特許第6870264号(P6870264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870264
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】運動訓練装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20210426BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20210426BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20210426BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61H1/02 K
   G09G5/36 510M
   G09G5/00 510A
   G09G5/00 550C
   G09G5/36 520G
   G09G5/38 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-192596(P2016-192596)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-51100(P2018-51100A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕也
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−215177(JP,A)
【文献】 特開2016−158057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部装着型の表示部であり、動画を表示した状態で、ユーザー自身の身体部位の一部としての訓練対象部位がユーザー自身の身体部位の位置において視認できる表示部と、
ユーザー自身の前記訓練対象部位の位置と異なる位置に、前記訓練対象部位が運動しているように見える動画を前記表示部に表示させる制御部と、
を備え
前記表示部によって、前記ユーザー自身の身体部位として前記ユーザー自身の両手が視認できる状態で、前記制御部は、前記両手の位置を認識し、前記動画を、前記ユーザー自身の前記両手の間に表示させる、
運動訓練装置。
【請求項2】
前記表示部は、光学透過型である
請求項1に記載の運動訓練装置。
【請求項3】
現実空間を撮像するカメラを更に備え、
前記表示部は、ビデオ透過型であり、
前記制御部は、前記カメラによって撮像された前記訓練対象部位を、前記訓練対象部位の現実空間の位置に対応させて前記表示部に表示させる
請求項1に記載の運動訓練装置。
【請求項4】
前記訓練対象部位は、前記ユーザー自身の両手である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の運動訓練装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記動画として表示される前記訓練対象部位を、ユーザー自身の前記訓練対象部位よりも小さく見えるように表示させる
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の運動訓練装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記動画を、ユーザー自身の前記訓練対象部位との重なりを回避して表示させる
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の運動訓練装置。
【請求項7】
動画を表示した状態で、ユーザー自身の身体部位の一部としての訓練対象部位がユーザー自身の身体部位の位置において視認できる頭部装着型の表示部に、前記訓練対象部位が運動しているように見える動画を表示するためのプログラムであって、
記訓練対象部位が前記ユーザー自身の両手であり、前記両手の位置を認識し、前記ユーザー自身の前記両手の間に前記動画を表示させる
ための、コンピューターにより実行可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運動の訓練に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、幻肢痛の治療のために、欠損した身体部位を、できるだけリアルに再現した動画を患者に視認させる手法を開示している。特許文献1は、この手法を麻痺の治療に転用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術の場合、できるだけリアルな動画を視認させるため、欠損していない部位の運動訓練に用いるときは、ユーザーの身体部位である訓練対象部位に重畳するように動画が表示される。このため、ユーザーの身体部位と、動画とを比較することが難しく、訓練の効果が低かった。本開示は、上記を踏まえ、ユーザーの身体部位と、動画とを比較しやすくすることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。本発明の第1の態様は、運動訓練装置としての態様である。この運動訓練装置は、頭部装着型の表示部であり、動画を表示した状態で、ユーザー自身の身体部位の一部としての訓練対象部位がユーザー自身の身体部位の位置において視認できる表示部と、ユーザー自身の前記訓練対象部位の位置と異なる位置に、前記訓練対象部位が運動しているように見える動画を前記表示部に表示させる制御部と、を備え、前記表示部によって、前記ユーザー自身の身体部位として前記ユーザー自身の両手が視認できる状態で、前記制御部は、前記両手の位置を認識し、前記動画を、前記ユーザー自身の前記両手の間に表示させる。
また、本発明の第2の態様は、コンピューターにより実行可能なプログラムとしての態様である。このプログラムは、動画を表示した状態で、ユーザー自身の身体部位の一部としての訓練対象部位がユーザー自身の身体部位の位置において視認できる頭部装着型の表示部に、前記訓練対象部位が運動しているように見える動画を表示するためのプログラムであって、前記訓練対象部位が前記ユーザー自身の両手であり、前記両手の位置を認識し、前記ユーザー自身の前記両手の間に前記動画を表示させるためのものである。
【0006】
本開示の一形態は、動画を表示した状態で、ユーザー自身の身体部位の一部としての訓練対象部位が視認できる表示部と;ユーザー自身の前記訓練対象部位の位置と異なる位置に、前記訓練対象部位が運動しているように見える動画を前記表示部に表示させる制御部と;を備える運動訓練装置である。この形態によれば、ユーザー自身の訓練対象部位の位置と異なる位置に動画が表示されるため、ユーザーの身体部位と動画とを比較しやすくなる。
【0007】
上記形態において、頭部装着型表示装置であってもよい。この形態によれば、持ち運びに便利であり、場所を取らずに訓練ができる。
【0008】
上記形態において、前記表示部は、光学透過型であってもよい。この形態によれば、ユーザー自身の身体部位としての訓練対象部位を実際に見ることができるので、ユーザーの身体部位と動画とを比較しやすくなる。
【0009】
上記形態において、現実空間を撮像するカメラを更に備え;前記表示部は、ビデオ透過型であり;前記制御部は、前記カメラによって撮像された前記訓練対象部位を、前記訓練対象部位の現実空間の位置に対応させて前記表示部に表示させてもよい。この形態によれば、表示部がビデオ透過型であるため、外部の余計な光が遮断されるので、訓練に集中できる。
【0010】
上記形態において、前記訓練対象部位は片手であってもよい。この形態によれば、片手の訓練を効果的に実施できる。
【0011】
上記形態において、前記訓練対象部位は、両手であり;前記制御部は、前記動画を、ユーザー自身の両手の間に表示させてもよい。この形態によれば、訓練対象部位が両手である場合に、ユーザーの両手の位置に対して、動画を見やすい位置に表示できる。
【0012】
上記形態において、前記制御部は、前記動画として表示される前記訓練対象部位を、ユーザー自身の前記訓練対象部位よりも小さく見えるように表示させてもよい。この形態によれば、動画が見やすくなる。
【0013】
上記形態において、前記制御部は、前記動画を、ユーザー自身の前記訓練対象部位との重なりを回避して表示させてもよい。この形態によれば、ユーザーの身体部位と動画とを、より比較しやすくなる。
【0014】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現できる。例えば、表示方法や、この方法を実現するためのプログラム、このプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】HMDの構成図。
図2】左眼用表示部の構成図。
図3】HMDの機能ブロック図。
図4】ユーザーがHMDを装着した様子を示す図。
図5】表示処理を示すフローチャート。
図6】表示処理中に、両手を開いている様子を示す図。
図7】表示処理中に、両手を握っている様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、HMD10の構成を示す。HMDとは、Head Mounted Displayの頭字語であり、ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)のことである。HMD10は、後述する表示処理を実行することによって、運動訓練のための表示方法を実現すると共に、運動訓練装置として機能する。運動訓練は、手のリハビリテーション(以下、リハビリ)のために実施される。
【0017】
HMD10は、ユーザーが、虚像を見ることができると同時に現実空間も見える光学透過型(光学シースルー型)である。
【0018】
HMD10は、眼鏡のような形状を有する表示装置20と、制御部70とを備える。表示装置20と制御部70とが、有線または無線で、通信可能に接続される。本実施形態では、表示装置20と制御部70とが、有線のケーブル90で接続されている。制御部70は、表示装置20との間で、ケーブル90を介して、画像の信号(画像信号)や制御の信号(制御信号)を通信する。
【0019】
表示装置20は、左眼用表示部30Lと、右眼用表示部30Rとを備える。左眼用表示部30Lは、左眼用出力部32Lと、左眼用導光部34L(図2)と、左眼用反射部36Lと、左眼用シェード38Lとを備える。右眼用表示部30Rは、右眼用出力部32Rと、右眼用の導光部と、右眼用反射部36Rと、右眼用シェード38Rとを備える。なお、右眼用の導光部は、左眼用導光部34Lと同様な構成である。
【0020】
図2は、左眼用表示部30Lの構成を詳細に示す。図2は、左眼用表示部30Lを真上から見た図である。左眼用出力部32Lは、眼鏡のテンプル(つる)の根元部分に配置され、左眼用画像生成部321Lと、左眼用投射光学系322Lとを備える。
【0021】
左眼用画像生成部321Lは、左眼用バックライト光源BLと、左眼用光変調素子LMとを備える。左眼用バックライト光源BLは、本実施形態では、赤色、緑色および青色といった発光色ごとの光源の集合から構成されている。各光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)などを用いることができる。左眼用光変調素子LMは、本実施形態では、表示素子である液晶表示デバイスによって構成されている。
【0022】
左眼用表示部30Lは、次のように機能する。左眼用画像生成部321Lに、制御部70(図1)から左眼用の画像信号が入力されると、左眼用バックライト光源BLの各光源が、赤色光、緑色光および青色光を発する。各光源から発せられた赤色光、緑色光および青色光は拡散して、左眼用光変調素子LMに入射する。左眼用光変調素子LMは、制御部70から左眼用画像生成部321Lに入力された画像信号に応じて、投射された赤色光、緑色光および青色光を空間変調することにより、画像信号に応じた画像光を発する。
【0023】
左眼用投射光学系322Lは、例えば、投射レンズ群から構成され、左眼用画像生成部321Lの左眼用光変調素子LMから射出された画像光を平行な状態の光束にする。左眼用投射光学系322Lにより平行な状態の光束にされた画像光は、左眼用導光部34Lに入射する。
【0024】
左眼用導光部34Lは、左眼用投射光学系322Lからの画像光を、左眼用反射部36Lが有する三角プリズムの半透過反射面に導く。半透過反射面の表裏のうち、装着時にユーザーの左眼EYに向く側には、ミラー層などの反射コーティングが施されている。この反射コーティングされた面により、半透過反射面に導かれた画像光は、左眼用反射部36Lの画像取り出しエリアにおいて全反射する。反射した画像光はユーザーの左眼EYに入る。この結果、ユーザーの左眼EYには虚像が見える。本実施形態においては、ユーザーに虚像を知覚させることを、画像を表示するとも表現する。
【0025】
左眼用反射部36Lに現実空間から入射する光の少なくとも一部は、左眼用反射部36Lに表示されている半透過反射面を透過し、ユーザーの左眼EYに導かれる。これにより、ユーザーには、左眼用出力部32Lにより表示された画像と、現実空間からの光学像とが重なって見える。
【0026】
図1に示すように、右眼用表示部30Rは、上記構成の左眼用表示部30Lと左右対称の同様な構成を有しており、左眼用表示部30Lと同様に作用する。
【0027】
このように、ユーザーは、表示装置20の画像取り出しエリアに表示された画像と、現実空間とを同時に見ることができる。このように表示された画像は、ユーザーに拡張現実感(AR:Augmented Reality)を与える。
【0028】
左眼用シェード38Lは、左眼用導光部34Lのユーザーの左眼EYとは反対側に配置される。本実施形態における左眼用シェード38Lは、取り外し可能である。左眼用シェード38Lは、現実空間から半透過反射面に入射しないように、光を遮る。このため、左眼用シェード38Lが取り付けられると、ユーザーは、左眼用出力部32Lにより表示された画像を、明瞭に見ることができる。
【0029】
表示装置20において、ユーザーが表示装置20を装着した際のユーザーの眉間に対応する位置には、カメラ51が設けられている。そのため、ユーザーが表示装置20を頭部に装着した状態において、カメラ51は、ユーザーが向いている方向の現実空間を撮像する。カメラ51は、単眼カメラである。他の形態におけるカメラ51は、ステレオカメラである。
【0030】
制御部70は、表示装置20を制御する。制御部70は、タッチパッド72と、操作ボタン部74とを備える。タッチパッド72は、タッチパッド72の操作面上での接触操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。タッチパッド72としては、静電式や圧力検出式、光学式といった種々のタッチパッドを採用することができる。操作ボタン部74は、種々の操作ボタンを有し、各操作ボタンの操作を検出して、検出内容に応じた信号を出力する。
【0031】
図3は、HMD10の機能ブロック図である。制御部70は、CPU80と、記憶部82と、運動モデルデータベース84と、入力情報取得部86と、電源部88とを備え、各部はバス等により相互に接続されている。
【0032】
記憶部82は、ROM、RAM、DRAM、ハードディスク等によって構成される。記憶部82には、オペレーティングシステム(ОS)をはじめとする種々のプログラム、及び表示処理用のプログラムが格納されている。
【0033】
運動モデルデータベース84は、運動モデルを蓄積したデータベースである。運動モデルは、訓練対象部位の運動をモデル化した動画データであり、本実施形態では、左手の運動モデルと、右手の運動モデルが予め蓄積されている。
【0034】
入力情報取得部86は、先述したタッチパッド72および操作ボタン部74を含む。入力情報取得部86は、タッチパッド72や操作ボタン部74からの検出内容に応じた信号を入力する。電源部88は、制御部70および表示装置20に備えられた各構成部に給電する。
【0035】
CPU80は、記憶部82に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、各種の機能を実現する。具体的には、CPU80は、入力情報取得部86から操作の検出内容の入力があった場合に当該検出結果に応じた処理を実行する機能、記憶部82に対してデータの読み書きを行う機能、および電源部88から各構成部への給電を制御する機能を実現する。
【0036】
CPU80は、記憶部82に格納されている表示処理用プログラムを読み出して実行することにより、表示処理を実行する。表示処理の実行によって、運動訓練用の表示方法が実現される。表示処理は、機能障害のある身体部分の動画を表示することによって、ユーザーの運動訓練を補助するためものである。ユーザーは、運動訓練を、麻痺した身体部位のリハビリのために実施する。
【0037】
図4は、ユーザーがHMD10を装着した様子を示す。本実施形態におけるHMD10は、少なくとも一方の手に機能障害がある人をユーザーとして想定している。本実施形態における「手」とは、手首から先の部位の全体を意味する。
【0038】
本実施形態において運動訓練の対象にしている動作は、IP関節またはMP関節の曲げ伸ばしである。IP関節とは、第1指(親指)の場合は第1関節であり、第2指〜第5指の場合は第1関節および第2関節である。MP関節とは、指と手の平との境界に位置する関節である。
【0039】
機能障害のある指を含む手のうち、リハビリの対象となる指は、第1〜第5指の少なくとも何れかである。以下、機能障害のある指を含む手を「障害手FH」、機能障害がない手を「健常手NH」と呼ぶ。「機能障害がない」とは、リハビリの対象ではないことを意味し、実際には多少の機能障害があってもよい。図4に示したユーザーの場合、右手は健常手NHであり、左手は障害手FHである。
【0040】
図5は、先述した表示処理を示すフローチャートである。表示処理は、操作ボタン部74を介して入力される開始指示を契機に開始される。表示処理は、操作ボタン部74を介して終了指示が入力されるまで、繰り返し実行される。操作ボタン部74は、ユーザー又は訓練補助者によって操作される。
【0041】
初めに、CPU80は、ユーザーの両手の位置を検出する(S110)。具体的には、カメラ51によって撮像された画像内から、左右それぞれの手の部分を抽出し、輪郭を2次元的に特定する。
【0042】
次に、CPU80は、両手の間に動画を表示できるかを判定する(S120)。具体的な判定方法は後述する。両手の間に動画を表示できる場合(S120,YES)、両手の間に動画を表示し(S130)、S110に戻る。
【0043】
図6及び図7は、表示処理中に、ユーザーが知覚する像の様子を示す。図6は、開いた状態の両手が動画IMGとして表示され、ユーザーの両手も開いている様子を示す。図7は、握った状態の両手が動画IMGとして表示され、ユーザーの両手も握っている様子を示す。ユーザーは、表示装置20の半透過反射面越しに、健常手NH及び障害手FHの位置を視認する。本実施形態における動画IMGは、ユーザーに、3次元的な像として知覚される。
【0044】
動画IMGは、ユーザー自身の両手の間に表示されているため、ユーザー自身の両手の位置とは異なる位置に表示されていると言える。加えて、動画IMGは、ユーザー自身の両手の間に表示されているため、ユーザー自身の両手と重なりを回避して表示されていると言える。ここでいう重なりの回避とは、重なる部位が全く無いことを意味する。
【0045】
図6及び図7には、表示領域R1の輪郭が示されている。表示領域R1は、画像を表示できる領域である。但し、ユーザーは、表示領域R1の輪郭がはっきりと見える訳ではない。矩形領域R2(後述)は、ユーザーには見えない仮想的な領域である。
【0046】
表示領域R1の輪郭としての長方形の辺に沿った方向であって、ユーザーの右手および左手が並ぶ方向を幅方向と定義する。また、表示領域R1の輪郭としての長方形の辺に沿った方向であって、幅方向に直交する方向を高さ方向と定義する。高さ方向において、ユーザーの手において指先側を「上」、ユーザーの手において手首側を「下」という。
【0047】
表示領域R1、並びに健常手NH及び障害手FHの位置関係は、ユーザーの姿勢によって定まる。姿勢とは、ユーザーの頭部並びに健常手NH及び障害手FHの3次元的な位置関係のことである。
【0048】
動画IMGは、握った状態と開いた状態とを交互に行き来するような連続動作を表示するためのものである。S120でYESという判断が繰り返されている間は、動画IMGの表示が継続される。
【0049】
ユーザーは、自身の両手を、動画に合わせて、握ったり開いたりするように予め指示されている。障害手FHは、リハビリの対象部位であると共に、訓練対象部位である。健常手NHは、リハビリの対象部位ではない一方、訓練対象部位である。障害手FHだけでなく健常手NHも運動訓練を実施することによって、障害手FHのリハビリの効果が高まると考えられる。
【0050】
動画IMGの高さH2は、手の高さH3よりも短くなるように表示される。手の高さH3は、ユーザーにとって、手がどの程度の高さに見えるかというパラメーターである。具体的には、高さ方向に沿った距離であって、手の部位のうち最も上に位置する部位から、手首までの距離として定義される。この結果、動画IMGとして表示される手は、健常手NH及び障害手FHよりも小さく表示される。
【0051】
手の高さH3は、ユーザーの姿勢によって変わり得る。本実施形態における動画IMGの高さH2は、固定値である。このため、動画IMGの高さH2は、最も小さい場合の高さH3よりも短くなるように予め定められている。最も小さい場合の高さH3は、腕を目一杯、伸ばした状態における手の高さH3である。他の形態では、高さH2を変動値にして、訓練補助者が設定するようにしてもよい。
【0052】
ここで、S120の判定について説明する。本実施形態では、動画IMGを、先述したように、両手の間に、且つ両手の何れにも重ならないように表示する。S120では、このように表示する2次元的なスペースがあるか否かを判定する。具体的には、CPU80は、矩形領域R2が以下の条件を全て満たす場合、S120でYESと判断する。
【0053】
条件a:矩形領域R2の幅W2が、重複幅W1内に収まっていること。重複幅W1とは、両手の間と、表示領域R1とが重複する領域の幅のことである。
条件b:高さ方向について、左右それぞれの手が、表示領域R1の範囲内に収まっていること。
【0054】
条件aは、動画IMGを、健常手NH及び障害手FHの間に、且つ、健常手NH及び障害手FHの何れにも重複しないように表示するための条件である。
【0055】
条件bは、動画IMGを、健常手NH及び障害手FHの近くに表示することで、動画IMG、並びに、健常手NH及び障害手FHを比較しやすくするための条件である。
【0056】
動画IMGを表示する位置は、条件a,bを利用して、以下のように決定する。幅方向については、矩形領域R2の中心を、重複幅W1の中心に一致させる。高さ方向については、矩形領域R2の中心を、左右の手の上端から下端までの線分の中心に一致させる。左右の手の上端とは、左手の上端と右手の上端とのうち、より上に位置する方の位置のことである。左右の手の下端とは、左手首と右手首とのうち、より下に位置する方の位置のことである。
【0057】
重複幅W1、矩形領域R2の幅W2、及び手の高さH3は、刻々と変化する。このため、S120の判定は、各時点での状態に基づき実施される。なお、両手の位置の検出に失敗した場合は、S120でNOと判定する。例えば、何れかの手がカメラの撮像範囲外に位置する場合は、その手の位置を検出することはできない。
【0058】
両手の間に動画IMGを表示できないと判定すると(S120,NO)、頭と両手との位置を調整することをユーザーに催促する(S140)。具体的には、画像として「両手の間を空けて、両手の間を見て下さい」等の文字列を表示する。その後、S110に戻る。
【0059】
以上に説明した実施形態によれば、両手を訓練対象とした運動訓練を、透過型のHMD10を用いて効果的に実施することができる。さらに、HMD10は持ち運びに便利で場所を取らないので、自宅などでも運動訓練を実施しやすい。
【0060】
本開示は、本明細書の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、先述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、先述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせができる。その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除できる。例えば、以下のものが例示される。
【0061】
両手ともが障害手FHである場合、リハビリおよび訓練対象部位は、両手であってもよい。
【0062】
訓練対象部位は、両手でなくてもよい。例えば、障害手としての片手でもよい。或いは、両脚でも片脚でもよいし、片足でも両足でもよい。ここでいう脚とは、腿(もも)より先の部位である。ここでいう足とは、足首よりも先の部位である。
【0063】
動画は、ユーザー自身の訓練対象部位の位置と異なる位置に動画が表示されればよい。例えば、ユーザー自身の訓練対象部位との重なりを許容して、動画を表示してもよい。つまり、動画の一部がユーザー自身の訓練対象部位と重なるように表示されてもよい。或いは、訓練対象部位が両手の場合、動画は両手の間では無い位置(例えば、左右それぞれの手の上方)に表示されてもよい。また、動画は両手でなくても良い。例えば、障害手としての片手でも良い。或いは、両脚でも片脚でもよいし、片足でも両足でもよい。動画が片手の場合は、片手の位置を検出し、片手と重ならない位置に動画を表示できるかを判定する。片手と重ならない位置に動画を表示できる場合、片手と重ならない位置に動画を表示する。
【0064】
運動訓練装置は、ビデオ透過型のHMDでもよい。ビデオ透過型のHMDを用いる場合、カメラによって撮像されたユーザーの身体部位としての訓練対象部位を、現実空間の位置に対応させて表示させてもよい。
【0065】
運動訓練装置は、HMDでなくてもよい。例えば、タブレット型端末でもよいし、スマートフォンでもよい。このような表示端末を用いる場合、例えば、両手の間に、表示端末を配置することで、訓練対象部位が運動しているように見える動画を、ユーザー自身の訓練対象部位の位置と異なる位置に表示してもよい。
【0066】
運動訓練は、幻肢痛の治療のために実施されてもよい。例えば、手の親指が欠損し、幻肢痛を知覚している患者が、幻肢痛の治療のために運動訓練を実施してもよい。
【0067】
実施形態のように透過型のHMDを用いる場合、動画の表示位置を調整する機能が無くてもよい。この場合でも、ユーザーが自身の姿勢を調整することによって、ユーザー自身の訓練対象部位の位置と異なる位置に、訓練対象部位が運動しているように見える動画を表示させることができる。
【0068】
動画IMGは、2次元的に知覚される像によって表示されてもよい。
【0069】
上記実施形態において、ソフトウエアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ハードウエアによって実現されてもよい。また、ハードウエアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ソフトウエアによって実現されてもよい。ハードウエアとしては、例えば、集積回路、ディスクリート回路、または、それらの回路を組み合わせた回路モジュールなど、各種回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…HMD、20…表示装置、30L…左眼用表示部、30R…右眼用表示部、32L…左眼用出力部、32R…右眼用出力部、34L…左眼用導光部、36L…左眼用反射部、36R…右眼用反射部、38L…左眼用シェード、38R…右眼用シェード、51…カメラ、70…制御部、72…タッチパッド、74…操作ボタン部、80…CPU、82…記憶部、84…運動モデルデータベース、86…入力情報取得部、88…電源部、90…ケーブル、321L…左眼用画像生成部、322L…左眼用投射光学系、BL…左眼用バックライト光源、EY…左眼、FH…障害手、LM…左眼用光変調素子、NH…健常手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7