(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の苗移植機の一実施例である4条植え乗用型田植機について図面に基づき詳細に説明する。
図1の側面図と
図2の平面図に示すように、乗用型田植機は走行車両(走行車体)1に昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6,6及び後輪7,7を有する四輪駆動車両である。
なお、本明細書では田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0026】
図1に示すように、メインフレーム10a,10bにミッションケース11とエンジン(内燃機関)12が配設されており、該ミッションケース11の後部側面に油圧ポンプ13がケース11と一体に組み付けられ、ミッションケース11の前部上方にステアリングポスト14が突設されている。
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップフロア19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。ステアリングハンドル16の右側には変速操作レバー(走行操作部材、HSTレバー)17が設けられている。
【0027】
操縦席20の前方には、ステアリングポスト14に図示しない操作パネルが設けられている。
操縦席20の右側には畦クラッチレバー18が設けられている。前輪6,6はミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22,22に軸支されている。また、後輪7,7は、左右フレーム37の左右両端部に取り付けた後輪伝動ケース24,24に後輪支持体30を介して軸支されている。左右フレーム37はメインフレーム10a,10bの後端部に支持されている。
【0028】
図1と
図2に後輪7への動力伝動機構の一部を示すように、エンジン12の回転動力は、プーリ27、ベルト28及びプーリ29を順次経由して油圧式無段変速装置(HST)31の入力軸32aに伝えられ、HST31の出力軸32bからミッションケース11内に伝えられる。
リヤ出力軸11a,11bの後端部はミッションケース11の後方に突出し、この突出端部に前記後輪伝動ケース24,24に伝動する左右後輪伝動軸35,35が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸35,35により各々左右後輪7,7が駆動回転される構成となっている。
【0029】
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されている。
走行車両1に基部が回動自在に設けられた一般的なリフトシリンダ36(
図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプ13にて昇降バルブ(図示せず)を介してリフトシリンダ36に圧油を供給・排出して、リフトシリンダ36のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0030】
苗植付装置3は、左右フレーム37を介して昇降用リンク装置2の後部にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース38と、該植付伝動ケース38に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台(苗タンク)39と、植付伝動ケース38の後端部に装着され、苗載台39の下端より1株づつ苗を圃場に植え付ける苗植付具41と、植付伝動ケース38の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート(センサーフロート)42とサイドフロート43等にて構成されている。センターフロート42とサイドフロート43は、圃場を整地すると共に苗植付具41にて苗が植え付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0031】
PTO伝動軸45(
図1)は両端にユニバーサルジョイントを有し、ミッションケース11からの動力を苗植付装置3の植付伝動ケース38に伝達すべく設けている。
苗植付装置3は4条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース38、苗を載せて左右往復動し苗を一株づつ各条の苗取出口39a(
図2)に供給する苗載台39、苗取出口39aに供給された苗を圃場に植え付ける苗植付具41等を備えている。
【0032】
図1に示すように、センターフロート42の前方にはロータ70aが配置され、該ロータ70aはサイドフロート43の前方にあるロータ70bより前方に配置されている。ロータ70aは後輪7の後輪伝動ケース24内のギアから伝動軸25を介して動力が伝達され、ロータ70bは両方のロータ70a,70aの駆動軸(図示せず)からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース71,71内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
【0033】
施肥装置4は、肥料タンク67内の肥料を肥料繰出部68によって一定量ずつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料をブロア69により施肥ホース62を通して施肥ガイド80まで移送し、該施肥ガイド80の前側に設けた作溝体82によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
また、ペダル86(
図2)はメインクラッチと左右後輪ブレーキ装置(図示せず)を共に操作することができ、ステアリングハンドル16の右下側に配置されており、このペダル86を踏み込むとメインクラッチが切れ、続いて左右後輪ブレーキがかかり、機体は停止する。
【0034】
また、機体の前方にはフロントアーム(畦越えハンドル)88が支持されている。フロントアーム88は、作業者がフロントアーム88を掴んで操作することで、走行車両1が畦等の段差を越える際に、走行車両1の前端部が浮き上がりすぎないようにしたり、逆に、畦越えの初期に前端が上方に向くように補助したり等することが可能である。フロントアーム88の先端部からフロントアーム88内にセンターマスコット89を挿脱自在に取り付けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を一体化可能に構成されている。センターマスコット89の先端にランプ89aを設けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を1本のレバーとすることも可能である。また、ステップフロア19の前方両サイドにはサイドマーカ44が設けられている。
【0035】
後輪7の後輪伝動ケース24は左右フレーム37の左右両端部に取り付けて、後輪支持体30に軸支されている。
後輪伝動ケース24の回動により後輪7の車軸23は後輪伝動ケース24と一体で上下動する。なお後輪伝動ケース24にはミッションケース11から左右後輪伝動軸35を介して動力が伝達される。
【0036】
図3は実施例の走行操作部材の作動機構の説明図であり、
図3(A)は走行操作部材が中立位置に移動した状態の説明図、
図3(B)は走行操作部材が前進位置に移動した状態の説明図、
図3(C)は作動機構が作動して走行操作部材が中立位置に戻った状態の説明図である。
図3において、実施例の乗用型田植機では、HSTレバー17は、
図3(A)に示す中立位置(走行停止位置)と、
図3(B)に示すように中立位置よりも前方に傾斜した前進位置と、中立位置よりも後方に傾斜した図示しない後進位置との間で操作可能に構成されている。したがって、HSTレバー17を操作することで、油圧式無段変速装置(HST)31からの駆動の伝達が制御されて、走行車両1は停止や前進、後進の制御が行われる。
【0037】
HSTレバー17の前方には、作動機構の一例としてのシリンダモータ101が配置されている。シリンダモータ101は、通常時は、
図3(A)、
図3(B)に示すように待機した状態で保持され、作動時にロッド部101aが伸びてHSTレバー17に接触して、HSTレバー17を中立位置に戻す。
また、実施例では、ステアリングポスト14の前端には、対物センサの一例としての距離センサ102が支持されている。距離センサ102は、走行車両1の前方の物体との距離を計測な任意のセンサを使用可能である。特に、走行車両1の前方に向けてレーザー光や赤外光、音波、超音波等の電磁波を照射して、その反射波から距離を測定する方式が好適に使用可能である。
【0038】
図4は実施例の乗用型田植機の制御部の機能ブロック図である。
図4において、実施例の乗用型田植機の制御部110は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部110は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部110は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部110は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施例の制御部110は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部110は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0039】
(制御部110に接続された信号出力要素)
制御部110は、距離センサ102、傾斜センサSN1等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
距離センサ102は、走行車両1の前方の物体(障害物や人、トラックのキャビンの後面等)との距離を測定する。
傾斜検知部材の一例としての傾斜センサ(傾きセンサ)SN1は、走行車両1の水平に対する傾斜角を検知する。なお、実施例の傾きセンサSN1は、前後方向(進行方向)の傾斜角θ1と、左右方向(車幅方向)の傾斜角θ2を計測可能なセンサにより構成されている。
積み込みボタン(積み込みモードスイッチ)111は、ステアリングポスト14の操作パネルに配置され、入力時に、乗用型田植機をトラック等に自動的に積み込む作業を開始可能に構成されている。
【0040】
(制御部110に接続された被制御要素)
制御部110は、シリンダモータ101や、HST31、各種クラッチ等、その他の図示しない制御要素に接続されている。制御部110は、各被制御要素101、31等へ、それらの制御信号を出力している。
【0041】
(制御部110の機能)
制御部110は、前記信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各被制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部110は次の機能を有している。
積み込み作業の開始判別手段121は、積み込みボタン111の入力がされた場合に、積み込み作業が開始されたと判別する。
【0042】
前進開始判別手段122は、走行車両1の前進が開始されたか否かを判別する。実施例の前進開始判別手段122は、HSTレバー17が前進位置に移動された場合に、走行車両1の前進が開始されたと判別する。
傾斜値の記憶手段123は、走行車両1がトラック等の荷台に積み込まれる際に、傾斜した状態になったか否かを判別するための傾斜値θaを記憶する。実施例では、傾斜値として、傾斜判別用の第1の傾斜値θaと、水平判別用の第2の傾斜値θbとを記憶する。一例として、第1の傾斜値θa=10度、第2の傾斜値θb=±3度に設定可能である。
【0043】
傾斜判別手段124は、傾斜センサSN1の検知結果に基づいて、走行車両1が水平に対して傾斜しているか否かを判別する。実施例の傾斜判別手段124は、傾斜センサSN1が検出する傾斜角θ1が、第1の傾斜値θa以上の場合に、走行車両1が積み込み作業に伴って傾斜していると判別する。
水平判別手段125は、傾斜センサSN1の検知結果に基づいて、走行車両1が水平に沿った状態となっているか否かを判別する。実施例の水平判別手段125は、傾斜センサSN1が検出する傾斜角θ1が第2の傾斜値θb未満の場合に、走行車両1が水平の状態になっていると判別する。
【0044】
距離測定手段126は、距離センサ102の検知結果に基づいて、走行車両1の前方の物体との距離L1を測定する。なお、実施例では、積み込み作業が開始され、傾斜判別手段124が走行車両1の傾斜(トラックの荷台に向けて登っている途中の状態)を判別した後に、水平判別手段125が水平(トラックの荷台に登り終わった状態)を判別した場合に、距離L1の測定を行う。距離L1の計測は、積み込み作業の開始とともに開始したり、傾斜していることを検知した場合に開始するように構成することも可能である。
【0045】
停止距離の記憶手段(検知距離の記憶手段)127は、検知距離の一例としての停止距離Laを記憶する。実施例では、積み込み作業を行う際に、走行車両1を停止させるか否かを判別するための予め設定された範囲の一例として、停止距離Laを記憶する。一例として、停止距離La=3cmに設定可能である。
【0046】
シリンダモータの制御手段(停止手段)128は、距離センサ102の検知結果に基づいて、走行車両1の前方に物体が存在する状態となった場合に、走行車両1の走行を停止させる。実施例のシリンダモータの制御手段128は、距離センサ102の検知距離L1が停止距離La以下になった場合に、シリンダモータ101を作動させて、HSTレバー17を中立位置(停止位置)に移動させる。なお、シリンダモータの制御手段128は、HSTレバー17を中立位置に移動させた後は、シリンダモータ101を速やかに初期位置に復帰させる。
【0047】
(流れ図の説明)
次に、実施例の乗用型田植機における制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
【0048】
(積み込み作業のフローチャートの説明)
図5は実施例の積み込み作業のフローチャートの説明図である。
図5のフローチャートの各ステップSTの処理は、制御部110に記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は乗用型田植機の他の各種処理と並行して実行される。
図5に示すフローチャートは乗用型田植機の電源投入により開始される。
【0049】
図5のST1において、積み込みボタン111の入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、走行車両1の前進が開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST3に進み、ノー(N)の場合はST2を繰り返す。
ST3において、傾斜角θ1が第1の傾斜値θa以上になったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に進み、ノー(N)の場合はST3を繰り返す。
ST4において、傾斜角θ1が第2の傾斜値θb未満になったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST5に進み、ノー(N)の場合はST4を繰り返す。
【0050】
ST5において、距離L1の計測を開始する。そして、ST6に進む。
ST6において、計測距離L1が停止距離La以下になったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST6を繰り返す。
ST7において、シリンダモータ101を作動させ、HSTレバー17を中立位置に移動させる。すなわち、走行車両1の移動を停止させる。そして、ST8に進む。
ST8において、シリンダモータ101を初期位置に復帰させる。そしてST1に戻る。
【0051】
図6は実施例の作用説明図であり、
図6(A)は積み込み作業開始前の状態の説明図、
図6(B)は積み込み途中で走行車体が傾斜の状態の説明図、
図6(C)は積み込み途中で走行車体が水平の状態の説明図、
図6(D)は積み込み作業が終了した状態の説明図である。
【0052】
図6(A)において、乗用型田植機をトラック151に積み込む場合に、トラック151の荷台152と道路の路面153との間に、はしご状の歩み板154が設置される。この状態で、積み込みボタン111の入力がされ、HSTレバー17が前進位置に操作されると、乗用型田植機が前進し、歩み板154を登り始める(
図6(B)参照)。
図6(B)、
図6(C)において、乗用型田植機が歩み板154を登り終えて、荷台152に搭載されると、傾斜した状態から水平な状態となる。
図6(C)、
図6(D)において、乗用型田植機が荷台152の上を前進して、走行車両1の前端とトラック151のキャビン156の後面156aとの距離L1が、停止距離La以下になると、シリンダモータ101が作動して、HSTレバー17が中立位置に移動して、走行車両1が停止する。
【0053】
ここで、作業者が田植機に乗車した状態で、トラックに搭載しようとすると、歩み板を登っている際に、田植機が後方に転倒する状態(いわゆるウイリー状態)となる恐れがあり、作業者の負傷や田植機の損傷等の事故の恐れがある。したがって、従来は、作業者が畦越えハンドル88を持って田植機を押さえつつ、田植機の前進に伴って歩行し、荷台152に搭載された状態で作業者が手動でHSTレバー17を操作して、田植機を停止させていた。したがって、従来技術では、歩行しながら、停止のタイミングを確認しつつ、HSTレバーを操作する必要があり、作業が高度になる問題があった。また、作業者が、田植機の前方で歩行中に転倒したり、HSTレバーを中立位置に戻すのが遅いと、田植機とトラックのキャビンとの間に挟まれる事故が発生する恐れもあった。
【0054】
また、作業者が田植機とトラックとの間に挟まれないように、早めにHSTレバーを中立位置に戻すと、田植機とキャビンとの間に隙間があいてしまい、田植機の後輪や後部がトラックの後端からはみ出しすぎる問題がある。田植機の後輪が後ろにはみ出すと、荷台を囲む枠板状の部位(いわゆる「あおり157」)を閉められなかったり、田植機を荷台に固定するロープを掛ける位置が安定しなかったりする。したがって、田植機の位置が前後にズレていると、HSTレバーを再操作して、田植機の位置を調節する追加の作業が必要になる問題もある。
【0055】
これらに対して、実施例では、距離センサ102で検知した距離L1が、停止距離La以下になると、シリンダモータ101が作動して走行車両1が停止される。したがって、作業者がHSTレバー17を操作しなくても、キャビン156の後面156aから停止距離La離れた位置で自動的に停止する。したがって、作業者が歩行しながら停止のタイミングを確認しつつ、HSTレバーを操作するという作業が不要となり、作業性が向上する。また、作業者が走行車両1とキャビン156との間に挟まれる事故を防止できる。さらに、乗用型田植機が、停止距離Laの位置で停止するので、田植機がトラック151の後ろからはみ出し過ぎることが低減される。したがって、トラック151への積み込み作業において追加の作業が必要なくなり、作業性が向上する。
【0056】
なお、傾斜値θa,θbや停止距離Laは、予め設定された固定値とすることも可能であるが、作業者の入力に応じて変更可能とすることも可能である。例えば、停止距離Laは、走行車両1とトラックとの間で人が通れるように30cmに設定する等、作業者の用途、要望に応じて任意に設定可能にすることが可能である。他にも、トラック151の荷台152の大きさ、長さに応じて、任意の位置で停止できるように作業者が入力できるように構成することも可能である。
【0057】
図7は田植機の後輪をトラックの荷台に固定する場合の説明図である。
また、停止距離Laは、例えば、荷台152のあおり157を閉めた状態で、あおり157に後輪7が接触する位置に停止させるように設定することも可能である。
図7において、後輪7があおり157に接触した状態で停止させた場合、後輪7があおり157に接触した状態でロープ158を容易に掛けることができる。よって、乗用型田植機をトラック151の荷台152にロープ158でしっかりと固定することができる。したがって、トラック151の加減速や、運搬時の振動が発生しても、後輪7があおり157に押し当てられた状態で固定されているので、乗用型田植機が荷台152上で移動したり、荷台152から落下する等の事故も防止できる。
【0058】
また、停止距離Laや傾斜角θa,θbを設定する調節部材として、回転するつまみ状の部材としたり、数値を上下させるボタンを設けたり、テンキーを使用したり、タッチパネル等を使用することも可能である。
さらに、実施例では、積み込みボタン111の入力がされた後に、HSTレバー17の操作が行われるまで待機しているが、これに限定されない。例えば、HSTレバー17を前進位置に移動させる駆動装置(例えばシリンダモータ)を追加して、積み込みボタン111の入力がされると、HSTレバー17を前進位置に自動的に移動させる構成とすることも可能である。
【0059】
図8は本発明の他の形態の説明図であり、
図4に対応する図である。
図8において、他の形態の乗用型田植機は、距離センサ102に変えて、対物センサの一例としての走行距離センサ102′を有する。走行距離センサ102′は、走行車両1の走行距離を測定することで、走行車両1の前方の物体に対する走行車両1の位置を検知する。なお、走行距離センサ102′は、車輪6,7の回転数を観測することで走行車両1の走行距離を検知可能であるが、これに限定されない。例えば、エンジンの回転数を観測することで走行距離を検知することも可能である。
【0060】
また、
図8において、他の形態の制御部110は、
図4の各手段126〜128に変えて、以下の各手段126′〜128′を有する。
距離測定手段126′は、走行距離センサ102′の検知結果に基づいて、走行車両1の移動距離(走行距離)L1′を測定する。なお、本形態では、積み込み作業が開始され、傾斜判別手段124が走行車両1の傾斜を判別した後に、水平判別手段125が水平を判別した場合に、走行距離L1′の測定を開始する。なお、走行距離L1′の計測は、積み込み作業の開始とともに開始したり、傾斜していることを検知した場合に開始するように構成することも可能である。
【0061】
停止距離の記憶手段(検知距離の記憶手段)127′は、検知距離の一例としての停止距離La′を記憶する。本形態では、積み込み作業を行う際に、走行車両1を停止させるか否かを判別するための予め設定された範囲の一例として、停止距離La′を記憶する。一例として、停止距離La′=40cmに設定可能である。
【0062】
シリンダモータの制御手段(停止手段)128′は、走行距離センサ102′の検知結果に基づいて、走行車両1が予め設定された距離移動した場合に、走行車両1の走行を停止させる。本形態のシリンダモータの制御手段128′は、走行距離センサ102′の検知距離(走行距離)L1′が停止距離La′に達した場合に、シリンダモータ101を作動させて、HSTレバー17を中立位置(停止位置)に移動させる。なお、シリンダモータの制御手段128′は、HSTレバー17を中立位置に移動させた後は、シリンダモータ101を速やかに初期位置に復帰させる。
【0063】
(積み込み作業のフローチャートの説明)
図9は実施例の他の形態の積み込み作業のフローチャートの説明図であり、
図5に対応する図である。
図9において、他の例では、
図5に示す形態に比べて、
図5のST5、ST6に変えて以下の処理ST5′、ST6′を実行する点が異なる。
ST5′において、走行距離L1′の計測を開始する。そして、ST6′に進む。
ST6′において、走行距離L1′が停止距離La′以上になったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST6′を繰り返す。
【0064】
図10は実施例の他の形態の作用説明図であり、
図6に対応する図である。
図10(A)は積み込み作業開始前の状態の説明図、
図10(B)は積み込み途中で走行車体が傾斜の状態の説明図、
図10(C)は積み込み途中で走行車体が水平の状態の説明図、
図10(D)は積み込み作業が終了した状態の説明図である。
【0065】
図10において、積み込みボタン111の入力がされ、HSTレバー17が前進位置に操作されると、乗用型田植機が前進する。乗用型田植機が歩み板154を登り終えると、傾斜した状態から水平な状態となり、走行車両1の走行距離L1′の計測が開始される。そして、走行距離L1′が停止距離La′以上になると、シリンダモータ101が作動して、HSTレバー17が中立位置に移動して、走行車両1が停止する。
【0066】
したがって、本形態でも、走行車両1が適切な位置で自動的に停止され、作業性が向上する。特に、
図1〜
図6に示す形態では、
図10(C)に示すように、作業者が走行車両1の前方に立つと、距離センサ102が作業者を検知し、距離センサ102の検知距離L1が停止距離La未満になる。よって、走行車両1が想定している位置とは異なる位置で停止する問題がある。これに対して、本形態では、走行距離L1′に基づいて走行車両1が停止されるので、作業者が走行車両1の前方に立っても所定の位置で停車させることができる。したがって、走行車両1が歩み板154を登る際にウイリーしないように作業者が畦越えハンドル88を操作する場合でも、走行車両1が予定していない位置で停止することが低減される。
【0067】
なお、本形態では、走行距離L1′に基づいて、予め設定された位置で走行車両1を停止させる構成を示しているが、これに限定されない。例えば、予め設定された位置に対して、意図的に前方に行き過ぎた位置で停止させ、作業者の入力に応じて走行車両1を後進させて予め設定された位置に停止させるように構成することも可能である。
例えば、後輪7があおり157に接触する位置で走行車両1が最初から停止すると、あおり157を閉めようとすると、後輪7にあおり157が接触して押され、あおり157を閉める際に強い力が必要になる場合がある。これに対応して、後輪7をあおり157に接触した状態で停止させたい場合に、後輪7があおり157に接触する位置よりも前方の位置(例えば10cm前方)で走行車両1を停止させ、作業者が歩み板154を片付けて、あおり157を閉めた後に、積み込みボタン111が再度入力されると、走行車両1が後進(例えば10cm後進)し、後輪7があおり157に接触する位置で停止させることも可能である。
【0068】
また、走行距離センサ102′と距離センサ102の両方を設け、走行距離La′進行するか、物体との距離L1が停止距離La未満になるか、のいずれかを満足した場合に、走行車両1を停止させるように構成することも可能である。
【0069】
図11は本発明のさらに他の形態の説明図であり、
図8に対応する図である。
図11において、さらに他の形態の乗用型田植機では、操作パネルに積み下ろしボタン171が設けられている。なお、本形態では、
図3に示すシリンダモータ101に加えて、シリンダモータ101とHSTレバー17を挟んで反対側の位置にシリンダモータが対称に配置、追加されている。
【0070】
また、
図11において、他の形態の制御部110は、
図8の各手段に加えて、停止距離の設定手段129を有する。
停止距離の設定手段129は、走行距離センサ102′の検知結果に基づいて、停止距離La′の設定を行う。本形態の停止距離の設定手段129は、積み下ろしボタン171の入力がされて、後進が開始されてから、走行車両1の傾斜角θ1が第1の傾斜値θa以上になるまでの走行距離L1′を停止距離La′として設定する。
【0071】
(積み下ろし作業のフローチャートの説明)
図12は実施例のさらに他の形態の積み下ろし作業のフローチャートの説明図である。
図12のフローチャートの各ステップSTの処理は、制御部110に記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は乗用型田植機の他の各種処理と並行して実行される。
図12に示すフローチャートは乗用型田植機の電源投入により開始される。
【0072】
図12のST11にいて、積み下ろしボタン171の入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST12に進み、ノー(N)の場合はST11を繰り返す。
ST12において、HSTレバー17が後進位置に入力されて走行車両1が後進を開始したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST13に進み、ノー(N)の場合はST12を繰り返す。
ST13において、走行距離L1′の計測を開始する。そして、ST14に進む。
ST14において、傾斜角θ1が第1の傾斜値θa以上であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST15に進み、ノー(N)の場合はST14を繰り返す。
【0073】
ST15において、次の処理(1),(2)を実行してST16に進む。
(1)走行距離L1′の計測を終了する。
(2)計測された走行距離L1′を停止距離La′として設定(更新)する。
ST16において、傾斜角θ1が第2の傾斜値θb未満であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST17に進み、ノー(N)の場合はST16を繰り返す。
ST17において、本形態で追加された前述のシリンダモータを作動させて、HSTレバー17を中立位置に移動させる。そして、ST11に戻る。
【0074】
図13は実施例のさらに他の形態の作用説明図であり、
図13(A)は積み下ろし作業開始時の説明図、
図13(B)は積み下ろし途中で走行距離の測定が修旅する直前の状態の説明図、
図13(C)は積み下ろし途中で走行車体が傾斜した状態の説明図、
図13(D)は積み下ろし作業が終了した状態の説明図である。
【0075】
図13において、積み下ろしボタン171の入力がされて、HSTレバー17が後進位置に操作されると、乗用型田植機が後進する。乗用型田植機の後進が開始されると走行距離L1′の計測が開始される。乗用型田植機が荷台152の後端の歩み板154に差し掛かると、走行車両1が傾斜し(θ1≧θaとなり)、走行距離L1′の計測が終了する。そして、後進開始から走行車両1の傾斜までの走行距離L1′、すなわち、荷台152上での移動距離が停止距離La′に設定される。したがって、次回の積み込み作業時に、乗用型田植機は、積み下ろし時の走行距離La′だけ荷台152の上で走行した後停止する。よって、次回の積み込み時に、積み下ろし前と同一の位置に自動的に移動させることができる。よって、荷台152上で乗用型田植機の位置が安定するため、乗用型田植機を固定するためのロープを掛ける作業等も積み下ろし前とのズレが少なくなり作業性が向上する。
【0076】
また、本形態では、積み下ろし作業の完了時に、自動的に走行車両1が停止するため、事故の恐れも低減されている。なお、積み下ろしボタン171の入力時に、HSTレバー17が後進位置に操作されるまで待機する構成を示したが、これに限定されず、積み下ろしボタン171の入力時に、シリンダモータ等でHSTレバー17を後進位置に移動させるように構成することも可能である。
【0077】
前記各形態において、走行車両1が荷台152において予め設定された位置に停止される際に、HSTレバー17を中立位置に移動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、シリンダモータ101でHSTレバー17を中立位置に移動させるのではなく、例えば、HST31のトラニオン開度を制御して、停止させるように構成することも可能である。また、シリンダモータ101に限定されず、ソレノイドやカム、一般のモータ等、任意の駆動装置を使用してHSTレバー17を作動させる構成とすることも可能である。
さらに、HSTレバー17を制御する構成に限定されず、ブレーキペダルをシリンダモータで作動させたり、ブレーキ装置(制動装置)を制御して、走行車両1を停止させる構成とすることも可能である。停車時にブレーキを作動させることで、ブレーキのかけ忘れを防止しつつ、トラック151が発進、停止する際に乗用型田植機が前後に移動してしまうことを防止できる。
【0078】
また、エンジンを停止させることで走行車両1を停止させることも可能である。エンジンを停止させることで、確実に走行車両1を停止させることができ、確実に安全を確保できる。
或いは、これらを組み合わせて、例えば、HSTレバー17を中立位置に移動させ且つブレーキを掛けたり等、任意の構成とすることも可能である。
【0079】
他にも、走行車両1を停止させる際に、油圧系にロックを掛けるように構成することも可能である。例えば、油圧系のバルブが動作しないようにピン等でロックを掛けることが可能である。走行車両1の停止時に油圧系が中立のままでは、油圧タンクからのリークにより、自重で苗植付装置3が下降してしまう事がある。したがって、トラック151で輸送中に苗植付装置3が下降すると、苗植付装置3があおり157に接触して、苗植付装置3が破損する恐れがある。したがって、油圧系をロックすることで、輸送中に、苗植付装置3が下降することが防止され、苗植付装置3の破損が低減される。
【0080】
また、前記各形態では、HSTレバー17が前進または後進の位置に入力されたかを判別し、変速の段数に関しては判別を行っていないが、これに限定されない。例えば、制御部110に速度規制手段を設けて、歩み板154を走行する場合(すなわち、θ1≧θaの場合)は、予め設定された速度上限値に速度を制限する構成を採用することも可能である。具体的には、歩み板154を走行する場合には、HSTレバー17を「1速」に強制的に設定して、走行速度を1速の速度に落として(規制して)、安全性を向上する構成とすることも可能である。なお、歩み板154に差し掛かる前のHSTレバー17の設定(2速や3速)を記憶しておき、歩み板154を通過した後、荷台152や路上を移動する際は、歩み板154に差し掛かる前の設定にHSTレバー17を戻すように設定することも可能である。このようにすることで、高速で移動すると危険な歩み板154以外の位置では高速で移動することができ、作業効率を向上させることができる。なお、速度上限値に制限する構成は、HSTレバー17の変速の段数に限定されず、エンジンの回転数や車輪6,7の回転速度、速度計の検出速度等から速度上限値になるとブレーキを掛けたりエンジンの回転数を落とす等で速度を制限することも可能である。
【0081】
図14は実施例のさらに他の形態の説明図であり、
図14(A)は乗用型田植機が歩み板を登っている途中の状態の説明図、
図14(B)は車輪が歩み板の中央部を走行している場合に乗用型田植機を前方から見た図、
図14(C)は車輪が歩み板の中央部を走行している場合に乗用型田植機の後輪の部分を後方から見た状態の説明図、
図14(D)は車輪が歩み板の片側に片寄って走行している場合に乗用型田植機を前方から見た図、
図14(E)は車輪が歩み板の片側に片寄って走行している場合に乗用型田植機の後輪の部分を後方から見た状態の説明図である。
【0082】
図14において、前記各形態において、高さセンサ201を配置する事が可能である。高さセンサ(脱輪センサ)201は、4つの車輪6,7のそれぞれに対して、車輪6,7を挟んで車幅方向の内外に1組ずつ、合計4組配置されている。高さセンサ201は、ステップフロア19の下面において下向きに配置されており、高さセンサ201と、路面や歩み板154、荷台152等と、の距離を測定可能である。高さセンサ201は、距離センサ102と同様に、電波等を出力して反射波を検知することで高さを検知可能な任意のセンサを使用可能である。また、各高さセンサ201は、
図14(B)〜
図14(E)に示すように、幅方向にはほとんど幅を有しないが、前後方向には幅(例えば、路面において20cmの幅)を有するように電波等を出力することが望ましい。
【0083】
そして、制御部110に図示しない報知制御手段を設けておいて、高さセンサ201の検知する高さが、内外で異なる場合に、制御部110の報知制御手段が、操作パネルにおける表示や音声案内、ブザーや警告ランプ等の報知部材を制御して、作業者に報知したり、HSTレバー17を中立位置に移動させることが可能である。
【0084】
図14(B)、
図14(C)に示すように、歩み板154の中央部を車輪6,7が通過している場合は、内外の高さセンサ201が共に歩み板154を検知する。したがって、内外の高さセンサ201の検知する高さ(L3,L4)の差(|L3−L4|)が、歩み板154の表面の凹凸やセンサの検知誤差等に応じて予め設定された差分値(ΔLc)よりも小さくなる。一方、
図14(D),
図14(E)に示すように、歩み板154の中央に対して片側に片寄った位置を車輪6,7が通過している場合、一方の高さセンサ201は歩み板154を検知しているが、他方の高さセンサ201は歩み板154を検知せずに下方の路面を検知することとなる。したがって、内外の高さセンサ201の検知する高さ(L3,L4)の差(|L3−L4|)が、差分値(ΔLc)よりも大きくなる。
【0085】
したがって、
図14に示す形態では、歩み板154において、車幅方向に片寄って走行している場合は、歩み板154から脱輪、転倒、落下の恐れがある。よって、ブザー等で作業者に報知すると共に、HSTレバー17を中立位置に移動させて走行を停止させる。よって、安全性が向上する。
また、
図14に示す形態では、内外の高さセンサ201は、検知範囲が前後方向に幅を有するように構成されている。歩み板154は、はしご状に構成されており、隙間があいている部分がある。したがって、検知範囲が狭いと、歩み板154の中央を車輪6,7が通過しているにも関わらず、高さセンサ201が隙間の部分を検知して、片寄っていると誤検知する場合がある。これに対して、検知範囲がはしごの隙間よりも広く設定することで誤検知を低減することができる。
【0086】
なお、上述の
図14の形態の説明では、片寄り(脱輪の恐れ)を検知した場合に、HSTレバー17を中立位置に移動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、エンジンを停止したり、ブレーキを作動させたり、HSTのトラニオン開度を制御する等で、走行車両1を停止させることも可能である。
また、走行車両1を停止させる構成に限定されず、4組の高さセンサ201から車幅方向の左右のどちらに片寄っているのかを判別して、走行車両1が歩み板154の中央部に来る方向にステアリングハンドル16を回転させるように構成することも可能である。
【0087】
さらに、上述の
図14に示す形態では、4組の高さセンサ201を設ける構成を例示したが、前輪6または後輪7のいずれか一方の2組のみとすることも可能であるし、5組以上高さセンサを配置する構成とすることも可能である。
また、片寄りを検知する検知部材として高さセンサを例示したが、これに限定されない。例えば、カメラを設置して、画像処理で走行車両1の片寄りを検知する構成とすることも可能である。
【0088】
図15は実施例のさらに他の形態の乗用型田植機の側面図である。
図16は実施例のさらに他の形態の乗用型田植機の前方から見た図である。
図17は苗残量センサの説明図である。
図15、
図16において、苗タンク39の下部には、苗の残量を検知する苗残量センサ301が配置されている。
図17において、苗残量センサ301は、回転中心301aを中心として回転可能なアクチュエータ301bを有するセンサにより構成されており、アクチュエータ301bは図示しないバネで起立した状態で保持されるように設定されている。したがって、アクチュエータ301bに苗が接触すると、アクチュエータ301bが押されてバネが弾性変形して、アクチュエータ301bが倒れた状態となり、苗を検知可能である。
【0089】
なお、苗タンク39では、苗残量センサ301は、回転中心301aが上方に配置され、アクチュエータ301bの先端が下方に向けて配置されている。したがって、苗を積載したり、追加したりする際に、上方から下方に重力で移動する苗の移動方向に沿って、アクチュエータ301bが配置されている。アクチュエータ301bが苗の移動方向とは逆方向の場合、苗の積載時にアクチュエータ301bが苗に押されて折れる可能性があるが、苗の移動方向に沿ってアクチュエータ301bを配置することでアクチュエータの破損を低減している。
【0090】
苗タンク39では、苗残量センサ301が苗を検知する場合は、苗残量センサ301の位置よりも上方まで苗が残っており、苗を検知しない場合は、苗が残り少ないことが判別可能である。なお、苗残量センサ301は、4条植えの乗用型田植機の各条に対応して配置されている。すなわち、車幅方向に間隔をあけて4つ配置されている。
図15において、肥料タンク67の内部の下部には、肥料残量センサ302が配置されている。肥料タンク67は、施肥装置4が4条植えの各条に対応して内部が4つの空間に仕切られており(図示せず)、4つの空間のそれぞれに肥料残量センサ302が配置されている。
【0091】
また、走行車両1の前部には、補助苗枠303が支持されており、苗タンク39に補給する苗が収容された苗箱や空の苗箱を積載可能な苗枠本体303aを有する。
図15、
図16に示す構成では、苗枠本体303aは、左右に2つずつ配置されており合計で4つの苗箱を積載可能に構成されている。各苗枠本体303aには、苗箱センサ304が配置されている。苗箱センサ304は、苗残量センサ301と同様のセンサが使用されている。なお、補助苗枠303には前方から新規の苗箱を収容し、苗箱から苗タンク39に苗を移す場合は、補助苗枠303から後方向に引き出すことが多い。よって、苗箱センサ304のアクチュエータは後方に向けて延びるように配置されている。なお、苗箱センサ304は、4つの苗枠本体303aにそれぞれ配置されている。
なお、苗箱センサ304のアクチュエータは、苗が入った苗箱が積載された場合に倒れ、空の苗箱が積載された場合は起立した状態となるように、アクチュエータを起立状態に保持するバネのばね定数を設定することが好ましい。
【0092】
また、
図15、
図16に示す乗用型田植機では、操縦席(座席)20の下部に、作業者の体重を計測する体重計(重量センサ)306が配置されている。
さらに、操縦席20の下方には、燃料タンク307が配置されている。燃料タンク307には、内部に、燃料の残量計(残量センサ)308が配置されている。
【0093】
図18は本発明のさらに他の形態の制御部の説明図であり、
図4に対応する図である。
図18において、
図15〜
図17に示す形態の乗用型田植機では、制御部110は、
図4の各手段に加えて、以下の各手段311〜312を有する。傾斜値設定手段311は、前後傾斜値の設定手段311aと、左右傾斜値の設定手段311bと、を有し、各センサ301,302,304,306,308の検知結果に基づいて、報知傾斜値の一例としての第3の傾斜値θcや第4の傾斜値θd、第5の傾斜値θeの設定、調整を行う。
【0094】
前後傾斜値の設定手段311aは、苗残量センサ301の検知結果に基づいて、全ての苗残量センサ301が苗を検知している場合、すなわち、苗タンク39の残量が多い場合は、第3の傾斜値θcを設定値に対して小さい値(例えば、5°小さい値)に設定する。そして、4つの苗残量センサ301の中で苗を検知している苗残量センサ301の数が、3,2,1個の場合は、第3の傾斜値θcを、例えば、3.75°、2.5°、1.25°小さい値に設定する。
【0095】
また、前後傾斜値の設定手段311aは、肥料残量センサ302の残量の検知結果に基づいて、全ての肥料残量センサ302が肥料を検知している場合、すなわち、肥料タンク67の肥料の残量が多い場合は、第3の傾斜値θcを設定値に対して小さい値(例えば、5°小さい値)に設定する。4つの肥料残量センサ302の中で肥料を検知している肥料残量センサ302の数が、3,2,1個の場合は、第3の傾斜値θcを、例えば、3.75°、2.5°、1.25°小さい値に設定する。
【0096】
さらに、前後傾斜値の設定手段311aは、苗箱センサ304の検知結果に基づいて、全ての苗箱センサ304が苗箱を検知しない(または、空の箱しか積載されていない)場合、すなわち、補助苗枠303に積載された苗の量が少ない場合は、第3の傾斜値θcを設定値に対して小さい値(例えば、5°小さい値)に設定する。そして、4つの苗箱センサ304の中で苗箱を検知していない苗箱センサ304の数が、3,2,1個の場合は、第3の傾斜値θcを、例えば、3.75°、2.5°、1.25°小さい値に設定する。
【0097】
また、前後傾斜値の設定手段311aは、体重計306の検知結果に基づいて、体重が、予め設定された重量(例えば、70kg)よりも重い場合は、第3の傾斜値θcを設定値に対して小さい値(例えば、1°小さい値)に設定する。なお、70kgを境に第3の傾斜値θcを調整する場合を例示したが、これに限定されず、複数の段階(例えば、90kg、70kg、50kg等)に応じて、設定値を変更(5°、3°、1°等)する構成とすることも可能である。
さらに、前後傾斜値の設定手段311aは、燃料の残量計308の検知結果に基づいて、燃料の残量が多い場合は、第3の傾斜値θcを設定値に対して小さい値(例えば、1°小さい値)に設定する。なお、燃料の残量の場合も、重量の場合と同様に複数段階に応じて設定値を変更する構成とすることも可能である。
【0098】
すなわち、苗タンク39の苗が多い等で、乗用型田植機の重心が後方になりやすい場合には、歩み板154を昇降する際や畦越え等の際に、乗用型田植機が後方に転倒しやすい(ウイリー状態になりやすい)。よって、重心が後方になりやすい場合には、前後傾斜値の設定手段311aは、第3の傾斜値θcを、作業者が設定した設定値や初期設定値に対して小さくする。よって、重心が後方になりやすい場合は、傾斜角θ1が小さくても、作業者に報知がされるように、第3の傾斜値θcが調整、設定される。
なお、上述では、前後傾斜値の設定手段311aは、苗タンクの残量が多い場合等で、第3の傾斜値θcを小さくする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、苗タンクの残量が少ない場合は、第3の傾斜値θcを大きな値にすることも可能である。
【0099】
左右傾斜値の設定手段311bは、苗残量センサ301の検知結果に基づいて、左転倒の判別用の第4の傾斜値θd、右転倒の判別用の第5の傾斜値θeの設定を行う。本形態では、4つの苗残量センサ301が全て苗を検知している場合は、乗用型田植機の重心が高くなり左右に転倒しやすくなるので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeの両方を設定値に対して、一例として、5°小さい値に設定する。
【0100】
4つの苗残量センサ301の中で、左側の2つの苗残量センサ301のみが苗を検知している場合は、左側に苗が片寄っていて重心も左側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも4°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも2°小さい値に設定する。
4つの苗残量センサ301の中で、左端の苗残量センサ301のみが苗を検知している場合は、重心が左側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも3°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも1°小さい値に設定する。
【0101】
4つの苗残量センサ301の中で、右側の2つの苗残量センサ301のみが苗を検知している場合は、右側に苗が片寄っていて重心も右側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも2°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも4°小さい値に設定する。
4つの苗残量センサ301の中で、右端の苗残量センサ301のみが苗を検知している場合は、重心が右側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも1°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも3°小さい値に設定する。
【0102】
また、左右傾斜値の設定手段311bは、肥料残量センサ302の検知結果に基づいて、左転倒の判別用の第4の傾斜値θd、右転倒の判別用の第5の傾斜値θeの設定を行う。本形態では、4つの肥料残量センサ302が全て肥料を検知している場合は、乗用型田植機の重心が高くなり左右に転倒しやすくなるので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeの両方を設定値に対して、一例として、5°小さい値に設定する。
【0103】
4つの肥料残量センサ302の中で、左側の2つの肥料残量センサ302のみが肥料を検知している場合は、左側に肥料が片寄っていて重心も左側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも4°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも2°小さい値に設定する。
4つの肥料残量センサ302の中で、左端の肥料残量センサ302のみが肥料を検知している場合は、重心が左側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも3°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも1°小さい値に設定する。
【0104】
4つの肥料残量センサ302の中で、右側の2つの肥料残量センサ302のみが肥料を検知している場合は、右側に肥料が片寄っていて重心も右側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも2°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも4°小さい値に設定する。
4つの肥料残量センサ302の中で、右端の肥料残量センサ302のみが肥料を検知している場合は、重心が右側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも1°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも3°小さい値に設定する。
【0105】
また、左右傾斜値の設定手段311bは、苗箱センサ304の検知結果に基づいて、左転倒の判別用の第4の傾斜値θd、右転倒の判別用の第5の傾斜値θeの設定を行う。本形態では、4つの苗箱センサ304が全て苗箱(苗が入っている)を検知している場合は、乗用型田植機の重心が高くなり左右に転倒しやすくなるので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeの両方を設定値に対して、一例として、5°小さい値に設定する。
【0106】
4つの苗箱センサ304の中で、左側の2つの苗箱センサ304のみが苗箱を検知している場合は、重心が左側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも4°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも2°小さい値に設定する。
4つの苗箱センサ304の中で、左側の1つの苗箱センサ304のみが苗箱を検知している場合は、重心が左側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも3°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも1°小さい値に設定する。
【0107】
4つの苗箱センサ304の中で、右側の2つの苗箱センサ304のみが苗箱を検知している場合は、重心が右側に大きく偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも2°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも4°小さい値に設定する。
4つの苗箱センサ304の中で、右側の1つの苗箱センサ304のみが苗箱を検知している場合は、重心が右側に偏りやすいので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdを設定値よりも1°小さい値に設定すると共に、第5の傾斜値θeを設定値よりも3°小さい値に設定する。
【0108】
また、左右傾斜値の設定手段311bは、体重計306の検知結果に基づいて、左転倒の判別用の第4の傾斜値θd、右転倒の判別用の第5の傾斜値θeの設定を行う。本形態では、体重計306が検知する体重が、予め設定された重量(例えば、70kg)よりも重い場合は、乗用型田植機の重心が高くなり左右に転倒しやすくなるので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeの両方を設定値に対して、一例として、5°小さい値に設定する。なお、70kgを境に各傾斜値θd、θeを調整する場合を例示したが、これに限定されず、複数の段階(例えば、90kg、70kg、50kg等)に応じて、設定値を変更(5°、3°、1°等)する構成とすることも可能である。
【0109】
また、左右傾斜値の設定手段311bは、燃料の残量計308の検知結果に基づいて、左転倒の判別用の第4の傾斜値θd、右転倒の判別用の第5の傾斜値θeの設定を行う。本形態では、燃料計308が検知する燃料の量が、予め設定された量よりも多い場合は、乗用型田植機の重心が高くなり左右に転倒しやすくなるので、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeの両方を、設定値に対して、一例として、5°小さい値に設定する。なお、燃料の残量の場合も、重量の場合と同様に複数段階に応じて設定値を変更する構成とすることも可能である。
【0110】
すなわち、苗タンク39の苗が多い等で、乗用型田植機の重心が高くなりやすく、苗タンク39の苗が少ない場合に比べて、乗用型田植機が左右に転倒しやすい場合には、左右傾斜値の設定手段311bは、第4の傾斜値θdや第5の傾斜値θeを、作業者が設定した設定値や初期設定値に対して小さい値に調整する。よって、左右に転倒しやすい場合は、左右の傾斜角θ2が小さくても、作業者に報知がされるように、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeが調整、設定される。
なお、上述では、左右傾斜値の設定手段311bは、苗タンクの残量が多い場合等で、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeを小さくする場合を例示したが、これに限定されない。例えば、苗タンクの残量が少ない場合は、第4の傾斜値θdおよび第5の傾斜値θeを大きな値にすることも可能である。
【0111】
転倒報知手段312は、傾斜センサSN1が検知した傾きθ1、θ2が、報知傾斜値θc〜θeに達する場合に、報知部材の一例としてのブザーを制御して、作業者に走行車両1の転倒の危険を報知する。したがって、転倒報知手段312は、前後方向の傾き(傾斜角)θ1が、報知傾斜値θc以上になると、後方に転倒する恐れがあると判別して、ブザーを鳴らす。また、転倒報知手段312は、左右方向の傾き(傾斜角)θ2から、走行車両1が左に傾斜した場合(右側の方が左側に対して上方に傾斜した場合)には、第4の傾斜値θdを使用して、θ2≧θdになると、左方に転倒する恐れがあると判別して、ブザーを鳴らす。
さらに、転倒報知手段312は、左右方向の傾き(傾斜角)θ2から、走行車両1が右に傾斜した場合(左側の方が右側に対して上方に傾斜した場合)には、第5の傾斜値θeを使用して、θ2≧θeになると、右方に転倒する恐れがあると判別して、ブザーを鳴らす。
【0112】
したがって、上述の形態では、苗の残量や肥料の残量、苗箱の積載数、運転者の体重、燃料の残量に応じて、前後または左右に転倒する恐れのある場合に、作業者に報知される。よって、苗の残量等を考慮しない場合に比べて、より正確に転倒の恐れを判別でき、トラックへの積み込み作業や積み下ろし作業、圃場への進入、離脱、畦越え等の作業時の安全、安心を確保することができる。