(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明のステープラ、ステープラが搭載された後処理装置、後処理装置を備えた画像形成システムの実施の形態について説明する。
【0013】
<画像形成システム及び後処理装置の構成例>
図1は、本実施の形態の画像形成システムの概要を示す構成図、
図2は、本実施の形態の後処理装置の一例を示す構成図である。
【0014】
本実施の形態の画像形成システム500Aは、画像形成装置501Aと、少なくとも1種類の処理が可能な後処理装置502Aを備える。画像形成装置501Aは、装置内または外部の図示しない給紙部から繰り出した用紙Pに画像を形成して出力する。画像形成装置501Aは、本例では、走査露光による静電潜像の形成、トナーによる静電潜像の現像、トナーの用紙への転写及び定着により用紙Pに画像を形成する。
【0015】
本実施の形態の後処理装置502Aは、綴じ部503Aに、後述するステープラ1Aを備える。綴じ部503Aは、画像形成装置501Aから出力された用紙Pを積載する積載部504Aを備える。
【0016】
図2は、後処理装置502Aの綴じ部503Aを
図1における紙面上側から見た図である。ステープラ1Aは、積載部504Aに積載された用紙Pの一方の角部を綴じる位置Pp1、用紙Pの辺PLに沿った任意の箇所を綴じる位置Pp2、用紙Pの他方の角部を綴じる位置Pp3に、図示しない移動部により移動する。本例では、位置Pp1は、ホームポジション(HP)である基準位置を兼ね、その近傍に開閉可能な扉505Aを備える。
【0017】
<針で用紙を綴じる動作例>
図3は、針で用紙を綴じる動作の一例を示す説明図である。ステープルと称す針10Aは、
図3(A)に示すように、針クラウン11Aの両端が一の方向に折り曲げられて、針足12Aが形成される。すなわち、針10Aは、略コ字形状に成形される。
【0018】
針10Aは、針クラウン11Aが押圧されることで、
図3(B)に示すように、針足12Aが用紙Pを貫通し、針クラウン11Aが用紙Pに接する。針足12Aが用紙Pを貫通した針10Aは、
図3(C)に示すように、針足12Aを折り曲げた際に互いに重なり合う針足12Aの余剰分がカット針13Aとしてカットされる。なお、針足12Aからカットされたカット針13Aを収納する構成については後述する。
【0019】
針足12Aが所定の長さにカットされた針10Aは、
図3(D)に示すように、用紙Pを貫通した針足12Aが折り曲げられて、用紙Pが針10Aで綴じられる。
【0020】
<本実施の形態のステープラの構成例>
図4は、本実施の形態のステープラの一例を示す側面図、
図5は、本実施の形態のステープラの一例を示す斜視図である。
【0021】
本実施の形態のステープラ1Aは、針10Aの供給及び打ち出しが行われる針打出ユニット2Aと、針打出ユニット2Aとの協働で、
図3(C)に示す針10Aの針足12Aのカット及び
図3(D)に示す針足12Aの折り曲げを行って、用紙Pを針10Aで綴じる綴じユニット3Aを備える。
【0022】
針打出ユニット2Aは針打出部の一例で、針10Aが収納された針収納部である針カートリッジ100Aが着脱可能に取り付けられる収納部20Aと、針カートリッジ100Aから針10Aを繰り出す繰り出し部21Aと、針10Aを用紙Pに打ち込む打出部22Aを備える。
【0023】
針10Aは、本例では、直線状の複数本の針10Aが接着により一体とされた針シート101Aとして提供され、複数の針シート101Aが積層されて針カートリッジ100Aに収納される。打出部22Aは、針シート101Aの搬送方向の最先端の1本の針10Aを打ち出す動作に連動して、2本目もしくは3本目の針10Aを、
図3(A)等に示すように、略コ字形状に成形する。なお、針カートリッジ100Aは、着脱可能なリフィルに針シート101Aが収納される形態で供給されても良い。
【0024】
綴じユニット3Aは綴じ部の一例で、用紙Pを貫通した針10Aの針足12Aを、所定の長さでカットするカット部30Aと、用紙Pを貫通し、所定の長さにカットされた針10Aの針足12Aを、用紙Pの方向へ折り曲げるクリンチャ部31Aを備える。クリンチャ部31Aは、針10Aの打出部22Aと対向した位置に設けられ、クリンチャ部31Aの至近位置に、カット部30Aが配置される。
【0025】
ステープラ1Aは、針打出ユニット2Aと綴じユニット3Aとの間に、用紙Pを挟持する用紙挟持部4Aを備える。用紙挟持部4Aは、針打出ユニット2Aの打出部22Aと、綴じユニット3Aのクリンチャ部31Aが設けられたステープラ1Aの一方の側に設けられる。
【0026】
後処理装置502Aでは、
図1に示すように、積載部504Aで傾斜を利用して用紙Pを整列させて積載するため、ステープラ1Aは、用紙挟持部4Aにおいて用紙Pが挿抜される開口側が、上側となる向きに傾斜させて、もしくは、水平に実装される。
【0027】
ステープラ1Aは、
図2に示すように、綴じ位置の切り替え等で後処理装置502A内を移動することにより、向きは一定しない。そこで、用紙挟持部4Aが設けられる側をステープラ1Aの正面側とし、用紙挟持部4Aが設けられる側と反対側を背面側とする。また、綴じユニット3Aが設けられる側をステープラ1Aの上面側とし、針打出ユニット2Aが設けられる側をステープラ1Aの下面側とする。
【0028】
用紙挟持部4Aは、針10Aによる用紙Pの綴じ位置が、打出部22Aとクリンチャ部31Aとの間に位置できるようにするため、ステープラ1Aの正面側と、左右の両側面の3方向が開口した形状である。
【0029】
ステープラ1Aは、針打出ユニット2Aの繰り出し部21A及び打出部22Aと、綴じユニット3A、綴じユニット3Aのカット部30A及びクリンチャ部31Aを駆動する駆動部5Aを備える。
【0030】
駆動部5Aは、針打出ユニット2Aに設けられたモータ50Aに駆動されるカム51Aと、カム51Aの動作を各部に伝達するリンク部52Aを備える。
【0031】
ステープラ1Aは、カム51Aの動作がリンク部52A等を介して綴じユニット3Aに伝達されることで、針打出ユニット2Aと綴じユニット3Aが離接する方向に相対移動する。本例は、軸32Aを支点とした回転動作で、綴じユニット3Aが針打出ユニット2Aに対して離接する方向に移動する。
【0032】
ステープラ1Aは、カム51Aが一方向に回転する動作で、綴じユニット3Aが針打出ユニット2Aに近づく方向に移動して、所定のタイミングで用紙Pを用紙挟持部4Aで挟持する。また、ステープラ1Aは、カム51Aが更に一方向に回転する動作で、所定のタイミングで綴じユニット3Aが針打出ユニット2Aから離れる方向に移動して、用紙挟持部4Aでの用紙Pの挟持を解除する。
【0033】
また、ステープラ1Aは、カム51Aの動作がリンク部52A等を介して繰り出し部21A及び打出部22Aに伝達され、カム51Aが一方向に回転する動作で、針カートリッジ100Aに収納された針10Aを繰り出し部21Aにより繰り出し、繰り出された針10Aの最先端の1本を、用紙挟持部4Aで挟持された用紙Pに打出部22Aで打ち込んで、針10Aの針足12Aを用紙Pに貫通させる。また、2本目もしくは3本目の針10Aを成形する。
【0034】
更に、ステープラ1Aは、カム51Aの動作がリンク部52A等を介してカット部30A及びクリンチャ部31Aに伝達され、カム51Aが一方向に回転する動作で、用紙Pを貫通した針10Aの針足12Aをカット部30Aで所定の長さでカットし、所定の長さにカットされた針10Aの針足12Aをクリンチャ部31Aで折り曲げる。
【0035】
ステープラ1Aは、カット部30Aでカットされたカット針13Aを収納するカット針収納部6Aを備える。カット針収納部6Aは、用紙挟持部4Aが設けられた側と反対のステープラ1Aの背面側に、ステープラ1Aに対して着脱可能に取り付けられる。
【0036】
カット針収納部6Aは、2本の回収路60A
L、60A
Rを備え、ステープラ1Aに取り付けられると、収納部20Aに着脱される針カートリッジ100Aの着脱経路を塞がないように、2本の回収路60A
L、60A
Rが収納部20Aの両側に配置される。
【0037】
カット針収納部6Aは、針カートリッジ100Aに収納可能な本数の針10Aの針足12Aを最大の長さでカットした場合においても、全てのカット針13Aを収納可能な大きさを有する。
【0038】
また、カット針収納部6Aは、後処理装置502A内におけるステープラ1Aの位置によらず、カット針収納部6Aの本体部分が、回収路60A
Lあるいは回収路60A
Rの一方あるいは両方より下側に位置するように構成される。
【0039】
ステープラ1Aは、カット部30Aでカットされたカット針13Aをカット針収納部6Aに誘導する排出路33Aを綴じユニット3Aに備える。排出路33Aは、収納部20Aに着脱される針カートリッジ100Aの着脱経路を塞がないように、本例では、カット部30Aに連通した1本の排出路33Aが2本の排出路33A
L、33A
Rに分かれて、収納部20Aの左右両側に配置される。
【0040】
ステープラ1Aは、一方の排出路33A
Lの排出口34A
Lと、カット針収納部6Aの一方の回収路60A
Lの回収口61A
Lが連通し、他方の排出路33A
Rの排出口34A
Rと、カット針収納部6Aの他方の回収路60A
Rの回収口61A
Rが連通する。
【0041】
これにより、カット部30Aから一方の排出路33A
Lを通るカット針13Aが、回収口61A
Lから回収路60A
Lを通りカット針収納部6Aに収納される。また、カット部30Aから他方の排出路33A
Rを通るカット針13Aが、回収口61A
Rから回収路60A
Rを通りカット針収納部6Aに収納される。
【0042】
排出路33Aは、後処理装置502A内におけるステープラ1Aの位置によらず、排出路33A
Lと排出路33A
Rの少なくとも一方が、カット部30Aより排出口34A
L、34A
Rが低くなるように構成される。
【0043】
排出路33A(33A
L、33A
R)は、綴じユニット3Aに設けられることで、軸32Aを支点とした綴じユニット3Aの回転動作で移動する。これに対し、カット針収納部6Aは、針打出ユニット2Aに取り付けられることで、綴じユニット3Aに対して移動しない。
【0044】
そこで、一方の排出路33A
Lの排出口34A
L及び他方の排出路33A
Rの排出口34A
Rを、軸32Aの近傍に配置して、軸32Aを支点とした綴じユニット3Aの回転動作での排出口34A
L、34A
Rの移動量を少なく抑える。
【0045】
また、カット針収納部6Aの一方の回収口61A
Lに、一方の排出路33A
Lの排出口34A
Lが入り込む形態とし、かつ、回収口61A
Lの開口の範囲内で排出口34A
Lが移動できる構成とする。同様に、カット針収納部6Aの他方の回収口61A
Rに、他方の排出路33A
Rの排出口34A
Rが入り込む形態とし、かつ、回収口61A
Rの開口の範囲内で排出口34A
Rが移動できる構成とする。
【0046】
<本実施の形態のステープラのカット部とクリンチャ部の構成例>
図6は、本実施の形態のカット部及びクリンチャ部の一例を示す斜視図、
図7〜8は、本実施の形態のカット部及びクリンチャ部の動作例を示す斜視図、側面図、正面の概略平面図である。
図9は、クリンチャ部の動作例を示す斜視図、側面図である。
図10は、クリンチャ部の動作例を示す正面の平面図である。なお、
図6、
図7(A)、
図8(A)、
図9(A)は、説明のために、用紙Pを省略している。
【0047】
図6に示すように、本実施の形態のカット部30Aは、針足12Aの余剰分をカットする針足カット部材30b、30cと、針足カット部材30b、30cを移動させる移動部材30dとを備える。
【0048】
また、本実施の形態のクリンチャ部31Aは、針足12Aを用紙Pの面方向に沿って折り曲げる一対のクリンチャ31B、31Cと、クリンチャ31B、31Cを移動可能に支持する支持板32Bと、クリンチャ31Bを移動させるクリンチャリンク33Bと、クリンチャ31Cを移動させるクリンチャリンク33Cと、クリンチャ31B、31Cが互いに近づいた状態でこれらの上部を押圧する押圧部34Bを備える。
【0049】
針足カット部材30b、30cは、
図3(B)に示すように針クラウン11Aの両端が一の方向に折り曲げられて用紙Pを貫通した針10Aの針足12Aを、用紙Pの枚数に合わせて所定の長さにカットする。
【0050】
移動部材30dは、カット部30Aの底面に設けられる支持板30eと、カット部30Aの側方に設けられる移動軸30f、30gとを有する。
【0051】
支持板30eは、中央に支持板32Bに対して直交する方向に設けられた長孔30hと、支持板30eに対して下方に突出する凸部30m、30n、30o、30pとを有する。移動部材30dには、図示しない取付部材が取り付けられ、この取付部材が長孔30h内を介して綴じユニット3A内に取り付けられるため、移動部材30dが長孔30hに沿って移動する。凸部30m、30n、30o、30pは、長孔30hから等距離に配置され、凸部30m、30nが長孔30hと直交して長孔30hを挟み、凸部30o、30pが、長孔30hと直交して長孔30hを挟むように位置する。凸部30m、30nは、支持板32Bの正面近傍から突出し、凸部30o、30pは、凸部30m、30nより背面側から突出する。
【0052】
移動軸30f、30gは、それぞれ、図示しないリンク部材を介してリンク部52Aに作動連結し、移動軸30f、30gには、カム51Aの動作が伝達される。駆動部5Aがカム51Aを駆動すると、リンク部52A等を介して移動軸30f、30gが支持板32Bに対して直交する方向に進退する。移動軸30f、30gが進退移動することで、カット部30Aが、支持板32Bに対して直交する方向に進退する。
【0053】
クリンチャ31B、31Cは、同一形状の板部材を左右に向かい合うように対称に配置したものである。クリンチャ31Bは、クリンチャ31Cと向かい合う縁部に設けられる凹部31bと、凹部31bの上方に設けられる凸部31dと、凸部31dよりクリンチャ31Cの位置に対して反対側の上方に設けられる爪部31fと、クリンチャ31Bの下縁部に設けられる凹部31hと、凹部31bの下方に設けられてクリンチャ31Cに向かって突出する凸部31jとを有する。
【0054】
クリンチャ31Cは、クリンチャ31Bと向かい合う縁部に設けられる凹部31cと、凹部31cの上方に設けられる凸部31eと、凸部31eよりクリンチャ31Bの位置に対して反対側の上方に設けられる爪部31gと、クリンチャ31Cの下縁部に設けられる凹部31iと、凹部31cの下方に設けられてクリンチャ31Bに向かって突出する凸部31kとを有する。
【0055】
凸部31d、31eは、支持板32Bの上端よりも上方に突出する。
図8(C)に示すように、凸部31jは、凹部31bの上方の縁部31mよりもクリンチャ31C側に突出する。凸部31kは、凹部31cの上方の縁部31nよりもクリンチャ31B側に突出する。縁部31m、31nは、互いに上方に向かって離れる方向に傾斜する。
【0056】
支持板32Bは、
図4に示す綴じユニット3Aの正面と水平に綴じユニット3Aに対して固定されており、
図6に示すように、支持板32Bの中央に、カット部30Aが進退して出入りする開口部32aと、支持板32Bの両方の上端近傍に設けられる爪部32b、32cを有する。爪部32bは、クリンチャ31Bの上端の爪部31fとバネ32dで繋がれており、爪部32cがクリンチャ31Cの上端の爪部31gとバネ32eで繋がれている。
【0057】
クリンチャ31B、31Cが互いに離れた状態において、カット部30Aは、支持板32Bの開口部32aから突出し、正面側のクリンチャ31B、31Cの作動領域内に進出した第1の位置にある。クリンチャ31B、31Cが互いに近づいた状態において、カット部30Aは、開口部32a内に入り、クリンチャ31B、31Cの作動領域から退避した第2の位置にある。
【0058】
クリンチャリンク33B、33Cは、同一形状の板部材を左右に向かい合うように対称に配置したものである。クリンチャリンク33Bは、回動孔33bに挿通される図示しない軸部材を支点として、綴じユニット3Aに対して回動可能に支持される。クリンチャリンク33Bは、クリンチャ31Bを支持板32Bに対して移動可能に支持する。クリンチャリンク33Bは、凹部31hに入って正面側に突出する凸部33dと、クリンチャリンク33Cに対向する位置に突出する凸部33fと、凸部33fの背面側に隣接する凹部33hと、凹部33hの背面側に隣接する凸部33jと、凸部33jから背面側に向かってクリンチャリンク33Cに対して離れる方向に斜めに切り欠かれる傾斜部33mと、傾斜部33mの背面側に隣接する凸部33oとを有する。
【0059】
クリンチャリンク33Cは、回動孔33cに挿通される図示しない軸部材を支点として、綴じユニット3Aに対して回動可能に支持される。クリンチャリンク33Cは、クリンチャ31Cを支持板32Bに対して移動可能に支持する。クリンチャリンク33Cは、凹部31iに入って正面側に突出する凸部33eと、クリンチャリンク33Bに対向する位置に突出する凸部33gと、凸部33gの背面側に隣接する凹部33iと、凹部33iの背面側に隣接する凸部33kと、凸部33kから背面側に向かってクリンチャリンク33Bに対して離れる方向に斜めに切り欠かれる傾斜部33nと、傾斜部33nの背面側に隣接する凸部33pとを有する。
【0060】
移動軸30f、30gが進退移動することにより、凸部30m、30oに対してクリンチャリンク33Bの接する位置が変わるため、クリンチャリンク33Bが回動する。また、移動軸30f、30gが進退移動することにより、凸部30n、30pに対してクリンチャリンク33Cの接する位置が変わるため、クリンチャリンク33Cが回動する。
【0061】
押圧部34Bは、カット部30A、支持板32Bの上方を覆う位置に設けられる。押圧部34Bは、カット部30A、支持板32Bの上方に設けられる押圧板34aと、押圧板34aの回動軸34bと、回動軸34bの支持部材34cとを有する。
【0062】
押圧板34aは、開口部32aの上方から正面側に突出する。クリンチャ31B、31Cが離れた初期位置において、押圧板34aは、支持板32Bの上端との間に空間を有する。
【0063】
図7(B)に示すように、回動軸34bは、カット部30Aと押圧板34aとで挟まれる位置に、移動軸30f、30gに並行して設けられる。
【0064】
支持部材34cは、回動軸34bを回動可能に支持する孔部34dと、孔部34dより背面側に設けられて背面側ほど下方に傾斜する傾斜部34eとを有する。支持部材34cは、押圧板34aと一体となって回動軸34bを支点として回動する。この為、カット部30Aとクリンチャ部31Aとは、クリンチャリンク33B、33Cを介して作動連結している。
【0065】
<本実施の形態のステープラの動作例>
図7(A)は、用紙Pを説明のために省略しているが、
図3(C)に示したように、用紙Pを貫通した針10Aの針足12Aを、カット部30Aの針足カット部材30b、30cが、用紙Pの枚数に合わせて所定の長さでカットした状態を示している。この状態は、カット部30Aが最も正面側に進出した状態であり、傾斜部34eと移動軸30fとが最も離れた位置にある。カット部30Aは、支持板32Bの開口部32aから、正面側のクリンチャ31B、31Cの作動領域内に進出した第1の位置にある。クリンチャ31Bの凹部31bと、クリンチャ31Bの凹部31cとが、カット部30Aを回避している。
【0066】
図7(A)に示すように、支持板30eの凸部30mは、クリンチャリンク33Bの凸部33fの先端と接し、凸部30oは、凸部33j近傍の傾斜部33mと接する。支持板30eの凸部30nは、クリンチャリンク33Cの凸部33gの先端と接し、凸部30pは、凸部33k近傍の傾斜部33nと接する。クリンチャリンク33Bの凸部33dと、クリンチャリンク33Cの33eが最も離れた位置にあるため、クリンチャ31B、31Cは互いに最も離れた位置にある。
【0067】
用紙Pは
図4に示した用紙挟持部4Aに挟持されており、
図7(C)に示すように、針10Aの針クラウン11Aが用紙Pに対して下方に位置する。針足12Aが用紙Pに対して上方に突出し、クリンチャ31B、31Cの凸部31j、31kよりも上方に突出する。クリンチャ31Bの凸部31jの下面31pと、クリンチャ31Cの凸部31kの下面31qは、用紙Pの紙面に対して平行に位置する。凸部31jと凸部31kの互いに向かい合う縁部31r、31sは、用紙Pの紙面に対して直交するように位置する。
【0068】
図4に示した駆動部5Aがカム51Aを駆動すると、リンク部52A、図示しないリンク部材を介して、移動軸30f、30gにカム51Aの動作が伝達される。
図7(B)中の白抜き矢印に示すように、駆動部5Aが移動軸30f、30gを支持板32Bに対して直交する方向に移動させると、移動部材30dが傾斜部34eに近づく。
【0069】
移動軸30f、30gが支持板32Bに対して直交するように背面側に移動したことにより、
図8(A)に示すように、カット部30Aが、支持板32Bの開口部32aよりも背面側に移動する。
図8(B)に示すように、移動軸30fと傾斜部34eとが接近すると、
図8(A)に示すように、カット部30Aは、クリンチャ31B、31Cの作動領域から退避した第2の位置に移動する。
【0070】
移動部材30dが移動したことにより、支持板30eの凸部30m、30n、30o、30pに対してクリンチャリンク33B、33Cの接する位置が変わる。凸部30mは、凸部33fの凹部33h側の側面と接し、凸部30oは、傾斜部33m、凸部33oの近くに位置する。凸部30nは、凸部33gの凹部33i側の側面と接し、凸部30pは、傾斜部33n、凸部33pの近くに位置する。
【0071】
特に、
図7(A)に示すように、凸部30mが凸部33fの先端に接した状態から、
図8(A)に示すように、凸部30mが凸部33fの凹部33h側の側面に接するように移動することにより、凸部33dがクリンチャリンク33Cに近づくように回動する。これにより、
図7(C)の白抜き矢印に示すように、クリンチャ31Bが、クリンチャ31Cに近づくように、用紙Pの面方向に沿って移動する。また、
図7(A)に示すように、凸部30nが凸部33gの先端に接した状態から、
図8(A)に示すように、凸部30nが凸部33gの凹部33i側の側面に接するように移動することにより、凸部33eがクリンチャリンク33Bに近づくように回動する。これにより、
図7(C)の白抜き矢印に示すように、クリンチャ31Cが、クリンチャ31Bに近づくように用紙Pの面方向沿って移動する。
【0072】
クリンチャ31B、31Cが互いに近づくことにより、爪部31fと爪部32bが離れてバネ32dが伸び、爪部31gと爪部32cが離れてバネ32dが伸びる。
【0073】
このように、カット部30Aの、第1の位置から第2の位置への移動に伴って、クリンチャ31B、31Cが互いに用紙Pの面方向沿って近づく第1の動作を行う。第1の動作により、
図8(C)に示すように、凸部31j、31kが針足12Aを用紙Pの面方向に向かって折り曲げる。用紙Pとクリンチャ31Bの凸部31jの下面31pとが平行になり、用紙Pとクリンチャ31Cの凸部31kの下面31qとも平行になる。下面31p、31qは、用紙Pから僅かに離れている。そのため、針足12Aの先端も、用紙Pから僅かに離れた状態に折り曲げられている。
【0074】
図4に示した駆動部5Aがカム51Aを更に駆動すると、リンク部52A、図示しないリンク部材を介して、移動軸30f、30gにカム51Aの動作が伝達される。移動軸30f、30gにカム51Aの動作が伝達され、
図9(B)の白抜き矢印に示すように、移動部材30dが更に支持板32Bに対して直交するように背面側に移動する。移動部材30dの移動により、移動軸30fが傾斜部34eを上方に押し、
図9(B)の一点鎖線の矢印に示すように、押圧板34aが、回動軸34bを支点として、支持部材34cと一体となってクリンチャ部31Aに向かう方向に回動する。
【0075】
押圧板34aが回動することにより、
図10(A)に示すように、押圧板34aがクリンチャ31Bの凸部31dとクリンチャ31Cの凸部31eを押圧する。クリンチャ31B、31Cが用紙Pに近づいて、凸部31d、31eが互いに近づくように、クリンチャ31B、31Cが支持板32Bに沿って回動する第2の動作を行う。
【0076】
図10(B)は、
図10(A)のI部詳細図である。
図10(B)に示すように、クリンチャ31Bの回動支点31tは、針足12Aと接する点を回動支点とする回動支点であって、一方の針足12Abと接する凸部31jの下面31pにある。回動支点31tは、折り曲げられる針足12Abの付け根近傍の点であり、針足12Abの付け根の内側12aよりも針足12Abの先端側に位置する。回動支点31tから針足12Abの先端までを下面31pが回動しながら押圧し、針足12Abが用紙Pの面方向に沿って折り曲げられる。
【0077】
クリンチャ31Cの回動支点31uは、針足12Aと接する点を回動支点とする回動支点であって、他方の針足12Acと接する凸部31kの下面31qにある。回動支点31uは、折り曲げられる針足12Acの付け根近傍の点であり、針足12Acの付け根の内側12bよりも針足12Acの先端側に位置する。回動支点31uから針足12Acの先端までを下面31qが回動しながら押圧し、針足12Acが用紙Pの面方向に沿って折り曲げられる。回動支点31t、31u間の幅が、すなわち、回動支点どうしの距離が
図3(A)に示した針クラウン11Aの内側12a、12bの幅よりも狭く設定されて、針足12Ab、12Acが用紙Pの面方向に沿って折り曲げられることで、
図3(D)に示すように、用紙Pを貫通した針足12Aが折り曲げられて、用紙Pが針10Aで綴じられる。このとき、クリンチャ31B、31Cは、回動支点31t、31uから用紙Pを貫通して折り曲げられた針の針足12Aの先端まで接している。
【0078】
凸部31d、31eが押圧板34aによって押圧された状態において、
図10(A)に示すように、クリンチャ31Bの爪部31fと支持板32Bの爪部32bとを付勢するバネ32dが更に伸び、クリンチャ31Cの爪部31gと支持板32Bの爪部32cとを付勢するバネ32eが更に伸びる。
【0079】
針足12Aの折り曲げ動作が完了すると、
図4に示した駆動部5Aがカム51Aを駆動し、リンク部52A、図示しないリンク部材を介して移動軸30f、30gにカム51Aの動作が伝達される。移動軸30f、30gの移動により、
図9(B)の黒矢印に示すように、移動部材30dが支持板32Bに対して直交して近づくように移動する。移動軸30fによる傾斜部34eの上方への押圧が解除され、押圧板34aは、支持部材34cと一体となって、
図9(B)の一点鎖線の矢印の反対方向に回動軸34bを支点として回動し、クリンチャ部31Aから離れる。
【0080】
押圧板34aがクリンチャ31Bの凸部31dとクリンチャ31Cの凸部31eとから離れると、
図10(A)の白抜き矢印に示すように、伸びていたバネ32d、32eが縮もうとする。バネ32d、32eの引っ張り力により、用紙Pに向かって針足12Aを押圧していたクリンチャ31Bとクリンチャ31Cが、図中の黒矢印に示すように、回動支点31t、31uを支点として針足12Aから離れる方向に回動する。
図8(C)に示したように用紙Pとクリンチャ31Bの凸部31jの下面31pとが平行になり、用紙Pとクリンチャ31Cの凸部31kの下面31qも平行になる。
【0081】
図4に示した駆動部5Aがカム51Aを駆動し、リンク部52A、図示しないリンク部材を介して
図8(B)の白抜き矢印に示すように、移動軸30f、30gを支持板32Bに対して直交し、近づく方向に移動させる。移動軸30f、30gが支持板32Bに近づく方向に移動することにより、移動部材30dが傾斜部34eから離れる。
【0082】
移動部材30dの移動とともに、
図8(A)に示す、伸びたバネ32d、32eが縮もうとする。バネ32d、32eが縮もうとする力により、クリンチャ31B、31Cが互いに離れる方向に引かれる。
【0083】
移動部材30dが移動することにより、支持板30eの凸部30m、30n、30o、30pに対してクリンチャリンク33B、33Cの接する位置が変わるように、クリンチャリンク33B、33Cが回動する。
【0084】
クリンチャリンク33B、33Cの回動により、クリンチャリンク33Bの凸部33dとクリンチャリンク33Cの凸部33eとが離れるように移動する。これにより、クリンチャ31Bとクリンチャ31Cとが離れるように、
図7(C)の白抜き矢印の反対方向に用紙Pの面方向に沿って移動する。また、移動軸30f、30gが支持板32Bに対して直交する正面側に移動したことにより、
図7(A)に示すように、カット部30Aが、支持板32Bの開口部32aから正面側に移動する。
【0085】
図7(A)に示すように、移動軸30fと傾斜部34eとが最も離れた位置で、駆動部5Aは、移動軸30f、30gの移動を止める。凸部30mは、凸部33fの先端と接し、凸部30oは、凸部33j近傍の傾斜部33mと接する。凸部30nは、凸部33gの先端と接し、凸部30pは、凸部33p近傍の傾斜部33nと接する。
【0086】
特に、
図8(A)に示すように、凸部30oが凸部33oの近くから凸部33j近傍まで移動するため、凸部30oが傾斜部33mに沿うようにクリンチャリンク33Bが回動し、凸部30mが凸部33fの先端に接するまで移動する。
【0087】
また、凸部30pが凸部33pの近くから凸部33k近傍まで移動するため、凸部30pが傾斜部33nに沿うようにクリンチャリンク33Cが回動し、凸部30nが凸部33gの先端に接するまで移動する。
【0088】
クリンチャリンク33Bの凸部33dと、クリンチャリンク33Cの凸部33eが最も離れ、クリンチャ31Bとクリンチャ31Cが最も離れた位置に位置し、カット部30Aが、クリンチャ31B、31Cの作動領域内に進出した第1の位置に移動する。この為、カット部30Aとクリンチャ部31Aとは、カット部30Aとクリンチャ部31Aとを作動連結するクリンチャリンク33B、33Cによって連動する。
【0089】
<本実施の形態のステープラの作用効果>
本実施の形態のステープラ1Aは、クリンチャ31B、31Cを移動させる第1の動作と第2の動作により針足12Aを折り曲げる。そのため、クリンチャ31Bの回動支点31tとクリンチャ31Cの回動支点31uを、用紙Pから近い位置である針足12Ab、12Acに接する位置に設けることができる。これにより、ステープラ1Aは、クリンチャ部31Aの高さを低く抑えて小型化を図ることができる。
【0090】
ステープラ1Aは、第2の動作におけるクリンチャ31B、31Cの回動支点31t、31uの距離が、用紙Pを貫通した針10Aの針クラウン11Aの内幅である内側12a、12bの距離より狭くなる。そのため、第2の動作において、回動支点31tから針足12Abの先端までを下面31pが押圧し、針足12Abが用紙Pの面方向に沿って折り曲げられる。また、第2の動作において、回動支点31uから針足12Acの先端までを下面31qが押圧し、針足12Acが用紙Pの面方向に沿って折り曲げられる。
【0091】
これにより、クリンチャ31B、31Cと針足12Aとの接する長さが長くなるため、針足12Aを用紙Pの面に対して正しく折り曲げ、座屈、逆曲がり、針足立ち、針足浮き等の綴り不良を抑えて、安定した針足12Aの折り曲げ形状を実現することができる。
【0092】
また、カット部30Aが、クリンチャ31B、31Cの作動領域内に進出した第1の位置と、カット部30Aがクリンチャ31B、31Cの作動領域から退避した第2の位置との、カット部30Aの進退動作と、クリンチャ31B、31Cが互いに接離する動作、クリンチャ31B、31Cが用紙Pに近づく動作が連動するので、カット部30Aとクリンチャ31B、31Cとが干渉せず、クリンチャ部31Aの高さを低く抑えて、小型化を図ることができる。
【0093】
なお、本実施の形態において、カット部30Aがクリンチャリンク33B、33Cによってクリンチャ部31Aと作動連結し、カット部30Aの移動に伴ってクリンチャ部31Aが移動する構成としたが、これに限られない。カット部30Aとクリンチャ部31Aとが、それぞれ異なる図示しないリンク部材からリンク部52Aに連結されて、カム51Aの動作がリンク部52Aや図示しないリンク部材等を介して、カット部30Aを介さずクリンチャ部31Aを移動させる構成としてもよい。また、ステープラ1Aを、用紙Pの枚数にあわせた針10Aを装填する構成とすれば、カット部30Aやカット針収納部6Aを省略してもよい。
【0094】
本実施の形態において、移動軸30f、30gにカム51Aの動作が伝達される構成としたが、これに限られない。回動軸34bも、図示しないリンク部材からリンク部52Aに連結し、回動軸34bにもカム51Aの動作が伝達されてもよい。
【0095】
ステープラ1Aは、カット針収納部6Aを備えることにより、後処理装置502A内でのステープラ1Aの位置によらず、カット針13Aをカット針収納部6Aに収納することができる。なお、カット針収納部6Aをステープラ1Aに設ける形態に限られず、後処理装置502Aがカット針13Aを収納する収納部を設けてもよい。