、型締めし、高圧の液体を充填しながら素材の両端を軸方向に圧縮して中空成形を行うバルジ加工によって形成する。または、配管部44a,44bは、切削加工によっても形成することも可能である。配管部44a,44bは、熱伝導性に優れたアルミニウム等により構成されている。
【0058】
固定部45a〜45dは、後述する
図17に示されるように、ねじが嵌合するねじ孔を有している。固定部45a〜45dは、構成材料を強圧して所定の金型の孔から押し出す押出加工により形成する。または、固定部45a〜45dは、切削加工によっても形成することが可能である。
【0059】
次に、冷却装置4の組み立てについて
図17(並びに
図12及び
図13)を用いて説明する。
図17は、参考例の放熱フィン部が収納され、配管部が接続され、固定部がセットされた筐体部の斜視図(おもて面側)である。
【0060】
まず、筐体部43内にロウを塗り、
図17に示されるように、放熱フィン部41を配置する。
そして、筐体部43の流入口431aと流出口431bとに、配管部44a,44bをそれぞれ接合する。
【0061】
なお、配管部44a,44bを筐体部43に先に接合した後に、筐体部43内に放熱フィン部41を配置しても構わない。
このように放熱フィン部41が配置され、配管部44a,44bが接合された筐体部43に対して、固定部45a〜45dを所定位置にセットする。
【0062】
上蓋42のねじ孔421a〜421d付近と、筐体部43及び放熱フィン部41と接合する箇所にロウを塗布し、上蓋42を筐体部43の開口に配置する。なお、この際、上蓋42のねじ孔421a〜421dと、固定部45a〜45dとがそれぞれ位置合わせされている。
【0063】
そして、575℃〜600℃の温度下で、上蓋42を筐体部43側に押圧する。これにより、上蓋42が放熱フィン部41の上端と筐体部43の縁とにそれぞれロウ付けされ、また、放熱フィン部41の下端が筐体部43の底面にロウ付けされる。
【0064】
これにより、
図13に示した冷却装置4が得られる。
このような冷却装置4は、上蓋42及び放熱フィン部41以外の構成が、筐体部43と、配管部44a,44bと、固定部45a〜45dとの3つに分かれていることになる。
【0065】
一方、冷却装置3の下部収納部33(並びに下部収納部33a)は、筐体部331と固定部334a〜334dと(配管部337a〜337dと)が一体となっており、構成の点数の増加が抑制されている。
【0066】
また、冷却装置4の筐体部43では、流入口431a及び流出口431bに、配管部44a,44bをそれぞれ接合する際の寸法公差をできる限り小さくすることが要求される。この寸法公差が大きい場合には、筐体部43と、配管部44a,44bとの気密性確保が難しくなる。寸法公差を小さくするためのシール材等を新たに要し、構成の点数が増加してしまう。
【0067】
一方、冷却装置3の下部収納部33aは、筐体部331の流入口332a及び流出口332bに対して配管部337a,337bが鋳造により一体的に接合されているために、高い寸法精度を実現することができる。
【0068】
次に、冷却装置3の冷却性能に関して行ったシミュレーション結果について、
図18を用いて説明する。
図18は、実施の形態の熱伝導率に対する半導体モジュールのジャンクション温度を示すグラフである。
【0069】
なお、
図18の横軸は熱伝導率(W/(mK))を、縦軸は、半導体モジュール2のジャンクション温度(℃)をそれぞれ表している。
また、
図18のグラフは、半導体装置1において、上記冷却装置3の下部収納部33のダイカスト材を異ならせた場合の半導体モジュール2のジャンクション温度のシミュレーション結果を表している。
【0070】
A点(黒丸)は、参考例であって、熱伝導率が96W/(mK)、液相線温度が580℃のアルミニウム合金(ADC12)をダイカスト材としている場合を表している。B点(白丸)は、熱伝導率が170W/(mK)、液相線温度が610℃のアルミニウム合金(実施の形態のDX17)、C点(白丸)は、熱伝導率が190W/(mK)、液相線温度が655℃のアルミニウム合金(実施の形態のDX26)をダイカスト材としている場合をそれぞれ表している。
【0071】
また、冷却装置3に用いる冷媒として、60℃のエチレングリコール系の希釈LLC(Long Life Coolant)を設定し、流量を2リットル/分としている。
このグラフによれば、参考例のA点では、ジャンクション温度が155℃を超えていることが分かる。一方、B点及びC点では、A点よりもジャンクション温度が100℃以上も低下して、より冷却していることが分かる。これは、B点及びC点の下部収納部33は、A点の下部収納部33よりも熱伝導率が高いために、放熱率がA点の場合よりも高いことが考えられる。
【0072】
さらに、既述の通り、B点及びC点の下部収納部33のダイカスト材の液相線温度は600℃を超えており、ロウ付け温度(575℃〜600℃)よりも高い。このため、ダイカストにより一体成形された下部収納部33に対して放熱フィン部31と上蓋32とをロウ付けしても、下部収納部33は溶融することなく、冷却装置3を得ることができる。
【0073】
一方、A点の下部収納部33のダイカスト材の液相線温度は600℃未満であり、ロウ付け温度程度である。このため、ダイカストにより一体成形された下部収納部33に対して放熱フィン部31と上蓋32とをロウ付けすると、下部収納部33が溶融してしまうおそれがあり、冷却装置3を適切に得ることができない場合が生じる。
【0074】
上記の半導体装置1は、パワー半導体素子21a,21bを備える半導体モジュール2と、おもて面及びおもて面に対向する裏面を有し、半導体モジュール2がおもて面に搭載された上蓋32、及び、上蓋32の裏面にロウ材で接合された下部収納部33を有する冷却装置3とを有している。下部収納部33は、底面331bを有する筐体状であり、上蓋32と底面331bの間に冷媒の流路331pを有し、流路331pの一端に流入口332aが設けられ、流路331pの他端に流出口332bが設けられた筐体部331と、筐体部331を外部の被設置領域に固定するため、流入口332aの周囲に設けられた第1固定部334a,334b及び流出口332bの周囲に設けられた第2固定部334c,334dと、を備える。筐体部331、第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dが、ロウ材の液相線温度以上の液相線温度を有する材料を含む、鋳造法により一体成形された鋳造品である。
【0075】
このような半導体装置1の冷却装置3では、筐体部331と、固定部334a〜334dとが液相線温度がロウ付け温度以上の材料を用いた鋳造法により一体成形された下部収納部33と、上蓋32と、放熱フィン部31とがロウ付けにより一体成形されている。さらに、当該材料の熱伝導率が150W/(mK)以上である。
【0076】
このような冷却装置3は、構成の点数を減らして、製造コストの削減を図ることができると共に、放熱性の低下を抑制することができる。下部収納部33aでは、さらに、筐体部331と固定部334a〜334dとに加えて、筐体部331の流入口332aと流出口332bとに配管部337a,337bを同様の鋳造法により一体成形されている。このために、構成の点数を減らして、製造コストの削減を図ることができると共に、放熱性の低下を抑制することができ、高い寸法精度及び位置精度を実現することができる。また、下部収納部33,33aは、鋳造加工で用いられる鋳型に応じて配管部337a,337bと流入口332a及び流出口332bとの配管形状・配置位置を個別最適に形成でき、設計自由度が向上する。
【0077】
また、下部収納部33,33aには、第1厚肉部333a及び第2厚肉部333bが、筐体部331の底面331bよりも厚く形成されている。さらに、流入口332a及び流出口332bの両側は、中実な中実部334as,334bs及び中実部334cs,334dsと、第1側壁334aw、第2側壁334bw、第3側壁334cw及び第4側壁334dwとを含む第1固定部334a,334b及び第2固定部334c,334dで囲まれている。収納部33,33aが鋳造法により成形されるので、第1厚肉部333a、第2厚肉部333b、中実部334as,334bs及び中実部334cs,334dsを、工数を増やさずに形成できる。
【0078】
このような構造により、流入口332aや流出口332bに機械的な大きな力が加えられても、冷却装置3が座屈し難い。さらに、第1側壁334aw、第2側壁334bw、第3側壁334cw及び第4側壁334dwの高さは固定部334a〜334dと同様の厚さであり、当該側壁は、
図5中曲線a1〜a4に沿った角度を有してよい。これにより、冷却装置3の流入口332aと流出口332bとに圧力がかかっても下部収納部33が座屈してしまうことを防止することができる。